


「ダンスホールで待ち合わせをしましょう。そうね、約束は19時がいいわ」
お互い着替えて準備も整っているのに、そんなことを言うから、おかしいと思ったのだ。
ホールの壁にもたれて、精霊は、パートナーがやってくるのを待っている。
壁掛けの時計を見上げれば、約束の時間、きっちり。
ふいに、ホールに響いていた音楽が止まった。
互いに身を寄せ踊っていたカップルが、すっとホールの外側へ。
反対に中央へとやってきたのは、シルクハットをかぶった老紳士である。
丁寧に腰を折って挨拶をして、彼は言う。
「皆さん、ゲームをしませんか」
そこで出てきたのは、パートナーの神人だ。
「えっ……なんで、あんなところにいるんだ」
驚き声を上げるも、彼女は答えず。
紳士がにこりと笑い、唇の前に指を立てた。
黙って見ていろ、ということか。
口を閉ざすと、彼は納得したように頷いた。
それと同時に。
かつん、と彼女たちが、ハイヒールの踵を鳴らす。
つられて注目してみれば、はいているのはクリスタルガラスの靴だ。
ホールの光を集めて輝く、透明な靴。
しかし片足。もう片方には、色鮮やかなヒールをはいている。
彼女たちは、ホールの中央に運ばれた椅子に、ゆったりと腰を下ろした。
はらりと鮮やかなヒールだけを脱いだところで。
紳士が、ぱん、とひとつ、手のひらを打つ。
「さあ、プリンス。プリンセスがお待ちです。彼女にぴったりの靴を見つけて、お届けしてあげてください」
名指しをされているわけではない。
だが、彼女のプリンスというならば――。
精霊はホールへと一歩を踏み出した。
座る彼女たちの前に並んだ、片足だけのガラスの靴のもとへと。


まずは乗船代として、400jrいただきます。
神人は精霊には言わず、豪華客船で行われる余興に参加をしていました。
彼女がはいているのは、ガラスの靴。しかし、右足だけです。
左足は別のハイヒールをはいていましたが、今は素足。
彼女は、プリンスを待っています。
もし自身を、彼女のプリンスと思うならば。
彼女が座る目の前にあるガラスの靴(左足のみ)の中から、ぴったりのサイズを選び、彼女にはかせてあげてください。
ガラスの靴は、全員分同じデザイン。透明で、色は入っていません。
サイズの記入もありませんし、サイズ順に並んでもいません。
また、参加人数の数よりも多くの物が並んでいますので、消去法で選ぶことも難しいでしょう。
サイズは0.5センチ刻みです。
こんにちは。瀬田です。
こちらはウィンクルムごとの描写となります。
紳士淑女なウィンクルムはドレスアップしていますので、服装にこだわりがある方はプランに記載ください。
申し訳ございませんが、服装のおまかせはご遠慮を。
なぜって? センスがないので苦手なんです……すみません。
背景はちょっと違う時のものですが、ホールってこんな感じかなって!


◆アクション・プラン
リチェルカーレ(シリウス)
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淡い水色のドレス 床に着くくらいの長さ 白糸で花や葉の刺繍 髪はアップに 濃い青のリボンを結び 靴のサイズは22.5 いつもと違う彼の装いにどきり だけど動きを止めた彼の様子に眉を下げる …どうかしたの? 楽しそうだから 参加を決めてしまったけれど やっぱりやめますと言った方がいいかしら 近づいてくる彼に目を丸く 差し出された靴にどきどきしながら足を わ、ぴったり…! 嬉しくなって笑いかける 彼を誘って甲板に 平気よ 私だってヒールを履いたことくらい…きゃあ! 間近にある彼の顔と体温に呼吸が一瞬止まる ごめんなさ… 歌? 珍しいお願いに目をぱちくり 頬を染めたまま笑顔 ーじゃあ、私の王子様に 「大好き」の気持ちをこめて (歌唱スキル使用) |
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海色のアメリカンスリーブのAラインドレス 24.5 面白そうだから参加したけど… 様子がおかしい? 行動 やば、怒ってる? (黙って参加したから?楽勝過ぎるってこと? …うーん、なんだろ (なるほど、あたしだけデカいもんなぁ…上手いこと思いつくぜ 驚かせようと思ったんだ…ごめん …え?(これ素の口調じゃ な、なんだよ、またからかってるのか? もうやめる、って…(これからは男として振る舞うってこと? 催眠セラピー(EP6)を受けた日を思い出した (同じ目だ、自分だけを見てって…切望してるような そんな仔犬みてぇな目ェするなよ こ、今夜は…だぞ? (凄く…ドキドキする 一曲だけか?…一晩じゃなくて (手放せなくなるって…どうしたんだよ |
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衣装:星刺繍入りのイブニングドレス (ハイヒールは不慣れで足取り少し不安定 余興のお話を聞き スノーくんのお姫様になりたくて…内緒で参加してしまいました …見つかるでしょうか サイズは書いてないし順番もバラバラで、私にもどれが合うか分からなくて 真剣に探してくれる彼の様子をドキドキと見つめ 履かされる瞬間はシンデレラ気分 合えば頬を緩ませて …お待ちしていました、王子様 (促しには甘え、腕へ手を添えさせてもらう あの…わがままに付き合わせてしまってごめんなさい お姫様になりたかったんです …スノーくんの、お姫様、に 気付いた感情をはっきりと言葉にするにはまだ勇気が足りなくて 俯きながら腕にぎゅっと掴るので精一杯 |
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服装は黒薔薇をあしらった赤のカクテルドレス 靴のサイズは23センチです なかなか現れないプリンスのことは ゆっくりとホール内の壁際を見回し捜しましょう だいぶ困っておいでのようです。 ええ、知っています。 きっとハチさんはお伽話のようなプリンセスとプリンスの姿を 思い浮かべているのでしょうから。 目に留まった(おそらく私にぴったりのサイズの)靴ではなく 一目で私には履けないであろう靴。 差し出されたそれを見て、 ハチさん、新しいお話を作りませんか、と。 清楚なドレスの似合うお姫様のいない、高貴な王子様もいない、 けれどドキドキワクワクする物語です。 ねえ。そのためにはここから連れ出して頂きませんと。 まずは靴が必要ですね? |
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服装: 水色の花のバレッタ クリーム色のビジューネックレス アクアマリンのバルーン袖フレアワンピース 腰に水色の花のコサージュ 行動: ふふ、ハルトってはおどろいてる。 ナイショにしてたもの。そうじゃなくちゃね。(笑顔 私のくつの大きさわかるかな。おしえたことないから、ムリかも? (足を揃え、背筋を伸ばし大人しく待つ 「なやんでるハルトもかっこよかったもの。だいじょうぶよ」 サイズあうかしら、すこしどきどきね。 「ハルトすごい、ぴったり。なんでわかったの?」 (手を取って、立ち上がる 「たまたまでもすごく嬉しい!」(笑顔で抱き着く (ハルトを促しホールのお客に笑顔で一礼 さいごまでしっかりがだいじなのよ。 「あとでおどろうね」 |
●踊りましょう、王子様
アクアマリンのワンピースを着て、真衣は椅子に腰を掛けている。
ふふ、ハルトってばおどろいてる。ナイショにしてたもの。そうじゃなくちゃね。
遠目にベルンハルトを見て、少女はにっこり、ご機嫌の笑み。けれど、その場は動かない。
だって今、真衣はプリンセスなのだ。
いくらベルンハルトが気になっても、駆けて行って抱き付くわけにはいかない。
そうだ、靴だって、片一方しかはいていないのだから。
ほら、この足よ。
真衣がつま先を持ち上げると、細い足を隠しているフレアスカートが、ふわりと揺れた。
腰につけた水色の花のコサージュも、ひらり。
私のくつの大きさ、わかるかな。おしえたことないから、ムリかも?
気付けば真衣は、ベルンハルトだけをじっと見ていた。
さっき揺らした足はきっちり揃えて、プリンセスらしく背筋を伸ばして、期待の眼差しで。
対するベルンハルトは、やっと真衣の行動に合点がいった。
濃茶の革靴で、大きくダンスホールの床を踏む。
ブラウンのジャケットには、真衣の腰のコサージュと同じように、水色の花のラベルピンをつけている。完全ではないけれど、お揃いだ。
ベルンハルトは数歩を進み、真衣の正面にある台の上、ガラスの靴を手に取った。
きっと普通のガラスとは違うと思いつつ、念のため、普段以上に丁寧な扱いを心がける。
サイズはこのくらい、か? いや、こっちか?
少女の靴だ。たぶん並んでいる中でも、一番小さい類のものだろう。しかしだからと言って最小サイズが正しいとは限らない。
振り返り、ちらりと白い足を見て、再び目の前の靴を見る。
正直に言えば、0.5センチ刻みはきつい……が、きっと。
ベルンハルトは眉を寄せつつ、振り返る。
座ったままの真衣の前へ立ち「待たせてすまない」と口にした。
しかし真衣は、実に楽しそうに笑う。
「なやんでるハルトもかっこよかったもの。だいじょうぶよ」
「それは……ありがとう」
自分を見上げる丸い瞳。可憐な唇がそんな言葉を発したとなれば、うっかり頬が染まってしまう。
それを隠すためもあり、ベルンハルトはすぐに身を屈めた。床に片膝をつき、真衣の足の裏に手を添える。
その仕草に、真衣の胸は高く鳴った。
こうしてガラスの靴をはかせてもらえるなんて、本当のプリンセスみたい。
ハルトが透明なガラスの靴をすっと足に当てる。
最初はちょっときついかと思ったが、それは見事、真衣の足にはまった。
「ハルトすごい、ぴったり! なんでわかったの?」
「俺も驚いたよ」
ベルンハルトは立ち上がり、真衣へと手を差し出した。
その手を取り、真衣は問う。
「どうしてハルトが驚くの?」
「それが、偶々なんだ」
最後の確信が持てなかったことを素直に打ち明ければ、真衣の腕が、ベルンハルトの背中に回る。
「たまたまでもすごく嬉しい!」
プリンセスの体を抱きとめて、ベルンハルトは穏やかに笑った。
偶々なんて、普通の女性ならば不機嫌になってしまうのではないか。
それを嬉しいと言ってくれる真衣の喜びように、日頃の疲れも吹き飛ぶようだ。
しかしそこで、真衣はここがホールの真ん中で、衆目があることを思いだしたようだった。
少しばかり頬を染めた後、ベルンハルトから身体を離し、彼の隣に立つ。
さいごまでしっかりがだいじなのよ、と大人びた口調で言うものだから、ベルンハルトはつい真顔で頷いてしまった。
タイミングを合わせて、二人で一礼。
手を繋いでホールの端へと歩きながら、真衣が言う。
「あとでおどろうね」
「ダンスはしたことが無いんだが」
見下ろした真衣の頭の上には、水色の花のバレッタが見える。そういえば、クリーム色のビジューネックレスも、今日のために準備したと言っていた。
これは、踊らないわけにはいかないな。
ベルンハルトは腰を曲げ、真衣の顔を覗き込んだ。
「お相手をお願いするよ、プリンセス」
●王子様よりあなたが欲しい
菫 離々はダンスホールをぐるりと見回した。
黒薔薇をあしらった赤のカクテルドレスは、今日のためにと選んだものだ。
豪華客船でダンスホールがあるならば、それなりの格好をするのが礼儀だし、ドレスだって着たかった。
しかしこんなに綺麗な服を着てるのに、プリンスはまだ来ない。
あそこに、いるのに。あの壁際に。背をつけて。
まったく、どうして男性が壁の花になっているんですか。しょうがない人ですね、と。
離々は内心で苦笑した。
タキシードを着たプリンス……蓮は、遠目にも困っているように見える。
もちろん、困るだろうとは思っていた。
だって……きっとハチさんは、お伽噺のようなプリンセスとプリンスの姿を、思い浮かべているのでしょうから。
滑らかな肌に赤い唇、ふんわりドレスでおしとやかな、笑顔の似合うお姫様と。
金髪碧眼、背筋をまっすぐ伸ばした色白の、いかにも紳士で優しい王子様。
困っていることはばれていると、遠くに離々の姿を見ながら蓮は思う。
お嬢、俺は決して、お嬢の王子様ではありません。
そこまで自惚れちゃいませんぜ。
いくらタキシードを着て見目を整えたって、カクテルドレス、淑女のお嬢には釣り合わない。
だがきっと、自分が行かねば彼女はホールの真ん中で待ちぼうけ。
いや、見かねた見知らぬ誰かが出ていけば、それはそれで複雑だ。
それならばと、蓮は壁につけていた背中を起こした。
つかつかとホールへ向かい、椅子に座る離々の前へ、跪く。
頭垂れると、目の前には素足。それでも、
「勘弁してください……」
と呟いて、姫を見上げた。
しかし離々は、いつものように微笑むだけで、何も言わない。
無言なのは、靴選びをしろという意味でしょうか。
参ったと一度頭を振って、蓮は立ち上がる。
そしてそのまま離々に背を向けると、ガラスの靴が並ぶ台座の前に立った。
靴のサイズが23センチなのは知っている。だから、大体選ぶのは簡単だ。
でも……。
離々は、蓮の行動を目で追っている。
彼が選んだ靴を見ても、表情は変えない。
それこそ子供用みたいなサイズの靴を、裸足に添えられても。
むしろ、困惑顔をしているのは蓮の方だ。
彼は再び離々の前に膝を折り、明らかに離々の足には合わない靴を見つめている。
微動だにしない、白い足。その足裏に、手を添えることすらできない。
空気を読めないのは承知の上。でも俺は、道化でいいんです。
王子さまになんて、なっちゃいけませんし。
言わず黙りこくった彼の頭上で、離々の高い声が響いた。
「ハチさん、新しいお話を作りませんか」
「……話、ですか」
蓮は顔を上げる。
離々はうっすらと微笑んだ顔で、一度頷いた。
「ええ。清楚なドレスの似合うお姫様のいない、高貴な王子様もいない、けれどドキドキワクワクする物語です」
そこで彼女は、蓮の前に置いた足を上げる。
「そのためには、ここから連れ出していただきませんと」
言いたいことは、わかりますね、と。
緑の瞳に問われ、蓮は立ち上がる。
「……お嬢さんは俺を甘やかしすぎですね。王子どころか、従者か馬ポジションですよ、俺」
本当ならば、素足のまま、抱えて攫ったっていい。
片足きりのガラスの靴が、ホールの床に落ちたところで、彼女はきっと気にしないだろう。
しかしそれでは、離々に似合わない。
清楚なドレスのお姫様ではなくても、高貴な王子様ではなくても、みんな靴くらいはいている。
優しい離々にも美しいカクテルドレスにも、当然上等な靴が必要なのだ。
「……選び直しますね」
――お嬢に似合う靴を。
蓮は、再度離々に背中を向けた。
彼女の足のサイズはわかっている。
0.5センチの誤差は間違うかもしれないけれど、選ぶのはそう難しいことではないのだ。
●王子様に癒しの歌を
淡い水色のロングドレスには、繊細な刺繍が施してあった。
細かで美しい花と葉を選んだのは、花屋で働くリチェルカーレらしいと思う。
だが……と。
シリウスは、ホールに立ち入ってすぐに足を止めた。
どうかしたの? とでもいうように、リチェルカーレは首をかしげた。
結い上げた髪の上で、瞳と同色のリボンが揺れる。
一瞬曇った表情に、申し訳ないと感じつつ、シリウスの胸に生まれた不安は消えなかった。
――私があなたの神人でいいの?
何度か聞いた言葉が、リチェルカーレの声で耳の奥に蘇る。
だが、逆だ。俺が、お前の精霊でいいのか。
彼女のように問うことができず、想いはシリウスの胸を焼く。
リチェルカーレは、先ほど色付きのヒールを脱いだ素足を、そっと床に下ろした。
水色のシャツに黒のジェケットを羽織り、首元にループタイを締めたシリウスは、いつもと違う雰囲気でどきりとした。
普段もかっこいいけれど、今日は本当に王子様のよう。
そんな彼がガラスの靴を選んでくれるというならば、鼓動も高くなるというもの。
それなのに、シリウスはこちらへやってこない。
……楽しそうだから、参加を決めてしまったけれど、やっぱりやめますと言った方がいいかしら。
そのために司会者の元へ歩き出そうと、裸足で床を踏んだのだ、が。
こちらを見るシリウスの眼差しが、すっと和らいだ気がした。
「えっ……」
シリウスは先ほどの躊躇いなどなかったかのように、大股でホール中央までやって来た。
驚き目を丸くするリチェルカーレを一瞥し、ガラスの靴が並ぶ台座の前へ進む。
小柄な彼女は、足も小さい。だがこれではいくらなんでもと、子供サイズには見向きもせずに、中のひとつを自身の手のひらに載せた。自分の手と靴と比較をすることで、細かなサイズを測るのだ。
「よし」
振り返り、リチェルカーレの前で床の上に片膝をついて、滑らかな足をとる。
そっと靴をはかせれば、見事それは、ぴたりとはまる。
「わ、ぴったり……!」
リチェルカーレの弾む声。大輪の花のように華やかな笑顔に見つめられ、シリウスも微笑を浮かべた。
突如参加の催しの後は、二人で甲板を訪れた。
リチェルカーレが、行きたいと言ったのだ。
暗い海に波は見えず、ざあ……と水の音が聞こえるだけ。
風がリチェルカーレの髪をさらい、細い体を揺らす。
「……歩き方が非常に危なっかしいんだが」
寄り添い心配そうに言うシリウスを、リチェルカーレが見上げる。
「平気よ。私だってヒールをはいたことくらい……きゃあ!」
「リチェ!」
予想通りバランスを崩した彼女に、シリウスはすぐに手を伸ばした。
数秒の内に、リチェルカーレはシリウスの腕の中。
「ごめんなさ……」
言いかけて、リチェルカーレの呼吸が止まる。
二人の身長差は、いつもならば35センチ。しかしそれが、ヒールの分、そして今は抱き留めた分、ぐっと近くなっている。
そろそろとシリウスの翡翠の瞳を見つめると、彼はより一層強く、リチェルカーレを抱きしめた。
ホールの時以上に、リチェルカーレの心臓は激しく鳴っている。
しかしいつもより近い距離に動揺しているのは、彼女ばかりではなかった。
彼女の大きく碧い瞳に、シリウスの意識はすっかり囚われていたのだ。
……離したくない。……離れたくない。
だが現実的に考えて、いつまでもこうしているわけにはいかないのも事実。
だったらと、シリウスはゆっくりと唇を開いた。
「何か歌ってくれないか?」
「……歌?」
丸い瞳の瞬きに、シリウスは「ああ」と頷く。
「今夜は、俺の姫なんだろう?」
その言葉に、リチェルカーレの頬がさっと紅潮する。
しかし表情は、見惚れんばかりの見事な笑顔。
「じゃあ、私の王子様に」
大好きの気持ちを込めて。
シリウスの耳元で、リチェルカーレの歌声が響く。
自分のためだけに歌われた歌は、シリウスの心の不安を癒していくようだった。
●お姫様になれて、よかった
星の刺繍入りのイブニングドレスは、夢路 希望の白い肌にとてもよく似合っていた。
ドレス姿は何度か見たことがあるけど、今日は一段と輝いて見える。
月の刺繍がされた白い燕尾服に身を包み、スノー・ラビットは柔らかく微笑んだ。
本当のお姫さまみたいだ、なんて。
言えばきっと希望は、雪の頬を真っ赤に染めてしまうのだろう。
彼女は今、ホールの中央で椅子に座っている。
ラビットはちょうど、そちらに向かって歩いているところだ。
一緒にいるのに待ち合わせなんて言うから不思議に思ったけれど、こんな彼女を見られるのなら、了承してよかった。
歩くたびに、ラビットの長い耳がふわふわ揺れる。口元は、笑みの形のままだ
その様子を見て、希望はほっと安堵の息をついた。
参加を勝手に決めてしまったけれど、どうやら迷惑ではなかったようだ。
もっとも、たとえ迷惑でも、不満を顔に出したりはしない彼だけれど。
余興の話を聞いて、どうしても参加したいと思ってしまった。
だって、私……。
希望は、黒い瞳で、真っ白な王子様を見つめた。
色付きのヒールを脱いだ足は、ひんやり冷たくなっている。
この足に合う靴なんて、見つかるでしょうか。
ご機嫌でやって来て、靴が並ぶ台の前に立っている、ラビットの背中に思う。
もちろん、見つけて欲しい。
でも靴にサイズは書いてないし、ちょっと見ただけではたとえ希望本人でも、自分に合う靴なんて見つけられないだろう。
サイズの違う靴を両手に持って、比べて探す彼の姿に、希望の鼓動は早くなる。
スノーくん、あんな真剣に選んでくれて……。
それだけでも、とてもとても、嬉しくなってしまう。
そんな彼女の視線を、ラビットは背で感じていた。
ノゾミさんの足のサイズは、と、思い巡らせてみるけれど、なかなかどうして難しい。
彼女の素足をちらちら見ては、靴を眺め。
これは大きすぎるよね……こっちはさすがに小さいかなと、熱心に考えた。
――だって……ノゾミさんの王子様に、なりたいから。
期待に満ちた、それなのにどこか不安そうな表情で、僕を見ているノゾミさんの。
さんざん悩んで迷って選んだひとつを手に、お姫様の元へと向かう。
緊張の面持ちでラビットを見上げる彼女に微笑みを見せて、黙ったまま足元に跪いた。
ドキドキと、まるで希望の鼓動が聞こえるよう。
でもラビットも、たぶん同じくらい速く、胸が打っている。
それでもなんとか冷静に、足に手を寄せ、ガラスの靴を合わせる、が。
「……ごめんね、少し小さかったみたい。もう一回、探してくるから」
たぶん0.5センチの差。ラビットは立ち上がり、今度こそと次の靴を持って来た。
きっと大丈夫と、先ほどと同じように、希望の足に手を添える。
そして――。
「あっ……」
ぴたりとはまった靴に、希望の声が上がる。
「……お待たせしました、お姫様」
「……お待ちしていました、王子様」
自身を見上げる笑顔の姫に、ラビットはすっと手を差し出した。
それをとり、希望はゆっくり立ち上がる。かつん、とヒールが鳴って、そこで、並んで一礼。
「……ノゾミさん」
希望の少々不安定な歩みをサポートするためと、ラビットが軽く曲げた肘。希望は気付き、彼の腕に手を添える。
「あの……わがままに付き合わせてしまってごめんなさい」
ごく小さな声で、希望は言った。
「お姫様になりたかったんです。……スノーくんの、お姫様に」
彼を見上げる勇気がなくて、視界に映るのは、ホールの床だけ。
それでも何とか想いを声で表せば、ラビットはゆったりと微笑んだ。
希望の手は、今ラビットの腕を、ぎゅっと掴んでいる。
そんなに緊張しなくてもいいのに。
「ノゾミさんは僕にとって、大切なお姫様だよ」
背中を丸めて耳元で囁くと、彼女の顔は案の定、真っ赤に染まってしまった。
●そんな目で見るなよ、王子だろ?
「久々に声がけしてもらえたと思ったら……」
ヴィルヘルムは、椅子に座ったエリザベータを見やった。
海色Aラインのドレスは、長身の彼女によく似合っている。
姿勢もいいから、アメリカンスリーブもぴったりだ。
こんな姿を見るのは自分だけで十分、と。
ヴィルヘルムが、周囲を見回す。どうやらもう一人の契約者は、今ここにはいないらしい。
まったく、見ず知らずの男にこんなに気持ちをかき乱されているなんて。
それに、エルザちゃんもエルザちゃんよ。
ワタシは服飾のプロよ? 靴ひとつ当てるなんて、簡単すぎる。
自分の方へと向かってくるヴィルヘルムを見、エリザベータは眉根を寄せた。
やば、ヴィル、怒ってる?
黒スーツのベストもスラックスも、似合ってる。
颯爽と歩く姿も見栄えがいいし、唇には笑みさえ浮かんでいるけれど、まとう空気が違うのだ。
この余興に黙って参加したから? 楽勝すぎるってこと?
それだけで、そんなに怒るのか?
ヴィルヘルムはたくさん並んでいるガラスの靴の前に立ち、すっと目を細めた。
「エルザちゃんの身長は170弱……推定サイズは23から26ね。体格が細いから、25以上は無さげ…なら、24.5を探すわ」
ほかの参加者は一様に、小柄な子が多い。たぶん並ぶ中では大きな部類だろうと、ヴィルヘルムは丁寧に、靴をすべて、サイズ順に並び替えた。
24.5と決めたならば大体のサイズは手に持っただけでもわかるけれど、万が一にも外したくないからだ。
ここにはいないもう一人の契約者より、自分が優位に立ちたいという気持ちもある。
ヴィルヘルムの呟きは、彼を待つエリザベータにもしっかりと聞こえていた。
なるほど、あたしだけデカいもんなあ……うまいこと思いつくぜ。
感心しつつ、彼の細かな行動を見ていると、そう時間がたたないうちに、ヴィルヘルムは靴を持ってやって来た。
「お待たせ……エルザ」
見下ろす彼は、先ほどまでの表情とは一転して、笑みを浮かべている。
だがエリザベータは、上目遣いで、彼を見る。
「驚かせようと思ったんだ……ごめん」
ヴィルヘルムは黙ったまま膝を曲げ、彼女の足元の床へとついた。
俯いてエリザベータのすらりとした足をとり、選んだガラスの靴をはかせる。
案の定ぴったりだったが、彼からの喜びの声はない。
代わりに濃藍の瞳が、エリザベータを捕えた。
「例え余興でも、ボクの言葉は本気だ。今夜だけでいい、ボクのお姫様になって」
「えっ……」
エリザベータは息を飲む。
これって素の口調じゃ、と気付いた瞬間、ドレスに覆われた胸が、一気に激しく脈を打ち出した。
だがエリザベータは、それを素直には表さない。
「な、なんだよ。またからかってるのか?」
きっといつもの彼ならば「そうよ、エルザちゃんが悪戯するから」なんて、言うと思った。
だが今回は「違うよ」と一言。
「キミの前で、オネエさんはもうやめる」
――だから、あの人ばかり見ないで。
ホールに探した相手のことを、ヴィルヘルムは思う。
その目はエリザベータに、彼がセラピーを受けた時のことを思いださせた。
あの時、ヴィルヘルムは今のように男らしい口調で言ったのだ。
エリザベータを、独占してみたい、と。
――あの時はすぐにいつものヴィルに戻ったけど、今度は違う……。
切望の眼差しに、エリザベータは口を開いた。
「そんな仔犬みてぇな目ェするなよ。こ、今夜は……だぞ?」
言いながら、鼓動はますます早くなっている。
後半は彼を直視できなくて目を逸らしてしまったが、ヴィルヘルムは笑ったようだった。
「ふふ、よかった。じゃあお姫様、ボクと一曲踊ってもらえる?」
立ち上がり、手を差し出すヴィルヘルムを、エリザベータはそろそろと見上げる。
「一曲だけか? ……一晩、じゃなくて」
「一晩かあ……」
ヴィルヘルムは呟き、姫君の鮮やかな髪に隠れた耳に、唇を寄せる。
「手放せなくなるけど、いいか?」
「それってどういう……っ」
真っ赤になったエリザベータには答えず。ヴィルヘルムは、彼女の手をぎゅっと握った。
| 名前:夢路 希望 呼び名:ノゾミさん |
名前:スノー・ラビット 呼び名:スノーくん |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | 瀬田一稀 |
| エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
| 男性用or女性用 | 女性のみ |
| エピソードジャンル | ロマンス |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | とても簡単 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | なし |
| リリース日 | 01月04日 |
| 出発日 | 01月12日 00:00 |
| 予定納品日 | 01月22日 |

2016/01/11-23:46
2016/01/08-21:11
はじめましてのひとがいっぱい。
私、真衣っていうの。よろしくね。
ハルトは私のくつの大きさわかるかしら。
ピッタリのだったらうれしいわ。
2016/01/08-19:49
2016/01/07-01:10
2016/01/07-00:33
はーい、ヴィルヘルムよぉ☆
久々にお出かけに誘ってもらえたと思ったら、エルザちゃんが余興に参加してるとはねー
うふふ、ワタシの本気見せちゃおうか・し・ら?
スノーちゃん達は随分前にお会いしたくらいかしらぁ、お久しぶりよー
他の皆は初めましてよね、よろしくね♪

