ニーナ・ルアルディの『ウィンクルムだらけのサマードリーム!』
梅都鈴里 GM

プラン

アクションプラン

ニーナ・ルアルディ
(グレン・カーヴェル)
(カイ・ラドフォード)
14

カイ君、ちょっと遅れちゃいましたけどお誕生会しませんかっ?
だってカイ君ってば勉強が忙しいとかで最近お話できてませんし…
もうっ、グレンばっかりカイ君と楽しそうにしてずるいです!

見てくださいっ!じゃーん!
はい!ワインです、色がとても綺麗だったので買っちゃいました!
そういえばやっとお酒が飲めるようになったんだなーって思いまして。
…あの、ところでグレン、これどうやって開ければいいんですか?

カイ君何だか静かです…
あの、無理矢理連れて来ちゃって迷惑…でしたか?
カ、カイ君が素直に接してくれてる気がします…!
もっとお姉ちゃんに甘えてくれていいんですよーっ!

カイ君は寝ちゃいましたかー
何だか頭がふわーってして不思議な感じですねー
楽しいけど、危ないからしばらくは家で飲んで慣れないとですねー
…へへー、グレン隙ありです、ぎゅーですー

グレンのお部屋で待ってればまた会えますよねぇ
…よし、今日はそっちで寝ましょう!

リザルトノベル

「カーイ君っ!」
 何やらご機嫌な少女が、同じ髪色を持つ少年の前へ、ぴょこんと跳ねる様に飛び出た。
「ちょっと遅れちゃいましたけど、お誕生日会しませんか?」
 神人、ニーナ・ルアルディは。
 精霊であり双子の弟である、カイ・ラドフォードにそんな提案を投げかけた。
 一瞬あっけに取られて、けれど姉の隣に並び立つもう一人の精霊、グレン・カーヴェルを見て、すぐさまハッ! と我に返ったカイは、あわてた様に声を上げた。
「ニーナの提案が突拍子ないのはいつもの事だけど、今回は一体何!?」
「聞こえなかったのか。『おたんじょうびかい』だ」
「俺はニーナに聞いたの! そ、それに今更誕生日会ったって、もうだいぶ過ぎてるし……」
 突然の誘いがなんとなく気恥ずかしい。視線を泳がせしどろもどろ口ごもるカイに、ニーナは眉をへにゃりとハの字に下げた。
「だってカイ君ってば勉強が忙しいとかで、最近全然お話出来てませんし……」
「姉ちゃん……」
 しょぼ、と分かりやすくしょぼくれる姉に、カイは狼狽する。
 確かにここ数日ずっと自宅にこもりきりで、まだ定まらない進路のこともあって、ひたすら参考書や教科書と向き合う毎日だった。
 肩を落とすニーナに戸惑うカイ。埒のあかない二人の姉弟を見て、はあ、とひとつグレンは嘆息すると、カイの首根っこを子猫よろしくひっ摑んだ。
「いっ!? なにすっ」
「時間がないからな。ほらとっとと行くぞー」
「コラ! 引きずるなグレンっ!」
「俵抱きの方がいいか?」
「ちっがう! こんなのおーぼーだっ! 誘拐と変わんないぞっ!」
「そう言うなよ、可愛いお姉ちゃんからのお誘いだぞ。ちなみに今回もお前に拒否権はない」
「またこのパターンかよおぉっ! ほんっとあんたってば変わんないね!?」
「ははは」
 いつぞやのクリスマスと全く同じ状況に不服を喚き立てるカイと楽しそうなグレン。
 気がつけばニーナだけ置いていかれていて「もうっ、グレンばっかりカイ君と楽しそうにしててずるいですー!」とあわてて後を追えば「いや楽しくないから!」とすかさず突っ込みが返った。
「そんなに嫌ならやめとくか?」
 前回も無理矢理誘っちまったしなぁ、とグレンが不意に足を止める。
 突如消えた強引さに、えっ、と意表を突かれるも、そわそわと心許なさそうな姉の顔を見てしまうともうダメだった。
「……いや別に行かないとは」
 不服そうな顔にも照れを浮かべて「言ってないけど」と続ければ、ニーナの表情がぱぁっ! と輝いた。
「そうと決まれば! 善は急げですよっカイ君!」
 なんだか上手いこと丸め込まれた感が否めなかったけれど、二人に引きずられる様にして、カイは誘われるまま彼らの住処へ到着した。

* * *

「見てくださいっ! じゃーん!」
 ゴソゴソとキッチンの棚からニーナが取り出して来たものを、両手で持ってお披露目した。
 透ける深緑色の瓶に揺れる真紅色の液体。
 瓶の首には黄色いリボンがあしらわれていて、今日のためにラッピングしてもらったものだろうと推測出来た。
「……お酒?」
「はいっ、ワインです!色がとっても綺麗だったので、買っちゃいました!」
「へえ。何か大事そうに棚にしまい込んでると思ったら、それだったのか」
 グレンが感心そうにしげしげとラベルの銘柄を見つめる。
 ヴィンテージものだろうか、刻まれた年月は随分前のもので、それでいて洗練された美しさを損なわない、上質なワインだ。
「そういえばやっとお酒が飲める歳になったんだなーって。カイ君のお祝いにも丁度いいですよね」
 早速蓋を開けようとコルクスクリューを取り出す。
 が、そこからどうしたら良いのかがニーナには分からない。
 螺旋状に伸びた金属の針とにらめっこして、そう考えない内に音を上げた。
「……あのぅ、グレン」
「なんだ」
「これ、どうやって開ければいいんですか?」
 当然の様に助けを求めてきたニーナに、はいはい、とさして迷惑そうでもなく苦笑して。
「開けてやるから、二匹ともいい子にそこで待ってろ」
 コルクスクリューを受け取ると、手際よく針をねじ込み始めた。
 中ほどまで差し込んで、後はテコの原理で引き抜くだけだ。理解していれば難しいものでもないけれど、確かに力が必要かもしれない。
「わ、わー! すごいです! どんどん抜けていきますねぇ!」
「慣れればそう難しいもんでもないさ。よっ、と。ほら抜けた」
 ポン、と軽い音を立てて引き抜けたコルクには作り手や樽の銘柄が刻まれている。
 感情を素直に出してはしゃぎ立てるニーナとは対照的に、椅子に座ったまま、二人の様子を所在無さげに見ていたカイをグレンは見遣る。
 記念に取っとくか? と聞けば、そこ置いといて、と視線を斜め上に泳がせた。

(カイ君、なんだか静かです……)
 あまり、自分から話を切り出さないカイの顔色を、横目で不安そうにニーナは伺う。
 グレンが気を遣ったように、手洗い行ってくる、と席を立ったタイミングで、ひょいっと顔を覗き込んだ。
「あの、無理やり連れて来ちゃって迷惑……でしたか?」
「えっ?」
 不安げに揺れる紺碧色に、ハッと我に返って。
 主役として呼んでもらったにも関わらず、思いのほか肩肘に力が入っていた事にカイ自身、やっと気付いた。
「いや……そんな事ないよ。不思議な感じではあるんだけど」
「不思議?」
「……あのさ、俺、こんな風にニーナと話せる日が来るなんて思わなかったから」
 苦笑して、つらつらとカイは心境を語り始める。
 適量アルコールが入っていることもあってか、いつもより幾分饒舌だ。
 全てを伏せていたあの頃は想像もしていなかった。けれど、心の奥底では望んでいたのだということ。
 過去をニーナと共に追想したあのとき、苦しかったけれど、思い出せてもらえてよかった、と。
「だから今日、二人が誘ってくれたのも、結構嬉しかったんだと思」
 う、の瞬間には、カイ君っ! と叫んだニーナが首に抱きついていた。
 あやうく体勢を崩しかけるも、片手に持ったワイングラスを零さないように、慌ててバランスを取った。
「カイ君が、素直に接してくれてる気がします……!」
「くっ、首、くるしいっ! ねえちゃん、ちょっと離れてっ……!」
「もっとお姉ちゃんに甘えてくれていいんですよーっ!」
「ぐえ、落ちるっ、落ちちゃうっ……!」
 バンバンとテーブルをタップしギブアップを示すが、感動に打ち震えるニーナの腕は全く緩まない。
 二人が仲睦まじく――半ば一方的ではあるが――じゃれあっているのを、部屋の隅で壁に凭れて見遣りつつ、グレンは微笑んだ。
(……カイの奴も臆病だから、こうして無理にでも機会作ってやらないと、絶対会いに来なかっただろうしな)
 普段、面白おかしくからかっては遊んでいる、いつか義理の弟となるであろう存在。
 ニーナが大切に思い、思われているその弟分が、グレンにとっても可愛くないわけがない。
 普段は互い、ウィンクルムとしての仕事や進路における勉学で忙しい身だから、今日こういった形で会話を交わす場を設ける事が出来て、とても満足している。
 見ていて飽きない二人とほろ酔いの心地良さに身を任せ、グラスの底に残った紅色を一息に呑み干した。

「カイ君、寝ちゃいましたね」
 宴もたけなわ、とっぷりと夜闇が空を包んだ頃。
 散々姉夫婦――予定、の二人に遊ばれた末、今はころんと床に転がって、すやすやと気持ち良さそうに寝息を立てているカイの頬を、ニーナは指先で突いた。
 全く起きる気配がないのをいいことに、普段はゆっくり見せてくれない顔を、いとおしそうに見つめる。
 双子というだけあり、瞳の色も、髪の色も、造形もほとんど変わらないのに、弟だということを思い出してからは一層可愛く見えるものだ。
「お前があんだけじゃれつきゃ、当分寝てるだろうなぁ」
 テーブルの上をざっと片付けて、瓶に残った残りの一杯分をグラスに注ぎつつ、グレンが答える。
 ソファでくつろいでいるグレンの隣にニーナも腰かけ、自分のコップを両手で持ったまま、こてんと彼の肩に頭を預けた。
「ふふふ。なんだか頭がふわーっとして、不思議な感じですねー」
 ふわふわ、ふらふら。酩酊状態のニーナをいなしつつ、ぼんやりとグレンは過去を思い出していた。
(……まあこの酔い方は予想出来てたが)
 タチの悪い池の効果で、あの時の彼女は今よりもっと大変な事になっていた。
 普段から中型犬のように人懐っこいニーナだが、酒が入ると更にその性質がより危うい方向に増す気がする。
「楽しいんですけど、危ないからしばらくは家で飲んで慣れないと、ですねぇ」
「ダメだ。お前は慣れても外飲み禁止」
「えー? つまんないですよぅ。わたしだって、お友達と呑みに行ったりしたいですぅ」
 ぷぅ、と頬を膨らませたニーナを「はいはい、俺が同伴の時限定な」となだめたら、またにぱっと花が舞った。
「えへへ。なんだかんだゆってわたしに優しいから、グレンのことだいすきですー」
「……こう積極的なのは歓迎なんだがな」
 瞳が随分と虚ろな彼女に、これ寝て起きたら覚えてないやつだなと苦笑して、一つ額にキスをしておいた。

「……さて、さすがにカイの奴をこのままにしておく訳にもいかないし」
 ソファにでも転がしておくか。そう言うと、先程の強引な引きずり方ではなく、起こさないようそっとカイの体を抱えた。
「へへー。グレン隙ありです、ぎゅーですー」
「こーら運んでる時までじゃれるなニーナ。お前は先に部屋行って寝てろ」
「はぁい」
 そっけない態度に一応返事はしたものの、ニーナはまだまだ、もっとグレンとお話をしたいのである。
「グレンのお部屋で待ってれば、またあとで会えますよねぇ」
 よし、今日はそっちで寝ましょう! 勝手に決めてしまうや否や、彼の部屋へぱたぱたと駆けて行くニーナにグレンも気付き、慌てて手を伸ばしかけたら肩からカイがずり落ちそうになった。
「おい待てそっちはお前の部屋じゃないっ!」
「カイくんのこと、おねがいしますねぇー」
「いや寝かせたら俺も寝るからっ……! ってああもう、本当に手のかかる双子だなお前らっ!」
 頭を抑えカイを抱え直しつつ、保護者みたいな今の状況が嫌なのかと問われれば決して満更でもない。
 自身の心境に苦笑いして、カイをソファへ転がした後は、ニーナもしっかり寝かしつけてやった。

 * * *

「うぅ、頭が痛い……」
 カイが目を覚ますと、ソファに転がされ薄手の毛布をかけられていた。
 飲んでからの記憶が殆どない。こんな所で行儀良く寝こけたはずはないだろうし、ニーナに運んでもらったとも考えられない。ともなれば介抱してくれたのは一人しかいない訳で。
 思い至った結果にげんなりした。自分が思いのほか、酒に弱いとわかったのもちょっとショックだった。
「おう、起きたか」
「グレン……」
「すっかり寝落ちてたし、悪いが運ばせてもらった」
「……屈辱」
 泥酔してしまった挙句、嫌いな男に運ばれただなんて。
 とはいえ綺麗に片されたテーブルやキッチンを見遣るに、年長者のグレンが酔っ払い二人の面倒を見つつ、片づけまで済ませてくれたのだろうとは容易に察する事ができる。
「でもその……ありがとな」
 ガンガンと痛む頭を抑えつつ、視線は逸らしたまま、カイはぽつりと独り言のように呟いた。
 ニーナはグレンのベッドで寝ているし、礼を告げる相手は彼しかいない。
 言われた方はきょとんと一度呆けて、次にはにっと意地悪く笑って見せた。
「……素直だな。酒のせいか?」
「あのね、面倒みてもらっておいて何も言わないほど俺は薄情じゃないの! 片付けとか、全部やってくれたみたいだし……」
「酔い潰れちまった今日の主役にやらせるほど俺も非情じゃないさ」
「うぅっ……と、とにかく。礼はちゃんと伝えたから。貸しにしたくないし」
 本当にそれだけだからな! と念を押すカイにグレンはうんうんとわざとらしく相槌を打つ。
「そうかそうか。ま、俺も未来のお前のオニイサンだからな。弟の面倒見るくらいわけない」
「あーっ! それ言われるとほんっと腹立っ……ああぁ、怒鳴ると頭いたいぃ……っ!」
「ははは。ま、素直に休んどけ。二日酔いはしばらくしんどいぞー」
 カイのうなり声とグレンの楽しそうな笑い声を聞いたニーナが寝所でむにゃ、と小さく身じろいで「カイくんもグレンも、だいすきですよぉ……」と、満足そうに微笑んだ。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 梅都鈴里 GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:ニーナ・ルアルディ
精霊:グレン・カーヴェル
精霊:カイ・ラドフォード
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2017年5月13日

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