(イラスト:神田珊瑚 IL


リチェルカーレのウィンクルム達のゴールイン!
桂木京介 GM

プロローグ

 ついに切って落とされた、オーガ達との最終決戦――。
 もしかしたら、世界は滅び、ウィンクルムも命を落としてしまうかもしれません。

 命を落としてしまう前に、悔いのないように。
 A.R.O.A.はウィンクルムの正式な結婚を認める運びとなりました!

 そして、ウィンクルム達がお互いの気持ちを、本心を曝け出す場を用意しようと、
 A.R.O.A.がウィンクルム達に少しの休暇と、リゾート地を提供しました!
 プロポーズの場としても、デートの場としても利用可能です!

 人々は、ウィンクルム達が向かう最終決戦に向けて、少しでも手助けになればと、快くリゾート地などの開放を行ってくれました。
 最終決戦であることもあり、これまで助力をしてくれたスポットは提供をしてくださっています!
 行きたかったけど行けなかった、という場所に行くのも、同じ場所に行くのも、良いかもしれません!

 リゾート地は、すべてウィンクルム達の貸切!(一部リゾートホテルなどはスタッフがいらっしゃいます)。

 ウィンクルム達のゴールイン・ひと時は、一体どのようなものになるのでしょうか!


プラン

アクションプラン

リチェルカーレ
(シリウス)
【4】で
ゆらゆらと差し込む光 宝石のような魚たち

人魚姫になったみたい
繋がれた指先が恥ずかしくてくすぐったくて でも嬉しくて
返された言葉にくすくすと笑う

水中洞窟の中 恋慕石柱が柔らかに輝く
淡い水色や淡江色 まるで光の花園のよう

少し改まった呼びかけに 彼を振り向く
かけられた言葉に目を見開く
どうして?わたし…邪魔になる?役に立たない?
揺れる翡翠の目に
ああ 彼は怖いのだと気づく

…わたしが行かなければ シリウスも行かない?
シリウスの頬をそっと両手で包む
予想通りの答えに くすりと
心配でたまらないのは わたしの方よ
シリウスは自分の怪我を気にしないから

強くて不器用で 優しい彼と額を合わせる
シリウスが行くなら わたしも行く
置いていかれても 勝手について行っちゃうんだから
その方が困るでしょう
だからずっと側にいて
ふたりで 皆で 一緒に帰ろう?

重なる唇に目を丸く
見惚れるくらいに鮮やかな翡翠の輝きと 彼の笑顔に
一拍置いて弾ける笑顔

リザルトノベル

 硝子よりも蒼い、
 水晶よりも蒼い、
 ずっと、蒼い。
 肌に吸い付く冷ややかなまでの透明さ、見上げれば空のかわりに、泡浮かびゆく水面(みなも)がある。
 湖水に包まれているのだ。包まれながら湖底めざし沈んでいくのだ。
 されど呼吸に窮することはなかった。息を吸えば古刹の庭のような、澄んだ酸素が肺を満たす。
「人魚姫になったみたい」
 リチェルカーレはつぶやいた。音も空気中と同じく届く。
「人魚か」
 かもしれないな、とシリウスは頬を緩めた。
 長い髪が解け、水と一体になったかのようにたなびくさまは、いつか夢の中で見たリチェルカーレの姿を、シリウスに呼び起こす。
 白い砂浜の波打ちぎわに、浮かび上がった海の姫君、濡れた髪、濡れた瞳――その面影は夢から覚めてなお、銀板写真のように心に刻まれていた。
 夢や幻ではないと確認したくて、ふわり浮かぶリチェルカーレに向けてシリウスは手をさし出した。その姿はどこか、夜空の星をつかもうとしている赤ん坊に似ている。
 それを待っていたとでもいうかのように、彼女は細い指をのばして応じる。
 指と指とが求め合い、赤い糸のごとく絡んでひとつとなった。
 くすぐったい、とリチェルカーレは思った。
 指先だけじゃない、生の心に直接、触れられた気がする。ハートの敏感な部分を滑らかな蝋で、つうっとひと撫でされたかのような。だからつい、くすくすと笑ってしまう。
 その笑みこそはシリウスにとって蜜、あるいは生命のひとしずく、かけがえのないものだ。
「リチェ」
 熱くなる気持ちを抑えられなくなる。
「誰よりも大切な、ただひとりのひと」
 と告げたとき彼はその腕で、彼女の細い肩を抱き寄せていた。
 ふたりの体は水中で、浮力を受けながらくるりと回る。回ってまた、元の位置に戻る。無重力空間のワルツのように。あるいはイルカのつがいのように。
 せせらぎの洞窟湖、この不思議な領域は、絵物語のような光景を与えてくれる。
 ダイビング用具は必要ない。呼吸は可能で、それどころか水に濡れることすらなかった。
 だから普段の服装で潜水することに問題はない。
 にもかかわらず水の流れとひやりとした蝕感、ゆらゆらと差し込む光とほのかな温かさを感じることはできるし、そうしようと思えば、宝石のような魚たちを掌で捕まえることもできる。
 ウィンクルムだけに与えられた奇跡だ。どういう原理によるものかは解明されていない。
 ただひとつ知られているのは、通常のウィンクルムであれば一時間程度、この状態が続くということだ。
 ただし互いの愛情が深ければ、効果は三時間ほど続くという。
 リチェルカーレとシリウスがどれほど潜っていられるかは、言うまでもないだろう。
 ふたりは気泡をたなびかせ身を寄せ合いながら、ゆっくりと洞窟へ降りていく。

 潜水したとき、底が近づくほどに暗くなるのが通常だが、この地においてはそれが逆、むしろ、深度が増すにつれ明るさが増す。
 光源が存在するのだ。発光する柱だ。恋慕石柱と呼ばれている。これが湖底の洞窟を支えるように、幾本も荘厳にそびえ立っているのだった。柱よりもたらされるきらめきは、洞窟の投げかける紺碧と好対照をなしていた。
 恋慕のかたちがひとつに限られないように、石柱の光もまた、一様ではない。
 淡い水色や淡江色、萌葱あるいは浅黄色、緋色、さまざまに彩るともしびは、まるで花の園のようだ。
 入り口をくぐり洞のなかほどまで歩むと、しばしリチェルカーレは言葉を忘れた。
 幾様もの光を浴びて立つ。光は水を通し肌を通し、我が身に浸透していく。
 されどリチェルカーレの忘我のひとときは、水に濡れた画用紙のように音もなく破れた。
「……リチェ。お前、今回の戦いには出るな」
 やや改まった呼びかけに、はっとなったようにシリウスを振り向く。
 シリウスが口にした意味を理解するのに、少しだけ時間がかかった。
「どうして?」
 目を見開かずにはおれない。傷ついたように問いを投げた。
「わたし……邪魔になる? 役に立たない?」
 シリウスは首を振った。翳りを帯びた翡翠の瞳で。
「違う。そんなんじゃない」
 嘘は言わない、言いたくない。けれど、
「ただ……」
 その先を口にするには勇気が必要だった。
「きつい戦闘になりそうだから」
 こう告げるほかなかった。言い切ってもなお、これで良かったのだという気持ちと、言うのではなかったという気持ちとが、赤と黒の藻草のようにシリウスの中でせめぎ合っている。
 シリウスは今でも夢に見ることがある。
 過去の記憶だ。枯葉色した亡霊のように背中からまとわりつき、錆びた足枷のように両脚の前進を阻もうとする。忌まわしい、けれども己(おのれ)の一部として、決して捨て去ることのできない記憶。
 その夢のなかでは、夢だというのに血と埃っぽい土、硝煙の匂いにむせそうになることもしばしばだった。
 喪ったものが多すぎる。故郷も、両親も、もう一握の灰だ。
 災厄をくぐり抜け、生き残ったことが苦しかった。
 なぜ自分だけこんな目に、と天に問いたくなることもあった。
 しかし、救いはあった。訪れたのだ。
 ――あなたがいてくれて嬉しい。
 リチェに繰り返し告げられて――彼女の横で、生きていてもいいのではと思えるようになった。
「だから」
 と、シリウスは大理石でできたチェスの駒を置くように言い、今度はその駒を横倒しにするように力なく付け加える。
「……お前に何かあったら、と思えてならない」
 隠そうとしても声は振動した。ハチドリの羽ばたきのように、小刻みに。
 もし彼女に万が一のことがあれば間違いなく、その記憶は死そのものよりも重い罰となって我が身をさいなむだろう。苦しみのあまり発狂してしまうかもしれない。いや、そうなるに違いない。そんな確信がシリウスにはあった。
 今のシリウスが案じるのは、リチェルカーレのことだけだ。
 臆病と言われても、たとえ嘲笑されようとも、この考えは変えられない。
 ゆらりと冷たい水が揺れた。
 リチェルカーレが黙って、一歩踏み出したのだ。
 そして彼女は、シリウスの頬をそっと両手で包んだのだった。オミナエシに舞い降りる蝶のように、優しく。
「わたしが行かなければ、シリウスも行かない?」
 母親が、幼子に問いかけるときに似た口調だった。
 シリウスは瞬いた。
 けれどもリチェルカーレから視線を逸らすことができない。
 彼はすでに、胸の内に答を用意していた。
「……俺は行く。神人無しだと戦力外だろうが……それでも」
 リチェは怒るかもしれない、刹那シリウスはそう思ったが、逆だった。
 リチェルカーレはくすりと微笑んだのだ。
 なぜって彼女にとってそれは、あまりにも予想通りな回答だったから。
 ――強くて不器用で、優しい。そんなシリウスだから。
 きっとそう言うだろうと思ってた。とっくに見抜いている。
「心配でたまらないのは、わたしの方よ。シリウスは自分の怪我を気にしないから」
 こつりと小さく、彼と額を合わせる。
 額同士をふれ合わせたまま、リチェルカーレは言ったのだった。
「シリウスが行くなら、わたしも行く……置いていかれても、勝手について行っちゃうんだから」
 その方が困るでしょう? といたずらっぽく告げると、唇に自然な笑みが咲いた。
「だからずっと側にいて。ふたりで、みんなで、一緒に帰ろう?」
 水音は聞こえない。
 泡のはじける音も、魚の尾が水をかく音すら聞こえない。
 シリウスの耳に届く音はただ、リチェルカーレの息づかいだけだった。
 本当に? と訊くことすらためらわれた。彼女の、退かない意志が伝わってきたから。
「……とても困る」
 と返したとき、シリウスは思わず苦笑していた。
 大海を前にした井の中の蛙の心境だ。勝てないな、というのが素直な気持ちだった。
「本当に困るよ。勝手について来られるのも、いないのも」
 シリウスは自分から額を離し、リチェルカーレの瞳を見つめた。
 青と碧、さざ波のように輝く瞳だ。
 故郷はもう存在しないが――とシリウスは思う。
 俺の帰る場所があるとすれば、それは、リチェだ。
 彼女の背中に腕をまわす。強く、抱きしめる。
 そうして、驚いたような唇に、

 深く口づけた。

 リチェルカーレは目を丸くする。
 まるで稲妻、体の芯を貫くような。甘く痺れるような。
 時間が流れた。
 いや、その時間は止まっていたのかもしれないが。
「……お前を愛してる。守ってみせるよ、仲間も……お前も」
 唇と唇が開いて最初に、シリウスはこう告げた。
 自然と浮かんでいた、鮮やかな笑みが。
 リチェルカーレは追っていた。シリウスの瞳、輝きを取り戻した翡翠の色を。
 一拍置いて、彼女にも笑顔がはじけている。
 このとき恋慕石柱の光が一斉に群青へと変わった。
 いつまでもふたりは向かい合う。
 硝子よりも蒼い、
 水晶よりも蒼い、
 ずっと蒼い、この世界で。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 桂木京介 GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:リチェルカーレ
精霊:シリウス
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2018年5月26日

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