パラケの裏側(真名木風由 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

「パラダイスマーケット?」
 ウィンクルム達は、異口同音にその名を口にした。
 説明したA.R.O.A.本部の職員は「そう」とあっさり答える。
「パラダイスマーケット。略してパラケ。タブロスにあるビルの催事場で開かれる、サブカルチャー向けのイベントです。今回、こちらの準備会より依頼が来ています」
 何でまた。
 ウィンクルム達の顔には、分かり易くもそう書いてあった。
 参加してくれと言うのであれば、ウィンクルムの任務として下されない筈だ。
 直前の今、スタッフとして手伝ってくれという話でもないだろうし……。
「実は、内々にマントゥール教団から脅されているそうです」
 職員の話によると、教団としてはよろしくない内容の自費出版本(通称薄い本)を販売したり、衣装を身に纏う者がいるそうで、開催を中止しろということらしい。
 教団としてはよろしくない……調べてみると、教団を真っ向から否定しているというようなものではなく、活躍するウィンクルム達に憧れて、架空のウィンクルム達を活躍させるものらしく、サブカルチャー層のA.R.O.A.支持が高まってしまうようなクオリティのものもあるそうだ。
 教団としては、こちら側に引き込みたいのにイメージアップするなという所なのだろう。
「準備会としては多くの方が楽しみにしているイベントを中止にすることは出来ないと主張しており、こちらがウィンクルムを派遣し、警備することで了承を得ました」
 つまり、警備が任務ということか。
 ウィンクルム達は、事情を察する。
「通常のスタッフ業務はしなくていいとのことですので、警備をお願いしたいそうです。ちょっとコアな場所ですが、大勢の人が見込まれるそうで、万が一が起きれば、大変なことになるでしょう。よろしくお願いします」
 ちょっとコア。
 少し引っ掛かったが、避けられない任務とウィンクルム達は引き受けることにしたのだった。

解説

●目的
・会場内警備

神人と精霊1組で行動します。
会場内が広い為、他ウィンクルムとの合流はありません。
当日スタッフより担当エリアが割り振られる為、こちらの話し合いも不要です。

●場所
・タブロス市内にあるビルの催事場

広いホール複数で構成されている模様。
自費出版本の販売スペースの他、コスプレスペースや企業出展などもあるようです。

●敵情報(PL情報)
・デミ・ゴブリンx複数

上記が各組それぞれ登場します。
(デミ・ゴブリンの数はウィンクルムの強さで調整します)
また、いずれか1組の所にマントゥール教団員(大元)が1名登場します。

●注意・補足事項
・会場内には多く人がいますが、出現した場合、周囲のスタッフがすぐに対応するので、参加者の避難誘導に関する考慮は不要です。
・ただし、屋内での戦闘である、戦闘場所自体はそこまで広くないことは考慮してください。
・プランでは警備上注意することや注意する場所を書いていただき、遭遇の対応(参加者が少ない場所まで誘導等)を忘れずに。
・混雑の為、携帯電話・インカム等連絡手段は繋がり難くなっています。自分達の判断が重要となるでしょう。
・お弁当・熱中症対策つき。安全です。

ゲームマスターより

こんにちは、真名木風由です。
今回は、ちょっとコア(ちょっとの範囲は人によりますが)な警備任務です。
難易度は低く、また、合流なく描写される為、相談は特に必要ありません。
サブカルチャー関係に馴染みがないと圧倒されますが、頑張ってください。

それでは、お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  ランスを適度に諌めつつ油断無く警備したい

●警備
AROA関連のジャンル(類似ジャンル)を重点的に
特に、客の多い壁やシャッター前サークルに注意
レイヤーに混じり手下や指揮役が居る可能性も念頭
鎧の『殺気感知』は常時発動
俺達もウィンクルムのレイヤーとして武装を持ち込む

顕現印を模したシールを貼り堂々と見せる
敵の注意を引くためだ

●殺気や襲撃対応
近ければ直に阻止、遠くても大声で制止
シールを剥がし身を明かせぱ俺達こそが宿敵だと敵にも分かる太郎
人の少ない方(できたら外に)に誘導して倒したい

鞭の捕縛も活用だ

◆補足
妨害したら反感を買うのに、実力行使は短絡的だと思う
本の内容は一寸気になるので仕事後に捲る(赤面すると思う


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  先にカタログで会場見取り図を確認。
参加者の避難誘導ルートを頭に入れ、敵発見時はそのルートを塞がないように敵を誘導・戦闘だ。
民間人の退路確保が肝心だからな。

ジャンル分けってのがあるのか。
ウィンクルム関係の所を目の敵にしてくるかも。
そこを重点的に警備。
トランスして警備に入る。
ここなら俺達混ざってても目立たなさそうだし。
あと出入口に近い所も。
敵を入れないのが一番良いからさ。
偽装や変装スキルで敵が参加者に紛れていないか観察して確認するぜ。コスプレっても判るからな。


敵発見時はハイトランス。
民間人を巻き込まないようにしてデミを速やかに駆逐する。教団員がいたら殺さず捕獲。
AROA本部へ連行。(情報引き出し)



瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
  事前にスタッフさんから教団員の性別、身長、体型を聞いておく。
また、どのジャンルに対して、
今回の脅迫をかけてきたのかも尋ねておこう。
(サブカルチャースキル使用)

スタッフさんに任された箇所の左半分を警備する。
警備中は近くのお客様だけでなく、
遠くにいるお客様にも目を向けるようにしよう。

その中で、明らかに人でも動物でもない怪しい姿を見かけたら、
珊瑚に一声かけて、そいつの後を追尾だ。
敵だと判断次第、
近くのスタッフに知らせてお客様を近づかせないようにする。

また、教団員と思わしき姿を見たら、お客様に紛れたり、
波をかき分けたりしながら、静かに後を追う。
どちらかの腕を掴み、スタッフさんに知らせるつもりで叫ぼう。



スコット・アラガキ(ミステリア=ミスト)
  漫画やアニメの本がいっぱいだ~
ミストはうりこ?のバイトしたことあるんだよね
あ!あれその映画の本じゃない!?(濃厚BLスペを指差し)

●準備
担当区域の地図を用意
ウィンクルム・オーガサークルを把握

●警備
長身を生かして辺りを観察
売り手に教団が紛れていないか
ウィンクルムサークルが変な人に絡まれてないか注意

これが噂のウィンクルムの薄い本?
藍子(あおこ)ちゃん(※彼女)のお土産に…
(紙面にぽたぽた涙こぼし)
ご、ごめん。いい話だったから
男が簡単に泣いちゃだめだよね…

●戦闘
開幕トランス
敵数と攻撃手段を把握
敵が多ければ背を壁で守り戦う

精霊の後方から目晦まし
敵の攻撃がきそうなら警告
打っては戻る戦法で弱った敵を攻撃



●戦士の戦場
 セイリュー・グラシアとラキア・ジェイドバインは、コメントに困る自分を自覚していた。
 パラケ。
 パラダイスマーケット───ちょっとコアと表現した職員にどの辺りが『ちょっと』なのか一晩中問い詰めたい。
「カタログで配置は見てたつもり、だった……」
「人が多いね。凄まじく」
 セイリューの呟きにラキアが苦笑を返す。
 彼らがスタッフより依頼された場所は、『企業ブース』……そう、パラケには企業も出展しているのだ……人の多さより、混乱を狙って陽動する可能性もあるということで、ライフビショップであり、医学知識も豊富なラキアが柔軟に対応出来るのではと見込まれたのである。
 該当ジャンルを重点的に警備というのをセイリューやラキアも考慮していたが、確かに陽動の意味で混雑する場所を襲撃するのはよくある手段だ。
 本命ではないから放置していい問題ではない為、2人は本命であろうとなかろうと気を引き締める。
「しかし、人が多いだけあって、蒸し暑いな。入り口付近もスタッフが混乱起きないように声を張り上げてるけど」
「とは言え、スタッフさんじゃコスプレか本物か判別つかないだろうし、注意しないとね」
 出入り口を警戒するセイリューへラキアが周囲を見回し、答える。
 パラケはコスプレOKである。
 勿論、コスプレには決まりごとがあり、コスプレ姿で買い物は問題ないが、人の迷惑になるようなコスプレや公序良俗に反するようなコスプレは禁止されている。撮影もコスプレスペースで行い、それ以外の場所での撮影は禁止されているのだ。
 この為、ここにいるとすれば、企業ブースのお目当てを狙う参加者を装っているだろうが、それはこちらも同じだ、ウィンクルムであると疑われない。(トランス状態は逆に居場所を教える、本物ウィンクルムで混乱が生じる可能性より、スタッフからの要請で見送った)
「コスプレも結構良く出来てるよな。オレにはよく分からないけど、何かに夢中ってのはいいことだよな!」
「だから、邪魔させないよう、注意しておかないとね。見つけたら、すぐに対応出来るよう」
 偽装や変装には心得があるセイリューが感心すると、ラキアも参加者に不審な点がないかを注意深く見ていく。
 とは言え、参加者の熱気には少々驚かされる。
 可愛い女の子やカッコイイイケメンが描かれた紙袋(たまに街中では隠した方がというものもあるがその注意は2人の仕事ではない)にポスターらしき丸まった紙が幾つも入っており、それ以外のグッズも紙袋の中にはあるだろうと想像出来る。
 飛び交う会話はセイリューとラキアの知識の範囲外のものだが、お目当てのものを求める姿は、まさに聖戦の戦士。
 パラケは戦いである、というのが2人の脳裏に過ぎった。
 戦士の戦場を守るのも戦いと避難誘導ルート、敵を誘導するに相応しい場所を確認していく。
「参加者の安全が1番だからな」
「そうだね。スタッフの方も彼らの襲撃がなくとも心を砕いているんだから、俺達が駄目にしないようにしないと」
 消防スペースや企業ブースのタイムイベントも確認し、異常なしと1番警戒している出入り口へ一旦戻ったその時だ。
「ラキア、トランス」
 セイリューが混雑の波に乗じて、背丈の低いデミ・ゴブリン達が何食わぬ顔で入ろうとしているのを見つけた。
 スタッフは混雑の混乱に注意する為に礼儀正しく入るデミ・ゴブリン達よりも、ハァハァした大きなお友達に注意を向けてしまい、まだ気づいていない。
「セイリュー、消防スペースの裏。ここだとちょっと拙いかも」
 ラキアが周囲を見て、呟く。
 自分達がいる周囲はBL関連のグッズを出している企業ブース付近らしく、そういう紙袋を携えたお姉様が多い。
 ここでやれば、混乱が発生するのは火を見るより明らかだ。
 2人は近くの消防スペースで人の視線が入らない内にトランスから、ハイトランス・ジェミニまで発動させ、デミ・ゴブリン達へ駆け出す。
 デミ・ゴブリン達がBL企業ブースに急に走り出すよりも早く、セイリューが「走らないでくださあああああい」と叫びながら、デミ・ゴブリンの1体を張り倒した。
 異常に気づいた参加者達がどよめくが、スタッフが神のような手腕で「立ち止まらないでください」とか「あなたのお目当てはこの瞬間にも誰かの手に渡ってしまってますよ」と言葉巧みに追い払う。
(消防スペースに誘導しよう。こういう時だからこそ、活用しないと)
 セイリューへシャイニングスピア、自身へはシャイニングアローⅡを発揮させ、ラキアもセイリューと共に普段は参加者の立ち入りを制限している消防スペースへ誘導していく。
 短時間で速やかに。
 2人はその目標通りにデミ・ゴブリンを倒すが、混乱を起こす部隊だったらしく、マントゥール教団員らしい人影は見つからなかった。
 尚、活躍を見た参加者が「お目当てのものは売り切れたがウィンクルムの生活躍に禿萌」という感想をネットで上げたらしいが、それは別の話だ。

●パラケの非情
 アキ・セイジとヴェルトール・ランスは、『コスプレスペース』担当である。
 教団員を誘き出す為に即興劇の希望を出した所、即興劇をしてもある程度は支障が出ないコスプレスペースを割り振られたのだ。
「コスプレスペースは1番確率低い気がするけどな」
 ヴェルトールが、そう零す。
 が、目的の本を購入する参加者は戦士である。
 通常の10倍は色々なものが強化されている。
 本を買う為のビックウェーブ真っ只中で即興劇をしようものなら、戦士に注意されるならまだいいが、最悪無言で突進されてハネられる。
 会場内の人が多い為に具合が悪くなった人が台車で運ばれたりもする為、会場内でスペースを確保して即興劇などとんでもない。
「だが、具合が悪くなった参加者の運搬の邪魔になったりするのは本意じゃないだろ?」
「それは、そうだけど」
 アキがヴェルトールを嗜めると、ヴェルトールは頷く。
 ウィンクルムジャンルの同人誌への警戒は当たり前だが、事前にクオリティの高いコスプレもあると聞いている。
 コスプレ参加者個人を狙う可能性もあると思考を切り替えた。
「ここだと、俺達の格好はより目立たないな」
「声を掛けられるのが困り者だけどな」
 2人の格好もコスプレと判断されているのだが、クオリティが高いコスプレと誤認されて撮影希望の声を掛けられることもある。
 スタッフからはその点を懸念され、コスプレエリアを担当する2人はスタッフ腕章を貸してくれたので、腕章を見せて断っているが。
「これだけ参加者が多いと、友人はラスボスのCDを入手してくれたか心配だぜ」
「ラスボス?」
「チドリンだ」
 アキが首を傾げると、ヴェルトールはベテランで、最近は若者からチドリンという愛称で親しまれる歌姫がパラケに参加してCDを販売しているのだと教えてくれた。
 が、今日は任務中、ヴェルトールは一般参加する友人に依頼したらしい。
「心配だ……」
「ランス、違う箇所心配しよう」
 気が気でない様子のヴェルトールをアキがまた嗜める。
 コスプレ参加者が多い為、ごく普通に混じっている可能性もありうると警戒をしていると、ヴェルトールの携帯電話が鳴った。
 会場内は携帯電話の類が非常に繋がり難いと聞き、事前打ち合わせで、連絡は期待せず、互いの判断を大事にしようとなっていたので、ウィンクルムではないと思うが。
「……売り切れた……」
 ヴェルトールが露骨に落胆した。
 一般参加者の友人は、入手出来なかったらしい。
 パラケとは非情の世界───だからこそ、人は戦士となる。
 熟練の戦士であれば夜明けと共に並ぶが……。
 尚、パラケ準備会では徹夜厳禁、サークル参加者も開場前にサークル前に並ぶのは厳禁としているので、友人はパラケマナーをきちんと守ったと推測される。その点は評価してあげて欲しい。
「この悲しみ……全てぶつけてやる……!!」
「……頑張れ、ランス」
 燃えるヴェルトールを見て、アキはやる気になればいいかとツッコミしなかったが、人はそれを私怨と言う。
 ヴェルトールはウィンクルムジャンルのコスプレイヤーの元へスタスタ歩いていった。
(やるつもりなんだな)
 アキは察しつつ、続く。
 手の甲の紋様はタトゥーシールと思われているらしく、特に誰もツッコミしない状況なのは助かる。
「く……オーガめ、俺の大切なもの(お目当てのチドリンCD)を奪った……! 許されない……」
 嘆くヴェルトール。
 アキは売り切れの一報を知ったばかりだから、演技する必要ないんだなと悟るが、黙っておく。
「俺達はオーガを倒し、パラケを守らねばならない!」
 スタッフなのが惜しいと声が上がった瞬間、アキがコスプレ参加者に混じってデミ・ゴブリンが登場したのに気づいた。
 これイベントなのかというコスプレ参加者に対し、アキが軽く手を上げる。
 周辺を警戒してくれていたスタッフが気づき、特別イベントと適当な説明をしてコスプレ参加者達を遠ざけてくれた。
「デミ・ゴブリンだけ……。ふ、ふふふ……俺の悲しみ……思い知れ!!」
「ランス、トランスしよう」
 アキはインスパイアスペルを唱え、ヴェルトールの頬に唇を寄せ、トランス。
 ここで戦う訳にもいかない。
 アキとヴェルトールはスタッフが開けてくれた非常口から外へデミ・ゴブリンを誘導した。
 他参加者が追いかけて来ないようスタッフが立ち回ったことを知るのは後の話だが、ヴェルトールが朝霧の戸惑いを発動させた後、アキがウィップ「ローズ・オブ・マッハ」を振るい、悲しみをぶつけるかのようなヴェルトールの乙女の恋心Ⅱが最後のデミ・ゴブリンを仕留めた。
「実力行使は短絡的だということだ」
「……分かり合えそうにない」
 余計に反感を買うとアキが零す横でヴェルトールがより魅力的な本の紹介などしてやらないと呟く。
 チドリンのCDは手に入らなかった為内容の説明は出来ないが、閉会後アキが少し興味があるからと見せて貰った見本誌で顔を真っ赤にさせたことは記しておこうと思う。

●強力なのは誰か
 瑪瑙 瑠璃と瑪瑙 珊瑚は、戦士達の熱気に身体が引く思いがした。
 ここは、『週刊少年コミック(女性向)』エリア───ゲームやアニメに通じることが判明した為にスタッフから割り振られた場所だ。
 瑠璃は開場前、スタッフから脅迫して来た教団員の身体的特徴を聞き出そうとしたが、そもそも教団員以外の情報をくれる程先方も親切ではない。脅迫は正体不明だからこそ意味があるのだ。
 事前にこれらが分かっていれば、その拠点へウィンクルムを派遣するだろう。そうではなく、会場警備が任務となっているのは、そういうことだ。
「ウィンクルムジャンル全般らしいけどさな」
「隣接そーんし、人がうーさん(多い)ホールなら警戒やちゃーならんやっさーろ(仕方ないだろ)」
 瑠璃と珊瑚、互いしか聞いていない為、標準的な言葉遣いではない。
 スタッフから割り振られたエリアの配置図を見るが、配置図通りなのかどうか不明なレベルで女性参加者がおり、人が立ち止まっていられるような流れなどないし、通行すらままならない。
 会場内の目印はあるものの、とにかく人が多く、自分達の理想通りに警備することは困難と早々に思考を切り替えざるを得なかった。
「ホールを巡回して異常を見つけるしかねぇさやさぜ」
「人が多いから、異常は逆に分かりやすいんだべしな」
 珊瑚の提案に瑠璃も軽く肩を竦め、中の通路には入らず、ホールをぐるっと回る形で頑張って歩く。
 女性向けジャンルである為、周囲を見回すと、男性2人には色々刺激が強かった。
 行き交う参加者だけでなく、遠目の大手へ並んでいる参加者へも目を配るようにしているが、とにかく押し合いへし合いゾーンもある為、販売物の確認は出来たら幸運レベルといった有様。
「襲撃している場合じゃなさそうな気もする……」
「しが(けど)、くま(ここで)で騒ぎんかいなったらやっけー(ヤバイ)」
 何とか歩く瑠璃の隣では、宝物バッグに腹部を無自覚攻撃された珊瑚が苦悶の表情で答える。
 混乱に乗じて目的を達成されたり、だから、A.R.O.A.はダメだという布教活動の一環にされては困るのだ。
 なまじこの方面に知識があった為、混雑の坩堝に放り込まれたのは不憫の一言に尽きるが、安心して欲しい、今日は女性参加者主体の日だ、雄叫びは一応ない。
 体力と精神力を吸われるような思いで巡回していると、座り込みを止めるよう注意しているスタッフの姿が目に入った。
 ああ、疲れた人、家で読むのが待ちきれずに読む人が座り込……!?
 瑠璃と珊瑚はスタッフの苦労を思いやろうとして、信じられないものを見た。
「ぬーがら(何か)いるぞ」
「休憩中、には見えないけどささ……」
 珊瑚の言う『何か』を肯定するように瑠璃が呟く。
 そう、デミ・ゴブリン達である。
 座り込んで同人誌を読んでいる女性参加者に混じって、デミ・ゴブリンが座っていた。
 疲れているという様子でもなく、じっとしている。
 この流れに入っていけないのかと思っていたら、宝を読み耽る女性参加者のスーッと近づき、財布を───
「ちょびっと待───」
「うひぐゎー(ちょっと)待───」
 財布を取って買わせないつもりかと瑠璃と珊瑚が声を上げようとした瞬間、女性参加者の目がクワッと開き、デミ・ゴブリンの手をバシッと叩いた。
「置き引きー!!」
 パラケ戦士はこの日の為に生きている。
 その為、お宝購入をさせまいとする動きに対して、容赦する筈もない。
 駆けつけた瑠璃と珊瑚がトランスすると、ウィンクルムと気づいた女性参加者達が凄まじい悲鳴を上げた。
「デミ・ゴブリンより周囲がまぶやぁぬや気ぬせいかみ?(周囲が怖いのは気のせいか?)」
「おれもそうしたから、大丈夫」
 珊瑚の素朴な疑問に瑠璃が遠い目で応じる。
 周囲の雰囲気に相当圧倒されながら、ささっとスペースを空けてくれた女性参加者達を他所に邪魔をされたと腹を立てるデミ・ゴブリン達と向き合う。
 立ち入り禁止の消防スペースで本来は空きスペースで戦闘に問題ないのと、女性参加者がすんごい協力的なので、移動する手間よりもここで倒すことを優先させる形で2人は床を蹴る。
「ここはお前らが来るような場所じゃない。ってことで、したっけー(さよなら)」
(来ねーらん方がゆたさん場所ともあびるよな(来ない方がいい場所とも言うよな))
 瑠璃の仕留める言葉を聞き、珊瑚は心の中でそう思う。
 パラケとは、戦士が集う戦場である。
 中途半端な気持ちで赴いていい場所ではないのだ。
 デミ・ゴブリン達も戦場に立つ女性参加者の殺気に『何か』感じるのか、不利を立て直す為に女性参加者を攻撃したりしない。
「したっけー!」
「ゆくいみそーれ!(さよなら)」
 最後のデミ・ゴブリンが倒れると、女性参加者達が凄まじかったので、スタッフの援護で瑠璃と珊瑚はホールを後にした。
 閉会後、他のウィンクルム達よりも自分達の体力と精神力の消耗が半端ないことに気づくが、今はゆっくり休憩所で休もう。

●守られたパラケ
「漫画やアニメの本がいっぱいあるんだね~」
「それが全てじゃないぞ」
 スコット・アラガキとミステリア=ミストは開会前、このような会話を交わしていた。
「ミストはうりこ……だっけ? パラケでバイトしたことあるんだよね?」
「当時流行った映画の敵役にそっくりだとかでな」
「この辺のサークル、その映画の本じゃない!?」
「スコット、それ以上いけない」
 サークルカットを見ていたスコットがそれに気づくが、ミストはサークルカットでディープな女性向けジャンルに成長していることに気づき、スコットを制止した。
 こうして、彼らは担当する『創作(ウィンクルム)』へと旅立ったのだった。

 ウィンクルムが創作ジャンルであるのは、実在のウィンクルムだと任務に影響が出る場合もあるから配慮されてるのだとか。
「色々あるね。ウィンクルムもオーガもたっくさん」
「結構水準は高いな。考察本なんか出てる」
 配置図に目を落とすスコットの隣でミストが掲げられている販売物リストを見る。
 スコットの配置図は注意すべきサークルがマークがされ、把握に努めていることが伺えた。
「教団員がサークル参加してるとかってないよね? 変な人とかいないかな」
「サークル参加……どうやって参加したんだろうな。が、一般参加者も色々だ。教団関係者と決めつけるなよ?」
 長身を生かして周囲を観察するスコットに対し、ミストはスコットの黙っていれば男前に騙されている周囲を見つつ、そう教えておく。
「コスプレの振りをしている可能性もある。教団員にオーガがお供していても、今日ばかりは目立たない」
「今日は色んな格好の人がいるもんねー」
 ミストの話を聞いて、納得するスコット。
 と、注意するサークルの列の混雑に気づき、ミストがスタッフを装い、列整理に入る。
「ウィンクルムコス? スタッフさん、すっごーい!」
「でも、他にもクオリティ高い人いるから」
 ミストは女性参加者の賞賛を謙虚に受け止める振りをする。
「相当レベル高いですよ? さっき、行ったサークルもレベル高かったけど」
「それは凄い」
「デミ・ゴブリンなんか本物みたいだった!」
 本当にサークル参加してたのかよ。
 ミストはツッコミの声を押し留め、情報を集める。
 その間、スコットが不思議そうな顔をしていた。
「どうかしたのか?」
「ミスト、掲げるのって『最後尾』ってカードだけじゃないの?」
 スコットが指差したのは、あるサークルへ並ぶ参加者が掲げる『ここは最後尾じゃありません』というカード。
「当たり前だろ」
 ミストは、長い列では行き交う参加者の為に区切ることもあるのだと諭した。

 該当サークルは、サークルカットでは判断つかない内容でチェックが外れていたが、怪しかった。
(本物じゃねぇか)
 席にちょこんと座るデミ・ゴブリンの隣にいる女性は、教団員だろう。
「写真撮影お願いしますー」
 スコットが笑顔で言うと、気づいた彼らはサークルを畳み、ついてくる。
 行き先は、人気のない場所。
 即トランスすると、敵情視察していたらしいデミ・ゴブリンも合流してくる。
「開催を中止しなかったからには、内部から崩すに決まってるでしょう。手続きだけしていなくなるサークルがあって助かったわ!」
「ダミーサークルの悪用は良くないぜ」
 ミストはアプローチⅡで注意を引きつけ、プロテクションで防御力を強化する。
 敵の数は多くなく、スコットがミストの背後から短剣「クリアライト」で相手の視界を奪い、ミストがメイス「ドルミート」でデミ・ゴブリンを1体ずつ確実に倒していく。
「眩しいっ!」
「ミストの頭程じゃないよ!」
「余計なこと言うな」
 スコットへツッコミつつ、ミストは教団員を捕縛した。
 その時にはデミ・ゴブリンは全て倒れており、邪眼のオーブも無事に破壊となった為、任務としては無事に終了と言っていいだろう。

 事後対応を任せたスコットとミストは何食わぬ顔でチェックしたサークルを巡っていた。
「綺麗な表紙!」
 スコットがウィンクルム本を手にすると、断ってから中身に目を通す。
 間。
「あお、こ、ちゃん……」
「ななな何泣いてんだよ!」
 いきなり泣き出したスコットに、ミストが久し振りの涙ということもあって焦る。
「ご、ごめん。いい話だったから。男が簡単に泣いちゃダメだよね……」
「買います」
 スコットは溜息をつき、スコットの涙が紙面に落ちた本のお金を支払う。
 報酬が他のウィンクルムより低く感じてしまうような気がしたが、買わずに立ち去ることは出来ない。
「藍子ちゃんのお土産にするね」
「どんな話なんだ?」
 スコットから本を借りたミストが目を通す。
 男女のウィンクルムの話であるようだ。
 文章とコミック、両方あり、優しい雰囲気のもの───が、ミストの目から見て、ヤマもオチもないように見える。
(泣き所どこだ?)
 ミストには分からなかったが、スコットが嬉しそうなのでいいことにしよう。

 パラケ。
 戦士が集う場所。
 だからこそ、マナーを守って戦いましょう。



依頼結果:成功
MVP
名前:スコット・アラガキ
呼び名:スコット、スットコ
  名前:ミステリア=ミスト
呼び名:ミスト

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 真名木風由
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 08月09日
出発日 08月15日 00:00
予定納品日 08月25日

参加者

会議室

  • [14]アキ・セイジ

    2015/08/14-23:59 

    奇しくも今日はパラケ88の日。
    イベントを守れていると良いな。

    プランは提出できているよ。上手く行く事を願ってる。

  • [13]アキ・セイジ

    2015/08/14-23:57 

  • [12]瑪瑙 瑠璃

    2015/08/14-23:30 

    珊瑚:
    スコットもミストもチバリよ(※頑張れ)!わったー(オレ達)もお客から敵を守る!
    現地は多分
    はなーしぇん(※可愛い)雑貨どころか、ムキムキマッチョな雑貨もあるかもしれねぇよな!面白ぇ!

    瑠璃:
    (それ、誰が喜ぶんだべさ……)
    プランは提出しています、こちらこそ全力を尽くしましょう。よろしくお願いします。

    珊瑚:
    ゆたしくー!

  • [11]スコット・アラガキ

    2015/08/14-19:25 

    おみやげかー。かわいい雑貨とかもあるのかな?
    サチコのCDは社食のおばちゃんが喜びそうだし…。
    何かてきとーに見繕ってこうかな(ふむ)

    どうしても最後尾がいいなら、頼めば快く譲ってくれると思、…いたッ!

    ミスト「(神人をはたいた手を軽く振り)珊瑚で遊ぶのはやめろよ、もー…。
    プランは提出済みだ。当日はお互いがんばろうぜ」

    ちゃんと買えるといいね!

    ミスト「そっちじゃない」

  • [10]瑪瑙 瑠璃

    2015/08/13-22:57 

    ……滑舌が悪かったようです。
    最後の文は、なような、ではなく、のような、です。

  • [9]瑪瑙 瑠璃

    2015/08/13-22:52 

    珊瑚:
    ちぇー、つまんねぇのー。(しぶしぶスコットにプラカードを返す)

    瑠璃:
    いずれにしても、
    今回のマントゥール教団員がどんな趣味や嗜好であれ、
    性別や顔ぶれや容姿は聞くつもりでいます……。

    サブカルチャーといっても、範囲は広いですから、
    絞った方が手がかりもつかめそうですね。

    ……パラダイスマーケットがどうかはわかりませんが、
    最近は漫画や小説どころか、クリアファイル等の商品も売っており、
    まるで観光土産店なような品揃えだそうです。

  • [8]スコット・アラガキ

    2015/08/13-18:23 

    ミスト:
    (カタログをぱらぱらとめくりながら)
    サブカルのイベントってこたぁ漫画や小説に限らないんだろ?
    オーガを題材にした真面目な本があってもおかしかないと思うぜ。

    スコット「オーガがテーマの漫画、読んだことあるよ!
    シチューとかタルトとかおいしそうなレシピがたくさん載ってた」

    題材じゃなくて食材じゃん…。
    ともかく教団が反応しそうなサークルはチェックしといた方がよさそうだな。

    スコット「あとセイジたちとセイリューたちが来たから、珊瑚は最後尾没収ね!」

  • セイリュー・グラシアとLBのラキアだ。
    今回は個別対応任務だけれど、ヨロシク。
    見知った顔ぶれだと安心だぜ。

    教団員でもこういう方向に盛り上がる人がいるんだな(遠い目。
    外の暑さに負けない熱気が何やらそら恐ろしいぜ。
    しかし教団員ならいっそ高スケールオーガ達を題材に色々と創作活動をだな・・・

    ラキア「それはもっとヤバイでしょ。始末されちゃうよ」

    それはともかく。
    いち警備員として参加者さん達の安全第一に頑張るぜ。

  • [6]アキ・セイジ

    2015/08/13-00:22 

    ウスイホンとかレイヤーと書かれた催事説明書を読んでいる)

    皆、よろしくたのむぜ!。
    しかしこの熱気は相変わらずただごとじゃないな。
    そういえば、クイーンサチコがCDを出すらしいが、買う暇は有るかなあ…(双眼鏡覗き込み
    あ、俺、仕事だった。誰か代わりに並んでくれる人は…っと(きょろきょろ

  • [5]アキ・セイジ

    2015/08/13-00:17 

  • [4]瑪瑙 瑠璃

    2015/08/12-21:14 

    瑠璃:
    そうですね、お互い頑張りましょう。
    ……これは満員になるまで持ってい
    (渡されたプラカードを手にしようとして、珊瑚に取られる)

    珊瑚:
    いよっしゃあああ!カードゲットー!!
    (カードを両手にうるさく騒ぎだす)

    瑠璃:
    ……。
    (何か言われないかと、スコット達と珊瑚を交互に見る)

    珊瑚:
    よっしゃああああ!最後尾やさああ!

  • [3]スコット・アラガキ

    2015/08/12-15:06 

    わーい出発確定だあっ!
    ロイヤルナイトのミストと神人のスコットだよ、改めてよろしくねー。

    瑠璃たちと一緒にお仕事するの、すごく久しぶりなんだね。
    自分勝手に…?よくわかんないけど迷惑かけるのはお互いさまだよ!
    こっちこそ、あの時はありがとう。別行動だけど今回もがんばろうねー。

    ……………じゃあ、ハイ。最後尾。(プラカードを瑠璃たちへ渡そうと)

  • [2]瑪瑙 瑠璃

    2015/08/12-01:29 

    (プラカードを持つスコットをチラ見しつつ、カンペを淡々と読む)

    紳士淑女の皆様、初めまして。
    今回、自費出版本(通称:薄い本)の祭典「パラダイスマーケット」に潜入致します瑪瑙瑠璃と、
    テンペストダンサーの珊瑚です。

    ……というわけで、盛り上がる祭典の中、警備をさせていただきます。

    スコットさんはアレフさんの事件以来になりますね。
    あの時は自分勝手に行動してしまい、ご迷惑おかけしました。

    今回、合流の機会はないとの事なので個別の警備になりますが、改めてよろしくお願いします。
    (軽く頭を下げる)

  • [1]スコット・アラガキ

    2015/08/12-00:28 

    (「最後尾」と書かれたプラカードを手に待機中)


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