プロローグ
「世の中には男装の麗人という単語があるだろう」
「あるな」
「その逆は何だと思う」
「女装の……醜人?」
「酷いな」
「あぁ、全く以て酷いな」
神妙な顔をしたのはミラクル・トラベル・カンパニーのコンダクター達。
どうやら世に言う麗しの男装美女に対抗する女装男子コンテスト的な物を企画したいらしい。
問:何処に需要があるんですか。
答:その層に需要を呈するんだよ。
「『女装男子コンテスト』ストレートすぎてインパクトが無い!」
「なら『男の娘コンテスト』とかどうだろう!」
「いかにもな女装女装しい装いも愛くるしい!」
「美女男子も見たい!!」
「それだ」
「は?」
ぴっ。きらっきらの閃き笑顔と共に、向けられる人差し指。
「『美(女)男子コンテスト~可愛いも正義~』でどうだろう」
問:だからどこに需要があるんですか。
答:ぶっちゃけ俺得企画だよ言わせんな馬鹿野郎。
「ペア参加限定! 衣装からメイク道具一式の貸し出しで互いにメイクをし合う楽しみを発掘!」
「そしてあわよくば! 目覚めよその(女装)魂!」
「ようし、さっそく企画書を作るぞ!」
そして暴走したコンダクター達のとんでも企画は、面白半分で通されてしまった。
――美しくある必要ない。
可愛くある必要も、ない。
何より嫌がる物を無理やり押しけるのはナンセンスである。
楽しめる人、推奨。
でも恥じらいって美味しいよねという本音も彼らにはある。
ゆえにタブロス市内のアミューズメントパークでの開催・割引という特典に釣られてみるのも大いに結構。
コンテストと名をつけてはあるが、女装男子が和気藹々と遊んでいるのを傍から眺めていたいゆえの口実という事は、察しても黙っていて貰おう。
「どうぞ楽しい一日をお過ごしください」
企画案内を行うきらっきらの笑顔は、決して営業スマイルではなく。
彼らの、心からの笑顔なのだから。
解説
●審査基準
楽しんでるね!(↑↑↑)
美しいね!(↑)
可愛いね!(↑)
恥じらい美味しいです(↑↑)
●費用
参加費用は無料
アミューズメントパークの利用に200Jr(割引価格。通常500Jr)
衣装メイク類の貸し出しに80Jr
持参して頂いても構いませんが女装のコンセプトに反するものは使用できません
スカート限定。パンツスタイルはお控え下さい。
(スカートの下に穿くのは可)
●コンテスト優勝者は景品代わりに施設の費用がタダになります
女装であることさえ気にしなければタダでテーマパークを遊べるかもしれないぞ!
一般的な遊園地にある物は大体あると思って頂ければ
●どちらか一方だけの女装でも、良いんですよ。
ゲームマスターより
ネタです。まごう事なき、ネタエピソードです。
きゃっきゃうふふしてたらそれでいいんです。
キスよりハードルが高い気がしている皆様。
それは気のせいです。
楽しんで頂けたら幸いです。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
アルヴィン=ハーヴェイ
割引があるって聞いてたけど、女装…だったんだね。 …アミューズメントパークがお得に楽しめるのは魅力的だし。 …うん、此処は覚悟を決めないとかな。それにやるからには全力で楽しまないとだし。 衣装の貸し出しは利用しないとね。 …うーん、一番無難なワンピースにしておこうかなぁ。…フリルとか沢山あるけど。 色は薄紅色が良さそうかなぁ。 黒の二―ハイにパンプスで少しはそれっぽくなるかな。 ……スカートの丈が短いのが気になるなぁ。…うぅ、覚悟を決めたけど恥ずかしい…。 兎に角、これが終われば割引価格で遊べるんだよね。 定番な絶叫マシンとか観覧車とか乗っておきたいな。 色んな意味で忘れられないって感じになったかも。 |
深瀬 稲波
思考:女の子の格好ですが、基本的に本人は気にしておらず 「この格好でがんばれば遊園地で遊べる!」と考えています 服装:ピンクのゆるふわワンピース(持参) メイクは無し くまのヘアゴムで無理やりツインテール 相方が清楚系に対してかわいい系 行動:少し恥ずかしそうなムーを 親を急かす子供のようにリードしていきます。 「恥ずかしくないの?」と聞かれても 「なんでー?」というように見つめます。 見たところの雰囲気は幼稚園児が 何も知らず女装をさせられて楽しんでいるような風景です。 |
柊崎 直香
エントリーナンバーX、直香ちゃんですっ。 身長156cmの11歳。スリーサイズは秘密だよー、よろしくね! コンテストに嬉々と参加。 かわいいお洋服着るだけで割引料金とか行かない手はない。 普段から女装抵抗無しッなので盛り上げに。 フリルとリボンたっぷりワンピース姿。衣装は自前。 スカートひらひら、ちらりと見せる脚にはガーター……かも? 手を振ったりウインクしたりアイドル気取りでベタなことたっぷり。 ゼクもほら笑って笑ってー。 ペア参加なんだから相方として……えーと笑いを取りにいくとか? 結果がどうあれ遊園地で遊びたいなー。 コースターとか超楽しそう! あ、勿論スタッフさん全員女装だよね? 言い出しっぺの法則はつどーう。 |
●楽しいは正義!
その日、タブロス市内の某アミューズメントパークでは、一種異様なイベントが行われていた。
美(女)男子コンテスト。括弧の中身を取り払えばとてもとても魅力的な響きだろう『美男子』。その間に埋め込まれた『女』の一単語に関してはは……。
「エントリーナンバーいっちば~ん、直香ちゃんですっ。身長156cmの11歳。スリーサイズは秘密だよー、よろしくね!」
きらっきらの笑顔を振りまくフリル&リボンワンピースの姿からお察し……お察し、出来る範囲を通り越していた。
「普通に女子やん!」
歓声じみた客席からのツッコミに、柊崎 直香はスカートをひらひらさせながらるんるんと簡易ステージの上を歩く。
彼女は男性です。
――もとい、彼は少年です。紛うことなき『性別:男子』にふりひらスカートをお召し頂ききゃっきゃうふふと遊んで貰おうという、ツアコンたちの俺得企画は素晴らしい逸材を発掘してしまった。
「可愛いな……」
「あぁ、可愛いな……」
ツアコンたちの涙が、ステージの袖でほろほろと滴る。
完璧すぎる女装少年に感動の涙を流しているわけではない。ない事もないが、それ以上に、我が身を省みて涙しているのだ。
「勿論スタッフさん全員女装だよね?」
参加者としてパートナーである精霊と共にエントリーに訪れた直香の満面の笑みに、言い出しっぺの法則が発動したのだ。
幸か不幸か、スタッフに女性はいない。ゆえに、舞台裏には見事に女装男子ばかりが揃い並ぶ結果となった。これが泣かずにいられようか。
でもなんだかとっても不思議な心地……!
新しい何かに自ら目覚めかけているスタッフを、ちらり、横目で見て。直香の精霊、ゼク=ファルはささやかな溜息と共に、少年の傍らに立った。
ちなみにゼクは女装をしていない。
「ゼクも女装をしたまえー!」
「普通に断る」
「でっすよねー」
舞台裏、更衣室にて発生したやり取りが、振った直香も思わず納得して吹き出す結末に収まったためだ。
何かの気まぐれが発動してうっかりフリルを着こまれた日には、女装の醜人コースまっしぐらだ。スタッフ達はそれはそれでと言うのだろうが、コンテストを台無しにしかねないのは、頂けない。
「ふふっ、仕方がないから、ゼクは僕の親衛隊として励みたまえ!」
「……はいはい」
びしり、自前のゴスロリ衣装を完璧に着こなして宣言した直香に生返事を返して、今に至る。
そんなわけで。
一見すれば、引き締まった長身のイケメンが可憐な少女をエスコートしている図に見えるのだ。ちょっとした興味本位で見に来た女性客たちが、思わず悩ましげに溜息をつくのも仕方がないくらい、絵になっている。
そう、いつの日か、可憐な少女を白馬に乗って迎えに行く。そんな適合を夢想していたゼクの願いは、傍目だけは叶っていた。
白馬も少女も居ないが、叶っていた。
ひょっとしたらこのままメリーゴーラウンドになんか乗って見たりしたら、どこからどう見てもそうにしか見えないかもしれない気がしたが、考えないことにした。
「ほらほらー、ゼクも折角のペア参加なんだから、愛想良くして、愛想!」
笑顔満面の直香が、例えば本当に女の子だったら良かったのかもしれないが……本当に女の子だったら、自分とは適合していなかったのかも、しれない。
(これが運命とでもいうのなら、随分酷だな……)
「ゼク―? 笑って笑ってー」
「あんまりくっつく……ガーターはやりすぎじゃないか」
身長差を生かし、低い位置からの上目遣い覗き込みを決めていた直香の足元がちらりと翻れば、白い脚に映えるガーターベルトもちらり。
にんまりと悪戯気に笑った直香がくるりとターンを決めながら離れれば、ふわりと舞ったスカートの下から客席側にもちらりして。
「おおおっ!」
ステージ上に居るのが少年であることをうっかり忘れた健全な男子諸君からの歓声が、あがる。
手を振ったり、ウインクをしてそんな歓声に応えるサービス精神旺盛なパートナーに、ゼクは小さくため息を零して。歩み寄って、ぐいと腕を引いた。
「次がつかえてるからな」
「え、えー、もうちょっと……っていうか、ゼク何にもしてないじゃないかー!」
締まらない退場ではあったが、絶大な拍手と歓声に見送られて、二人の出番は無事に終了。
●恥じらいも正義!
「エントリーナンバー2番……アルヴィンです、よ、宜しくお願いします」
覚悟は決めたけど恥ずかしい。そんな台詞が顔に出まくっているアルヴィン=ハーヴェイは、右へ左へ視線を泳がせながら、隣に立った精霊の服を掴んでいた。
割引に釣られて来たはいいが、「あ、女装だったんですね」と遠い目をしたのは言うまでもなく。
一般的な男子の反応を、受付時点で微笑ましく見つめられていた事には、気が付いていない。
貸衣装を利用して、選んだのは薄紅色のワンピース。これからの時期にぴったりですねと穏やかな笑顔で差し出されたが、普段着るものではない。決して、ない。
「あ……リディは、女装しなくても平気だからね?」
ワンピースと睨めっこをしていたアルヴィンが、思い出したように振り返れば、精霊のリディオ=ファヴァレットは、「え?」と並べられた衣装を広げながら返す。
「あぁ……そうか、揃っての女装でなくても良かったんだねえ」
「うん、なんか似合っちゃいそうな気がするけど、似合っちゃったら、格好いいイメージが完全崩壊しちゃうし……」
着てみようかな的な雰囲気を醸し出していたリディオが、ぱ、と衣装から手を離したのをほっとした表情で見つめてから、困ったようにアルヴィンは笑う。
「だからって、別にオレの女装が見たい訳じゃないだろうし……何かゴメン?」
頬を掻き、大人しく着替えに向かったアルヴィンの背中には、ちょっと誘う場所失敗したかなぁ、と言った雰囲気が滲み出ていて。
そんな彼に、リディオは優しく微笑んだ。
「是が非でも、とも言わないけど、アルが頑張っているのを見たくないとは、思わないけどね?」
思う事を、素直に。リディオはただ告げているだけだったけれど、告げられているアルヴィンからすれば、それは随分な口説き文句だった。
思わず真っ赤になった顔を背け、逃げるようにして更衣室へ飛び込んだ。
これは、今から女装しなきゃいけない恥ずかしさからくるものだと、言い聞かせながら。
――そんな感じで舞台に立ったわけである。羞恥に何かが追加されたアルヴィンの恥じらいっぷりは、舞台袖の女装集団(スタッフ)がときめきを覚えるほど。
「恥じらいは、正義だな……」
「あぁ、あぁ、あれは、正義だ……!」
勝手に盛り上がる舞台袖をちらと一瞥し、しぃ、と、リディオが口元で人差し指を立てれば、びしっ、と敬礼が返り、そっと固唾を飲んで見守ってくる。
うんうん。納得したように頷いて、改めて、自分の服の裾を一生懸命に掴んでいるパートナーへと視線を戻した。
薄紅色のワンピースにはフリルがふんだんにあしらわれ、黒のニーハイにパンプスと合わせれば、大人しめの女性衣装に纏まっている。
短いスカートの丈を伸ばして伸ばしてチラ見えする足を隠している仕草が、見る側にはたまらない物だと言うのには、どうやら気づいていないらしい。
「これが終われば遊園地、これが終われば遊園地……」
俯き気味に何度も繰り返しているアルヴィンの小さな小さな声を、くすり、笑みを湛えて聞き留めて。
申し訳程度にメイクを施した頬を撫でて、囁いた。
「アル、笑顔」
「えっ、あ、う、うん……」
囁きの瞬間、きゃあぁっ! と、黄色い歓声が上がったのにびくっとしながら、はにかむように微笑んだアルヴィンの手を取り、自らも笑顔を振りまいて、揃って袖へと退場していくのであった。
●両方……だと……!
「エントリーナンバー……えっと、多分さんばーん、稲波でーす」
ゆるるん、ふわっふわ。
背後にクレヨン描きの花が飛び交いそうなぽわぽわ笑顔で、深瀬 稲波は宜しくお願いしまーす、と手を振った。
笑顔と態度にぴったりのゆるふわワンピースは可愛らしい春カラー。
黒のふわっとした髪は大した長さではなかったが、くまのヘアゴムで無理やりツインテールにしてしまえば、愛らしさを演出する。
170cm、立派な成人男子の装いなのにこの堂々たる可愛らしさ。
「見よ、これが正しい女装の図だ」
「俺達はとんでもない物を目覚めさせてしまったようだな……!」
スタッフたちの戯言じみた感想に加え、客席から飛んでくる「かわいー」の声に、えへ、と頬を緩めて手を振る稲波の傍らには、ちょっと隠れるようにして立つムーラン・バトラの姿。
こちらもゆるりとしたローブのような形状のワンピース。普段使いの物を少し短めに改造したような、手作り持参品だ。
そして普段は長く降ろしている髪を一つに括り、前にゆったりと垂らしている。
普段よりちょっぴり女の人っぽくなったかもしれないけれど、稲波からすればそこまで大差のある変化ではない。ムーランは普段から、女性的な容姿の持ち主だった。
が、それはそれで、これはこれ、なのだ。
女装、と思うだけで、恥ずかしさは沸くものである。
稲波よりちょっぴり背の高いムーランが、影に隠れ切る事が出来るはずもなく。ちらちらと集まってはざわめきを呼ぶ視線に、気恥ずかしげに俯きながら、こそり、稲波へと尋ねる。
「恥ずかしく、ないの……?」
「え、なんでー?」
きょっとーん。純粋無垢な瞳が、不思議そうに見つめてくるその視線の眩しさに、うっ、とムーランは唸る。
忘れていたわけではない。深瀬稲波とはこういう人間だったのだ。
見た目は立派な成人男子。だけれど中身は幼児そのもの。
女装というものをそれとなく理解していて、「女の子みたーい」と言った気分はある物の、だからどうしたと言わんばかり。
この格好できゃっきゃしていれば遊園地で遊べる。彼の頭にあるのはそれだけだった。
それが、稲波の性格というわけでは、なく。
オーガの襲撃による物理的なショックでの幼児退行なのだと、知る者は多くない。
それでも、ムーランは彼と適合した時点で、この大きくて純粋な『子供』を守りたいと、確かに思ったのだ。
(……後ろに居ては、いけませんね)
戦場では癒しの要として一歩引く事はあっても。自分は、稲波の精霊なのだ。
意を決したムーランは、頬を朱色に染めながらも、稲波の隣に並び立ち。ぱちくりとした稲波に、優しく微笑みかけた。
「……ムー」
「はい」
「だぁいすき~!」
甘えん坊の子供そのものでムーランに抱き付いた稲波を、そっと抱きしめて。勢いのままにくるりとターンをすると、ぺこり、一つ礼をして。
稲波をくっつけたまま、舞台袖に引っ込んで行くのであった。
●遊べ遊べ!
「審議を致しましょう」
「皆可愛かった」
「異議なし!」
「異議なし!」
「大いに異議あり!!」
すっぱーん。賑やかしい簡易会議室の扉を勢いよく開け放ち、直香はずびしぃっ、と人差し指を突きつけた。
「人を指さすな直香」
「いま言わなくてもいいじゃん! てゆーかコンテストにしちゃったんだからせめてそれっぽい結果の発表くらいしてくれなきゃ盛り上がらないでしょ!」
ぺちん、と直香の手を軽くはたいて下げさせたゼクに、むぅっ、と頬を膨らませる直香の、至極ごもっともな意見は、こっそりとついてきていたムーランも同意のようだ。
「タダになるかもしれないという、それに釣られてきたようなものですから、ねぇ……」
「その為に恥ずかしい思いをしたのに……!」
未だ女装姿のままで居させられているアルヴィンもまた、切実に訴える。
ツインテールを解いたくまさんゴムをみょんみょんしている稲波と、微笑ましげな顔をしているリディオは、そこまで気にもしていない様子ではあったが、参加者からの直訴に、スタッフたちは互いに顔を見合わせ、そして一様に、唸った。
「だがしかし、皆可愛かった!」
「そして美しかった!」
「いや待て、楽しんでいる方がやはりいい!」
「恥じらいも捨てがたい……!」
あーでもない。こーでもない。鶴の一声で白熱し始めた会議室を、満足したように見つめ、そっと扉を閉めた直香は、くるりとゼクを振り返り、けろりと笑った。
「決まるまで時間かかりそうだし、僕らは僕らで遊びに行っちゃおうよ、ゼク」
「……付き合えって、言うんだろ」
「さっすが僕の親衛隊長! 判ってるぅ! コースター乗りたい、コースター!」
若干の間を挟んだものの、素直に応じたゼクの腕を引いて、直香は早々に遊園地へと繰り出した。
アトラクションは目白押し。改めてパンフレットを開いたアルヴィンもまた、そわそわとしながらリディオを見やる。
「リディ、オレたちも行こうよ。その……折角だから、エスコートしてほしいな、なんて、女の子みたいな事言っちゃっても……」
「僕は一向に構わないけれど……アル、その恰好のままで、良いのかな?」
「え……? え、あ、ちょ、ちょっと待ってて……!」
リディオの視線が、すぅ、と上から下へと下がっていくのを目で追って、自分の服装を思い出したアルヴィンは、慌てて更衣室へ飛び込んだ。
くすくすと笑っているリディオがちらと見やれば、稲波もまた、きらきらの瞳でムーランの袖を引き、アトラクションをあれこれ指差している。
「ムー、あのね、メリーゴーラウンドとかゴーカートとか……!」
「お化け屋敷に、ジェットコースターも、ね?」
「うん、うんうん!」
順番にね、と諭し、歩き出す頃には保護者の顔になっていたムーラン。
彼らが遊園地を満喫しきる頃には、この白熱し放題の会議にも何らかの収拾がついているだろう。
「……それで、アルはどこに行きたい?」
ばたばたと着替えを済ませて戻ってきたアルヴィンを振り返り、尋ねれば、彼は言いよどむように、口ごもる。
「お化け屋敷、なんだけど……」
「苦手じゃなかったかい?」
少し意外そうに目を丸くしたリディオに、アルヴィンは頬を掻いて笑う。
「リディが居れば、何とかなるかなーって」
何処となく儚げに笑う青年に、リディオはふわりと、微笑んで。
「――アルのお気に召すままに」
エスコートを、と。乞われた願いを叶えるように、優雅に礼をしてその手を引いた。
結局。何とかならなかったアルヴィンの悲鳴がお化け屋敷中に響き渡り。
楽しさ全開の直香の歓声がフルスピードのコースター上で尾を引いて。
観覧車のてっぺんできゃわきゃわはしゃぎだす稲波にムーランが違う意味で悲鳴を上げた頃に、熱い意見を交し合って声をからしたスタッフたちの結論が付いた。
「ぺ、ペア参加で、二人とも女装をしていたという点を、考慮して……」
「深瀬さんと、ムーランさんペアを、第一回美(女)男子コンテストの優勝者とします!」
アナウンスで流れてきた報せに、ぱちくりとした稲波が再びムーランに飛びついたのが、メリーゴーラウンドの馬の上だったりするのは、きっと素敵な偶然。
「……第二回あるの!?」
ぱちぱちと拍手をしていた直香のツッコミには、残念ながら回答は無かったという。
依頼結果:大成功
MVP:なし
エピソード情報 |
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---|---|
マスター | 錘里 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 03月08日 |
出発日 | 03月15日 00:00 |
納品日 | 03月23日 |
参加者
- アルヴィン=ハーヴェイ(リディオ=ファヴァレット)
- 深瀬 稲波(ムーラン・バトラ)
- 柊崎 直香(ゼク=ファル)
会議室
-
2014/03/12-22:14
こんばんはー、クキザキ・タダカです。
面白そうっなのでエントリーしにきたよ。よろしくどうぞ!
僕は女装に抵抗ないから盛り上げ役かにゃー。
恥じらいとか優勝候補とかは他のひとにまかせるよー。
精霊の方は……親密度の低さを楯に断られる未来が容易に想像できた。