(イラスト:Q IL


アイリス・ケリーのウィンクルム達のゴールイン!
青ネコ GM

プロローグ

 ついに切って落とされた、オーガ達との最終決戦――。
 もしかしたら、世界は滅び、ウィンクルムも命を落としてしまうかもしれません。

 命を落としてしまう前に、悔いのないように。
 A.R.O.A.はウィンクルムの正式な結婚を認める運びとなりました!

 そして、ウィンクルム達がお互いの気持ちを、本心を曝け出す場を用意しようと、
 A.R.O.A.がウィンクルム達に少しの休暇と、リゾート地を提供しました!
 プロポーズの場としても、デートの場としても利用可能です!

 人々は、ウィンクルム達が向かう最終決戦に向けて、少しでも手助けになればと、快くリゾート地などの開放を行ってくれました。
 最終決戦であることもあり、これまで助力をしてくれたスポットは提供をしてくださっています!
 行きたかったけど行けなかった、という場所に行くのも、同じ場所に行くのも、良いかもしれません!

 リゾート地は、すべてウィンクルム達の貸切!(一部リゾートホテルなどはスタッフがいらっしゃいます)。

 ウィンクルム達のゴールイン・ひと時は、一体どのようなものになるのでしょうか!


プラン

アクションプラン

アイリス・ケリー
(ラルク・ラエビガータ)

綺麗ですね、とても
…少しだけ青に浸らせてください
五分だけ
(綺麗な青…姉様を思い出す
私は青になれず…けれど姉様が願った赤にも、ラルクさんが望んだ朱にもなれなかった
最後まで、私は半端のまま)

…その通りです
あの時…迷惑な女神の余計な真似が分かった時に、賭けは破綻したのですから
ラルクさんらしい意見で、ほっとしました

…エリアスさんにとっては、どちらが良かったのでしょうね
私達の賭けが壊れずにいるのと、壊れてしまったのと
賭けが続けば…貴方に殺されるか、己を偽ったままで
でも、賭けも、目的も叶えられないのなら…私の存在意義は…
…確かにそうですね
そういう道も、あり得たのでしょう
私は…姉様が愛したあの人となら…目的の為だけに走れたでしょうから

…ラルクさん、手を
頂いたピアス…片方を返します
もう私には…次の戦が終われば死ぬつもりの私には、必要ありませんから
さようなら、これまでです
私は貴方を、愛してました

リザルトノベル

 そこは神秘的なまでに青い世界だった。
 青い『夢想花』が咲き誇り、『恋慕石柱』も青系統の色彩で、時折滴り落ちる水滴も宝石のように青く輝いている。かつてウィンクルムたちが結婚の儀を執り行っていた神秘の場所。
『時雨の愛唄』、そう呼ばれる場所に『アイリス・ケリー』と『ラルク・ラエビガータ』は来ていた。
「なかなかの景色だな」
「綺麗ですね、とても」
 二人は同じ場所に並び立ちながら、それでも互いを見る事はない。目の前に広がる様々な青色を見ていた。
「見ごたえはあるが、本題は何だ?」
 言いながら、ラルクは視線だけをアイリスへと移す。
「久しぶりの呼び出し、しかも俺だけをこんなとこに連れて来てただの見物なんて訳ないだろ?」
 アイリスはラルクの視線に気づかないのか、それとも気付いても無視しているのか、ただひたすら景色だけを見ている。
「……少しだけ青に浸らせてください」
 ラルクを見ないまま、アイリスはぽつりと呟く。
「五分だけ」
 そう言って、その場にしゃがみ込む。青に沈むように。
「五分、ね。いいだろ、そんくらいは待っててやる」
 言って、ラルクもまたその場に座る。アイリスの隣で、青を見つめながら。
(おおよその見当は付いてるしな)
 この後の会話を、自分の神人の決定を、ラルクは察していた。それは前から予感していた事であり、アイリスという人間を理解している者には推理出来る事だった。
 束の間の静寂が訪れる。聞こえるのは水滴の音のみ。二人はじっと動かず青の中にいた。
(綺麗な青……姉様を思い出す)
 アイリスにとって支えるべき存在であった姉。……死んでしまった姉。
 そしてその姉を模倣し続けてきた自分。
 けれど今ではもうその模倣も出来ていない。
 アイリスは自分の右手の甲に触れる。レースの手袋『レーシィローズ』越しではあっても、その下にある傷痕をよく感じ取れる。
 姉にはこんな傷はなかった。
 髪の色は銀。もうずっと栗色に染めていた髪はすっかり元に戻っていた。眼の色は赤。緑のカラーコンタクトはもうしていない。
 姉の髪はこんな色じゃなかった。姉の目はこんな色じゃなかった。
 傷があり、銀の髪で、赤い瞳。この青い空間に馴染まない異質。それがアイリス・ケリー。姉とは違う。
(私は青になれず……けれど姉様が願った赤にも、ラルクさんが望んだ朱にもなれなかった。最後まで、私は半端のまま)
 自分が求めた姿も、姉が願った姿も、パートナーであるラルクが望んだ姿も、そしてまっさらな自分自身の姿も、どれもない。
 何にも成り切れなかったのだ。


「……時間だ」
 五分が経つと、ラルクはそう言ってすっと立ち上がった。つられるようにアイリスも立ち上がる。向かい合うように立つ二人。けれど相変わらずアイリスはラルクを見ていない。視線を逸らして周りの青を見ている。
 自分を見ないアイリスを見ながら、ラルクが切り出す。
「アンタも長引かせる気は無いだろ」
 その言葉に、アイリスの肩がピクリと動く。
 相手は自分が言う事をわかっていた動揺。いや、相手がわかっているだろうという事などわかっていた。だからこれは、本当に最後の瞬間が来ることへの気構えだ。
「なんなら俺から言ってやろうか?」
 そして紡がれるのは、アイリスが告げようとしていた事。
「『賭けは終い』だってな」
 アイリスはそっと目を閉じる。すべてを遮断して、そして続きを語りだす。
「……その通りです。あの時……迷惑な女神の余計な真似が分かった時に、賭けは破綻したのですから」
 前世からの愛の繋がりがある者達は、ウィンクルムとして顕現する可能性が高くなる。
 今の自分達の生きてきたすべてを、陳腐な『運命』という言葉で片付けてしまいかねない事実を知って、アイリスはそれを行ったであろう女神を殺したくなった。ウィンクルムとしての活動も、ラルクに連絡を取る事も、そこで暫し途絶えた。
「全くもってその通り。エリアスでもアンタの姉貴でもない、駄女神サマがいらねぇプレゼントを寄こしてくれたおかげでな。俺の計画はご破算、賭けも何もあったもんじゃない」
 ラルクも鼻で笑いながら同意する。それを聞いて、アイリスは目を開けて小さく苦笑した。
「ラルクさんらしい意見で、ほっとしました」
 そして長く息を吐き出しながら、もう一人の精霊の事を考える。
「……エリアスさんにとっては、どちらが良かったのでしょうね。私達の賭けが壊れずにいるのと、壊れてしまったのと」
 今でも姉を愛している姉のパートナーであったエリアスは、アイリスを守りたいと思っている。アイリスはそれを拒絶しているが、それでもエリアスがそう思ってくれている事はわかっているのだ。
「賭けが続けば……貴方に殺されるか、己を偽ったままで。でも、賭けも、目的も叶えられないのなら……私の存在意義は……」
 言い澱むアイリスに、ラルクは「さて、な」とさっくりと切り捨てる。
「アイツの最善なんざ俺にゃ関係ないが、奴の望む未来があり得ないってのは確かだ。そうさな……もしアンタがあの時、もうちょいアイツのことを信じてりゃ、違う未来にはなってたかもな。俺との賭けを棄てて、アイツと駄目神を殺す旅に出る、とか」
 あったかもしれない未来を示唆され、アイリスは思わず呆けた様にラルクを見た。
 今日、初めてしっかりと見た精霊の顔は、いつもと同じラルクの顔だった。
「……確かにそうですね」
 アイリスを壊す存在。その在り方を変えない相手に、何処かホッとして、少しだけ寂しくもなって、そして小さく自嘲した。
「そういう道も、あり得たのでしょう。私は……姉様が愛したあの人となら……目的の為だけに走れたでしょうから」
 ありえた筈の自分の未来を口にする。今この瞬間まで思いつきもしなかった。いや、無意識のうちに蓋をしていたのかもしれない。
 様々な未来があった筈だ。それでも、ラルクとの賭けを選んで、その賭けの終わりを知って、一つの未来を選んだのは自分なのだ。
「……ラルクさん、手を」
 アイリスは右耳のピアスを外しながら言う。
「頂いたピアス……片方を返します」
 赤い石のピアスは、かつてラルクがアイリスに贈ったものだ。ラルクの所有の証代わりに。
 それを返す。もうラルクのものではいられないから。何故ならば……。
「もう私には……次の戦が終われば死ぬつもりの私には、必要ありませんから」
 それが、選んだ未来。
「さようなら、これまでです」
 アイリスはピアスを持った手を前に出し、そしてラルクの目を見て華やかに微笑む。
「私は貴方を、愛してました」
 アイリスの手からピアスが零れ落ちる。それがすぐ下で広げて待っていたラルクの手に落ちる。
「片方ってあたりがアンタの精一杯か」
 アイリスは微笑んだまま視線を逸らす。「これ位は道連れにしてもいいでしょう」と嘯きながら。道連れではなく杖かもしれない。アイリス・ケリーとしての唯一かもしれない。そんな事も思いながら。
 ラルクは渡されたピアスを握り締め、嘲笑にも近い苦笑を浮かべる。アイリスはもうラルクを見ていない。視線を合わせないアイリスに、ラルクはピアスの代わりを贈る事を決める。
「冥途の土産に一つ、キスくらいはくれてやる」
 言って、ラルクはアイリスの腕を掴み強引に引き寄せた。
 唇が触れる。アイリスはそれに抵抗することもなく、ただ素直に受け入れた。受け入れただけだった。そしてラルクもそれ以上は動かなかった。
 ――ああ、もう噛み付く未来も深く絡める未来も無い。
 ただ触れるだけの口付けは、終わりの味がした。
 ゼロになった二人の距離が開いていく。唇が離れていく。同じ赤なのにまったく違う目が、視線がぶつかり絡む。けれどそれらを惜しむ事もなく、ラルクは優しく微笑んだ。もう一つの冥土の土産として。最後の傷として。引き寄せた手を離しながら。
「愛してたぜ、殺してやりたいくらいにはな」
 けれど、もう殺さない。殺せない。
 既に死んでいる人間を殺す事など、出来ない。
「じゃあな」
 最後まで優しく言うと、ラルクは青い空間にアイリスをひとり残して、すり抜けるように去っていく。
 密やかな足音が消えるまで、アイリスは微塵も動けずにいた。
 やがて青い空間に静寂が満ちた頃、アイリスは静かに右手を動かし、そっと唇に触れる。
 そこにもう熱はない。唇にも、指先にも。
 少しだけ唇が動いた。何かを言おうとするかのように。
 けれどなんの音も紡がずに動きを止め、そして固く閉じる。
 もう何もなかった。
 唯一、未来だけが眼前に横たわっていた。
 戦いを終えた後、命を断つという未来が。
 それが二人の、アイリスの選んだ終わり。
 二人の絆の最期。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 青ネコ GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:アイリス・ケリー
精霊:ラルク・ラエビガータ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2018年5月26日

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