青き光は幻想を魅せる(木乃 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●暗き水を泳ぐ光り
日を増すごとに気温が上昇し続けうっすらと汗が肌に浮き始める今日この頃。

「みなさーん、ナイトアクアリウムに興味ありますかー?」
ミラクル・トラベル・カンパニーから新しいツアー企画が出たらしく
今日はMTC社員が本部へ企画紹介にやってきていた。

「場所はパシオン・シーにあるエル・マル水族館なのですけど……な・ん・と!
 ナイトタイムに特別に開放して頂くことになりまして」
夜の水族館なんて神秘的だと思いませんかー!?と社員は一人盛り上がり出す。

「あ、と言っても流石にイルカショーとかアトラクションはやらないですよー。
 期待してた皆さんはすみませんねー……」
そう言いつつ社員はブリーフケースからフリップをいくつか取り出した。

フリップの内容を見ると見て回れるエリアは以下になるそうだ。

***

★イルカエリア
昼のアトラクションショーとは違いゆったりと過ごしています。
人懐っこい彼らは手を振れば応えてくれるかも?
仲良しイルカトリオに会いに行ってみよう!

★クラゲエリア
ブラックライトを当てられて青く輝く姿は神秘的!
その他、ピンクや緑などの蛍光色に光る種類も!
ふわふわと泳ぐ姿はまさに幻想的と言えるでしょう!

★ペンギンエリア
パシオン・シー近海に生息しているナンゴクペンギン。
先日、待望の赤ちゃんペンギンが生まれて昼間も人気のエリア!
ふわふわもこもこの赤ちゃんの微笑ましい光景が見られますよ♪

★熱帯魚エリア
カクレクマノミ、エンゼルフィッシュなどの色鮮やかな熱帯魚が
珊瑚礁の合間を縫うように泳ぐ光景は水中のネオン街!?
アクアリウムに広がる極彩色の絶景を見よ!

★深海魚エリア
深海に棲む未知の生態を秘めた摩訶不思議な魚たち。
薄暗い水族館の中で見る様相は深海そのまま!?
変わった姿に愛嬌のある深海魚たちの姿を見てませんか?

★巨大水槽エリア
亀やマンタが悠々と泳ぐ姿が美しい巨大水槽。
水槽内を通る全方位パノラマトンネルが人魚気分を味あわせてくれます。
ジンベエサメのジンバくんも待ってます☆

***

「こんな感じで用意しておりまーす、カメラなどのフラッシュ撮影はご遠慮下さいねー?」
社員はにっこり笑みを浮かべながら紹介を締めると
最後にこっそり教えたい内容なのかあなたを呼び寄せるとヒソヒソと声を掛けてきた。

「この水族館ね……ちょっと不思議な噂がありまして――お互いの好きなエリアを手を繋いで巡るとずーっと離れないそうなんですよー?
 むふふ、ちょっとロマンチックなお話ですよね?パートナーさんとなんとか手を握って回れたらいいですね」
意味ありげな笑みを浮かべて社員はあなたの目を見つめた。

解説

入場料として1ウィンクルム500Jrの消費です。

目的:
夜の水族館へ遊びに行こう!

エル・マル水族館:
パシオン・シーにある水族館、海洋調査も行っており規模は中の上くらい。
見学する時間帯は19:00~22:30です、日帰りツアーですのでご注意ください。

蛍光テープの順路がありますが、
水槽内の青系のバックライト以外の照明がないので施設内は薄暗くなっております。
入場者は参加したウィンクルムしかおりませんが、警備員や職員も巡回しておりますので無人ではありません。

行けるエリアは以下の通りです。
・イルカ
3匹のイルカがいます。
昼間の元気な姿と違いゆったりと過ごしています。

・クラゲ
丸型の水槽内にぷかぷか。
発光性のある子もいるので幻想的な空間になるでしょう。

・ペンギン
ナンゴクペンギンというペンギンがいます。
生まれたばかりのもこもこ赤ちゃんペンギンも見られます。

・熱帯魚
珊瑚礁の中を多数の熱帯魚が遊泳しています。
オープニング内以外の魚も多数おります。

・深海魚
深海に棲むひょうきんな魚がいます。
よく見ると愛嬌がある子が揃ってるかも?

・巨大水槽
ガラストンネルが横断する通路を通って見られます。
パシオン・シー近海に生息する魚が多いようです。

お願い:
上記エリアのうち『1つだけ』選んでください。
《行きたいけど、どこに行こうか迷う!》という方は
6面ダイスを振って参考にしても良いかと思います。

複数のエリアを書かれていた場合はマスタリング対象となります。
あらかじめご了承ください。

噂について:
強制ではありません。
社員がどこからか仕入れてきた噂ですので、信じるも信じないもあなた次第……

注意事項:
・夜時間につき売店、アトラクションは行っておりません
・フラッシュ撮影は魚が驚いてしまうのでお控えください
・公序良俗、マナーを守って楽しくでゅえる (ドンッ☆)

ゲームマスターより

木乃です、ゆっくり1本ずつ公開していくスタイル。

今回は夜の水族館へ遊びに行くエピソードです!
ナイトアクアリウムは実際にも開催されている場所がいくつかありますので
イメージが沸かない方はぜひ画像検索してみてください。

エル・マル水族館では青系の照明を使用するようです。

なにやら噂があるようですが、信じるも信じないもあなた次第です…
もちろん強制ではございませんので噂について一切触れなくても問題ありません!

それでは皆様のご参加をお待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ハティ(ブリンド)

  ・巨大水槽
誘うのはいつも自分からで、それが普通になっていたから
出だしからいつもと勝手の違う日
落ち着かない心地になるかと思えば、この場に二人というだけで不思議と落ち着いた
手を引かれて振り返る
青が映り込む銀髪がきれいだと思う
噂…?知っていて手を繋いだのかと気付くが
周りに配慮する対象もない今勘違いしてしまいそうで
気配を求めて魚たちを眺め
そうか、とだけ返し繋いだ手はそのままに
俺は別にジンクスが好きってわけじゃない
アンタといると落ち着いたり、落ち着かなかったり
場所も関係してるのかもしれない
そういうものに頼りたくなることはあったけど
なあ、ここはアンタも好きなエリアってことでいいんだよな
もう少し、見てたい





瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
  (これがナイトアクアリウム、想像以上に綺麗だ)
例えるなら、深海の芸術だと思った。
同時にそこからの光と順路の蛍光テープを見て、
社員が言った噂を思い出す。
(まさか、な)

そんな噂を気にしつつも、
珊瑚にどこへ行くか声をかける前に左手が掴まれた。
突然の事に一瞬、戸惑いを覚えながらも
気を取り直して珊瑚と熱帯魚のエリアへ行く。

暫く青白い光の下で泳ぐ極彩の魚達に見とれていると、
左手から握られる感触が伝わってきた。
横を向くと、珊瑚が笑みを浮かべて見つめていた。
同じように見つめ返す。
余所見して悪いなと謝る代わりに、手を握り返した。

「今日は特別に」
深呼吸した後、水槽に映る珊瑚に向かって言う。
「家に帰るまで離さない」



鳥飼(鴉)
  ナイトアクアリウムは初めてで、楽しみです。

ほとんど貸切状態なんですね。
夜だから音が響きそうですし、静かに観るようにします。
「暗いですね。鴉さん、手を握りませんか」(噂は知らないし、他意は無い

行きたいところがいっぱいで悩みます。
そうだ。「鴉さんは何処が良いですか」
なら、そこにしましょう。
僕は全部行きたいですから、何処を選んでも楽しめます。
それに、「鴉さんの選んだところで、一緒に楽しみたいです」

鮮やかですね。
「昼とは違った感じで素敵です」
一緒に来れて嬉しいです。(手を少し強く握り笑顔
「鴉さんから誘ってくれるの、初めてですね」

僕のことを考えて、夜が苦手なのに誘ってくれるなんて。

やっぱり、嬉しいです。



明智珠樹(千亞)
 
★クラゲ

ふ、ふふ
珍しく千亞さんからデートに誘われました
勝負パンツを履きましょう…!

水族館にて
「おや、ロマンティックですね、ふふ」
だが千亞の兄は海難事故で行方不明なことを思い出す

隣の千亞はいつも通りに振舞っている…が、どこか切なげな表情に見え

「クラゲですか。初めて言われました」
黙って話を聞き。
視線はクラゲのまま
「…千亞さん、手を繋ぎましょう」

「ふふ、信じたいですね。
 ですが、それ以上に千亞さんと手を繋いで歩きたい気分なだけです。
 ここならほの暗いですし…
 安心してください、毒のないクラゲもいますよ」
千亞に視線を合わせ、微笑み。

「千亞さんが私の毒牙にかかりたいなら喜んで、ですが。ふふ…!」
ド変態


新月・やよい(バルト)
  ●深海魚

僕から誘ってのお出かけ

どちらの順路を行こうと言えば意見が分かれ
つくづく僕達は好みが逆な気がします
そこが面白いところですけど

しかも完全に迷子ですね
深海魚エリア…
何処間違えたんでしょう…ね、バルト?
さっきから喋らないなぁって、不安になる
お喋り嫌いでしたでしょうか?

僕は君と喋るの、好きですよ
ふわり笑って
話してわかりあうこともありますし
僕も大人ですからね

ここの魚だって素敵な子もいるかもしれませんよ!
ほら、この水槽の魚の名前!ヒメってなんとも可愛い…
言った瞬間、グロい魚と目が合って絶叫

べ、別に怖くは…恥ずかしいだけです
言いつつ言葉に甘え
あ、本当だ。光って綺麗です
骨と皮にしか見えませんが?!



●幻想への誘い
「皆様、御足労頂き誠にありがとうございまーす☆」
間延びした口調でミラクルトラベルカンパニーの社員は参加者の10名に明るい笑みを浮かべる。
「何かありましたらお近くの警備員や職員へお声がけ下さーい、移動中は足元にお気をつけくださいねー?
 ……それでは、海中に浮かぶ幻想世界へご招待します」
社員は簡単な注意事項を伝えると水族館の扉に手をかけ押し開く。

昼間は大勢の観光客で賑わう水族館が、夜の静寂を抱いてウィンクルム達を招き入れた。

●グラスキャット
「ほとんど貸切状態なんですね」
鳥飼はポツリと呟きながら薄暗い館内をまじまじと眺める。
無人ではないとは言え、人気はほとんどなく呟いた声すらも大きく響いているような気がする。
鳥飼は静かに観ようと声を潜めることにした。
「……」
一方、鴉は夜の闇に抗おうと押し黙っていた。
誘ったのは自分だというのに水族館に入ってから鳥飼に声をかけられずにいる。
(夜は好みませんが……主殿が好みそうだと思い提案したのですし)
どうにかせねば、と鴉が静かに頭を抱えていると鳥飼は鴉に手を差し出した。
「鴉さん、手を繋ぎませんか?」
鴉の張り付いた笑みがピクッと一瞬強張る。
エル・マル水族館には互いの好むエリアで手を繋ぐと、永遠に離れることがないと噂されている。
しかし、それを鳥飼は聴いていないはずなのに……何故?
「照明もほとんどなくて暗いですし、嫌でしたか?」
ああ、そういうことか。
鴉は鳥飼が純粋に心配してくれていたことに気づくと僅かに口角が上がる。
「構いませんよ」
手を繋ぐのはいつぶりだろうか、そう思いながら鴉は鳥飼の細く白い手を握った。

「それではどこへ行きましょうか」
掌から伝わる温もりに安堵しつつ鴉は主に要望を問いかけた。
鳥飼は鴉の問いかけに少しだけ考え込むと、ふと思いついたように鴉を見つめ直す。
「鴉さんはどこがいいですか?僕は正直なところ全部行きたいのですが……」
今日は鴉さんの選んだところで一緒に楽しみたい、そう言って鳥飼はふんわりと穏やかな笑みを浮かべる。
鴉は鳥飼の返答に僅かながら目を見開いた。
(私の……)
「……強いて言えば、熱帯魚でしょうか」
鴉は思考を巡らせると夜とは無縁そうな熱帯魚エリアに誘った、少しでも夜の気配を遠ざけたかった。
そんな鴉の本音を察してか、鳥飼は視線を巡らせて熱帯魚エリアへの順路を手早く見つける。
「あちらですね。では、行きましょう」
少しでも君を護りたいから……鳥飼は柔らかな笑みに自らの誓いをこめて熱帯魚エリアへ鴉の手を引いて行く。

***
「わぁ……これは、想像以上です」
鳥飼は熱帯魚エリアの様相に感嘆の息を漏らす。
目の前には多角形に象ったオブジェ風の水槽や、壁に埋め込まれた巨大な水槽からコバルトブルーの光が溢れ
光の中には鮮やかな桃色や朱色の珊瑚や、流木や石などが置かれている。
その周りを黄色や赤、白、桃色、橙などの色鮮やかな魚が泳いでいて、変化する立体芸術のようだ。

「昼とは違った感じで素敵です……この種類なんて、体が透けてて面白いですよ」
鳥飼はいつもより気分が高揚しているのか、鴉と手を繋いだまま水槽に近づいていく。
水槽の中には頭部以外が透明で、骨が透けて見える変わった種類の熱帯魚が底の辺りを静かに泳いでいる。
透けた魚体からコバルトブルーの光が通り、まるで魚が光っているようにも見えた。
「ええ、きれいですね。これはグラスキャットという昼行性の熱帯魚のようです」
傍らに置かれた解説を見つけた鴉は鳥飼に熱帯魚の名前を伝えた。
「なるほど……ふふ。そういえば鴉さんが誘ってくれるの、初めてですね」
少女のように可憐な笑みを浮かべる鳥飼は喜びを伝えようと鴉の手を少し強く握る。
鴉は握られた手を一瞥するとひと呼吸置いてグラスキャットの水槽を見つめ直す。
「主殿が好きそうだと思った。ただ、それだけです」
素っ気なく呟かれた鴉の言葉、それでも鳥飼の心を満たすには充分だった。

(ずっと離れない、でしたか)
契約をしたとはいえ、主殿の傍らにいても良いものか。
鴉の胸中にほの暗い感情が滲み出る、それと同時に――
(なのに何故、私はこの手を……)
鴉の胸に経験したことのない感情が沸き起こる。

●深海のヒメ
「つくづく僕達は好みが逆な気がします」
そこが面白いところですけど、と新月・やよいは付け足す。
傍らに立つ金毛の狼の耳と尾をもつ青年は僅かに眉を顰めていた。
「どちらの順路を行こうと言えば意見が分かれ、気づけば深海魚エリア。何処で間違えたんでしょう……ね、バルト?」
迷子になってしまったことすらツアーの醍醐味だと言う風な、肯定的に捉える新月は不思議そうにバルトを見上げた。
「ん?……あ、ワリィ」
バルトからは曖昧な返事を返され、新月も不安を隠せなかった。
「さっきからずっと静かにされていますが、お喋りは嫌いでしたか?」
申し訳なさそうに見上げる新月にバルトは僅かに目を見開いた。
「違う、話が嫌いなわけじゃない……その、新月があまりに楽しそうにしてたから」
邪魔したら悪いと思って……と、バルトは気まずそうに視線を逸らせると
新月は予想外の返答に目を丸くし、すぐに安堵した柔和な笑みを浮かべる。
「僕は君と喋るの、好きですよ。話して分かり合うこともありますし」
僕も大人ですからね!と新月は胸を張った。
「……話しても、いいのか」
「はい、それにここの魚だって素敵な子が居るかもしれませんよ!」
新月の笑みにバルトは少し戸惑いながら自分の懸念が杞憂であったことに胸を撫で下ろす。
自分との会話を好ましいと楽しげに言われたことも、少し嬉しい。
(すれ違いは気にしていなかったんだな)
バルトの心中を知ってか知らずか、新月は深海魚エリアを見渡して新たな話題を探し始める。

深海と銘打つだけあって、他のエリアよりも光度が低いダークブルーの照明で照らされており
薄明かりの中を泳ぐ深海魚の姿もまた、異様さの中に生命の神秘を感じさせた。
それぞれが個別の水槽の中でゆったりと過ごす様子は、時の流れを穏やかなものに感じさせる。

「あ!凄い魚がいますよ、リガレクスというのですねぇ」
水槽の中には全身が銀白色で、薄灰色の線条が側線の上下に互い違いに並んだ長細い魚が静かに泳いでいた。
鮮やかな紅色のヒレを持つ姿は深海の神秘性を宿しているように思う。
見たことのない魚の姿に目を輝かせる新月は新しい玩具を見つけた子供のように胸を高鳴らせていく。
(大人どこいった、ガキ丸出しだろ)
舌の根も乾かぬうちに賑やかに楽しむ新月にバルトは内心呆れたものの、
心の底から楽しむ様子は微笑ましく思う。
バルトも水槽に寄っていき隙間から覗き込むと、暗い青の中に銀色の竜のような魚が見えた。
「他にどんな子が居るのでしょう……!」
新月は隣で覗き込むバルトに目を輝かせたまま顔を見る、すっかり期待に胸をふくらませていたようで
隣の水槽に目を向けると早足で覗き込みに行く。
「あ、こっちの水槽の魚!名前がヒメってなんとも可愛い」
そう言いながら新月は水槽を覗き込んだ瞬間……ぎょろりと、ビー玉のように大きな目玉が10個。
「ぎゃあああああっ!?」
新月は後退って尻餅をついた、顔は僅かに青ざめ肩が小さく震えている。
「……ぷっ、くくく!!」
バルトも同じ水槽を覗き込むと、大きな目玉の小さな魚が5匹こちらを見ていることに気づき
これに驚いたのかと噴き出して笑いを堪えようとする。
「もう!笑わないでください」
新月が恥ずかしそうに頬を染めて見つめるとバルトはそっと手を差し出した。
「拗ねるな、腰が抜けたなら手を貸す。怖かったらこのまま掴んでていいから」
差し出された手をじーと見つめると新月はゆっくりと掴んで、そのまま引き起こしてもらう。
ぐいっと力強く手を引かれるとバルトの頭より低い位置に再び視線が戻る。
「見ろよ、あっちの水槽は綺麗だろ……美味しそうだよな」
「あ、本当だ。光ってて綺麗……って骨と皮しか見えませんが?!」

思わずノリツッコミを披露する新月が見たバルトの顔はおかしそうに笑みを浮かべていた。

●テトラ
「オ、オレ初めだから案内してほしいな、みたいな?」
瑪瑙 瑠璃は唐突に手を掴まれて振り返ると瑪瑙 珊瑚が握り締めていた。
驚いたように珊瑚はしどろもどろに視線を泳がせながら瑠璃に案内をして欲しいと頼んだ。
しかし瑠璃もここに来た事があるわけではない。
「自分も初めてだから案内は出来ないぞ?」
「え、あ、そのぉ……オレ迷子になりそうな気がするからさ、な!」
困った顔を見せる瑠璃に勢いでそのまま要望を押し通そうとする珊瑚は頼み込んだ。
瑠璃は首を傾げながらも手は振り払わずに目指すエリアの順路を確かめる。
「熱帯魚エリアはあっちか」
瑠璃は珊瑚の手を握ったまま蛍光テープの矢印に沿って歩みだした。
……ふと、今の自分達の状態に瑠璃は職員から聞いた噂を思い出す。
(まさか、な)
少し気にはなるものの、噂は噂。真偽を確かめる術はおそらく自分で証明するしかないだろう。

***

辿り着いた先に広がる淡く緑がかった鮮やかな青い光、
その中を彩るオブジェのような水槽の中を動的な彩りが揺らめき万華鏡のような不可思議な空間が形成されていた。
(これがナイトアクアリウム、想像以上に綺麗だ)
例えるなら海の芸術のような、まるで海の中に立っているような錯覚さえ覚える。
昼間は賑やかな印象を受ける水族館が夜の暗がりを得ただけで光も変わるのかと驚きを隠せなかった。
珊瑚も同じように目を見開いて驚いているが、キラキラと目を輝かせて口元には自然と笑みが浮かんでいる。
「スゲェなぁ……なっ、瑠璃?」
「え、ああ、そうだな」
言葉に出来ぬほど衝撃を受けていた瑠璃は珊瑚の言葉に遅れて返した。
「ホントはペンギンの方も気になってたけどさ、こっちに来てよかったって素直に思うぜ」
また行けるかもしれねぇしさ?と珊瑚はニカッと歯を見せて笑みを浮かべる。
瑠璃はそういえば珊瑚がどこに行きたかった聞いていなかったことを思い出し、少しだけ申し訳ない気持ちになった。
「……あ、あの水槽にいるやつ!なんか光ってねぇか?」
珊瑚は瑠璃の手を引いて多角形にかたどられていた立体型の水槽に近づいていく。
「瑠璃、これなんて言うんだ?」
「テトラというらしい。身体が光っているのではなく光を反射しているそうだ、数種が一緒に泳いでいるとある」
解説板を見つけた瑠璃は軽く目を通して珊瑚に伝えると、珊瑚はどんな種類が居るのかと探し始める。
共通して赤色の帯が腹部から伸び、薄いピンクやライトブルー、オレンジに色づいた小さな姿で水槽の中を静かに泳いでいる。

(似ているけど、違う)
瑠璃は水槽の中を見つめて薄く緑がかったテトラとライトブルーに色づいたテトラを見つける。
仲が良いのか合わせて泳ぐ二匹を……どことなく自分達に似ているように感じられた。
姿形は似ているのに、全く違う。
「……瑠璃?」
珊瑚の声にハッと意識を戻すと、瑠璃は珊瑚に視線を向ける。
気づけば繋いでいた手を珊瑚がギュッと力強く握りしめており、離れて迷ってしまわぬよう気にかけているように感じる。
瑠璃は安心させようと謝罪する代わりに強く握り返すと、珊瑚は少し恥ずかしげに笑みを浮かべる。
「オレ、気づいたんだけどさ……テトラってオレ達に似てるよな!」
見た目はそっくりなのに違うんだろ?と珊瑚は言いながら水槽を見つめ直した。
(同じ事を考えていたのか)
瑠璃はドキリとしたが顔には出さず、水槽を見つめ直すと小さく深呼吸。
「珊瑚」
「ん?」
改まったように名を呼ぶ瑠璃に珊瑚は水槽から視線を離さずに返事だけすると
「今日は特別に……このまま繋いでいるから」
耳には真剣味を帯びた瑠璃の声、表情は解らなかったが……きっと同じように真剣な顔をしているだろう。

「……うん」
(ゆたちく、やさ)
珊瑚はニヤついてしまう口元を隠しきれなかった。

●ブルージェリー
(ふふ、ふふふ……!)
明智珠樹はいつになく興奮していた。
千亞さんが私を水族館に誘ってくれるなんて!
今日は勝負パンツにふんどしを締めようかブーメランパンツでキめようか。
悩んだ末に両方着用してきた気合の入り用である。なにを勝負する気なのだろうか。
「なにニヤニヤしてるの?」
さすがに千亞も珠樹の普段以上に盛り上がっているように感じ、渋い顔で見つめる。
「ふふ、なんでもないですよ……ふふふ」
「……ならいいけど」
千亞は短く返すと口を閉ざして足早に薄暗い通路を抜けていく。
珠樹も後を追うように速度を速めて千亞の背中を追いかけた。

***

「おや、ロマンティックですね、ふふ」
クラゲエリアは青というより青緑に近いターコイズブルーの光が溢れており
水晶玉のような丸い水槽が並べられ、その中をふわふわと気持ちよさそうにクラゲが浮かんでいる。
部屋の中央にある巨大な球体水槽には青、赤紫、白、緑のカラフルな小さいクラゲが浮き沈みしてスノードームのようだ。
「そ、そうだね」
千亞はいつも通りの調子で返そうとするが……声は震えていた。
ギュッと握り拳を作ると千亞は中央の球体水槽へとゆっくり近づいていく。
(千亞さん?)
珠樹はすぐに千亞の隣に追い付き球体の水槽を目の前に立ち止まった。
大きさは3mくらいだろうか、見上げた先にもクラゲが浮かんでおり光の玉のようにも見える。
先程から様子がおかしい千亞に、珠樹は横目で表情を伺った。
いつもの強気な瞳は細められ悲しみが映り、凛々しさを感じさせる端正な顔立ちは哀愁を帯びていた。
(海難事故を、思い出してしまったのでしょうか)
千亞には海難事故により生死不明となった兄がいる、どこかで無事かもしれないし海の底にいるかもしれない。
思い出した珠樹の胸中は複雑な感情が芽生える。
「珠樹」
呟くように千亞は名を呼んだ。
「……おまえ、クラゲに似てるよな。ふよふよして半透明で、得体が知れないと思えば
こんな風に蛍光色だったり、綺麗に光ったり……毒を刺すんじゃ、って思うこともあるけど」
力なく儚い笑みを浮かべた千亞の赤い瞳が揺れる。
「クラゲですか、初めて言われました」
珠樹は品の良い微笑を保ちながら言葉を返すと……静寂が残る。
コポコポとくぐもった水音だけがその場に流れた。

「千亞さん、手を繋ぎましょう」
先に沈黙を破った珠樹は水槽を見つめたまま千亞にそっと手を差し出す。
「へ!?おまえ、噂を信じてるのか?」
千亞はあくまで噂だと珠樹に伝えていたが、実行すると思わず驚いて珠樹を見やった。
「ふふ、信じたいですね。ですが、それ以上に千亞さんと手を繋いで歩きたい気分なだけです。
ここなら仄暗いですし……安心してください、毒のないクラゲもいますよ」
名前はド忘れしましたけれど、と穏やかな微笑を浮かべながら珠樹は千亞を見つめ返す。
千亞は一瞬、目頭が熱くなったがすぐに指で揉み和らげると珠樹の手に躊躇いがちに手を重ねた。
笑みを保ったまま珠樹は何も言わず千亞の細い指に自身の指を絡める。
互いに水槽へ目を向けると再び沈黙が訪れたが、先ほどの気まずい空気はない。
ここにいる、傍にいると手の温もりが安心を伝えてくる。
「珠樹、付き合ってくれて……ありがと」
千亞は珠樹を見ずに伝えた、笑顔の代わりに手を強く握った。
「ふふ、礼には及びませんよ……それに」
珠樹も水槽を見つめたまま言葉を返すと
「千亞さんが私の毒牙にかかりたいなら喜んで、ですよ。ふふ……!」
取って付けたようなド変態発言も加えて優雅に笑った。
「ふん、やれるもんならやってみろ」
ばーかばーかと千亞も付け加えて強気に返した。

(気なんて遣わなくてもいいのに)
心中には言葉と裏腹に感謝の念を込めて。

●ジンベエザメ
ハティは興味津々な様子で視線を巡らせていた。
というのも今回誘ったのは自分からではなく、ブリンドからだ。
出だしからいつもと勝手が違うことに少しだけ動揺していた、しかし緊張するどころか心は平穏を保っていて。
(二人きり、だからかな)
そんな風にぼんやり考えていると手を引かれた、見ると難しい顔をしているブリンドが手を握っている。
「テメーは迷子にでもなりてぇのか?」
辛辣な言葉を投げかけるブリンドの灰青髪には透明感のあるアイスブルーの光が差し込んでいる。
光の出る先を見ると水中を横断するように分厚いガラスのトンネルが通っていた、どうやら巨大水槽の近くまで来ていたらしい。
(冷たい色なのに、リンの髪に映り込むときれいだな)
もっと見ていたい。
漠然と思っているとブリンドもトンネルの存在に気づいて視線を向ける。
「ここ入るぞ」
グイ、とブリンドが強引に手を引けばハティも逆らわずに力強く引いていくブリンドの手に身を任せた。

トンネルの中に入ると上も下も水中がよく見え、魚達が間近に泳いでいく姿に不思議な感覚を覚える。
アイスブルーの光が周囲に溢れているおかげで巨大水槽の中は明るく感じられ、
人魚が居たとしたらこんな風景は日常なのだろう。半ばまで来た頃には海中に立っているような錯覚を覚え足が止まる。

「ああ、そういやここにもジンクスがあるみてーだぜ。おめーの好きそうなやつ」
ブリンドも足を止めたハティと並んで立ち、思い出したように口を開く。
「ジンクス……?」
俺は別にジンクスが好きな訳ではない、ハティは反論しようか考えたがそれ以上にブリンドの言葉の続きが気になる。
「手を繋いで互いの好きなエリアを巡るとずっと離れないっての……よくある噂だろ」
悪態を吐きながらブリンドはわざとらしく盛大に溜め息を吐いた。
(確かによくありそうな噂だ)
そう思ったと同時にハティは違和感を覚えた。
先に手を握ってきたのはブリンド、噂を教えてくれたのものブリンド。
迷子にならないように注意してからもブリンドはハティの手をずっと握っている。
(知っていて、繋いだのか)
ドキリとハティの胸を締め付けられるような感覚が走る。
今この場に限って人は居ない、配慮する対象もなく……勘違いをしてしまいそうで。
気配を求めて周囲に目を向けると巨大なジンベエザメがゆっくりと視界を通り過ぎていく。
「そうか」
他に言葉が見つからずハティは短く返した。
話を聞いたからか心地よいと感じるから、ブリンドの手は握ったまま。
(アンタといると落ち着いたり、落ち着かなかったり……)
もしかしたら場所も関係しているのかもしれないとハティは思う。

ハティが横目で見ると、ブリンドの白銀色の瞳と視線がぶつかった。
「ぼーっとしてんじゃねぇよ、行くぞ」
ブリンドは再びハティの手を引いてまっすぐ進み始める。
今度は無理やり手を引かれる感覚もなく、一歩後ろにつけるような手の引き方。
(噂とかジンクスとか……そういうものに頼りたくなることもあった、けど)
ハティは手を引いていくブリンドの背中に目を向けた。
「なあ」
「あん?」
返事をしてくれた、ブリンドの機嫌は悪くない。そう感じたハティは
「ここはアンタも好きなエリアってことでいいんだよな?」
確かめたかった問いを言葉にしてブリンドの背中に投げかける。
数歩歩いた後に、ブリンドは歩みを止めてハティを見た。
切れ長の瞼は僅かに驚きで見開いている。
「俺も気に入った。もう少し、見てたい」
控えめに伝えられた要望にブリンドは何も言わず、ゆっくりと歩き出した。

不器用な二人の様子をジンベエザメは少し離れて見守っている。



依頼結果:大成功
MVP
名前:ハティ
呼び名:お前、ハティ
  名前:ブリンド
呼び名:リン、ブリンド

 

名前:明智珠樹
呼び名:珠樹、ド変態
  名前:千亞
呼び名:千亞さん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木乃
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 3 ~ 5
報酬 なし
リリース日 05月11日
出発日 05月17日 00:00
予定納品日 05月27日

参加者

会議室

  • [16]瑪瑙 瑠璃

    2015/05/16-23:59 

    こちらもプランを出しました。
    自分達は【熱帯魚】を見に行きます。

    特に刺激的な事は何もしませんが、よろしくお願いします。

  • [15]瑪瑙 瑠璃

    2015/05/16-23:57 

  • [14]新月・やよい

    2015/05/16-23:14 

    何とかプラン提出・・・かな?
    迷子になって【深海魚】さんコーナーを巡って見ようかと思います。
    悲鳴とか笑い声とかホラーハウスなことになってロマンスブレイクとか
    そんな事はきっと気のせいだと信じております。。。

  • [13]ハティ

    2015/05/16-19:16 

    ブリンド:
    お疲れ。俺らは【巨大水槽】で落ち着く予定だなァ。多分。
    マント好きでフード付きが好きで潜りたがりの神人だしもしかすると囲まれて落ち着く性質なのかもしれねー。トンネルとか。
    もしかしなくても無根拠。
    なんか動物観察してる気分になってきた…

  • [12]明智珠樹

    2015/05/16-12:29 

  • [11]明智珠樹

    2015/05/16-12:29 

    千亞:
    改めまして、こんにちは。
    珠樹の精霊の千亞だよ。
    はじめましてな鳥飼さん、鴉さんよろしくお願いします(にこ)
    そして皆様、またご一緒できて嬉しいです。
    いつも珠樹が色々…すいません…(遠い目)

    僕達は【クラゲ】をメインにすることに決めたよ。
    皆がどこに行くのか、楽しみだね。
    どうか素敵な時間を過ごせますように(にこ)

  • [10]明智珠樹

    2015/05/16-12:25 

  • [9]ハティ

    2015/05/15-00:27 

    ハティとブリンドだ。今回もよろしく。瑪瑙さん達とは数ヶ月ぶりなのか。そんなに会ってない気もしなかったんだが、何だろうなTFCのインパクトだろうか…
    ほぼ貸し切りのような状況なのか。落ち着いて見て回れそうだな。
    どこを選ぶかは俺もまだ決め兼ねている。
    現在ナイトアクアリウムならではの光景とイルカとペンギンが戦っている。

  • [8]ハティ

    2015/05/15-00:13 

  • [7]新月・やよい

    2015/05/14-23:28 

    皆さんこんにちわ。
    ウフフな桜や、夜曲な廃墟や、初夏の雨の日でお会いしている新月と申します。
    瑪瑙さんたちは初めましてですね。
    皆さんよろしくお願いします。

    僕も夜の水族館は初めてです。
    嬉しい悩みに迷いつつ。お互い良い時間になりますことを。

  • [6]鳥飼

    2015/05/14-22:49 

    あ、楽しみ過ぎてちゃんと挨拶できてませんでした。

    僕は鳥飼と呼ばれてます。
    こちらは鴉さんです。(隣の精霊を示し

    改めて皆さんよろしくお願いしますね。(にこ

  • [5]鳥飼

    2015/05/14-21:54 

    ふふ、珠樹さんと千亜さんは初めまして。
    楽しそうですね。僕も楽しみです。(にこ

    はい、瑠璃さんと珊瑚さんお久しぶりです。
    皆さんよろしくお願いしますね。

    ナイトアクアリウムは初めてです……!
    何処を見に行くか悩みますね。(唇に指を添える

  • [4]瑪瑙 瑠璃

    2015/05/14-20:55 

    瑪瑙瑠璃です。
    珠樹さん、先日のふんどしファッションショーお疲れ様でした。
    今回もよろしくお願いします。

    ……すいません、自分の記憶が確かなら、
    ハティさんは、鴻鵠館。
    鳥飼さんは、赤と黒の服をしたマントゥール教団絡みの封印石以来になると思います。
    やよいさんは、初めましてですね。
    改めて皆さん、よろしくお願いいたします。


  • [3]瑪瑙 瑠璃

    2015/05/14-20:45 

  • [2]明智珠樹

    2015/05/14-17:51 

    皆様、こんにちは。貴方の明智珠樹です。隣に居る兎は私の千亞さんです。

    ハティさん&ブリンドさんは大トラぶり、
    瑠璃さん&珊瑚さんはふんどしぶり、
    やよいさんとバルトさんはキャッキャウフフのお花見ぶりですね…!
    そして、はじめまして!な鳥飼さんと鴉さん…!!
    何卒よろしくお願いいたします、ふふ…!!

    魅力的な場所が多く、一つに絞るのが難しいですね。凄く、物凄く悩みます…!
    どうか皆様良きお出かけが出来ますように、ふふ、ふふふふふ!

  • [1]明智珠樹

    2015/05/14-17:47 


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