『伝説の英雄達と、ギルティの記憶』

リザルトノベル【男性側】イヌティリ・ボッカ交戦部隊

イヌティリ・ボッカ交戦部隊

メンバー一覧

神人:蒼崎 海十
精霊:フィン・ブラーシュ
神人:俊・ブルックス
精霊:ネカット・グラキエス
神人:ハティ
精霊:ブリンド
神人:柳 大樹
精霊:クラウディオ
神人:初瀬=秀
精霊:イグニス=アルデバラン
神人:セイリュー・グラシア
精霊:ラキア・ジェイドバイン
神人:セラフィム・ロイス
精霊:火山 タイガ
神人:信城いつき
精霊:ミカ

リザルトノベル

 周囲に漂う甘い香りに、イヌティリ・ボッカは不愉快そうに秀麗な眉を顰めた。
 目の前に聳え立つバレンタイン城。
 この国には、甘い菓子の匂いが充満している。
 ──気に喰わない。
 ボッカは本能的な嫌悪感を露わにし、ゆっくりとした足取りでクッキーの地面を踏みしめて歩いていく。


「ボッカが鶏の声を嫌う理由(わけ)をご存知ですか?」
 ハティの問い掛けに、リヴェラ・アリアンヌは少し悲しげな瞳で彼を見返した。
『そうだね。知っているよ。
 ……鶏の声は──彼が愛した者を失った時に聴いた音だから』
「愛する者?」
 ハティは瞬きする。
『トラウマって奴かな。聴くとその時の悲しみが甦って、ボッカの胸を刺すのかもしれない。……まあ、半分は私の願望かもしれないけれど』
 リヴェラは曖昧に微笑んで、それから上を見上げた。
 地下の宝物庫『シュヴァリエ・グロリア』。この直ぐ上にはバレンタイン城前の広場がある。
『来た、みたいだね』
 地下に居ても感じる強烈な瘴気に、リヴェラは瞳を細めた。
「時間がねぇ。行くぞ」
 ブリンドの呼ぶ声に、ハティは後ろ髪を引かれる思いでリヴェラを振り返る。
 リヴェラは、笑顔でハティを真っ直ぐに見た。
『──ボッカの事、よろしくね』
 ハティは彼女の言葉を反芻しながら、ブリンドと地上へ駆け出す。


 城門前は、張り詰めた空気に満ちていた。
「──やはり俺様の邪魔をしに来たか、ウィンクルムども」
 城側で戦闘準備を整えていたウィンクルム達を一瞥し、マントを翻して、ボッカは笑った。
「いいぜ、丁度むしゃくしゃしてた所だ。俺様を封印しやがった奴等を潰す前座に、相手してやるぜ」
 瘴気、そして圧倒的な威圧感。
 ギルティ・ストルゲを司るギルティ──イヌティリ・ボッカ。
 肌を刺すような殺気に、ウィンクルム達は思わず震えた。
 俊・ブルックスは、自らの腕を抓って震える体を鎮める。ネカット・グラキエスは、そんな俊の様子に微笑んでから、ボッカに視線を戻した。
 俊が居るのは、城門にある2本の楼閣の片側。巨大な鶏の形をした焼き菓子が鎮座している。
 魔法を練ったやわらかいスポンジで焼き上げられているこの鶏は、ダメージを与えるとそのダメージの大きさに応じ、大きな声で鳴くという。
 対ボッカ用に、ショコランドの三王子が用意したギミックだ。
 反対側の楼閣には、信城いつきが潜んでいる。いつきの居る楼閣の下には、イグニス=アルデバランが控えていた。
 俊といつきで、鶏の鳴き声を出し、そんな彼らと鳥の焼き菓子を、ネカットとイグニスが守る手筈だ。
 ボッカの正面には、セイリュー・グラシアとラキア・ジェイドバイン、柳 大樹とクラウディオが立ち、ボッカを見返している。
 その少し後方に、蒼崎 海十とフィン・ブラーシュ、ハティとブリンド、ミカが注意深く周囲の様子を観察していた。
 殿に控えていたセラフィム・ロイスと火山 タイガは、城に来る道すがら打ち合わせした通り、手分けした集めたデコイ──鶏の形をしているを初瀬=秀に託した。
 そして、セラフィムだけが小走りにボッカの前に出る。
 その姿に、ボッカは眉を上げた。
 セラフィムが纏うのは、女性物のドレス。
 体の作りが細い彼に青いドレスはとても良く映え、加えて中性的で美しい顔立ちにうっすらメイクを施したら──一見して女性にしか見えない。
 手の甲の文様も手袋で隠している。
 その手に真っ赤な薔薇の花束を抱えて、セラフィムは上目遣いにボッカを見た。
「ああ、ボッカ様……! 実物は更に素敵です……!」
 少し声は震えてしまったが、それが余計に感極まっているようにボッカには見えた。
「何だ? 俺様のファンか?」
 品定めするようにセラフィムを見てくる。
「そうなんです……私、ボッカ様のファンで……これ、受け取って下さい!」
 セラフィムが差し出した薔薇の花束に、ボッカは口の端を上げる。
「人間にしては見る目があるな、お前。良いだろう、これは貰っておいてやる」
 ボッカは薔薇の花束を受け取った。
「バラを持つボッカ様かっこいい、です!」
 カメラを取り出し、セラフィムは薔薇を持つボッカにシャッターを切る。
「フン、いいだろう」
 ボッカは薔薇の花を胸に抱え、髪を掻き上げポージングを取った。
(ああいうとこが嫌いきれないんだよなあ)
 大樹は、歯を輝かせ写真撮影に応じるボッカに眉を下げる。
 セラフィムが時間稼ぎをしている間に、秀はイグニスと共にデコイを周囲にばら撒き終わっていた。
「一般人が何でここに!」
 頃合いだと、タイガが叫んで駆け出す。
「離れろ」
 セラフィムの腕を引き、己の背中に隠すようにすれば、セラフィムは素早く彼の頬に唇を寄せた。

『絆の誓いを』

 トランス化しオーラを纏ったセラフィムがボッカに見えないように、タイガは庇いながら後退する。
「俺様とファンを引き剥がすとは……嫉妬か?」
 ボッカは余裕の笑みで笑いながら、左手で薔薇の花束を持ったまま右手を上げた。
「ファンの娘、俺様の活躍をせいぜい目に焼き付けておけ!」
 瘴気を含んだ風が、ボッカの右手に集まっていく。
「好きにはさせないぜ!」
 セイリューが『調律剣シンフォニア』を構え、飛び出す。
(鍛えたオレ自身の力を信じ、戦うぜ……!)
「セイリューに力を……!」
 ラキアの『片手本「カ・ギヅメ」』が輝きを放ち、数個の光の輪がセイリューの体を守るように浮かんだ。
「はん、生意気な。『俺様を引き立てる罪な風』よ、引き裂け!」
 ボッカが瘴気の風を刃と変え、放つ。
(軌道さえ見極めれば……避けれる!)
 セイリューは身を捻って避け、剣を突き出した。
 ガキン!と固い音がして、セイリューは即座に身を引く。
「何か当たったか?」
 剣の当たった脇腹を撫で、ボッカは笑った。
(やっぱり『絶望色のオーラ』を何とかしない限り、攻撃は通らないみたいだ)
 その身体を覆うオーラに瞳を凝らし、セイリューは後ろに視線を向ける。秀が頷いた。
 周囲に放った鶏の形のデコイを、動かす。
 そのタイミングで、いつきが鶏の形をした焼き菓子を『槍「緋矛」』で突いた。
(鶏さんごめんねっ)

『コケッコッコー!』

「!!?」
 ビクッと、ボッカは肩を跳ねた。
 嫌悪を湛えた顔で、辺りを見渡す。
「どこから……そこか!」
 ちょろちょろ動く鶏のデコイに怒りの眼差しを向けると、右手を振るった。
「消えろッ!」
 瘴気の風がデコイを吹き飛ばす。
「……当たれ!」
 そこへ、フィンの『【魔銃】ディバイン・オーミナス』から放たれた弾丸が、ボッカの右腕を掠った。
「ッ……」
 ボッカが忌々しげに顔を歪めるのを、海十は見た。
「効いてる……!」
 ウィンクルム達は視線で頷き合う。
 秀は更にデコイを動かした。即座に、今度は俊が鶏の焼き菓子を『【妖刀】紅月』で斬り付ける。

『コケッコッコー!』

「またか!?」
 鶏の位置を探そうとするボッカに向け、ネカットは『スノーダストリニティ』を掲げた。
 巨大な雪の結晶が光ると同時、白い霧がボッカの周囲を包み込む。
「……ええい、邪魔な……!ならば、全部吹き飛ばしてやろう!」
「嫌な予感がする……気を付けろ!」
 ミカが叫ぶと同時、霧に覆われたボッカの右手が光り──。

「モテ☆ビーム!!」

 瘴気を含んだ強烈な閃光弾が、残っていた城門を溶かした。
 その威力に、ウィンクルム達は息を飲む。

 イグニスとネカットは頷き合うと、『天の川の彼方』の詠唱を開始した。

「ふん、俺様の邪魔はさせんぞ」
 続けて霧の中、声が響くと同時、ボッカが分身する。
「ふはははははは! ファンの娘、見ているか?
 これが、『イケてるメンズパラダイス』だ!!」
 5人のボッカが声を揃えて笑った。
「ボッカ様、素敵ー!」
 後方からセラフィムが歓声を上げれば、ボッカはふぁさっと髪を掻き上げた。勿論、まだ左手には薔薇の花束を抱えている。
「でもさ……」
 ぼそっと大樹が呟いた。
「マントをしていないのが分身って、分かりやすいよね」
「こちらとしては助かる」
 言うなり、クラウディオは【手裏剣】魂魄雷神を投擲する。
「ぬ?」
 ボッカの分身は、手裏剣が当たると霧散した。
「何人も居られると、五月蠅くて構わんな」
「同感」
 ブリンドとフィンも矢継ぎ早に銃弾を放ち、『イケてるメンズパラダイス』は消え失せてしまった。
「即座に見抜くとは……やるな、お前ら」
 漸く霧が消え、ボッカはウィンクルム達を見上げてから、2本の楼閣の前に、キラキラ光る光の魔法の壁が出現したのに気付く。イグニスとネカットの『天の川の彼方』だ。
「この壁、何か守りたいものでもあるのか?」
 ニヤリとボッカが笑うのに、ネカットは微笑んだ。
「シュンを守るためです」
「ふん、全部吹き飛ばしてやるから、安心しろ」
 ボッカは左手で魔法陣を描く。
「出でよ! 俺様的必殺技『ダークネス・スライス』!」
 魔方陣から禍々しいレイピアが現れるのに、秀はデコイを動かした。
 俊といつきは、思い切り鶏の焼き菓子に攻撃を加える。

『コケッコッコー!』
『コケコケッコッコー!』

「!?」
 一際大きな鶏の声、一斉に動くデコイに、レイピアを握ろうとしたボッカの動きが停止する。
 その身体を包むオーラが揺らいだのを、海十は確かに見た。
「今だ……!」

『共に往く、共に生きる。』

 インスパイアスペルを唱えて、海十はフィンと唇を重ね合わせた。
 神々しいオーラと服装に包まれた二人は、一気にボッカとの距離を詰める。
「はああ!」
 『短剣「クリアライト」』が眩く輝き、海十はボッカに斬り掛かる。
「くっ……」
 その切っ先を何とか避けたボッカは、左肘で海十の体を打った。後ろへ転がる海十と入れ違いに、フィンの『グレネード・ショット』がボッカの右肩を捉える。
「ぐぅううう!」
 ボッカがくぐもった声を上げ、薔薇の花が散った。
「喰らえ!」
 タイガの『【輪廻剣】インカーネーション』が白く輝く蛇の形となり、ボッカの右肩に噛み付き追撃する。
「しっかりしろ……!」
 転がった海十をミカが助け起こし、エナジーフィールドを展開して傷を癒す。
 ブリンドの『【術式銃】退魔狐火』が後退しようとするボッカの足を止めた。
「ここだ、畳み掛ける……!」
「よし!」
「いくよ!」
 秀のデコイの合図で、俊といつきは鶏の焼き菓子を叩き続ける。

『コケッコケッコー!』
『コケッコッコー!』

 ボッカはよろめきながら、震える手でレイピアを何とか掴んで振ろうとするも、そこへ『陽炎II』で分身したクラウディオが前に出てかく乱する。
 紅のオーラを纏った大樹の『パーシヴァルランサー』が、ボッカの右手の甲を切り裂き、薄赤の光に包まれたハティの『妖刀・恋慕』が左腿を突いた。
「……!」
 ボッカは目を見開いた。
「この……許さねぇぞ……ウィンクルム!!」
 怒気と共に、レイピアに瘴気が満ちる。
「させないぜ!!」
 ラキアの『シャイニングスピア』の援護を受けたセイリューが飛び出した。
「うおおおお!」
「はああああ!」
 セイリューの剣とボッカのレイピアが撃ち合う。
 光輪がレイピアの攻撃を反射するも、恐ろしい威力の風圧がセイリューの体を斬り裂いた。
 けれど、セイリューは足を止めない。
 『調律剣シンフォニア』が、美しい音色を奏で輝く。
 ザンッ!
 打ち下ろされた短剣が、ボッカの胸を裂いた。
「ガッ……」
 ボッカの目が驚愕と痛みに歪み、それから力を振り絞るようにしてセイリューの腹を蹴り飛ばす。
「ッ……!」
「セイリュー!」
 ラキアがセイリューの体を受け止め、即座に擬似的な太陽を頭上に作り出した。
 光が降り注ぎ、セイリューの体を癒す。
「逃がしませんよ!」
 畳み掛けるように、ネカットは杖からエナジーを照射した。
 炎のようなエナジーを受け、ボッカの体から煙が上がる。
「皆、下がってくれ!!」
 秀が叫んだ。
 同時に、詠唱を終えたイグニスがボッカを見据えた。目の前には魔法陣が展開されている。
 ウィンクルム達が後退したのを確認すると、『ガルムの血涙』に集めたありったけの力を解放する。
「いっけー!!」
 魔法陣から凄まじい威力のエナジーが放たれた。

『コケッコッコー!』

 鶏の声が、する。
 ボッカは呆然と、迫る熱量を、見た。
 目の前が真っ白になり、落ちていく──。


 ※

『ね、――――ボッカ。私は、どれだけ身分に違いがあっても、あなたが好き』

 そう言って笑った女を、覚えている。
 シュバルト・ボッカと呼ばれていたあの頃。
 身分違いの恋だった。

 貴族と平民の二人の出会いは偶然だった。
 気まぐれにお忍びで出掛けた町中で、彼女に出会った。
 気の強い女だった。
 最初はとことん価値観も趣味も合わない、可愛げのない女だと思った。
 この俺様に、着ているものが派手過ぎる、悪趣味──そんな事を言うのは、彼女ぐらいだった。
 交わし合う会話が心地良く、いつしか、彼女に会う為に足繁く町に通った。
 初めてその手に触れた時は、小さくて驚いた。
 けれど何時までもその感触を覚えていて。
 もっと彼女に触れたい。
 一緒に居たい。
 そんな想いが『恋』なのだと気付いた時は、気持ちは膨れ上がっていて。

『俺様に付いてこい。お前が好きだ』

 想いを告げたら、彼女は見た事もない美しい涙を零して微笑んだ。
 絶対に幸せにすると、俺様は誓った。
 身分の差など、どうとでもなると……そう思っていたのだ。

 けれど、それは間違いだった。
 俺様と彼女の仲を知った家族達は、烈火のごとく怒った。

 ──あんな卑しい身分の女と一緒になるなど、許されない事です。

 俺様が何を言っても受け入れられず、俺様は彼女と会う事を禁止された。
 だからといって、諦められる訳などない!
 俺様はどうしたら彼女と幸せになれるのかを模索した。
 密かに彼女に会いに行く度、気持ちは、想いは深まった。

『城を探しているんだ』
『お城?』
『お前と俺様、二人で暮らす城だ。誰にも邪魔されず、一緒に暮らせる城を探す』

 夢みたいだね──そう彼女は微笑んだ。

 そして──そして、ああ、あの運命の日。
 俺様は父上にお使いを言い渡されて、気乗りしないまま出掛けたのだ。
 その帰り道、俺様の部下達が、血相を変えて迎えに来た。

『大変なんだ、ボッカ様!!』
『どうした、デクニー。落ちつかねぇか』
『ああ、ボッカ様……!』
『センも、なんでお前泣いてるんだ?』
『ボッカ様……申し訳ありません……私達ではどうにも出来ませんでした……』
『スガート……?』

『──様が、処刑、されます……』

 俺様は走った。
 処刑場には、人だかりが出来ていた。

『退け! 退けぇ……!!』

 人をかき分け漸く辿り着いた時──。

 ──コケッコッコー。

 それは、処刑の終了を告げる、鶏の声だった。
 血が、広がっている。

 ──コケッコッコー。

 誰の?

 ──コケッコッコー。

 倒れているのは、誰だ?
 処刑人が持っている剣が、ナゼ、アカクソマッテイル?

 ──下賤の娘が。
 ──身の程を弁えないから。

 こいつらは、ナニを言っているんだ?

 叫んだ。喉が張り裂けん程に。
 恨んだ、呪った。
 この世のすべてを。

『アア、あああああああああ……!!』

 膝を付いた俺様の前に、ナニカが現れた。
 それは人の形をしていて──真っ直ぐな角が頭部に生えていた。

『愛する者を奪った者達に復讐をしたくないか』

 そう言って、俺様に手を差し伸べてくる。

 ──俺様は、その手を取った。

『ボッカ様、私達も……』
『オレ達も、ボッカ様に付いていくぜ』
『一緒に、復讐させて下さい』

 三人の部下と共に、この狂った世界に復讐を。
 すべて壊す為に、暴れ回って──。

 それなのに。

 ※

「思い……出した……」

 瓦礫の中から、イヌティリ・ボッカは起き上がった。
 眩暈がする。
 斬り突かれた所、エナジーを浴びた胸部が焼けるように痛い。
(ここは、何処だ……?)
 虚ろに見上げた空間は薄暗く、静謐な空気に満ちていた。

「皆、離脱して下さい……!」
 テソロ『ガウェイン・フーリン』が叫ぶと同時、武器化した英雄達が一斉に光に包まれ消えた。
 ガウェインにより、別次元に転移されたのだ。
 ボッカを見据え、ガウェインは『セイクリッドアイアース』を構える。
 ボッカは、ガウェインの後ろに居る影に目を凝らした。

「ボッカ!」
 城前広場から落下したボッカを追い、ウィンクルム達も『シュヴァリエ・グロリア』に飛び降りてくる。
 ハティは、ボッカの視線がリヴェラに向いている事に気付いた。

 ──輝く金の髪は、いつも綺麗に結い上げていた。
 健康的な肌の色に、血のように紅い瞳。
 生命力に満ち、いつも凛として、俺様を見てくる──。

「ボッカ。もしかして、リヴェラ・アリアンヌはアンタの──」
 問い掛けて、ハティは息を飲んだ。
 否、その場のウィンクルムすべてが、息を飲んだ。

「リヴェラ……またお前は、俺様の復讐を邪魔するのか……」

 震えながらボッカが掠れる声で問い掛ける。
 リヴェラは、瞼を閉じた。

「私の命の灯が消えるその時に、私はあなたが闇に堕ちるのを見た。私は、このままじゃ死ねないと思った──」

 リヴェラの瞳が開き、真っ直ぐにボッカを見る。
「その時、女神ジェンマ様が現れて言ったんだ。
 『愛する者のために、力を貸してください』ってね」
 リヴェラの言葉に、ボッカの肩が揺れた。
「だから私は、ウィンクルムと一緒に、あなたを──」

「……ッ!!」

 ボッカが、跳んだ。
 一瞬の出来事だった。
 最後の力を振り絞るようにして一気に地上まで飛び上がったボッカは、ウィンクルム達の追撃を躱し、そのまま姿を消したのだった。

 ※

 頭が割れるように、痛い。
 傷付いたボッカは、『ギルティ・ガルテン』へと辿り着いていた。
 ギルティの呪いにより永遠の夜が続く世界。
 寒い、痛い──。
 瞼には、先ほどの『彼女』の姿が焼き付いている。

 俺様は──。

 ボッカは静かに瞼を閉じた。
 今は、ただ眠りに落ちたかった。


(執筆GM:雪花菜 凛 GM)


戦闘判定:大成功
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