


●ウィンクルム+αの物語
「ああああ、どうしようどうしよう!!」
「おい、少しは落ち着いたらどうだ」
「そう言うあんただって、さっきから膝ガックガクじゃない!」
「っ、う、うるさい!」
「ああもう、お父さんったら、契約精霊の顔が見たいなんて何で突然……」
――それは、2人のうちのどちらかの家族かもしれないし、
「あの……さっきの男の人って、誰ですか?」
「ん? ああ、昔の知り合い。まさか、こんな所でばったり会うなんてなぁ」
「ああ、そうでしたか。ふふ、何だか嬉しそうですね」
「え、そうかぁ? 大したことない、ただの腐れ縁ってやつなんだけどな」
「いいじゃないですか、腐れ縁。私もあなたのお友達とお話してみたいです」
――若しくは、ウィンクルムの片割れの古い知り合いかもしれない。
「なあ。さっきの人って、お前のことが、その……」
「あたしのことが、何? ったく、はっきりしなさいよ、もう」
「だから……お前のことが、好きなのかな、って」
「……へ!?」
「気付かなかったかもしれないけど、お前のことずっと見てた」
「……そんなわけないでしょ。ただのバイト先の同僚よ。それだけ」
――そして、或いは、彼かあなたに想いを寄せる誰か、かもしれない。
『もうひとり』が加わった時、2人の間の空気はどんなふうに揺れるのでしょうか。


●詳細
ウィンクルムのお二人+『もうひとり』を交えた3人で時間を過ごすエピソードです。
なお、『もうひとり』に【エピソードに参加していない方の契約精霊さん】をお選びいただくことはできません。
また、特定のエピソード固有のNPCも、『もうひとり』としての指定はご遠慮ください。
プランには、あなたや彼の心情・行動等の他に、
1.『もうひとり』と出会う場所とシチュエーション
2.『もうひとり』とあなた・『もうひとり』と彼の関係(両方)
3.『もうひとり』の言動
4.『もうひとり』に対するあなたと彼の口調(敬語か否かと、その他こだわりあれば)
以上4点をご指定くださいませ。(書き方は自由、明示がなくともそれとわかればOKです)
また、
・『もうひとり』の名前、性格、外見、口調、職業等
などその他諸々、文字数の許す限りこだわりを詰め込んでいただければと。
1~4以外は必須ではないですが、不明な部分がリザルト執筆に必要になった場合お任せで補完させていただく場合があります。
この点、何卒ご了承くださいませ。
なお、逆に、「こことここ以外はお任せで!」というのもOKです。
その際は、その旨が分かるようにプランにてご指定くださいませ。
また、その日の移動費や食事代などで、一律300ジェールの消費となります。
お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!
誰かが加わることで、いつもの2人のいつもと違う一面が見えることもあるのではと。
家族にパートナーを紹介することになったり、旧知の友人に2人の仲を冷やかされたり。
神人さんや精霊さんに恋する誰かと遭遇したり、捨てた過去を知る相手と邂逅してしまったり。
色んな『もうひとり』がいるかと思いますので、どうぞお好みの時間をお過ごしください。
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!
また、余談ですがGMページにちょっとした近況を載せております。
こちらもよろしくお願いいたします。


◆アクション・プラン
リチェルカーレ(シリウス)
|
デートの約束をして 駅前で待ち合わせ シリウスが女の人と話しているのを見つけ目を丸く 視線が合ったのでぺこりと会釈 初めまして リチェルカーレと言います 恋人と言われ真っ赤に はにかんだ笑顔 「大事な人ができて良かった」 「これからもふたり仲良くね」 手を握られ その強さに少し驚く カレンさんの目がうっすらと潤んでいる気がして 別れた後 シリウスの顔を窺う いつもの静かな顔 少しだけ遠くを見ているような気がして 優しそうな人だったね …そう お母さんみたい 小さなシリウスに 優しくしてくれる人がいて嬉しい 柔らかく解けた表情に自分も笑顔 ぎゅっと手をつないで ーあのね、今は わたしに甘えていいのよ? …意地っ張り 頬を膨らませた後 小さく笑い合う |
|
場所:街の屋外カフェ えーっと…グレンの知り合いの方ですか? …あ、はじめまして、ニーナ・ルアルディです。 叔父さんだったんですね…グレンとはあまり似てない…かも…? うーん…会話からするとお医者様、なんでしょうか…? 何だかんだ言いつつも追い出そうとはしてないから これは照れてるだけ、ですよね多分。 えっ、グレンの小さい時の話ですか?是非聞きたいですっ! だって、グレンの小さい頃ってあまり想像できませんし、気になって… …お互いに散々な言いようですけど、これを楽しんでるのかも。 いえ、家族っていいなぁって思いまして。 ま…孫!?あの、私達まだ、あの、その… グレンも面白がって話題に乗っからないでくださいーっ! |
|
ちょっぴり寝坊して弓弦さんを待たせてるから急がないと …ってあの影は! クリス!久しぶり! 今帰ってきたの?ふふ、おかえり 流石、分かってる~!ありがと 紹介がまだだったね こちらはパートナーの降矢弓弦さん 弓弦さん、この人は友人のクリスだよ 元気そうで良かったよ ふふ、そうそうこれからデートなんだ クリスも早くアリシアに会いたいんじゃない? 色々とごめんね弓弦さん 似てるかな?ふふ、長い付き合いだからね …これからは、私も弓弦さんに似るのかな? ◆ クリス 悠夜の十数年来の友人 旅好きが集まるアパートのお隣さん フレンドリーな青年 外国から一月ぶりに帰宅 彼女が居る 『おう、ただいま!(ハグ 『これお土産。悠夜が好きそうな本見繕ったぜ |
|
任務後の帰り道に遭遇 精霊の知り合いだろうかと成り行き見守る え、お兄さん!? 初めまして、パートナーのレベッカ・ヴェスターです エッカ…トレイスさんにはいつもお世話になっています 言ってて世話になってるだろうかと違和感感じるも社交辞令と割切 それにしても、あまり似ていないのね 2人が話している間に見た目の共通点はあるのだろうかとつい見比べ いえ、私の事はお気になさらずに…ん? 話の流れに不穏なものを感じて慌てて否定 待ってください、パートナーってウィンクルムとしてのって意味合いですから! ああ、人の話を聞かない所は似てるかも… ていうかエッカートさんも否定してってば! いや、弟の方の…トレイスさんの方! |
|
勇の春物を買いにタブロスモールへ あれこれ買ったら、声を掛けられ振り返ったら、死んだじいちゃんの友達がいた 「お久し振りです。勇、ご挨拶は?」 勇が挨拶したら、大きくなったと感慨深げになられた 「子の成長は早いですよ。あっという間に小学生です」 当然この人も先生だった 大樹も教わってるのは知ってる 案の定大樹の質問し出した (ブレてないなー)※若干目が遠い 「彼も勇と同じ契約精霊ですし、その前からも何かと世話になってます」 お相手ねぇ まぁ、普通聞くか 「彼が本気でこちらを口説き落としてみせたら考えましょう ただし、あたしも簡単には落ちるつもりないですが」 勇が報告しそうな気はするけど、知られて困るものでもないし、いっか |
●トレイス・エッカートの兄と
「トレイス!」
不意に名を呼ばれて、トレイス・エッカートはゆるりと声の方へと振り向いた。その視線を追うようにして、レベッカ・ヴェスターも振り返る。任務からの帰り道でのこと。レベッカ達の方へと歩み寄ってきた声の主は、温厚そうな男だった。
「やあ、奇遇だね」
「ああ、少し驚いた。久しぶりだな」
驚いた、というふうには見えないテンションで応じて、トレイスは男へと微笑を向ける。
「まさか、こんなところで会うとは思わなかった」
「俺もだよ。いやあ、この街は広いようで狭いね」
親しげに会話を弾ませるトレイスと男を前に、
(仲良さそう……エッカートさんの知り合いよね)
なんて思いながら、レベッカは2人の他愛ないやり取りを見守った。と、その視線に気づいて、トレイスの金の眼差しがレベッカへと移る。
「レベッカ、俺の兄だ。クリス・エッカート」
「え、お兄さん!?」
予想外のことに、思わず声を上げるレベッカ。姿勢を正して、レベッカは男――クリスへと、きちりと頭を下げる。
「初めまして、パートナーのレベッカ・ヴェスターです」
「パートナー? ……それはそれは。俺はクリス。会えて嬉しいよ」
声に喜色を滲ませて、クリスの方もぺこりとした。そんな2人の様子をトレイスが静かに見つめる中、
「エッカ……トレイスさんには、いつもお世話になっています」
と、レベッカは音を紡いだ。紡ぎながら、
(……ん? 私って、エッカートさんに世話になってるのかしら?)
なんて違和が胸を掠めたが、そこは社交辞令と割り切るレベッカである。
「そういえば、前に会ったのはいつだっただろうか」
「どうだったかな。何しろ、仕事でタブロスを離れるなんてしょっちゅうだからね」
「しかも大抵、いきなり出かけては行方不明並みに音信不通になるからな」
「はは、行方不明は酷いなあ」
そのまま、前回顔を合わせた時の思い出話に花が咲く。ついつい、そんな2人の顔を見比べるレベッカ。
(それにしても、あまり似ていないのね……)
見た目の共通点はあるのだろうか、なんて考えていたら、
「あっ、これはいけないね。可愛いパートナーさんを放っておくだなんて」
と、クリスがハッとしたように声を上げた。
「あ、いえ、私の事はお気になさらずに……」
「いやいや。デートの邪魔をしてすまなかったね」
俺ったら気が利かなくて……というクリスの謝罪は、レベッカの耳には殆ど届かない。
(……ん? 今、デートって言った?)
一瞬のフリーズの後、レベッカは気づいた。クリスは、『パートナー』という言葉の意味を盛大に誤解しているのだと。
「じゃあ、俺はこれで……」
「って、待ってください! パートナーって、ウィンクルムとしてのって意味合いですから!」
不穏な話の流れに、レベッカは慌ててクリスの勘違いを正そうとする。しかしクリスは、
「うんうん、いいことだよね。より絆が深まる」
という調子で、自分に都合のいいようにレベッカの言葉を解釈するばかり。
(ご、誤解が解けない……! ああ、人の話を聞かない所は似てるかも……)
もどかしさに内心歯噛みをするレベッカを前に、クリスはにこにことしている。
「それじゃあ改めて、弟のことをよろしく頼むね」
「――ん?」
そしてこの時、レベッカ達のやり取りをマイペースに眺めていたトレイスが、やっと小さく声を漏らした。ここに来て初めて、兄との意識の食い違いに思い至ったトレイスである。もう耐えかねて、という感じで、レベッカは声を張った。
「ていうか、エッカートさんも否定してってば!」
「ん?」「何だ?」
レベッカの言葉を受けて、エッカート兄弟の声が綺麗に被さる。暫しの逡巡の後、
「いや、弟の方の……トレイスさんの方!」
と、レベッカはまだ口に馴染まないファーストネームでトレイスを呼んだ。そして。
(……ああ、今)
レベッカが抱くじれったさを知ってか知らずか、再び彼女の声で名を紡がれた嬉しさに、トレイスはごく仄かに目元を和らげたのだった。
●御神 聖の祖父の友人と
「ママ! 次はあっちじゃない?」
実の息子である御神 勇に服の裾を引かれて、御神 聖は、「ああ、そうだね」と勇の頭をぽんぽんと撫でた。そうして、勇が指差した方へと足を向ける。今日は、勇の春物を色々と揃える為にと、タブロスモールを訪れた聖と勇である。
(あれもこれも買ったし、後は……)
歩きながら、聖が母親としての頭をフル稼働させていた、その時。
「おや……これは、聖くんじゃないですか」
名前を呼ばれて、振り返る。そこに立っていたのは、70代後半ほどの男性だった。
「あっ!」
勇が、声を上げる。相手が、知った顔だったからだ。聖の死んだ祖父の友人で、勇も、まだ保育園に通っていた頃に会ったことがある。顔を綻ばせて歩み寄ってきた老紳士へと、聖は折り目正しく頭を下げた。
「お久し振りです。勇、ご挨拶は?」
「こんにちは!」
顔を上げた聖に、とん、と背を軽く叩かれて、勇がとびきり元気良く挨拶をする。老紳士は、感慨深げに目元を和らげて、顎を撫でた。
「こんにちは、勇くん。いや、大きくなったものです」
大きくなったってほめられた! と表情を益々明るくする勇の姿にそっと目を細めて、聖は音を紡ぐ。
「子の成長は早いですよ。あっという間に小学生です」
「そのようですね。しかし、本当に立派になって……」
ママと老紳士の会話をお利口さんに聞きながら、勇は懸命に考えた。
(えっと、昔学校の先生で、だいきおにーちゃんもこのひとに教わったんだよね)
聖の亡き祖父は教師だった。目の前の老紳士も元教諭であること、そして彼もまた聖のもうひとりの契約精霊――大樹の恩師であるということは、聖だけでなく勇もまたきちりと知っている。故に、
「だいきおにーちゃんの先生にしつもん!」
なんて、勇は黒い瞳を輝かせてビシッ! と手を挙げた。
「うん? 何ですか?」
「だいきおにーちゃんは高校のとき、やっぱり背がおっきかったですか?」
勇の口からとび出したのは、勇が未来のパパにと狙っている大樹に関する問い。未来のパパの情報をあつめねばっ! と張り切る息子の案の定の言動に、
(やっぱり大樹のことか……ブレてないなー)
と、聖がやや遠い目をする中、
「ええ、彼は高校時代から背が高かったですよ」
という具合で、にこやかに勇の問いに応じる老紳士。そして、自然と話題は大樹に纏わるものに。
「勇くんは、随分と彼に懐いているようですね。聖くんの方はどうですか?」
「どうって……彼も勇と同じ契約精霊ですし、その前からも何かと世話になってます」
「そうでしたか。……時に、お相手としては?」
この問いに、聖は胸の内に苦笑いをした。
(お相手ねぇ……まぁ、普通聞くか)
そんな聖が、老紳士にどんな言葉を返すのかを、勇は真剣な面持ちで見守る。ケッコンの話をママに向けてくれたのだということを、勇はちゃんと察したのである。真っ直ぐに老紳士を見て、聖はゆっくりと口を開いた。
「彼が本気でこちらを口説き落としてみせたら考えましょう」
「ほう……」
強気な台詞に、老紳士が小さく唸る。ただし、と、聖は口元に美しく弧を描いた。
「あたしも、簡単には落ちるつもりないですが」
言い切ったその瞳には、凛とした光が宿っている。その傍らで、勇は内心はしゃいでいた。
(ママがくどきおとせたらOKってゆった! これはだいきおにーちゃんにほうこくしないとね!)
ぼく、ぜったいピッタリだと思うんだ、とほくほくする勇。その口元が隠しようもなく緩んでいるのを見留めて、聖は軽く肩を竦めた。
(勇が報告しそうな気はするけど……)
大当たりである。母の勘は鋭い。しかし、聖は勇へと、特に何を言うでもなかった。
(知られて困るものでもないし、いっか)
サバサバとそんなことを思って、聖は愛しい息子の頭をもう一度撫でるのだった。
●シリウスの恩人と
「……シリウスくん?」
その日シリウスは、リチェルカーレとデートの約束をしていた。駅前の待ち合わせ場所に先に着いたのはシリウスの方で――けれど、じきにシリウスの名を呼んだのは待ち人ではなく。
「シリウスくん、よね?」
振り返った先に立っていたのは、丁度母親くらいの年頃の女性だった。看護師らしき女性が、微笑を湛えてシリウスの方を見ている。「大きくなって……」と零された慈しむような優しい声に、シリウスは瞬間の硬直を解いて、頭を下げた。
「……お久しぶりです」
脳裏に、子供の頃の出来事が蘇る。眠れない日が続いて入院した際、面倒を見てくれたのがカレン――目の前の看護師だった。と、その時である。
「シリウス! ごめんなさい、待たせて……」
ぱたぱたと駆けてきたリチェルカーレは、カレンの姿に気付いてはたと足を止めた。シリウスと見知らぬ看護師の女性の取り合わせに、青と碧の瞳がくるりと丸くなる。出会った視線にぺこりと会釈をして顔を上げれば、シリウスの目がこちらへ来るよう促していた。
「初めまして、リチェルカーレと言います」
そうして、カレンにきちんと挨拶をした後で。リチェルカーレは、尋ねるような眼差しをシリウスへと向けた。初めまして、とこちらも柔らかく紡いだカレンの方も、シリウスが口を開くのを待っている。シリウスは、先ずはリチェルカーレに、カレンのことを軽く紹介した。そのあと、
「こっちは……俺の、パートナーです。リチェルカーレと……」
「あらあら、そうなの。……もしかして、恋人さん?」
今度はリチェルカーレのことを紹介すれば、カレンの口から予想外の問いがとび出して。リチェルカーレが真っ赤になる中、一瞬声を詰まらせて、けれどシリウスは確かに頷きを返した。それを見留めて、はにかんだように微笑むリチェルカーレ。2人の様子を見比べて、カレンは益々目を細める。
「そう……大事な人ができて良かった。これからも、ふたり仲良くね」
言って、リチェルカーレの手を握るカレン。その手の力強さに、うっすらと潤んでいるように見える双眸に、リチェルカーレは少し驚いた。
「それじゃあ、元気で。怪我や病気の時は無理をしちゃだめよ」
「……はい」
カレンと別れた後で、リチェルカーレは、シリウスの顔をそっと窺う。
(いつもの静かな顔……だけど、少しだけ遠くを見ているような気がする)
実際シリウスは、去っていった彼女へと想いを馳せていたのだった。
(……故郷のことも、両親のことも、夢のことも)
何も言えずに表情を消していった自分を 唯一抱きしめてくれた大人。その背中が人波に消えてからもずっと、見守る。やがて――リチェルカーレが、そっと口を開いた。
「優しそうな人だったね」
「……子どもは大人に甘えていいんだと、眠りに落ちるまで、手を握ってくれた」
救われた気がした、とぽつり零された言葉を、リチェルカーレは静かに耳に聞く。見上げた彼のかんばせを彩る表情は、柔らかく解けていた。知らず、口元が緩む。
「……そう。お母さんみたい」
小さなシリウスに優しくしてくれる人がいて嬉しいと、花が綻ぶような笑顔を愛しい人へと向けるリチェルカーレ。瞳を瞬かせたシリウスが、小さく苦笑した。そんなシリウスの手を、リチェルカーレはぎゅっと握る。繋がれる、手と手の温度。
「――あのね、今は、わたしに甘えていいのよ?」
「……それは俺の台詞だけどな」
「……意地っ張り」
返事に、むぅと頬を膨らませた後で――堪え切れなくなって、リチェルカーレは、くす、と鈴が鳴るような笑みを漏らした。見ればシリウスの方も、空いている方の手の甲で口元を押さえている。翡翠の双眸には、優しい色が乗っていた。そうして2人は、小さく笑い合う。手に手を取って、あたたかな邂逅を遠く見送りながら。
●グレン・カーヴェルの叔父と
「お? 何だ、クソガキじゃねぇか」
街の屋外カフェでお茶をしていた時のこと。こちらにやってくる声の主を見留めたグレン・カーヴェルは「げっ」と表情を引き攣らせた。
「こんな所で会うとかマジかよ……」
「おいおい、随分な言い様だな」
口の悪いグレンと、豪快な印象を与える男。2人の会話を耳に、ニーナ・ルアルディは軽く首を傾けた。
「えーっと……グレンの知り合いの方ですか?」
「……叔父。んでもって育ての親、そんだけだ」
ニーナの問いに、グレンが仏頂面でそんなふうに応じれば、「つれねぇな」と言いながら、男――グレンの叔父は、2人と同じテーブルの椅子を引く。
「おい相席していいとか誰も言ってねーだ……」
「まあ、クソガキの紹介の通りのもんだ。よろしくな、嬢ちゃん」
「あ、はじめまして、ニーナ・ルアルディです。よろしくお願いします!」
「って、相変わらず話聞かねぇな!」
目の前で繰り広げられる平和なやり取りにつっこんで、ため息一つ、痛む頭を押さえるグレン。
(ニーナが一緒にいる時に見つかるとかついてないな、余計なこと言い出さなきゃいいんだが……)
そうは思うが、育ての親が憎いわけではない。ニーナの方もそれをきちりと察していて、
(何だかんだ言いつつも追い出そうとはしてないから、これは照れてるだけ、ですよね多分)
と、胸の内に頷いて、グレンの叔父へと笑みを向けた。
「叔父さんだったんですね……グレンとはあまり似てない……かも……?」
「そりゃ重畳だな。つーかクソジジィ、病院はいいのかよ」
「よくなきゃここにいねぇだろ。俺の仕事なんて、少ないに越したことはないしな」
2人のやり取りを耳に聞きながら、
(うーん……会話からするとお医者様、なんでしょうか……?)
なんて、ニーナは考える。と、ふと、叔父の方がニーナへと向き直った。
「そうだ嬢ちゃん、こいつのガキの頃の話でもするか」
「えっ、グレンの小さい時の話ですか? 是非聞きたいですっ!」
「っておい、やめろクソジジィ! お前も目を輝かせるな!」
「だって、グレンの小さい頃ってあまり想像できませんし、気になって……」
グレンが声を上げ、叱られた子犬のようにしゅんとしたニーナが上目遣いにグレンを見る。グレンは、内心だけで舌を打った。
(クソジジィめ、妙に饒舌だな。何があったかは知らないが、今日はかなり機嫌がいいらしい)
ニーナが色々と反応を返すから話していて飽きないのだろう、というのはわかる。グレン自身がそうだからだ。だからといって何でも話させるわけにはいかないと、叔父のことをじとりと睨むグレン。
「お? 生意気な面してんじゃねぇか。嬢ちゃんを取られて寂しいか?」
「馬鹿言うな。大体……」
2人のやり取りを眺めていたニーナが、不意に、くすりと笑みを漏らす。グレンも叔父も、揃ってニーナの方を見遣った。
「ご、ごめんなさい……いえ、家族っていいなぁって思いまして」
お互いに散々な言いようだがそれを楽しんでるのかも、と思ったことは胸の内に仕舞って、ニーナはにっこりとした。グレンが息を吐き、彼の叔父は楽しげに笑う。
「っはは、嬢ちゃんは面白いなあ。クソガキの嫁にするには勿体ない」
「へ? よ、嫁!?」
ニーナが真っ赤になって慌てるが、グレンの方は素知らぬ顔だ。
(……あー、前に会った時に少しだけこいつのこと話したっけか?)
とは叔父の反応に思ったものの、敢えて訂正には回らないグレンである。
「早く孫の顔を拝ませてくれよ」
「ま……孫!? あの、私達まだ、あの、その……」
「照れることはねぇよ。嬢ちゃんならいい嫁になるさ」
ニーナの青の双眸が、救いを求めるようにグレンへと向けられた。けれどグレンは、ふっと口の端を上げると、
「いい嫁になる? 俺が選んだんだ、当然だろ」
と、何でもないような調子でさらりと言い放って。
「ぐ、グレンも面白がって話題に乗っからないでくださいーっ!」
青空の下に、益々頬を熟れさせたニーナの叫び声が、綺麗に響き渡った。
●日向 悠夜の友人と
「あ……どうも、こんにちは」
恋人を迎えに来た折、降矢 弓弦は『彼』に出会った。草木を眺めながら、日向 悠夜を待っていた丁度その時、いかにも旅帰り、という装いの男が、すぐ近くを通り掛かったのだ。弓弦が挨拶をすると、男は懐っこい大型犬のようににっこりとして「ああ、どうも!」と元気良く応じた。
(やっぱり住人かな? このアパート、旅好きが集まるんだって悠夜さんが言ってたし)
そんなことを思いながら、弓弦は、男がアパートの階段へと向かうのを何の気なしに眺める。その時、悠夜の部屋の扉が勢いよく開いた。実は悠夜、本日ちょっぴり寝坊している。急ぎ部屋をとび出す様子に、弓弦さんを待たせてるから急がないと、という彼女の心の声が聞こえた気がして、弓弦は仄かに口元を緩めた……の、だが。
「って、クリス! 久しぶり!」
旅装姿の男を階段の下に見つけるや、悠夜はぱっと表情を華やがせた。そのまま一段飛ばしで階段を駆け降りた悠夜を、男は慣れた様子で抱き留める。
「今帰ってきたの? ふふ、おかえり」
「おう、ただいま!」
目の前で抱き合う2人を前に、弓弦は金の双眸を丸くした。驚き、次いで、親しげな2人の様子に気後れする弓弦。中々割って入れずにいるうちに、
「これお土産。悠夜が好きそうな本見繕ったぜ」
「流石、分かってる~! ありがと」
なんて、仲睦まじい2人の会話は益々盛り上がる。と、弓弦の気が引けているのにふと気付いた悠夜が、ごめんねと紡ぐ代わりに眉を下げて笑った。
「紹介がまだだったね。弓弦さん、この人は友人のクリスだよ。クリス、こちらはパートナーの降矢弓弦さん」
「わ! この人が!」
男――クリスの瞳が煌めく。気付くと弓弦は、握られた手をぶんぶんと振られていた。
「クリスです! お噂は悠夜から聞いてます!」
「え、あ、ど、どうも……」
勢いに押されながらも、彼の笑顔や態度を好ましく感じる弓弦。ごく自然と、記憶の中の親友の笑顔が、クリスのそれと重なった。くすり、悠夜が笑う。
「ふふ、元気そうで良かったよ」
「悠夜こそ。それに、悠夜の大切な人にも会えて……って、あ、もしかして」
「そうそう、これからデートなんだ」
「ああ、やっぱりか! すいません、邪魔しちゃって」
謝るクリスの態度は真摯だが、相変わらず近い悠夜と彼の距離に、弓弦ははらはらしてしまう。
(いい人だって、少し話しただけでわかるのに……いや、だからこそ、なのかな)
弓弦の複雑すぎる心境を知らない悠夜が、距離感はそのままに、クリスへと問いを投げた。
「クリスも、早くアリシアに会いたいんじゃない?」
「勿論! 会いたいに決まってる!」
1カ月ぶりの帰宅だからな、と語るクリスの様子に、弓弦は察する。アリシア、という人が、どうやらクリスの恋人らしいと。ほう、と、胸の内に安堵の息が漏れた。そして、クリスと別れた後のこと。
「あはは、なんていうか嵐が来たみたいだったね。色々とごめんね、弓弦さん」
謝って、行こうか、と歩き出した悠夜の手を、弓弦はそっと握った。悠夜もその手を握り返して、2人は、手に互いの温もりを携えててくてくと行く。
「実を言うと……二人の距離が近くて、少しはらはらしたんだ」
「距離が近い、か。クリスとは十数年来の友人なんだ。それで、アパートのお隣さん」
だから、久しぶりに顔を見かけて、「あの影は!」ととび出してしまったのだと、悠夜はどこか悪戯っぽく苦笑を漏らした。その様子に、弓弦の口元が柔らかく緩む。
「そういえば、クリスさんって、どこか悠夜さんに似てる。……いい人なんだな、って」
「似てるかな? ふふ、長い付き合いだからね」
くすくすと笑った後で――悠夜は、意味ありげな眼差しで弓弦を見遣った。
「……これからは、私も弓弦さんに似るのかな?」
「だとしたら、僕も悠夜さんに似るのかもしれないね」
互いに言い合って、どちらからともなく笑み零す。繋いだ手はそのままに、2人は長く続く道をゆっくりと歩いた。



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | 巴めろ |
| エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
| 男性用or女性用 | 女性のみ |
| エピソードジャンル | イベント |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ビギナー |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | とても簡単 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | なし |
| リリース日 | 02月26日 |
| 出発日 | 03月04日 00:00 |
| 予定納品日 | 03月14日 |

2017/03/03-23:42
2017/03/03-23:21
こんばんは。レベッカ・ヴェスターよ。
どうぞよろしくね。
2017/03/01-23:28

