Acorn168の『神秘な遺跡には何があるの?』
雨鬥 露芽 GM

プロローグ

 旧タブロス市街にある、『ウェディングハルモニア』には、地下へと繋がる道が秘匿されていた。
 演習の折、偶然に見付けられたものではあったが、その先には神秘的な鍾乳洞の遺跡が、静かに、穏やかに、何かを待ち詫びていた。



 A.R.O.A.が頻発する苛烈な戦いの中で、僅かでも休養をと考え、新たに今回発見された鍾乳洞の遺跡で休息を提案した。

「我々の調べた限りですと、この遺跡はかつて、ウィンクルムたちが結婚の儀を執り行っていた場所であることが分かっています」

 そういった神聖な場所だからこそ、愛を深め、休息になるのでは、と職員は続ける。

「多くを確認はしていませんが、非常に美しく、神秘的な遺跡です。
 また、中央付近に存在している石碑によりますと、この遺跡で愛を伝えると、より深い愛情に包まれるそうです」

「結婚の儀?」

 ウィンクルムが問う。

「はい。遺跡内には『夢想花』と呼ばれる花が咲いており、その花で作られたブーケをパートナーへと手渡し、
 想いのこもった言葉、愛の言葉を伝え、身体のどこかに口付けをする――と言ったものです。
 現代の結婚式などとはだいぶ違っていますが、あくまでも愛を深めるための儀式だと思ってください」

「とは言っても、遺跡で唐突にそんなこと、さすがにできないだろ」

 意を決して、それだけを行いにいくと言うのはなかなかに勇気がいる。
 しかし、職員はここぞとばかりに、この上ない良い笑顔を作った。

「ご心配には及びません。デートスポットは充実しています……!」

 熱がこもり始めたのは、気のせいだろうか。
 ウィンクルムの懸念をよそに、職員は話を続ける。

「まずは『せせらぎの洞窟湖』です。
 透明度の高い水が一番の見どころです。高い水温のおかげで水遊びもできますし、水辺で寛げる椅子も、大自然の粋な計らいで完備されています。

 次に、『夢想花の園』です。
 先ほども申し上げた通り、ブーケとしても使われる夢想花が生い茂っています。ぽかぽかと春の日差しのような花園でピクニックなど如何でしょう。

 次に、『エンゲージ・ボタルの洞窟』です。長いので蛍洞窟としましょう。
 せせらぎの洞窟湖から流れる川を小型船で移動しながら、星空の如きエンゲージ・ボタルと、『恋慕石柱』が連なる洞窟を見渡せます。

 どんどん行きましょう。

 次は『やすらぎの水中洞窟』です。  せせらぎの洞窟湖の水底に開いた洞窟で、ウィンクルムが潜る場合は道具不要、水濡れなく安心して潜ることができます。
 呼吸の心配も不要です。100ヤード先が見渡せる水中を探索なんて、素敵だと思います。

 続いて、『恋知り鳥の大穴』です。
 全長500m、幅30mほどもある大穴です。壁から生えた、色とりどりのクリスタルが見どころです。
 かなり高い場所から飛んでいただきますが、ウィンクルムがジャンプする場合、途中で一気に減速して着地に不安はありません。飛ぶ勇気だけです。

 まだまだありますよ。

 『恋慕石柱のプラネタリウム』です。恋慕石柱としましょう。長いものは略していくスタイルです。
 夢想花で自然形成された椅子から、恋慕石柱とエンゲージボタルの織り成す幻想的な景色を眺めることができます。
 ほかの場所よりも比較的暗くなっていますので、夜空を眺める気分が楽しめそうです。

 最後に、『時雨の愛唄』です。
 青い夢想花が咲き誇り、青の空間が広がる神秘的な空間です。
 恋慕石柱も青っぽく、鍾乳洞特有の、滴る水滴までもが青く輝く空間となっています。

 以上の、多彩なデートスポットをご用意しておりますから、唐突に、前触れもなく愛を叫び出すことはまずないと思ってください。
 そうなった場合は、どうぞ自己責任で……」

 語尾を濁した職員だったが、今回のデートスポットには相当の自信を持っているようだ。

「古のウィンクルムが執り行った婚礼の儀になぞらえながらの神秘的な遺跡を探索デート、なんていうのも乙だと思います」

 普段とは違った景色を眺めてのデート。
 二人の距離が近づきそうな、そんな予感がする。




プラン

アクションプラン

Acorn168
(Huang710)
①行先は時雨

入口手前、駄目元覚悟で手を繋いでくれるよう、ファンに手を差し出す。
2人っきりけんね、何があっても一緒に帰ってきた方がよかと思うんだ。

綺麗なトコね。この真っ青な世界、どこまで続くと思う?
夢想花に花弁を撫でながら、感触を楽しむ。

ロングブーツで来ただけに上り坂や下り坂が心配だけど、気にしないから。
いざという時の誰かさん頼みね。

いっとき歩いていたけど、終わりが見えない気がして疲れる。
ファンを誘い、壁にもたれて休んだ。
滴る水滴だけが時の流れを告げる。

ばってん、結果がどう転がっちゃ、
お任務は果たしたけん、後ろめたか事何もなかと。

だからもう少し、ここにいましょ?今日はいくらでも時間あるんだから。

リザルトノベル


 やって来た遺跡は、初めて訪れる場所。
 色々な景色があるという、そう簡単には来れない特別な遺跡。
 入口手前、目的地は決めた。
 さて行こうかと歩き始めたファン・ナンドに、エイコーン・イロハは手を差し出した。

 突然出された手に、ファンは警戒しながらエイコンとその手を交互に見る。
 人の反応を見ながら楽しむ癖のあるエイコンのことだ。
 もしかしたら遊んでるだけなのかもしれない。
 疑いつつ迷っていると、エイコンが微笑む。

「2人っきりけんね、何があっても一緒に帰って来た方がよかかと思うんだ」

 確かに一理ある。
 本心で何を思っているかはわからないが
 もし万が一何かあったら、他の人にまで迷惑がかかる。
 そうすれば納得できるような、できないような……。

 結局結論を出しきれない心に「迷惑をかけるわけにはいかない」と言い聞かせ
 ファンは彼女の手を取った。

「怪我、しないでね」

 エイコンが履いているのはヒールの高いロングブーツ。
 舗装された道とは違う遺跡の中だ。
 ファンのかけてくれた優しい言葉に、エイコンは笑顔を返した。



 足を踏み入れたのは、青で埋め尽くされた空間。
 様々な色で咲く夢想花は、ここでは青く花開く。
 いつもなら白や黄色で光る恋慕石柱も、そこを伝う水滴も
 訪れた者の瞳すら青く染まってしまうような、すべてが青く青く輝き続ける、神秘的な場所。

 その名も、時雨の愛唄――

「綺麗なトコね」

 エイコンは思わず零した。
 目の前に広がる、青い光が永遠に反射しているような幻想的な景色。
 明るい青、薄緑のような青、深い青……
 様々な種類の青色が視界を華やかに演出する。
 その吸い込まれるような世界に、ファンは息を飲んだ。

 ファンが特に目を引かれたのは、恋慕石柱。
 自然が生み出した鍾乳石が自ら青く光る不思議な石。
 長い時間をかけて形成されていったのであろう恋慕石柱はとても大きい。
 伝う滴と落ちた滴が、時を重ねて形を成し、今では柱となっているのだ。
 そこには、今日までの歴史がすべて詰め込まれているに違いない。

(こがん世界があるなんて……)

 一体どれほどの時間をかけてきたのか
 この場所にどれだけのストーリーがあったのだろうか。
 そう思わせるのは、時の雫とも言えそうなドリップストーンだからこそか。
 それはまさに、流れてきた時間を象徴するものなのだろう。

 ファンがその長い年月に圧倒されていると
 エイコンは彼を現実へと引き戻すかのように、優雅に左腕を伸ばして問いかけた。

「この真っ青な世界、どこまで続くと思う?」

 伸ばしても届くはずがないほどの広さ。
 そこで手を舞わせながら示した先は、果てしなくも感じる青い道。

 どこまで?
 答えは分からない。

 まるで、試してみようか、といった意味にすら思えそうな言葉。
 それをきっかけに二人は奥へと進んでいく。
 同じ色の中で変わっていく景色を見ながら。
 その空気を楽しみながら。

 少し進むと、触れそうなほど近くで夢想花が咲いていた。
 景色に溶け込むように青く咲き誇る美しい花。
 エイコンは手を伸ばし、その花弁を撫ではじめる。

「結構柔らかかねぇ」

 ふわりとした感触がありながら、どことなく弾力を感じさせる。
 気品があり、しなやかで、心地良い冷たさ。
 儚げに見えるのに、脆く感じさせることはない。
 その凛とした美しさが、手から伝わってくる。

「煌も触らんね。気持ちよかよ」
「え……?」

 植物が好きなファン。
 そして夢想花はここでしか咲かない花。
 こんな機会は早々ない。
 ゆっくりと手を伸ばす。
 表情には出ないが、きっと、嬉しいのだろう。

 そんなファンの姿を見て、エイコンは嬉しそうに微笑んだ。


 恋慕石柱や夢想花は、同じ種類・同じ色でも色々な形があり
 幻想的なこの世界をより一層深く味わえる。
 歩いて眺めているだけでも、視覚がとても華やかで、とても楽しい気持ちになれる。

「道が不安定だね」
「私は気にしないから大丈夫よ」

 足元を心配するファンに、エイコンは笑顔を見せる。
 多少不安定でも、これくらい問題はない。
 それに。

「いざという時の誰かさん頼みね」

 その言い回しにファンが想像した、もしやの状況。
 そうならなければいいのだが、と願うファンの気持ちを知ってか知らでか
 エイコンは謎めいた笑みをファンに向け続ける。


 それからどれだけ時間が経っただろうか。
 ゆっくり歩いていたため、どれほど歩いたかはわからないが
 どうやら出口まではまだまだかかるようだ。

 ふと、ファンの左手から体温が消えた。
 驚いて辺りを探すと、エイコンが壁にもたれている。

「どうしたの?」
「煌も一緒に休みましょ?」

 にこりと笑う。

 少し歩きすぎたのだろう。休憩がしたいようだった。
 高いヒールで不安定な地面を歩いていたのだから、そうなるのも仕方がない。
 エイコンは、ひんやりとした壁に身をゆだねて
 休息を得ようとファンを手招きする。
 ファンは仕方なさそうに隣に並び、壁に寄りかかることにした。

 静かな時間が流れる。
 ぽたり、ぽたり、と、水滴が落ちる。
 少しずつ流れていく時間。
 そうして形成されていった恋慕石柱。

 ファンはその雫を見ながら、ぽつりと呟いた。

「あの件、あがんやり方でよかったのかな」

 少し前の、ウィンクルムとしての仕事のことを思い出す。
 大きな仕事だった。沢山の仲間達と戦った。
 ファンとエイコンは戦闘班として、とあるミッションに参加していた。

 総合的な結果は、大成功と見ていいだろう。
 だがファンの心には引っかかるものがあった。
 もう少しうまく立ち回れたのではないか。
 もう少しできることがあったのではないか。
 少なからずそう思う部分があるようだった。

 そんなファンに、エイコンが柔らかい笑みを見せる。

「ばってん、精一杯やったとよ」

 それが自分達の仕事。
 成功させることはもちろん大事だけど
 今の自分達にできることを力の限りやることも大事なのだ。

「結果のどう転がったっちゃ、お任務は果たしたけん」

 やるべきことはやった。
 その時できることはちゃんとやった。
 力を尽くした。
 だから大丈夫。

「後ろめたか事、何もなかね」

 それは安心できるような、不安が解けそうなほどふんわりとした物言いで
 「大丈夫だよ」と優しく言い聞かせているようで
 心に残る靄が、少しだけ晴れるような気がして。

「……そう」

 はっきりと言い切るエイコンの言葉に、救われたような、納得できたような。
 そうして前を向ける彼女の強さはさすがとも言うべきか。

「だからもう少し、ここにいましょ? 今日はいくらでも時間あるんだから」

 何も焦ることはない。
 その時できることを少しずつやればいい。
 今を楽しむのも、また大事なことなのかもしれない。

 二人は再び水滴に目を向けて、時の流れを堪能する。

「静かだね」
「そうね」

 まるで自分達だけの空間。
 光と音が反響する。
 青い世界の壁で、二人並んで。

「にしても、なんでブーツなんだし」

 思い出したように、ファンが疑問をぶつける。
 遺跡に来るとわかっていたはずなのに。
 道が整っていないことくらい、わかっているはずなのに。

 ファンの質問に、エイコンはふふふと笑う。

「煌を頼りにしてるからよ」

 悪戯な笑みを浮かべて、ファンの心を翻弄する。
 「ね?」と、何かを言いたそうに首を傾げて。

(僕冥利……?)

 エイコンの言い方に感じた、恐らくの意味。
 どこまで本気かわからないエイコンの言い回し。
 その笑顔から顔を背けて。

(……馬鹿にしないで)

 心で小さく言った文句。
 エイコンは、ファンの心を見透かしているのか
 それとも気付いていないのか。

 ただただいつもの笑顔を灯らせて
 二人だけの青い世界を楽しんだ。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 雨鬥 露芽 GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM 真崎 華凪 GM
神人:Acorn168
精霊:Huang710
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2016年6月9日

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