【枯木】巨大ケーキを探検します(瀬田一稀 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

『黒き宿木の種』のひとつが埋もれる先は、ショコランド。
 でもまだその存在に、気付く者はない。


「わあああ、おっきい!」
 あなたは目の前にある巨大クリスマスケーキに、感嘆の声を上げた。
 ショコランドの洋菓子店有志によるこのケーキは、たった今完成したばかり。
 人間が住む普通の二階建て一軒家ほどの大きさもある。
「すごいでしょう、これは本当に、最高の出来だと思います!」
 有志代表の女小人が、腰に手を当て、胸を張る。
 吹き出しをつけるならば「えっへん、褒めて褒めて!」と言ったところだろう。
「ちなみにこれ、まあ全体的にスポンジですけど、ここ見てください」
 小人はそう言って、その場所を指さした。何の変哲もないクリームの壁、に見えたのだが。
「みんな、やっちゃって!」
 わらわらと若い男小人たちが集まり、スポンジの壁に大きく長い、尖った棒を突きさす。
 そんなことをしたらケーキが壊れるのでは、とはらはら見守るあなた達。
 しかし。
「うわあ……」
 男たちがゆっくりと棒を引いたそこは、ケーキの中に通じるトンネルになっていたのだ。
「ケーキを中から食べられたら、素敵でしょう? ちなみにこれ、崩れないように補強されているから、中に埋もれちゃうことはないんです」

 つまりこれは、トンネルの中に入って行って、好き放題食べていいと、そういうことらしい。

「このケーキ、二段重ねですけど、中の大黒柱的なところに階段があるので登って行くことができます」
「段によって、なにか違うんですか?」
 あなたが問うと、女性は悪戯っぽい笑みを見せた。
「ええ……実は、上は大人向けになっているんですよ」
「大人向けって……?」
「一段目は、普通のスポンジケーキです。二段目は洋酒が混ざっています」

 ということは、きっとかなりお酒の香りが強いのだろう。
 なるほど、と合点がいく。

「あ、中にショコランドの動物たちがいるかもしれませんが、出会ったら遊んであげてくださいね」

解説

巨大ケーキの中で、ケーキを食べつつウィンクルムでイチャイチャしつつ、アニマルとも遊んじゃおうという(そこそこ)盛りだくさんな内容です。
ケーキ製作費の補助として、各ウィンクルム300Jrいただきます。

【アニマルの説明】
GMアニマルは『ゆめハム』ちゃんか、『オトーフ』さんがいます。
あなた達は、どちらか一匹と遊ぶことができます。

●ゆめハムちゃん
チョコレートと金平糖でできたハムスターです。
いつも楽しそうで、ごろごろ転がって遊んでいます。
触ると良い夢を見られるという噂があるみたいですが、どうでしょう?

●オトーフさん
牛乳寒天の変態アニマルです(説明にそう書いてあるんだ)
ブリッジでしゃかしゃか動き回ります。
パンツとおっぱいが大好きです。

【ケーキの段の説明】
ケーキは二段に別れています。

●一段目(下)
スポンジにクリーム、フルーツが入ったケーキ。
フルーツは(適当に)丸ごと一個とか入っています。

●二段目(上)
一段目と同じですが、更に洋酒が入っています。
お酒に弱い人はくらくらしちゃうかも。
(実年齢二十歳未満のPCは遊びに行けません。
設定やプランに実年齢の記載がない場合は、外見年齢で判断します)

【コースの選択】
上記を組み合わせてコースを選択してください。
プランの頭に、数字を書いてくだされば大丈夫です。


1、ケーキ一段目+ゆめハムちゃん
2、ケーキ一段目+オトーフさん
3、ケーキ二段目+ゆめハムちゃん
4、ケーキ二段目+オトーフさん

危なそうな種があることは、ウィンクルムは知りません。
ノータッチでオッケーです。


ゲームマスターより

こんにちは、瀬田です。
なんか危なそうな種については、気にしないで大丈夫。
ショコランドのケーキの中で、めいっぱい遊んでくださいね。
あ、アニマルにはアニマルキャラにのっとったアドリブを入れます。

なお、こちらは基本的にはウィンクルムごとの描写になります。
ケーキの中で遭遇したいという方たちは、ご相談の上、両者ともにプランに記載ください。
片方の方のプランにしか記入がなかった場合、迷子になって会えない可能性があります。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

篠宮潤(ヒュリアス)

  【3】
ケーキ食べれるだけじゃなく、登ったりなんて楽しい事
出来るのは嬉しい…けど。め、珍しいお誘い…


「え!?ゆめハム…ちゃ、んっ?」
ケーキトンネルの中、噂に聞いたアニマルに出会って瞳輝き
楽しそうに転がるのをつい追いかけたり
洋酒、のとこ連れてったら…お酒の匂いに酔っちゃう…かなぁ…?(一緒したい

「食べ過ぎない、よ…?」目泳ぐ
ゆめハムちゃんついて来てくれてれば遊びながらもぐもぐ
スポンジと生クリームでハムスターの形作ってみたり
似て、る?

「僕が抱っこしてる、から、大丈夫だよ。ねっ」
精霊にゆめハムちゃん触ってもらいたい
良い夢見て、明日会ったら笑顔だといい…な
ただ僕が…ヒューリの笑った顔もっと見たいんだ…


エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)
 

心情
巨大ケーキとは、さすがショコランドですね。

行動
一度に満腹にならないよう、少量ずつよく味わって食べます。
ラダさんはハイペースで食べ過ぎです。
って、少し目を離した隙に、なんか変わった生き物と遊んでいるじゃありませんか。

もう! 私を除け者にしないでください。
私だって本当は(おっぱいが)好きなんですから。

洋酒の香りのせいで、二人共も思考が酔っぱらいに。

悲しげな顔で自分の平坦な胸に手を当てながら。
人は自分にないものに強く憧れるのでしょうね。
でも、私のような(ペチャパイの)女が(おっぱいを)愛する資格なんて……。

ほろ酔いテンションで、簡単なダンスを踊る。
オトーフさんも一緒に踊ってくれると嬉しいです。


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  ☆1
ケーキの中で思う存分ケーキが食べられるなんて素敵!
そして、何より甘党の羽純くんが嬉しそうなのが、更に嬉しい!
私が未成年で洋酒ゾーンに行けないのが羽純くんに申し訳ないな…よーし、その分、羽純くんが美味しくケーキを食べられるように全力でサポートしよう!
色んな味を少しずつ食べられるように、あちこち突いて確認し、羽純くんに切り分けて手渡そう
フルーツは丸ごと一個!贅沢!憧れの丸かじりが出来るね
でも、お腹いっぱいになっちゃいそうだから、これも切り分けて…
あ、ゆめハムちゃんだ♪可愛いっ
触ると良い夢が見られるって本当かな?少しだけ触ってもいい?
頭を撫でてみよう
願う夢は、羽純くんと今日みたいに楽しく過ごす夢


シャルティ(グルナ・カリエンテ)
 
3 外見、実年齢共に20歳

…随分、立派、というかよく出来てるわね
食べ過ぎるんじゃないわよ、酔ったってしらないから
うるさい。太るって言ってるようなものでしょそれ(ムカ

ケーキを内側から食べるなんて最高に決まってるでしょバカ
 ……あんたさ、もしかしてお酒、地味に弱かったり、する?
…それを弱いっていうのよ

……ハムころ…? なにそれ。……あ…可愛い…
……あんたさ。…食べようなんて思うんじゃないわよ…? 生きてるのに

…ゆめハムちゃん……触ると良い夢見れるらしいわね
ねえ、あんた触ってみなさいよ
理由なんてないわ。触ってみなさい?


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
 

酒:やや弱い

わ、本当にケーキの中に入れるんだ…小人さん凄い…

どこから食べよう…

え、ガルヴァンさん上に行くの?

大人…
先程子供のようにはしゃぎかけた自分を恥じる

う、た、嗜む程度には飲めるよっ…一応

二段目

お酒の匂い…
でも美味しそう

早速お酒の染みたケーキとフルーツを食べる


わぁ?!
いきなり胸に飛び込んで来た物体に驚く

へぇ…初めて見た
人懐こい生物と認識

抱えたままケーキを食べる

段々と気分上昇状態に


座り込んで戯れる

頬にぴとっ

あーひんやりしてきもち~
すりすり

あははおとーふさんくすぐったいよ~
されるがまま


あっ

ん、へーき
おとーふさんまたね~


~♪

ん~それもあるけど~…

私、ガルヴァンさんと一緒にいるだけでたのしーの


●アラノアとガルヴァンさんとオトーフさん

 スポンジのトンネルに一歩立ち入ると、途端に甘い香りに包まれた。
「わ、本当にケーキの中に入れるんだ……小人さん凄い」
 アラノアはほうっと息を吐いた。周囲はまさにケーキだらけ、クリームだらけ。
「どこから食べよう……」
 あっちは林檎、こっちはバナナと考えていると、後ろからガルヴァン・ヴァールンガルドの声がする。
「これは……手で食べるのか?」
 いかにも『らしい』台詞が聞こえ、アラノアはスポンジに伸ばしかけていた手を引っ込めた。
 そんなこと考えてもいなかったのだ。
 ガルヴァンは入口の小人と話していたようだったが、そのうちアラノアの後ろに立った。
 曰く。
「どうぞ手づかみで、心ゆくまで堪能してください、だそうだ」
 それはガルヴァンさんには抵抗がありそうだな、と考えているアラノアを、ガルヴァンは追い越そうとする。
 スポンジの通路は狭いので、アラノアは彼のためにと道をあけた。
 背中にクリームがつかないよう、ガルヴァンを遮らないようと意識したせいで、身体に力が入る。
「おい、行くぞ」
「え、上?」
「ああせっかくだ。大人向けの場が用意されている方に行こうと思う」
「大人……」
 アラノアが呟く。先ほど子供のようにはしゃぎかけていた自分が、ちょっとだけ恥ずかしい。
 それを困惑ととったのか、ガルヴァンが問う。
「アラノアは酒はダメか?」
「う、た、嗜む程度には飲めるよっ……一応」
「一応か」
 納得したのか、しないのか。二人は、二段目へと上がって行った。

 さすが洋酒入りと言うだけはある。
「結構酒の匂いが充満しているな」
 ガルヴァンはそう言って、少し先へと歩いて行った。
 アラノアは目の前の壁、苺の入っているところに目を向ける。
 ガルヴァンも言った通りお酒の匂いはかなりするけれど、やっぱり美味しそうである。
 スポンジの中に半分埋まっている苺をつまみ、口に入れる。
 見ればガルヴァンも、壁のスポンジに指を入れていた。なんかちょっとだけかわいい、かも。
 ふふ、と笑って視線を戻そうとしたアラノア。と、その時。
「とふっふー!」
「わあっ!」
 アラノアは思い切り声を上げた。
 なにせ自分の胸には、白くてなめらかな物体――オトーフがくっついたのだ。
「っどうし……!」
 ガルヴァンはこちらを見、絶句している。
「とふ、とふ」
 アラノアの胸にほっぺをすりつける、笑顔のオトーフ。
「これが中にいるという動物? か……。オトーフというらしいな」
「へえ……始めて見た」
 アラノアは上機嫌でオトーフを抱えたまま。ケーキに手を伸ばしては口に入れている。
 そのうちに座りこんで、オトーフぼでぃをぷにぷにし出す始末。
 だいぶ酔っているようだが……大丈夫か?
 気になりつつも、ガルヴァンは尋ねない。アラノアが楽しそうだからである。
 しかしあのオトーフという生き物……調子に乗り過ぎじゃないか?
 いつの間にやらアラノアの、頬に押し付けられている。
「あはは、おとーふさんくすぐったいよー。すりすりしないでぇ。でも冷たくて気持ちいね」
 アラノア、貴様相当酔っているだろう。冷たくて? それは酒が回っている証拠だ。
 ちらちら見ていれば、オトーフが器用に足? を伸ばして、アラノアの胸を軽くふみふみ……。
「……もう十分だろう」
 ガルヴァンはオトーフをわしづかみにした。それをポイと、スポンジの上に放る。
「そろそろ帰るぞ。歩けるか」
 アラノアに手を差し出そうとすれば「へーき」と舌ったらずな声が返ってきた。
「まったく、随分とご機嫌だな。そんなにアレと戯れるのが楽しかったのか……?」
「んー、それもあるけど~……私、ガルヴァンさんと一緒にいるだけでたのしーの」
 アラノアがへにょりと見せた、満面の笑み。ガルヴァンは思わず目を見開く。
「……そう、か」
 一緒にいても、楽しくないと言われたことならあるが、これは……。
 しゃかしゃかと去って行くオトーフ。アレにも感謝をせねばならないかもな。
 当然、口にはしないけれども。

●お前とあんたとゆめハムちゃん

「……随分、立派、というかよく出来てるわね」
「ほんとだな。よく作れんな、こういうの」
 シャルティと、グルナ・カリエンテは、スポンジの壁をまじまじと見つめていた。
 美味そう、と呟いたグルナを、シャルティが振り仰ぐ。
「食べ過ぎるんじゃないわよ。酔ったって知らないから」
 周囲に満ちる洋酒の香りに思わず漏れた言葉だが、グルナは意外にも、素直に頷く……と思いきや。
「分かってる。けど、お前も食べ過ぎねぇようにしねぇとなあ?」
 にやりと口角が上がる。
「うるさい。太るって言ってるようなものでしょそれ」
 まったくグルナはデリカシーがない。
 そんな相手をこれ以上構っても無駄と、シャルティは意識をケーキに向けた。
 あちこちに見えているフルーツに、クリームたくさんのスポンジ。見ているだけでうきうきしてしまう。
 たいして、グルナは冷静だ。
「にしても、内側からってどうなんだよ」
 これじゃごつごつした切り口が見えるだけじゃねぇか、と周囲を見まわし、ついでにシャルティを見れば。
 なんと、彼女の目はきらきらと輝いていた。
 よっぽど好きなんだな、甘いもん。
 そう納得していると、視線を感じたらしいシャルティがこちらを向く。
「なによ、最高に決まってるでしょバカ」
「バカって言うんじゃねぇっての!」
 言われっぱなしは悔しくて、本当はさらに何か言ってやりたかったけれど、グルナはそれができなかった。
 ここは、酒の香りが強すぎるのだ。
 顔をしかめたグルナに、シャルティがもしやと問う。
「……あんたさ、もしかしてお酒、地味に弱かったり、する?」
「う……」
 隠せるとは思わなかった。けれど。
 グルナはスポンジを叩いて、あえて、大きな声を出した。
「弱いんじゃねえ。酒とかあんま得意じゃねえから、慣れてねえだけだ!」
「それを弱いって言うのよ」
「あー、もう良い。……お前は食ってろよ」
「言われなくても」
 シャルティは再びケーキに向かった。叫べるならば問題なしと判断されたのかもしれない。
 グルナは大人しく、スポンジの地面に腰を下ろす、と。その脇から。
「きゅあー」
 小さな鳴き声とともに、ゆめハムが飛び出してきたではないか。
「はっ? なんだこのハムころ」
「きゅ、きゅ」
 ゆめハムは、ケーキに顔を突っ込んではむぐむぐ食べるので、体はクリームまみれである。
「ハムころ、美味しそうな顔してるな」
 そのグルナの声は、シャルティの興味を引いたようだ。
「ハムころ? なにそれ」
 シャルティが振り返る。と、ゆめハムが、彼女を見つめ――。
「あ、可愛い……」
 シャルティの顔がほころぶ。
 が、それは一瞬のこと。彼女はすぐにグルナを見、いつものように口を開いた。
「……あんたさ。食べようなんて思うんじゃないわよ……? 生きてるのに」
「は? 食わねぇよ。いくら俺でも、食わねぇって」
「どうだか」
 短く言って、シャルティはグルナの――もとい、ゆめハムの傍までやってくる。
「……ゆめハムちゃん……触ると良い夢見れるらしいわね」
「きゅう?」
 こてり。ゆめハムは丸い体でスポンジの上に寝転がった。
 触っていいよ、ということだろうか。
 シャルティが、座ったままのグリナを見下ろす。
「ねえ、あんた触ってみなさいよ」
「は? いや触らない。つかなんで触らねえといけねぇんだよ」
「理由なんてないわ。触ってみなさい?」
 紫の瞳が、先ほどとは違う強い光を放っている。
「……はいはい」
 これは逆らっても無駄だと、グリナは諦めてゆめハムの腹に手を伸ばした。

 その後ゆめハムは、なぜかグリナに金平糖をひとつくれた。
 ……ので、グリナは、それをシャルティに渡した。
「あんたが貰ったんだから、あんたが食べなさいよ」
「俺はお前ほど、甘いものが好きじゃねぇから」
「……そ。なら貰ってあげるわ。ゆめハムちゃん、ありがとう」
 シャルティの言葉に、ゆめハムが「きゅいっ」と鳴く。
 しかし、二人はこのまま終わらない。
「……ってかこんだけ甘いもの食べて、まだ食えるってすごいよな」
「なによ、太るって言いたいの」
 争い勃発、である。

●エリーとラダさんとオトーフさん

「巨大ケーキとは、さすがショコランドですね」
「ヒャッハー! ケーキ食べ放題だぁ!」
 エリー・アッシェンとラダ・ブッチャーは、感嘆の声と感動の叫びを、同時に上げた。
 スポンジとクリームとフルーツの通路を通り、二人が目指したのは、洋酒の香り満ちる二階。
 大人でよかった! と思える空間である。
「ウヒャァ……。こんなにたくさんあるなら、遠慮することないよねぇ! たくさん食べちゃおっと!」
 ラダは大きな手を迷うことなく、スポンジに押し込んだ。
 ぎゅっと握って掴んだケーキに、思い切りかぶりつく。
 甘いクリームと酸味のあるフルーツ、そして洋酒の見事なハーモニー。
「美味しいっ!」
「もう、ラダさんはハイペースで食べすぎですよ」
 エリーは苦笑した。彼の満面の笑みは愛らしいが、一気に食べて、満腹になってしまってはつまらない。
「私は少しずつ味わって食べましょう」
 細い指で、一口ぶんづつスポンジをつまむ。
「ほんと美味しいですね。先ほどは蜜柑を食べましたから、今度はブルーベリーを……」
 と、視線を動かしてすぐ。
「とーふっ! とふー!」
「えっ?」
 いきなり聞こえた耳慣れない鳴き声に、エリーは思わず振り返った。
「あれ、この子がオトーフかな?」
 見れば両手にスポンジを掴んだラダの足元に、白くて平べったい生物がいる。
 ラダはオトーフを踏みつけないようにと少しばかり移動して、その場にしゃがみ込んだ。
 そして尋ねるのは。
「ねえねえ! 健康的な爆裂ロケットおっぱいと、繊細かつ包容力を感じさせるマシュマロおっぱい、どっちが好み?」
「とふっふー!!」
 オトーフの体がふわふわと波打つ。
 それは一瞬は、健康的な爆裂ロケットおっぱいを模した。
 だが、次の瞬間には、繊細かつ包容力を感じさせるマシュマロおっぱいの形となっている。つまり。
「おっぱいは、おっぱいというだけで素晴らしいと言うんだね……」
「とふ!」
 オトーフの手? を握るラダ。
 深く頷くオトーフ。
 ラダとオトーフの、心が通じた瞬間である。
 そこに、エリーがやってくる。
「もう! 私を除け者にしないでください!」
 長い髪を揺らして走り寄ったエリーは、ラダの隣に座り、彼を見つめた。
「私だって本当は、好きなんですから……」
「エリー……。うん、ボクも大好きだ」
 重なり合う二人の熱い視線。しかしエリーはすぐに「でも」と、ラダから目を逸らした。
 自分の豊満とは言えない……もっと平たく言うと平坦な胸に両手を当てて、哀しみの息に言葉をのせる。
「人は、自分にないものに強く憧れるのでしょうね。私のような女が、愛する資格なんて……」
「愛する資格?」
 ラダは持ったままのケーキを足元のスポンジの上に置くと、エリーの手をそっと両手で握った。
「好きな気持ちの前では、そんなの関係ないよ」
 いつもよりも落ち着いて低い、ラダの声。
 それはエリーの鼓膜を、胸を震わせた。
「ラダさん……」
「ほら、踊ろうよエリー」
 ラダは、エリーの手を取ったまま、立ち上がる。
「とーふ、とーふ、とふっふー!」
 オトーフの歌に合わせて、ゆらゆらと身体を動かすエリーとラダ、withオトーフ。
「とふとふとふー!」
 しかしオトーフにはわかっている。
 いつからか酔っていた、エリーとラダ。
 彼らの台詞には『おっぱい』という言葉がひたすら省略されていたということが。
 エリーが愛しているのも、ラダが愛しているのもひたすらにおっぱい。
 オトーフが欲してやまない、おっぱいなのだ。
 エリーと、ラダと、オトーフ。
 彼らが踏んでいるステップは、緩やかな二つの円、すなわちおっぱいを表していた。
「エリー、(おっぱいって)最高だね……」

 翌日。この二人にはこの記憶が残るのか。
 それはオトーフも知らない。

●歌菜と羽純くんとゆめハムちゃん

 ふわっふわのスポンジに、真っ白なクリーム。
 あとはたくさんのフルーツ!
 月成 羽純は甘い空気を胸いっぱいに(しかしばれないように地味に)吸い込んだ。
 ケーキの中からケーキを食べる。
 甘党にとって、こんな幸せな空間はあるだろうか。いや、無い!
 羽純の口角は、さっきから上がりっぱなしだ。
 しかし傍らには桜倉 歌菜がいる。
 羽純は口元を手で押さえた。
 どうしても、歌菜の前では子供っぽい姿は見せられない。
 ……我ながら、格好付けてると思う……が、仕方無い。そう思うんだから。
 だが、羽純が隠そうとしている気持ちに、歌菜は気付いている。
「ケーキの中で思う存分ケーキが食べられるなんて素敵!」
 そう言いながら、羽純くんが嬉しそうなのが、更に嬉しい! なんて思っているのだ。
 羽純くんが美味しくケーキを食べられるように、全力でサポートしよう!
 歌菜は彼に見えないところで、ぐっと両手を握った。
 その理由としては、未成年の自分がいるから、羽純が洋酒ゾーンに行けないという申し訳なさもある。

「はい、羽純くん、次はここ!」
 歌菜は両手で持ったケーキを、羽純に差し出した。
「ありがとう。……今度はぶどうか」
 さっきは苺、その前はバナナだったから、歌菜が中身の違う場所を探して選んでくれていることは確実だ。
 歌菜自身は給仕するばかりで、ほとんど食べていない。
 きっと歌菜は、自分の年齢のせいで上に行けないことを気にしているのだろう。
 ……俺はここで十分楽しいのに。どうしたらそれが、歌菜に伝わるだろうか。
 甘いケーキを噛みながら、羽純は次なる場所を探している歌菜をじっと見ている。
 歌菜は羽純の視線に気付かないようで、「今度は林檎かあ」と呟いた。
「フルーツ丸ごと一個って贅沢だけど……いろいろ食べたいと思うと、お腹いっぱいになっちゃう……」
 その言葉に、羽純はひらめく。
「歌菜」
「なあに」
 呼べば歌菜は、林檎の入ったケーキを持ったまま、近づいてきた。
 その手の中にある物を、羽純は指す。
「それはさすがに大きいから、一緒に食べないか?」
「一緒に?」
「そう、こうして……」
 言うなり羽純は、歌菜の手首を掴んだ。そしてそのまま、彼女が持つケーキにかぶりつく。
 しゃり、と噛んだのは、大きな林檎。
「ん、美味い。ほら歌菜も」
「え、でもこれだと……」
「いいから」
 ちらりと羽純を見るものの、彼は深く頷くだけ。
 歌菜は思い切って、羽純が食べた隣の場所に噛みついた。途端、口に甘酸っぱい味が広がる。
「美味しい!」
 満面の笑顔を見せれば、羽純もまた嬉しそうに笑っている。
 その時、だ。
「きゅきゅ?」
 声につられて視線を下ろすと、どこからか現れたゆめハムが、足元を歩いていた。
「あ、ゆめハムちゃんだ♪ ねえ、触ると良い夢が見られるって本当かな、羽純くん」
「触ってみるといい。俺もあとで、撫でてみよう」
 ケーキの残りを受け取り、しゃりしゃりと食べる羽純の横で、歌菜は小さなゆめハムに手を伸ばす。
 その頭の上に指をのせると、ゆめハムは「きゅーい!」とより一層高い声を上げた。
 羽純くんと、今日みたく楽しく過ごしたいな……。
 そう思いながら、歌菜は何度もゆめハムの頭を撫でる。
 そのうちに、ケーキを食べ終えた羽純が隣にしゃがみ込んだ。
「俺も撫でてもいいか、歌菜。……ゆめハムも、いいか?」
「きゅきゅい」
 頷いたゆめハムは、羽純の足元へと寄ってくる。その背中に優しく触れながら、羽純が願うこと。
 それは今日みたいに歌菜と二人、穏やかに過ごすことだ。
「二人とも、夢がかなうといいね、羽純くん!」
「ああ、そう……歌菜」
 返事をしかけた羽純が当然名前を呼んだので、歌菜は首をかしげた。
「どうしたの?」
「クリーム、ついてるぞ」
 羽純の指が、歌菜の唇の端を拭う。
「えっ? さっき食べた時かな。羽純くんは上手に食べてるのに~」
 すこしばかり悔しそうで、恥ずかしそうな歌菜。
 羽純はそんな彼女に、笑みをこぼした。

●ウルとヒューリとゆめハムちゃん

 ヒュリアスが篠宮潤を誘ったのは、最近彼女が張り切りすぎていると感じたからだ。
 感情を教えてくれようとするのは嬉しいが、それで気疲れを起こしてしまったら、困る。
 甘いケーキや中にいるという小動物は、きっとウルを癒してくれるだろう。
 そしてそんなヒュリアスの期待通り、潤は巨大ケーキを前に、たいそう感動したようだった。
「す、すごい……」
 ケーキを見た時も、中に立ち入った時も、潤は同じ言葉を口にした。
 せっかくのケーキなのに手を出さず、ひたすら「すごい」と繰り返している。
 壁に埋もれるフルーツ、クリーム。そして、そこからひょいと顔を出した小動物。
「え!? ゆめハム……ちゃ、んっ?」
 潤は瞳を輝かせた。
「きゅ?」
 ゆめハムは、潤の正面の壁の内部から現れた。きっとどこかから延々トンネルを掘っていたのだろう。
「きゅいっ!」
 潤が手を伸ばすと、その上をたたた、と走ってくる。
 手首から肘を越え、二の腕で立ち止まり、再び「きゅい!」と鳴いた。
 その体はクリームまみれ。
「……これが、ハムスターという動物なのかね」
 ヒュリアスは潤の隣から、珍しそうにゆめハムを眺めている。
 姿かたちはなんとなく知っていたが、本物を見るのは初めてなのだ。
「そうか、ハムスターはチョコと金平糖でできているのだな」
 思わず見たままを呟けば、潤が「えっ、違う、よ」と、ヒュリアスを振り返った。
「この子は、ショコランド、の……特別、だから」
 言いながら、ゆめハムの毛並みを撫ぜる。
「洋酒、のとこ連れてったら……お酒の匂いに酔っちゃう……かなあ……?」
 酔っちゃっても、かわいそう、だし……でも、一緒に行きたい……。
 悩む潤。それに答えをくれたのは、なんとゆめハム本人だった。
「きゅきゅっ!」
 言葉が通じたのか。ゆめハムは潤の腕の上に座ると、小さな前足で、自分の胸をぽんっと叩いたのだ。

 結局、潤とヒュリアスは、ゆめハムとともに洋酒ゾーンを訪れた。
 ゆめハムはスポンジの上を、楽しそうにころころと転がっている。
「ゆめ、ハムちゃん……速い」
 潤はそれを追いかけたり、ケーキを食べたりした。
 スポンジを適当な大きさにしてクリームを塗り、あるものの形にしてみる。
「似て、る?」
「……ハムスター……か?」
 目の前にいる生物と潤の楽し気な様子から、判断したヒュリアスである。
 そのヒュリアスは、ゆめハムが同行者となってから、あまり潤には近付いていない。
「美味しく食べるのはいいが、食いすぎて酔わんようにな」
 と言いながら、遠くから潤を見ている。
 この前のはしらせピヨの時もそうだったが、こんな小動物は、うっかり踏みつぶしてしまわないかと心配なのだ。
 目を泳がせながら「食べ過ぎない、よ……?」と言っていた潤。
 彼女はそのうちに、ゆめハムを抱いて、ヒュリアスのもとへと近づいてきた。
「ヒューリも、触る?」
「いや、俺は」
「僕が抱っこしてる、から、大丈夫だよ。ねっ」
 がじがじと金平糖をかじっているゆめハムを両てのひらで包み、潤が笑顔を見せる。
 この子に触って、良い夢を見て、明日会う時には笑顔だと嬉しい。
 そう思った後、すぐに、違う、と思った。
 ……違う。ただ僕が……ヒューリの笑った顔もっと見たいんだ……。
 潤は無理には勧めない。だが、その場を動きもしない。
 人が嫌がることをする潤ではないから、きっと意図があるのだ。
 そう考えたヒュリアスは恐る恐る腕を伸ばした。人差し指の先で、ゆめハムの頭にちょこんと触れる。
「きゅっ?」
 顔を上げたゆめハムに驚いて、思わず一歩後退るも。
「……触ってくれて、ありがとう。ヒューリ」
 潤はそう言って、微笑んだのだった。




依頼結果:大成功
MVP
名前:アラノア
呼び名:アラノア
  名前:ガルヴァン・ヴァールンガルド
呼び名:ガルヴァンさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 瀬田一稀
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月21日
出発日 11月28日 00:00
予定納品日 12月08日

参加者

会議室

  • [13]桜倉 歌菜

    2015/11/27-23:54 

  • [12]桜倉 歌菜

    2015/11/27-23:53 

    エリーさんとラダさんが、オトーフさんとどんなお話をされるのか、楽しみすぎます…!(わくわく

    楽しいひとときになるといいですねっ♪

  • [11]桜倉 歌菜

    2015/11/27-23:52 

  • [10]エリー・アッシェン

    2015/11/27-17:36 

    うっふっふー、プランができましたー!

    しかし見返してみるとまあひどい……。
    全年齢で大丈夫な内容だと思いますが、かなりお笑い方面に突っ走ったプランになってしまいました。
    このエピはウィンクルムごとの個別描写なので、私たちのギャグで皆さんに迷惑をかけることはないと思いますが、ロマンスジャンルの雰囲気をブレイクしてしまったらごめんなさい;

  • [9]シャルティ

    2015/11/25-18:38 

    あ……(気づいた
    こ、こっちこそごめんなさい、篠宮さんは初雪で会ってたのよね…

    本当にごめんなさい(ぺこり

  • [8]篠宮潤

    2015/11/25-09:51 

    (机の上にべしゃり、と土下座のいきおいでお辞儀)

    シャ、シャルティさ、ん……初雪…で、お顔合わせてた、ね……っ;
    ごごごごめんなさいだ……!(ヒソヒソッ)

  • [7]篠宮潤

    2015/11/24-21:55 

  • [6]篠宮潤

    2015/11/24-21:55 

    篠宮潤(しのみや うる)、と、パートナーはヒュリアス、だよ。
    シャルティさん、アラノアさ、ん、初めまして、だ。

    …ヒューリ、が、文句言わず一緒してくれる、のは嬉しい…んだけ、ど、
    ………あ、れ…?甘い、もの、食べれる、んだっけ…?(しまったそれくらいも知らない;、という顔)
    せ、せめて、洋酒が入ってる、二段目に行ってあげよう、かなって、思ってる、よ。
    オトーフさ、ん、戦いに巻き込まれてる時、ばっかりで、会ってるから、ゆっくり遊んでみたい気も……
    (&ラダさんが、一体オトーフさんとどんな話するか若干気になってもいる←)、
    でも……ゆめハムちゃ、ん、見てみたい、かも。ハムスター、かわいい、よね…☆

  • [5]エリー・アッシェン

    2015/11/24-20:36 

    エリー・アッシェンと精霊のラダさんです。よろしくお願いします!

    お酒を飲んでも平気な年齢なので、二段目へいく予定です。
    それと……スタイルの良い美女が好きなラダさんが、オトーフさんと熱く談義したいことがあるとかないとか。
    うふぅ……。周りの方の迷惑にならないよう、私が目を光らせておきます。

  • [4]シャルティ

    2015/11/24-19:45 

    シャルティとグルナ。どうぞよろしく。
    あ…。アラノアさんと篠宮さんは初めまして、ね。

    …私たちは二段目にいると思うわ。
    グルナも私もお酒飲めるし。
    …食べ過ぎないわ。大丈夫(拳ぐっ
    どんなアニマルがいるのかしら?(わくわく

  • [3]アラノア

    2015/11/24-02:08 

    アラノアと申します。
    こちらはパートナーのガルヴァンさん。

    私達は大人なので、折角なので二段目に行こうと思っています。
    …とはいえ私はお酒にやや弱い方なので、食べ過ぎて酔いそうな気が…(汗

  • [2]桜倉 歌菜

    2015/11/24-01:28 

    桜倉歌菜と申します。
    パートナーは羽純くんです。
    皆様、宜しくお願い致します!

    ケーキの中に入れるなんて、中からケーキを食べれるなんて、すっごく素敵です♪
    羽純くんも凄く喜んでくれそうな予感…!
    私がお酒は飲めないので、ケーキ一段目で食べてると思います。
    どちらのアニマルさんと遊ぶか…迷います…!

  • [1]桜倉 歌菜

    2015/11/24-01:24 


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