プロローグ
ついに切って落とされた、オーガ達との最終決戦――。もしかしたら、世界は滅び、ウィンクルムも命を落としてしまうかもしれません。
命を落としてしまう前に、悔いのないように。
A.R.O.A.はウィンクルムの正式な結婚を認める運びとなりました!
そして、ウィンクルム達がお互いの気持ちを、本心を曝け出す場を用意しようと、
A.R.O.A.がウィンクルム達に少しの休暇と、リゾート地を提供しました!
プロポーズの場としても、デートの場としても利用可能です!
人々は、ウィンクルム達が向かう最終決戦に向けて、少しでも手助けになればと、快くリゾート地などの開放を行ってくれました。
最終決戦であることもあり、これまで助力をしてくれたスポットは提供をしてくださっています!
行きたかったけど行けなかった、という場所に行くのも、同じ場所に行くのも、良いかもしれません!
リゾート地は、すべてウィンクルム達の貸切!(一部リゾートホテルなどはスタッフがいらっしゃいます)。
ウィンクルム達のゴールイン・ひと時は、一体どのようなものになるのでしょうか!
プラン
アクションプラン
七草・シエテ・イルゴ (翡翠・フェイツィ) |
|
28 そらのにわの露天風呂に浸かり、星空を見上げていました。 「お食事、美味しかったですね……特に」 翡翠さんったら、そんな所ばかり見ないで下さい……! 翡翠さん、私に勇気をくれませんか? 他のウィンクルムに、そして、立ちはだかるギルティに、 立ち向かう勇……!? 真顔で私を見る翡翠さんでしたが、次の瞬間、思いもよらない事になりました。 (こ、これは……これは、勇気なのですか~!?) 露天風呂から上がった後も、そのまどろみは消えそうになく。 ベッドの上でも、翡翠さんに抱かれたまま。 「……しない、です」 私が選んだんです、だから。 翡翠さんの瞳に訴える、一番言ってほしい言葉を。 それでも言おうとしない言葉を。 互いに見つめ合う時の末、気が遠くなる程に根負けしている自分を感じました。 「そばに……」 「……いて、下さい」 ほろ酔いのような気持ちで、翡翠さんに、そっと。 抱きしめられながら。 ゆっくり、ゆっくりと、口づけられながら。 |
リザルトノベル
『白馬岳』の頂上、高級感のある和風リゾートホテル『そらのにわ』の、とある露天風呂内から星空に向かって声が響く。
「お食事、美味しかったですね……特に、」
「魚介類か……今の時期は鮭なのかな? シエ、魚料理結構好きだよな」
「言われてみればそうかもしれません。翡翠さん、よく分かりましたね」
「前に行った温泉でも、刺身に食いついてただろう。あのはしゃぎっぷりは中々忘れられない」
「そ、そんなに、でしたか……うぅ、忘れてくれていいんですよ?」
「もう記憶に刻み付けた。それに」
夜空の煌めきを映していた瞳が自分へ向いたのを確認してから、翡翠・フェイツィは色白な頬が上気している彼女を覗き込むと、その肩を抱き寄せそして告げた。
「俺は、それを頬張るシエの方が……愛しいから」
「翡翠さんったら、そんな所ばかり見ないで下さい……!」
予想通り彼女、七草・シエテ・イルゴの頬が、更に鮮やかな色味帯びるのを見つけては翡翠の口元にご満悦そうな笑みが浮かぶ。
その肩に置かれた手を振り払うことはしない。
しないけれど、からかわれている気がすればシエテの表情がそっぽ向くのも無理はない。
「ごめんごめん。反応が可愛くて、つい」
「もう、しません……?」
「うん」
『今は』。
そうこっそり心の内で呟かれた事とは露知らず、少し安堵したように瞳を細めれば、シエテは今度は自分から翡翠の肩へと寄りかかった。
その雰囲気がどこか、儚さと妖艶さを纏っていれば翡翠は見惚れるのと同時に窺うよう見つめたまま、暫し彼女の言葉を待つ。
「翡翠さん、私に勇気をくれませんか?」
―― 勇気……ねぇ。
その一言から、何となく彼女の胸にかかる靄の存在を察知する。
今後、自分たちウィンクルムを待ち受けているであろう大きな戦い。
それに対する憂いからの言葉だろうと、ずっと隣りで見続け守ってきた故に翡翠は理解できた。
そのまま、その憂いを大きくし重圧にまで膨れ上がらせるのは彼女にとって良い事ではないことも。
だから翡翠は返答する。『いいよ』と。
そうして次の彼女の言葉を全て聞く前にすでに体は動いていた。
「他のウィンクルムに、そして、立ちはだかるギルティに立ち向かう勇……!?」
案の定翡翠が予想していたような言の葉が彼女の口から呟かれそうになるも、それは最後の方で何かに吸い込まれるように書き消える。
瑠璃色の双眸が見開かれた。
停止した思考を何とか手繰り寄せれば、自身の唇に相手の唇が重なっているのに気付いて。
思わず小さく身じろいで抵抗するシエテに、一瞬口を離した翡翠が今度はその耳元に寄せて囁いてくる。
「……言ったじゃない? 勇気って」
(こ、これは……これは、勇気なのですか~!?)
叫んでツッコもうとするも、その言葉は再び、今度はより深く、重ねられた温もりの中に溶けて消えた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
翡翠の唐突な行動によって、露天風呂でそれ以上の靄がシエテの胸に生み出されることは無くなったが。
浴衣に着替え、寝支度をしているうちに高揚した脳が次第に冷えては、淀みはまた蘇る。
キングサイズのダブルベッドの上、二人横に並んでも十分余る程のその中央で寝転ぶことなく今、翡翠の胸に抱き寄せられたまま微動だにしないシエテがいた。
―― やっぱ、無理もないか……。
己の胸に額を押し付けるシエテの様子に、翡翠は苦笑いを漏らす。
自分なりの、重く応えるよりああいった行動の方が下手な気遣い生ませずに、暗い思考を流してやれるかと思ったわけだが。
真面目で且つ頑なな部分を持つシエテのことを考えれば、今こうなっている状況も納得出来た。
彼女が黙ったままなのは、一重に自らを奮い立たせようと必死になっているから。
頼る事、甘える事が得意で無い故か、一人でどうにかしようとするシエテが、それでも縋るように身だけは預けてくるようになったのも想いが通じ合ってからだったように思う。
どんな経緯であれ、ウィンクルムは一組でも多く無ければこの先、立ち向かってはいけない。
だからシエテは、決して自分の後ろに逃げ道が出来ないよう覚悟を決めようとしているのだと。
頭では分かっている翡翠だったが、それでも、恋人として案じる言葉が自然と紡がれた。
「無理しないでよね?」
「……しない、です」
「本当に?」
「……」
押された念に、か細い声が返されたが次には喉の奥に飲み込まれた。
―― 私が選んだんです、だから。
シエテは広い胸にうずめていた顔をすっと上げた。
瑠璃色の瞳を深くして、翡翠の瞳へ訴える。
今、一番言ってほしい言葉を。
いつだって、どんな切ない時も、過酷な状況でも、勇気をくれたその言葉を。
訴えかけるようなその双眸から、翡翠もその言葉を理解した。
けれど、シエテが暫し待ってもその低い声色から言葉が発せられることは無かった。
戸惑う光をシエテの目に見つければ、翡翠は囁くように告げる。
「今夜は……さ……聞きたいんだ。シエから」
「それ、は………」
途端、しどろもどろになる様子を見れば、翡翠の胸に愛しさが溢れていく。
困らせたいわけではない。
ただパートナーの前に、今この時は恋人としての勇気を抱いて欲しい。
そんな願いを込めて、翡翠は柔らかな髪に、細い肩に、優しく優しくキスを降らせた。
大切そうに包み込む温もりと触れてくる感触に、彼が何を求めているのかシエテも気が付く。
同時に、ふと彼の心の向こう側にいる女性の影が頭をよぎった。
精霊と対等であり続けることを望んだという彼女。
翡翠はあくまで幼馴染だと説明してくれた、けれど。
何度となく考えた。自分は彼女のような強さを持っているのだろうかと。
神人であり続ける限り、護られる立場は揺るがない、揺るがすことが出来ない。
だからだろうか。恋人となってからの方が、彼に甘えること、頼ること、そうしようとする度『本当にいいのだろうか』と一呼吸置いて躊躇うようになった気がした。
神人と精霊という、パートナーな関係だけでない確かな絆が彼と共に育まれている自覚はある。
しかしだからこそ……気になってしまうのだ。自分は彼に守られ過ぎていないだろうかということが。
中々踏み出せなくて、互いに熱の籠った瞳で見つめ合って暫しの末。
気が遠くなる刻に感じた頃、シエテはとうとう根負けする。
真っ直ぐ逸らされる事の無い、彼の名と同じ色の瞳が信じていいとひたむきに告げてくるから。
「そばに……」
小さく小さく、振り絞られる声を励ますように、翡翠はその背中を静かに撫でてやる。
吐息を一つついてから、シエテの唇は震えそうになるのを堪えて言の葉を最後まで出し切った。
「そばに……いて、下さい」
「……よく、出来ました」
すっかり与えられた熱に浮かされたのか、ほろ酔いのような気持ちでしな垂れかかるシエテを、翡翠は心から愛しそうに改めて強く抱き締める。
―― どうすればこれ以上伝わるのだろう。
ウィンクルムじゃ無くなっても傍にいると、夢想花に囲まれた地でそう告げたこととてある。
―― シエも言ってくれたじゃないか。過去も、今も、未来も受け入れると。俺の事も……。
あの時の誓いのように、幾度となく伝えて来た言葉を、翡翠も自らの口で紡ぐ。
「俺はずっとシエの傍にいる」
腕の力以上に力強く感じるその言葉に、シエテは頷いた。
聞きたかった言葉。欲しかった気持ち。
何度届けられても決して慣れることのない言霊のように、自然とシエテの頬を一筋の雫が零れた。
純粋でどこまでも美しいその涙を、翡翠は微笑んで受け止める。
数度目の瞳の交わりで、ゆっくり、ゆっくりと顔が近付き唇同士が深く重ねられた。
―― もう、誰の手からも彼女を触らせないように。
―― もう、決して彼から離れぬように。
二つの影がそのままゆっくりと、夜空の星々からも隠れるように暗闇の中へ倒れる音がした ――
「お食事、美味しかったですね……特に、」
「魚介類か……今の時期は鮭なのかな? シエ、魚料理結構好きだよな」
「言われてみればそうかもしれません。翡翠さん、よく分かりましたね」
「前に行った温泉でも、刺身に食いついてただろう。あのはしゃぎっぷりは中々忘れられない」
「そ、そんなに、でしたか……うぅ、忘れてくれていいんですよ?」
「もう記憶に刻み付けた。それに」
夜空の煌めきを映していた瞳が自分へ向いたのを確認してから、翡翠・フェイツィは色白な頬が上気している彼女を覗き込むと、その肩を抱き寄せそして告げた。
「俺は、それを頬張るシエの方が……愛しいから」
「翡翠さんったら、そんな所ばかり見ないで下さい……!」
予想通り彼女、七草・シエテ・イルゴの頬が、更に鮮やかな色味帯びるのを見つけては翡翠の口元にご満悦そうな笑みが浮かぶ。
その肩に置かれた手を振り払うことはしない。
しないけれど、からかわれている気がすればシエテの表情がそっぽ向くのも無理はない。
「ごめんごめん。反応が可愛くて、つい」
「もう、しません……?」
「うん」
『今は』。
そうこっそり心の内で呟かれた事とは露知らず、少し安堵したように瞳を細めれば、シエテは今度は自分から翡翠の肩へと寄りかかった。
その雰囲気がどこか、儚さと妖艶さを纏っていれば翡翠は見惚れるのと同時に窺うよう見つめたまま、暫し彼女の言葉を待つ。
「翡翠さん、私に勇気をくれませんか?」
―― 勇気……ねぇ。
その一言から、何となく彼女の胸にかかる靄の存在を察知する。
今後、自分たちウィンクルムを待ち受けているであろう大きな戦い。
それに対する憂いからの言葉だろうと、ずっと隣りで見続け守ってきた故に翡翠は理解できた。
そのまま、その憂いを大きくし重圧にまで膨れ上がらせるのは彼女にとって良い事ではないことも。
だから翡翠は返答する。『いいよ』と。
そうして次の彼女の言葉を全て聞く前にすでに体は動いていた。
「他のウィンクルムに、そして、立ちはだかるギルティに立ち向かう勇……!?」
案の定翡翠が予想していたような言の葉が彼女の口から呟かれそうになるも、それは最後の方で何かに吸い込まれるように書き消える。
瑠璃色の双眸が見開かれた。
停止した思考を何とか手繰り寄せれば、自身の唇に相手の唇が重なっているのに気付いて。
思わず小さく身じろいで抵抗するシエテに、一瞬口を離した翡翠が今度はその耳元に寄せて囁いてくる。
「……言ったじゃない? 勇気って」
(こ、これは……これは、勇気なのですか~!?)
叫んでツッコもうとするも、その言葉は再び、今度はより深く、重ねられた温もりの中に溶けて消えた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
翡翠の唐突な行動によって、露天風呂でそれ以上の靄がシエテの胸に生み出されることは無くなったが。
浴衣に着替え、寝支度をしているうちに高揚した脳が次第に冷えては、淀みはまた蘇る。
キングサイズのダブルベッドの上、二人横に並んでも十分余る程のその中央で寝転ぶことなく今、翡翠の胸に抱き寄せられたまま微動だにしないシエテがいた。
―― やっぱ、無理もないか……。
己の胸に額を押し付けるシエテの様子に、翡翠は苦笑いを漏らす。
自分なりの、重く応えるよりああいった行動の方が下手な気遣い生ませずに、暗い思考を流してやれるかと思ったわけだが。
真面目で且つ頑なな部分を持つシエテのことを考えれば、今こうなっている状況も納得出来た。
彼女が黙ったままなのは、一重に自らを奮い立たせようと必死になっているから。
頼る事、甘える事が得意で無い故か、一人でどうにかしようとするシエテが、それでも縋るように身だけは預けてくるようになったのも想いが通じ合ってからだったように思う。
どんな経緯であれ、ウィンクルムは一組でも多く無ければこの先、立ち向かってはいけない。
だからシエテは、決して自分の後ろに逃げ道が出来ないよう覚悟を決めようとしているのだと。
頭では分かっている翡翠だったが、それでも、恋人として案じる言葉が自然と紡がれた。
「無理しないでよね?」
「……しない、です」
「本当に?」
「……」
押された念に、か細い声が返されたが次には喉の奥に飲み込まれた。
―― 私が選んだんです、だから。
シエテは広い胸にうずめていた顔をすっと上げた。
瑠璃色の瞳を深くして、翡翠の瞳へ訴える。
今、一番言ってほしい言葉を。
いつだって、どんな切ない時も、過酷な状況でも、勇気をくれたその言葉を。
訴えかけるようなその双眸から、翡翠もその言葉を理解した。
けれど、シエテが暫し待ってもその低い声色から言葉が発せられることは無かった。
戸惑う光をシエテの目に見つければ、翡翠は囁くように告げる。
「今夜は……さ……聞きたいんだ。シエから」
「それ、は………」
途端、しどろもどろになる様子を見れば、翡翠の胸に愛しさが溢れていく。
困らせたいわけではない。
ただパートナーの前に、今この時は恋人としての勇気を抱いて欲しい。
そんな願いを込めて、翡翠は柔らかな髪に、細い肩に、優しく優しくキスを降らせた。
大切そうに包み込む温もりと触れてくる感触に、彼が何を求めているのかシエテも気が付く。
同時に、ふと彼の心の向こう側にいる女性の影が頭をよぎった。
精霊と対等であり続けることを望んだという彼女。
翡翠はあくまで幼馴染だと説明してくれた、けれど。
何度となく考えた。自分は彼女のような強さを持っているのだろうかと。
神人であり続ける限り、護られる立場は揺るがない、揺るがすことが出来ない。
だからだろうか。恋人となってからの方が、彼に甘えること、頼ること、そうしようとする度『本当にいいのだろうか』と一呼吸置いて躊躇うようになった気がした。
神人と精霊という、パートナーな関係だけでない確かな絆が彼と共に育まれている自覚はある。
しかしだからこそ……気になってしまうのだ。自分は彼に守られ過ぎていないだろうかということが。
中々踏み出せなくて、互いに熱の籠った瞳で見つめ合って暫しの末。
気が遠くなる刻に感じた頃、シエテはとうとう根負けする。
真っ直ぐ逸らされる事の無い、彼の名と同じ色の瞳が信じていいとひたむきに告げてくるから。
「そばに……」
小さく小さく、振り絞られる声を励ますように、翡翠はその背中を静かに撫でてやる。
吐息を一つついてから、シエテの唇は震えそうになるのを堪えて言の葉を最後まで出し切った。
「そばに……いて、下さい」
「……よく、出来ました」
すっかり与えられた熱に浮かされたのか、ほろ酔いのような気持ちでしな垂れかかるシエテを、翡翠は心から愛しそうに改めて強く抱き締める。
―― どうすればこれ以上伝わるのだろう。
ウィンクルムじゃ無くなっても傍にいると、夢想花に囲まれた地でそう告げたこととてある。
―― シエも言ってくれたじゃないか。過去も、今も、未来も受け入れると。俺の事も……。
あの時の誓いのように、幾度となく伝えて来た言葉を、翡翠も自らの口で紡ぐ。
「俺はずっとシエの傍にいる」
腕の力以上に力強く感じるその言葉に、シエテは頷いた。
聞きたかった言葉。欲しかった気持ち。
何度届けられても決して慣れることのない言霊のように、自然とシエテの頬を一筋の雫が零れた。
純粋でどこまでも美しいその涙を、翡翠は微笑んで受け止める。
数度目の瞳の交わりで、ゆっくり、ゆっくりと顔が近付き唇同士が深く重ねられた。
―― もう、誰の手からも彼女を触らせないように。
―― もう、決して彼から離れぬように。
二つの影がそのままゆっくりと、夜空の星々からも隠れるように暗闇の中へ倒れる音がした ――
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||
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リザルト筆記GM | 蒼色クレヨン GM | 参加者一覧 | ||||
プロローグ筆記GM | なし |
|
エピソードの種類 | ハピネスエピソード | ||
対象神人 | 個別 | |||||
ジャンル | イベント | |||||
タイプ | イベント | |||||
難易度 | 特殊 | |||||
報酬 | 特殊 | |||||
出発日 | 2018年5月26日 |