プロローグ
ついに切って落とされた、オーガ達との最終決戦――。もしかしたら、世界は滅び、ウィンクルムも命を落としてしまうかもしれません。
命を落としてしまう前に、悔いのないように。
A.R.O.A.はウィンクルムの正式な結婚を認める運びとなりました!
そして、ウィンクルム達がお互いの気持ちを、本心を曝け出す場を用意しようと、
A.R.O.A.がウィンクルム達に少しの休暇と、リゾート地を提供しました!
プロポーズの場としても、デートの場としても利用可能です!
人々は、ウィンクルム達が向かう最終決戦に向けて、少しでも手助けになればと、快くリゾート地などの開放を行ってくれました。
最終決戦であることもあり、これまで助力をしてくれたスポットは提供をしてくださっています!
行きたかったけど行けなかった、という場所に行くのも、同じ場所に行くのも、良いかもしれません!
リゾート地は、すべてウィンクルム達の貸切!(一部リゾートホテルなどはスタッフがいらっしゃいます)。
ウィンクルム達のゴールイン・ひと時は、一体どのようなものになるのでしょうか!
プラン
アクションプラン
ハティ (ブリンド) |
|
34 …そういえば 行きたい場所はなかったのか、リン 粗方の支度を終えて話に出したのが夜 …ここが良かったから聞きそびれた 俺もまだまだ続くものと思っていた さあ…五年…十年? 二十…止めなくていいのか 現状体質みたいなものだからな この体質と引き換えに人を好きになる許可のようなものも得たわけだが …神人と契約精霊と言うのは紛らわしいだろう 運命と言うには呪いのようでもある 俺にはウィンクルムという関係に他の名前はつけられない が もし俺がただの人間だったら 意味合いも変わるのか …とかな 考えた事はある 触れては偽悪的に離れていく指を何度も見てきたから 引き止めたくて 言う気のなかった事まで口にしてしまった 増えた…? それが本当にあるかもわからなければ計何年になるのか 一時考えるがわかるものでもなし …リンがくれるならもらっておこうか そうだな(便乗) ああ、一世一代の告白だった …そんなものアンタ以外に誰がいると思うんだ ふふ、考えておく |
リザルトノベル
●身を浸す未来
ふと遠くからフクロウの声が聞こえてきて、ソファに腰掛けていたハティは、荷物をまとめる手を止めて、窓を見やる。
すっかり真っ黒に染まった窓が、鏡のようにハティの顔を映している。夜もだいぶ更けてきたようだ。
銃の手入れをしているブリンドの背に、ハティは声をかけた。
「……そういえば、行きたい場所はなかったのか、リン」
最終決戦だというので、せっせと二人で準備を整えていたらこんな時間だ。ふと我に返ったら、訊きたくなった。
尋ねてから、いまさらな質問だ……とハティは内心自嘲する。仮に『どこかあった』と返答されても、もうどこの施設も閉まっているのだから。
ちょうど調整を終えた銃を静かに机の上に置き、手入れ道具を片付けてから、ブリンドはどかっと椅子に背を預け、天井を眺めながら神人からの質問に質問で返す。
「おめーは良かったのかよ」
どこにもいかず、この家で最終決戦前夜を迎えて。
ハティは問いかけに振り向くと、じっとブリンドを見つめて頷いた。
そう、ここは二人の家だ。
ブリンドがハティの誕生日に、ボロ家を無理やり引き払わせ、半ば引きずりこむように住まわせた二人の家だ。
喪服屋かと思うくらい黒一色だった神人のワードローブに、今は別の色も入っていることを知っている家だ。
ハティが今座っているソファも、せっかくブリンドがクリスマスにベッドを贈ろうと思ったのに布団しか間に合わなかったから、ヤケのようにその布団に二人でくるまって寝たソファだ。
ブリンドの視界に入っているポインセチア。これもクリスマスに、ハティがマフラーを渡す口実にした鉢植えだ。流石に今は花の季節ではないので、ただ青々とした緑だけがある。
ハティとて、この自宅でいいと思っていたので、今の今まで聞きそびれていたのだ。
両者共に家で良いならば、問題はない。
「……あんまピンと来ねえんだよな」
つやりと光る銃に視線を落とし、使わないに越したことはないだろうが、と独り言ちてから、ブリンドはため息混じりに言う。
「『最後』とはまた派手に煽ったもんだ」
「そうだな」
相棒の淡々とした返答を聞いたブリンドは眉を寄せると、椅子の背を抱くように反転して座り直し、ソファの赤い頭を見つめる。
赤い頭は淡々と続けた。
「俺もまだまだ続くものと思っていた」
最後の戦いだ、と言われるとあまりにあっけない気がして、ハティはイマイチ実感が湧いていない。
これからもずっと、オーガを退治する任務をこなしながら、村の痕跡を探す日々が続くと思っていたのに、急に突きつけられた終止符に、顔には出ないが少なからず戸惑っている。
「まだまだ、っつーと?」
からかうように尋ねられても、ハティの口調はクソ真面目である。
「さあ……五年……十年? 二十…………止めなくていいのか」
真面目な口調でも自分としては渾身のボケだというのに、なかなか入らないツッコミに焦れてハティは。ちろりと翠の目をブリンドに向けた。
普段なら、口悪く……手も出るかも知れないが、ブリンドが止めてくれるのに。
当のブリンドは目を眇める。
――こいつにとっての十年って、多分限りなく一生と同じ意味だろうな……。
出会った当初は、無口な上に突拍子もない思考もあって理解できない神人だと思っていた。
しかしいろいろな出来事や会話を重ねて、今のブリンドはそれなりにハティという男を理解しているつもりだ。
――こいつの着地点は、きっと神人だ。
家族同然だった自警団を喪った時、つまり顕現した時に、一度ハティという男は死んでいるも同然だった。
初めは死にぞこないをハティも自覚しているのか、そっと一人でいなくなって『死になおし』かねなかったが、紆余曲折を経てなんとかブリンドは、神人の人生を『生きる』方向に舵を切らせた自負はある。
ハティにとって、産まれ直したに等しい『新しい人生』に近い今。
それなりにウィンクルムとしてデートに出かけたり、鍛冶屋見習いになったり、決してオーガと戦うだけの無味乾燥な人生ではない、はずだが。
それでもあえて訊きたくなる。
「お前さ、考えたことねーの。……神人じゃない生活」
「現状、体質みたいなものだからな」
ブリンドの問いにハティはそう答えた。神人としての生活は、自分と分かつことができないものだ、と。
――この体質と引き換えに人を好きになる許可のようなものも得たわけだが。
とハティは瞑目し、そっと今までの人生を振り返る。
『片腕になりたかった人』を守れず喪って、死んで『仲間』になることもできず、自分だけが置いて逝かれてしまったと、自警団の全滅という過去を背負いながら、残りの生涯を死に場所を探して孤独に送るはずだった。
しかしハティは顕現した。
顕現して、口は悪くとも心優しくハティに心を砕いてくれるブリンドという精霊と契約した。そして、その優しいブリンドと心を通わせた。
顕現しなければあり得なかった未来の中に自分はいるのだ、と再認識する。
ぱちと目を開き、ハティは頷く。
「俺にはウィンクルムという関係に他の名前はつけられない」
神人と契約精霊というのは紛らわしく、運命というにはあまりに呪いに近く。
「が……もし俺がただの人間だったら、意味合いも変わるのか……とかな。考えた事はある」
不器用なハティなりに懸命に言葉を選んでくれているのを、ブリンドは理解していた。
だから、良くない感情が湧いて困る。
「ふーん」
ブリンドがじっと見てくることを恥じたか、珍しく沈黙に戸惑ったか、すいと逃げようとするハティに、気のない風を装った相槌を返しながら精霊は指を伸ばす。
ブリンドの指を視界の端に捉え、ハティは思う。
あの指は何度も触れてきては偽悪的に離れていく。
頼れば受け入れてくれるのに、一線は置く。鴻鵠館で押し倒してきたのに、結局布団から蹴り出した。
――そうして死ぬまで黙ってるつもりかよ。みすみす死ぬつもりはねえが、言いたい事あんなら生きてる内に言えよ。
ブリンドが死ぬ夢を見た時、不機嫌そうに言われた言葉を思い出す。
だから引き止めたくて言うつもりのないところまで深く踏み込んで口にした。
伸びてきたブリンドの指をハティは嬉しく迎えた。
ブリンドはからかうように口を開いた。
「役目を終えて? で、……五年十年?」
役目を終えた未来が本当にあるのかもハティにはわからない。最後と言われてもピンとこないのだから。
だがブリンドも十年以上を口にした。
(増えた……)
ぱちん、とハティの大きな翠の目が瞬く。
嗚呼、彼が望んでくれるのならば。
「……リンがくれるなら、もらっておこうか」
オーガがいなくなれば神人は『人間』になる。ウィンクルムの契約も形骸化する。
それでも、契約精霊として神人と共に戦う必要がなくなっても、ブリンドの五年十年……つまりハティにとっての一生を共に過ごすために、ハティに与えてくれるならば。
もっとあり得なかった未来に身を浸せるならば。
「大きく出たなぁハティ」
「そうだな」
よく言うぜ、と目を眇めるブリンドに、ハティは真面目に頷く。
そして、はっきりと続ける。
「ああ、一世一代の告白だった」
ひゅっと微かにブリンドが息を呑む音が聞こえた気がした。
そして呑んだ息が長々とため息に変わって出てくる。
「はぁ…………どこの誰から覚えてくんだそういうの…………。俺か」
額を押さえて俯き、恨めしげにじろりと上目で睨んでくるブリンドに、ハティは微笑む。
「そんなものアンタ以外に誰がいると思うんだ 」
「あっ……厚かましいんだよ、テメー」
頬を赤くして、ブリンドはハティを睨めつけ、口悪く言う。
「これまでの年数も勘定に含めろや」
照れたついでにそんなカワイイことを、この相棒は言ってくれるから。
だからハティは涼しく笑って返すのだ。
「ふふ、考えておく」
少しずつ、少しずつ、きっとこの先もこの家のワードローブの黒の割合は減っていくのだろう。
少しずつ、少しずつ、二人が距離を縮めていったように。
ふと遠くからフクロウの声が聞こえてきて、ソファに腰掛けていたハティは、荷物をまとめる手を止めて、窓を見やる。
すっかり真っ黒に染まった窓が、鏡のようにハティの顔を映している。夜もだいぶ更けてきたようだ。
銃の手入れをしているブリンドの背に、ハティは声をかけた。
「……そういえば、行きたい場所はなかったのか、リン」
最終決戦だというので、せっせと二人で準備を整えていたらこんな時間だ。ふと我に返ったら、訊きたくなった。
尋ねてから、いまさらな質問だ……とハティは内心自嘲する。仮に『どこかあった』と返答されても、もうどこの施設も閉まっているのだから。
ちょうど調整を終えた銃を静かに机の上に置き、手入れ道具を片付けてから、ブリンドはどかっと椅子に背を預け、天井を眺めながら神人からの質問に質問で返す。
「おめーは良かったのかよ」
どこにもいかず、この家で最終決戦前夜を迎えて。
ハティは問いかけに振り向くと、じっとブリンドを見つめて頷いた。
そう、ここは二人の家だ。
ブリンドがハティの誕生日に、ボロ家を無理やり引き払わせ、半ば引きずりこむように住まわせた二人の家だ。
喪服屋かと思うくらい黒一色だった神人のワードローブに、今は別の色も入っていることを知っている家だ。
ハティが今座っているソファも、せっかくブリンドがクリスマスにベッドを贈ろうと思ったのに布団しか間に合わなかったから、ヤケのようにその布団に二人でくるまって寝たソファだ。
ブリンドの視界に入っているポインセチア。これもクリスマスに、ハティがマフラーを渡す口実にした鉢植えだ。流石に今は花の季節ではないので、ただ青々とした緑だけがある。
ハティとて、この自宅でいいと思っていたので、今の今まで聞きそびれていたのだ。
両者共に家で良いならば、問題はない。
「……あんまピンと来ねえんだよな」
つやりと光る銃に視線を落とし、使わないに越したことはないだろうが、と独り言ちてから、ブリンドはため息混じりに言う。
「『最後』とはまた派手に煽ったもんだ」
「そうだな」
相棒の淡々とした返答を聞いたブリンドは眉を寄せると、椅子の背を抱くように反転して座り直し、ソファの赤い頭を見つめる。
赤い頭は淡々と続けた。
「俺もまだまだ続くものと思っていた」
最後の戦いだ、と言われるとあまりにあっけない気がして、ハティはイマイチ実感が湧いていない。
これからもずっと、オーガを退治する任務をこなしながら、村の痕跡を探す日々が続くと思っていたのに、急に突きつけられた終止符に、顔には出ないが少なからず戸惑っている。
「まだまだ、っつーと?」
からかうように尋ねられても、ハティの口調はクソ真面目である。
「さあ……五年……十年? 二十…………止めなくていいのか」
真面目な口調でも自分としては渾身のボケだというのに、なかなか入らないツッコミに焦れてハティは。ちろりと翠の目をブリンドに向けた。
普段なら、口悪く……手も出るかも知れないが、ブリンドが止めてくれるのに。
当のブリンドは目を眇める。
――こいつにとっての十年って、多分限りなく一生と同じ意味だろうな……。
出会った当初は、無口な上に突拍子もない思考もあって理解できない神人だと思っていた。
しかしいろいろな出来事や会話を重ねて、今のブリンドはそれなりにハティという男を理解しているつもりだ。
――こいつの着地点は、きっと神人だ。
家族同然だった自警団を喪った時、つまり顕現した時に、一度ハティという男は死んでいるも同然だった。
初めは死にぞこないをハティも自覚しているのか、そっと一人でいなくなって『死になおし』かねなかったが、紆余曲折を経てなんとかブリンドは、神人の人生を『生きる』方向に舵を切らせた自負はある。
ハティにとって、産まれ直したに等しい『新しい人生』に近い今。
それなりにウィンクルムとしてデートに出かけたり、鍛冶屋見習いになったり、決してオーガと戦うだけの無味乾燥な人生ではない、はずだが。
それでもあえて訊きたくなる。
「お前さ、考えたことねーの。……神人じゃない生活」
「現状、体質みたいなものだからな」
ブリンドの問いにハティはそう答えた。神人としての生活は、自分と分かつことができないものだ、と。
――この体質と引き換えに人を好きになる許可のようなものも得たわけだが。
とハティは瞑目し、そっと今までの人生を振り返る。
『片腕になりたかった人』を守れず喪って、死んで『仲間』になることもできず、自分だけが置いて逝かれてしまったと、自警団の全滅という過去を背負いながら、残りの生涯を死に場所を探して孤独に送るはずだった。
しかしハティは顕現した。
顕現して、口は悪くとも心優しくハティに心を砕いてくれるブリンドという精霊と契約した。そして、その優しいブリンドと心を通わせた。
顕現しなければあり得なかった未来の中に自分はいるのだ、と再認識する。
ぱちと目を開き、ハティは頷く。
「俺にはウィンクルムという関係に他の名前はつけられない」
神人と契約精霊というのは紛らわしく、運命というにはあまりに呪いに近く。
「が……もし俺がただの人間だったら、意味合いも変わるのか……とかな。考えた事はある」
不器用なハティなりに懸命に言葉を選んでくれているのを、ブリンドは理解していた。
だから、良くない感情が湧いて困る。
「ふーん」
ブリンドがじっと見てくることを恥じたか、珍しく沈黙に戸惑ったか、すいと逃げようとするハティに、気のない風を装った相槌を返しながら精霊は指を伸ばす。
ブリンドの指を視界の端に捉え、ハティは思う。
あの指は何度も触れてきては偽悪的に離れていく。
頼れば受け入れてくれるのに、一線は置く。鴻鵠館で押し倒してきたのに、結局布団から蹴り出した。
――そうして死ぬまで黙ってるつもりかよ。みすみす死ぬつもりはねえが、言いたい事あんなら生きてる内に言えよ。
ブリンドが死ぬ夢を見た時、不機嫌そうに言われた言葉を思い出す。
だから引き止めたくて言うつもりのないところまで深く踏み込んで口にした。
伸びてきたブリンドの指をハティは嬉しく迎えた。
ブリンドはからかうように口を開いた。
「役目を終えて? で、……五年十年?」
役目を終えた未来が本当にあるのかもハティにはわからない。最後と言われてもピンとこないのだから。
だがブリンドも十年以上を口にした。
(増えた……)
ぱちん、とハティの大きな翠の目が瞬く。
嗚呼、彼が望んでくれるのならば。
「……リンがくれるなら、もらっておこうか」
オーガがいなくなれば神人は『人間』になる。ウィンクルムの契約も形骸化する。
それでも、契約精霊として神人と共に戦う必要がなくなっても、ブリンドの五年十年……つまりハティにとっての一生を共に過ごすために、ハティに与えてくれるならば。
もっとあり得なかった未来に身を浸せるならば。
「大きく出たなぁハティ」
「そうだな」
よく言うぜ、と目を眇めるブリンドに、ハティは真面目に頷く。
そして、はっきりと続ける。
「ああ、一世一代の告白だった」
ひゅっと微かにブリンドが息を呑む音が聞こえた気がした。
そして呑んだ息が長々とため息に変わって出てくる。
「はぁ…………どこの誰から覚えてくんだそういうの…………。俺か」
額を押さえて俯き、恨めしげにじろりと上目で睨んでくるブリンドに、ハティは微笑む。
「そんなものアンタ以外に誰がいると思うんだ 」
「あっ……厚かましいんだよ、テメー」
頬を赤くして、ブリンドはハティを睨めつけ、口悪く言う。
「これまでの年数も勘定に含めろや」
照れたついでにそんなカワイイことを、この相棒は言ってくれるから。
だからハティは涼しく笑って返すのだ。
「ふふ、考えておく」
少しずつ、少しずつ、きっとこの先もこの家のワードローブの黒の割合は減っていくのだろう。
少しずつ、少しずつ、二人が距離を縮めていったように。
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||
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リザルト筆記GM | あき缶 GM | 参加者一覧 | ||||
プロローグ筆記GM | なし |
|
エピソードの種類 | ハピネスエピソード | ||
対象神人 | 個別 | |||||
ジャンル | イベント | |||||
タイプ | イベント | |||||
難易度 | 特殊 | |||||
報酬 | 特殊 | |||||
出発日 | 2018年5月26日 |