プロローグ
ついに切って落とされた、オーガ達との最終決戦――。もしかしたら、世界は滅び、ウィンクルムも命を落としてしまうかもしれません。
命を落としてしまう前に、悔いのないように。
A.R.O.A.はウィンクルムの正式な結婚を認める運びとなりました!
そして、ウィンクルム達がお互いの気持ちを、本心を曝け出す場を用意しようと、
A.R.O.A.がウィンクルム達に少しの休暇と、リゾート地を提供しました!
プロポーズの場としても、デートの場としても利用可能です!
人々は、ウィンクルム達が向かう最終決戦に向けて、少しでも手助けになればと、快くリゾート地などの開放を行ってくれました。
最終決戦であることもあり、これまで助力をしてくれたスポットは提供をしてくださっています!
行きたかったけど行けなかった、という場所に行くのも、同じ場所に行くのも、良いかもしれません!
リゾート地は、すべてウィンクルム達の貸切!(一部リゾートホテルなどはスタッフがいらっしゃいます)。
ウィンクルム達のゴールイン・ひと時は、一体どのようなものになるのでしょうか!
プラン
アクションプラン
西園寺優純絆 (ルーカス・ウェル・ファブレ) (十六夜和翔) |
|
10 パパ、カズちゃん! 動物園行きたいのだよ! この前友達がたぶろすパーク!行って来たって言ってて… ユズも行きたい…ダメ、かなぁ…?(シュン 本当!? ありがとう! パパ大好きなのだよ!(抱きつく (ルーカスの車でたぶろすパーク!へ チケット購入後園内へ) わぁー! 動物さん沢山いるのだよ~♪ 何処から回る? ユズはパンダとか可愛いのが見たい! 後ふれあい広場! ユズはパパの右手♪ (ルーカスを真ん中に手を繋ぎ回る ふれあい広場を残してお昼休憩 コックが作ったお弁当を広げる) はーい♪ お腹壊したら大変だもんね! ちゃんと拭いたよパパ! 頂きま~す♪ ……んー! 美味しい♪ 確かに… まぁ予測してたのかも? 分かんないけど… (食べ終わったらふれあい広場へ) きゃー! 可愛い! ウサギさんにモルモットさん! 抱っこも出来るって! ウサギさん抱っこする! もふもふして可愛いー! モルモットももふもふ! パパ、ウサギさんかモルモット欲しい! 本当!?ありがとう! |
リザルトノベル
「パパ、カズちゃん! 動物園行きたいのだよ!」
その日常は、華やかな声の一言から始まった。
大きな瞳に真剣さを湛えて訴える西園寺優純絆に、彼の精霊であるルーカス・ウェル・ファブレと十六夜和翔はそれぞれに驚いたような表情を浮かべてから、優純絆を見た。
「いきなりどうしたのですか?」
「なんだぁ、いきなり……」
そう、二人の言葉通り、いきなりだった。和翔は小説を読んでいたし、ルーカスは朝食後のお茶を嗜んでいた。それぞれが今日の予定らしい予定を持ち合わせないまま、のんびりと過ごしていた。
全く前触れのない申し出に驚くのは当然であったが、優純絆にはそれを言い出すだけの理由があったのだ。
「この前友達が『たぶろすパーク!』行って来たって言ってて……ユズも行きたい」
どうやら、友人が目一杯自慢してきたようだ。
和翔もそれには思い当たる記憶があるようで「あぁアイツが自慢の様に言っていた動物園か」と呟いた。それと同時に、話を聞いていた優純絆の表情も思い起こす。
きらきらと瞳を輝かせて話に聞き入る姿は、分かりやすい羨望が伺えた。
きっとその友人も、家族と一緒に行ってきたのだろう。そして、楽しい思い出をたくさん作ってきたのだろう。
「……ダメ、かなぁ……?」
なるほど、と納得に至ると同時、眉を下げてしゅんとした顔になった優純絆を見て、ルーカスは安心させるようににっこりと微笑んだ。
「では皆で行きましょうか」
「本当!? ありがとう! パパ大好きなのだよ!」
「ふふっ私も大好きですよ」
ぱぁっ、と笑顔の花を咲かせ、ルーカスに飛びついた優純絆を抱きとめながら、ルーカスは横目で、本を閉じてさりげなくお出かけ準備を進めている和翔を見た。
「カズもそれで良いですか?」
「まぁ良いんじゃね?」
仕方がないから付き合ってやろうと言う体で返される台詞にはくすりと微笑ましげに笑うにとどめて。
さぁそれではお出かけ準備を始めようと促すルーカスに元気の良い声を返してから、ぼそり、和翔は呟いた。
「動物園って行った事無かったし……てか俺様だって好きだってぇの……」
小さな声は、気恥ずかしさが押し隠して、届かないままだけれど。
手早く準備を済ませた一行は、ルーカスの運転する車で動物園こと『たぶろすパーク!』へと到着した。
車の中でもはしゃぎ倒していた優純絆は、手渡されたチケットを大切そうに握りしめて、ぴょんぴょんと跳ねるように受付へ差し出した。
「よろしくおねがいします!」
入る前から楽しそうな優純絆に、動物園の従業員として微笑ましく誇らしい気持ちが湧くのだろう。係員が笑顔でチケットを切る。
「ようこそ『たぶろすパーク!』へ!」
歓迎の声を背に、たたたっ、と駆け足で通り抜ける優純絆。
そうして、広々とした園内を見渡して歓声を上げた。
「わぁー! 動物さん沢山いるのだよ~♪」
「へぇー、こんな感じなのか……」
同じように少し駆け足で続いた和翔も、見える範囲に設営されている柵越しの動物の姿に、わくわくとした表情を浮かべる。
「何処から回る?」
あちらも、こちらも、魅力的な動物たちが一杯だ。くるくると視線を巡らせて、最後には精霊たちを振り返った優純絆に、ルーカスは入り口で拾ってきたパンフレットを片手に思案する。
「そうですねぇ……二人の行きたい所は?」
「ユズはパンダとか可愛いのが見たい! 後ふれあい広場!」
「ならライオンとかトラ、猛獣見たい」
元気のいい声二つを聞き留めて、ふむ、とルーカスは再び思案する。
パンフレットを見る限り、どうやら猛獣エリアからぐるりと回っていく形で希望の動物を見られそうだ。
「猛獣エリアからの方が近いですね。そこから回って行きましょう。ふれあい広場は奥の方にあるみたいですからね」
「はぁーい、わかったのだよ!」
「おう、別にそれで良い」
可愛い動物にふれあい広場も楽しみだが、野性味溢れる動物たちを見るのは楽しみだ。
何より、大好きなルーカスと和翔が一緒なのだ。それだけで優純絆の喜び指数は跳ね上がる。
それは和翔も同様で、大人しくクールな態度を振る舞ってはいるが、落ち着きなく動く視線がその楽しげな胸中を表していた。
いっそ駆け出してしまいそうな子供達の姿を見て、くすり。微笑ましげな笑みをこぼすと、ルーカスは二人に手を差し出す。
「では逸れない様に手を繋ぎましょうか」
その言葉に、二人は同時に振り返り、たたっ、とルーカスの傍に駆け寄った。
「ユズはパパの右手♪」
「んじゃ俺様は父さんの左手な!」
二人で左右に寄り添って、仲良く歩調を合わせて園内を巡る。
あちらこちらへと走り出したいような気持ちも、三人で並ぶと途端に収まるから不思議な事である。
一緒が良い。そんな気持ちを表すように、きゅっと握りしめられる手のひらの感覚が、ルーカスの胸中になんとも言えない暖かさを齎してくれた。
まず初めに立ち寄った猛獣エリアでは、ライオンの夫婦が寄り添って寛ぐ姿や、雄大な自然を再現した中を歩く虎を、和翔が身を乗り出すようにして眺めていた。
初めは獰猛な印象からかやや及び腰だった優純絆も、とても近い位置で見ることのできるポイントへ駆け込み、はしゃいだ声をあげる。
「カズちゃん、すごいのだよ! すごいのだよ!」
「すごいなユズ、でっかいな!」
記念撮影のできるスポットも充実しており、三人で並んでのショットが何枚も溜まっていく。
所変わってパンダの居るエリア。こちらはやはりと言うべきか人気があるらしく、人の波ができていた。
一生懸命背伸びをしていた優純絆だったが、ふと近くで父親に肩車をねだる声を聞き留め、そちらを見上げる。
背の高い父親の上で喜ぶ少年の姿を暫しきらきらと見上げてから、優純絆はもじもじとルーカスの手を引いた。
察したルーカスが軽々と肩に乗せれば、ようやく見えたパンダの愛らしい姿以上に、そうやって肩車をしてもらえたことに嬉しそうに微笑んで、ぎゅ、と抱きつく優純絆。
「パパ、パパ、カズちゃんにもしてあげて」
「お、俺様は別に……」
「うん、うん、順番にね」
もごもごと口ごもるのは聞こえなかったことにして、和翔と交代。
ルーカスの足元から見上げた和翔も、先ほどの少年と同じ表情をしていた。優純絆もきっと、同じだったに違いない。
そうしてお揃いの満足感を共有して、優純絆はにこにこと笑顔を浮かべていた。
(やっぱり来てよかったのだよ!)
終始楽しげに園内を巡り、折り返した辺りでお昼ご飯だ。
園内に設置されたオープンテラスのテーブルに広げられるのは、コックが作ったお弁当だ。
子供達に消毒タオルを配り、しっかりと手を拭くように促すルーカスに、またも元気な返事が響く。
「はーい♪ お腹壊したら大変だもんね!」
「へぇーい……ん、ちゃんと拭いたぜ父さん」
優純絆とは対象的に、ちょっぴりお預けを食らった気分で返答する和翔だが、きちんと手を拭き、綺麗になった手を合わせる。
頂きます。それぞれの声が重なって、楽しい食事タイムだ。
広い園内を歩き回って、心はうきうきとはしゃいだままだが、お腹はすっかりぺこぺこだった。
天気の良い空を仰ぎながら食べるお弁当は、なお絶品で。優純絆も和翔も、勿論ルーカスも幸せそうに頬張っている。
「んー! 美味しい♪」
「うめぇ!」
「うん、相変わらず美味しいですねぇ」
この場にコックが居れば、そんな言葉と表情に、嬉しそうに微笑むことだろう。
そんな想像がよぎって、ふと。夢中になっていた和翔が小首を傾げる。
「てか急に行く事になったのによく準備出来たよな」
そういえば、というように顔を上げた優純絆も、簡素ではないしっかりしたお弁当の中身を改めて見つめ、同じように首を傾げる。
昨日の残りというわけでもない。冷凍食品などでもない。それなりに調理時間の取られそうなメニューには、勿論優純絆と和翔の好物も含まれていた。
「確かに……まぁ予測してたのかも?」
わからないけど、と肩を竦めた優純絆は、再びお弁当に舌鼓をうつ。
不思議さは残るが、和翔もまた、美味しいものが食べられることを素直に喜ぶことにした。
そんな彼らを、ルーカスは微笑ましげに見つめている。
今日のお出かけをいつ察知したかなんて、それは大人だけが知っていれば良いことなのである。
美味しかった、ご馳走様。彼らはそんな最高の労いをコックにしてくれることだろうから。
元気を充填して、動物園も折り返し。
念願のふれあい広場の看板を見つけ、優純絆ははしゃいだようにルーカスの手を引く。
「おやおや可愛らしい動物さんが沢山いますねぇ」
「うわぁ、ちいせぇ奴ばっか……」
兎にモルモット、小鳥の小屋や少し大きい部類ではアルパカの餌やり体験も出来る広場を見つめ、優純絆は跳ねるようにして進む。
「きゃー! 可愛い! ウサギさんにモルモットさん! 抱っこも出来るって! ウサギさん抱っこする!」
「ふふっユズあまりはしゃぐと逃げちゃいますよ? カズも抱っこしてみたら如何です?」
はしゃぐ優純絆とはやはり対照的に少し難しい顔をする和翔。
小さな生き物を触っても怖がられたりしないだろうかと不安な気持ちがよぎる一方で、やはり人並みに小動物と触れ合うことへの期待もあるようで。
まぁ抱っこしてみても良いけど……と、優純絆と並んで係員の指示に従い、そっとその膝にふわふわの兎を乗せた。
「急に立ち上がったりするとびっくりしちゃうから、気をつけて……この辺を撫でてあげてくださいね」
「はぁーい」
膝に敷いたタオルの上の兎は、実に大人しい。係員に言われたとおり、二人はそぅっと兎の背に触れ、優しく撫でた。
「……! 可愛いっもふもふっ!」
そして一瞬で虜になった。
「もふもふして可愛いー!」
ふわふわの感触に、優純絆もふにゃりと柔らかに笑って堪能する。
あっという間に離れていってしまった兎を名残惜しむようにしながらも、今度はモルモットの群れから一匹抱き上げた。
モルモットももふもふしているし、柔らかで温かい。
兎よりも人馴れしているのだろう。優純絆の腕の中で落ち着いた様子で佇んでいた。
生き物の温度をゆっくりと感じ、優純絆はモルモットの愛らしいくりくりとした瞳と見つめ合う。そうして、ルーカスを見上げた。
「パパ、ウサギさんかモルモット欲しい!」
子供の思いつき、というやつだろうか。
だけれど、生き物を飼うということで育まれる感情や責任感は大切なものでもあって。ふむ、とルーカスは思案する。
そんな彼を、見上げる視線が、もう一つ。
「父さん、俺様も欲しい……ちゃんと世話するから!」
不安そうな様子を見せた和翔までもがそんな風に願ってくるのなら、それを否定する理由も権利も、ルーカスにはなかった。
「ちゃんとお世話が出来るなら良いですよ。明日ペットショップ行きましょうか」
にっこりと微笑んでの快諾に、優純絆も和翔も、ぱぁっと顔を明るくする。
「ありがとう!」
「嬉しいぜ!」
愛らしい鳴き声をあげ、大人しく腕の中に収まっているモルモット達も、縁遠い自分の兄弟が迎えられる未来を喜んでくれているようで。
笑顔の花咲く『一家』の日常は、これからも、きっと健やかで優しい時間となるのだろうと、予感させた。
動物園はまだまだ見どころ目白押し。一日たっぷり堪能した帰りにはきっと、肩を並べて寝息を立てる子供達の姿が見られることだろう。
その日常は、華やかな声の一言から始まった。
大きな瞳に真剣さを湛えて訴える西園寺優純絆に、彼の精霊であるルーカス・ウェル・ファブレと十六夜和翔はそれぞれに驚いたような表情を浮かべてから、優純絆を見た。
「いきなりどうしたのですか?」
「なんだぁ、いきなり……」
そう、二人の言葉通り、いきなりだった。和翔は小説を読んでいたし、ルーカスは朝食後のお茶を嗜んでいた。それぞれが今日の予定らしい予定を持ち合わせないまま、のんびりと過ごしていた。
全く前触れのない申し出に驚くのは当然であったが、優純絆にはそれを言い出すだけの理由があったのだ。
「この前友達が『たぶろすパーク!』行って来たって言ってて……ユズも行きたい」
どうやら、友人が目一杯自慢してきたようだ。
和翔もそれには思い当たる記憶があるようで「あぁアイツが自慢の様に言っていた動物園か」と呟いた。それと同時に、話を聞いていた優純絆の表情も思い起こす。
きらきらと瞳を輝かせて話に聞き入る姿は、分かりやすい羨望が伺えた。
きっとその友人も、家族と一緒に行ってきたのだろう。そして、楽しい思い出をたくさん作ってきたのだろう。
「……ダメ、かなぁ……?」
なるほど、と納得に至ると同時、眉を下げてしゅんとした顔になった優純絆を見て、ルーカスは安心させるようににっこりと微笑んだ。
「では皆で行きましょうか」
「本当!? ありがとう! パパ大好きなのだよ!」
「ふふっ私も大好きですよ」
ぱぁっ、と笑顔の花を咲かせ、ルーカスに飛びついた優純絆を抱きとめながら、ルーカスは横目で、本を閉じてさりげなくお出かけ準備を進めている和翔を見た。
「カズもそれで良いですか?」
「まぁ良いんじゃね?」
仕方がないから付き合ってやろうと言う体で返される台詞にはくすりと微笑ましげに笑うにとどめて。
さぁそれではお出かけ準備を始めようと促すルーカスに元気の良い声を返してから、ぼそり、和翔は呟いた。
「動物園って行った事無かったし……てか俺様だって好きだってぇの……」
小さな声は、気恥ずかしさが押し隠して、届かないままだけれど。
手早く準備を済ませた一行は、ルーカスの運転する車で動物園こと『たぶろすパーク!』へと到着した。
車の中でもはしゃぎ倒していた優純絆は、手渡されたチケットを大切そうに握りしめて、ぴょんぴょんと跳ねるように受付へ差し出した。
「よろしくおねがいします!」
入る前から楽しそうな優純絆に、動物園の従業員として微笑ましく誇らしい気持ちが湧くのだろう。係員が笑顔でチケットを切る。
「ようこそ『たぶろすパーク!』へ!」
歓迎の声を背に、たたたっ、と駆け足で通り抜ける優純絆。
そうして、広々とした園内を見渡して歓声を上げた。
「わぁー! 動物さん沢山いるのだよ~♪」
「へぇー、こんな感じなのか……」
同じように少し駆け足で続いた和翔も、見える範囲に設営されている柵越しの動物の姿に、わくわくとした表情を浮かべる。
「何処から回る?」
あちらも、こちらも、魅力的な動物たちが一杯だ。くるくると視線を巡らせて、最後には精霊たちを振り返った優純絆に、ルーカスは入り口で拾ってきたパンフレットを片手に思案する。
「そうですねぇ……二人の行きたい所は?」
「ユズはパンダとか可愛いのが見たい! 後ふれあい広場!」
「ならライオンとかトラ、猛獣見たい」
元気のいい声二つを聞き留めて、ふむ、とルーカスは再び思案する。
パンフレットを見る限り、どうやら猛獣エリアからぐるりと回っていく形で希望の動物を見られそうだ。
「猛獣エリアからの方が近いですね。そこから回って行きましょう。ふれあい広場は奥の方にあるみたいですからね」
「はぁーい、わかったのだよ!」
「おう、別にそれで良い」
可愛い動物にふれあい広場も楽しみだが、野性味溢れる動物たちを見るのは楽しみだ。
何より、大好きなルーカスと和翔が一緒なのだ。それだけで優純絆の喜び指数は跳ね上がる。
それは和翔も同様で、大人しくクールな態度を振る舞ってはいるが、落ち着きなく動く視線がその楽しげな胸中を表していた。
いっそ駆け出してしまいそうな子供達の姿を見て、くすり。微笑ましげな笑みをこぼすと、ルーカスは二人に手を差し出す。
「では逸れない様に手を繋ぎましょうか」
その言葉に、二人は同時に振り返り、たたっ、とルーカスの傍に駆け寄った。
「ユズはパパの右手♪」
「んじゃ俺様は父さんの左手な!」
二人で左右に寄り添って、仲良く歩調を合わせて園内を巡る。
あちらこちらへと走り出したいような気持ちも、三人で並ぶと途端に収まるから不思議な事である。
一緒が良い。そんな気持ちを表すように、きゅっと握りしめられる手のひらの感覚が、ルーカスの胸中になんとも言えない暖かさを齎してくれた。
まず初めに立ち寄った猛獣エリアでは、ライオンの夫婦が寄り添って寛ぐ姿や、雄大な自然を再現した中を歩く虎を、和翔が身を乗り出すようにして眺めていた。
初めは獰猛な印象からかやや及び腰だった優純絆も、とても近い位置で見ることのできるポイントへ駆け込み、はしゃいだ声をあげる。
「カズちゃん、すごいのだよ! すごいのだよ!」
「すごいなユズ、でっかいな!」
記念撮影のできるスポットも充実しており、三人で並んでのショットが何枚も溜まっていく。
所変わってパンダの居るエリア。こちらはやはりと言うべきか人気があるらしく、人の波ができていた。
一生懸命背伸びをしていた優純絆だったが、ふと近くで父親に肩車をねだる声を聞き留め、そちらを見上げる。
背の高い父親の上で喜ぶ少年の姿を暫しきらきらと見上げてから、優純絆はもじもじとルーカスの手を引いた。
察したルーカスが軽々と肩に乗せれば、ようやく見えたパンダの愛らしい姿以上に、そうやって肩車をしてもらえたことに嬉しそうに微笑んで、ぎゅ、と抱きつく優純絆。
「パパ、パパ、カズちゃんにもしてあげて」
「お、俺様は別に……」
「うん、うん、順番にね」
もごもごと口ごもるのは聞こえなかったことにして、和翔と交代。
ルーカスの足元から見上げた和翔も、先ほどの少年と同じ表情をしていた。優純絆もきっと、同じだったに違いない。
そうしてお揃いの満足感を共有して、優純絆はにこにこと笑顔を浮かべていた。
(やっぱり来てよかったのだよ!)
終始楽しげに園内を巡り、折り返した辺りでお昼ご飯だ。
園内に設置されたオープンテラスのテーブルに広げられるのは、コックが作ったお弁当だ。
子供達に消毒タオルを配り、しっかりと手を拭くように促すルーカスに、またも元気な返事が響く。
「はーい♪ お腹壊したら大変だもんね!」
「へぇーい……ん、ちゃんと拭いたぜ父さん」
優純絆とは対象的に、ちょっぴりお預けを食らった気分で返答する和翔だが、きちんと手を拭き、綺麗になった手を合わせる。
頂きます。それぞれの声が重なって、楽しい食事タイムだ。
広い園内を歩き回って、心はうきうきとはしゃいだままだが、お腹はすっかりぺこぺこだった。
天気の良い空を仰ぎながら食べるお弁当は、なお絶品で。優純絆も和翔も、勿論ルーカスも幸せそうに頬張っている。
「んー! 美味しい♪」
「うめぇ!」
「うん、相変わらず美味しいですねぇ」
この場にコックが居れば、そんな言葉と表情に、嬉しそうに微笑むことだろう。
そんな想像がよぎって、ふと。夢中になっていた和翔が小首を傾げる。
「てか急に行く事になったのによく準備出来たよな」
そういえば、というように顔を上げた優純絆も、簡素ではないしっかりしたお弁当の中身を改めて見つめ、同じように首を傾げる。
昨日の残りというわけでもない。冷凍食品などでもない。それなりに調理時間の取られそうなメニューには、勿論優純絆と和翔の好物も含まれていた。
「確かに……まぁ予測してたのかも?」
わからないけど、と肩を竦めた優純絆は、再びお弁当に舌鼓をうつ。
不思議さは残るが、和翔もまた、美味しいものが食べられることを素直に喜ぶことにした。
そんな彼らを、ルーカスは微笑ましげに見つめている。
今日のお出かけをいつ察知したかなんて、それは大人だけが知っていれば良いことなのである。
美味しかった、ご馳走様。彼らはそんな最高の労いをコックにしてくれることだろうから。
元気を充填して、動物園も折り返し。
念願のふれあい広場の看板を見つけ、優純絆ははしゃいだようにルーカスの手を引く。
「おやおや可愛らしい動物さんが沢山いますねぇ」
「うわぁ、ちいせぇ奴ばっか……」
兎にモルモット、小鳥の小屋や少し大きい部類ではアルパカの餌やり体験も出来る広場を見つめ、優純絆は跳ねるようにして進む。
「きゃー! 可愛い! ウサギさんにモルモットさん! 抱っこも出来るって! ウサギさん抱っこする!」
「ふふっユズあまりはしゃぐと逃げちゃいますよ? カズも抱っこしてみたら如何です?」
はしゃぐ優純絆とはやはり対照的に少し難しい顔をする和翔。
小さな生き物を触っても怖がられたりしないだろうかと不安な気持ちがよぎる一方で、やはり人並みに小動物と触れ合うことへの期待もあるようで。
まぁ抱っこしてみても良いけど……と、優純絆と並んで係員の指示に従い、そっとその膝にふわふわの兎を乗せた。
「急に立ち上がったりするとびっくりしちゃうから、気をつけて……この辺を撫でてあげてくださいね」
「はぁーい」
膝に敷いたタオルの上の兎は、実に大人しい。係員に言われたとおり、二人はそぅっと兎の背に触れ、優しく撫でた。
「……! 可愛いっもふもふっ!」
そして一瞬で虜になった。
「もふもふして可愛いー!」
ふわふわの感触に、優純絆もふにゃりと柔らかに笑って堪能する。
あっという間に離れていってしまった兎を名残惜しむようにしながらも、今度はモルモットの群れから一匹抱き上げた。
モルモットももふもふしているし、柔らかで温かい。
兎よりも人馴れしているのだろう。優純絆の腕の中で落ち着いた様子で佇んでいた。
生き物の温度をゆっくりと感じ、優純絆はモルモットの愛らしいくりくりとした瞳と見つめ合う。そうして、ルーカスを見上げた。
「パパ、ウサギさんかモルモット欲しい!」
子供の思いつき、というやつだろうか。
だけれど、生き物を飼うということで育まれる感情や責任感は大切なものでもあって。ふむ、とルーカスは思案する。
そんな彼を、見上げる視線が、もう一つ。
「父さん、俺様も欲しい……ちゃんと世話するから!」
不安そうな様子を見せた和翔までもがそんな風に願ってくるのなら、それを否定する理由も権利も、ルーカスにはなかった。
「ちゃんとお世話が出来るなら良いですよ。明日ペットショップ行きましょうか」
にっこりと微笑んでの快諾に、優純絆も和翔も、ぱぁっと顔を明るくする。
「ありがとう!」
「嬉しいぜ!」
愛らしい鳴き声をあげ、大人しく腕の中に収まっているモルモット達も、縁遠い自分の兄弟が迎えられる未来を喜んでくれているようで。
笑顔の花咲く『一家』の日常は、これからも、きっと健やかで優しい時間となるのだろうと、予感させた。
動物園はまだまだ見どころ目白押し。一日たっぷり堪能した帰りにはきっと、肩を並べて寝息を立てる子供達の姿が見られることだろう。
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
リザルト筆記GM | 錘里 GM | 参加者一覧 | ||||||
プロローグ筆記GM | なし |
|
エピソードの種類 | ハピネスエピソード | ||||
対象神人 | 個別 | |||||||
ジャンル | イベント | |||||||
タイプ | イベント | |||||||
難易度 | 特殊 | |||||||
報酬 | 特殊 | |||||||
出発日 | 2018年5月26日 |