リザルトノベル【女性側】堕騎士討伐部隊
メンバー一覧
リザルトノベル
彼らは憤怒に震えていた。
周囲には十字の墓標。
嘗て、共に戦った仲間達が眠っている。
しかし、己はどうだ?
この墓標に共に名を刻む事も許されず、閉じ込められていた。
永い、永い時が流れて、愛した者達が消えた世界に解き放たれた時、身を焦がす程の怒りが込み上げた。
英雄?
その誉れが何になるという。
この孤独は、誰にも癒せない。もう誰も居ない。愛し、共に在りたいと願った人達は居ないのだ。
全身を覆う鎧が黒く染まる。憤怒に黒く、黒く、黒く──。
そして、騎士二人──エルミック・グランツとゼークス・ソルドレットは咆哮する。
離れた場所でも感じられるその声に、マーベリィ・ハートベルは『聖剣士のお守り』をぐっと握った。
「愛を騎士様」
彼女の祈りに、ユリシアン・クロスタッドはそっとその肩に手を伸ばす。
「……マリィ、急ごう」
「はい、ユリアン様」
二人は駆ける。騎士達の子孫について調べる為に。
ビリッと肌を刺す二人の騎士の殺気に、ヒュリアスは瞳を細め、篠宮潤は小さく震えた。
墓場『エスポワール・グレイヴ』──その中央辺りで、ウィンクルム達は黒く染まった騎士二人と相対している。
十字の形の騎士達の墓標と、騎士達が愛用していた武器が、陽の光に鈍く光る。
「ウル」
ヒュリアスの声に、潤は頷いた。
『バイス・エル』
二人の影が重なると同時、二人を温かな光が包んだ。ヒュリアスが潤の手の甲に浮かぶ文様に口づける事で、更に光は強まる。
それが合図となり、ウィンクルム達はそれぞれ触神の言霊の言葉を響かせた。
『キラキラ輝く為の力を!』
綺羅星 卯月は、まだまだ慣れない様子で頬を染めながら蒼井 凛の頬に口づける。
『我らの力を、光の剣に』
よく通る真っ直ぐな声を響かせ、リデルはエイルに身を寄せた。
『森の熊さんこんにちは』
零鈴は黒く染まった騎士達を見据えながら、ゼロイムの頬へ唇を触れさせる。
体をオーラが包んだのを確認して、ゼロイムは零鈴の髪を撫でた。零鈴を包むオーラがより強くなる。
『アーレアヤクタエスト』
隣に並んだハイネの頬に、ユラは素早く口づけた。
インスパイアスペルを響かせた後は、身を屈めた彼の頭を一撫で──ハイネは力が沸き上げるのを感じながら、銃を握り直す。
『正義の名のもとに』
イザベラのアイスブルーの瞳に射抜かれるような思いで、ディノは全身を硬くさせた。
頬に唇が触れた感触と共に、体に力が満ちていく。
『時を刻む』
アデリア・ルーツが長い髪を揺らして、シギの頬に唇を寄せ、シギの耳が揺れると同時二人は聖なるオーラに包まれる。
『一念岩をも徹す』
井垣 スミの声が優しく響いて、頬に触れた温かな感触と湧き出る力に、雨池颯太はぐっと拳を握った。
『誓いを果たすために』
凛と宣言するように告げて、サファイア・ルッツはコウ・ヤヨイの頬へ唇を落とす。
『ハルト、がんばってね。』
身を屈めたベルンハルトに、真衣は背伸びして頬に口づけた。
騎士達を見据え、ヒュリアスは『【大太刀】備前長船』を構える。
『英雄』と呼ばれた騎士二人。
ヒュリアスの心に同情の念は浮かばなかった。
恨みに身を堕とした彼らに、騎士の矜恃はない。
騎士とは、王に、国に忠誠を誓った者。
家族を含めた国民の未来の為、殉じる覚悟があった筈だ──何故恨むのか。
問い掛けたい感情が浮かぶが、口にしないと潤と約束している。
太刀を握る手に力を込めると、ヒュリアスの体を吸血バラが包んだ。
潤はヒュリアスと一瞬視線を交わすと、墓標を盾に彼の後ろへと下がる。
ゼークスがゆっくりとサーベルをウィンクルム達へと向けた。硬い綿菓子の塗装を鎧の足が踏み締める。
両者に一気に緊張が膨れ上がった。
「ま、待って下さい……!」
一触即発の空気を破ったのは、ディノの声だった。
「俺達は、貴方達と戦いたくはありません」
一歩踏み出し声を上げるディノを、エルミックとゼークスが見据える。
鉄兜で表情は窺い知れない。けれど、確かに彼らはこちらを見た。
話は通じている──ディノは震えそうな体を抑え、腹に力を入れて言葉を紡ぐ。
「王子達とこの国への復讐以外に、望みはありませんか? 俺達に出来る事はないでしょうか?」
「……」
僅かな沈黙の後、エルミックが肩を震わせた。
「──望み? 望みだと?」
籠手に包まれた手を前に突き出し、彼は叫ぶ。
「復讐以外に望む事など、ない……!」
刹那、墓標に並んで刺さっていた剣・槍・斧達が、まるで生き物のように宙へと舞い上がった。
「私が望むのは、この復讐の完遂のみ! 邪魔立てするものは……全て排除する!」
鉄兜の奥で、エルミックの瞳が赤く光る。突き出した手を振り上げれば、武器達がウィンクルム達へとその矛先を向けた。
「皆、避けて……!」
潤が叫ぶのと、武器達が襲い掛かるのは同時だった。
「後ろからも来てる……! 危ない!」
ユラの『妖刀・恋慕』が、突進してくる槍を叩き落とす。
「何て数だ……!」
ハイネも『二丁拳銃「ユスティーツの雷鳴」』で、乱舞する剣を撃ち落としに掛かった。
一方、アデリアとシギは、ゼークスの動きに集中していた。
エルミックの放つ武器に紛れるようにしてサーベルを振り上げた彼に、アデリアは『短剣「クリアライト」』を掲げる。
「今よ、シギくん!」
刀身が光を反射して、ゼークスの視界を奪った。
その一瞬で、シギには十分だった。
「ああ、貰った……!」
『手裏剣「サクリティ」』が左右からゼークスの胴体を捉える。
ガキンと鈍い音を立てて、手裏剣は鎧に弾かれるが、ゼークスの体が衝撃に震えた。
その痛みを振り払うようにゼークスがサーベルを突き出すのを、アデリアの『ジェンマの抱擁』が受け止める。
「くっ……!」
「無茶するな」
後ろへ弾かれるアデリアの背中を支え、シギは手裏剣で牽制した。
そこへ畳み掛けるように、コウが『ダブルダガー「ハイ&ロー」』を構え、踊るようなステップで懐へ飛び込む。
(今の俺じゃどう策を弄したって、どうせ大したことはできねぇ。
だったら、正々堂々真正面からぶつかるぜ)
「堕ちた英雄さんよ、せいぜい楽しもうぜ!」
迷いなくコウは、真っ向勝負と剣を繰り出す。その剣撃をゼークスは中型の盾で受け止めた。
「攻撃は最大の防御ですわ」
ゼークスの意識がコウに向いた隙を狙い、サファイアの『ウィンクルムソードⅣ』が突き出される。
(慈悲はありません)
(なーに、露払いくらいにはなるだろうよ)
輝くオーラを纏ったサファイアとコウは、猛然とゼークスに斬り込んだ。
アデリアのクリアライトの光と、シギの手裏剣がそれを援護する。
ゼークスは盾で、サーベルで攻撃を弾き返しながらも、徐々に後ろへと押されていった。
自然と、エルミックとの距離が離れていく。
エルミックは、即座にゼークスを援護するように剣を投擲した。
無数の剣が飛来するのに、真衣が叫ぶ。
「みんな、後ろからくるわ……!!」
「撃ち落とす!」
即座にベルンハルトの『スチームウィールライフル』から弾丸が連射され、剣を弾き落としていく。
「こちらは、任せてください……!」
卯月も『ウィンクルムソードⅡ』を振るい、剣を弾き返した。
(英雄さん達はなんとかしてあげたいですけど、私じゃ……でも、出来ることはがんばります!)
「卯月、あまり前に出過ぎないようにね」
凛もまた、卯月の隣で『アイステッドシャージ』で剣を凍てつかせ墜落させていく。
(英雄として魂を封印されるなんて、酷い話だよね。卯月と一緒に出来る限りのことはしたい)
「大丈夫です!」
こくんと頷く卯月の横顔を見て、凛は微かに微笑んだ。
(がんばろうね、卯月)
「そうちゃん、気を付けてね」
スミの手の中で『宝玉「魔守のオーブ」』が光り、魔法力場が展開される。オーブを盾のように掲げて、スミは降り注ぐ剣を弾いた。
「ひーばあちゃん、ありがとう!」
颯太はぐっと身を低くして、ゼークスの動きに集中する。
エルミックの援護も届かない事に、ゼークスの動きに僅か揺らぎが生じていた。
このまま分断されては不味い。
一点突破を狙っての技を放つ──ゼークスの動きが微かに鈍ったのを、颯太は見逃さない。
弾丸のように飛び出して、『グレートソード「バーリー」』を振り翳す。
「おれもひーばあちゃんといれなくなったら、やだけど。そうしないように、今がんばるんだ!」
狙うのは、その盾だ。
「話ならあとできくから。今はまけてね!」
相手の装甲を砕く一撃が盾に直撃し、ゼークスはヒビの入った盾を地面に落とす。
「……話を聞く? 何を馬鹿な事を……!」
着地した颯太に、ゼークスは苛立ちを露わに蹴りを放った。
「させない、ですよ……!」
そこへ颯太の動きに合わせ、ゼークスの後ろに回っていたディノが跳躍して『ベク・ド・コルバン』を叩き付ける。
地面を抉る一撃を紙一重で避けて、ゼークスは蹈鞴を踏んだ。
「ばかなことじゃないわ!」
真衣の声が響いた。ゼークスがそちらを向く。
「ばかなことじゃないわ。だって、このままじゃ、誰も騎士さんたちを知らないままになっちゃう」
真衣は真っ直ぐにゼークスを見た。
「私が、私たちが話し相手じゃだめ?」
ゆらりとゼークスの体が揺れる。
「ぶちまけたい思いがあるなら、全て言えばいい。私達で聞く事は出来る」
『ウィンクルムソードⅣ』で最後の飛来した剣を叩き落として、イザベラが言い放った。
不満という膿を出すべく、思いを吐露させたい。冴え冴えとした瞳が刺すようにゼークスを見る。
「……ふざけるな……ふざけるな!!」
ゼークスが叫んだ。
「この苦しみが、この孤独が、お前達に理解できるものか……!!」
目の前を飛んで砕かれた槍を見て、潤は目を見開いた。
「これ(武器)は皆……騎士たちの魂……なのに」
武器達は、何度も何度も宙に浮かび、ウィンクルム達へと牙を向く。
潤には、十字架の墓標達が泣いているように見えた。
ギン!と、音を立てて、ヒュリアスの大太刀と、エルミックの手に収まった剣が火花を散らす。
エルミックが力押しで大太刀を弾けば、即座にリデルが『護身刀「紅月」』で斬り込んだ。
「貴方たちが沢山の犠牲を払って守った土地を、自分で壊すの?」
「……」
リデルの問い掛けに、エルミックは答えない。無言で周囲から槍を飛ばしてくる。
「リデル、一旦下がろう」
エイルはリデルに向かう槍を『大剣「テーナー」』で振り払い、彼女を背中へ庇った。
リデルは小さく唇を噛む。説得が無理ならば、彼らを倒さねばならない。
分厚い鎧に覆われた四肢、何処かに弱点はないか──リデルは注意深く観察した。
ガア!
明るい声を上げて、エルミックの足元を黄色いアヒルが走ってくる。ユラの放った『アヒル特務隊「オ・トーリ・デコイ」』だ。
エルミックが手を一振りすれば、剣が無残にアヒルを地面に転がせたが、その一瞬の隙にハイネはエルミックに迫っていた。
「愛する家族が生きた地を、今度は君が壊すのか」
移動しながらの銃撃。無数の弾丸がエルミックに襲い掛かり、弾き返せなかった分が鎧に当たって鈍い音を立てる。
「やれやれ……君は愛する者や国を守るために騎士になったんじゃないのかい?
なら、最期までその騎士道貫いてほしいものだ」
弾丸が鎧を通らない事を確認して、ハイネは眉を顰めた。衝撃で多少のダメージは通っているようだが……。
エルミックの標的が自分に変わった事を確認すると、銃弾を補てんしながら、襲いかかる武器を避ける。
「ハイネさん、こっち……!」
即座にユラは刀でハイネに向かう武器達を叩き落とした。
ヒュアリスもエルミックと再び斬り結び、援護する。
「この地で貴方の守った命が続いています!」
ハイネと入れ替わるように前に出た零鈴は、『短剣「コネクトハーツ」』でエルミックに斬りかかった。
短剣と剣が交差した次の瞬間、ゼロイムが『メイス「ドルミート」』を叩き付ける。
コネクトハーツを使った連携の技は、与えるダメージを増やす特殊な効果がある。
エルミックは右手を痺れさせ、剣を取り落とした。
「貴方の大切な者と繋がる者も居る筈だ。騎士の矜持を取り戻してくれ」
ゼロイムが言葉を紡ぐと、エルミックの体からどす黒いものが噴き出す。
「黙れ! 騎士の矜持だと? そんなものが何になる!」
それは、同時に叫んでいたゼークスの声に重なった。
二人の騎士は、怒りに震えながらウィンクルム達を睨む。
「信じていた……俺が努力すれば、病気の弟を助ける為の金が稼げる。弟を、国を救って、そうすれば幸せになれると、信じていたさ!
けれど、現実はどうだ!?」
ゼークスがサーベルを前に突き付けた。
「現実に、我らの幸せなどなかった! 全ては無駄だったのだ!」
エルミックは両腕を広げて吼える。彼の周囲に大量の武器達が浮かび上がった。
「英雄の名など、要らぬ!」
「我らは唯、愛する者と限りある時間、幸せな日々が、欲しかっただけだ!」
鉄兜の奥で、彼らは血の涙を流しているように、ウィンクルム達には見えた。
「憎い……! 我らの苦しみの上に成り立つこの国が!」
「許せぬ……! 我らから何もかもを奪っておきながら、我らに助力を乞うこの国が!」
騎士二人の叫びが、場の空気をビリビリと揺らす。
「そんなに家族が大事なら、全てを捨てて一緒に逃げればよかったのです」
サファイアは一歩踏み出し、金の瞳を細め、騎士二人を見据えた。
「何もせずただ怒りをまき散らすなんて、駄々っ子と一緒ではないですか」
すぅと息を吸って、サファイアは声を張った。
「貴方達はそれでも騎士なのですか? 情けない」
騎士二人は、動きを止めてサファイアを見た。
そして、ウィンクルム達は気付く。彼らの周囲の闇が更に濃くなるのを。
「ああ、その通りだ! こんな事になると知っていたら、騎士になど……誰がなるものか!!」
「やり直せないのなら、もう二度とこんな目に合う者を増やさぬよう、この国を滅ぼす……!」
「それが、我らの願い!」「復讐だ!」
エルミックが右手を上げる。周囲の武器までもをどす黒く染めていく。
ゼークスがサーベルを構える。サーベルが黒く赤く染まった。
「最早言葉は要らぬ」
「全てに死を!」
騎士二人が動き出そうとし、ウィンクルム達が身構えた時だった。
「お待ち下さい、騎士殿!!」
墓場に飛び込んでくる二つの影。マーベリィとユリシアンだった。
二人は息を切らし、騎士達の前に立つ。
「騎士様どうかお鎮まりを……戦う理由等無いのです」
マーベリィは、両手を胸の前に組み、祈るように騎士を見上げる。
「騎士様お二人の子孫について、調べてきました」
続けてユリシアンがそう言うと、エルミックとゼークスの肩が僅かに揺れた。
「騎士様、貴方方の子孫がこの国にいらっしゃいます。そして、今も騎士様の事を忘れずに日々祈りを捧げていらっしゃるのです」
「騎士様の事を忘れないように、ご家族は子孫に伝え、子孫は騎士様達の事を誇りに思っているのです」
そう、マーベリィとユリシアンが簡単に子孫を見つけられた理由は、彼らが騎士達の事を語り継いでいたからだった。
「馬鹿な……」
エルミックがゆらりと一歩後ろに下がり、舞い上がっていた武器達が次々に地面に突き刺さった。
「……弟は、弟は家族を作った? 僕を……忘れてはいない……?」
ゼークスも力なくサーベルを下ろす。
マーベリィは懇願した。
「騎士様が守った命が、この地に息づいているのです。どうか、騎士様、剣をお納め下さい」
零鈴も語り掛ける。
「『ヴァルハラ・ヒエラティック』に記載されていた碑文に、こんな事が書かれています。
オーガとなり堕ちた精霊の魂は、強い神人への想いがあった場合に輪廻転生が出来ることがあると。
そして、前世で愛し合っていた人同士が、ウィンクルムとなって再び出逢えるのだそうです。
あたしは……これはウィンクルムだけの事ではないと思うんです」
「ああ、だからきっと、貴方達も」
ゼロイムが零鈴の言葉に重ねて言えば、騎士二人はゆっくりとその場に膝をついた。
「失った時間は取り戻せない。憎い、恨めしい、この気持ちは消えない……」
「けれど、まだ私達を忘れないでいてくれている『家族』が居るならば……もう、我らは……」
ユリシアンは騎士二人を見つめ、声を張った。
「貴殿がたの姿はこの国の者に戒めとして記憶されるだろう。僕も刻む。
剣をお納め下さい。誇りを!騎士殿!!」
「そうだね。僕も刻ませて貰う」
「私も絶対に忘れないよ」
ハイネとユラが大きく頷いた。
「恨みつらみは、私達で幾らでも話を聞こう」
「子孫の方にも会えるように、俺達に出来る事をさせて下さい」
イザベラが言えば、ディノが微笑む。
「きっと騎士さん達に会いたい筈だもんね」
「語り継いでる先祖に会えるって、思えば凄い事かも」
アデリアが笑顔を見せ、シギが小さく頷いた。
「ふふ、きっと大歓迎ですよ」
「うん! きっとごちそうを用意してくれるよ!」
スミが柔和に笑えば、颯太が元気に跳ねて同意する。
「私も、騎士さん達といろいろお話したいわ!」
「そうだな、昔の事とか、聞きたい事が沢山ある」
真衣が瞳を輝かせ、ベルンハルトは穏やかに微笑んだ。
「家族、か……」
リデルは己の胸を押さえる。両親の事が全くわからないリデルにとって少し切なく、けれど心からよかったと思う。
エイルはそんなリデルの横顔を見つめ、そっとその肩を抱き寄せた。
「あ、騎士さん達が……」
卯月が目を丸くする。どす黒いオーラが消えていき、そこには白銀の輝く鎧を守った精悍な騎士が二人佇んでいた。
「オーガ化が解けたんだね」
凛が頷くと、卯月が弾けるような笑顔で笑った。
「一件落着、だな」
コウが笑いかけるのに、サファイアはふっと表情を緩める。
「もう少し楽しんでもよかったですけどね」
ふわりとした輝きを感じて、潤は顔を上げた。
墓地に刺さる武器達が、仄かに輝いている。
「この墓地に眠る人達も、喜んでいるみたい……」
「ああ」
潤の呟きに、ヒュアリスは頷いた。
蛍のように輝く武器達に囲まれた二人の騎士は、静かに泣いていた。
(執筆GM:
雪花菜 凛 GM)
戦闘判定:大成功