(イラスト:一宮こう IL


鬼灯・千翡露の『ウィンクルムだらけのサマードリーム!』
都成 GM

プラン

アクションプラン

鬼灯・千翡露
(スマラグド)
【11】
アトラクションは8→3→2
(8と3の間に食事)

わーい、遊園地久しぶり
遊び尽くすぞー
ん、ラグ君どうしたの?

ひゃー、空中ブランコ高いねえ
デザインも清涼感あって涼しげだし
爽やかな風を切って気持ちいい

次は……あ、観覧車乗ろう!
きっと日が沈むの綺麗だよ

やっぱり観覧車からの景色は格別
あ、あっちに月光華が見えるよ!
降りたら行ってみよう

近くで見るとまた壮観だね……
月の光で白く透き通ってきらきらして
夜風も冷たいし、気持ちが澄んでいくみたい

……あのねラグ君、私ずっと考えてたんだ
私、全部なくした日から、孤独だった
保護施設でも絵の勉強ばっかりで
いつかウィンクルムになるんだとしても、どうでもよかった

でも、ラグ君はずっと私を気遣ってくれて
同じペースで歩いてくれた、心に寄り添ってくれた
だから、ラグ君だけは『特別』なんだって思ったの
好きだって言ってくれて、嬉しいって今は解る
……改めて、これからよろしくお願いします

リザルトノベル

「わーい、遊園地久しぶり」
マーメイド・レジェンディアに流れる音楽に誘われるように、鬼灯・千翡露は僅かにはしゃいだ声を上げる。
「遊び尽くすぞー」
強い日差しにも負けず、濃い翡翠色の瞳を好奇心できらめかせて、園内のアトラクションを見回す千翡露に
澄んだ湖面のように静かだったスマラグドの顔も、僅かにほころんだ。
こうして千翡露が楽しそうにしていると、出会った時よりも
ずいぶん表情が豊かになったと感じる。
今までは、嬉しい時や寂しい時も、飄々とした顔で心の動きをあまり表さなかった千翡露が
無防備に微笑んでいるのは、嬉しいような寂しいような気がした。
「ん、ラグ君どうしたの?」
「……何でもない」
静かに向けられる視線に千翡露が問いかけると
スマラグドは口元に笑みの気配を残したまま、緩く首を振った。

あれがいい、と、千翡露が指した空中ブランコに乗り込む。空中ブランコは、水をイメージした造りをしており、『ウォーター・ブランコ』と名付けられていた。
「ひゃー、空中ブランコ高いねえ」
「あーあ、子供みたい」
ブランコがゆっくりとつり上げられていくと、はしゃいで地面を見下ろす千翡露に
スマラグドは、少しだけあきれたような顔をして見せる。
歓声を上げる彼女を、子供みたい、だなんて斜に構えて思いながらも
楽しそうならいいけど、と内心で呟く。
籠りがちなインドア派を、連れ出した甲斐もあるってもんだし。
そうこうするうちに、ウォーター・ブランコは、10mほどの高さにまで達し、ゆるやかに回転数を上げていく。
高い場所で、風を切る空中ブランコに乗っていると
空を飛んでいるかのような感覚になる。
このアトラクションは、腰掛ける座板も、手をかけるチェーンの部分も、流水や雫に似た装飾がされている。
白く泡立つさざなみが打ち寄せる海辺のイスや、深山の清流を模した流水のモチーフのイスなど
何種類ものデザインがあり、どれも夏らしく、見ているだけでも目に涼やかだった。
千翡露は、顔に風を受けながら、心地よさそうに目を細める。
「デザインも清涼感あって涼しげだし、爽やかな風を切って気持ちいい」
風の中に紛れてしまいそうな声に、スマラグドも目を細める。
夏の日差しに、額をうっすらと汗ばませていた千翡露が、涼んでるならいい。

遊園地らしいランチを終え、満腹になった二人は、マーメイド・レジェンディアのアトラクションを、遊びつくす勢いで歩き回った。
「少し疲れたね……」
スマラグドは疲れを見せて、小さく息を逃がす。
日が傾いてきたとはいえ、広い園内すべてを見て回れたとは言い難い。
疲れていても楽しめるような、次のアトラクションを探していた千翡露は、観覧車に目を止める。マーメイド・レジェンディア全体を一望できる観覧車、ブルーム・フィールだ。
「次は……、あ、観覧車乗ろう!きっと日が沈むの綺麗だよ」
「ん、観覧車?」

乗り込んだゴンドラにも、斜陽は差し込み、二人の視界に金色のヴェールをかける。
ゴンドラが高く昇っていくにつれて、開けていく景色に目を奪われている千翡露は、窓際に身を寄せて、観覧車からの景色は格別、と言わんばかりに目を輝かせている。
「丁度、日が沈み切る頃だね。こういう色の移り変わりも悪くないかも」
スマラグドは言う。
瑞々しい葉を茂らせる園内の街路樹や、アトラクションのカラフルな色彩、
マーメイド・レジェンディアの中心にそびえ立つ古城も
今は、金色や、濃いオレンジや、艶のある焦茶色に染まり、真昼とは違う世界に見えた。
こうして、世界が映す『色』を見るようになったのは、千翡露の影響なのだろう。
彼女と出会う前の世界の『色』は、
今となってはぼんやりと遠い世界のように感じられた。
物思いに浸りそうになったスマラグドに、千翡露が弾むような声で呼びかける。
「あ、あっちに月光華が見えるよ!降りたら行ってみよう」
「ああ……。うん、行こうか」
スマラグドを振り返る千翡露に、夕陽が降り注ぎ、妖精の粉を浴びたかのようにきらきらと輝いて見える。
示された月光華の群生地の方へと視線を向けながらも、スマラグドの返事は
どことなく夢心地であるかのように、ぼんやりと響いた。

月光華を楽しむために作られた石畳の道、ムーンライト・ロードに立った千翡露もスマラグドも
光を発するかのような月光華の白さに、思わず声が零れる。
「わ、冷たいくらいに真っ白だね。少し青白い感じで、眩しいくらいだ。
 こういうの、ちひろ好きそうだもんね」
スマラグドが手放しで褒めるのもそのはず。
真昼の日差しを浴びても、その白さをくすませることがなかった月光華は、夜の闇の中では花弁の白さを増すように咲き乱れていた。
ほう、と溜息をつくように千翡露も言う。
「近くで見るとまた壮観だね……。月の光で白く透き通ってきらきらして」
さざなみの音を乗せた風が吹き寄せて、月光華を一斉に揺らすと
千翡露の緑掛かった黒髪も掬い上げられるように、ふわりと夜風に舞った。
「夜風も冷たいし、気持ちが澄んでいくみたい」
千翡露は、言葉を切って涼しい風を受けながら、手元の白い花弁に柔く指を遊ばせていたけれど、ぽつり、と零した。
「……あのね、ラグ君、私ずっと考えてたんだ。
 私、全部なくした日から、孤独だった」
「……ちひろ?」
抑揚をおさえた声が、思いを語り始める。
これはきっと、言葉にならないまま、ずっと彼女の心の中にあったこと。
スマラグドが千翡露の表情が知りたくて呼びかけると
彼女は、伏せていた顔を上げ、眉を下げて小さく笑う。
「保護施設でも絵の勉強ばっかりで。
 いつかウィンクルムになるんだとしても、どうでもよかった」
自分の『これから』さえ、諦めかけていた。
絵の勉強、という、興味のあることで、思考を埋めるだけだった。
自らの空虚を知ってはいても、それを癒すことはできていなかったのだ。
「でも、ラグ君はずっと私を気遣ってくれて
 同じペースで歩いてくれた、心に寄り添ってくれた。
 だから、ラグ君だけは『特別』なんだって思ったの」
日向に置かれた花が、日差しの温もりに花弁をほころばせるように
凍り付いていた泉が、春の訪れに氷を緩ませるように
答えは、時の流れに導かれていつの間にか、そこにあった。
スマラグドは黙ってすべて聞き終えると、掠れそうになった声で問いかけた。
「……それは、あの日の答えって取ってもいいの?」
冬のあの日、スマラグドは千翡露に言った。

『ちひろを、一人にしない』
『いつだって、何処にいたって』

あの日の声が、再び耳の中で響いて、千翡露は小さく頷いた。
「好きだって言ってくれて、嬉しいって今は解る。
 ……改めて、これからよろしくお願いします」
微かに頬を染めて、伏し目に頭をぺこりと下げる。
言われたことの意味を理解すると、スマラグドの顔がじわじわと赤くなる。
顔も耳も、火照る熱を持っていく感覚に、声を発せずにいた。
いくら夜でも、この距離の千翡露から見れば、顔の赤みは分かってしまうだろう。
「……あー……。
 どうしよう、いざ言われたら照れる」
こうして、彼女の心を受け取れる時のことを、何度思ったか知れない。
けれど、好きな子から告白の答えをもらって、落ち着いていられるわけもない。
千翡露の心が自分に向かって開かれる時を、スマラグドは、彼女に静かに寄り添って待っていたのだ。
「でも、うん、やっぱり嬉しい。あー……やっとかあ」
照れ隠しに、頭をぐしゃぐしゃと掻いて、溜息をつく。
顔を上げ、真直ぐに千翡露を見て、スマラグドは声に力を込めた。
「僕、いや、俺には、ちひろの過去を上書きなんか出来ない。
 嬉しかった事も辛かった事も、ちひろのものだし。
 でも、一緒に未来を描いていく事は出来る」
一緒にいる、と、約束するように口にする。
どちらともなく伸ばした手が、いつかのように結ばれる。
「……こっちこそ、よろしく」
額を寄せ合って笑うと、互いの微笑みが
月光華の白い瞬きにも負けないような輝きになって視界に満ちる。
指を絡め、解けることなどないように、手を握り合う。
手のひらが重なり合うのと同じように、想いも重なる。

いつだって、何処にいたって、独りになんてしないよ。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 都成 GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:鬼灯・千翡露
精霊:スマラグド
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2017年5月13日

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