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カナリア IL


フェスティバルイベント

『クリスマスを返せ!』

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リザルトノベル【女性側】ダークニス討伐チーム

チーム一覧

神人:かのん
精霊:天藍
神人:ハロルド
精霊:ディエゴ・ルナ・クィンテロ
神人:桜倉 歌菜
精霊:月成 羽純
神人:クロス
精霊:オルクス
神人:手屋 笹
精霊:カガヤ・アクショア
神人:アイリス・ケリー
精霊:ラルク・ラエビガータ
神人:月野 輝
精霊:アルベルト

リザルトノベル

 ラインヴァイス城の二階へと続く螺旋階段。
 雪で出来たその道を、遮る者は居ない。レッドニスを救出したことによりオーガの連合軍は撤退し、ヒヅキも倒された。
 障害のない、まさに一騎打ち。しかし相手はギルティだ。油断はすまいと、ウィンクルム達は皆抜かり無くトランスを済ませる。
 さらに半数以上がハイトランスを重ね、万全の準備を整えた一行は、ついにダークニスと対峙した。
 天井の高い、広々とした空間。
 その最奥に位置する雪の玉座に、彼は居た。
 しかし、その姿はウィンクルムたちが予期していた物とは、少し違っていた。
「なんだか、様子がおかしいです……?」
 ダークニスの正面に配置しながら注意深く様子を観察していた桜倉 歌菜は、怪訝に眉を寄せる。
 その隣に立ちながら、月成 羽純も少し不思議そうな顔をしていた。
 ダークニスは、すっかり意気消沈した様子で玉座に項垂れている。ウィンクルム達が二階に上がってきたことにも、気づいているようには見えない。
「全く覇気を感じませんが……」
「偽物、ってことも、ないよな……?」
 手屋 笹もまた訝るように見やる。カガヤ・アクショアが罠の可能性をほんの少し疑うが、何かを誘うでもない様子から、すぐに考えを払う。
「来ないなら、好都合と見るべきか」
「手ぐすね引いて眺める理由もありませんしね」
 促すような天藍の言葉に、アルベルトが頷く。かのん、月野 輝もまた、それぞれのパートナーの言葉に武器を構え、四人はダークニスの左側へと回りこんだ。
 同様に、カガヤと笹、そしてクロス、アイリス・ケリーが一塊となって右側へと回る。
 行動を開始するウィンクルムの気配は察しているのだろう。それでもダークニスは自ら動く気配を見せない。
 オルクスは悪霊を憑依させるという二丁拳銃を、ディエゴ・ルナ・クィンテロは氷や雪をも弾丸として使用できる銃をそれぞれ構え、狙いを定めるように瞳を細める。
 ハロルドもまた、竜の軍勢を撃ち落としたと聞く伝説の二丁拳銃を手に、思案気な顔をする。
 ダークニスが扱うのは強力な爆弾と聞く。仲間に触れる前に撃ち落とすつもりで構える三人だが、例えば敵にその気がないのなら。
(早々に攻撃に転じるべき……?)
 見定める瞬間は遅からずやってきた。
「さて、どう動くかね」
 手元の小柄な手裏剣をくるり。右側へと走った己の神人をちらと見やって、ラルク・ラエビガータはひとりごちる。
 左右に展開したウィンクルムが対岸の仲間に視線で合図し、頷き合って。
 たんっ、と強く地を蹴った天藍が、薔薇の文様が生える一対の刃を、振るう。
 それは抵抗なくダークニスの身へと食い込み、ぱっ、と赤い血が、花のように散る。
(手応えは、十分……だが……?)
 仲間の追撃のため、さっと身を引こうとする天藍を、追うように。初めて、ダークニスの視線が動いた。
 虚ろな目は、悲嘆を湛えて、まるで絶望したように、薄い唇が囁く。
「僕はやっぱり、いらない子だったんだ」
 ダークニスの嘆く声に呼応するように、彼の周囲にカラフルなプレゼントボックスが浮かぶ。
 十個現れたそれに、天藍を追って攻撃しようとしたカガヤは舌を打ち飛び退り、オルクス、ディエゴ、ハロルドの三人は一斉に銃撃を放つ。
 撃ちぬかれた箱は激しい爆発音とともに爆ぜるが、全てではない。避けなければ大ダメージは必至。
「アイリス! そっち側に多く撒かれてるぞ!」
「分かってます」
 ラルクの指摘を受け、アイリスの視線が細かく動く。
 箱の数と放られた方向を素早く確かめて、躱そうと半歩下がったアイリスの足が、そこで止まった。
「クロスさん、固まっては危険です!」
 弾幕相手となった場合、散開し狙いを分散させるのがセオリーとなる。
 しかしクロスはグループで纏まっての回避を想定しており、大きく迂回する笹に寄り添う形で動く。
 ダークニスの目は、虚ろながらもそれを見逃すことはせず。彼女たちの側に多くの箱がばら撒かれたのは、それが起因してのことだろう。
「きゃぁ!」
「っ、うわ!」
 魔守のオーブを展開し、なんとか直撃を免れたクロスだが、それでも損傷は軽くない。
 すかさずアイリスが駆け寄り、クロスを支えるようにして一旦戦線を退いた。
 すれ違うようにして前に出たラルクは、ダークニスの影を狙って攻撃し、戦線の崩壊を阻止すべく立ちまわる。
(攻撃してくる割には、いやに、消極的だな……)
 負傷者への追撃や、こちらの穴をつかれるような事態を避けるべく動いたラルクだが、ダークニスには交戦にあたって考えがあるようには見えない。
 むしろ、ただこちらが攻撃しているからやり返しているだけ。狙いやすい的があったからそこへ放っただけ。そんな雰囲気さえ伺えた。
「舐められている……わけでは、ないわよね」
 怪訝に眉を寄せた輝だが、自身で否定したとおり、ダークニスにそのような意思はない。
 『戦う』という意思さえ、削がれているだけなのだろう。
 繰り返しつぶやかれる「兄さん」という言葉が、彼の胸中を物語る。
 力の源でもあったレッドニスを失ったことを認識したダークニスは、身も心も弱り果てていたのだ。
「一方的に苛めてるみたいにも思えてくるけど……」
「実際仲間が大怪我させられてるんだ。こっちも手を控える理由はないな」
 食人植物の力を守りに、白いワームの力を攻撃に、乗せたアルベルトが駆けざまに告げる言葉に、輝は頷く。
 油断はすまいと駆け上ってきたのを、忘れてはいない。
 相手は、ギルティなのだから。
「クー、大丈夫か!?」
「ぅ……悪い……」
 アイリスとともに後衛位置にてチャーチを展開している羽純の元まで退くと、降り注ぐ癒やしの雨の恩恵に預かるクロス。
 それを見届けて、安堵の表情を湛えた歌菜は、きっ、とダークニスを睨み据える。
 相変わらず、彼の目は虚ろだった。
 泣き出しそうな子供のような顔をしている風に、見えた。
 同情できる余地はあったのだろう。それでも歌菜は、憤る感情を込めて、叫んだ。
「貴方は弱虫です!」
 広い空間によく通る声は、ダークニスの視線を呼ぶ。
 悲しげな顔をしていたダークニスは、再びプレゼントボックスを生み出しながら、皮肉めいた顔で笑った。
「そうかもしれませんね。もう、どうでもいいことですけど」
 悪意の塊でしかない箱が、こちらへ向けられれば、仲間の攻撃する隙を得られるだろう。
 挑発しようとする歌菜に便乗し、羽純も言葉をぶつけた。
「勝手にいじけて大切な人を苦しめてるだけだ!」
「僕にとって大切でも、彼にとってはそうじゃなかったんですよ」
 ふふっ。笑う声は、自棄に聞こえる。
「だって、だってそうでしょう。そうじゃなきゃ、兄さんは僕を助けてくれるはずだ!」
 声を荒げたダークニスの傍らで、仲間を下がらせたアルベルトのコスモ・ノバが煌めく水のオーラを纏って爆ぜる。
 幾つものプレゼントボックスと共にダークニスを吹き飛ばしたアルベルトは、薄く瞳を細めて、呟く。
「なるほど、見捨てられたと、そう言いたいわけですか」
「間違っては、いないでしょう?」
「知りませんよ。そんなの」
 レッドニスが何を願っていたかなんて、考えるまでもなく明白だというのに。
 それを否定しうるだけの何がダークニスの中にあったのかなんて、知る由もない。
 アルベルトによって体勢を崩されたダークニスが追撃を放って来ないのを確かめ、カガヤは高く高く跳び上がる。
「喰らえ!」
 暴風に似たオーラを纏う一撃は、ダークニスを強かに穿つ。
「かはっ」
 血を吐きながらも、ダークニスは苦悶とは違う、悲嘆の表情を浮かべる。
「もう、ギルティガルテンにも戻れない……このまま、兄さんに見捨てられて死んでいくしかないんだ……」
 絶望に暮れたダークニスの言葉に、笹はきゅっと唇を噛みしめる。
(こんなことになる前に、どうにも、ならなかったのでしょうか……)
 けれど、遅いのだ。
 ダークニスとレッドニスを在りし日に戻すための何かは、もう、とうに失われていたのだ。
 死んでいくしかない。彼がそう言う通り。
 ここで、殺すしかないのだ。
「――Youre My Best Friend」
「――共に最善を尽くしましょう」
 いち早く理解したのは、ハロルドとディエゴ、そしてかのんと天藍だ。
 インスパイアスペルと共に――柱や腕で隠すように遮られながらも――重ねられた唇は、彼らの力を大幅に増幅する。
 神々しさを伺わせる纏を翻し、かのんは海の神々の力が封じられた護符を展開させる。
 身を守る二十四枚の札の煌めきを背に、天藍は的確に急所を狙う剣戟を繰り出す。
「兄さん、なんで、なんで僕を置いていったの……?」
 苦しさに耐えかねた感情を表すかのように、淀んだ色のプレゼントボックスが溢れる。
「往生際が悪いんだよ!」
 クロスを傷つけた箱の存在に歯噛みするように声を荒げたオルクスが、そしてハロルドがプレゼントボックスを次々と撃ち落とす。
 爆風の間から見えるダークニスの姿はふらついて見えて。
 ディエゴは真っ直ぐに突きつけた銃越しに、告げる。
「お前が正気になるまで弾丸を撃ちこみ続ける!」
 荒療治だとて、命の一滴さえ残っていれば、やり直せる。
 だけれど、最後の願いにも似た通告を、ダークニス自身が、望んでいなかった。
「もう、遅いんです。僕はもう、戻れない所まで来てるんですよ」
 まざまざと突きつけられた拒絶に、残念だと小さく呟いて。ディエゴは引き金を引いた。
 螺旋状の弾痕が、ダークニスの急所を貫いて。
 それで、終わりだった。
「兄さん、ねぇ兄さん……もう、昔みたいに撫でてはくれないの……?」
 最期まで虚ろだったダークニスの瞳は、いつかの幸福な日々を見つめているようで。
「『痛かっただろう』って、『頑張ったな』って、抱きしめてもくれないの?」
 縋るように伸ばされた指が、力なく落ちる。
「やっぱり、僕は要らない子だったんだね……」
 そういうことでしょう?
 恨み言を吐き出した唇が、とまる。
 そうしてピクリとも動かなくなったダークニスを、輝はアルベルトの背に縋るように抱きつきながら、見つめる。
 シンクロサモナーとしての侵食の影響を癒やすべく肩代わりしているはずの痛みが、何故だか、胸の奥ばかりを痛めているような気がした。


(執筆GM:錘里 GM)

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