僕達の一票は重い(真名木風由 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 『あなた』達は、今日任務だった。
 タブロス近郊の村での任務は無事に成功し、A.R.O.A.の本部へも報告を済ませ……職員から、最近屋台街がオープンしたと教えてくれた。
 ビルの谷間にあるその屋台街は、幾つかの屋台で注文したものをイートインスペースで食べられる方式とのことで、フードコートに近い色合いを持つようだ。
 その食べ物もお祭りで見られる屋台などではないらしく、割としっかりしているとか。
 既に陽は落ちているが、今日は日中から暑く、夜の今もまだその名残がある。
 家に帰って作るのも悪くないが、任務も成功したし、たまには皆で打ち上げがてら一緒に夕食でも食べるかという話になった。
 職員から場所を聞いた『あなた』達は、その屋台街へと向かう。
 そこに、任務とは違う戦いがあると知ることもなく。

 屋台街は、活気に満ち溢れていた。
 行き交う人々は思い思いに好きな食べ物を注文し、取った座席で食べている。
 屋台を見回すと、なるほど、本当に色々な食べ物がある。
 スープカレーの屋台は、種類豊富に、けれど値段が高くなり過ぎないよう配慮されているし、パエリアを扱う屋台もある。
 ゲバブを豪快に見せつけている屋台もあれば、焼き鳥を実演販売している屋台もあり……どれにしようか、なんて思わず顔を見合わせてしまう。
 とりあえず、順番に屋台を巡ってはどうか……なんて話が出た時だ。

「決めた! この人達に決めてもらう!」

 空を裂く、とばっちりの声。
 振り返ると、屋台のお兄ちゃんが2人、火花を散らしている。
 何か、とても嫌な予感、いや確信がする。

「俺の屋台のタコスと! お前の屋台のお好み焼き! どっちが上かこの人達に決めてもらおうじゃないか! 負けた方が店じまいだ!」
 ……わー、すごーく巻き添え食らったぞー(棒)
 『あなた』達は、周囲の「いいからやれ」視線(多分彼らのバトルはオープンから続いていると見た)にも圧され、選択権なく屋台を決めることとなった。

解説

●ルール
・タコス1種、お好み焼き1種を神人、精霊で分け合って食べます。(他のウィンクルム達と味の共有OK)
・2人で美味しいと思うのはどちらか協議し、ジャッジします。
・票数が多い方が勝ち。

●メニュー
タコスの屋台(店主:ガイ)
牛肉のタコス
豚肉のタコス
鶏肉のタコス
シーフードタコス
サボテンのタコス
※ソースは甘辛・辛口・ワカモレ(アボガドのディップ)の3種から選択。

お好み焼きの屋台(店主:マイト)
豚玉
イカ玉
エビ玉
牛すじ玉
モダン焼

●消費ジェール
・1組一律300jr

これで1つずつ注文+ドリンク(アルコール含)飲み放題となります。

●注意・補足事項
・他のウィンクルムもおり、個別行動ではありません。
・腕は、どちらもほぼ対等。完璧に好みで選びましょう。
・どちらも使い捨ての紙皿に載ってきます。分け合いっこして、皆で楽しく食べてあげてください。
・投票自体は、精霊との協議のみ。公平に!
・勝負後、(何とかしてくれた感謝で)屋台の人達が一品ずつタダで振舞ってくれる為これ以上の出費はありません。
・ちなみに、勝負している方々、犬も食わない方々だそうです。

ゲームマスターより

こんにちは、真名木風由です。
今回は、何か勝負に巻き込まれたけど、それはそれとして任務後の交流を楽しみましょうという話です。
勝負のジャッジはしますが(そもそもする必要あるのかというのは別として)、そのお陰で最終的にはお手軽に屋台料理を多く楽しめます。
皆さんで、ああでもないこうでもないと楽しいひと時を過ごしていただければ幸いです。

それでは、お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)

  何なんだろうなこの引きの強さというか巻き込まれやすさというか
ウィンクルムならではか?
ま、打ち上げに余興が加わったと思えばいいか

サボテンのタコス(ワカモレ)とモダン焼きを選択
タコスはイグニスがものすごく推してきた
……なんだかんだであいつに甘い自覚はあるよチクショウ
折角だし他の奴らとシェアする方向で
一口サイズに切り分けとけば手も出しやすいだろ

さて投票はどうしたものかね
(イグニス呼んで相談)
……お前完全に趣旨忘れてたな?
どっちも美味かったんだが……そうだな、そうするか
じゃあ俺らはタコスの方に一票。

……お前は本当に大した発想力というか……
ま、勝負が終わればノーサイドだろ
さて打ち上げの続きと行くか



アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  面食らいつつも考える
この二人、意地を張り合ってるだけなんじゃ(汗
なんとなく友達オーラみたいなのも感じるし
その不器用な様がなんだか俺達を見ているようで…

恥かしすぎる。なにこの二人、むず痒いっ(頭抱え


分かったよ
じゃあ比較するためにどちらも豚を。ケバブは甘口で

分け合って食べつつランスに耳打ち
「美味くても我慢してくれないか」
「不味いと挑発して、互いの食べ物への本音を引き出すんだ」
「で、互いのを美味いと思ってるってチラリと出させ、じゃあ食ってみろよって食べさせる」
「そこで種明しして、どっちも美味いだろって笑ってみせるわけ」

という作戦で手打ちにしたい


なあ。俺達もハタからみたら…
いや、なんでもない(ふい



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  勝負・・・いい響きだ。
他の人とも味をシェアさせてもらって、色々な味を堪能して決めたいぜ。
俺はエビ玉を選ぶぜ!
(他の人と被った場合はイカ玉に変更)
海の幸の味はウマすぎるからな。海鮮をリスペクトするぜ。
や、もちろんお肉も大好きさ!

どっちを推すか?オレはお好み焼きを推すね。
味もさることながら、お好み焼きは1人1枚食すのが基本だけど。
今回みたく皆で分け合って食べれるというアドバンテージがある!
タコスだとこうはいかないだろ。それにお皿に載せて食べるだけじゃなく二つ折りにしてワンハンドで食べるスタイルも取れるという変幻自在性も素晴らしい。
よってお好み焼きの方が上だとオレは思う!(力説)
お好み焼きに一票!




蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  他の皆さんと味を共有

タコスは牛肉のタコス(ソースは辛口)
お好み焼きは豚玉
を注文

辛いものって美味しいよな
最初はタコスに手を付ける
皆にも分けたいから、まず何個かに切り分け
その内一つに口を付ける
ソースがピリッとして、牛肉も柔らかい。口の中でとろける
皮も凄く美味しい

フィンも食べてみるか…って(硬直
…そ、そうか。よかった(視線が泳ぐ
俺もお好み焼きを食べてみる

…だから!どうして、そんな事を堂々とするんだよ、アンタは!
二人の時ならまだしも…
ち、違う、別に嫌な訳じゃなくて…
あーもう、頂きます!(ぱくっ
…美味しい
生地がいいな、ソースもコクがあって、豚肉の旨さが引き立つ

うーん…凄く悩むけど、俺はお好み焼きに一票



●メニューを前に
 妙な戦いに巻き込まれたウィンクルム達は、2つメニューを見て顔を見合わせる。
「勝負……いい響きだ。折角だし、皆で味をシェアして、色々な味を担当して決めたいぜ」
「ま、打ち上げに余興が加わったと思えばいいか」
 セイリュー・グラシアがお好み焼きはエビ玉と決めれば、ウィンクルムは巻き込まれ体質かと口の中で呟く初瀬=秀はモダン焼を選択した。
「飲み放題もあるし、ちょっとお得かもしれないよ?」
「シェアし合うし、後で他の屋台見る分には問題ないみたいだしね」
 フィン・ブラーシュが豚玉を決めていると、ラキア・ジェイドバインはセイリューがエビ玉を頼んでいる間にタコスを頼むらしく、シーフードタコスを選んだ。
「ソースはどうしようかな。甘辛にしよう。辛さがよく分からないし」
「なら、俺は牛肉のタコスで辛口。折角だし、ソースもばらけた方がいいと思いますし」
 ラキアに応じるのは、蒼崎 海十。
 辛さは人によって許容範囲がある(ラキアはあまり得意ではないらしい)こともあり、最初に辛いものが平気な者が味見した方がいいだろう。
 タコス屋台の主、ガイの話によると、劇的な辛さはないそうだが、ガイの許容範囲によってしまう部分もあり、実際食べなければ分からない。
「あれですね、喧嘩する程何とやらですよねこれは」
 ワカモレたっぷりのサボテンのタコスを受け取るイグニス=アルデバランは、屋台街に来るまでの「皆様でごはん!」と喜んでいた通り、当初何だかよく分かっていないようだった。
 が、周囲の勝負カラーと主2人のやり取りを見、そのような結論に至ったらしい。
「な! 俺とあいつは違う! あいつのお好み焼きは確かに値段の割にボリュームもあって美味いが、俺のタコスはその上を行く! なのに、あいつは……」
(あ、これは当たりだ)
 アキ・セイジは、イグニスの「サボテンって食べられるんですか」から始まる会話の流れを見ていた。
 サボテンだけでなく、ワカモレがアボガドのディップとも聞いたイグニスは、モダン焼を手にやってきた秀へ「これがいいです」と輝いた瞳で熱烈なプッシュをしていたのだ。
「……何だかんだであいつに甘い自覚はあるよチクショウ」
 とは、秀のコメントである。
 それはさておき、アキはヴェルトール・ランスを手招いた。
 ヴェルトールはお好み焼きの屋台で何にしようか考えていた最中である。
「向こうの屋台の人、何か言ってた?」
「ああ、何か手軽に美味しいタコスを幅広く楽しめるのはいいかもしれないけど、自分のお好み焼きはその上を行く。認めればいいのにって」
「食べてはいるのか。……ますます、意地の張り合いのような気がしてきた」
 アキはヴェルトールの話を聞き、イグニスの言葉は当たっているのだろうと何となく思う。
 一定以上の友情があるんじゃないだろうか。
 ただ、不器用な者同士なだけの気も……。
(恥ずかし過ぎる。何だかむず痒い)
 自分達みたいという言葉を手で掻き消しつつ、アキはメニューを決めていないのは自分達だけであることに気づいた。
 味をシェアし合おうという提案もあったことだし、重複しないものがいいだろう。
 アキとヴェルトールは他のウィンクルム達を見、まだ頼まれていないものから選ぶことにする。
 色々悩んだ末、お好み焼きはイカ玉(全員でシェアをするなら豚玉は食べられることよりそれなら幅広くと考えた結果だ)、タコスは豚肉のものを甘辛ソースとなった。
 全員分のお好み焼きとタコスがテーブルの上へ並んだ。

●食べる前に
 準備が終わったら来るらしい屋台の主達がいない間に、アキはひとつ提案をすることにした。
「美味くても我慢しないか」
 アキが言うには、不味いと主張することで双方の本音を出し、改めて双方のものを食べさせてはどうかというものだ。
 既に敵情視察で食べてはいるようだが、改めて知らせるのもいいだろうという考えである。
 自分達だけでやっても、効果が薄い(最悪難癖つけていると判明する)為、全員に協力を求めた形だ。
「肉の調理が甘いとかソースつけ過ぎとか野菜が古いとかそういうの?」
「物によるだろうな」
 ヴェルトールが具体的なダメ出しコメントを口にすると、秀が屋台の主達がまだ来ないのを確認しつつ、意見を出す。
「材料そのものに関するダメ出しだと、材料を卸している業者に対するマイナスイメージが出る場合もある。ここでそのつもりもなく発言したものが噂として巡り巡った結果、新鮮な食材を扱わない業者って評価に変化することもあるだろうな」
 尾鰭ついて変化した噂で被害を被った業者が屋台の主達と取引終了するばかりか屋台街へのクレームになる可能性もある。
 鮮度に関する評判は、場合によっては致命傷になりかねない。
 喫茶店を経営する秀は、そうしたことを心得ていた。
「材料に関しては言わない方がいいな」
 アキもそれはありうると同意し、頷く。
 最終的に誰もが良い方向で落ち着けるならば、その配慮は必要だろう。
「けど、どちらの方も食べてはいらっしゃるみたいですよ? ただ、ご自分が上と思ってらっしゃるだけで」
 イグニスが、小首を傾げる。
 彼ら(どういう間柄なのかは詳しく知らないが)は、互いに認めてはいる。
「結構仲がいいのかもな。逆の評価を口にすることで、怒らせ、双方の料理を食べて貰う誘導とかはどう?」
 ヴェルトールが実は相手を認めているなら、相手への不評を怒るだろうから、そこを起点にしてはと言ってみる。
 すると、セイリューが違う角度を提示した。
「どっちも美味いって話して、両方食わせてもいい気するけどな。勝敗に拘ってるなら、両方不味いって言うより、両方美味いって言う方が後々もいいと思うけど」
「それじゃ食べなくないか?」
「味つけの好みを前に出した方がいいんじゃないかな。それなら、食べるのを勧めやすいと思う」
 アキが認め合う為に改めて食べて貰った方がと口にすると、ラキアが微笑んで意見を出す。
「俺が辛いのあまり得意じゃないから思うんだけど、どんなに美味しくても辛いものが苦手な人にとっては受け付けないってこともあるし。味付けに関する評価なら、彼らにとってもプラスになると思うんだよね」
「美味しいけど、もっと辛くない方がいいとかソースのバリエーションがあったら良かったとかの方が良さそうだね」
 フィンが、それなら言いやすいと微笑を浮かべる。
 料理をするフィンからすれば、その一言が嘘であっても悲しく思ってしまうのかもしれない。
「食べ易さも言ってもいいかもしれないな。客層が幅広いようだし」
 秀はそう言いながら、全てのお好み焼きとタコスを全員がシェア出来るよう食べ易く一口大へ分け揃えている。
「家族連れはないみたいだけど、女性客も多いみたいですしね。その辺りの気遣いも大事かな」
 海十が、周囲を見回し呟く。
 食べる人への気遣いが感じられたら、それは嬉しい。
 だから、フィンの料理は───
(って、今はそこじゃない)
 海十が考えを掻き消すように頭を勢い良く振る。
「それなら、言うのは課題点ってことで。味自体は思った通りのことを正直に。で、最終的に勧めようぜ。認め合ってる互いが切磋琢磨出来るなら、勝敗より大きいし」
「賛成! スポーツの試合で互いを認め合った握手に似てるな!」
 ヴェルトールの意見へセイリューが同意する。
 ここで秀による切り分けが完了し、主の彼らもいいタイミングで到着した。
「泣いても笑ってもこの勝負で全てつけるぞ!」
「望む所だ! お前のが美味かったとしても俺の方が上だと証明する!」
 ガイに反論するお好み焼き屋台の主、マイト。
 火花散る彼らに周囲が苦笑しているが、ウィンクルム達はそれぞれ食べ始めた。

●楽しい試食タイム
「海の幸の味はウマ過ぎるからな。海鮮をリスペクトしてる。勿論お肉も大好きだけど!」
 セイリューはそう言いながら、まずはシーフードタコスをぱくり。
 シーフードというと、つい、生を想像しがちだが、生ではない。
 ボイルしたエビ、ホタテ、イカが野菜と共に楽しめる一品だ。
 秀の切り分け方が良かったのか、具のバランスも良い。
「そういや、シーフード系のタコスってこれだけ?」
「鮮度の問題もあるのがネックだな。白身魚のフライなんかは油の問題もあるし」
「季節柄、そこは大変そうだね」
 セイリューが尋ねてみると、ガイは軽く肩を竦める。
 お好み焼き以上に中の具のバリエーションは豊富だが、屋台である為に制限もあるようだ。
 ラキアは、種類を絞っていることに理解を示す。
「個人的には、甘辛と辛口の中間もほしいかな。辛いと感じる範囲は人によって違うと思うし」
「激辛とかあってもいいだろうしな。やっぱ、ソースも大事だろうし」
 ラキアが意見しつつ、セイリューはエビ玉を試食。
(セイリューはお好み焼きが好きなんだよね)
 多分お好み焼きを選ぶだろうなと思いつつ、ラキアは笑みを零す。
 聞けるであろう力説が、今からちょっと楽しみ。
「お好み焼きも具のミックスなんかあったらいいかもって思うぜ。両方楽しめるし」
「女性向けにチーズがあったりすると、バリエーションあるかもしれないね」
「なるほど。チーズなら何とかなるかもしれないな」
 マイトに意見しつつ、セイリューとラキアは和気藹々、取り分けられたお好み焼きとタコスを食べにかかる。
「ところで、そっちはどうだ?」
「辛口だから、ちょっと感想が聞きたいな」
「俺は辛いとは感じないかな」
 セイリューとラキアが話を振った先は、アキとヴェルトールだ。
 こちらは豚肉のタコスと豚玉を先に食べ、同じ食材ならではの比較に入っているらしい。
 アキの返答に続き、ヴェルトールも「俺も大丈夫だと思うけどなぁ」と続く。
 が、ここはやはり甘いものが好きなイグニスの意見を聞いておきたい。
 ラキアは、「いただきますー!」の笑顔で食べていたイグニスへ顔を向けた。
「私も大丈夫だと思いますよ!」
「それなら、良かった」
 イグニスからも言われ、ラキアは辛口ソースの豚肉のタコスを口に運ぶ。
 こちらは複数の部位の豚肉と玉ねぎ、香菜のものだ。
「同じ豚肉のものだが、使用している部位が違うから、印象がかなり違う」
「食感も違うしな。タコスの方は複数楽しめる感じで、お好み焼きの方はひとつの味をしっかり楽しむ感じがする」
 部位によっては見た目がよろしくないらしく、その点については色々配慮がされているらしい。
 臭み対策もされているそうだが、どれがどの部位かを聞くのは、屋台には向いていない。
 お好み焼きの方は味の予想がつく分、楽しみという点では譲ってしまうだろう。(その安定こそが強みだが)
 色々楽しむことが出来る強みと確実さがある強み。
 同じ美味でも違うとアキとヴェルトールは共通の見解を持つ。
「それでも、全く予想がつかない程ではないかな。食べたことがない部位しかないということはないし」
「そうすると、サボテンのタコスなんかは意外性なのかもな」
「案外サラダ感覚だな。ワカモレ選んだのもあるだろうが」
 アキとヴェルトールの視線に気づいた秀は、自身が今食べているサボテンのタコスについてそう説明した。
 サボテンと言うとどうしても棘のある姿を思い浮かべがちだが、食べられるものもあるそうで、タコス以外にもステーキやハンバーガー、果てはアイスクリームなんかもあったりするのだとか。
「秀様、流石お詳しいですっ!」
「知識としての範囲だから、店のメニューの予定はないがな」
 イグニスが目をきらきらさせると、遅い思春期を迎えている秀はむず痒そうに頭の後ろをかいた。
「サボテンのアイスか。ちょっと食べてみたいかも。ね?」
「ね? じゃない」
 フィンが話を振ると、海十は真っ赤な顔で睨んだ。

 さて、ここで海十が真っ赤な顔の理由について話そう。
 アキとヴェルトールが豚肉とタコスと豚玉に思いを馳せている間、海十とフィンはそれぞれ自分が選んだタコスとお好み焼きを食べていた。
「俺はちょうどいい辛さだけど、ラキアみたいに得意じゃない人が頼むのは勇気がいるから、目安が分かるといいかもしれないな」
「辛さの目安かぁ。それならお手軽に出来そうだよね」
 牛肉の柔らかさと辛口のソースのバランスを楽しんでいる様子の海十を微笑ましく見ながらフィンが言うと、ガイはなるほどと頷く。
(口の中で蕩けそう。それに、皮も拘ってるのかな、凄く美味しい)
 その海十の目の前でフィンが豚玉を食べている。
「結構手間かけてるよね、これ。ぱっと見分からないけど、手が込んでる」
「分かってくれるか!」
 火の通り具合、ソース、生地と具のバランス。
 屋台であるのに、見た目以上だ。
 フィンが分かるのは、料理をしているからだが。
(外はカリッとして、中はふわっとしてる。海十にも食べて貰いたいな)
 そこで、2人の目が合う。
「タコス、食べたら?」
「俺はこっちの方がいいな」
 海十に自身が食べていた牛肉のタコスを勧められるが、フィンは新たに取り分けず、まだ皿に残っていた海十の分を食べた。
「こっちも手が込んでるね。2人共腕がいいなぁ」
 フィンが、「良かったな」としか言えず視線を泳がせる海十を見てにんまり笑う。
 その笑みで、周囲を妙に意識した海十が真っ赤になったという訳だ。

「? 海十様、顔が真っ赤ですね! お暑いのでしょうか!」
「……あー、ちょっと別の方向を見ててやれ」
 見ていなかった為に事態を把握していないイグニスに対し、秀は見ていた為、海十の希望をそっと伝えてやる。
「よく分かりませんけど、フィン様がいらっしゃるなら安心ですよね。そういえば、このモダン焼、麺が具なんですね」
「そうだな。麺を別にするタイプのお好み焼きもあるようだが、作り方のルーツが違うらしい」
「お好み焼きにもルーツなんて物があるのか?」
 秀とイグニスの会話に、イカ玉を食べていたセイリューが加わる。
 このモダン焼には豚肉が入っているが、彼的にはイカバージョンも欲しいらしい。
「ああ。そっちは薄い生地に野菜と麺を載せる。その上にまた薄い生地載せてひっくり返すらしい」
「家でやるのにはあまり向いてないよね」
 秀に続き、ラキアが苦笑する。
 料理の腕に関しては秀が群を抜いている為、ガイとマイトも彼の知識や経験から来る話には驚くばかりのようだ。
「鉄板で豪快にやるのが向いてそうだな」
「そっちのルーツのも機会があったら、食べてみたいな。食べ比べしても面白そうだし」
「お好み焼きの食べ比べか。ルーツの違いを実感するのもいいかも」
 アキとヴェルトールの会話へフィンが加わる。
 海十の顔は、ますます真っ赤になっていた。
「……確信犯」
 アキと秀がぼそっと呟く。
 見ないでやってと言われた指示を忠実に守ったイグニスはセイリューと共にイカ焼きそばがあるのだから、モダン焼にバリエーションという話をしていたし、ラキアとヴェルトールはタコスのソースの辛さについて話をしていたこともあり、その瞬間は見ていなかった。
 が、アキと秀は目に入っていたので言うと。
 フィンは、海十に「あーん」をしていた訳である。
「恋人同士なら、いいんじゃないか?」
「オレガイタタマレマセン」
 アキが声を掛けると、海十は真っ赤な顔でそう言った。

(ふ、2人きりならともかく、こんな所であんなことを堂々としたから、み、見られた!)
 けれど、しゅんとしたフィンが「恋人っぽいことがしたくて」と言うと、海十は弱い。
 嫌な訳じゃない。
 ただ、恥ずかしいだけで。(年頃の心理)
 あーんに応じて、美味しいと言った時に嬉しそうに笑ったからいいけど!
 でも、見られた。
 生地もソースも美味しくて、豚肉の焼き加減も最高だったけど!
 でも、見られた。

「……強く生きろ」
 秀が何故か、海十の肩に手を置いて諭した。
 海十は、その言葉で色々理解する。
 男達は、何だかんだで相手に甘い同士という事実に行き着いたのだ!

●それぞれの投票審議
「さて、投票はどうしたものかね」
「……投票?」
 食べ終わる頃、秀がイグニスへ話を向けると、イグニスはその言葉を反芻し、はっとなった。
「そういえば、そういうお話でしたっけ」
「……お前完全に趣旨忘れてたな?」
 秀が、やれやれと溜息をつく。
 両方美味しかった。
 それが、2人の共通見解だ。
 それだけに判断が難しい。
「んーんー、サボテン珍しかった……」
「それなら、俺らはタコスにしておくか」
 イグニスの言葉で、秀はタコスへの票を決定。
 票は投じても、どちらも美味しいなら店仕舞いなどさせるつもりもないけど。

「正直凄く迷う……」
「俺も迷うな。けど、海十が推すものでいいよ」
 立ち直った海十へフィンがそう告げる。
「海十が好きなものは、俺も好きでありたいし」
「……家で、言おう」
 立ち直ったばかりの一撃に顔を赤くさせつつ、海十は譲歩ラインを提示する。
 この後、海十は「お好み焼きかな」と小さく呟いた。

「セイリューはお好み焼きだよね」
「どうして分かったんだ?」
 ラキアがくすりと笑うと、セイリューはビックリした表情を浮かべた。
「分かるよ。セイリューのことだもの」
 味はどちらも美味しい。
 迷ってしまう所だけど、でも───
「お好み焼きは本来1人1枚で食べるものだと思うが、具の豊富さでタコスに譲る分分け合って食べることが出来るのが利点だ。お好み焼きだって、タコス程便利じゃないかもしれないが、携帯出来るし……お好み焼き!」
 ラキアは予想していた力説に笑みを零す。
 力説姿が眩しいから、それに免じてお好み焼きにしよう。

「両方美味しいで手打ちにするのが1番だよな」
 アキは、どうするかと眉を寄せる。
 誰もがいい結果になるようにするのが理想なのだが。
「どっちが上と競う以外は、向上心あるしなぁ」
「その競うのも意地の張り合い入っていて、他人事じゃないというか」
「バカ言え。セイジはともかく、俺はそこまで意地は張らない」
「そりゃ逆だろ。ランスはともかく、俺は事実は認める主義で……」
 ちょっと待て。
 今、意地張り合った。
 互いに気づいた事実に、ちょっと笑う。

 全ての答えが、揃った。

●僕達の一票は重かった
 ウィンクルム達がそれぞれ、票を告げる。
 お好み焼きリードでアキとヴェルトールの番となる。
 が。
「比べるものじゃないから、どっちも」
「両方だな。美味かったし」
「それじゃ勝負に……」
 アキとヴェルトールの言葉にガイとマイトが詰め寄ろうとした時だ。
「俺はタコスに票は投じたが、負けたからと言って店仕舞いする必要はないと言うつもりだったぜ?」
 秀が、事も無げにそう言った。
「あ、それは俺も思った。皆に評判いい屋台が潰れたら、悲しいし」
「ジャンル違うから、比べるのも難しいしね」
「けど……!」
「互いに何を言っているか知らないのか?」
 セイリューとラキアが同意するように口を出すと、納得いかないガイとマイトは食い下がってきた。
 が、海十が本当は認め合ってるのだろうと指摘する。
「双方、お互いの料理を改めて食べてはどうだろう?」
「案外、前とは違う発見があるかもしれないぜ?」
「それなら、食べさせあいっこした方が仲直りするかも」
 アキとヴェルトールが言葉に詰まる2人へ説得にかかると、フィンがぶちかます。
 海十が、「ちょっと待て」と制止する、それよりも早く揃った返答があった。
「いつもやってるわ!!」
 間。
「……職場で、周囲を巻き込んだ痴話喧嘩は、どうかと思うぜ……」
 秀がやっとの思いで言葉を紡いだ、その瞬間。
「では、いつでもどこでも2人は勝負してて、勝っても負けても新作引っ提げてリベンジしたりされたりする間柄なんですね! お熱いです!」
「……お前は本当に大した発想力だな……」
 秀はそう言ったが、イグニスのこの一言が決定打となった。
 勝っても負けても、より高みを目指せばいい。
 ある種無茶振りだったのだが、この2人にマッチしたのだからよしとしよう。

「勝負が終わればノーサイドだろ。打ち上げの続きと行くか」
 屋台の皆から拍手喝采のイグニスを見つつ、秀が皆へ提案する。
 票の重さを最終的に破壊した騎士様には、明日にでもフレンチトーストをご馳走するとしよう。



依頼結果:成功
MVP
名前:初瀬=秀
呼び名:秀様
  名前:イグニス=アルデバラン
呼び名:イグニス

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 真名木風由
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月19日
出発日 07月25日 00:00
予定納品日 08月04日

参加者

会議室

  • お、初瀬さん達、お久しぶりです!
    海十さんたちも、今回もヨロシク頼むぜ。

    ほぼ事後承諾っぽいけど、オレ達もシェアOKて皆で食べ比べる事にした。
    オレがエビ玉でラキアがシーフードタコスだが
    被ったら他の物で、という事でプランは提出できたぜ。
    皆で美味しく楽しい時間が過ごせるといいな!

  • [9]蒼崎 海十

    2015/07/24-22:23 

    フィン:
    けど、直前まで掲示板は見るようにするから、
    何かあれば遠慮なく言ってね!

  • [8]蒼崎 海十

    2015/07/24-22:22 

  • [7]蒼崎 海十

    2015/07/24-22:22 

    やった!
    初瀬さんとイグニスさん、是非シェアしましょう!(ぐっ

    フィン:
    やっぱり色々味わいたいもんね♪

  • [6]初瀬=秀

    2015/07/24-11:01 

    初瀬とイグニスだ。よろしくな。

    まあせっかくだし色々種類食べたいところだよな。
    良ければうちもシェアに便乗させてもらいたい。

    今のところ、
    タコス:サボテンのタコス(ワカモレ)
    お好み焼き:モダン焼き
    の予定。被ったら変更できるんで気になるものがあったら言ってくれ。

  • [5]蒼崎 海十

    2015/07/24-01:09 

    フィン:
    一つ、忘れてた!
    連投ごめんね。

    タコスのソースは、「辛口」を選択する予定だよ。

  • [4]蒼崎 海十

    2015/07/24-01:05 

    あらためまして、蒼崎海十です。パートナーはフィン。
    皆様、宜しくお願いいたします。

    「タコス1種、お好み焼き1種を神人、精霊で分け合って、他のウィンクルム達と味の共有OK」
    とのことなので、俺とフィンは、皆さんと味の共有をする方向でプランを考えてます。
    味を共有(料理を分け合う)のなら、皆さんと違うメニューを頼んだ方がよいのかなと思いましたので、
    一応、食べる予定のものを宣言させて貰いますね!

    タコスは「牛肉のタコス」
    お好み焼きは「豚玉」
    で、今のところ考えてます。

    もし、被りがあれば変更しますので、お気軽に仰ってください。

    よろしくお願いいたします!

  • [3]アキ・セイジ

    2015/07/23-00:08 

  • [2]蒼崎 海十

    2015/07/23-00:05 


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