八神 伊万里の『ウィンクルムだらけのサマードリーム!』
北乃わかめ GM

プラン

アクションプラン

八神 伊万里
(アスカ・ベルウィレッジ)
(蒼龍・シンフェーア)

キャンプなんて久しぶり!
今日は楽しもうね、二人とも
まずは腹ごしらえと早速バーベキューの準備に取り掛かろうとしていたら、また張り合ってる…
ちょっと待った!
そうじゃなくて、私も参加します
やるからには負けないからね
賞品?それじゃあ…優勝者はバーベキューの準備と焼くのを免除で
…負けちゃった
悔しいけど、さすがアスカ君だね
分かったそーちゃん、準備しようか

アスカ君に上手く焼けた串と飲み物を差し出し

夜は三人で砂浜で星を見る
冬の空も澄んでて綺麗だったけど、夏の空はまた違った雰囲気で素敵
天の川の白い所、あれも全部星なんでしょう?
七夕の伝説はロマンチックだけど、実際は何光年も離れてるんだよね
それを考えると、私達が出会って、こうして話ができる距離にいるのはすごい確率なんだろうな
二人とも、私と出会ってくれてありがとう

何だか眠くなってきちゃった
私はコテージに戻るけど、二人はどうする?
うん、それじゃあおやすみなさい

リザルトノベル

 青い海、白い砂浜、照りつける太陽――には目もくれず、二人の精霊は大きな麦わら帽子をかぶった神人に釘付けだった。
 八神 伊万里はいっそう強い日差しを仰ぎ、「いい天気!」と目を細める。

「キャンプなんて久しぶり! 今日は楽しもうね、二人とも」

 満面の笑みで振り向いた伊万里に笑みを返す蒼龍・シンフェーアと、照れくさそうに頬を掻くアスカ・ベルウィレッジ。
 三人は今日、美しくきらめく海岸『ゴールドビーチ』に訪れていた。タブロス市内ではお目にかかれない南国の風景に、太陽にも負けないくらい伊万里の胸は熱くなっていた。

「じゃあ、まずは腹ごしらえを……」

 ゴールドビーチまで長距離での移動だったということもあり、お腹もすいているだろうとビーチに常設されているバーベキューコンロに近づく伊万里。
 さて準備をしようと、二人を振り返ると――

「海だ! 泳ぐぞ! というわけで勝負だ!」
「水泳対決かい?」
「そうだ。勝った方が夜、伊万里と二人で砂浜デートできるっていうのはどうだ?」
「いいよ、受けて立つ!」

 打ち寄せる波を前に、対峙するアスカと蒼龍がいた。熱い火花を散らせる二人を見て、「また張り合ってる……」とため息を吐く。二人がただ競い合っているのではなく、自分を想ってのことだとわかっている分、強く言えない部分もあるのだが。

「あの岩を折り返して、先に戻ってきた方の勝ち。それでいいか?」
「むむ、微妙に僕に不利な条件だけど引き下がるわけにはいかないね。やろうか」

 砂浜から15メートルほど離れた場所にある岩を指さすアスカ。往復30メートル、スポーツの得意なアスカの方が有利とも思えるが、蒼龍はそれを承諾した。
 とんとん拍子に話は進み、二人は準備体操を始めようとしている。そこに、伊万里が「ちょっと待った!」と声をかけた。

「ん? 何イマちゃん、これは男と男の勝負だから、いくらキミの頼みでも……」
「そうじゃなくて、私も参加します」
「え? イマちゃんもやるの?」

 目を丸くする二人に、伊万里は麦わら帽子を脱いで準備体操に加わる。
 強く頷いた伊万里の瞳は、真剣勝負を前に熱く燃えていた。もしかしたら、二人の熱意に感化されたのかもしれない。

「やるからには負けないからね」
「……そうだった、伊万里って勝負に熱くなるタイプだった」
「ホント昔からそういう所は変わってないね」

 堂々と宣言され、逆に清々しくなり蒼龍は思わず笑ってしまった。
 しかしここで問題が発生する。伊万里が勝った場合だ。砂浜デートの権利が無くなってしまうではないか、と心配するアスカに、伊万里はうーんと思案する。
 そこに、先ほど準備しようとしていたバーベキューコンロが目に入った。

「それじゃあ……優勝者はバーベキューの準備と焼くのを免除で!」

 どう? と問いかける伊万里。
 勝って砂浜デートができる上に、美味しい食事も待つだけでいいなんて。かなりの好条件ではないかとアスカと蒼龍は顔を合わせる。

「OK、そのルールで行こう!」
「まあ二人がそう言うなら、いいけど」
「よーし、決まりね!」

 言いながら、三人は充分に準備体操を終えた。コバルトブルーの海を前に、伊万里を挟んで三人が立つ。
 濃紺と、若紫と、茜色。グラデーションのように三人の水着が並ぶ。伊万里の合図でスタートすると決め、位置に着いた。

「よーい……ドン!」

 合図を出した伊万里が、二人よりも一歩早く海に入る。バシャバシャと大きく水しぶきを上げながら、水面が胸に近づいた辺りで一気に砂を蹴り、泳ぎの体勢に入った。
 伊万里に負けず劣らず、アスカも蒼龍も負けず嫌いである。伊万里とのデート権がかかっているのだから、なおさらだ。負けられない、と全力で腕を動かす。
 三人ともクロールで穏やかな海を掻き、追い上げたアスカが目印の岩にたどり着く。綺麗にドルフィンキックを決め、引き離しにかかった。

「――っはぁ……! やった、俺がトップ!」

 必死に追いつこうとした伊万里と蒼龍だったが数歩届かず、一番にアスカが砂浜に足をつけ立ち上がった。勝利に片腕を振り上げるアスカ。大きく肩を上下させ、アスカも全力だったのだとわかった。
 蒼龍と、少し遅れて伊万里が砂浜に戻ってきて、同じように深く呼吸を繰り返しながら息を整えた。

「……やっぱり運動じゃアスカ君には敵わないねえ」
「負けちゃった……悔しいけど、さすがアスカ君だね。おめでとう!」

 蒼龍と伊万里に賞賛され、アスカは頬をやや赤く染める。ふふん、と胸を張るが、びしょぬれの尻尾は嬉しそうにゆらゆらと揺れていた。

「優勝はいただきだな――」
「それじゃあ準備は僕とイマちゃんが『二人っきりで』、『仲良く』、やることにするよ」
「えぇっ!? ず、ズルいぞ蒼龍!」

 にやり、と伊万里の見えない位置で意地の悪い笑みを浮かべる蒼龍。アスカの猛抗議もさらりと受け流し、行こうか、と伊万里の肩を押す。伊万里はアスカの焦った様子に首を傾げながらも、蒼龍の言葉に頷いた。



 想定外だ、と落胆するアスカ。体を休めるためデッキチェアに座っているが、その視線は背を向けている伊万里と蒼龍に向けられている。
 野菜を大きめに切ってしまったと照れ笑いする伊万里と、全然問題ないよと爽やかにフォローする蒼龍。面白くない、と素直に思う。

(くっそー、次は負けるか……でもわざと負けるのは嫌だしな……)

 勝ったはずなのに悶々と頭を抱えるアスカ。これでは、どっちが優勝したのかわからない。伊万里と楽しく食事の準備はしたいが、手を抜くのはアスカの信条に反した。自分が負けそうな勝負を挑むのも、何か違う気がする。
 どうすれば伊万里と二人っきりになれるんだ……! と思い悩んでいると、肉の焼ける香ばしい匂いが漂ってきた。そろそろ出来上がりかと顔を上げる。

「アスカ君。はいどうぞ、上手く焼けたよ!」
「え、いいのか?」
「もちろん。アスカ君、水泳頑張ったから。飲み物もあるよ」

 分厚い肉と野菜が交互に刺された串と、氷水で冷やされた缶ジュースを手ずから渡される。しかも、伊万里の笑顔とセットという嬉しいオプション付きだ。
 まさか準備免除だけでなく、伊万里直々に給仕をしてくれる特典が付くなんて。

「優勝してよかった!」

 串に刺さった肉を頬張りながら、アスカは歓喜に震えた。よかったねと伊万里が朗らかに笑ったが、おそらくアスカの心情を正しく理解できたのは一連の流れを見ていた蒼龍だけだろう。
 これくらいは花を持たせないとね、なんて思いながら、蒼龍は手際よく肉を焼いたのだった。



 その後も三人は、時間を忘れてゴールドビーチを大いに楽しんだ。バナナボートをどういう順番で乗るかでまたひと悶着あったり、シュノーケリングでのんびり海を漂いながらサンゴ礁を楽しんだり。
 夕暮れ時には、黄金に輝く美しい海を眺め、三人のこれからに想いを馳せたりして。
 やがて日は海に沈み、空は満天の星を散りばめその姿を変えた。大小さまざまな輝きを放つそれらを見上げ、伊万里は二人に笑いかけた。
 三人で星を見よう、と。

「また三人で天体観測だね」

 蒼龍の言葉に、伊万里がそうだねと返す。
 昼間と同じように伊万里を挟んで並び、砂浜に座る三人。水泳対決に勝ったのはアスカだが、その際のデート権が行使されることはなかった。バーベキューのときに伊万里に給仕してもらい、たいへん満足したというのが大きな要因だが。
 空を見上げる伊万里を見て、要望を叶えてよかったと感じる。

「月もいいけど、やっぱり星空もいいなあ」
「冬の空も澄んでて綺麗だったけど、夏の空はまた違った雰囲気で素敵。天の川の白い所、あれも全部星なんでしょう?」

 市内のような余計な明かりがない分、より光を放って見える星が流れる天の川を指差す伊万里。
 空を横切る大きな流れは星の集合体で、白っぽく見える川の淵もすべてが星の輝きでできている。その果てしない存在に、伊万里はうっとりと目を細めた。

「そうそう、夏にも大三角があるんだよ。こっちは正三角形じゃないけどね」

 夜空を見上げながら蒼龍が言う。
 思い出したのは、同じように三人で見上げた聖なる夜の空。オリオン座と、おおいぬ座とこいぬ座。それぞれの1等星が描く大三角。
 自分たちの関係と重ねたあの日の三角形と、今度は見上げている夏の大三角に重ねてみる。夏の大三角は細長く、確かに冬とは違った。

「あ、その話は知ってるぞ。七夕の伝説だろ?」
「七夕の伝説はロマンチックだけど、実際は何光年も離れてるんだよね」

 デネブ、アルタイル、ベガ。蒼龍が名前を言いながら指し示す。それらを見ながら思い浮かぶのは、やはりアスカが口にした伝説だった。
 彦星のアルタイルと、織姫のベガ。一年に一度しか会うことが許されない二人。会えない日には遠くにいる恋人を想い、たった一日の逢瀬を待ち続ける。
 実際の星の距離からして見れば、とても一日では会いに行けない距離だ。

「それを考えると、私達が出会って、こうして話ができる距離にいるのはすごい確率なんだろうな」

 夜空の星から、両隣に座るアスカと蒼龍を順番に見つめる。
 数えきれない人の中から、同じ時間、同じ場所に生きて。隣り合って話をする、その確率は。果たしてどれだけ途方もない数字なんだろうと思うと、今この瞬間がかけがえのない尊い時間なのだと実感した。

「――二人とも、私と出会ってくれてありがとう」

 愛しい、そんな思いの込められた伊万里の言葉に、アスカは星を見上げたままで。蒼龍ははにかんで、こちらこそと笑い返した。



 しばらく蒼龍が教えてくれる星の話に耳を傾けていた伊万里だったが、昼間存分に体を動かしたせいか瞼が重くなってきた。

「伊万里、大丈夫か?」
「うん……何だか眠くなってきちゃった」

 穏やかな蒼龍の声が、眠りをさらに誘ったのだろう。心地よくて、寝転んでしまう前にと伊万里は立ち上がる。

「私はコテージに戻るけど、二人はどうする?」
「僕はもうちょっと星を見てるよ。おやすみ、イマちゃん」
「うん、それじゃあおやすみなさい」

 あくびを噛み殺し、服についた砂を払う。蒼龍が手を振ったのを見て、伊万里も同じように振り一足先にコテージに戻った。
 伊万里の背中を見送り、アスカもぐっと伸びをする。

「俺もそろそろ寝ようかな……」
「ねえ、アスカ君」
「ん? 何だよ? また星座の話か?」

 伊万里ひとり分の隙間を空けたまま、蒼龍がアスカを引き留めた。浮かせた腰を下ろしたアスカの問いに、違うよと答えてから、言っておきたいことがあると前置きをする。
 神妙な面持ちの蒼龍に、アスカは居住まいを正して蒼龍の横顔を見つめた。

「絶望した精霊が、オーガやギルティになるって話があるだろ? もし本当なら、僕はちょっと危ないかもしれない」
「……は?」

 突然の言葉に、アスカは目を丸くする。何を言ってるんだと言う前に、黒曜石に似た瞳がアスカを見据えた。

「だから、僕に何かあったらイマちゃんを頼むよ」

 ウィンクルムとして任務をこなす中で、何度も耳にした話。それを聞くたびに感じていた不安。
 ――もし、自分がそうなってしまったら。
 そのとき伊万里が頼れるのは、きっとアスカしかいないから。

「言われなくても、伊万里は俺が守る。精霊とかウィンクルムとかじゃなく、俺がそうしたいからだ」

 一度は驚いたアスカだが、すぐにそう言い切った。まっすぐに向けられた言葉に、今度は蒼龍が目を見開く。
 話を聞く限り、おそらくどの精霊でも有り得る話だ。理不尽な事態にどうすることもできず、この世を恨んで絶望して、いつしかその姿すら変えてしまって。それが怖くないのかと、疑問すら湧いた。

「……強いね、キミは。絶望したこととか、ないわけ?」
「……怒りはある、けど、絶望はしてない。いや……できないのかもしれない」

 アスカはふと夜空に視線を戻した。絶えず輝く星は、変わらず二人を見守っている。
 デネブ、アルタイル、ベガ。それからあの日見上げた冬の大三角。伊万里と、アスカと、蒼龍がいて成り立つ三角と、よく似ている。

「俺は前に進み続けなきゃいけない、そんな気がして」

 だから、絶望なんてしない。
 そう言い切ったアスカは、もう寝ると言って今度こそ立ち上がった。おやすみ、と言い合ってから、アスカはコテージに戻っていった。
 意外だったアスカの答えに、蒼龍は空を仰ぐ。きらきらと輝く大三角に伊万里とアスカの笑顔が見えて、蒼龍は目を閉じた。
 夜はまだ明けない。輝く星々は、どこか励ましているようにも見えた。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 北乃わかめ GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:八神 伊万里
精霊:アスカ・ベルウィレッジ
精霊:蒼龍・シンフェーア
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2017年5月13日

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