


夜も深くなった頃。
寝苦しさに何度目かの寝返りを打つ。
意識は未だ微睡みの中。
そのまま眠りにおちようとした、その時。
枕元に気配がする――。
何かがいるような、そんな言い知れない不安をもたらす気配。
けれど、その何かを確かめることができない。
身体は唐突に襲い来る金縛りに捕らわれたまま、身動ぎひとつ叶わない。
悪夢か。
杞憂か。
それとも、実際に……。
恐らくは何もないのだろうとは思う。
静寂の中で、感覚だけがやけに研ぎ澄まされているだけ。
瞼を強く閉じて、何も感じなかったことにしてしまおう。
思って、刹那。
かさり、と衣擦れの音がする。
どうか悪夢で。
どうか杞憂で。
ああ。
枕元に立つ者は不吉の表れだと何かで聞いたことがある。
その姿のない噂の体現だろうか。
もし、それが事実なのだとしたら、このまま体現者から災いをもたらされるのだろうか。
それは――遠慮したい。
悪い夢だと知っている。
身体が動かないのも科学的な証明がされている。
このまま再び寝入ってしまえばいい。
それだけのことなのに。
かさりと、再び衣擦れの音がする。
夢ならどうか醒めて。
悪夢なら、立ち向かって見せよう。
恐る恐る。
強引に、無理やりに。
瞼を持ち上げる。
枕元に見えた、その姿は――。


→成敗する
話し合う
……という感じです(適当)
枕元にいるのは誰でも大丈夫です。
憎い相手なら夢の中で戦ってもいいですし、
会いたい人なら夢の中で話してみるのもありかと思います。
パートナーと同じ夢を見て、対話してみるのも面白いかもしれません。
どちらか片方だけが夢を見るのも、勿論大丈夫です。
その場合はパートナーさんが起こしに行ってあげてくださいね。
もしくは、枕元には実際に、本気の不審者がいるかもしれませんし、
パートナーがなぜか枕元で暴飲暴食を働いているかもしれません。
とりあえず、そんな時は怖すぎるので軽く成敗してみるのもいいかもしれません。
金縛りや悪夢そのものがもはや戦闘と言えるので、プランでは必ずしも戦う必要はありません。
実際に枕元にオーガが不法侵入していた場合は、ネイチャー、デミオーガ辺りを設定致します。
ある程度の指定は大丈夫ですが、現実での戦闘ですので、トランスをしなくても勝てるレベルくらいをイメージしてください。
夢の中である場合は無秩序万歳ということで、デミ・ギルティなども倒せるかもしれません。
想定としては軽めのハピエピコメディを想定していますが、シリアス、ダーク、本気の戦闘まで、心よりお待ちしております。
内容としては、ハピエピのような感じでプランを立てて頂いて大丈夫です。
金縛りにあっているときは、本当に怖くて、早く寝てしまえ自分! と暗示をかけています。ホント怖い!
そんな時、ウィンクルムさんたちが何を見て、どんな風に対処されるのかをぜひ教えてください。
楽な気持ちで楽しんでいただけますと幸いです。


◆アクション・プラン
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
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(関連エピ93・131・151) (状況:ラキアの双子の兄ラキシスと夢の中で話す) ラキシスに「ラキアの代わりに俺を連れて行け」と言われた。 今までも、厳しめの討伐任務の後とかで何度か言われたんだ。 「ラキアを危険に曝すのは許せない」と。 「ラキアの手を血で汚させるな」とも。 ラキシスはラキアの事を愛してると言って憚らない奴だから、その主張には納得するトコあるぜ。 ラキアを肉体的にも精神的にも護りたいのはオレも同じだものな。 でも色々な出来事を看過できないってラキアの気持ちも、オレは判っているつもりだ。 「困難な事だからこそ、ラキアと2人で立ち向かいたいんだ」 とラキシスの主張を断るぜ。「だから一緒には行けない」 |
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寝苦しい夜 冷房入れっぱなしも寒いしと、自室で窓を開けて寝た 昼間の疲れもあってぐっすり眠っていたら…人の気配? フィン? うっすら瞳を開けて声を掛けたら いきなり口を手で塞がれて…知らない男 もしかしなくても、これって泥棒…!? このッ……舐めるな! 押さえ付けて来る男を何とか蹴り飛ばした所でフィンが乱入 …フィンが何時になく怒ってる…怖い、かも 警察に男を引き渡した後、フィンの部屋に呼ばれて説教タイム …ごめん、俺が不用心に窓開けて寝てたから 本当に反省してる まさか泥棒が来るなんて… けど、俺の所で良かった だって、フィンが危ない目にあったら俺が嫌だし 絶対助けに行くけど 心配かけて…ごめんな? …それだと俺が眠れないかも |
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目を開けるの怖いなぁ。体もなんか動かないし、 音の正体敵じゃありませんように そっと目を開けたら目の前に大きな鏡。 寝る前にはなかったはず… 曇っててはっきり見えないけど僕が動いてる? でも何か違う様な… 確かめたいけど動けないし…そっか金縛り解けばいいんだ! 気合を入れて吹っ飛ばすのも、フェイント入れてみるのも、 動けると自己催眠するのもダメ、小さな動きからコツコツ、じわじわ… よし、動けた! …鏡がない。夢か… きょーちゃん何してるの? はぁ!?賞味期限ぎりぎりの牛乳処理しに来た?朝でいいじゃん! もう変な夢みたの絶対きょーちゃんのせいだよ! 見様見真似で関節技かけてやる! …なんか動かなくなっちゃったけどしーらない |
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夢 そこに立っていたのは2番目の精霊 安堵も束の間姿が異形化しオーガに 気付けば自分も血塗れで 俺の死を憂いて堕ちたのか? 相手はずっと涙を流している 『アナタノ盾ニナルト言ッタノニ アナタハ僕ニ守ラレル事ヲ拒ンダ (それは違う 『僕ハ必要トサレテナカッタ (違う 動け体…動け! 突如オーガが咆哮を上げ暴れ出す 『僕ヲ置イテ死ンデシマッタ神人 世界ナンカ滅ベバイイ (ロック! 魂が抜け出した様になり 強く抱きしめる(元には戻れないのか…? 目覚めて彼の姿見て元に戻った錯覚 いや、夢を見ていたのか 苦い思い感じつつ 気遣い感じて 薄く笑う 俺はあんたを振り回す いつかその為に先に死ぬかもしれない それでも堕ちないで欲しい… 勝手だな ああ そうだな |
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兄の家に泊まったその夜 夢で兄と会話/夢は見ない 君は、悩みとかあるのかい? …ティミラ。僕は全て忘れている 親も幼馴染も好きなものも嫌いなものも。…君のことも それでも君は僕を『かわいい弟』と呼んで鬱陶しいくらい絡むのかい? …そう おかしいのかい? やっぱり、変わらない…兄さんって 一人で悩んで、一人で考えて 多分、そういうのがうざかった …違う。悩んでるクセにキラキラしてる、それが妙に目についたんだと思う あ、起きた 白い小さな猫を抱えている …よその子 …さあ? どこから入ったのかは分からない。君の枕元にいた …なんだい、いきなり? |
●
「君は悩みとかあるのかい?」
尋ねたのは咲祈。
随分唐突だとは思いながらも、夢にまで見るのは咲祈が今夜は泊まったからだろうか。
ティミラはそんなことを思いながら、けれど夢の中のティミラは何の疑念もなく応じる。
「悩み? ……一応聞くけど、なんで?」
その問いかけに、咲祈は双眸を眇める。
「……ティミラ。僕はすべて忘れている。親も幼馴染も好きなものも嫌いなものも……君のことも」
目を伏せ、睫毛が顔に影を落とす。
「それでも君は僕を『かわいい弟』と呼んで、鬱陶しいくらい絡むのかい?」
「絡むよ。ツバキがどんなに嫌がっても」
咲祈はそれをひどく嫌がっているのかもしれない。だから、こんなことを言うのかもしれない。
けれど。
「だって、ツバキだけなんだ。兄弟は。オマエだけ」
どれほど嫌がられようと、邪険にされようと、それを理由に咲祈を放っておけるはずがない。
咲祈は、ティミラにとって唯一無二の存在だ。
「だからしつこいし、かわいい弟とも言うし干渉する」
ずっと、ティミラが咲祈の傍にいる。そのつもりだったし、これからもそうするつもりだ。
それでも、ずっと気になっていた。
「で、今更だけど、なんであのお母さんって感じの精霊と契約したんだよ」
「おかしいのかい?」
「おかしくはない。おかしくはない、けど!」
咲祈のもう一人の精霊は、ティミラが得たかった咲祈の隣にいて、咲祈を支えていることは理解をしているつもりなのだが。
「……ツバキが『咲祈』だからかな」
なんとも言えない違和感が拭いきれない。
咲祈の言葉が昔のツバキと違うことにティミラが気付けたなら、その答えはもっと近くて明確なものだったのかもしれない。
「やっぱり、変わらない……兄さんって」
咲祈がティミラに視線を向ける。
「一人で悩んで、一人で考えて。たぶん、そういうのがうざかった」
「一人で考えてるのがうざかった……?」
「……違う。悩んでるクセにキラキラしてる。それが妙に目についたんだと思う」
咲祈の目が向けられて、ふっと外される。
――これは、ツバキの思い、……
夢は無秩序だと言うが、突然ティミラの顔にふにっとした何かが触れた。咲祈との会話はまだ終わっていないのだが。
呼ばれるように瞼を持ち上げる。
「……猫?」
むにっとティミラの顔に前足を掛けている猫が視界に入った。
「あ、起きた」
「……に、ツバキ……」
咲祈が抱える猫に起こされたようだったが。
「って、え? 猫?」
はっきり言うと、ティミラはこの猫を知らない。
「ツバキさん。その子、どこの子?」
「……よその子」
多分、それはティミラが一番よく分かっている。
「どこからきた……?」
「……さあ? どこから入ったのかは分からない。君の枕元にいた。会いたかったんじゃないのかい?」
「いやいや」
そんな出会いは求めていない。
むしろ。
「……ツバキ」
咲祈の腕の中で、ごろごろと白い猫が喉を鳴らしている。
「なんでツバキの記憶は、戻らないんだろう」
会いたいのはツバキの記憶を持った彼に、なのだけれど。
「……なんだい、いきなり?」
「あは、なんでもない」
それを言ったところで、今が変わるわけでもない。
曖昧に笑って首を振る。
●
がさがさと音が鳴っている。
瑞樹は動かない身体にさらに恐怖を募らせていた。
(目を開けるの怖いなぁ……音の正体、敵じゃありませんように)
おそるおそる目を開けると、目の前には大きな鏡があった。
驚きに、心臓が跳ねあがる。
(寝る前にはなかったはず……)
鏡は曇っていて、はっきりと見えないが鏡の中では瑞樹が動いているように見えた。
(でも、なにか違うような……)
なにが違うかまでは分からない。確かめたいが、身体は相変わらず動かない。
(そっか、金縛り解けばいいんだ!)
思い至って、瑞樹は金縛りを解く方法を試みる。
気合を入れて。
フェイントを入れて。
動ける、と自己暗示をかけて。
だが、そのどれもがだめだ。まるで動けそうにない。
何とか指一本が動く気がして、小さな動きからじわじわと解くことにした。
全身が動くまでには一体どれくらいの時間がかかるのだろうかと思いながら、コツコツと動かしていく。
しばらく格闘を続けたあと。
(――よし、動けた!)
ようやく身体が自由になった。
先程の鏡を探す。が。
(……鏡がない。夢か……)
暗がりで妖しく光る鏡とはどこか不安を誘う。見慣れないものであればなおさら。
それが夢であって瑞樹はほっと胸を撫で下ろす。
けれど、がたりという物音に肩が跳ねる。
「え? なに?」
辺りを見回して、その音の主を見つけた。
「きょーちゃん何してるの?」
そこにいたのは共夜だ。牛乳を片手に、むくりと起き上がった瑞樹をなんとも形容できない驚きの顔で見つめている。
「日付が危ない牛乳が気になって処理に来た」
「はぁ!? 朝でいいじゃん!」
「朝じゃ危な……」
言いかけて、共夜は慌てて口を噤む。
運の悪い瑞樹が、食べたら当たりそうだから夜中に処理しようと思った、と言う本音を隠しきる自信がなく、黙って来てみたのだが、やはり見つかった。
二の句を継ぎかけていた共夜を瑞樹は羽交い絞めにする。
「なんで!?」
「もう、変な夢見たの絶対きょーちゃんのせいだよ!」
あの物音も、鏡も、共夜が近くでごそごそと牛乳を処理していたからに違いない。
瑞樹は見様見真似で関節技を共夜にかける。
「きゃー、痛いわぁ」
共夜は、さほど痛くないのか、女の子っぽい声で茶化す。
が、瑞樹は本気だ。ぎりぎりと締め上げて行く関節が、みしみしと悲鳴を上げ始めた。
ついでに言えば、見様見真似なせいで、首に腕がかかっている。
「ちょ、ぎぶ、ぎぶ、しまってる」
「怖かったんだから!」
「しまっ……」
瑞樹は何かよからぬものを見たのかもしれないが、共夜は進行形で見てはいけないものを見ている。
腕をバシバシと叩いても、瑞樹の力が緩むことがなく、もういっそ、お花畑で蝶々と戯れたほうが楽だと思いながら、共夜はぱたりと伸びてしまった。
「……なんか、動かなくなっちゃった……けど、しーらない」
辛うじて意識は保っていたものの、瑞樹を本気で怒らせるのはやめておこうと、朦朧とする意識で共夜は誓った。
●
冷房を入れっぱなしでは少し寒いからと、蒼崎 海十は部屋の窓を開け、寝苦しくはあったが昼間の疲れもあり、ぐっすりと眠りに落ちていた。
(……人の気配?)
まどろみながらも、そこにある何かの気配を感じ取った。
「フィン……?」
薄っすらと目を開けて、声を掛ける。何か用事でもあって、と思ったのだが、身体を起こしかけた海十に、その気配は手を伸ばし、口を塞いだ。
「っ!?」
視界に映るのは、フィン・ブラーシュではなく、まるで知らない男の姿。
もしかしなくても、これは――。
(泥棒……!?)
これが普通の高校生だったなら、大人しく押さえつけられていたかもしれないが、相手が悪かった。
海十は押さえつけてくる男を振り払う。
「このッ……舐めるな!」
すかさず男を蹴り飛ばすと、物音に気付いたのか、フィンが部屋へと姿を見せた。
「海十!?」
足元に転がった男を見るフィンの目が、ゆっくりと冷えていく。
「……、……」
無言のまま、問答無用で足下に転がる男を拘束すると、やはり冷えた声で言葉を発した。
「いい度胸だね――」
その一声に、海十ですらぞわりと冷たいものを感じた。
「死ぬ覚悟はできてる?」
薄っすらと笑みを浮かべ、どう聞いても笑っていない声に総毛立つ。
「二度とこんなことができないように、たっぷり反省してもらおうか」
いつものフィンからはとても想像できないような酷薄な笑みに加え、凡そフィンの唇から洩れてはいけない言葉が次々に流れ出ている。
些か震える――というより、この男からしてみれば、死んだ方がきっと楽になれるレベルだ。
海十の指も震えているが、何に震えているのかを敢えて考えないようにしながら、携帯電話を手に警察を呼んだ。
程なくしてやってきた警察が、フィンの容赦のない言葉攻めに泣いて許しを乞う男を連行していった。
が。
「で、どうしてこんなことになったのか、説明してくれる?」
フィンの部屋へと呼ばれ、歓待しがたい笑顔の矛先は海十に向いていた。
「……ごめん、俺が不用心に窓開けて寝てたから」
肩を落として大人しく白状すると、フィンは小さく溜息を吐いた。
「窓を開けて寝るなんて……どうぞ、入ってくださいと言わんばかりじゃないか」
「本当に反省してる」
これには返す言葉もない。
「まさか泥棒が来るなんて……」
「無事でよかったけど……海十は無防備すぎるね」
「けど、俺のところで良かった」
フィンが首を傾げる。
「どうして?」
「だって、フィンが危ない目にあったら俺が嫌だし。――絶対助けに行くけど」
「オニーサンはそんな不用心なことはしません」
ぴしゃりと言われて、海十がしゅんと肩を落とす。
「……本当に、もっと気をつけて」
「心配かけて……ごめんな?」
「罰として、しばらく寝室は問答無用で俺と一緒の部屋」
「え、なんで……」
フィンは眉根を寄せる。
「信頼してないわけじゃないけど……心配だから」
言われて、どれほどフィンに心配させていたかを察した。
「うん、でも……それだと俺が眠れないかも」
毎日心臓が爆発しそうな思いをしなくてはならない、ということだ。安眠とは程遠い気がする。
けれど、フィンはにこりと笑って、
「もちろん、その覚悟はあったんだよね?」
と、再び海十を震撼させた。
●
目が覚めて、シムレスが見たのは見知った精霊だった。
ほっと安堵し、声を掛けようと口を開く。
「――っ!」
と、彼はゆっくりと闇に取り込まれ、その姿が見る間に跡形もなく変わっていく。
精霊のオーガ化――。
「どう、して……」
シムレスは血塗れの相手の姿に目を向け、はっとして自分に目を向けた。
手のひらも、腕も、身体も血塗れで、まるで死に直面した瞬間のようだ。死ぬかもしれないと思った、あの時のよう――。
「俺の死を憂いて堕ちたのか……?」
涙を流す、異形へと変わった精霊は幾重にも重なる不思議な声を紡ぎ出した。
『アナタノ盾ニナルト言ッタノニ、アナタハ僕ニ守ラレル事ヲ拒ンダ』
(……それは、違う)
『僕ハ必要トサレテナカッタ』
(違う……!)
身体が何かに縫い付けられたように動かない。
(動け体……動け!)
強く念じる。
しかし、身体が動くことはなく、代わりに精霊が堕ちたオーガが空気を引き裂くほどの咆哮を発した。
『僕ヲ置イテ死ンデシマッタ神人。世界ナンカ滅ベバイイ』
(――ロック……!)
その名を胸中に呟く。
呻き声に気付き、ロックリーンがシムレスの元へと駆け寄る。
「シムさん!?」
うわごとのように名前を呼び続けるシムレスの手を握る。
シムレスは今も怪我が癒えず、自宅療養を続けている。何か、よくない夢を見ているのだろうか。
「シムさん!」
不安から、ロックリーンがもう一度名前を呼ぶ。
瞼を持ち上げたシムレスが、魂が抜けたような、焦点の定まらない瞳をロックリーンに向けると、強く抱きしめた。
(元には戻れないのか……?)
堕ちた精霊は、二度と、元には戻れないのだろうか。
「シムさん、大丈夫?」
ロックリーンの声がはっきりと聞こえる。
覚醒し、ロックリーンの姿を認めると、元に戻ったような錯覚が沸き起こる。
「……夢をみていたのか……」
「どんな夢を?」
シムレスは一度目を伏せて、夢の内容をゆっくりと話した。
おそらくウィンクルムにとって、パートナーのオーガ化はもっとも恐ろしい。
だからこそ悩んで、だからこそ考えて、苦しくなる。
「精霊のオーガ化、ずっと考えてるの知ってたよ。だからそんな夢を……」
ロックリーンは自分の姿を見せるように両手を広げた。
「でも僕はそんなこと思ってないからね! ほら、オーガ化なんかしてないよ」
気遣われていると知り、シムレスは薄く笑う。
「……俺はあんたを振り回す。いつかそのために先に死ぬかもしれない……それでも堕ちないでほしい。……勝手だな」
「ううん。僕も振り回されっぱなしじゃないよ。その行動、先読みできるくらいになるから!」
ロックリーンがシムレスの手をそっと握る。
「シムさんと僕のためにね」
「ああ……」
「見たいもの、たくさんあるんでしょ。だから今は元気になること優先して」
「――ああ、そうだな」
あれほど不安だった心が、解けていくように穏やかな気持ちに包まれる。
ロックリーンの温もりを感じながら、ゆっくり、微睡んでいく。
●
――ラキシス……。
ラキア・ジェイドバインは、そこにいる人物を知っている。
これが、セイリュー・グラシアの見ている夢であることも、不思議なくらいはっきりと、即座に理解できた。
「ラキアの代わりに俺を連れいていけ」
ラキシスが、セイリューに詰め寄る。
セイリューはじっとラキシスを見つめている。
「ラキアを危険に晒すのは許せない」
これまでも、何度か言われたことがあった。代わりに連れて行け、と。厳しい任務であるほど、ラキシスはセイリューにそう言ったのだ。
「悪いけど、それはできないぜ」
「ラキアの手を血で汚させるな」
言いたいことは、よく分かる。
ラキシスはラキアと双子。弟を思う兄の心情としてはやや逸脱しているが、それもラキアを思えばこそ。
その気持ちにセイリューは納得こそするのだが。
「ラキアを守りたいのはオレも同じだ」
その身も、心も、セイリューは守りたいと願っている。
色々なできごとを看過できないラキアの気持ちも、分かっているつもりだ。
「困難なことだからこそ、ラキアと二人で立ち向かいたいんだ」
ラキアとなら、どんなことでも乗り越えられる。そう信じている。
「だから、ラキシス。一緒にはいけない」
セイリューには、驚くほど迷いがなかった。
*
同じ夢を共有していたラキアは、二人のやり取りを見つめながら、どこかで安堵していた。
――ラキシスは双子だから、セイリューと適合する可能性はある。
おそらく、他の精霊と比べて、高い確率になるだろうと思っている。
二人は考え方が似ているから話も合う。
神人が契約できる精霊が複数いると知ったとき、ラキアは言い知れない恐怖を感じた。
もしかしたら、ラキシスと契約できてしまうのかも、と。
二人がもし契約をしてしまったなら。
――セイリューを取られそうで怖かった。
ラキシスが、ラキアに愛情を傾けていることは、ラキア自身が一番よく知っている。
ラキアもまた、ラキシスを近しい存在だと思っている。
だからこそ。
――嫉妬してしまう。
もっと遠い他人であれば、ラキアの胸の内にこんな感情は芽生えないのかもしれない。
セイリューがラキシスの申し出を断って、その言葉に胸が熱くなった。
危険だから、とラキアを案じて遠ざければ、確かに安全だろう。
けれど、セイリューは言った。
困難だからこそ、と。
それが嬉しかった。
もし。
自分のいないときにセイリューに万一のことがあったなら、ラキアは自分を責め続けるかもしれない。
ラキアの力は守る力だ。そしてそれは、一緒にいなければ意味のないもの。
セイリューが、夢から目覚めるようにラキシスに背を向けた。
夢の時間は終わりだ。
セイリューが立ち去った後、ラキシスがラキアに気付いて近づいてきた。
ラキアがぽつりと言葉を漏らす。
「危険な時だからこそ、一緒にいなくちゃ」
ラキシスの気持ちが、ラキアも分からないわけではない。
けれど。
「譲れないよ」
「そう――」
ラキシスがふっと姿を消す。
夢から、ゆっくりと引き上げられた。



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | 真崎 華凪 |
| エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | 日常 |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | とても簡単 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | 通常 |
| リリース日 | 07月22日 |
| 出発日 | 07月29日 00:00 |
| 予定納品日 | 08月08日 |


