【メルヘン】温かな一日を(こーや マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●ホッとチョコレート
 バレンタイン伯爵領。そこはスペクルム連邦の中でも異彩を放っている。
自治色が特に強いというのも理由の一つだが、最大の理由は城下の街並みにある。
 数百年の長きに渡って城を守ってきた巨大な城門も目を引くが、それよりも街を形作っている建物だ。
チョコレート色のレンガで作られているように見えるが違う。紛れもなくチョコレートなのだ。
 チョコレートを原料として魔法で作られる建築材『チョコリート』。
それがメジャーな建築材となっている理由は初代バレンタイン伯爵と妖精族の女王との契約によるものだが、ここでは割愛。
 前を通れば甘い香りを漂わせる、こじんまりとしたこの店もチョコリートを用いて建てられた店だ。
奥行きがある為、見た目以上のキャパシティを誇っている。名は『ステュアート』。
 ショコラティエが作ったチョコレートを扱っている店で、冬の名物はチョコレートフォンデュ。
ところが、どこぞのモテビームとかいう残念な技をぶっぱなした残念なギルティのお陰で材料の入手が厳しくなってしまった。
 『ステュアート』はオロオロしながら解決を待つ……という風にはならなかった。
ウィンクルム達がショコランドへの立ち入りを許されたと聞いてある手段を講じたのだ。
 ショコランドにあるチョコレートの滝。名前の通りチョコレートの滝だ。
この滝からチョコレートを持ち帰ることを条件に、チョコレートフォンデュの用具一式を格安で貸し出すという。
商売人は逞しいのだ。

解説

●参加費
テントや持ち運び用のテーブルと椅子、フォンデュ用具一式のレンタルと食材の費用
合わせて500jr

食材:マシュマロ、フランスパン、果物類
(キウイ、苺、マンゴー、桃、オレンジ、バナナなど。スーパーで見かけるものなら御自由に)

飲み物:牛乳(アイス)、紅茶(ホット)、珈琲

●すること
チョコレートの滝に流れるチョコレートを汲み上げて、チョコレートフォンデュ
店へのチョコレートの持ち帰りについては描写しないので、店のこと含めノータッチで問題ありません

テントを設置してその中でということになるので、基本的には個室
複数組で一緒にというのも可

●場所
チョコレートの滝の、滝壺の側
温かいチョコレートが流れています
滝壺の周りには打ち寄せられたチョコレートが固まった岩みたいになってます

●その他
描写するのはチョコレートフォンデュ中のみです
(チョコレートフォンデュの準備中は可)
道中や帰路の間の描写は『一切』行いません

ゲームマスターより

6面ダイス
1、2:好きなお菓子
3、4:好きな飲み物
5、6:好きな豆腐


会議室でのネタにでも

リザルトノベル

◆アクション・プラン

手屋 笹(カガヤ・アクショア)

  (皆さんと同じテント)

飲み物:牛乳(アイス)
持ち込み食材:バナナ

チョコは分かりますがフォンデュとは一体…。

溶かしたチョコに食べ物を浸けるんですか…
あったかいチョコというのも新鮮ですね…
カガヤ!私浸けるのやってみたいです!

(談笑したり、食材を貰ったり渡したりします)

カガヤが苺食べてますね…

カガヤ、わたくしも苺が欲しいのですがもう無いみたいで…
(少し小声になり)
無い…みたいですよ…?
ありがとうございます、頂きますね(ぱく

(あったのだと思いますけど…何となくカガヤのが欲しかったからなんて…言えませんしね)

え、あ…えっと…!これはですね…気付いてなかったです…
(こう言う以外にどう言えばいいんです!?)


ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  合同

【飲み物】
紅茶(ホット)

【持ち寄る食材】
林檎
キャラメルソース

ん……体重が増えない程度に食べなきゃ…
前に見たお菓子ですが…剥いた林檎の半分にチョコをかけて、そこにキャラメルソースをかけたり、マシュマロをくっつけて食べるんです。
はい、皆さんどうぞ…。

皆さん美味しそうに食べます…
チョコお好きな方が多いようです
バレンタインに、チョコ作って配ろうかな…。

ディエゴさんは何故不機嫌になったんですかね
チョコ食べられないから拗ねてるんですか?
私はただ…神人の皆さんに配ってAROAに溶け込みたいと思っただけですけど…。
ちゃんとディエゴさんにも何かあげますから。
(周囲に心を開いてきてます)




ミオン・キャロル(アルヴィン・ブラッドロー)
  合同
滝…凄いわね。メルヘンだわ。
大丈夫よ、依頼のチョコは確保っと(容器に

皆で賑やかに食べるのも新鮮ね
色々持ってきたから、皆さんどうぞ

小さな滝ね(果物をクルクル、ちょっと楽しい
アルヴィンやった事ある?
苺にバナナにオレンジ
チョコレートと果物の酸っぱさが丁度良いわ

…それは根本否定よっ!(べしっ

トッピングもあるわよ
生クリームにスプレーチョコ
変わり種でジャガイモにソーセージ

温かな飲み物いる?
…そんな顔しなくてもいいじゃない、冗談よ。ほうじ茶
休んだ事だし、もう一周する?
嘘よ、遅くなるし帰りましょうか(察した

歌菜さん達のらぶらぶに良いなぁ精霊をちらっと見たり
珠洲ちゃんにチョコ勧めたり
笹さんと一緒に準備したり



珠洲(ジオ)
  合同

人が多くてどきどきしますが…
楽しい時間が過ごせるといいですね

私は特に追加では準備していなくて
ええと、食べるの頑張ります…
みなさんが準備したものも頂けたらなと

チョコレートの滝のチョコレート…、どんな味がするんでしょう
甘すぎるものはちょっと苦手でして、ほどほどだといいのですが
ジオくんは甘いもの好きですか?

…もしかして、嫌いでした?
あ、ごめんなさい
私そうとは知らずにはしゃいじゃったりして…

…そう?それならよかったです
別に、恥ずかしくはないと思いますよ
むしろギャップっていうんでしょうか?
可愛くていいと思います
…うん、可愛いです

みなさん仲良さそうですね…
私達も、その内あんな風になれるでしょうか



桜倉 歌菜(月成 羽純)
  合同

バレンタイン伯爵領に来ると、羽純くんがソワソワ
表情には出してないけど、何となく分かるんです
甘いモノ、特にチョコ大好きだもんね

彼に思い切り幸せな時間を!

そんな訳で張り切ってチョコレートフォンデュの準備
具材のチョイスも抜かり無く!
私は今日は彼の給仕っ

羽純くん、甘栗とチョコって合うんだよ、知ってた?
甘栗も好きだもんね
二度美味しくてお得だよ!はい、あーん♪

クッキーは定番だね

プチトマト、意外と合うんだよ
絶妙な酸味と甘さのハーモニー!

皆さんが用意した具材も余さず食べてみよう♪

バゲットとラスクは食事感覚
男の人はお腹に溜まるのがいいかなって
(アルヴィンさんもどうですか?と勧めてみて、頭を撫でられて照れる



●ミルク
「滝……凄いわね。メルヘンだわ」
 普通であればお目にかかれない光景を前にして、ミオン・キャロルは思わず呟いた。
けれど、見入ってばかりもいられない。
 レンタル用具の中にあった柄杓で滝壷のチョコレートを掬い上げようと身を乗り出すと、反対側の手をアルヴィン・ブラッドローが掴んだ。
「乗り出すと危ないぞ」
「大丈夫よ。心配しすぎ」
 少し前の一件以来、過保護気味の精霊へ苦笑いを零す。
アルヴィンが手を離す気がないのを察し、ミオンはそのまま作業を優先した。
 柄杓でとろりと艶やかなチョコレートを掬い上げ、フォンデュ鍋に移す。
依頼された分はミオンたちを含め、全組が既に汲み取って持ち帰る準備は出来ているので、あとはフォンデュを楽しむだけだ。

 手屋 笹はフォンデュ鍋やフォンデュ串などの道具を前に首を傾げていた。
『チョコレートフォンデュ』、チョコというのは分かる。チョコを使うということは間違いない。
けれど、フォンデュとは一体……?
 カガヤ・アクショアに聞こうにも、彼も準備の為にチョコレートを汲みに行っている。
笹も準備を手伝おうとするが、フォンデュが分からないのでどうすればいいか困っていた。
すると、桜倉 歌菜がそのことに気付いた。
「溶かしたチョコに果物とかを浸けて食べるんですよ。クッキーとかマシュマロでやっても美味しいんです♪」
 固まらないようにチョコを温めて、材料を串に刺してフォンデュ鍋の中に浸けるだけと歌菜は手順を説明する。
なるほどと相槌を打ち、笹は歌菜と並んで食材を並べ始めた。
 一方、月成 羽純は設置したテントを確認しながらもそわそわそわ。
その様子が目に入った歌菜はくすりと笑った。
精神制御の技術もごまかしの技術も身につけていないとはいえ、彼の表情は分かりにくいが、それでも理由は分かっている。
羽純は甘いもの、特にチョコが好きなのだ。
 カガヤがフォンデュ鍋にチョコを汲んで戻ってきた。
笹はすぐに近づき、鍋の中を覗き見る。温かいチョコレートというものに馴染みがない彼女には、よほど新鮮なものに見えたに違いない。
「カガヤ!私、浸けるのやってみたいです!」
「いいよー。そんな難しくないし、鍋に触って火傷しないようにだけ気をつけてね」
 カガヤが固形燃料をセットしたスタンドの上に鍋を置くと、続いてミオンとアルヴィンも戻ってきた。
鍋を持ったアルヴィンもスタンドの上に置き、同じようにフォンデュ鍋にチョコレートを汲み上げに向かったジオもスタンドに下ろす。
 賑やかになりそうな気配を感じながらも、ジオはすんと鼻を動かした。
チョコレートの甘い香りが鼻孔をくすぐる。
 羽純の側へ近寄ろうとしていた歌菜は偶然にもその姿を目にし、再び笑みを零した。
珠洲が不思議そうに歌菜を見れば、視線に気付いた歌菜は歌うようになんでもないと答えた。
 初めて見るフォンデュ用の道具一式を興味深そうにディエゴ・ルナ・クィンテロは眺めながら、各人の飲み物を用意していく。
彼のすぐ側ではハロルドがマッチを擦り、固形燃料に火をつけていく。
 淡々として見えるが、どこか急いでいるようにもディエゴには見えた。
早く食べたいのだろうとディエゴが思うと同時に、マッチ箱を片付けたハロルドがぽつり、呟いた。
「……体重が増えない程度に食べなきゃ…」

 気を抜けば緩みそうになる頬を引き締める。ここに着いてから羽純は幾度同じことをしたかは分からない。
しかし、ばれてはいないと思っていたのだが……顔を引き締めた直後、やっぱり歌菜が笑った。
もしかすると気付かれているのかもしれない。
 その歌菜は羽純の給仕を楽しむつもりだ。食材のチョイスも抜かりはない。
思い切り幸せな時間を、貴方に。



●スイート
 人が多くてドキドキする。それでも楽しい時間が過ごせればいい、珠洲は思う。
気後れした様子で用意された食材へ目を向ける。
 珠洲がどれからにしようと悩んでいると、ハロルドがテーブルの中央に二枚の皿を差し出した。
「前に見たお菓子ですが……はい、皆さんどうぞ」
 剥いた林檎の半分にチョコがかけられており、マシュマロが添えられている。
皿の隣にはキャラメルソースも置かれている。
「そこにキャラメルソースをかけたり、マシュマロをくっつけて食べるんです」
 ジオはそんな菓子もあるのかと呟き、次いでハロルドに感謝の言葉を告げて林檎を口へ運ぶ。
悩んだが、お供はキャラメルソースにした。
 甘すぎるものが苦手な珠洲も悩んでからマシュマロを添えた。
キャラメルソースよりはくどくないだろう。
「あ、おいしい……。ありがとうございます、ハロルドさん」
 チョコレートの滝のチョコレートは甘すぎず、食べやすかった。林檎の酸味も柔らかだ。
その言葉を聞いたハロルドの口元がほんの少し綻んだことをディエゴは見逃さなかった。
 珠洲は隣で黙々と林檎を食べているジオを見た。
よくよく見れば、林檎を食べながらも次の食材をどうすべきか目移りしているようにも見える。
「ジオくんは甘いもの好きですか?」
「甘い物は、その……」
 言いよどむジオ。甘いものが好きでも、それを知られるのが恥ずかしいお年頃なのだ。
珠洲はその様子を、彼が甘いものを嫌いゆえのものだと誤解した。
「あ、ごめんなさい……私そうとは知らずにはしゃいじゃったりして……」
「いや、そうじゃなくて……」
 ジオが慌てて訂正しようとすると、歌菜がやはり、くすりと笑った声が聞こえた。
甘いものを好むゆえに笑われたと咄嗟に受け取ってしまったジオが顔を赤らめる。
けれど、歌菜の笑みに悪意の影は微塵もなく、むしろ好意的ですらあった。
「あ、ごめんなさい、笑っちゃって。ジオさんも同じなんだなーって思うと、つい」
 珠洲とジオ、二人分の不思議そうな視線を受ける歌菜の横で、羽純は平静を装っている。
これで歌菜にばれていることがよーく分かった。
「はい、羽純くん。甘栗とチョコって合うんだよ。あーん」
「ああ、これは幸せな味だな」
「甘栗も好きだもんね。二度美味しくてお得だよ!」
 ごくごく当たり前のように食べさせる歌菜と、ごくごく当たり前のように受け入れる羽純。
そんな2人を見て呆気に取られるジオだったが、すぐに我に帰る。
「……好きだけど、男で甘いものが好きだっていうのが恥ずかしくて……」
「そう?それならよかったです。別に、恥ずかしくはないと思いますよ」
 珠洲の視線の先には羽純。
ジオと同じように甘いものが好きな彼だが、歌菜とのやり取りはとても楽しそうだ。
「むしろギャップっていうんでしょうか?可愛くていいと思います。……うん、可愛いです」
 柔らかな笑みを浮かべ、そう言い切った珠洲からジオは目線を外す。
『ギャップ』という言葉に落ち込みながらも、可愛いという言葉が恥ずかしくて暫くの間、目線は泳ぎっぱなしであった。

「どうかしたか?」
「なんでもない。ちょっと予想していたのと違ったから驚いただけ」
 ミオンはフォンデュ串に突き刺した苺にチョコレートを絡め、すぐに鍋から引き上げた。
小さな滝のようなものにチョコを潜らせるのだと思っていたが、違ったようだ。
そちらは『チョコレートファウンテン』である。
「アルヴィンやった事ある?」
 ミオンが問いかけながら振り向けば、アルヴィンはじっと皆がフォンデュする様子を眺めていた。
返事はないがこの様子から見るに初めての体験だろう。
「はい」
 ミオンが差し出した苺を、アルヴィンは何も言わずそのまま食べる。
無言で咀嚼すること数秒。
「確かに美味しい、でも別々に食べたい」
「それは根本否定よっ!!」
 真顔のアルヴィンにすぐさまミオンが軽く肩を叩く。
軽快なやり取りを見ていた笹もくすくすと笑みを零した。
「あ、騒がしくしてごめんなさいね」
「いえ、楽しいのでお気になさらず。それよりも分けて頂いたオレンジ、とても美味しいです」
「本当?良かった」
「笹さんが分けてくださったバナナも美味しいです」
「ビスケットもお勧めですよ♪」
 和やかな神人達の会話。
皆、美味しそうにチョコレートフォンデュを食べている。
「チョコ、お好きな方が多いようです。バレンタインに、チョコ作って配ろうかな……」
 ハロルドの小さな呟きに、ディエゴが眉を顰める。
「ハル……チョコ配るって、なんでだよ。そういうのは振り撒くんじゃなくて大事な人だけに渡すものだろ……」
 ディエゴの機嫌が僅かに悪くなる。
人前ということもあって多少は気を配っているようだが、パートナーであるハロルドには一目瞭然だ。
察したアルヴィンは仲裁するかどうか悩んだものの、迂闊に首を突っ込むのも不味い気がし、遠くを見て現実逃避。
 ハロルドは理由が分からず、ゆるく首を傾げる。もしかして、チョコレートが苦手だから機嫌が悪いのだろうか。
とはいえ、彼は甘いものがあまり得意ではない。
その為、先程ハロルドが配ったキャラメルアップルと、用意してきた胡桃にチョコをつけて食べるだけで満足していたはずだ。
「私はただ……神人の皆さんに配ってA.R.O.A.に溶け込みたいと思っただけですけど……」
「……え、神人達に配るのか?あ……あぁ、まぁ、良いんじゃないのか」
 勘違いに気付き、ディエゴは気まずさから咳払いし、珈琲に口を付ける。
何故こんなことを言ってしまったのかは分からないが、面白くなかったのだ。
急に様子が変わったディエゴのことを不思議に思いながらも、ハロルドは目の前の神人達に視線を移す。
彼女達は今のハロルドに気を使ってくれているし、ハロルドが話しかければ温かく迎え入れてくれる。
彼女達は壁など作っていない。けれど、どうしても『何か』を感じてしまう。
打開する切欠が欲しかった。
 でも、それとは別に――
「ちゃんとディエゴさんにも何かあげますから」

「笹さん、お代わりはどうですか?」
「あ、お願いします」
 笹のグラスが空になったことに気付いた珠洲はコップを受け取り、牛乳を注ぎ足す。
笹は礼を言い、満たされたコップを受け取って一口。
少しくどい、チョコレート特有の甘さが牛乳ですっきりする。
「プチトマト、意外と合うんですよ」
「そうなの?ジャガイモとソーセージ、あと豆腐もあるわ」
 歌菜とミオンから飛び出してきた変り種に笹は目を丸くした。
特にチョコレートフォンデュ経験者ですら驚く、ソーセージと豆腐には仰天せざるを得ない。
現に笹の隣でカガヤが目を丸くしている。
「豆腐って……美味しいんでしょうか?」
「分かんない……試したことはないなぁ……」
 心中で試すのも怖いと付け加えつつ、カガヤはアルヴィンを見守る。
串で刺すことは出来なかったので、スプーンでチョコを掬って垂らしている。
 一口。そして咀嚼。
「なんだろう、豆腐って何でもありだよな」
 意外とありらしい。
ただ、アルヴィンの顔は冴えない。
「それよりも……ジャガイモは塩と胡椒で食べたい、むしろそれが最高だろ!?甘さとしょっぱさで確かに悪くないが……塩と胡椒で食べたい」
 テーブルの上で汲んだ手に額を乗せて俯くアルヴィン。
やれやれと溜息を吐き、ミオンはアルヴィンのカップを手に取る。
「温かな飲み物いる?」
 言いながらも珈琲を注ぎ足してやり、アルヴィンの側に置く。
本当ならばほうじ茶にしてあげたいところだったが、用意されていた飲み物の中にはなかったのだ。
 飲み物を淹れる為に立ち上がったことで、アルヴィンの奥に座っている歌菜と羽純の様子が見えた。
ミオンはつい、その様子を眺めてしまう。
「はい、羽純くん。次はジャガイモ♪」
「……チョコの甘さとジャガイモのしょっぱさの組み合わせがいいな」
 そんなやり取りが羨ましくなって、ちらり、ミオンはアルヴィンを見る。
しかし、彼は変わらず俯いたまま。漏れ聞こえる呟きは――
「美味しいけど、段々胸焼けがしてきた。美味しいけど、うん。夕飯はカレーか麻婆豆腐にしよう、うん」
 ミオンは再び溜息を吐いた。今度はさっきよりも盛大に。



●ビター
「ディエゴさん、胡桃を分けてもらってもいいですか?」
「ああ、構わない」
「ありがとうございます」
 分けれ貰った胡桃に、先程のアルヴィンと同じようにチョコレートを掛けてから、歌菜はやっぱり羽純へ。
口内で胡桃独特の食感を味わってから、羽純は串に苺を刺してチョコレートにつける。
「歌菜も俺にばかり構ってないでちゃんと食え」
 そしてそのまま歌菜の口へ。
けれど目算を誤ってしまったのか、チョコレートが口の端についてしまった。
「口元にチョコが付いたぞ」
「えっと、こっち?」
「そうじゃない、反対側」
「取れた?」
「あー……広がった」
 歌菜が手で拭おうとしたチョコレートは拭いきれないどころか口の端に広がってしまった。
羽純は自然に舐め取ろうとしたものの、流石に人前でそれをやる勇気はない。
指で拭ってやり、自身の指についたチョコレートを舐め取った。
「ありがと、羽純くん♪」
「勿体無いから、な」
 舐め取ったチョコレートが、羽純にはさっきまでよりも甘く感じられた。

 ふいにハロルドは歌菜が用意したバケットの存在に気付いた。
フォンデュ鍋の陰に隠れていたせいで見えなかったらしい。
「バケット、もらいますね」
「はい、どうぞ」
 歌菜はハロルドへ皿ごと差し出し、そのまま隣に座るアルヴィンにも差し出した。
「アルヴィンさんもどうですか?」
 男の人はお腹にたまるものがいいと思ってと言い添えて。
けれどアルヴィンはすでにお腹一杯もといチョコレート一杯。
今は夕食が恋しいところ。
「悪い、これ以上は食べれそうもない」
 言葉を選んで断れば、気にしないで下さいと笑顔で歌菜は返した。
邪気のないその笑顔に、釣られるようにアルヴィンの大きな手のひらが歌菜の頭へと伸ばされた。
ぽんぽんと撫でるように叩き、笑う。
「ありがとな」
「いいえ、どういたしまして♪」

「ありがとう、ディエゴさん」
 ディエゴがカガヤのカップに珈琲を足してやる。
随分と減っていたし、少し冷め始めていたので丁度良いタイミングだったようだ。
 その様子を笹はじっと見つめていた。
正確に言えば、ディエゴが珈琲と注ぎ足す前、カガヤが苺をフォンデュして小さく一口齧ったところを。
どうしようもなく、その苺が食べたくなってしまった気持ちが抑えきれなくなっていた。
「カガヤ、わたくしも苺が欲しいのですがもう無いみたいで……」
「苺もう無かったの?」
「無い……みたいですよ……?」
「えーっと……俺齧っちゃったけどこれでもいい?」
 消え入りそうな声を不思議に思いつつも、カガヤは食べかけの苺を差し出した。
「ありがとうございます、頂きますね」
 おずおずと苺に齧りつく。
甘酸っぱい。そして、温かい。
「美味しかった?」
 こくり、笹が頷く。
良かったと返しながらも、カガヤの頬にうっすらと朱色が浮かぶ。
「今気付いたんだけど……これって間接ちゅーになってない……?」
「え、あ……えっと……!これはですね……気付いてなかったです…」
 違う。
本当は、本当は――けれどそれ以外にどう答えればいいか、笹は知らない。
 顔を赤くしてしまった笹が気まずくならないようにカガヤが視線を動かすと、そこには苺。
予備の苺がしっかりとある。
笹はきちんと確認しなかったのだろうかという疑問はすぐに頭の片隅へ追いやる。
 カガヤは苺の皿を取って、テーブルの中央へと差し出した。
「苺まだあるけど皆食べるー?」
「頂きます」
 すぐにハロルドが応じる。
体重が増え無い程度にと思ってはいたものの、食べ始めると止められないのが甘味。
ディエゴは時間をかけてキャラメルアップルを味わっている。
 ミオンも苺へと手を伸ばした。
念の為にアルヴィンにもいるか確認しているが、彼はもう珈琲だけで充分らしい。
 歌菜が苺を貰おうとするところを制し、羽純が二人分を取る。
彼女も落ち着いて味わえるようにと思っているのだろう。
 カガヤと笹は、少しぎこちない。
二人とも頬が赤いように見える。
 他のウィンクルム達の様子を珠洲は落ち着いた眼差しで眺めていた。
「みなさん仲良さそうですね……」
 独り言なのかもしれないが、確かにジオの耳にも届いた。
ほんの少しの憧憬の色があるように思えた。
 珠洲とジオはウィンクルムとして活動し始めてからまだ日が浅い。
それ故に、お互い気を使いあっていて、壁がある。
「私達も、その内あんな風になれるでしょうか」
 今度は紛れもなくジオへ向けられた言葉だ。
少しの躊躇の末、ジオも小さな声で答えを返した。
「俺はなりたいです」
 温かで甘いチョコレートによって引き出された、紛れもない本音だった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター こーや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月20日
出発日 01月27日 00:00
予定納品日 02月06日

参加者

会議室

  • [26]手屋 笹

    2015/01/26-23:45 

    食材、そこまで変り種ではありませんが、
    苺とバナナを持ち込むように記入しました。

    絡み要素はわたくし達も薄めですね…
    リザルトでどうなっているか楽しみにしています

  • [25]ミオン・キャロル

    2015/01/26-22:43 

    PL:

    >歌菜さん
    エスパーですか、既にその旨、記入済みです(きりっ

  • [24]桜倉 歌菜

    2015/01/26-22:23 

    PL:
    >ミオンさん
    こちらこそ、有難う御座いますっ♪
    チョコフォンデュの具材をオススメに行って、撫でて貰おうと画策しております!(わくわく←

  • [23]ハロルド

    2015/01/26-18:56 

  • [22]ミオン・キャロル

    2015/01/26-01:23 

    PL:

    >歌菜さん

    頭なでなでの件了解です(ありがとうございますっ!)
    チョコレートフォンデュ貰うついでにでも隙あらば撫でにいきます!
    何かのネタに使ってくださっても大丈夫です※本人は至った普通です

  • [21]桜倉 歌菜

    2015/01/26-00:39 

  • [20]桜倉 歌菜

    2015/01/26-00:39 

    一応プラン提出済みですが、
    ギリギリまで調整は可能かと思います!(反応は遅めですがっ)

  • [19]桜倉 歌菜

    2015/01/26-00:38 

  • [18]桜倉 歌菜

    2015/01/26-00:19 

    ミオンさん、レモンいただきまーす♪(もぐもぐ←

    アクションプランの最初に「合同」、了解ですっ
    持ち寄った具材で楽しいチョコフォンデュになりそうですねっ♪

    私は、

    ・甘栗
    ・クッキー
    ・プチトマト
    ・バゲット
    ・ラスク

    をチョイスしてみようと思ってます♪
    良かったら、是非食べてみてください!

    羽純くんの給仕をしつつ、皆さんと一緒に美味しく頂きたいなと!

    (PL:アルヴィンさんの、頭なで…!!!ガタァアアア!←
    お言葉に甘えて、軽く絡みにいかせていただきますねっ)

  • [17]珠洲

    2015/01/25-22:23 

    合同ですね、わかりました。
    私も誰とでも大丈夫なようにして、少し薄めになってしまうかと…。
    持ち物についてはもう充分でている気がするので、私達は皆さんのご相伴にあずかろうと思います。

  • [16]ハロルド

    2015/01/25-15:01 

    私は…そうですね

    リンゴとキャラメルソース

    ディエゴさんは

    胡桃

    を持ち寄ります
    食べるより皆さんに振る舞ってるかもです

  • [15]ミオン・キャロル

    2015/01/25-00:49 

    歌菜さん…お疲れなのね(そっとレモンを渡す)

    では合同でOKな人は、分かりやすいようにアクションプランの最初に「合同」と記入しましょうか?
    勿論、やっぱり個人で…でもOKよ!

    私は、前述したとおり
    ・果物と
    ・変わり種(ソーセージ、ジャガイモ、豆腐)
    ・トッピング(生クリーム、カラースプレー)を持って行くので
    好きに食べてください(分担大歓迎)

    適当に薄く絡むと思うわ

    (PL:アルヴィンに頭をなでて欲しい神人様が居たら歓迎です
     癖、男女関係なく小さい子の頭を撫でる)

  • [14]桜倉 歌菜

    2015/01/24-22:45 

    私も合同でも全然大丈夫ですっ
    (寧ろ、皆さんと一緒に何かするという機会がなかなか無いので、大歓迎だったり…!)
    笹さんとハロルドさんが仰って下さったように、皆さんとの絡みは薄めにはなるかもですがっ

    メグミ●クのピーチティー、飲んだ事あります!
    ジュース感覚で、ゴクゴク飲めますよね♪

    最近よく飲むのは、
    スーパーフ●ーツC ス●ークリングです。
    ビタミンを沢山取りたくて…!
    炭酸の刺激で目が醒めるという効果もあったり…!(常に眠い←

  • [13]ハロルド

    2015/01/24-18:40 

    …かなり前に生産中止になってしまったのですが

    メグミ●クのピーチティー(紙パックの紅茶)が好きでした
    渋みはあまりなく、紅茶というよりほぼジュースっぽかったです
    期間限定で発売されていたストロベリーティーも好きでした
    今考えるともっと買いだめしておいたほうが良かった…

  • [12]ハロルド

    2015/01/24-18:37 

    私としては大丈夫ですよ?
    ただ特定の誰かと絡むのではなく
    誰でも絡んでも違和感のないような感じになるので薄くなっちゃうかもですが…

    えーい

    【ダイスA(6面):4】

  • [11]手屋 笹

    2015/01/24-11:48 

    遅れました、手屋 笹です。

    珠洲さんは初めましてですね、よろしくお願いします。

    皆で過ごす時間、楽しそうです。
    わたくしも皆さんとご一緒大丈夫です。

    確かにミオンさんの仰るようにチョコフォンデュがメインである以上
    皆さんで一緒にやりますと二人きりの時間というのは難しそうですね…
    皆が居る中でちょっとした事を入れる、と言う事になりそうでしょうか。

  • [10]ミオン・キャロル

    2015/01/24-10:54 

    珠洲さん初めまして。
    歌菜さんお久しぶり。
    羽純さんはチョコ好きなのね。給仕…(らぶらぶね…う、羨ましくなんか

    笹さっ…(舌をかんだ)
    笹さん達が、まだ来てないけど、皆で同じテントでやります?

    2人きりのチャンス逃しちゃうけど良いの?
    他の人と絡むと、その分文字数とられちゃうけど、大丈夫かしら?
    あと、合同でしても私からはネタを提供できないから、

    楽しい事が無いかもだけど平気かしら!?(←すごく大事)
    プラン書くのに困ったりしない?(←とても大事)

    合同でするとしたら
    私はデザートの他にソーセージとかジャガイモとか変わり種と
    あとトッピングに生クリームとか持って行こうかと考えてるわ。
    多少行動教えて貰えれば、絡むコメントを1言程度いれようかなと思うわ

    (ア:チョコかける必要あるのか?別々に食べたい)
    (ミ:…根本を否定しないでくれる?)

  • [9]桜倉 歌菜

    2015/01/24-00:34 

    改めまして、桜倉歌菜と申します!
    珠洲さん、はじめまして♪
    笹さん、ハロルドさん、ミオンさん、またご一緒出来て嬉しいです♪
    宜しくお願い致します!

    私達も個別でも複数でも、どちらでも歓迎です!
    羽純くんがチョコレート大好きみたいなので、ひたすら彼の給仕をしつつ、私もチョコレートを楽しみたいなって♪


    ポテチは、手作りの分厚い奴が大好きです!
    やっぱり塩は正義☆ですよねっ
    のり塩の塩加減は最高です♪ のりが歯に付いちゃうのが玉に瑕ですがっ
    密かにカ●ビーのフレンチサ●ダも好きだったりしますっ

    飲み物は、最近は抹茶にハマってます。

    朝は珈琲がないと始まりません!

    紅茶も好きで、良く飲んでます♪
    リラックスしたい時に良いんですよねっ

  • [8]珠洲

    2015/01/24-00:19 

    珠洲といいます。
    よろしくお願いしますね。
    私も個別でも複数でもどちらも大丈夫です。
    チョコレート、楽しみですね。

  • [7]ハロルド

    2015/01/23-22:37 

    コンソメですか…カ●ビーのコンソメ味はぱっとしないですけど
    コイ●ヤのリッチコンソ●は美味しいですよ
    同じコイケ●のスッパムーチ●梅味も美味しかったです。

    飲み物は…コーラは大丈夫になりましたけどまだ炭酸苦手なんですよねぇ
    もっぱらココアとか…小岩●の果物ジュース飲んでます
    ありんこみたいに甘いジュースぐびぐびです。

  • [6]ミオン・キャロル

    2015/01/23-21:22 

    ポテチ美味しいわよね。
    私も好きよ。断然塩ね、コンソメは認めないわ。

    複数って言っても
    「これしよう」とか無いわね。
    私達、ひたすら食べてるだけだと思うわ(苦笑
    (らぶもいちゃも何も無いと思われます)

    アルヴィン:
    ごたごた…
    ハロルドのパンチって痛そうだよな、一緒になったら俺は見守るよ(いつぞやの依頼のパンチを思いだし遠い目)

    好きな飲みのは珈琲かな。
    飲みすぎて若干気持ち悪い。
    でも、気が付くと飲んでるんだよな…。(ミ:それ、単なる中毒じゃないの?)

    最近、知り合いに○テ茶貰ったから珈琲の代わりに飲んでたりもするかな。

  • [5]ハロルド

    2015/01/23-20:12 

    好きなお菓子はのり塩ポテチです
    最近目覚めました
    あの塩加減は最高です

    あとはピザ●テトでしょうか
    コーラとの相性抜群ですね
    ただたまにチップスの上にチーズがのっかってないやつ
    あれは絶許です、万死に値します。
    同じようなやつでいうならプリングル●のオニオンサワーもそうですね
    粉がかかってなくてただの塩味になってる。

  • [4]ハロルド

    2015/01/23-20:10 

    私も、個別でも合同でもかまいませんよ
    ちょっとごたごたがあるかもしれませんが



    【ダイスA(6面):2】

  • [3]ミオン・キャロル

    2015/01/23-10:04 

    ミオンです。
    よろしくお願いします。

    個別でも複数でもOKよ。
    …あまり相談には来れないかもしれないけど。

    複数でやるなら
    そうねぇ…各自で好きな食材持ち込んで闇チョコ?

    ア:
    選べるから闇も何もないだろ。
    とゆうか、主旨からズレるのじゃないか?


    【ダイスA(6面):3】

  • [2]ハロルド

    2015/01/23-07:47 

  • [1]桜倉 歌菜

    2015/01/23-00:33 


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