(イラスト:彩 IL


リチェルカーレの『ウィンクルムだらけのサマードリーム!』
蒼色クレヨン GM

プラン

アクションプラン

リチェルカーレ
(シリウス)
10

星空を飛んでいるみたい!
映画のワンシーンのように 帆先で両手を広げる
落ちないように支えてくれる力強い腕に 頬が熱く
…あ 優しい顔してる
安心して背中に体重を預け 海に視線を

静かね 時が止まったみたい 
シリウスも のんびりできる?
ちょっと憮然とした声にくすりと笑い
ー今夜は ずっと一緒にいましょう?
シリウスの動きが止まったのに ?を浮かべ
あのね 一緒に星を見たりとか波の音を聞いたりとか… 
優しい時間が過ごせたら あなたも夜が嫌じゃないかなって
なあに?わたし 変なこと言った?

…じゃあ 何が怖いの?
ぽつりと零された言葉に 
涼しい顔の奥に隠れている 苦し気な表情が見えた気がして
少しでも楽になるよう 彼の頬に触れる
だったら 今日はわたしも眠らない
ふたりでお喋りしていたら 何も怖くないでしょう?
だから笑って

落ちてきたぬくもりに真っ赤
シリウス…?
小さなお願いに ぎゅっと彼に抱き着いて
もちろん
あなたのためになら 朝までだって歌うわ

リザルトノベル

「星空を飛んでいるみたい!」

 真昼の時にはその瞳と同じ色の、澄んだ青空と輝く海原を映していたのが、今やリチェルカーレが見つめる先には太陽と交代した月の灯りを反射する黒い水面(みなも)。
 手すりの台に足をかければ、上下左右、どこを見ても視界に捉えるのは夜空の星と海の星。
 その狭間に、澄んだ嬉しそうな声が響いた。
 自分たちしか乗っていない小船の甲板で、月夜の妖精のようにくるくると動くその動きや表情を、シリウスは眩しそうにそっと目を眇め見守る。伸ばせば手が届く、この立ち位置がすっかり無意識になりながら。
 そんな彼を信頼しているからか、はたまた生来の無鉄砲さゆえか、リチェルカーレは手すりを今にも乗り越えそうな帆先の更に先端で、凛と背筋を伸ばしたかと思うとおもむろに両手を広げた。まるで、映画のワンシーンのように。
 雑音も無い海の真ん中は、それでも時折予期せぬ風が舞い込んでリチェルカーレの長い髪をふわりと浮き上がらせる。
 その瞬間、彼女が風にあおられてしまいそうな、そのまま飛んでいってしまいそうな衝動が起こって、シリウスは慌ててその真後ろからその細い肩をしっかりと支えた。 
 そんな彼の動揺には気付かず、やってきた温もりに嬉しそうに花開いた笑顔が向けられる。
 それを見れば、危ないだろうと言いかけた言葉も負けたように飲み込まれて。星々の光纏った笑顔があまりに無防備に、真っ直ぐに自分へと向けられればシリウスもつられるようにして、普段はあまり動かない口角が微かに上がるのだった。

 ―― ……あ、優しい顔してる。

 自分がその微笑みを生ませたのだとは露知らず、リチェルカーレはその大好きな翡翠の瞳へ笑顔を返してから。
 肩から感じる力強い温もりにそっと頬を赤らめ、視線を正面の海へと戻す。
 心から安心して、背中に体重を預けながら囁くように声を紡いだ。

「静かね、時が止まったみたい。シリウスも、のんびりできる?」
「のんびり……?」

 予期せぬ言葉に、少し首を傾げてシリウスは思考を巡らした。
 そういえばここ最近は集団行動が多かったというか、堕ちた騎士たちを相手にしたり、
 任務外で出かけたとて彼女だけでなく他にも誰かしら居たり。
 今、これほど雑音もなくただただ綺麗だと思える景色の中に、2人だけの時間は久しぶりのように感じた。
 あまりにさり気なく、そして彼女らしい気遣いが含まれていたのだと気付くと、そっと感謝を心で呟きながら。
 リチェルカーレの前でだけまだ見せられる、素直な言葉が自然と口をつく。

「そう、だな……人がいないのはありがたい」

 コミュケーションが下手なのはこれでも自覚している……、そう独り言のように続けば、
 憮然とした彼らしい声色にリチェルカーレの背中からクスリと息が漏れる音がした。



 「―― 今夜は、ずっと一緒にいましょう?」
 「……は?」

 互いの手のひらから、両肩から伝わる温もりに身を委ね、しばし心地よい沈黙の刻を感じた頃。
 あまりに自然な流れでリチェルカーレが言葉を発した。
 いきなり出てきた「今夜は」というフレーズ。シリウスの中では不自然すぎる流れというか動揺するしかない申し出に、反射的に声を漏らしたままフリーズ状態と化す。
 先程までの沈黙時間とは違った、微妙な間と肩に置かれた手のこわばった様子から、小首傾げ振り返るリチェルカーレ。

「? あのね、一緒に星を見たりとか波の音を聞いたりとか……」
「………」
「優しい時間が過ごせたら、あなたも夜が嫌じゃないかなって」

 パートナーとなってから早幾年。シリウス、それがこれまでで何度目かの、リチェルカーレ特有の天然台詞だと気付く。
 何度か経験しているにも関わらず気付くのが遅れたのは一重に、恋人となってからはまた感じ方が違う、その天然台詞への耐性が少なかったためであろう。
 一気に脱力し、彼にしては珍しくも大きなため息をついた後。

「―― 頼むから、俺以外にその台詞を言わないでくれ」
「なあに? わたし、変なこと言った?」
「……いや、いい」

 心臓に悪い、という呟きを喉の奥でどうにか押しとどめた。
 純度の高い水晶のような瞳にきょとりと見上げられ、誤魔化すように、しかし半分は本心である思いを苦笑いと共に口にする。

「別に夜が怖いわけじゃないんだが」
「……じゃあ、何が怖いの?」

 強制でもなく強引でもなく、ただ優しく問いかける青と碧の双眸に促されるようにして、シリウスから言葉が続けられた。

「―― 眠りに落ちる瞬間……、夢に引きずり込まれるような、あの瞬間が、嫌だ……」

 それは彼が垣間見せた本音。
 リチェルカーレには夢の存在を知られているものの、自ら具体的に話すことは今まで避けていた。
 口にすれば夢の全てを認めているようで、そしてそれに負け続けている己を再認識するようで……。
 罰だと思っていても、彼女の前ではどうしてもそんな自分を晒すことは躊躇われて。
 思わず零してしまった本音に、一拍置いて両の翡翠を瞼で隠す。情けなさと後悔が打ち寄せた。

「忘れてくれ。ただの弱音……」

 ぽつりと零された言葉と伏せられた表情を、リチェルカーレは静かに見上げていた。
 ―― やっと、やっと紡いでくれた。
 涼しい顔の奥にいつだって隠している、苦し気な表情。それを無意識や強制的にでなく、彼が自分の意思で伝えてくれたことは、リチェルカーレにとってはずっと願い続けていたことの一つだった。
 海へと向いていた体を反転させて彼と向かい合えば、少しでも楽になるよう、祈るようにしてその冷えた頬に両手で触れる。

「だったら、今日はわたしも眠らない。ふたりでお喋りしていたら、何も怖くないでしょう?」

 『だから笑って』と、落ち込むでも呆れるでもなく、いつもの温かい笑顔を向けるリチェルカーレの、小さな手のひらから頬へと伝えられる温度にシリウスは息を詰めた。
 どうしてこれほどまでに強いのだろう。
 いつだって自分をすくい上げてくれるその指に、覗き込んでくる瞳と同じ色の石が光る指輪が視界に入った。
 ずっと傍にいる、という約束の証を願った彼女へと贈ったものだが、むしろもう手放せないのは自分の方だ ――。
 こみ上げる衝動に突き動かされるように、シリウスは温かな言葉紡いでくれるその唇へ自分のそれを重ねた。

「シリウス……?」

 突然降って来た温もりに驚いて顔を赤らめるリチェルカーレから、シリウスの顔が見えなくなった。
 リチェルカーレ以上に、頬だけでなく機械であるはずの耳にすら熱が走り出した気がして、己が表情見られない様にするかのようにシリウスはリチェルカーレを腕の中に抱きしめていた。

「……歌が聴きたい」

 情けない本音も、どんな自分でも彼女は受け止めてくれる。
 そう信じられたシリウスの心が、少しずつ、頑なな気持ちを解いていく。

「お前の歌なら、優しい時間を運んでくれる」

 クリスマスの物語を子供たちへ歌っていた時も、騎士の為に歌詞を届けていた時も、ずっとどこかで切望していた。
 その声を、歌を、自分にだけ向けてもらえたら、と。
 リチェルカーレにとっては、どんなときも傍にいる彼へと想い込めて歌っていたわけだが、相手の心の機微には疎いシリウスはただそんな彼女を近くで支えていただけの気で。
 本音に続いて、きっと彼にとっては勇気のいった小さなお願い。
 リチェルカーレは切なさと喜びと共に、ぎゅっと彼を抱きしめ返した。

「もちろん。あなたのためになら、朝までだって歌うわ」

 リチェなら本当にやろうとしそうだ……と、シリウスは息だけで笑った。そしてその抱擁に、瞳を閉じてしばし身を委ねていた。

 空と海の星々に挟まれて、さざ波の調べと共に海へ、愛しい翡翠の瞳へ、幸せの歌が響き渡る。
 人魚の加護を受けたその唇から紡がれる音色が、寄り添う二人をまるで母なる海に還ったような、広く温かな風と空気で包み込んでいた。
 闇夜になるたびに、かき乱されていた彼の鼓動はこの夜、その指にて動く機械仕掛けの音と同じように、安定したリズムで静かに胸の内で鳴っていた。
 お互いへの想いがあれば、この先の未来もきっと進んでいける。そう語るように、鼓動と機械仕掛けの指輪の音は重なって彼女の旋律に加わるのだった ――。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 蒼色クレヨン GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:リチェルカーレ
精霊:シリウス
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2017年5月13日

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