『伝説の英雄達と、ギルティの記憶』

リザルトノベル【女性側】堕騎士討伐部隊

堕騎士討伐部隊

メンバー一覧

神人:零鈴
精霊:ゼロイム
神人:ユラ
精霊:ハイネ・ハリス
神人:マーベリィ・ハートベル
精霊:ユリシアン・クロスタッド
神人:イザベラ
精霊:ディノ
神人:篠宮潤
精霊:ヒュリアス
神人:アデリア・ルーツ
精霊:シギ
神人:井垣 スミ
精霊:雨池颯太
神人:サファイア・ルッツ
精霊:コウ・ヤヨイ
神人:真衣
精霊:ベルンハルト
神人:リデル
精霊:エイル
神人:綺羅星 卯月
精霊:蒼井 凛

リザルトノベル

 彼らは憤怒に震えていた。
 周囲には十字の墓標。
 嘗て、共に戦った仲間達が眠っている。
 しかし、己はどうだ?
 この墓標に共に名を刻む事も許されず、閉じ込められていた。
 永い、永い時が流れて、愛した者達が消えた世界に解き放たれた時、身を焦がす程の怒りが込み上げた。
 英雄?
 その誉れが何になるという。
 この孤独は、誰にも癒せない。もう誰も居ない。愛し、共に在りたいと願った人達は居ないのだ。

 全身を覆う鎧が黒く染まる。憤怒に黒く、黒く、黒く──。

 そして、騎士二人──エルミック・グランツとゼークス・ソルドレットは咆哮する。

 離れた場所でも感じられるその声に、マーベリィ・ハートベルは『聖剣士のお守り』をぐっと握った。
「愛を騎士様」
 彼女の祈りに、ユリシアン・クロスタッドはそっとその肩に手を伸ばす。
「……マリィ、急ごう」
「はい、ユリアン様」
 二人は駆ける。騎士達の子孫について調べる為に。

 ビリッと肌を刺す二人の騎士の殺気に、ヒュリアスは瞳を細め、篠宮潤は小さく震えた。
 墓場『エスポワール・グレイヴ』──その中央辺りで、ウィンクルム達は黒く染まった騎士二人と相対している。
 十字の形の騎士達の墓標と、騎士達が愛用していた武器が、陽の光に鈍く光る。
「ウル」
 ヒュリアスの声に、潤は頷いた。
『バイス・エル』
 二人の影が重なると同時、二人を温かな光が包んだ。ヒュリアスが潤の手の甲に浮かぶ文様に口づける事で、更に光は強まる。
 それが合図となり、ウィンクルム達はそれぞれ触神の言霊の言葉を響かせた。

『キラキラ輝く為の力を!』
 綺羅星 卯月は、まだまだ慣れない様子で頬を染めながら蒼井 凛の頬に口づける。

『我らの力を、光の剣に』
 よく通る真っ直ぐな声を響かせ、リデルはエイルに身を寄せた。

『森の熊さんこんにちは』
 零鈴は黒く染まった騎士達を見据えながら、ゼロイムの頬へ唇を触れさせる。
 体をオーラが包んだのを確認して、ゼロイムは零鈴の髪を撫でた。零鈴を包むオーラがより強くなる。

『アーレアヤクタエスト』
 隣に並んだハイネの頬に、ユラは素早く口づけた。
 インスパイアスペルを響かせた後は、身を屈めた彼の頭を一撫で──ハイネは力が沸き上げるのを感じながら、銃を握り直す。

『正義の名のもとに』
 イザベラのアイスブルーの瞳に射抜かれるような思いで、ディノは全身を硬くさせた。
 頬に唇が触れた感触と共に、体に力が満ちていく。

『時を刻む』
 アデリア・ルーツが長い髪を揺らして、シギの頬に唇を寄せ、シギの耳が揺れると同時二人は聖なるオーラに包まれる。

『一念岩をも徹す』
 井垣 スミの声が優しく響いて、頬に触れた温かな感触と湧き出る力に、雨池颯太はぐっと拳を握った。

『誓いを果たすために』
 凛と宣言するように告げて、サファイア・ルッツはコウ・ヤヨイの頬へ唇を落とす。

『ハルト、がんばってね。』
 身を屈めたベルンハルトに、真衣は背伸びして頬に口づけた。

 騎士達を見据え、ヒュリアスは『【大太刀】備前長船』を構える。
 『英雄』と呼ばれた騎士二人。
 ヒュリアスの心に同情の念は浮かばなかった。
 恨みに身を堕とした彼らに、騎士の矜恃はない。
 騎士とは、王に、国に忠誠を誓った者。
 家族を含めた国民の未来の為、殉じる覚悟があった筈だ──何故恨むのか。
 問い掛けたい感情が浮かぶが、口にしないと潤と約束している。
 太刀を握る手に力を込めると、ヒュリアスの体を吸血バラが包んだ。
 潤はヒュリアスと一瞬視線を交わすと、墓標を盾に彼の後ろへと下がる。
 ゼークスがゆっくりとサーベルをウィンクルム達へと向けた。硬い綿菓子の塗装を鎧の足が踏み締める。
 両者に一気に緊張が膨れ上がった。
「ま、待って下さい……!」
 一触即発の空気を破ったのは、ディノの声だった。
「俺達は、貴方達と戦いたくはありません」
 一歩踏み出し声を上げるディノを、エルミックとゼークスが見据える。
 鉄兜で表情は窺い知れない。けれど、確かに彼らはこちらを見た。
 話は通じている──ディノは震えそうな体を抑え、腹に力を入れて言葉を紡ぐ。
「王子達とこの国への復讐以外に、望みはありませんか? 俺達に出来る事はないでしょうか?」
「……」
 僅かな沈黙の後、エルミックが肩を震わせた。
「──望み? 望みだと?」
 籠手に包まれた手を前に突き出し、彼は叫ぶ。
「復讐以外に望む事など、ない……!」
 刹那、墓標に並んで刺さっていた剣・槍・斧達が、まるで生き物のように宙へと舞い上がった。
「私が望むのは、この復讐の完遂のみ! 邪魔立てするものは……全て排除する!」
 鉄兜の奥で、エルミックの瞳が赤く光る。突き出した手を振り上げれば、武器達がウィンクルム達へとその矛先を向けた。
「皆、避けて……!」
 潤が叫ぶのと、武器達が襲い掛かるのは同時だった。
「後ろからも来てる……! 危ない!」
 ユラの『妖刀・恋慕』が、突進してくる槍を叩き落とす。
「何て数だ……!」
 ハイネも『二丁拳銃「ユスティーツの雷鳴」』で、乱舞する剣を撃ち落としに掛かった。

 一方、アデリアとシギは、ゼークスの動きに集中していた。
 エルミックの放つ武器に紛れるようにしてサーベルを振り上げた彼に、アデリアは『短剣「クリアライト」』を掲げる。
「今よ、シギくん!」
 刀身が光を反射して、ゼークスの視界を奪った。
 その一瞬で、シギには十分だった。
「ああ、貰った……!」
 『手裏剣「サクリティ」』が左右からゼークスの胴体を捉える。
 ガキンと鈍い音を立てて、手裏剣は鎧に弾かれるが、ゼークスの体が衝撃に震えた。
 その痛みを振り払うようにゼークスがサーベルを突き出すのを、アデリアの『ジェンマの抱擁』が受け止める。
「くっ……!」
「無茶するな」
 後ろへ弾かれるアデリアの背中を支え、シギは手裏剣で牽制した。
 そこへ畳み掛けるように、コウが『ダブルダガー「ハイ&ロー」』を構え、踊るようなステップで懐へ飛び込む。
(今の俺じゃどう策を弄したって、どうせ大したことはできねぇ。
 だったら、正々堂々真正面からぶつかるぜ)
「堕ちた英雄さんよ、せいぜい楽しもうぜ!」
 迷いなくコウは、真っ向勝負と剣を繰り出す。その剣撃をゼークスは中型の盾で受け止めた。
「攻撃は最大の防御ですわ」
 ゼークスの意識がコウに向いた隙を狙い、サファイアの『ウィンクルムソードⅣ』が突き出される。
(慈悲はありません)
(なーに、露払いくらいにはなるだろうよ)
 輝くオーラを纏ったサファイアとコウは、猛然とゼークスに斬り込んだ。
 アデリアのクリアライトの光と、シギの手裏剣がそれを援護する。
 ゼークスは盾で、サーベルで攻撃を弾き返しながらも、徐々に後ろへと押されていった。
 自然と、エルミックとの距離が離れていく。
 エルミックは、即座にゼークスを援護するように剣を投擲した。
 無数の剣が飛来するのに、真衣が叫ぶ。
「みんな、後ろからくるわ……!!」
「撃ち落とす!」
 即座にベルンハルトの『スチームウィールライフル』から弾丸が連射され、剣を弾き落としていく。
「こちらは、任せてください……!」
 卯月も『ウィンクルムソードⅡ』を振るい、剣を弾き返した。
(英雄さん達はなんとかしてあげたいですけど、私じゃ……でも、出来ることはがんばります!)
「卯月、あまり前に出過ぎないようにね」
 凛もまた、卯月の隣で『アイステッドシャージ』で剣を凍てつかせ墜落させていく。
(英雄として魂を封印されるなんて、酷い話だよね。卯月と一緒に出来る限りのことはしたい)
「大丈夫です!」
 こくんと頷く卯月の横顔を見て、凛は微かに微笑んだ。
(がんばろうね、卯月)
「そうちゃん、気を付けてね」
 スミの手の中で『宝玉「魔守のオーブ」』が光り、魔法力場が展開される。オーブを盾のように掲げて、スミは降り注ぐ剣を弾いた。
「ひーばあちゃん、ありがとう!」
 颯太はぐっと身を低くして、ゼークスの動きに集中する。
 エルミックの援護も届かない事に、ゼークスの動きに僅か揺らぎが生じていた。
 このまま分断されては不味い。
 一点突破を狙っての技を放つ──ゼークスの動きが微かに鈍ったのを、颯太は見逃さない。
 弾丸のように飛び出して、『グレートソード「バーリー」』を振り翳す。
「おれもひーばあちゃんといれなくなったら、やだけど。そうしないように、今がんばるんだ!」
 狙うのは、その盾だ。
「話ならあとできくから。今はまけてね!」
 相手の装甲を砕く一撃が盾に直撃し、ゼークスはヒビの入った盾を地面に落とす。
「……話を聞く? 何を馬鹿な事を……!」
 着地した颯太に、ゼークスは苛立ちを露わに蹴りを放った。
「させない、ですよ……!」
 そこへ颯太の動きに合わせ、ゼークスの後ろに回っていたディノが跳躍して『ベク・ド・コルバン』を叩き付ける。
 地面を抉る一撃を紙一重で避けて、ゼークスは蹈鞴を踏んだ。
「ばかなことじゃないわ!」
 真衣の声が響いた。ゼークスがそちらを向く。
「ばかなことじゃないわ。だって、このままじゃ、誰も騎士さんたちを知らないままになっちゃう」
 真衣は真っ直ぐにゼークスを見た。
「私が、私たちが話し相手じゃだめ?」
 ゆらりとゼークスの体が揺れる。
「ぶちまけたい思いがあるなら、全て言えばいい。私達で聞く事は出来る」
 『ウィンクルムソードⅣ』で最後の飛来した剣を叩き落として、イザベラが言い放った。
 不満という膿を出すべく、思いを吐露させたい。冴え冴えとした瞳が刺すようにゼークスを見る。
「……ふざけるな……ふざけるな!!」
 ゼークスが叫んだ。
「この苦しみが、この孤独が、お前達に理解できるものか……!!」

 目の前を飛んで砕かれた槍を見て、潤は目を見開いた。
「これ(武器)は皆……騎士たちの魂……なのに」
 武器達は、何度も何度も宙に浮かび、ウィンクルム達へと牙を向く。
 潤には、十字架の墓標達が泣いているように見えた。
 ギン!と、音を立てて、ヒュリアスの大太刀と、エルミックの手に収まった剣が火花を散らす。
 エルミックが力押しで大太刀を弾けば、即座にリデルが『護身刀「紅月」』で斬り込んだ。
「貴方たちが沢山の犠牲を払って守った土地を、自分で壊すの?」
「……」
 リデルの問い掛けに、エルミックは答えない。無言で周囲から槍を飛ばしてくる。
「リデル、一旦下がろう」
 エイルはリデルに向かう槍を『大剣「テーナー」』で振り払い、彼女を背中へ庇った。
 リデルは小さく唇を噛む。説得が無理ならば、彼らを倒さねばならない。
 分厚い鎧に覆われた四肢、何処かに弱点はないか──リデルは注意深く観察した。
 ガア!
 明るい声を上げて、エルミックの足元を黄色いアヒルが走ってくる。ユラの放った『アヒル特務隊「オ・トーリ・デコイ」』だ。
 エルミックが手を一振りすれば、剣が無残にアヒルを地面に転がせたが、その一瞬の隙にハイネはエルミックに迫っていた。
「愛する家族が生きた地を、今度は君が壊すのか」
 移動しながらの銃撃。無数の弾丸がエルミックに襲い掛かり、弾き返せなかった分が鎧に当たって鈍い音を立てる。
「やれやれ……君は愛する者や国を守るために騎士になったんじゃないのかい?
 なら、最期までその騎士道貫いてほしいものだ」
 弾丸が鎧を通らない事を確認して、ハイネは眉を顰めた。衝撃で多少のダメージは通っているようだが……。
 エルミックの標的が自分に変わった事を確認すると、銃弾を補てんしながら、襲いかかる武器を避ける。
「ハイネさん、こっち……!」
 即座にユラは刀でハイネに向かう武器達を叩き落とした。
 ヒュアリスもエルミックと再び斬り結び、援護する。
「この地で貴方の守った命が続いています!」
 ハイネと入れ替わるように前に出た零鈴は、『短剣「コネクトハーツ」』でエルミックに斬りかかった。
 短剣と剣が交差した次の瞬間、ゼロイムが『メイス「ドルミート」』を叩き付ける。
 コネクトハーツを使った連携の技は、与えるダメージを増やす特殊な効果がある。
 エルミックは右手を痺れさせ、剣を取り落とした。
「貴方の大切な者と繋がる者も居る筈だ。騎士の矜持を取り戻してくれ」
 ゼロイムが言葉を紡ぐと、エルミックの体からどす黒いものが噴き出す。
「黙れ! 騎士の矜持だと? そんなものが何になる!」
 それは、同時に叫んでいたゼークスの声に重なった。
 二人の騎士は、怒りに震えながらウィンクルム達を睨む。

「信じていた……俺が努力すれば、病気の弟を助ける為の金が稼げる。弟を、国を救って、そうすれば幸せになれると、信じていたさ!
 けれど、現実はどうだ!?」
 ゼークスがサーベルを前に突き付けた。
「現実に、我らの幸せなどなかった! 全ては無駄だったのだ!」
 エルミックは両腕を広げて吼える。彼の周囲に大量の武器達が浮かび上がった。
「英雄の名など、要らぬ!」
「我らは唯、愛する者と限りある時間、幸せな日々が、欲しかっただけだ!」
 鉄兜の奥で、彼らは血の涙を流しているように、ウィンクルム達には見えた。
「憎い……! 我らの苦しみの上に成り立つこの国が!」
「許せぬ……! 我らから何もかもを奪っておきながら、我らに助力を乞うこの国が!」
 騎士二人の叫びが、場の空気をビリビリと揺らす。

「そんなに家族が大事なら、全てを捨てて一緒に逃げればよかったのです」
 サファイアは一歩踏み出し、金の瞳を細め、騎士二人を見据えた。
「何もせずただ怒りをまき散らすなんて、駄々っ子と一緒ではないですか」
 すぅと息を吸って、サファイアは声を張った。
「貴方達はそれでも騎士なのですか? 情けない」
 騎士二人は、動きを止めてサファイアを見た。
 そして、ウィンクルム達は気付く。彼らの周囲の闇が更に濃くなるのを。

「ああ、その通りだ! こんな事になると知っていたら、騎士になど……誰がなるものか!!」
「やり直せないのなら、もう二度とこんな目に合う者を増やさぬよう、この国を滅ぼす……!」

「それが、我らの願い!」「復讐だ!」

 エルミックが右手を上げる。周囲の武器までもをどす黒く染めていく。
 ゼークスがサーベルを構える。サーベルが黒く赤く染まった。

「最早言葉は要らぬ」
「全てに死を!」 

 騎士二人が動き出そうとし、ウィンクルム達が身構えた時だった。

「お待ち下さい、騎士殿!!」

 墓場に飛び込んでくる二つの影。マーベリィとユリシアンだった。
 二人は息を切らし、騎士達の前に立つ。
「騎士様どうかお鎮まりを……戦う理由等無いのです」
 マーベリィは、両手を胸の前に組み、祈るように騎士を見上げる。
「騎士様お二人の子孫について、調べてきました」
 続けてユリシアンがそう言うと、エルミックとゼークスの肩が僅かに揺れた。

「騎士様、貴方方の子孫がこの国にいらっしゃいます。そして、今も騎士様の事を忘れずに日々祈りを捧げていらっしゃるのです」
「騎士様の事を忘れないように、ご家族は子孫に伝え、子孫は騎士様達の事を誇りに思っているのです」
 そう、マーベリィとユリシアンが簡単に子孫を見つけられた理由は、彼らが騎士達の事を語り継いでいたからだった。

「馬鹿な……」
 エルミックがゆらりと一歩後ろに下がり、舞い上がっていた武器達が次々に地面に突き刺さった。
「……弟は、弟は家族を作った? 僕を……忘れてはいない……?」
 ゼークスも力なくサーベルを下ろす。

 マーベリィは懇願した。
「騎士様が守った命が、この地に息づいているのです。どうか、騎士様、剣をお納め下さい」
 零鈴も語り掛ける。
「『ヴァルハラ・ヒエラティック』に記載されていた碑文に、こんな事が書かれています。
 オーガとなり堕ちた精霊の魂は、強い神人への想いがあった場合に輪廻転生が出来ることがあると。
 そして、前世で愛し合っていた人同士が、ウィンクルムとなって再び出逢えるのだそうです。
 あたしは……これはウィンクルムだけの事ではないと思うんです」
「ああ、だからきっと、貴方達も」
 ゼロイムが零鈴の言葉に重ねて言えば、騎士二人はゆっくりとその場に膝をついた。

「失った時間は取り戻せない。憎い、恨めしい、この気持ちは消えない……」
「けれど、まだ私達を忘れないでいてくれている『家族』が居るならば……もう、我らは……」

 ユリシアンは騎士二人を見つめ、声を張った。
「貴殿がたの姿はこの国の者に戒めとして記憶されるだろう。僕も刻む。
 剣をお納め下さい。誇りを!騎士殿!!」
「そうだね。僕も刻ませて貰う」
「私も絶対に忘れないよ」
 ハイネとユラが大きく頷いた。
「恨みつらみは、私達で幾らでも話を聞こう」
「子孫の方にも会えるように、俺達に出来る事をさせて下さい」
 イザベラが言えば、ディノが微笑む。
「きっと騎士さん達に会いたい筈だもんね」
「語り継いでる先祖に会えるって、思えば凄い事かも」
 アデリアが笑顔を見せ、シギが小さく頷いた。
「ふふ、きっと大歓迎ですよ」
「うん! きっとごちそうを用意してくれるよ!」
 スミが柔和に笑えば、颯太が元気に跳ねて同意する。
「私も、騎士さん達といろいろお話したいわ!」
「そうだな、昔の事とか、聞きたい事が沢山ある」
 真衣が瞳を輝かせ、ベルンハルトは穏やかに微笑んだ。
「家族、か……」
 リデルは己の胸を押さえる。両親の事が全くわからないリデルにとって少し切なく、けれど心からよかったと思う。
 エイルはそんなリデルの横顔を見つめ、そっとその肩を抱き寄せた。
「あ、騎士さん達が……」
 卯月が目を丸くする。どす黒いオーラが消えていき、そこには白銀の輝く鎧を守った精悍な騎士が二人佇んでいた。
「オーガ化が解けたんだね」
 凛が頷くと、卯月が弾けるような笑顔で笑った。
「一件落着、だな」
 コウが笑いかけるのに、サファイアはふっと表情を緩める。
「もう少し楽しんでもよかったですけどね」
 ふわりとした輝きを感じて、潤は顔を上げた。
 墓地に刺さる武器達が、仄かに輝いている。
「この墓地に眠る人達も、喜んでいるみたい……」
「ああ」
 潤の呟きに、ヒュアリスは頷いた。
 蛍のように輝く武器達に囲まれた二人の騎士は、静かに泣いていた。


(執筆GM:雪花菜 凛 GM)


戦闘判定:大成功
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