(イラスト:ふくろう IL


西園寺優純絆の『ウィンクルムだらけのサマードリーム!』
蒼色クレヨン GM

プラン

アクションプラン

西園寺優純絆
(ルーカス・ウェル・ファブレ)
(十六夜和翔)
14

シエル:幼い頃から仕える30後半のメイド長 旦那様、ユズ様、和翔様呼び

☆過労で倒れ風邪をひいてしまったルーカスを和翔と共に一日看病

パパー朝なのだよー?(ドアノック
んー、珍しいなぁ、こんなに言っても出てこないなんて…
失礼しま〜す
パパ、起き、てっ!?
かっカズちゃぁぁん!
どっどうしようっ!? ってパパ!
そっそんな顔じゃ説得力ないのだよ!?
あっカズちゃん、アヴェルお兄ちゃん、シエルお姉ちゃん!
え、イアンおじ様を?
――風邪…? うん分かったのだよ!
パパ、待っててね! 直ぐに持って来るから!

(直ぐに濡れタオルを持って来て額に乗せる
パパ、大丈夫? 今日一日ユズ達が看病するからね!
イアンおじ様が来たらちゃんと見てもらうんだよ!

(厨房でお粥作り
此処は王道の卵と梅のお粥にしよう!
カズちゃんも一緒に作るよ!

(作り終わったら持って行き看病
カズちゃん、パパ? どうかした?
まぁそれよりお粥食べて早く良くなってね、パパ!(ニコ

リザルトノベル

 木目模様の温かさ感じる壁、落ち着いたシックな色の絨毯が敷かれた先にあるベッド。
 カーテンの隙間から漏れる朝日がちらちらと、ベッドの上を行ったり来たり。
 いつもであれば、その明るさに気付き自然と起き上がるはずのこの部屋の主だが、微かに布団が動いただけでその姿はまだ見えない。
 傍の棚に立てかけてある写真へとする、『今日も良い朝ですね』という挨拶の代わりに聞こえてきたのは、苦しそうな息遣いだった。

「ゴホッ、ゴホッ……38°C、ですか……もう少し、寝ときましょ、う」

 ……子供たちが心配するので、体調管理には気を付けていたつもりなんですが、ねぇ……。
 咳の隙間で溜息をつけば、自分への身体には意外と無頓着らしいルーカス・ウェル・ファブレは、少し横になっていれば治るだろうというつもりで再び布団を肩までかけ直した。
 ちょうどその時、ドアのノック音が耳に届く。

「パパー朝なのだよー?」

 日頃の教育の賜物か、早寝早起き、今日も健やかに目覚めて朝の洗顔や着替えなどもすっかり済ませた西園寺優純絆が、『たまにはユズがパパを起こすの♪』と思いつきやって来た次第。
 しかして、数度声をかけてみるもいつもの優しい声が一向に返されることがない。

「んー、珍しいなぁ、こんなに言っても出てこないなんて……」

 お仕事、もしあって遅れちゃったら大変、だもんね……と、微か悩んだ後控えめにドアノブを回した。

「失礼しまーす。パパ、起き、……てっ!?」
「ん……? ゆ、ず……? ゴホッ、ゴホッ……」

 熱の為朦朧として気付いていなかったノック音だが、愛息子の声が直接部屋の中に響けば、自然と反応して身体を起こすルーカス。その、明らかに普段と違った顔色と苦しそうな息遣いに、寄って来た優純絆から笑顔がさーっと消えた。

「かっ……カズちゃぁぁん!」

 パパが具合悪そう! どうしよう! どうすればいい!?
 瞬間その口から発せられたのは、最近どんどん頼もしさを感じるようになった、もう一人の家族の名であった。

 その呼ばれた当人、十六夜和翔はその頃厨房にて、この屋敷の執事長兼コックと共に朝ご飯の準備を手伝っていた。
 早く一人前になって、もっともっと俺がユズと父さんを守ってやるんだ。その意気込みと共に、最近ますます家の事に興味を持って進んで手伝いをしている。

「おいアヴェル、これはこの味で良いのか? ―― そうか、分かった」

 普段の荒っぽい口調は潜ませて、教わる時には素直に聞き入れ受け答えしながら、まだ慎重に調味料などを計って混ぜていたその耳に、愛しいコが自分を呼ぶ声が届けられた。

「っ!? ユズ!?」

 この広い屋敷の中、ルーカスの自室から厨房までも例にもれずそれなりに離れていたわけだが、絆の力と恋のパワーは和翔に異変を察知させる。
 和翔の周囲に居た者たちには聞こえなかったが、血相変えて厨房飛び出した和翔を見れば何かあったと判断できて。慌てて従者たちもその後を追いかけるのであった。

 上半身を起こし、咳き込む背中を必死にさすってくれる優純絆へ、少しでも苦し気な表情を押し込めてルーカスは小さく微笑む。

「すみませ、ん……、私は、大丈夫です、から……ゴッホゲホッ……」
「パパ!? そっそんな顔じゃ説得力ないのだよ!?」
「そうは、言いましても……げほっ、ごほっごほっ……本当に、寝ていれば大丈夫です、から。ユズにうつっては大変です……」
「こんな状態のパパ、放っておけないもん!」

 やんわりと、しかしどうにかして優純絆を部屋の外へ出そうと試みるルーカスの耳に、新たな足音たちが向かってくるのが聞こえた。
 そしてすぐに、もはやノックなしでバターンッとドアが開かれた。

「おいユズ! 一体全体何が!? ―― とっ父さん!?」
「あっカズちゃん、アヴェルお兄ちゃん、シエルお姉ちゃん!」
「か、ず……? それに、ヴェルに、シエル……?」

 涙目の優純絆に気付けば全速力で駆け寄ると、ベッドの上のルーカスの明らかな顔色の悪さに和翔も驚いた表情を浮かべる。
 和翔の後ろから控えめに、それでも足早にやってきたアヴェルス執事長とシエルメイド長の姿を認めれば、何やら大所帯にルーカスは不思議そうに視線をやった。
 二人の子の父になってからは特に、自分に何かあっては……という無意識の下ほとんど体調を崩したことがなかったのであろう。家人たちに取り囲まれ心配される、というこの状況が自分の身に起こっていることとして、いまいちピンとこないといった表情である。
 そんなルーカスを置いて、和翔は観察するようにしばし父の身体を見つめていたが、すぐに表情引き締め振り返った。

「顔が凄い真っ赤だ……。アヴェル、シエル! 至急あのおっさん呼んで来い!」
「え……イアンおじ様を? かかかカズちゃんっ、ぱ、ぱぱぱぱ、パパは……っ」
「ユズ、落ち着け! 多分父さんは風邪をひいたんだと思う。だから濡れたタオルを持って来い」
「―― 風邪……? うん分かったのだよ! パパ、待っててね! 直ぐに持って来るから!」

 幼いながらも的確な指示出しに、こっそりと成長を喜ぶ笑みを心の中で浮かべながらも、執事長とメイド長は同時に『かしこまりました』と返事をして部屋を後にする。
 ルーカスの幼馴染であり名医でもある彼の名が出れば、『お医者様=重病』的な思考が直結して動揺に磨きがかかってしまった優純絆へと、和翔は励ますように、心配する気持ちを汲むように言葉をかけた。
 役割が与えられれば、それを全うするべく優純絆も動揺落ち着かせて一目散に行動に移った。

「………随分しっかりしましたねぇ、カズ……しかし、そんなに大袈裟にしなくとも……」
「なに言ってんだ父さん! ここんとこちょっと働き過ぎなんだよっ。ちゃんとみてもらえよな!」

 体起こしているルーカスを、グイグイと強引に横にならせながら怒る和翔。
 立場が逆転してしまいましたねぇ、なんて苦笑いを浮かべたところへ、濡れタオル持った優純絆が戻って来た。
 しっかりと冷やされたタオルが額にのせられれば、ホォ……と少し安堵の息をルーカスがついたのを見て、優純絆は小さな手をぎゅっと握り拳を作る。

「パパ、大丈夫? 今日一日ユズ達が看病するからね!」 
「俺様もしてやるよ。おっさんはあんなでも名医だからな。安心しろユズ」
「そうだよね、カズちゃん。パパ、イアンおじ様が来たらちゃんと見てもらうんだよ!」

 ずっと庇護すべきコたちだと思っていたのが、いつ間にやら自分の面倒までみようとするようになっていて。
 嬉しそうに、そして観念したようにルーカスは一度瞳を閉じた後、優しく細めた目を二人の我が子へと向けた。

「すみません、ねぇ……ユズ、カズ、有難うございます……お言葉に甘えさせて頂きますね」

 その後ろの方、ドアの手前では戻って来た執事長のアヴェルスとメイド長のシエルが、こっそりと涙ぐみながら微笑んで囁き合っていたり。
 『昔はいくら我々が言っても、休もうとしてくださらなかったご主人様が……』 『ユズ様と和翔様のおかげですね』 なんて。もしもその主の耳にそれが聞こえていたらば、無言で威圧の微笑みが向けられたことだろう……。



 暫くして、呼ばれた医者たるイアンが屋敷に到着すれば、問診中手持無沙汰になった優純絆は厨房へと移動していた。

「で? 普通の粥を作るのか? ユズ」
「えっとね、此処は王道の卵と梅のお粥にしよう! カズちゃんも一緒に作るよ!」
「はぁ? チッ、仕方がねぇなぁ。ユズだけじゃ心元ねぇし手伝ってやるよ」

 火を扱うため当然のことながら、いつでも手を差し伸べられる位置にてアヴェルスは待機しつつも、出来うる限り手出しをせずに小さな気遣い屋さんたちの気持ちを汲むのであった。

「イアン、有難うございます。助かりました……」
「自分の年を考えろルカ。風邪と過労だ。働きすぎたんだろ」
「……カズにも、同じように言われてしまいました」
「へぇ、あの坊主が?」

 ルーカスの自室。問診終えれば医者と患者から、幼馴染同士の顔へと戻って二人は会話をしている。
 出会った頃は事ある毎に噛み付くように威嚇してきた和翔の姿を思い描きながら、面白そうにイアンは顎を撫でた。
 人間成長するもんだ、と呟いてから、思い出したように言葉を続ける。

「嬢ちゃんの方も元気なのか?」
「……えぇ。益々ルチアに、似てきてますよ……」
「……そうか。言ってねぇんだろ」

 イアンの言葉に静かに、重く、頷きながらふとルーカスはドアの方へと視線をやった。
 何かを思案する表情で、ドアのその向こうを見透かすように見つめてから、イアンへと向き直り。

「まだ言えません。優純絆が、私とルチアの本当の息子だと……」

 そして次の言葉は、ドアの向こうへと語り掛けた。

「―― だから和翔、この事はまだ内緒です。そして私達の光であるルキフェルを護って下さい」

 ガタッ、とドアの外で動揺したような音が一度鳴った。
 閉じられたドアの外では、もうじきお粥が出来ることを告げる為、いつしか和翔が立っていたのだ。
 (えっ? ユズが実の息子? つぅか俺様がいるって気付かれていながら話している!?)
 突然聞いてしまった、優純絆の秘密。
 どうして……いつから……。様々な疑問が一気に押し寄せるも、ドアの向こうの穏やかな声はそれ以上続くことは無かった。
 ただただ、自分へと託す言葉を告げたまま。
 それはまごうことなき、信頼の証。自分を子ども扱いせず、対等に向き合った上で信じてくれた言の葉なのだと、和翔は直感で悟った。
 ドアノブへと手をかけ堂々と中へ入り、大きく息を吸い込むと真っ直ぐにルーカスへと発した。

「ふん! んなもん当たり前だろ! 俺様がユズも父さんも護ってやらァ!」
「頼りにしてますよ」

 心から嬉しそうに言われれば、照れ隠しに和翔はそっぽ向く。
 ちょうどそこへ、お盆にお粥をのせてこぼさないよう慎重に歩いてきた優純絆が、開け放されたままになっていたドアからひょこっと顔を出した。

「カズちゃん、パパ? どうかした?」
「別に、何でもねぇよ……」
「いえ、なんでもありません」
「お。嬢ちゃんが作ったのかそれ。美味そうに出来てんな」

 同時に応えられたすぐ後に、イアンが助け舟なのか素なのか、優純絆の持つお粥を覗き込んで話し掛けると、パッと輝いた笑顔を見せた優純絆がルーカスの下へと寄って行く。
 
「ほらパパ! 卵と梅のお粥なのだよ! ユズとカズちゃん2人で頑張って作ったんだよ」
「有難うございます、ユズ、カズ」
「お粥食べて早く良くなってね、パパ!」

 スプーンに粥をのせ、ふーふー……はいっ、あーん♪
 しっかりしてきたのか、ちょっとだけ大人ぶりたい年頃なのか、屈託のない笑顔でスプーンを差し出されれば『ユズには勝てませんねぇ……』と苦笑いを浮かべ、それを口に入れるルーカスの姿。
 ふわり、どこか懐かしい香りがルーカスの鼻をくすぐる。お粥の匂いだけでなく、これは……。
 優純絆の腰元、お洋服のアクセントに付けられたキーホルダーから、優しい香りが優純絆を包み込んでいる。
 そうしてその香りと優純絆自身が纏う香りが混じり合って、昔、彼女が纏っていたのと同じような香りに感じられた。
 何も知らない純粋な瞳で、『おいしい?』と尋ねてくる我が子へと、ルーカスはいつもと同じ穏やかな声で返した。『とても美味しいです』と。

 そんな二人を一歩下がった位置で和翔は見つめる。
 ウィンクルムとしてだけでなく、大事な父から託された愛しいコを守る約束。まだ幼い背中に背負うには、本来はどうしたって重さを感じずにはいられないであろうそれを、和翔はしっかりと受け取った。
 その瞳には、新たな力強い意思と決意の光がそっと宿っていた ――




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 蒼色クレヨン GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:西園寺優純絆
精霊:ルーカス・ウェル・ファブレ
精霊:十六夜和翔
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2017年5月13日

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