白く、淡い、夢(こーや マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●とうふ
 ぐしゃり、男の手中でチラシが潰される。
ぶるぶると震えていたその手が、力強く作業台へと叩きつけられた。
 男が潰したチラシには、見えづらいが『』と書かれている。
オーガを食べてみようぜ!で営業停止をくらった、あのクッキングスタジオである。
そして、男がちょーーーーーーー一方的にライバル視をしているクッキングスタジオでもあるのだ。
「あの騒動で、ついにオサラバとなるはずだったのに……!
ウィンクルムを宣伝材料にして起死回生!?汚い、まるで忍者のように汚い!!」
 忍者が汚いと思った理由は定かではないが、風評被害である。
「何故、何故、A.G.O.だけ!!」
 きーっと喚く男――トゥーフも料理教室を経営している。
自身の料理の腕も、指導の腕も一流であるという自負がある。決して驕っている訳ではない。
事実、トゥーフは何度も料理コンテストで入賞してきた。
 にも関わらず、トゥーフの料理教室『KOU!YAH!料理教室』の生徒数はびみょーである。
このままでは教室を閉めるしかないと思っていたところに、商売敵が自爆したのでこれなら勝つる!状態だったのに起死回生を図ってきたのだ。
「仕方ない……目には目を、歯には歯を。ウィンクルムにはウィンクルムを」
 作戦はこうだ。
大試食会を開く。生徒獲得の為のキャンペーンとして、ウィンクルムにも来てもらいたいとA.R.O.A.かミラクル・トラベル・カンパニーで募集をかけるだけでいい。
そして、A.G.O.クッキングスタジオと一線を画す料理に驚いたウィンクルム達により、瞬く間にKOU!YAH!料理教室の評判が上がる……完璧すぎて我ながら怖い。
「ふっ……ふっふっふっ……おーーーーーーほっほほほほほほほほほほほほ!!!」
 自身の勝利を確信し、高笑いのトゥーフ。
彼は理解していなかった。
料理の腕と指導の腕が一流でも、豆腐料理しか作らせない料理教室が流行る訳がないのだという事を。

解説

●参加費
一組300jr

●試食
下記の3品が出てきます。
ただしこれはPL情報。
出てくる瞬間までウィンクルム達は知りません。

1品目:揚げ出し豆腐
2品目:豆乳のスープ 摩り下ろした豆腐とおぼろ豆腐を添えて
3品目:豆腐チャーハン 米の代わりに細かく刻んだ高野豆腐を使用

味は大丈夫。
ただし見た目のインパクトはでかいので、食欲がなくなる人もいるやも。


●すること
残念なご飯を食べましょう。
皆さんの 素 晴 ら し い リアクションを期待しております。

感動の涙を流すも良し、そんなパートナーにドン引きするも良し。
現実逃避して豆腐の妖精と邂逅するもよし、大真面目に食レポするも良し。


●その他
コメディです。
参加=こーや色に加工される覚悟を持っていると認識します。
「豆腐」の記述は不要です

ゲームマスターより

クッキングスタジオのお名前を貸してくださったあごGMに感謝しつつ
こーやは今日も沸騰した湯の中へダイブするのであった。

          ―完―

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リゼット(アンリ)

  確かに熱血先生がいそうな名前ではあるわよね
私はあっさりした料理が食べたいけど
キャンペーンだっていうからには出された料理は
おいしそうに食べなくちゃね

確かにダシの味は絶品ね
主役の味を殺さずにしっかり引き立てていて
シンプルな料理だからこそ実力がわかりやすい
これならいいんじゃない?

豆乳のスープにお豆腐…
斬新なアイデアでいいと思いますええ!
ちょっとアンリ、静かになさい!
いいものは入ってないけど変なものも入ってないでしょ!

堕ちた…アンリがダークサイドへ…
(堕ちたアンリを部屋の隅に転がし
仕方ないわ
このチャーハン…みたいなものは
責任をもって私が完食するわ!
畑の肉だと思えば!
なんかアンリのがうつってきたかしら…


向坂 咲裟(カルラス・エスクリヴァ)
  ◆本人は至ってまじめに食レポ

カルさんと初めてのお出掛けね
ご飯を一緒に食べると仲が良くなると思うからこの試食会を選んだけれど…牛乳を使った料理は出るかしら

1品目は揚げ出し豆腐ね
だしが上品で美味しいわ

2品目は…まあ白い
もしかして牛乳のスープかしら!…豆乳だったわ
一品目の揚げ出し豆腐のきつね色とは違う白さが素敵よね
この白の美しさはまるで…そう、私が愛する牛乳に通じる物があるわ
この白が最高よ
牛乳、最高よ

3品目は…あらお米じゃなくてお豆腐だわ
食感もお米とはまた違った良さがあるわね
あら、カルさん手が進んでないけれど…大丈夫?
ご飯を残すのはイケナイ事だけど無理は駄目よ

どれも美味しくて良かったわ
ね、カルさん?



出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
  こっちの料理はまともであることを祈りましょうか

1品目は普通のリアクション
ホントね、出汁がきいて美味しいわ

2品目から首を傾げる
今度は豆乳スープ?
いや美味しいけどなんかバランス悪くない?

3品目でついに爆発
やっとご飯が…ってご飯じゃないじゃない!
炒飯じゃなくてチャー豆腐よ!
レムは何でそんなに落ち着いてるわけ?
ツッコミどころしかないわ!
食べるけど!

色々吃驚しすぎて脱力したけど…まあダイエットにはいいんじゃない?

にしてもレムといると飽きないわ(苦笑
男友達ができたのって施設以来だから何かと新鮮
恋人でもない男女が一緒にご飯を食べるんだから、それは友人なんじゃない?

…また豆腐!?
レムが冗談言う所、初めて見たわ



桜倉 歌菜(月成 羽純)
  豆腐は大好き!

揚げ出し豆腐
→ わぁ♪美味しそう
豆腐がカラッと揚がってて、つゆが美味しいね♪

豆乳のスープ
→こ、これは…豆乳?
具も豆腐…(ちょっと引く)
けど、見た目で判断しちゃ駄目だよね!
料理は見かけじゃなくて、味と愛情!って、お爺ちゃんも言ってたしっ
えいっ(ぱくっ
豆乳は淡泊な味になりがちだけど、これは風味もコクもあって、美味しい♪
うん、イケる!おかわり!
羽純くんも食べてみて!あーん♪

豆腐チャーハン
→お米じゃなくて…豆腐!?(再び引く)
けど、さっきのも美味しかったし、きっとこれも…!
…美味しーい!!
豆腐でカロリーオフだし、乙女に美味しくお得♪
羽純くんも、はい、あーん

すっかりファンになっちゃった♪



ユラ(ルーク)
  料理教室は初めてだけど、美味しい料理が食べれるのは楽しみだなぁ

1品目:
前菜かな、お豆腐は好きだよ
うん、美味しい!

2品目:
…ヘルシー志向なんじゃないかな
ちょっと斬新だけど、何事もインパクトって大事だもんね
変なものは入ってないし、ちゃんと食べるよ
……あぁうん、豆腐だ

3品目:
さすがにもう来ないよねぇ……え?
だ、出されたものを残すのはマナー違反…!
大丈夫、豆腐は友達…豆腐はトモダチ…!!
あ、なんか新たな扉が開けそう

うーん…トゥーフさん、ここまで拘るってことは普通の料理作る気はないのかな
もったいないよねぇ…
あ、いっそ豆腐ダイエット専門の料理教室とかにしてみるってのはどうかな
女性層には受けそうじゃない?


●KOU!YAH!料理教室
 アンリは店の入り口に掲げられていた看板を思い返す。
小柄な彼女だと空を見るようにしなくてはいけないが、長身のアンリはほんの少し首を逸らすだけで充分だったというのはさておいて。
「KOU!YAH!とはテンション高めのいい名前じゃねぇか」
「確かに熱血先生がいそうな名前ではあるわよね」
 いい名前かどうかにはノータッチ。
はっきりいってセンス悪いにも程がある……とリゼットが思ってるかどうかはノーコメント。
「あっさりした料理が食べたいわね」
 とはいえキャンペーンで出される料理だ。
リゼットはきちんと美味しく頂くつもりではある。
 対してアンリはそわそわと落ち着かない様子。
「スタミナ料理出てきそうじゃね?やっべ腹減ってきた!早く出てこねぇかな。
俺の腹は若干どころか全面空きがございます!」
 ほう、そうかそうか。
ちょー期待してるね、期待してるってことはあとでどん底まで落としていいってことだねやった楽しみだね!
アンリの明日はどっちだ!?


 向坂 咲裟にとって、初めてのパートナーとのお出かけである。
一緒に食事をすると仲が良くなるだろうからこの試食会を選んだ訳だが……。
「牛乳を使った料理は出るかしら」
 豆腐の牛乳がけをお望みですか。
大真面目に無自覚で更なるカオスを呼び込もうとしている……逸材の気配。
「それは出ないだろう。
人に教える立場の人間が出す料理だからな……まあ、それなりに期待しておくか」
 そう言いながらも、カルラス・エスクリヴァの顔色は冴えない。
教室長であるトゥーフの名前の響きに、とても嫌な予感がするから。
カルラスは後にこの予感が正しかったことを、身を以って知るのである。


「こっちの料理はまともであることを祈りましょうか」
 出石 香奈の呟きに、レムレース・エーヴィヒカイは頷いて応える。
トゥーフが一方的にライバル視している『A.G.O.クッキングスタジオ』の営業停止事件に関わってしまった二人だ。
「こちらには頑張ってほしいものだ……あれは酷い事件だった」
 二人の表情は重い。
そして、これからもっと、酷くなっていくのだ。
 彼らの直観力が高ければ、閑古鳥が鳴いている現状だとか料理教室の名前だとか教室長の名前だとかでこれからの惨事を回避出来たかもしれない。
あれやこれやの思惑を飛び越えることが出来たかどうかは知らないけどな!


●揚げ出し豆腐
 出された品を見て、感嘆の声に安堵の声も混ざっていた理由はお察しください。
桜倉 歌菜は純粋に美味しそうだと思ったうちの一人だ。
「わぁ♪美味しそう」
「見た目美味そうだな」
 月成 羽純の感想には、多少の疑いが読み取れます、勘がいいね。
そのことに気づかない歌菜は、迷いも疑いも無く揚げだし豆腐に箸を入れ、口へと運ぶ。
 カラッと揚げられた部分と、出汁に浸ってしっとりした部分により二種類の食感が同時に味わえる。
「つゆが美味しいね♪」
 和食が好きな羽純の口角が自然と上がる。
「うん、つゆが美味い」
 美味しい料理は箸が進む。
これからが悲惨なのだと知らない二人は和やかに、そして美味しそうに揚げ出し豆腐を食べるのであった。


 自分で作る訳ではないが、ユラは料理教室に来るのは初めてだ。
美味しい料理が食べられるだろうから、楽しみになるのは当然。
 ルークはほんの少し警戒していた。
腕は一流なのに生徒を獲得する必要があるということは、何らかの問題があるということだ。
まあ、行ってみれば分かるだろうと来た訳だが、出てきた料理によく言えば安堵、悪く言えば拍子抜けした。
「なんだ、思ったより普通じゃねぇか」
 そう、普通なのだ。
美味しそうではあるが特に問題は無い。
「前菜かな、お豆腐は好きだよ。……うん、美味しい!」
 いつの間にか食べ始めていたユラの様子を見て、ルークも揚げ出し豆腐に手を伸ばす。
ユラの言葉通り美味しかった。
だからこそルークは首を傾げた。
「味も普通に美味いし、何が問題なんだ?」
 問題がなかったからこそ、気をつけるべきだった、
後に、ルークはそのことを酷く悔いた。ユラが、大事な物を失いかけたのだから……。


 同じように警戒していたカルラスも、安堵の息を吐いていた。
自分の前に置かれる直前まで怪しいものが出てくるのではと警戒していたのだ。
 しかし食べてみれば普通の揚げ出し豆腐。
出汁の優しい味がささくれ立った心を宥める。
 咲裟はカルラスの心中など知らず、揚げ出し豆腐を味わう。
「だしが上品で美味しいわ」
表情こそ変わらないものの、声音には僅かに満足気な響きがあった。


「コース料理なのか?」
 一品ずつ運ばれてくるというのだから、腹の中が全席空席状態だったアンリには物足りない。
が、この次があると自身を宥め、揚げ出し豆腐を食べ始める。
前菜ならば一品目が軽めのものでも仕方ない。
「これはいい味してるぜ。ダシが美味いっつーことはこの先も期待できるよな」
「確かにダシの味は絶品ね。主役の味を殺さずにしっかり引き立てていて」
 シンプルな料理だからこそ実力が分かりやすいということを、お嬢様なリゼットはよく知っている。
「これならいいんじゃない?」
「だな。この料理なら習いたいって奴もいると思う」


 隣に並んで座り、レムレースと香奈は「頂きます」と手を合わせてから箸を伸ばした。
「衣の歯ざわり、出汁のうま味どれをとっても素晴らしい」
「ホントね、出汁がきいて美味しいわ」
 二人してほっと胸を撫で下ろす。
この揚げ出し豆腐こそがトラップなのだと、気づかぬまま二人は食事を続けるのだった。



●豆乳のスープ~摩り下ろした豆腐とおぼろ豆腐を添えて~
 運ばれて来た料理を見て香奈は眉を顰めた。
「今度は豆乳スープ?」
 しかも摩り下ろした豆腐とおぼろ豆腐を添えているのだ。
暗雲が立ち込めてきたとかじゃなくて既に雨が降っている感じ。
 レムレースは気にすることなくスープを一掬い。
「豆乳のまろやかな風味がいい。優しい味がするな。身も心も温まるようだ」
「いや美味しいけどなんかバランス悪くない?」
「バランス?確かに豆腐や豆乳ばかりだが……美味いぞ?」
 豆腐に豆腐を続けてくるというのは明らかにおかしいと香奈は思うのだが、レムレースはさして問題を感じていないらしい。
もやっとする気持ちを心のワイン瓶で殴りじゃなかった押さえつけ、香奈もスープを味わうことにした。


「まあ、白い」
 一人、嬉しそうな声を上げる咲裟。
牛乳を使った料理なのではないかと期待したが、残念ながら豆乳のスープ。
 口の中に広がったのは、彼女が期待した味ではなかった。
「一品目の揚げ出し豆腐のきつね色とは違う白さが素敵よね」
 一口。
「この白の美しさはまるで……そう、私が愛する牛乳に通じる物があるわ」
 一口。
「この白が最高よ」
 一口。
「牛乳、最高よ」
 一口飲む度に呟く咲裟は、なんていうか、怖い。
カルラスは痛ましく思いながらも、冷静に突っ込んだ。
「お嬢さん……実はとてもショックを受けているだろう」


 豆腐in豆乳のスープ。
この組み合わせが与えた衝撃はいかほどだろうか。
「斬新なアイデアでいいと思います、ええ!」
 リゼットが自分自身に言い聞かせているように言う。
一方で、アンリの笑顔からは生気がお出かけしている。御用のある方はぴーっという発信音の後にメッセージをどうぞ。
「Daizu meets Daizu! YAAAH!!」
 拳を振り上げアンリさん絶叫。ただし彼の魂がそこにあるかどうかは別問題。
「ちょっとアンリ、静かになさい!いいものは入ってないけど変なものも入ってないでしょ!」
 あ、本音出た。


「……いや、おかしいだろ。豆乳に豆腐と豆腐を添えるって、その発想どこから来たんだよ」
「……ヘルシー志向なんじゃないかな」
「そういう問題じゃないだろ、どんだけ大豆を摂取させたいんだ」
「ちょっと斬新だけど、何事もインパクトって大事だもんね」
 大事だけどインパクトの比重がおかしすぎる事には触れない触れたくないルークである。
変なのは入ってない、変なのはと呟いてからユラはスープに口をつける。
「あぁ、うん、豆腐だ」
 美味しいけど、それ以外の感想が出ない。
ユラの銀色の瞳が一瞬黒く濁ったように見えたのはきっと気のせい。


「こ、これは……豆乳?具も豆腐……」
「また、豆腐?」
 歌菜の体がスープから逃げるように、僅かに身を引く。
羽純もスプーンを持ったまま硬直。彼の「細かい事ぁいいんだよ」の精神は裸足で逃げ出している。
 けれど歌菜はすぐに、キッと挑むような眼差しになった。
見た目で判断してはいけない。料理は味と愛情だと祖父が言っていた。
 でも、おじいちゃんのその言葉は『良識の範囲で』だと思うよ。
今目の前に出されたものを見てもおじいちゃん、その言葉を言えたかどうか……とにかく、いいお孫さんですね。
 思い切って歌菜はスープを口に運ぶ。
その勇気ある歌菜の行動に、驚きながらも羽純は様子を窺ってしまう。
「豆乳は淡泊な味になりがちだけど、これは風味もコクもあって、美味しい♪
うん、イケる!おかわり!」
「美味い……のか」
 羽純の体に落雷のような衝撃が走る。
彼の知らない神人が今、目の前にいる。
「羽純くんも食べてみて!あーん♪」
 無邪気に差し出されたスプーンを、一瞬の躊躇の後に羽純は受け入れる。
ゆっくりと、口の中で味わう。まろやかでありながらさっぱりとした味だ。
「本当だ、意外とイケる」
 目を見開いた羽純には、その事実への驚きが大きすぎた。
そんな羽純を尻目に、おかわりは用意できないと言われてしょんぼりしている歌菜さんであった。
すげぇ。



●豆腐チャーハン~米の代わりに細かく刻んだ高野豆腐を使用~
 どうせ三品目も豆腐料理なんだろう。
そんな気はしていた、していたが、これは一体どういうことだろうか。
「あら、お米じゃなくてお豆腐だわ」
 運ばれて来たチャーハンをしげしげと眺める咲裟に対し、カルラスは力なく項垂れる。
なんていうのかな、ラスボスの力が圧倒的過ぎて呆然とするしかなかった勇者的な感じ。
「よりにもよってチャーハンか……!其処は米でやれ……っ!」
 カルラスの呟きが空しく響く。
聞こえていないのか、咲裟は平然とレンゲを差し込む。
牛乳を使っていないのは一目瞭然なので、特に思うところは無いらしい。
「食感もお米とはまた違った良さがあるわね」
 もっきゅもっきゅ。
米とは違う歯ごたえはなかなか面白い。咲裟は手を止めることなく食べ続ける。
 カルラスはと言えば……――
「違う、こうじゃないはずだ……!」
 一口食べるごとに葛藤している。一般ぴーぷるな彼には、味が良くても見た目というか食材のチョイスへの抵抗が強すぎる。
別に彼が豆腐メンタルな訳ではない、料理が悪い料理が。
「あら、カルさん、手が進んでないけれど……大丈夫?ご飯を残すのはイケナイ事だけど無理は駄目よ」
 顔色一つ変えることなく完食せしめた咲裟を見るカルラスの瞳からはハイライトが無くなっている。
いわゆるレ(ぴーーーーーー)目って奴だね、さすがに怒られるから多めに自主規制しとくね!
「……お嬢さん、食うか?」
 カルラスがチャーハンを乗せたレンゲを咲裟に差し出す。
押し付けたい感が全身から滲み出ていますよ、カルラスさん。
「では、遠慮なく」
 差し出されたレンゲを口に含み、咲裟はチャーハンを咀嚼する。
自身のチャーハンが減ったことにカルラスは心底ほっとしたのであった。
 なお、この後、「どれも美味しくて良かったわ。ね、カルさん?」と同意を求められたカルラス氏は、「味だけは良かった」とコメント。
コメントした瞬間、彼が実年齢よりもかなり老け込んで見えたという噂である。


 流石にもう来ないだろう、そう思っていたもとい信じたかったユラとルークだが現実とは非情なものである。
「なんでだよ!?馬鹿なのかっ!?馬鹿じゃないのか!?」
「大丈夫、豆腐は友達……豆腐はトモダチ……!!」
 抵抗を続けるルークさんと、早々に自己暗示スイッチを入れたユラさん。
けれど、レンゲを持つユラの手は小刻みに震えている。
これまでの積み重ねと豆腐チャーハンの見た目のインパクトが彼女に大きなストレスを与えたのだ。
誰だここまで追い詰めたの。
「ふふ、豆腐の宝石箱みたい。とても綺麗」
「逝くな、そっちに逝くな!!……いや待てよ、これはある種の挑戦状じゃないのか」
 ルークはぐっと唇を噛み締め、毅然とチャーハンを睨み付ける。
その横でユラはチャーハンを掬い上げている。
「食ってやるよ……ここまで来たら全部食ってやるよ!」
 あかん、それ、フラグや。
ルークは親の敵を見たかのような勢いでチャーハンを口へと運んだ。
とても男らしくチャーハンを食べているが、何故か背中が泣いている様に見える不思議。
「あ、なんか新たな扉が開けそう……大丈夫、逝ける」
 ユラさんは開いてはいけない扉に手をかけていた。
その扉には『豆腐道』と書かれていた気がすると、後に彼女は述懐するのであった。


 米の代わりに高野豆腐。
溝に捨てたほうがいいんじゃないかと言いたくなるその発想に、歌菜と羽純はしり込みする。
「流石にやり過ぎだろ……幾らなんでもこれは……」
 ご尤も。
多分アレだ、泳ぐのをやめると死んじゃうマグロみたいなもんなんじゃないかな、トゥーフさん。
 でも見てください、羽純さん。
貴方の隣に座ってるお嬢さん、挑むつもりですよ。
 そんな声が聞こえたわけでは勿論無いだろうが、羽純が歌菜を見た時には既にチャーハンは彼女の口の中へダイブ済み。
「おい、大丈夫か?」
 何も言わずに咀嚼する歌菜に声をかけると……――
「……美味しーい!!」
 は?美味い?……本気で?
現実に羽純の思考が追いつかない、歌菜さん勇気ありすぎ。
「豆腐でカロリーオフだし、乙女に美味しくお得♪はい、あーん♪」
 再び差し出されたレンゲに、恐る恐る羽純は口を付ける。
普通のチャーハンよりも柔らかい味というか米もとい豆腐に味がしっかりついているというか。
「……思ったより悪くはない」
「ね?私、すっかりファンになっちゃった♪」
 まさか、料理教室に通う気だろうか。
羽純の表情に不安の色が過ぎる。豆腐ばかりの料理……歌菜が食べさせてくれるなら、食べてもいいような気はする。
が、一食ごとにどれだけの気力を持っていかれるか。
そのことに思い至った羽純は、歌菜が本当に通うと言い出した時は全力で他の料理教室を勧めようと誓ったのであった。


 やっとご飯が……そう思ったのに。
「……ってご飯じゃないじゃない!炒飯じゃなくてチャー豆腐よ!」
 香奈は思わず手のひらをテーブルに打ちつけた。
熱くなりたい女、出石 香奈。求めている熱さはこれじゃありません。
「香奈、落ち着け」
 言いながらもレムレースさんはチャーハンを味わってるなう。
「確かに豆腐だが美味いぞ」
「レムは何でそんなに落ち着いてるわけ?ツッコミどころしかないわ!」
 三品続けて豆腐だとか米の代わりに豆腐を使うとかとりあえず豆腐を使えばいいと思ってるメニューだとかもうツッコミどころしかないのだ。
香奈の拳の中でレンゲがミシッと怪しい音を立てた気がするが幻聴だろう。
「食中毒さえ起こさなければ大丈夫だ、あれは酷い事件だった」
「そういう問題じゃないわよ!」
 憤然と言い返しながらも、香奈はチャーハンを食べる。
しっかり美味しいのがさらに腹立たしい。
 ハァと香奈は溜息を吐いた。同時に苦笑いが浮かぶ。
「にしても、レムといると飽きないわ。男友達ができたのって施設以来だから、何かと新鮮」
 そんな香奈の言葉に、レムレースは少し驚いたように目を見開いた。
「……友人なのか?」
「恋人でもない男女が一緒にご飯を食べるんだから、それは友人なんじゃない?」
 ウィンクルムである以上、共に食事をすることは珍しくない。
しかし、楽しいと思えるのであれば。それは確かに友人関係と言えるだろう。
ただしここで現実を見てはいけない、二人で食べてるのは怪しい豆腐料理だという現実は脳内フィルターで華麗に消去だ☆
「そうか、俺も女性の友人ができるのは初めてだ、嬉しい申し出だな」
 うっすらとレムレースの口元に笑みが浮かぶ。
嬉しい気持ちからか、つい、口が軽くなった。
「豆腐だけで物足りないなら何か甘味でも買って帰るか。ごま豆乳プリンなどはどうだ?」
「また豆腐!?」
 悲鳴を上げた香奈の様子に、レムレースはふっと笑った。
「……冗談だ」
「レムが冗談言う所、初めて見たわ」
 顔を見合わせて、二人で笑う。
その二人の前では、豆腐チャーハンが早く食べてくれと言わんばかりに軽く、揺れた。


 メイン来いメイン具体的に言うと肉来い肉……!
アンリ の いのり。
アンリ の いのり は つうじなかった !
「なんだご飯ものか……」
 ふっと、柔らかな微笑。
しかしそれも一瞬。
「じゃねェェェ高野豆腐だァァァ!チャー『ハン』どこやったァァァ!
メシをよこせェェェ!ライスプリィィィィィィィィィィィィズ!!ギブミーラァァァァァァァァァァイス!!!」
 アンリの紫色の瞳が赤く、血の色に染まったようにリゼットには見える。
堕ちた、アンリが、ダークサイドに堕ちた。所謂闇落ちって奴だ、かっこいいね!
 さて、リゼットさんの手の中にはいつのまにか縄、ロープ。
何故か机の下に落ちていたのである、きっとトゥーフの趣味用に違いない。
「豆腐の角に頭ぶつけて狂っちまいそうだァァァァァァァァァ!」
 狂いそうだっていうか、もう手遅れだよね。
アンリが妖怪米ヨコセとなって教室内を徘徊しようとしたまさにその時、リゼットのすご技が炸裂。
一度どっかで誰かが縛られてるのを記憶したのかな、それともこれもお嬢様の礼法の一つってことなのかな。
兎に角、リゼットは見事な腕前でアンリを縛り上げた。
あ、あーるじゅうはち指定を受けそうな縛り方ではないので安心してください。
 縛ったアンリは教室の片隅にぽい。
「仕方ないわ……このチャーハン……みたいなものは、責任をもって私が完食するわ!」
 二人分の豆腐チャーハン。小さな体に大きな勇気。
A.R.O.A.の小さな巨人、リゼットが立ち上がる!
「畑の肉だと思えば!」
 言いながらもレンゲを動かす。
アンリのダークサイドテンションがちょっぴりうつった気がするリゼットであった。
 ちなみに。
「真っ白だぜ、頭の中も胃の中もよォ……」
 部屋の片隅で、アンリさんは口から魂を飛ばしていました。


 余談だが。
豆腐と聞いた途端に身構える者、扉を開いちゃうぞーと危ない目をしちゃう者。
情緒不安定になり暴走する者、キレてバイクをかっ飛ばす者などが現れ、精神安定の術を持つウィンクルム達が彼らのケアに当たったとかいう噂が流れた。



依頼結果:大成功
MVP
名前:リゼット
呼び名:リズ
  名前:アンリ
呼び名:アンリ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター こーや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月24日
出発日 01月03日 00:00
予定納品日 01月13日

参加者

会議室

  • [9]リゼット

    2015/01/02-23:09 

    ギリになっちまったがよろしくなー。
    食い物あるところに俺様あり!だぜ。
    腹減らしていくぞ~

  • [8]桜倉 歌菜

    2015/01/02-00:24 

  • [7]桜倉 歌菜

    2015/01/02-00:24 

  • [6]向坂 咲裟

    2014/12/30-02:04 

    挨拶が遅くなってごめんなさい。
    向坂 咲裟よ。精霊はカルラスおじさん。
    歌菜さん、香奈さんとは初めましてね。よろしくお願いするわ。
    リゼットさんとユラさん達はお久しぶりね。今回もよろしくね。

    料理教室のお料理、楽しみだわ。
    牛乳を使った料理は出ないかしらね。
    …もっとわくわくしてきたわ。とっても楽しみよ。
    素敵な時間になる事を祈っているわ。

  • [5]桜倉 歌菜

    2014/12/29-01:01 

    ご挨拶が遅くなりました!
    桜倉歌菜と申します。パートナーは羽純くんです。
    ユラさん、香奈さん、リゼットさん、今回もご一緒出来て嬉しいです♪
    咲裟さんは初めまして♪

    大試食会、楽しみですっ
    一体どんな美味しい料理が出るんでしょうか?
    ワクワクです♪

    皆さん、よろしくお願いしますっ

  • [4]桜倉 歌菜

    2014/12/29-00:56 

  • [3]出石 香奈

    2014/12/27-21:17 

    出石香奈とパートナーのレムよ。
    ユラ達と咲裟達は初めまして。

    あのクッキングスタジオのライバル…あれは酷かったわね、色々と…(遠い目
    ライバルっていうからには食品衛生はきっちりしてるでしょうから、安心して食べられるわね。
    楽しみだわ。

  • [2]ユラ

    2014/12/27-09:38 

    どうも、ユラです。
    香奈さんレムさんは初めましてかな?
    他の皆さんはお久しぶり!

    プロが作った料理が食べれるなんて幸せ~
    どんな料理が出てくるか楽しみだなぁ♪

  • [1]ユラ

    2014/12/27-09:37 


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