プロローグ
●だって渡すの恥ずかしいじゃん?
カカオの精が舞い降りてから、二週間。
手元にまだある、チョコレートを見つめてた溜め息一つ。
2月14日の前夜に届いたチョコレート。
大切な人への贈り物……。
誰に贈るべきかなんて、今更言われなくても分かってる。
渡すとしたら、あいつしかいない訳で……。
だけど、今更どんな顔をして渡せばいいか分からない……。
バレンタインデー当日だったら勢いで渡せたかもしれない。
しかし完全にタイミングを逃してしまった今となっては、どうしようもないよなあ……。
大体、このチョコにどんな気持ちを込めて渡せばいいわけ?
『いつもありがとう』
『これからもよろしく』
『カカオの精がくれただけだから』
どれもあっている様で、どれも違うような……。
はあ……。
二度目の溜め息が溢れるわけで。
カカオの精から、チョコ届いてるのあいつも絶対知ってるよなあ……。
チョコ、俺が持ってるの知ってて渡してないのどう思ってるかなあ……。
がっかりしてるかなあ?
別になんとも思ってないのかなあ?
何とも思ってなかったら、それはそれでムカつくかも……。
よっし!
絶対!
渡してやる!!
あいつが、どう思ってたって知らねーよ!
俺が持ってても仕方ねーんだーし!
けど…………ちょっとだけでも喜んでくれねーかな。
俺みたいに、渡しそびれてる奴っているのかな?
もしいたら、そいつはチョコどうする気かな?
ちゃんと渡せるのかな?
何で、カカオの精は、こんな扱いに困るもの俺に届けたんだろう?
はあ……。
三度目の溜め息
とりあえず、どこでどうやって渡せばいいのかな?
『ここに彼を連れておいで』
えっ?
どこからか声が聞こえたような。
こっちから聞こえたような……。
あれ?
こんな所に、裏路地あったっけ?
とにかく声が聞こえたのはこっちからだったよな。
ん?
なんだ、この建物?
看板出てるな……『Present For You』?
何々、一階がアクセサリーショップで二階が服屋、三階が帽子屋、四階が靴屋で五階がカフェバーか。
ん?
ここで、一品でも買い物をしたら五階のカフェバー二名まで何品頼んでも無料?
はあ!?
一個買い物したら、何頼んでもタダってことか?
そんな、おいしい話おかしくないか?
え?
今日の夜まで?
う~ん、こんなおいしい話、ありかなあ?
けど、チョコ渡すチャンスかも。
プレゼントも一緒に渡せば、ついでってことでチョコを一緒に渡しても不自然じゃねーし。
飲み食い出来る場所があるなら、渡せるよな。
よっし!
急いで、あいつ連れてこよ!
走り出した彼を見守るように、何かが光りながら羽ばたいていた……。
その光は、優しく光ると彼と同じ悩みを抱いている神人を探しに行った……。
そして光は君の元へ。
きっと、この光は今年のバレンタイン最後のチャンスを作る為の誰かがくれたプレゼント。
君たちのこれからの為に、最高のバレンタインの思い出を作れるように。
解説
◆『Present For You』
ちょっと不思議な5階建てのファッション系ショップビルです。
いつからこのお店があったかは謎です。
何故か、光に導かれたウィンクルムしかたどり着けないらしく、一般のお客はいないようです。
男性向け商品が多いですが、女性向け商品も扱っています。
◆各階の説明
一階
アクセサリーショップ
主な商品は、ネックレス、ベルト、バングル、ピアス、カフス、指輪、ベルトのバックル、財布、チェーン等。
レザー、シルバー、天然石等の高すぎない材料での商品が並んでいます。
二階
服屋
男性用の衣服から下着まで扱っていますが、鎧等は売っていません。
衣服の種類としては、現代的な服はもちろん、近未来的服、ファンタジー的服、和服まで揃っています。
三階
帽子屋
キャップ、ハット、ニット帽等売っていますが、やはり兜のようなものは売っていません。
四階
靴屋
スニーカー、ブーツ、革靴といった普通のものから下駄まで売っています。
五階
カフェバー
落ち着いた雰囲気の静かなお店です。
コーヒーや紅茶といったものから酒類も多数ありますが、未成年の飲酒は禁止です。
プラン及び自由設定に記入が無い場合、飲酒できるかは外見設定で判断させて頂きます。
食事も普通に出来ますし、デザート類も用意されています。
一階から四階までの店で何か一点でも購入していれば、こちらでの飲食は無料になります。
◆時間帯
ショッピングは当日の午後以降になります。
カフェバーには夕方以降入店できますが日が落ちてからの入店でも構いません。
◆プレゼント成功の補足
お相手の精霊の好みに合わせた商品であれば判定にプラスいたします。
値段が高い物を喜ぶ精霊もいると思いますが、高ければいいという訳でもありません。
購入したものによってジェールは消費します。
◆流れ
買い物パート→カフェバーパートの流れになります。
2つのパートの流れ次第でチョコをプレゼントできるか成否が決まります。
ゲームマスターより
皆様、初めまして&こんにちは。
名村でございます。
今年のバレンタインは如何お過ごしでしたか?
と、聞けるくらい、本当に遅いバレンタインエピソードです。
チョコが未だに手元に残っている神人様向けとなっております。
簡単にエピソードの内容をまとめますと。
ショッピングデートの後、カフェデートです。
もちろん、主目的は、精霊にチョコを渡すことです!
ですが、プラン内容によっては精霊がチョコを受け取ってくれないこともあります。
その場合、お返しもありませんので、精霊がチョコを受け取ってくれる様なプランを考えてみて下さい。
精霊の趣味嗜好は、性格及び自由設定、年齢、種族的考えで判定に反映します。
プロローグに出てくる彼は、神人ですがノベル内に出てくる予定はありません。
それでは、楽しいプランお待ちしております。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
神木 悠夜(ヴェルデ・ヴィオーラ)
[心情] 全く、なんで僕が…… バレンタインは依頼で潰れたから今からでもチョコ欲しいとか、馬鹿じゃないのか? こんな所で反感を持たれても面倒だからやるが ……くそっ [行動] ふん、ついでだ キーケースでも買ってやるか 財布が売ってるんだ、キーケースもあるだろう 未だ渡してなかった家の合鍵も渡さなきゃいけないしな 革、シンプルな物が良いだろうか…… 買い物が終わったらカフェで食事だ タダになるっていうのはありがたいな 紅茶でも頼んで落ち着いてから食事にするかな 物は食事が終わった辺りにでも渡せばいいだろう 別に!渡すタイミングを見計らった訳じゃないし! 積極的に渡したい訳でもない! 合鍵を渡すついでだついで! |
シルヴァ・アルネヴ(マギウス・マグス)
心情 正直、スマンカッタ……!折角の『誰か』からの気遣いだしさ マギを喜ばせたいな。 行動 カカオの精が舞い降り、枕元にチョコレートを発見した日 『食べるべきか、食べざるべきか……それが問題だ』 自分の食い意地に負けたばっかりに、渡しそびれたこのチョコレート どうする?どうするのさ、オレ。 デート そうだなぁ、いつも一緒だし何か特別な物をプレゼントしたい アクセサリーとかお互いあまり身に着けないけど あ、これ良いな マギの瞳の色みたいな深い色のアメジストのカフスを選ぶ これが映える白い清潔なシャツと一緒にプレゼント。 買い物が済んだら、カフェバーで暖かいコーヒーを飲みながら 観念してチョコレートを渡そう ううっさらばチョコ! |
●あなたが選んだもの
人が多ければ怪しまれたことだろう。いや、人がいないからこそ、精霊ヴェルデ・ヴィオーラはそのような行動を取っていたのかもしれない。
「うふふ。あんなに悩んでくれちゃって!」
ヴィオーラは商品棚の隙間から一人の男を見ていた。神人の神木 悠夜だった。
普段ならば悠屋にべたべたであるヴィオーラがこうしているのにはもちろん理由があった。
ツンツンな彼が、こんな場所に連れてきてお前は自由に店を見ていろだなんて――
「あたしへのプレゼントを、買いに来てるに違いないわよねぇ~」
本当ならば悠夜にくっつきながら店を周りたいところだが、遊び人として様々な人間を見てきたヴィオーラはこういった人物への対応を心掛けていた。
そして、楽しみ方も。
「あら、あたしはそっちの方が好みなのだけれど、戻しちゃうのねぇ~。うふふ。いいのよ~一生懸命選んでね!」
ゾクッ!
「な、なんだ、悪寒が……」
悠夜はあたりを見回す。誰も見当たらない。
「チッ。面倒くさい。なんで僕があいつへの贈り物にこんなに頭を使わなければならんのだ」
悠夜が選んでいるものは、キーケースだった。無理やり家に押しかけてきたヴィオーラに、合鍵を渡すつもりだった。
「ふん。家に入れなくて凍え、体調を崩されても面倒だ。……オーガを倒すためには、あいつの力が必要だしな」
悪態をつきながらも、悠夜は真剣にキーケースを選んでいた。彼への想いはどうであれ、人に物を贈るということに対して悠夜は誠実であった。
皮製のものがいいだろうか。機能はシンプルなほうがいいだろうな。あいつが持っていても変ではないデザインは――
「ふふ、全く可愛いんだから、ゆーちゃんは!」
ヴィオーラは充実した時間を過ごしていた。
●深い色のアメジスト
「いろいろあるなぁ」
神人シルヴァ・アルネヴの、素直な感想だった。店に並んでいるいくつものアクセサリーに目移りしていた。彼の精霊であるマギウス・マグスも似たような感想を抱いていた。お互いに装飾品の類は身に着けないので、多少戸惑っていたようでもあった。
「綺麗なものばかりですね」
「そうなー。ん、これも綺麗さー」
マギウスが見ていたネックレスを手にとり、両手で彼の首にあててみるシルヴァ。なかなか高度な接触をしているのだが、幼い頃より一緒だった二人にとっては抵抗のあるものではなかった。
「僕には合いませんよ」
ゼロの桁が多いことに気づき、やんわりと断るマギウス。シルヴァもネックレスを戻す。値段には気づいていない。
「んー。なんかピンとこなかったさー。……ん!」
次に手に取ったのは、深い色のアメジストのカフスだった。彼はカフスをマギウスの顔の横に持っていく。
「うん! これいいさー。マギと同じ瞳の色!」
マギウスはシルヴァからカフスを受け取り、カフスとシルヴァを視界に入れる。
「……はい。素敵です。硬質な物、綺麗で清潔なものは普通に好きです」
「じゃあ買ってくるさー。あ、これにあうシャツも買うさー」
会計に向かうシルヴァについていくマギウス。
僕と同じ瞳の色、ですか。
気づいてますか? シルヴァの瞳の色も、僕と同じ――
●君にときめいて
「先に入っていても構わんと言っていただろう」
カフェバーの入口に立っていたヴィオーラは笑顔だった。
「想い人を待つ楽しみというものもあるのよ~」
「ふん。行くぞ」
実のところ、それほど待ってはいなかった。悠夜が会計に向かう直前まで、同じ店にいたのだから。しかし、悠夜を待つ時間が楽しいという言葉は嘘ではなかった。
「好きなものを頼め。あと、酒は構わないが、煙草は吸うなよ」
「ありがと。そうねぇ、シェリー・フリップと――」
シェリー・フリップというカクテルには楽しい時間という意味があった。言うつもりはない。ヴィオーラが心の中で楽しむつもりで頼んだものだった。
「いい店ね」
「そうだな。静かで、いい場所だ」
「にしんは今が旬ね」
「ああ。ヴィオーラのカキもそうだな」
二人の会話は多くない。
悠夜は店の雰囲気を気に入り静かに料理を楽しんでいたし、機嫌よさげの彼と一緒のテーブルで食事をしているだけでヴィオーラは楽しかった。
ちっちゃな身体でしずしずとご飯を食べているゆーちゃん可愛いわぁ。
うまいな。店の雰囲気もいいし、ヴィオーラも大人しい。
いい時間だわ。
いい時間だな。
食事が終わり、テーブルが片づけられると悠夜は二つの小包をテーブルの上に置いた。
「あら? なにかしら?」
とぼけるヴィオーラ。自分からプレゼントと言ってしまうと悠夜は「ああ」としか言ってくれそうにないため、しらを切っていた。
「……ふん」
悠夜はテーブルの上に鍵を置いた。彼の家の合鍵だった。
「これは?」
にこにこしながらヴィオーラは訊ねた。もちろん全てわかっているが、悠夜から言葉にしてほしかった。
「……僕の家の鍵と、キーケースだ。持っておけ」
「ありがとう、ゆーちゃん」
「オーガを倒すためには、ヴィオーラが必要だからな。嫌だが、家に入れなくて体調を崩されても困る」
「大切にするわ。……こっちの袋は?」
「……チッ」
キーケースを受け取ったヴィオーラの質問に舌打ちで応える悠夜。水を飲み、目をそらす。
「遅くなったが、バレンタインのチョコだ。ついでに渡しておく。言っとくが、僕が選んだものだ。気に入らなければ受け取らなくてもいい。あと――」
悠夜は続けて喋ろうとしたが、プレゼントを大事そうに抱えるヴィオーラを見てやめる。
「ありがとう! とっても嬉しいわよ」
「……ふん」
嫌といいながら、高潔に振る舞い、誠実なちっちゃいゆーちゃん。
「最後に一杯、いいかしら」
「ああ」
ヴィオーラはカクテルをを頼んだ。
グラッド・アイ。君にときめいて。
●チョコの甘さ
カフスとシャツの入った紙袋をどこに置いたものか、マギウスは迷っていた。膝の上では飲み物で汚れるかもしれないし、床に置くのもなんだか。結局、彼は膝の上に荷物を置いた。ここが一番落ち着いた。
「ん。うまいなこのコーヒー」
「ええ。美味しいですね」
気軽にカップを傾けるシルヴァとは対象に、マギウスは静かにカップを傾けた。普段から飲み物を零したりはしないが、膝に乗っている紙袋が気になってしまった。しかし、けして気分の悪いものではなかった。
「んー。ピアスが付けられたら、それでもよかったのさ」
「んぅ……シルヴァ」
突然耳に触れられてたシルヴァの手に戸惑うマギウス。
「くすぐったいですよ」
「やぁらかいなー」
マギウスはシルヴァが手を離すまで、彼の好きにさせていた。どうしていいのかわからなかったし、くすぐったいだけで、ちょっと恥ずかしいだけで、不快とは思わなかったから。
「マギ、あのさー」
「はい」
シルヴァの両手が見えなくなっていた。テーブルの下でごそごそしているのがわかった。
「カ、カカオの精霊がなー現れてさー。……ん。遅くなったさー」
シルヴァが両手をみせると、そこにはチョコレートがのせられていた。
「バレンタインのチョコなのさ」
「ありがとう……ございます」
マギウスがチョコを手に持ちシルヴァの手から離れると、シルヴァは残念そうな顔をした。マギウスはそんな彼の顔をしばらく楽しんでから、チョコを二つに割った。
「あっ」
シルヴァは思わず開いてしまった口を手で塞いだ。が、マギウスに手を握られ口から離される。シルヴァの口になにかが触れた。チョコだった。
どうせ、シルヴァも食べたかったのでしょう。
いいの? という顔で見つめるシルヴァに、マギウスはどうぞと頷いた。
「っ!」
「んぐんぐ」
シルヴァは嬉しそうな顔でチョコを咥えた。マギウスの指も彼の口に入っていた。指に舌があたる感触がマギウスを震わせた。
「シルヴァ」
「ん? ……ンヴォ!」
マギウスはシルヴァの鼻を思いっきり摘まんだ。息が出来なくて思わずシルヴァは口を離す。
「僕の指は、チョコじゃないですよ」
シルヴァは舌舐めづりをして、マギウスに笑いかけた。
「んでも、甘かったさ」
「……そうですか」
マギウスはシルヴァに舐められた指を弄びながら、チョコを食べた。
「確かに、甘いですね」
●星空
店を出ると、外は暗いはずなのに星明りでとても眩しく感じた。
「あっ」
悠夜とヴィオーラ、シルヴァにマギウスは偶然、外で遭遇した。精霊二人は共通して紙袋を大事そうに抱えていおり、その姿からなにをしていたかが想像できてしまい、どことなく恥ずかしかった。
「……帰るぞ、ヴィオーラ」
「うん! ゆーちゃん!」
「腕を組もうとするな」
「……行きましょうか、シルヴァ」
「ま、マギ速いのさ!」
「気のせいです」
精霊二人は気づいたことがあった。言わなくてはいけないことがあった。
「ゆーちゃん」
「シルヴァ」
ヴィオーラは悠夜の前で振り返って、ヴィオラは隣のシルヴァを見つめて。
「「ホワイトデー、お楽しみに」」
ビルの電気は消え、星明りだけが四人を照らしていた。
(このリザルトノベルは、タクジンマスターが代筆いたしました。)
依頼結果:成功
MVP:なし
エピソード情報 |
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マスター | 名村 恵 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 2 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 02月28日 |
出発日 | 03月06日 00:00 |
納品日 | 03月15日 |