水田 茉莉花の『ウィンクルムだらけのサマードリーム!』
桂木京介 GM

プラン

アクションプラン

水田 茉莉花
(八月一日 智)
(聖)
6→9

え、あ、は…ええーっ!
この二人、本気で勝負しようとしてる
確かスキー場の時(前回シチュノベ)も
同じ様な流れだったような気がしないでもないわ
まぁ日焼け対策バッチリして行けば問題ないわよね
あと救命ベストも…最近のは首にぶら下げるだけなんだ、便利

って、二人ともダウン?!
釣竿あたしが全部見なきゃいけないの?
あ、船長さんすみません、コツ教えてください!

(筋肉痛の塗り薬を買い出してきた)
はぁ、船長さんに手伝ってもらって魚は釣れたけど
肩と腕は痛いし、二人はダウンしてるし…夕飯どうしよう?
…?コテージの前が明るい…もしかして!

二人とも体調は大丈夫なの?
景品?ああ、ほづみさん達が釣りに行く前話していたアレね
わぁ、これすごい食器だけど、本物?

ふふ、これならひーくんも飲める『シャンパン』だね
それはそうと、この量あたし一人で食べさせる気?
何変な声出してるのよ、食べたいなら素直に
…それともまだ具合悪いのかしら?

リザルトノベル

 どうっ、と船体が揺れる。水飛沫が跳ねる。
 漁船といっても小さなものだから、潮の流れはダイレクトに反映されるのだ。
 水田 茉莉花は船べりから慌てて下がった。破裂音とともに冷たい波が甲板を叩いた。間一髪、海水を頭からかぶるところだった。
 まさに大海原って感じね――茉莉花は水平線を眺める。陸は遠くにぼんやり見えるだけで、それ以外はひたすら海、海、海の青一色だ。見上げる空も憎らしいくらい晴れていて、太陽は白に近い黄色、たなびく雲のひとつとてない。まさかこれほど好天になるとは、やはり乙女のたしなみとして、日焼け対策をバッチリしておいて良かったと思うのである。
 それなりに風があるので暑さはごまかせているが、その当然の結果として海の動きは活発だった。また波が押し寄せて、船はさきほどとは反対方向に傾斜する。
 おっとと、とバランスをとりながら茉莉花は言った。
「ね? 救命ベスト、ちゃんと用意して正解だったでしょ? それにしても最近のは首にぶら下げるだけなんだから便利よね」
 ところがこの茉莉花の声に、八月一日 智も聖も、まるで答える様子はなかった。
「おう、見てろよまりか、目指すは旬の魚一本釣りってなぁ!」
 茉莉花の言葉をどう聞いたのか、智は拳を空に突き上げたのだ。もう片方の手には長いグラスファイバー製の釣り竿を握っている。智の声に呼応するがごとく、リールがカラカラと回転していた。
「この波は海の呼び声だぜ……おれに大物を釣り上げろってよぉ!」
 智の目には炎が宿っていた。『ど』がつくほどの本気らしい。
 これに対し聖は、眼鏡の奥から冷ややかな一瞥を返して、
「まったくそうぞうしいですねパパは」
 と薄笑みを浮かべていた。
「しんのアングラーは、しずかにたんたんとじゅんびを行うと、そう場がきまっているのです」
 言いながら聖は、救命胴衣のアタッチメントを確認している。もちろん聖も釣り竿を用意し、かたわらに立てかけていた。
 その冷め切った口ぶりが気に入らなかったらしい。智の両目の炎は、ガソリンをブチ込まれたかのように勢いを増した。
「ンダコラチビ助、おれと勝負しようってのか?」
「のぞむところです。ぼくのじつ力を、ママの目の前でひろうしましょう」
 聖は鼻で笑っていた。楽勝ですよ、とでも言うかのように。
「言ったな!」智の様子はガソリンマシマシといったところだ。「んじゃ、多く釣り上げた方が魚総取りってことにしようぜ!」
「いいでしょう。そのほうほうはフェアですしね」
 クールを装ってはいるものの、聖もやはり思うところはあるらしい。
 よーし、と言うや智は茉莉花を振り返った。
 ふふん、とやはり余裕の笑みとともに、聖も茉莉花を振り返った。
「まりか、審判頼む!」
「ジャッジをおねがいします!」
「え? あ、は……ええーっ!」
 闘争本能に燃える男たちの熱視線(※暑苦しいまなざしともいう)を受けては、茉莉花としてもたじろがずにはいられないのだった。
 この二人、本気で勝負しようとしている。そういえば以前、スキー場のときも同じような流れだったような気がしないでもない。イベントごとになるとなんらかのスイッチでもオンになるのだろうか。
 こうしてそのままの流れで、荒波の上での釣りバトルが始まったのである。
「さあ見てろよ、あっという間にクーラーボックスを一杯にしてやるぜ!」
「パパ、クラゲやゴミでいっぱいにしてもダメですからね」
「口の減らねえチビ助め! そっちこそ釣り糸がからまって泣き言いっても助けてやんねーからなぁ!」
「しんぱいごむよう、まあ、見ててください」
 とまあ威勢のいいことこの上ないスタートとなったものの、当然そんなボルテージが持続するはずはない。なぜなら釣りというのはそう次々と魚がかかるものではないからだ。なにも起こらない時間、すなわち『待ち』がその大半なのである。
「…………」
 騒がしいのは最初だけだった。やがて沈黙の時間が訪れている。
 やれやれ、と茉莉花は嘆息した。このメンバーで海に出たゆえ、優雅に釣り糸を垂れるだけではすむまいとは思っていたものの、こういう展開は想像していなかった。とはいえようやく落ち着きが戻ったようだ。きっと、短い時間だろうけど。
 茉莉花の予想は的中した。  
「どう? 釣れてる?」
 ひょいと聖の様子を見に行くと、あろうことか聖は、紙のように白い顔をしてうずくまっているではないか。
「どうしたの!? まさか具合でも悪い?」
「……その『まさか』です」
 聖は額に玉の汗を浮かべ、苦しげな声を洩らした。うぇぷ、とえずいて口元を手で押さえる。決壊をこれで防ごうとでもいうかのように。
「自分です早く動くのはなれてますけど、勝手に動かれるのはダメですー」
 つまり、船酔いということだ。
 茉莉花は平気なのであくまで推測だが、聖は大変な状態であるようだ。茉莉花が背をさすったところ、いいです、と言うかのように聖は彼女の手を払った。
「ママ……おねがい、きいてくれますか……」
「うん。遠慮なく言って」
「バケツ、とってください」
「バケツ?」
 どうして? と思ったのは一瞬だった。すぐに茉莉花はその『用途』に思い至ったのである。
「使って」
 青いバケツを持ってくると、流木にすがる溺水者のごとく聖はこれにすがりついた。
「ありがとうママ……うっぷ」
 そのまま聖は、このバケツとお友達になると決めたらしい。顔をバケツにつっこむと、海に糸を垂らす釣り竿を甲板に放置したまま動かなくなった。
 ほづみさんも静かよね、と思った茉莉花は智に眼を向ける。
 そうして茉莉花は、やれやれ、と腕組みして立ち尽くすことになった。
 智は甲板に大の字になっている。もちろんひなたぼっこをしているのではない。
「あるェー? 目が回りュー? 立てにャーイ!」
 しっかり船酔いしてダウンしているのだった。当然、釣り竿は固定した位置で放置だ。
「二人ともダウンってこと!?」
 このバトル、自動的に勝負なしの判定となったようである。
「ニャー、いや、なぁー、まりかー」
「なによ」
「……釣り竿頼むー」
 は? と茉莉花が問い返したとき、聖からもバケツ越しのくぐもった声が聞こえた。
「ぼくのさおもみてください、ママー……」
「えー! 釣竿あたしが全部見なきゃいけないの?」
 と声を上げたとき、智の竿がピンと反応するのがわかった。
「まりか-、なんか引いてるー。プリーズヘルプー」
「ハイハイ、わかりました!」
 そもそも今日、釣りをやりたいと騒いだのは智と聖なのである。茉莉花はフィッシングには知識はおろか大した興味もなかった。だから竿に駆け出しながら彼女は声を上げたのだった。
「あ、船長さんすみません、コツ教えてください!」
 茉莉花が四苦八苦して大物のカツオを釣り上げたとき、待ってましたとばかりに聖の竿がビクンと動いた。

 甲板では水揚げされたばかりの昆布のようだった智と聖も、ゴールドビーチの砂浜に戻ると、弱々しいながら歓声を上げていた。そのまま彼らはコテージに転がり込んでいる。
「……あーもう二人とも気楽なもんよね」
 そろそろ星が出てくる時間帯、ダークブルーの宵闇のなか、茉莉花はひとり屋外にいる。買ってきた薬液を、二の腕に薄く塗ってのばしているのだ。虫よけや日焼け止めではない。肩こりと筋肉痛に効く薬だった。慣れぬ運動の代償である。ツンと目に染み肌に染みるが、そういうものなのだから仕方がない。ピリピリとくる痛みは、効いている証拠としてポジティブに受け止める。
 釣りのほうは大漁だった。
 あれから面白いくらい釣れに釣れ、智のボックスも聖のボックスも、青いツムブリに黒いカツオでぎっちぎちに埋まったのである。船長はその場で食べることを提案し、茉莉花は海の幸を堪能したものの、男子二匹は絶賛グロッキー中だったので当然一口もできなかった。それでも多少は減ったとはいえ、帰路でもずいぶん釣果があがったこともあって現在の状況に至ったのだった。
 ま、でも、と、海の上での獅子奮迅を思い出し、茉莉花はひそかに笑みを浮かべる。
 けっこう楽しかったかも……魚釣り。
 夕飯はどうしたものかなあ、冷暗所に保管した魚の処分を考え考えしつつ茉莉花は振り向き、コテージの前が明るいことに気がついたのだった。
 これは、もしかして!?

 それよりさかのぼること、一時間ほど。
「ふー、結局午後はおれたちぶっ潰れてたわけか、ひー助」
 コテージの簡易ベッドからもそもそと起き出し、智は聖に呼びかけた。まだ頭がフラフラする。幸い、熱っぽかったのは収まっていた。
「そうみたいです、うぇぷ」
 聖もベッドから身を起こしていた。まだ余韻が残っているようだが、少なくとも血色は戻っている。
「ママがずっと面どう見てくれてましたけど……いませんね」
「うあー、愛想尽かしてどっか行っちまったのかな」
 うなだれてキッチンまで行った智は、驚いて駆け戻ってきた。
「……ひー助、火起こし手伝えるか?」
 手にしているのはクーラーボックスだ。中身もそのままである。
「火? 炭に火をつけるのですよね、できますよ。そう言うパパはお魚さばけますか?」
「愚問だ、具合悪くてもおれは包丁握れるぜ」

 そっと茉莉花は裏手から、コテージ前で行われていることを観察する。
 智と聖が手分けして、野外料理をしているのだった。すでにバーベキューコンロには火がおこされていた。
「メニューはママが好きな、フリットとアクアパッツァにしましょう」
「んだな、ひー助はバケット切って炙ってくれ」
 腰にエプロンを巻いた智も、
「バケットにはニンニクぬるんですよね」
 刺繍入りの割烹着をきこんだ聖も、すっかり元気を取り戻している様子だ。
「おれは魚の下準備するから……揚げ油の臭いがダメなら逃げろよ、ひー助」
「はい、ムリしないでやります」
 二人は笑みかわしていた。海上のバトルとダブルノックアウトのおかげで、一種の同志感を獲得したものらしい。
 このままずっと見ていたいくらいだけど、と茉莉花は袖をまくった。
 やっぱり参加したい!
「二人とも体調は大丈夫なの?」
 言いながら姿を見せると、
「あ、ママおかえりなさい!」
 聖は屈託のない笑みを浮かべた。
「お、おう、お帰りまりか……総取りの賞品準備したぞ」
 智は何気ない口調を装っているものの、語尾が少し跳ねている。
「景品? ああ、釣り勝負の勝者の権利ってことね」
「そういうこった。ほら」
 智が指し示した先には野外テーブルがセットされており、結婚披露宴で見るような食器が綺麗にならべられていた。
「わぁ、これすごい食器だけど、本物?」
「今は使いきりの食器もソレっぽいのがあるんだ」
 ひとつを手に取って智はこれを光にかざした。
「これはプラスチックのシャンパングラス、雰囲気出るだろ?」
 大きなフライパンを聖が持ってきた。見て見て、とばかりに掲げて、
「ママがいちばんつったので、ママの好きなごはんを作っていたんです」
「ありがとう! よくできてるじゃない」
 茉莉花も手伝い、たちどころに盛りつけは終わった。例のグラスを手にすると、
「どうぞー」
 と聖がドリンクを注いでくれた。
「発泡ワイン?」
「と、いきたいですがジンジャーエールです。ふんい気だけでもレストランぽくしてみました!」
「ふふ、これならひーくんも飲めるしね」
 智はわざとらしく仰々しいお辞儀をしてみせる。それこそ、高級レストランの給仕長のように。
「では遠慮なくお召し上がり下さ……慣れない言葉使いするもんじゃないな、食べてくれ」
「えんりょなくですー」
 智と聖はフォークを取らない。よくみると、取り皿は茉莉花の分しかないではないか。
「それはそうと、こんなに量あるのにあたし一人で食べさせる気?」
 茉莉花が問うと、智と聖はあらかじめ練習でもしてきたかのように、
「お、おう。まりかが良ければ、おれ達もご相伴シタインダケドナー?」
「ソ、ソウデスネ、ママがぼくたちといっしょに食べたいってゆったらデスネー?」
 などと言う。総取り、とはそういう意味だったらしい。
 やれやれ、と茉莉花は苦笑していた。
「何変な声出してるのよ、食べたいなら素直に言いなさいよね。……それともまだ具合悪いのかしら?」
「そんなことは!」
 と言った智と聖の声がきれいな和声になったので、今度は彼らが苦笑する番だった。
「ぼぼ、ぼくは元気です! ねーパパ!!」
「あーおれも元気になったぞピンピンしてるぞ、めっちゃ腹が減ったなぁ!」
 空元気なのか本当なのか、いずれにせよ、ゴールドビーチの夜はこれからだ。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 桂木京介 GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:水田 茉莉花
精霊:八月一日 智
精霊:
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2017年5月13日

開催中のイベント・キャンペーン

>>>煉界のディスメソロジア
キャラクターコンバート!


>>>ファンレターキャンペーン開催中!


>>>チュートリアル漫画むーびー公開!


>>>4thアニバーサリー!情報告知!




PAGE TOP