プロローグ
ついに切って落とされた、オーガ達との最終決戦――。もしかしたら、世界は滅び、ウィンクルムも命を落としてしまうかもしれません。
命を落としてしまう前に、悔いのないように。
A.R.O.A.はウィンクルムの正式な結婚を認める運びとなりました!
そして、ウィンクルム達がお互いの気持ちを、本心を曝け出す場を用意しようと、
A.R.O.A.がウィンクルム達に少しの休暇と、リゾート地を提供しました!
プロポーズの場としても、デートの場としても利用可能です!
人々は、ウィンクルム達が向かう最終決戦に向けて、少しでも手助けになればと、快くリゾート地などの開放を行ってくれました。
最終決戦であることもあり、これまで助力をしてくれたスポットは提供をしてくださっています!
行きたかったけど行けなかった、という場所に行くのも、同じ場所に行くのも、良いかもしれません!
リゾート地は、すべてウィンクルム達の貸切!(一部リゾートホテルなどはスタッフがいらっしゃいます)。
ウィンクルム達のゴールイン・ひと時は、一体どのようなものになるのでしょうか!
プラン
アクションプラン
歩隆 翠雨 (王生 那音) |
|
6 恋慕石柱のプラネタリウムの美しさに見惚れる 気付けば夢中になってカメラのシャッターを切って …って、那音と一緒なのに俺はまた… 悪い!俺、すっかり夢中になって… 慌てて那音に視線を戻せば、その綺麗な笑顔に固まって …綺麗だな そう思ったらその光景をカメラに収めていた 本日のベストショットだな、うん 夢想花…摘むのが何だか勿体ないな… そっと触れて、頂くなと声を掛けて、丁寧に手折っていき那音と一緒に花束を作る 一本一本、手に取る度に 様々な色の中、那音と歩いてきたこれまでの事が思い返され 今二人で居る事が奇跡みたいな、必然のような 那音が居なければ…俺は今も空っぽで、誰も信じられず、誰かを想う事も想われる事も知らずに生きていたのだろうと思う 出来上がった想いの花束を抱えて 目が合ったら、照れ臭さに笑う 目を伏せて息を吸ってから、大切な一言を伝えよう 那音が俺に与えてくれたように 俺も那音に 絶対に幸せにしてやるから、覚悟してろ |
リザルトノベル
青の上に青を幾度も塗り重ねたような、まるで宵闇どきの空。
まだ日は高いはずだ。ようやく正午を過ぎた頃、なのに。
されど暗いということはなかった。恋慕石柱がやわらかな灯をもたらしているから。ほの白いエンゲージ・ボタルが飛び交うさまも、またたく星々を思わせる。
眼を開けたまま見る夢のよう、歩隆 翠雨はたちまちにしてこの光景に魅了された。ほとんど無意識のうちに、自分の分身のようなカメラを両手で持ち上げている。
翠雨の中でカチリと音が立った。翠雨の抑えられない気質、写真家としてのスイッチが入ったのだ。
翠雨はシャッタースピードを手動調整しながら、石柱を、空を、蛍に照らされる夢想花を、一心不乱にカメラに収めていく。
一日中ここにいたくなる。いや、丸一日いても足りないかもしれない。翠雨がレンズを向けたくなる構図は、それこそ数え切れないほどあった。ピント合わせするのがもどかしいくらいだ。
カメラは翠雨にとって両親の形見で、昔ながらのフィルム式だった。レトロにしてアナログだがそれでいい。レトロにしてアナログだからこそいいのだ。フィルムの巻き上げ音は、連続することでギロでも奏でるような、心地よいリズムを生み出してゆく。
いくらか離れた場所から王生 那音は、そんな翠雨をほほえましく見守っていた。
少し前ならば――。
那音は思った。
俺を放って写真に夢中になる翠雨さんを恨めしく思っていただろう、と。
嫉妬とまで言うのは重々しいが、漠然としたジェラシーくらいは感じたに違いない。古いレコードをかけたとき音楽に混じる、パチパチとしたノイズのような感情を。
――でも今は違う。
那音の心はこの日の空のように澄みわたっている。一切の偽りなく。
いくらカメラに没頭していようと、背中を見せていようと、いや、たとえ姿が見えなくたって、いつだって翠雨がちゃんと、こちらを向いていることを那音は知っているから。
先日、那音は翠雨にプロポーズした。
貴方を独占したい、と、いささか乱暴かもしれぬ一言を添えて。
翠雨は受け入れた。しっかりと抱きしめるように。そればかりか、
俺も、那音を独り占めしたい――。
という、望外に幸せな対句とともに。
ゆえに那音と翠雨はすでに家族となっている。この日彼らは、ふたりきりで結婚の儀を行うべく、この地、恋慕石柱のプラネタリウムと呼ばれる場所を訪れたのだった。
あっという間に最初のフィルムが尽き、新しいものに入れ替えている途中で翠雨は我に返った。ぱたんとケースのフタを閉じたところで身を強張らせる。
……って、那音と一緒なのに俺はまた。
いけない、と慌てて振り向くと、こちらを見ている那音の瞳、その鮮やかな瑠璃色と眼があった。
「悪い! 俺、すっかり夢中になって……」
きまり悪げに声をあげ、翠雨は小走りで那音のところに戻る。
那音は軽く腕を組んでいる。とりすました表情だ。そんな立ち姿が那音には、ぞくぞくするほど似合っていた。
怒っているかも、と翠雨はひやりとする。大いに反省してもいた。せっかくの状況、一生に一度きりの結婚の儀だというのに、ついつい写真家の性(さが)が出てしまった。
「いいよ、構わない」
けれど那音の口調は優しかった。しかも那音は、
「翠雨さんが撮影している姿を見ているのも楽しい」
と告げて口元をほころばせたのだった。
あっ、と翠雨は声を出しそうになる。
綺麗、だな――。
驚きのあまり息をすることすら忘れそう。なんと崇高で、なんと美しくて、なんと愛らしい表情をするのか。那音の美貌はもちろんわかっているはずなのに、改めて思い知らされた気がする。
千載一遇、この機を逃すようではカメラマン失格だ。
ほとんど反射的に翠雨はカメラを構え、那音が反応するより早くその笑顔を、永遠に残る記録に焼き付け、封じ込めた。
カシャッ。
古いカメラゆえシャッター音は本物、小気味の良いその一音が下りた瞬間、確かに世界の時間は止まったと思う。
「驚いたな、いきなり」
片眉を上げる那音に笑いかけ、翠雨は得意げに、そして言い切るように告げたのだ。
「本日のベストショットだな、うん」
語尾が跳ねている。まだ現像もしていないけれど、最高の一枚が撮れたという自信があった。
シャッターを切られたそのことよりも、翠雨の言葉と笑みこそが不意打ち、那音は思わず口元を押さえてしまう。
目元が熱い。頬も。
「……反則だ、色々と」
照れていると気取られたくなくて、那音は拗ねたような声色を作る。けれどもその演技はあまり上手くいかず、秘めたつもりの感情が、翠雨にはすっかり筒抜けだった。なので翠雨は素直に、ころころと笑うのだった。
つられて頬が緩んでくるのを、那音はどうしても止めることができない。
「翠雨さん、落ち着いたなら……花を集めようか」
「そうしよう」
那音の呼びかけに応じ、翠雨は夢想花の前にかがみ込む。
夢に想う花、とはよく名づけたものだ。
見る角度によって、あるいは光の当たりかたによって、花はその色調を微細に変えゆく。変化のグラデーションはあまりに巧みすぎて、気がついたときにはもう、別の色へと移っていた。魔法か、ある種の幻を目にしているように。
たとえば同じ青にしたところで、はじめ寒々しい『青藍(せいらん)』だったものが、光に晒されると温かみのある『空色』となり、それを正面から眺めると、うっとりするような優しい『水縹(みはなだ)』に変わる。それとて永くはとどまらず、うっかりまばたきでもしようものなら、いつのまにか透き通るような『白藍(しらあい)』に変貌していたりする。
かがんだ姿勢のまま、翠雨は思う。
摘むのが何だか勿体ないな――。
できる限り丁寧に、敬意を持って花に接しよう、翠雨はそう決めた。
だから夢想花を選び、手折る際には必ず、
「いただくな」
と声をかけるようにする。口に出さずとも、せめて心で。
一本、一本、きちんと選んで、集めていく。
緋色に黄色、桃に白、花の数が増えゆくごとに、なぜだか翠雨は不思議にも、厚いアルバムでも繰るかのように、那音との歩みを思い返す。
今ふたりでいることが奇跡みたいな、必然のような――。
那音がいなければ……俺は今も空っぽで、誰も信じられず、誰かを想うことも想われることも知らずに生きていたのだろう。
だとすればあまりに哀しすぎる。しかしその哀しさにすら、ついに気付かぬまま焉(お)わったかもしれない。
那音もまた、花の一輪に手を添えながら、ひとつの想いに耽(ふけ)っていた。
翠雨さんのようだ、と感じた。
可憐にして変幻自在、そして芯に生命力を宿した花の姿から連想されたのだ。出逢ってから今日まで、心に刻んできた翠雨のさまざまな表情、あるいは声、さもなくば行いを。
メモリーが去来する。夏の夜空に咲く花火のように。あるいは、一本の映画のハイライトを流し観るように。
想う、翠雨のことだけを。
ひたすらに想う。
儚く悲しい、美しい人。
飄々と捉えどころのない明るい笑顔。
ふと心を閉ざす凍った表情。
戸惑い困惑した顔。
俺をまっすぐにみてくれた瞳――。
一輪摘むのが精一杯、翠雨の髪に似た白銀(しろがね)色の花を手に立ち上がった那音は、このときまさに翠雨のライトブルーの瞳が、迷わず我が身をとらえていることを知った。
翠雨が立っている。あふれんばかりの花束を両手に抱えて。
――そう、今俺を見つめてくれるその表情がこんなにも。
翠雨のまなざしは、大きくやわらかな優しさに満ちている。那音の心を裸にして受け止め、くるんでくれるような。それでいて少年のような、照れくさげな、はにかむような笑みをたたえて。
色あざやかな夢想花、選び抜き、感謝して集めたもの、これは翠雨の気持ちを表現する花束だ。摘みたての甘い香りがする。
翠雨は那音に向かって歩みを進めた。
すぐ目の前で足を止めると、一度、短く瞳を伏せて静かに息を吸い込んだ。
瞳を上げる。
大切な言葉を――と翠雨は想う。
那音が俺に与えてくれたように、
俺も那音に、
与えたい。
「愛してる」
短く簡潔ながら、必要十分な一言だった。
同時に両手で、花束を那音に手渡す。
那音はかすかに震える手でブーケを受け取ると、そこに摘んだばかりの一輪を挿して加えた。
胸が詰まって、那音は返す台詞を見つけられない。
しかも翠雨の唇で、唇をふさがれていてはなおさらだ。
花束とともに両腕を翠雨の背に回す。しっかりと、捕まえる。
離さない。
離せるはずがない。
翠雨の体温も心も息づかいですら、私のものだ。
私の体温も心も息づかいですら、翠雨に捧げよう。
長いキスのおしまいに、翠雨は那音の耳に囁いていた。
「絶対に幸せにしてやるから、覚悟してろ」
と。
くす、と那音は微笑した。
覚悟させてもらうとしよう。
まだ日は高いはずだ。ようやく正午を過ぎた頃、なのに。
されど暗いということはなかった。恋慕石柱がやわらかな灯をもたらしているから。ほの白いエンゲージ・ボタルが飛び交うさまも、またたく星々を思わせる。
眼を開けたまま見る夢のよう、歩隆 翠雨はたちまちにしてこの光景に魅了された。ほとんど無意識のうちに、自分の分身のようなカメラを両手で持ち上げている。
翠雨の中でカチリと音が立った。翠雨の抑えられない気質、写真家としてのスイッチが入ったのだ。
翠雨はシャッタースピードを手動調整しながら、石柱を、空を、蛍に照らされる夢想花を、一心不乱にカメラに収めていく。
一日中ここにいたくなる。いや、丸一日いても足りないかもしれない。翠雨がレンズを向けたくなる構図は、それこそ数え切れないほどあった。ピント合わせするのがもどかしいくらいだ。
カメラは翠雨にとって両親の形見で、昔ながらのフィルム式だった。レトロにしてアナログだがそれでいい。レトロにしてアナログだからこそいいのだ。フィルムの巻き上げ音は、連続することでギロでも奏でるような、心地よいリズムを生み出してゆく。
いくらか離れた場所から王生 那音は、そんな翠雨をほほえましく見守っていた。
少し前ならば――。
那音は思った。
俺を放って写真に夢中になる翠雨さんを恨めしく思っていただろう、と。
嫉妬とまで言うのは重々しいが、漠然としたジェラシーくらいは感じたに違いない。古いレコードをかけたとき音楽に混じる、パチパチとしたノイズのような感情を。
――でも今は違う。
那音の心はこの日の空のように澄みわたっている。一切の偽りなく。
いくらカメラに没頭していようと、背中を見せていようと、いや、たとえ姿が見えなくたって、いつだって翠雨がちゃんと、こちらを向いていることを那音は知っているから。
先日、那音は翠雨にプロポーズした。
貴方を独占したい、と、いささか乱暴かもしれぬ一言を添えて。
翠雨は受け入れた。しっかりと抱きしめるように。そればかりか、
俺も、那音を独り占めしたい――。
という、望外に幸せな対句とともに。
ゆえに那音と翠雨はすでに家族となっている。この日彼らは、ふたりきりで結婚の儀を行うべく、この地、恋慕石柱のプラネタリウムと呼ばれる場所を訪れたのだった。
あっという間に最初のフィルムが尽き、新しいものに入れ替えている途中で翠雨は我に返った。ぱたんとケースのフタを閉じたところで身を強張らせる。
……って、那音と一緒なのに俺はまた。
いけない、と慌てて振り向くと、こちらを見ている那音の瞳、その鮮やかな瑠璃色と眼があった。
「悪い! 俺、すっかり夢中になって……」
きまり悪げに声をあげ、翠雨は小走りで那音のところに戻る。
那音は軽く腕を組んでいる。とりすました表情だ。そんな立ち姿が那音には、ぞくぞくするほど似合っていた。
怒っているかも、と翠雨はひやりとする。大いに反省してもいた。せっかくの状況、一生に一度きりの結婚の儀だというのに、ついつい写真家の性(さが)が出てしまった。
「いいよ、構わない」
けれど那音の口調は優しかった。しかも那音は、
「翠雨さんが撮影している姿を見ているのも楽しい」
と告げて口元をほころばせたのだった。
あっ、と翠雨は声を出しそうになる。
綺麗、だな――。
驚きのあまり息をすることすら忘れそう。なんと崇高で、なんと美しくて、なんと愛らしい表情をするのか。那音の美貌はもちろんわかっているはずなのに、改めて思い知らされた気がする。
千載一遇、この機を逃すようではカメラマン失格だ。
ほとんど反射的に翠雨はカメラを構え、那音が反応するより早くその笑顔を、永遠に残る記録に焼き付け、封じ込めた。
カシャッ。
古いカメラゆえシャッター音は本物、小気味の良いその一音が下りた瞬間、確かに世界の時間は止まったと思う。
「驚いたな、いきなり」
片眉を上げる那音に笑いかけ、翠雨は得意げに、そして言い切るように告げたのだ。
「本日のベストショットだな、うん」
語尾が跳ねている。まだ現像もしていないけれど、最高の一枚が撮れたという自信があった。
シャッターを切られたそのことよりも、翠雨の言葉と笑みこそが不意打ち、那音は思わず口元を押さえてしまう。
目元が熱い。頬も。
「……反則だ、色々と」
照れていると気取られたくなくて、那音は拗ねたような声色を作る。けれどもその演技はあまり上手くいかず、秘めたつもりの感情が、翠雨にはすっかり筒抜けだった。なので翠雨は素直に、ころころと笑うのだった。
つられて頬が緩んでくるのを、那音はどうしても止めることができない。
「翠雨さん、落ち着いたなら……花を集めようか」
「そうしよう」
那音の呼びかけに応じ、翠雨は夢想花の前にかがみ込む。
夢に想う花、とはよく名づけたものだ。
見る角度によって、あるいは光の当たりかたによって、花はその色調を微細に変えゆく。変化のグラデーションはあまりに巧みすぎて、気がついたときにはもう、別の色へと移っていた。魔法か、ある種の幻を目にしているように。
たとえば同じ青にしたところで、はじめ寒々しい『青藍(せいらん)』だったものが、光に晒されると温かみのある『空色』となり、それを正面から眺めると、うっとりするような優しい『水縹(みはなだ)』に変わる。それとて永くはとどまらず、うっかりまばたきでもしようものなら、いつのまにか透き通るような『白藍(しらあい)』に変貌していたりする。
かがんだ姿勢のまま、翠雨は思う。
摘むのが何だか勿体ないな――。
できる限り丁寧に、敬意を持って花に接しよう、翠雨はそう決めた。
だから夢想花を選び、手折る際には必ず、
「いただくな」
と声をかけるようにする。口に出さずとも、せめて心で。
一本、一本、きちんと選んで、集めていく。
緋色に黄色、桃に白、花の数が増えゆくごとに、なぜだか翠雨は不思議にも、厚いアルバムでも繰るかのように、那音との歩みを思い返す。
今ふたりでいることが奇跡みたいな、必然のような――。
那音がいなければ……俺は今も空っぽで、誰も信じられず、誰かを想うことも想われることも知らずに生きていたのだろう。
だとすればあまりに哀しすぎる。しかしその哀しさにすら、ついに気付かぬまま焉(お)わったかもしれない。
那音もまた、花の一輪に手を添えながら、ひとつの想いに耽(ふけ)っていた。
翠雨さんのようだ、と感じた。
可憐にして変幻自在、そして芯に生命力を宿した花の姿から連想されたのだ。出逢ってから今日まで、心に刻んできた翠雨のさまざまな表情、あるいは声、さもなくば行いを。
メモリーが去来する。夏の夜空に咲く花火のように。あるいは、一本の映画のハイライトを流し観るように。
想う、翠雨のことだけを。
ひたすらに想う。
儚く悲しい、美しい人。
飄々と捉えどころのない明るい笑顔。
ふと心を閉ざす凍った表情。
戸惑い困惑した顔。
俺をまっすぐにみてくれた瞳――。
一輪摘むのが精一杯、翠雨の髪に似た白銀(しろがね)色の花を手に立ち上がった那音は、このときまさに翠雨のライトブルーの瞳が、迷わず我が身をとらえていることを知った。
翠雨が立っている。あふれんばかりの花束を両手に抱えて。
――そう、今俺を見つめてくれるその表情がこんなにも。
翠雨のまなざしは、大きくやわらかな優しさに満ちている。那音の心を裸にして受け止め、くるんでくれるような。それでいて少年のような、照れくさげな、はにかむような笑みをたたえて。
色あざやかな夢想花、選び抜き、感謝して集めたもの、これは翠雨の気持ちを表現する花束だ。摘みたての甘い香りがする。
翠雨は那音に向かって歩みを進めた。
すぐ目の前で足を止めると、一度、短く瞳を伏せて静かに息を吸い込んだ。
瞳を上げる。
大切な言葉を――と翠雨は想う。
那音が俺に与えてくれたように、
俺も那音に、
与えたい。
「愛してる」
短く簡潔ながら、必要十分な一言だった。
同時に両手で、花束を那音に手渡す。
那音はかすかに震える手でブーケを受け取ると、そこに摘んだばかりの一輪を挿して加えた。
胸が詰まって、那音は返す台詞を見つけられない。
しかも翠雨の唇で、唇をふさがれていてはなおさらだ。
花束とともに両腕を翠雨の背に回す。しっかりと、捕まえる。
離さない。
離せるはずがない。
翠雨の体温も心も息づかいですら、私のものだ。
私の体温も心も息づかいですら、翠雨に捧げよう。
長いキスのおしまいに、翠雨は那音の耳に囁いていた。
「絶対に幸せにしてやるから、覚悟してろ」
と。
くす、と那音は微笑した。
覚悟させてもらうとしよう。
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||
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リザルト筆記GM | 桂木京介 GM | 参加者一覧 | ||||
プロローグ筆記GM | なし |
|
エピソードの種類 | ハピネスエピソード | ||
対象神人 | 個別 | |||||
ジャンル | イベント | |||||
タイプ | イベント | |||||
難易度 | 特殊 | |||||
報酬 | 特殊 | |||||
出発日 | 2018年5月26日 |