宴会ドキドキゲーム(山内ヤト マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 年末年始。忘年会と新年会のシーズンがやってきた。
 宴会好きな一人の精霊の発案で、ウィンクルムの忘新年会を開催することになった。
 場所はタブロス内の、おしゃれでカジュアルな雰囲気のビストロだ。

 幹事を務めるのは、ネズミのテイルスでトリックスターのヴェーザーという青年だ。面倒な手配などは彼が担当するので、宴会に参加するウィンクルムはただ楽しむだけで良い。

 出てくる料理は、気軽な感じのフレンチのコース。
 ドリンクは一般的な価格のワイン、カクテル、果実酒の中から自由に選べる。未成年者やお酒を飲まない人のためのソフトドリンクもある。フレッシュで美味しいジュースや、ウーロン茶などが用意されている。

 食事が一段落したところで、余興としてミニゲームをする流れになっている。二人の距離が縮まりそうなゲームだ。
 普段は人目を気にして遠慮したり、性格や親密さの関係上なかなか実現できないようなことでも、宴会という非日常的なノリと空気の中でならできるかもしれない。

 用意されているミニゲームはこちら。

 二人羽織。前の人にケーキを食べさせる。スムーズでキレイな完食を目指そう。

 風船割り。二人の間に風船をはさみ、ギューッと力を入れて抱きしめ合って風船を割る。

 オデコでボール運び。ゴムボールを二人の額に挟んで落とさないようにしながら、テーブルの向こう端まで運ぶ。

 どれか一つを選んで参加してみよう。

解説

・必須費用
参加費:1組600jr
参加費には、宴会に出てくる飲食物の代金も含まれています。



・飲酒と外見年齢について
外見年齢の設定が20歳未満で実年齢が20歳以上のPCが飲酒行為をする場合、プランか自由設定にお酒が飲める年齢であることの記載をお願いいたします。「成人」の二文字でOKです。



・宴会ゲームについて
奥手な関係やまだ親密度が高くない精霊であっても、宴会のゲームには参加可能です。
そのため、このエピソードの難易度は「簡単」になっています。
普段はそんなことをしないような堅物の精霊さんや内気な精霊さんには、宴会を盛り上げるという使命を持った幹事ヴェーザーが、参加してくれるよう頼み込みました。

すでに打ち解けたウィンクルムなら、ノリノリで参加しても、楽しく盛り上がりそうですね!

宴会のゲーム部分以外のウィッシュプランには、通常のハピネスと同様に成否判定がおこなわれます。

ゲームマスターより

山内ヤトです!

ビストロで年末年始の宴会です。
食事の他に、ドキドキなミニゲームもご用意しました。奥手なペアも普通のペアも気さくなペアも、皆でゲーム!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  成人

☆心情
最近のエミリオ、時々思い詰めたような表情を見せる時があるの
好きな人にはいつだって笑っていてほしいもの
エミリオが笑顔になってくれるといいな

☆食事
(頬を膨らませ)む、私はもう子供じゃないもの、大人だもん!(勢いでワインを飲んでむせる)
うう・・・あ、ありがと(これが大人の余裕ってやつなのかな(ドキドキ))

☆『風船割り』選択
よーし、いくよおおっ!?(勢いあまって精霊に突撃)
ご、ごめんねっ
エミリオが笑った・・・!(とても嬉しそうに笑う)

(再挑戦)エミリオばかり余裕なのってずるい(赤面しながら精霊の腕の中へ、密着した体から精霊も鼓動が早いのに気づき嬉しくなる)

私の方こそ楽しい時間をありがとう!



日向 悠夜(降矢 弓弦)
  ふふ、宴会楽しいね
へーゲームだって
よーし、弓弦さん!私たちも頑張っちゃおっかー!

◆二人羽織
私が後ろでいくね

羽織を被って…手の位置はこれで良いのかな?
うーん、分かんないからちょっと前に詰めてみるね
ふふ、弓弦さんに抱き着いているみたいだ

準備が出来たのに動かない弓弦さんを不思議に思い声を掛けるね
弓弦さん、大丈夫…?
指示に従うよ…って、あっ間違えちゃった?

弓弦さん、間違えちゃったけれど大丈夫だった?
顔についたクリームがあったら指で拭ってぱくりと自分の口に入れるね
ご飯も美味しかったけど、ケーキも美味しかったみたいだね
私が前でもよかったなぁ…って大丈夫!?


果実酒を飲んでおり
何時もより少しテンション高め


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  未成年
ソフトドリンク

オデコでボール運びに挑戦

二人羽織も風船割りも、羽純くんと密着しちゃうじゃないですか心臓がもたない…!
と、そう思っていたんですけど…
ゴムボールを額に挟むって、顔が近…!!

羽純くん、睫毛長い…吐息が触れそうなくらい近くて…
私のばか!何でこれを選んだのっ
へ、平常心!
意識したら駄目
そうだ、目を閉じたら…

って駄目だー!バランスとか方向感覚とか無くなっちゃう
折角羽純くんが一緒に参加してくれてるんだもん
絶対にゴールしたい!
集中するんだ
羽純くんを意識しないよう…
そう思ってたら羽純くんの言葉に彼を見て

不思議
あんなに乱れていた感情が落ち着いた
ドキドキするけど…それも心地良いなんて

羽純くんは凄い


アオイ・リクア(キミヒデ・カーマ)
  皆で集まって盛り上がれる宴という事で胸を踊らす。
同時に食事もミニゲームも満喫する気でいる。

食事はムール貝料理とライチの果実酒を注文。
(無ければオススメをスタッフに聞き、それを頼む)
ミニゲームでは、
カーマとお互いのオデコでゴムボールを挟みつつ運ぶ。

ミニゲーム開始前に、リハーサルと称して
カーマとゴムボール(またはそれに代わるもの)を想定したイメージトレーニングを試みる。

観客に挨拶し、開始後カーマと互いの手の指を組む。
「せーの」の合図で1歩ずつ1歩ずつ意識しながら、
合わせるように歩き、初めの1歩は左から入る。

ゲーム後、優勝商品があったら、誰にも負けないように、もっと頑張ってたのになぁとカーマに呟く。


紫月 彩夢(神崎 深珠)
  美味しい物を皆で食べるって、良いわよね
今日はお酒はパス。酔っても酔わなくてもテンション自体は変わらないし
どうせなら、素面でゲーム楽しんでみたい

というわけで深珠さん、風船割りよ、風船割り
どこで挟むのが良いのかしら。密着するなら胸辺り?
しっくり来るところを探してから、いざ挑戦
深珠さん、もっとぎゅーってしないと割れないみたい
跳ねて飛んでっても困るから、ほら、ぎゅーって

無事に割れたら、近い音にびっくり
分かってたけどびくってなるわねこれは
思い切り力入れた瞬間だったから、深珠さんも驚いてる?
ふふ、ありがと

後は、皆のゲームしてるのを楽しく眺めてる
あたし達がしなかったゲームは特に、頑張れーって応援する気持ちで


●ミサとエミリオの風船割り
 大勢のウィンクルム達で貸し切られたビストロ。
 『ミサ・フルール』はワインと料理を楽しんでいた。
「あれ未成年はお酒飲んじゃダメなんだよ?」
 ニヤニヤ笑顔を浮かべながら、からかうように彼女の頬をふにふにとつつく『エミリオ・シュトルツ』。
 エミリオの言葉は意地悪な冗談で、実際ミサは飲酒できる年齢だ。
 頬をふくらませながら反論する。
「む、私はもう子供じゃないもの、大人だもん!」
 が、勢いでワインがむせた。ミサは口を押さえ、うつむいて咳をする。
「だもんって、そういうところが子供……ふふ、可愛いな、もう」
 スッと移動してミサの隣に密着。エミリオは落ち着いた手つきで、咳きこむミサの背中をさすってくれた。
「お酒はお前のペースで楽しめばいいよ」
「こほっ、こほっ! うう……あ、ありがと」
 エミリオの余裕ある大人な態度に、ミサはドキドキしてしまう。

 食事が一段落した後は、ペアでのミニゲームだ。ミサが選んだのは風船割り。
「一緒に頑張ろうね!」
 張り切るミサにエミリオは微笑みを浮かべて頷いたけれど、心の中では少しだけ引っかかることもあった。
(ミサやけに張り切っているけれど、どうしたんだろう……。最近仕事ばかりで一緒にいる時間が少なかったから、寂しい思いをさせてしまったのかな)
 そう反省するエミリオ。仕事の他にも色々と厄介事があって、ここのところエミリオは笑顔が少なくなっていた。
(最近のエミリオ、時々思い詰めたような表情を見せる時があるの)
 ミサは胸の前で、祈りを捧げるように小さく腕を握る。
(好きな人にはいつだって笑っていてほしいもの。エミリオが笑顔になってくれるといいな)
 好きな人を思いやるミサの優しい願いは、きっとエミリオにも届くことだろう。
「よーし、いくよおおっ!?」
 ……一生懸命になるあまり、もはや突撃というレベルでエミリオにぶつかりにいくミサ。風船は吹き飛んだ。
「ミサあぶないっ……!!」
 勢い良く飛び込んできたミサの体をエミリオはしっかりとその腕で受け止める。気さくな関係で親密さも高い二人。そのままミサを抱き締めながら、エミリオが甘い声で優しく叱る。耳元でささやいた。
「ミサってば、いくら風船を割るためだからって突撃はやりすぎ。転んだら危ないよ。それに、ミサの綺麗な体に傷がつくなんて、俺が許すわけないでしょ?」
 エミリオのお説教には、ミサの怪我を心配する気持ちと強い独占欲が見え隠れしていた。
「ご、ごめんねっ」
「全く、そんなに慌てなくても俺は逃げないよ……あははっ、おかし……っ」
「エミリオが笑った……!」
 間近で見るエミリオの笑顔に、ミサの顔もパァッと明るくなる。
 風船をポンとキャッチして、もう一度やり直す。風船を挟んで二人が抱き合う姿勢になる。
「ほら今度は落ち着いて……おいで。風船、われた?」
 耳元でささやかれ、ミサの頬が赤くなった。
 風船を割るには、もっと近づく必要があるようだ。
「エミリオばかり余裕なのってずるい」
 ドキドキしながら、ミサはエミリオの腕の中へぎゅっと身を寄せる。
「……あ」
 密着したことで、ミサは気づく。ずっと余裕に見えていたエミリオの鼓動も早くなっていることに。
(嬉しいな)
 ミサとエミリオの情熱的な抱擁で、風船はパァンと割れた。

 ゲームが終わった後で、エミリオが微笑みながらミサに言う。
「最近アイツの事で気を張りすぎてこういう時間を忘れていたよ」
 アイツというのは、エミリオの父親のことだ。
「思い出させてくれてありがとう」
 とびきりの笑顔で、ミサが応える。
「私の方こそ楽しい時間をありがとう!」

●アオイとカーマのオデコボール
「楽しいね。せっかくの宴会だし、皆で集まって盛り上がろうよ!」
 色黒の肌に派手な金髪がまぶしい『アオイ・リクア』は、ヒマワリに似た笑みを浮かべている。アオイは宴会の空気にすっかり溶け込み、食事も余興も満喫する気でいっぱいである。
「ゴンちゃんも楽しんでる?」
「……一応はね。あと、その呼び方はやめてほしい」
 アオイのパートナー『キミヒデ・カーマ』は、口先ではアオイのノリに合わせているものの、内心は宴会を億劫に感じているようだ。特にミニゲームは面倒だ。
 銀色のウェーブヘアが似合う中性的な美貌は、今は少し憂い顔になっている。
 しかし、カーマはこう考え直してみる。この宴会は、アオイとウィンクルムとして息を合わせるために大切なことかもしれない、と。

 ビストロの店員が、料理と飲物の注文をとりにきた。
 アオイは元気良く手を上げてライチの果実酒を注文。果実酒の種類は豊富に取り揃えているようだ。ライチの酒も置いてあった。
 カーマが尋ねる。
「紹興酒は置いてあるかな?」
「紹興酒……ですか? 申し訳ありません、お客様。当店では取り扱っておりません」
「そう。無ければ、何かオススメを」
 店員は、琥珀色になるまで熟成したシェリー酒の風味が紹興酒と似ているという話をした。
 半信半疑だが、とりあえずカーマは店員の勧める熟成シェリー酒を頼んだ。

 しばらくすると、次々にテーブルに料理が運ばれてきた。料理と酒の量に比例して、宴会の空気も盛り上がっているようだ。
「ああ、美味しい~!」
 アオイはライチの果実酒を片手に、ムール貝の白ワイン蒸しに舌鼓を打っている。
 カーマはエスカルゴのバターソテーを口にしつつ、シェリー酒を飲む。
「へえ……」
 その味は紹興酒に近かった。原材料が違うのに、酒の風味が似ているなんて面白い。
 琥珀色のシェリー酒をカーマがしげしげと観察していると、アオイが陽気に声をかけてきた。
「ねえねえ! アオイとミニゲームのイメトレしてみない?」
 アオイとカーマが挑戦するのは、オデコでゴムボールを挟んで運ぶゲームだ。
「イメージトレーニング? そんなことして実際に効果があるのか、怪しいけどね」
 軽い毒舌トークを披露するカーマだが、アオイは特に気にしない。
「リハーサルだよ」
 アオイに言われて、カーマもイメージトレーニングに協力する。
「イメージしてみたけど、顔を近づけてボールをぎゅーっと固定しないと、すぐ落ちちゃいそう」
「このゲームでは、ボールをキープするのが攻略の鍵になりそうだ」
「うん。移動のことも考えなくちゃね」
 意見を出し合う二人。ボール運びの手順を考える。

 ミニゲームの出番がきたので、アオイはノリノリで観客に挨拶する。
「はいはーい、アオイだよ!」
 アオイとカーマはまずゴムボールを額に挟んだ。二人の顔がぐっと接近する。
 その後お互いの手の指を組む。良い工夫だ。これなら移動の時に呼吸を合わせやすい。
「せーの」
 合図と同時に動き出す。
 アオイの最初の一歩は左から。カーマはアオイの歩みに合わせるように、左足から一歩踏み出す。
 お互いの歩調を意識して、慎重にボールを運んでいく。
 イメージトレーニングが功を奏したのか、二人はボール運びを最後まで無事にやり遂げた。

「アオイ。その……宴会はどうだった?」
 カーマの方から積極的に話しかける。彼の中には、ウィンクルムとしてもっとアオイと打ち解けよう、という気持ちがあった。
「優勝商品があったら、誰にも負けないように、もっと頑張ってたのになぁ」
 アオイは屈託のない笑顔でそう打ち明けた。

●歌菜と羽純のオデコボール
 未成年の『桜倉 歌菜』は、フレッシュなオレンジジュースを飲んでいた。ケーキのシャルロット・ア・オランジュをモチーフにした、ディーヴァのトゥインクルドレスを着た歌菜は、華やかさを振りまき目立っていた。
 そんな歌菜をナイトのように守る『月成 羽純』。手にはオレンジの果実酒。

「ええと……」
 どのミニゲームに参加するのか、宴会の幹事から質問されて、歌菜は真剣に考え込んだ。
(二人羽織も風船割りも、羽純くんと密着しちゃうじゃないですか心臓がもたない……!)
 思考が表情に反映されて、百面相になっている。
 そんな歌菜のことを微笑ましい気持ちでこっそり見守る羽純。歌菜が何を考えているのか、彼にはだいたい内容がわかった。
(恋人同士、そんなに気を張る必要もないんだが……)
 でも、そこが彼女らしい。
「では、オデコでボール運びを!」
 羽純は驚いて、少しだけ目を丸くする。それは、歌菜なら選ばないだろうと予測していたゲームだった。
(……大丈夫か?)

 いざゲームをする段階になって、二人のオデコでボールを運ぶというのがどういうことか、歌菜にもわかったようだ。
「ゴムボールを額に挟むって、顔が近……!!」
 つい小声で気持ちをつぶやいてしまった。
(羽純くん、睫毛長い……吐息が触れそうなくらい近くて……。私のばか! 何でこれを選んだのっ)
 後悔しても、すでにゲームは始まっていて、今さらリタイアなんてできない。
(へ、平常心! 意識したら駄目。そうだ、目を閉じたら……って駄目だー! バランスとか方向感覚とか無くなっちゃう)
 ドギマギして歌菜の挙動が怪しくなる。
「くす……」
 案の定。歌菜がそんな風に固まることも、羽純にとっては予想通りだった。
「そんなに固くなるな。離れすぎるとボールが落ちる」
 羽純は微笑みながら、歌菜に声をかけて誘導する。
(折角羽純くんが一緒に参加してくれてるんだもん。絶対にゴールしたい!)
 気合を入れる歌菜。それでもやはり恥ずかしさから、羽純を意識しないようにしてしまう。
(集中するんだ。羽純くんを意識しないよう……)
「……恥ずかしいなら下を向いていてもいいが……」
 至近距離から聞こえてくる羽純の声。
「出来れば、俺を見て欲しい」
 その言葉にハッとして、歌菜が顔を上げる。
「顔を逸らされるのは……寂しいんだ」
 二人の視線が合った。
(不思議)
 緊張のせいで乱れていた歌菜の心が、ピタリと落ち着いた。羽純と瞳を合わせても……。いや、羽純と瞳を合わせたから、という表現の方が正しいか。
 ドキドキはしているが、それは心地良いときめきで、慌てたり混乱するようなものではない。
 歌菜の表情が和らいだのを見て、羽純もまた穏やかな笑みを浮かべる。
「もうすぐゴールだ。いこう、歌菜」
「うん、羽純くん!」
 お互い声をかけあいながら目的地に到着。テーブルの端に設置されたカゴに、ゴムボールをぽとんと落下させて、ミニゲーム完遂だ。

「ふう……!」
 ゲームを終えて、肩の力を抜いて息をつく歌菜。
「歌菜」
 呼ばれて振り返れば、羽純がハイタッチを誘うように、片手を高く上げていた。
 歌菜も大きく手を伸ばして、仲良くハイタッチ。
「やったね、羽純くん!」
 パシンッ、という明るい音が響いた。
「羽純くんは凄い」
 羽純の顔を見上げながら、歌菜がつぶやく。
「俺は歌菜が凄いと思う」
 背の高い羽純は、少しかがんで歌菜と視線を合わせた。
「歌菜と居ると笑顔になる」
 その言葉が嘘やお世辞ではないことは、羽純の表情を見れば明らかだ。

●彩夢と深珠の風船割り
「美味しい物を皆で食べるって、良いわよね」
 ビストロの料理を味わう『紫月 彩夢』。あえてアルコールはパスして、今日はウーロン茶を飲んでいる。
「酔っても酔わなくてもテンション自体は変わらないし」
 と言いつつ、『神崎 深珠』には露骨にアルコールを勧める。
「彩夢、俺にばかり酒を勧めるのはやめろ」
 酔わせようとしているのはバレバレで、深珠はちょっとだけ怒る。
「酩酊するほど弱くもないが、お前ばかり素面は狡いだろう」
 この後は余興のミニゲームがひかえていた。深珠はワインを口にする。なかなか美味しい。ビストロの料理に合う。
(……まぁ、密着度の高いゲームを、素面で出来るわけでも、ないが……)
 ウーロン茶をゴクと飲んだ彩夢は、深珠とは正反対のことを考えていた。
(どうせなら、素面でゲーム楽しんでみたい)

 料理を食べ、他の参加者のゲームを見ているうちに、彩夢達の出番がやってきた。
「というわけで深珠さん、風船割りよ、風船割り」
「風船割り……なるほど、体で割るのか……」
 彩夢と深珠の身長差は10センチ。
「あまり身長差がなくて助かったな」
「どこで挟むのが良いのかしら。密着するなら胸辺り?」
 彩夢は風船を挟める場所を探している。色々試した結果、胸の辺りで風船をホールドして挑戦することになった。
 二人で近づき、その間に風船を挟む。自然と密着して抱き合う形になった。
(……まともに触れるのは、そういえば初めてか)
 異性との密着状態。
 ウィンクルムという絆で結ばれているとはいえ、二人の親密さは発展途上。こんな風に大胆なハグができるのは、宴会独特の空気やゲームという大義名分に後押しされている面もある。
「深珠さん、もっとぎゅーってしないと割れないみたい」
 素面だというのに、彩夢はもっと抱きつくように促す。特に恥ずかしがっている様子はなくて、堂々としている。
「跳ねて飛んでっても困るから、ほら、ぎゅーって」
(彩夢は、素面でも特に緊張しないのか……?)
 確かめてみたくなった。深珠が彩夢に対して抱いている思いには、今のところ興味や関心の比重が大きい。
 彩夢の本音を確かめたくて、深珠は言われるとおりにぎゅっと腕に力を込めて、しっかりと体を寄せ合った。
 風船が割れたら、胸の鼓動が聞こえるのではないか。そう思いながら。
 ぐっと深珠が近づくと同時に、パァンと盛大な音を立てて風船が割れた。
「分かってたけどびくってなるわねこれは」
 二人の心臓は確かに強く鼓動していたが……。
「思い切り力入れた瞬間だったから、深珠さんも驚いてる?」
 その原因は、彩夢本人によって曖昧にされてしまった。あくまでも風船が割れた音にびっくりしたからだと。
「……音にびっくりしているなんて、本当に、お前は狡いな」
 彩夢のことを確かめようとしたが、相手の方が一枚上手で深珠は煙に巻かれてしまった。
「ふふ、ありがと」

 自分達の順番を終えた後、彩夢は他のペアがゲームに挑む姿を楽しく眺めていた。その眼差しは暖かく好意的なもので、相手を応援する気持ちが込められていた。
「……」
 そんな彩夢を横目で見ながら、深珠は考え込んでいる。
(……はぐらかすのが上手いのか、あれが本音なのか)
 ミニゲームを応援する彩夢は純粋に楽しそうだ。何か隠しているような素振りは、パートナーの精霊である深珠にも見透せない。
(楽しんでいるのは確かだからそれは良いが)
 深珠はワインをコクリと飲み、楽しげな様子の彩夢を見ながらため息をついた。
「……難しい奴だな、お前は」

●悠夜と弓弦の二人羽織
「ふふ、宴会楽しいね」
 普段よりも心なしか陽気になっている『日向 悠夜』の手には、果実酒があった。飲みやすいアンズ酒だ。
 『降矢 弓弦』はいつもとあまり変わらない調子で、マイペースに宴会の雰囲気を楽しんでいた。のんびりと果実酒を飲んでいる。
 司会者が余興のミニゲームについて説明すると、悠夜は目をキラキラ輝かせながら意気込んだ。
「へーゲームだって。よーし、弓弦さん! 私たちも頑張っちゃおっかー!」
 アルコールの魔力で、今日の悠夜のテンションは高めになっている。
「え? へ……?」
 弓弦は悠夜の勢いに押されて、ちょっとだけ尻込みするが。
「悠夜さんが楽しそうなら、まあ良いか」
 といって、快く了承した。

 悠夜と弓弦がチャレンジするのは二人羽織。
「二人羽織か……実際にやるのは初めてだな」
 この宴会でのルールは、二人一緒に羽織を着た状態でケーキの完食を目指す、というものだ。
「私が後ろでいくね」
「僕が前かい? うん、了解だ。頑張って情報を伝えるよ」
 この時点では弓弦は落ち着いており、そんなことを受け合う余裕があったのだが……。
 悠夜が後ろ側にまわり、羽織の袖に手を通す。前方には、羽織から顔を出した弓弦がいる。
「手の位置はこれで良いのかな? うーん、分かんないからちょっと前に詰めてみるね」
「ゆ、悠夜さん……!?」
 動揺する弓弦の声。
「その……背中に……」
 言いづらそうにして、弓弦は口をもごもごさせている。何か言っているが、小声で聞き取れない。
「あ、あまり密着するのは……」
「ふふ、弓弦さんに抱き着いているみたいだ」
 悠夜は恥ずかしさよりも嬉しさの方が大きいようだ。
 弓弦だって、悠夜の近くにいるのは嬉しいことなのだが。背中に当たる悠夜の胸やらの感触に頭がくらくらしてしまう。羞恥心で顔が真っ赤になって、思考がフリーズ。
「……」
 準備ができても一向に動かない弓弦のことを不思議に思い、悠夜が声をかける。
「弓弦さん、大丈夫……?」
「えっああ……」
 うろたえながら、この状況から脱するべく、悠夜の誘導を試みる。
「……先ずはフォークを……」
 本来は話術に優れた弓弦だが、今は羞恥心のせいで正常な心理状態ではない。
 弓弦は的確な指示ができずに、悠夜の手は見当はずれな場所に向かう。ケーキのクリームがぺとっと弓弦の頬についた。
「あっ……そ、そこは違うよ悠夜さん……」
「……って、あっ間違えちゃった?」
 確かに指示通りに手を動かしたのにおかしいな、と訝しみつつも、悠夜は二人羽織を続ける。
 完食までこぎつけて、ゲームは無事に終了。

 なんとか二人羽織状態でケーキ食べきってホッとしている弓弦。
 悠夜が彼の肩をポンと軽く叩いた。
「弓弦さん、間違えちゃったけれど大丈夫だった?」
 そう言って悠夜は、弓弦の頬についていたクリームを指でスッと拭う。それから、ごく自然にぱくりと自分の口へ。
「わっ……、悠夜さん!」
 これは、弓弦にとってクリティカルな追い打ちだった。耳までボッと朱色に染まる。
「ご飯も美味しかったけど、ケーキも美味しかったみたいだね」
 悠夜は平然としているけれど、弓弦の方は本当に真っ赤になってしどろもどろになっている。
「こんな美味しいケーキが食べられるんなら、私が前でもよかったなぁ……って大丈夫!?」
 カーッと激しく赤面している弓弦に気づいて、悠夜は驚き心配する。
「お、お酒の飲み過ぎかな……あ、あはは……」
 そう言ってごまかす弓弦だが、実は宴会中に果実酒一杯しか飲んでいない。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 山内ヤト
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月24日
出発日 12月29日 00:00
予定納品日 01月08日

参加者

会議室

  • [12]日向 悠夜

    2015/12/28-23:55 

  • [11]ミサ・フルール

    2015/12/28-01:01 

  • [10]桜倉 歌菜

    2015/12/28-00:52 

    ご挨拶が遅くなりました!
    桜倉歌菜と申します。パートナーは羽純くんです。
    皆様、宜しくお願い申し上げます!

    悩んだのですが、私達もオデコでボール運びをしようかって思います。
    だってそれが一番、くっ付かなくてもいいかな…って…
    (羽純くんとくっ付くなんて、心臓が破裂しそうです…!)

    が、頑張ります!
    楽しみましょうねっ♪

  • [9]紫月 彩夢

    2015/12/28-00:48 

    なんかどこかで宴会芸ってインプットされちゃってたから、一旦削除で仕切りなおしさせてもらったわ。
    ミニゲームね、ミニゲーム。宴会ゲーム。うん、良し。

    えっと…あたし達は…風船割り頑張ってみようかしら。
    二人羽織と迷ったけど、たまには深珠さんにもぐいぐい来てもらいたいし。
    ゲームに失敗しても、盛り上がるといいな。

  • [7]アオイ・リクア

    2015/12/28-00:04 

    こんばんはー、アオイっていいまーす。
    よろしくお願いしますねー。

    アオイ達は、オデコでボール運びです。
    ゴムボールの大きさにもよりますけどー、
    ちゃーんと運べたらなーって思いまーす。

    当日、楽しい宴会になるといいですね!

  • [6]日向 悠夜

    2015/12/27-21:04 

    こんにちは、日向 悠夜です!
    パートナーは降矢 弓弦さん。よろしくね。

    私たちは『二人羽織』に挑戦しようと思っているよ。
    弓弦さんが前で、私が後ろという形になるかな。
    ふふ、宴会は楽しくなくっちゃね。頑張るぞー!

  • [5]ミサ・フルール

    2015/12/27-17:45 

    私達は『風船割り』にチャレンジしようかなと思っているよ。
    ちょっと恥ずかしいけれど、せっかくの宴会だもの頑張るっ

  • [4]紫月 彩夢

    2015/12/27-10:24 

    紫月彩夢と、深珠おにーさん。
    宴会のノリと勢いで、堅物の深珠おにーさんのテンションを上げてみようと思う。
    あたしのテンションはいつもどおりだと思うけど。

    楽しい時間を過ごせたら、いいわね。
    ちなみにどんなゲームをやる予定、とか…差し支えなければ聞いてみたいんだけど、どうかしら。

  • [3]ミサ・フルール

    2015/12/27-01:04 

    こんにちは、ミサです!
    エミリオと楽しい時間を過ごせるといいなぁ(ふにゃりと笑う)

  • [2]ミサ・フルール

    2015/12/27-01:01 

  • [1]桜倉 歌菜

    2015/12/27-00:18 


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