プラン
アクションプラン
夢路 希望 (スノー・ラビット) (モーリエ・コート) |
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※13 ゲームがお好きなんですか? 一つ共通点を見つけた気がして嬉しく思いつつ、ゲームセンターの方へ 三人で遊ぶのは初めてですね あ…えっと…じゃあ、それぞれの気になるものを一緒にやってみませんか? ガンシューティング: 流れるようなプレイ…さすがプレストガンナーさん…! スノーくんのプレイもしっかり見、凄かったです!と拍手 私は…やったことはあるんですけど、上手くはないので…できればイージーで… ダンスゲーム: ふふ…頑張ってくださいね 手を振り応援 軽快にステップを踏む姿にはうっとり かっこよかったです… 促されるとオロオロしつつプレイ …わ、わ…!(もたもた フォトプリ: 久しぶりにやってみたいな、って 最近のはいろいな機能があるんですね(設定し 私が真ん中ですか?…えっと、じゃあ…失礼します… …わっ(す、スノーくんったら…) 恥ずかしかったけど…映らないしそのままで 最後に落書きをして完成 「ふふ…素敵な記念になりました」 |
リザルトノベル
待ち合わせは駅前の喫茶店。
A.R.O.A.作成のイベントパンフレットをテーブルに広げ、モーリエ・コートは瞳を細めた。
水族館に動物園、海水浴に魚釣り、キャンプ……うんざりしながら視線を下ろしていって、ある一点でその動きが止まる。
「遊遊自適……確か隣に大きなゲーセンがあるよね」
向かい側でモーリエの様子を窺っていた夢路 希望は、その言葉に瞬きした。
「そっちの方なら考えてあげてもいいよ」
「本当ですか?」
ぱっと顔を輝かせる希望に、モーリエはパンフレットを畳んで彼女に返す。
「前から行ってみたかったし」
──前から?
希望は首を傾けてモーリエの横顔を見た。
「ゲームがお好きなんですか?」
「……まあね」
小さく頷くモーリエに、希望は更に表情を明るくする。
とある乙女ゲームのバグに巻き込まれてから少し控えてはいるが、希望もゲームは好きだ。
一つモーリエとの共通点を見つけた気がして、嬉しさが込み上げてくる。
「……」
そんな希望の様子を、隣からスノー・ラビットは複雑な思いで見つめていた。
希望と二人で過ごしたかった──スノーの偽らざる本心である。
けれど、希望からモーリエも誘いたいと聞いた時、彼女の表情を見たらスノーに拒むという選択肢はなかった。
彼とこの機会に少しでも良好な関係を築きたい。
彼女の切実な願いがとてもよく分かったから。
「スノーくんは、どこか行きたい所はないですか?」
希望の声に、スノーは意識を切り替えた。
「僕はどこでも大丈夫だよ。ゲームセンター、楽しそうだよね」
にっこり笑顔を返せば、希望も微笑む。
「それでは、行ってみましょうか」
会計を済ませ、さっさと歩き出すモーリエの後に希望が続く。
スノーは彼女の手にそっと自分の指を絡ませた。
スノーにだけ分かる範囲で、希望が驚きに身体を震わせこちらを見てくる。
赤くなる頬を可愛いなと思いながら、スノーは微笑みを浮かべた。
──ノゾミさんは、僕の。
僅か指先に力が入れば、たどたどしく希望が手を握り返してくれて。
スノーは心が温かく落ち着いていくのを感じていた。
サイバーチックな電飾に囲まれた入り口から中へ入れば、可愛らしいぬいぐるみが沢山並んだバードキャッチャー。
ぬいぐるみに誘われるように進んでいくと、スロットやポーカー、レースゲームなどの多種多様なメダルゲーム、その奥にはビデオゲーム、リズムゲーム、体感ゲーム等々のアーケードゲームが所狭しと並んでいる。
辺りを見回しながら、希望は頬を紅潮させた。ゲーム好きにとっては夢の空間である。
「で? 何するの?」
食い入るようにゲーム機を眺めていたモーリエが口を開いた。希望は我に返って、それから瞳を細める。
「三人で遊ぶのは初めてですね」
口にすれば、不思議な嬉しさが胸に広がった。
スノーはそんな彼女に笑みを浮かべ、モーリエは僅か眉を上げる。
「あ……えっと……じゃあ、それぞれの気になるものを一緒にやってみませんか?」
二人の視線に、希望は伏し目がちに提案した。
「……好きなもの、ね」
「ゲームはあまり詳しくないから、教えてもらえると嬉しいな」
スノーがそう続ければ、
「僕はシューティング系かな」
モーリエは一際目立つ大きな筐体に歩み寄ると、ケーブルで接続されているガンコントローラーを手に取った。
「特にこれ、ガンシューティング」
銃型のコントローラーを掲げるモーリエに、スノーは大きなゲーム画面と彼を交互に見る。
「百聞は一見に如かず、って言うしね」
モーリエは不思議そうなスノーに軽く口の端を上げ、筐体にコインを投入した。
難易度はベリーハードを迷いなく選択する。
ディスプレイに巨大な洋館が現れた。
洋館の中は、無数のゾンビの群れ。
逃げ惑う人々を救いながら、洋館の仕掛けを解いて、ゾンビを作り出している悪の科学者を倒すというホラーシューティングゲームである。
『HELP!』
ゾンビに迫られ、女性が悲鳴を上げながら助けを求めた。
そこへ、モーリエの操る主人公が、颯爽と窓を突き破って現れる。
視点が主人公目線に変わった瞬間、モーリエは銃口を画面へ向け、引き金を引いた。
ドン!ドン!ドン!
鮮やかな連射で、襲い来るゾンビ達の頭を正確に撃ち抜く。
「こんな感じに敵を倒すんだよ」
モーリエはスノーを振り返りそう言うと、引き金の引き方、画面の狙い方がスノーによく見えるように撃ってみせた。
前後左右、次々と現れるゾンビ達。
モーリエは、隙なく寸分の狂いなく引き金を絞る。
ミステリアスな洋館の演出も勿論だが、何よりモーリエの腕前の鮮やかさに、希望とスノーは見惚れた。
主人公はどんどん洋館の奥へと進んでいき、ついに悪の科学者と対峙する。
自ら怪物と化した科学者に、モーリエの操る主人公は、流れるような所作も美しく弾丸を撃ち込んでいった。
怪物が塵と化し、洋館に静寂が戻る。
エンドロールが流れる中、希望とスノーはモーリエに賞賛の拍手を送った。
「……さすがプレストガンナーさん……!」
「うん、凄かったよね」
希望の弾む声に頷きながらも、スノーは胸の奥がもやっとする感覚を覚える。
一方、モーリエは二人の反応に目を丸くしていた。──凄い?
「……別に、これくらい」
ふよふよと灰青色の尻尾が照れ臭そうに揺れる。
「ほら、一緒に遊ぶんでしょ」
モーリエは熱くなる顔を隠すように二人に背を向けて、コインを再度投入すると今度は二人プレイのモードを選択した。
「次、僕もやってみたいな」
スノーがモーリエの隣に並ぶ。
「難易度は初めてだし、ノーマルで。ボクがアシストするから、くれぐれも同士討ちにならないように気を付けてね」
「うん、わかった」
スノーは真剣に頷いて、ガンコントローラーを握りディスプレイを見据えた。
(ゲームは初めてだけど、反射神経なら……)
ちらりと希望を振り返ると、彼女はぐっと拳を握る。
「頑張ってくださいね」
「うん!」
ゾンビの不気味な声と、女性の悲鳴が響き渡った。
先ほどのモーリエのプレイでタイミングは分かっている。
ドン!
スノーが放った弾丸は、ゾンビの左後頭部を確りと捉えた。
「やるじゃない」
モーリエが口の端を上げ、スノーの死角の位置に居るゾンビをヘッドショットの一撃で沈める。
「このまま一気に食堂まで進むから」
「了解!」
モーリエのアシストで、徐々に慣れていったスノーは次々とゾンビ達を倒して館内を進んだ。
スノーの真剣な横顔を、希望は高鳴る胸を押さえ見守る。
やがて最深部に辿り着いた二人は、一度もコンティニューすることなく、ラストバトルも制したのだった。
「凄かったです!」
コントローラーを置いた二人に、希望は瞳を輝かせて拍手を贈る。
「僕も凄かった?……えへへ」
スノーは頬を染めて嬉しそうに笑った。
「次はキミの番だよ」
モーリエがコントローラーを差し出してきて、希望は大きく瞬きする。
「プレイするのは初めて?」
「私は……やったことはあるんですけど、上手くはないので……できればイージーで……」
遠慮がちにコントローラーを受け取る希望を一瞥し、モーリエはイージーモードを選択した。
三度、ゾンビに支配された洋館が姿を現す。
希望はスノーの応援を受けながら、慎重に確実にゾンビを倒していく。
モーリエの的確なアシストもあり、何とかラストステージへと足を踏み入れた。
「弱点は左腕と右足。落ち着いて狙って」
「は、はい。わかりました……」
モーリエが誘導し、希望が狙い撃つ。
段々とヒットポイントが削れていく中、ついに怪物が断末魔の悲鳴を上げた。
「や、やりました……」
希望がモーリエを見て、モーリエが希望を見た。
ほぼ反射的に二人はハイタッチする。
その光景に、即座にスノーも駆け寄って、希望の手を取った。
「ノゾミさん、凄いよ!」
「あ、ありがとうございます」
ぎゅっとスノーに手を握られて、希望がはにかむように微笑む。
「……まあ、ボクがアシストしたし」
己の手を一瞬見てから、モーリエは軽く咳払いした。
さっきのは、その場のノリというものだ。
「スノーは? 何か気になるものないの?」
話題を逸らそうと問い掛けると、希望の手を握ったままのスノーは、リズムゲームの方向を見遣った。
「あれ、面白そう」
「……音ゲーか」
スノーの視線の先には、ダンスゲームがある。音楽に合わせて、パネルを踏んでいくゲームだ。
モーリエがその筐体へ歩いていくと、スノーと希望も後に続いてくる。
「……難しそうだね」
「簡単だよ」
説明を見て眉を寄せるスノーに、モーリエは軽く笑って説明する。
「リズムに乗って、画面の指示通りにパネルを踏んでいくだけだ」
「なるほど……うん、やってみる」
頷いたスノーを見て、モーリエはコインを投入し二人はパネルの上に立った。
「ノゾミさん、見ててね」
「はい」
微笑む希望に、スノーはすぅと息を吸った。
(モーリエさんには負けられない)
ディスプレイに二人のダンサーが現れた。
「ふふ……頑張ってくださいね」
希望は手を振り応援する。
ポップな音楽が鳴り始め、ダンサーの前にパネルを踏むよう指示が出てきた。
「こう、かな?」
タタンッと、リズムに合わせスノーがステップを踏む。
ダンサーが華麗に舞って、『MARVELOUS!』と文字が浮かんだ。
コツを掴んだスノーは、次々とスコアを上げ、本当に踊っているかのようにパネルの上で舞う。
いつしか希望は応援を忘れ、スノーの姿に見惚れていた。
(へえ……やるね)
スノーを横目に、モーリエもまた軽快にステップを刻む。
やがて余韻を残し音楽が止まると、ディスプレイに『ハイスコア更新』の文字が躍った。
「やるね。さすがテンペストダンサー」
モーリエが素直に拍手すれば、スノーは頬を掻く。
「ありがとう」
「かっこよかったです……」
頬を染めた希望がそう言うと、更にスノーは幸せそうに笑った。
「キミもやってみなよ」
「え?」
モーリエに促され、希望は目を丸くする。
「い、いえ、私は……」
「希望さんの踊ってる所、見たいな」
慌てて手を振る背中をスノーに押されて、希望はパネルの上に立つ。
「イージーモードにしておくよ」
モーリエがコインを投入し、ゲームスタート。
「……わ、わ……!」
わたわたとパネルを踏む希望に、スノーはほっこりと頬を緩める。小動物みたいで本当に可愛い。
たどたどしいその動きに、モーリエの口からも思わず笑みが零れたのだった。
「面白かった。……で、キミは?何がしたいの?」
ダンスゲームを終えて肩で息をする希望に、モーリエは尋ねた。
「私は……」
希望はフォトプリのコーナーを見た。
「久しぶりにやってみたいな、って」
「……フォトプリ?」
モーリエは眉間に皺を寄せるも、希望が控えめに見上げてくるのにふっと息を吐く。
(まぁ、さっき笑わせてもらったし……)
「人に見せないなら、いいよ」
希望の表情が明るくなるのに、単純だなとモーリエは思う。
「ノゾミさん、どの機種にする?」
スノーに腕を引かれて、希望は様々な種類のフォトプリを見比べた。
兎柄の可愛らしいフレームに落書きが出来る機能付きの機種を選ぶ。
「最近のはいろいな機能があるんですね」
フレームを選択し、希望は二人を見上げた。
「ノゾミさんは真ん中ね」
「私が真ん中ですか?……えっと、じゃあ……失礼します……」
スノーが笑顔で言うのに、希望は瞬きしてから、恐る恐る二人の間に立った。
モーリエは取り敢えず、適当に腕を組んでポーズを取る事にする。
スノーは希望の腰を抱き、彼女を少し自分の方へ引き寄せてから、笑顔でピースサインを作った。
「……わっ」
(す、スノーくんったら……)
希望は頬が熱くなるのを感じた。しかしスノーの手は写真には写らない位置である。
そのまま希望も笑顔を浮かべた。
機械がカウントダウンを告げ、写真が撮影される。
「わ、可愛く映ったね」
ディスプレイで写真を確認して、スノーが微笑んだ。
希望とスノーは、今日の日付とそれぞれの名前──モーリエの分は希望が書いた──を書き入れる。
そして、印刷されてきた写真を、希望が鋏で三人分に切り分けた。
「ふふ……素敵な記念になりました」
スノーとモーリエに手渡して、希望は微笑む。
「また来たいね」
スノーは頷いて、三人並んだ写真を見つめた。
(三人も楽しかったけど……今度は二人きりがいいな)
「記念、ね……」
モーリエもまた、渡された写真を眺める。不思議と不快感はなく、胸にあるのは紛れもない充実感だった。
(まぁ……割と楽しかったかな)
写真の中の三人は、可愛らしい兎達に囲まれて微笑んでいた。
A.R.O.A.作成のイベントパンフレットをテーブルに広げ、モーリエ・コートは瞳を細めた。
水族館に動物園、海水浴に魚釣り、キャンプ……うんざりしながら視線を下ろしていって、ある一点でその動きが止まる。
「遊遊自適……確か隣に大きなゲーセンがあるよね」
向かい側でモーリエの様子を窺っていた夢路 希望は、その言葉に瞬きした。
「そっちの方なら考えてあげてもいいよ」
「本当ですか?」
ぱっと顔を輝かせる希望に、モーリエはパンフレットを畳んで彼女に返す。
「前から行ってみたかったし」
──前から?
希望は首を傾けてモーリエの横顔を見た。
「ゲームがお好きなんですか?」
「……まあね」
小さく頷くモーリエに、希望は更に表情を明るくする。
とある乙女ゲームのバグに巻き込まれてから少し控えてはいるが、希望もゲームは好きだ。
一つモーリエとの共通点を見つけた気がして、嬉しさが込み上げてくる。
「……」
そんな希望の様子を、隣からスノー・ラビットは複雑な思いで見つめていた。
希望と二人で過ごしたかった──スノーの偽らざる本心である。
けれど、希望からモーリエも誘いたいと聞いた時、彼女の表情を見たらスノーに拒むという選択肢はなかった。
彼とこの機会に少しでも良好な関係を築きたい。
彼女の切実な願いがとてもよく分かったから。
「スノーくんは、どこか行きたい所はないですか?」
希望の声に、スノーは意識を切り替えた。
「僕はどこでも大丈夫だよ。ゲームセンター、楽しそうだよね」
にっこり笑顔を返せば、希望も微笑む。
「それでは、行ってみましょうか」
会計を済ませ、さっさと歩き出すモーリエの後に希望が続く。
スノーは彼女の手にそっと自分の指を絡ませた。
スノーにだけ分かる範囲で、希望が驚きに身体を震わせこちらを見てくる。
赤くなる頬を可愛いなと思いながら、スノーは微笑みを浮かべた。
──ノゾミさんは、僕の。
僅か指先に力が入れば、たどたどしく希望が手を握り返してくれて。
スノーは心が温かく落ち着いていくのを感じていた。
サイバーチックな電飾に囲まれた入り口から中へ入れば、可愛らしいぬいぐるみが沢山並んだバードキャッチャー。
ぬいぐるみに誘われるように進んでいくと、スロットやポーカー、レースゲームなどの多種多様なメダルゲーム、その奥にはビデオゲーム、リズムゲーム、体感ゲーム等々のアーケードゲームが所狭しと並んでいる。
辺りを見回しながら、希望は頬を紅潮させた。ゲーム好きにとっては夢の空間である。
「で? 何するの?」
食い入るようにゲーム機を眺めていたモーリエが口を開いた。希望は我に返って、それから瞳を細める。
「三人で遊ぶのは初めてですね」
口にすれば、不思議な嬉しさが胸に広がった。
スノーはそんな彼女に笑みを浮かべ、モーリエは僅か眉を上げる。
「あ……えっと……じゃあ、それぞれの気になるものを一緒にやってみませんか?」
二人の視線に、希望は伏し目がちに提案した。
「……好きなもの、ね」
「ゲームはあまり詳しくないから、教えてもらえると嬉しいな」
スノーがそう続ければ、
「僕はシューティング系かな」
モーリエは一際目立つ大きな筐体に歩み寄ると、ケーブルで接続されているガンコントローラーを手に取った。
「特にこれ、ガンシューティング」
銃型のコントローラーを掲げるモーリエに、スノーは大きなゲーム画面と彼を交互に見る。
「百聞は一見に如かず、って言うしね」
モーリエは不思議そうなスノーに軽く口の端を上げ、筐体にコインを投入した。
難易度はベリーハードを迷いなく選択する。
ディスプレイに巨大な洋館が現れた。
洋館の中は、無数のゾンビの群れ。
逃げ惑う人々を救いながら、洋館の仕掛けを解いて、ゾンビを作り出している悪の科学者を倒すというホラーシューティングゲームである。
『HELP!』
ゾンビに迫られ、女性が悲鳴を上げながら助けを求めた。
そこへ、モーリエの操る主人公が、颯爽と窓を突き破って現れる。
視点が主人公目線に変わった瞬間、モーリエは銃口を画面へ向け、引き金を引いた。
ドン!ドン!ドン!
鮮やかな連射で、襲い来るゾンビ達の頭を正確に撃ち抜く。
「こんな感じに敵を倒すんだよ」
モーリエはスノーを振り返りそう言うと、引き金の引き方、画面の狙い方がスノーによく見えるように撃ってみせた。
前後左右、次々と現れるゾンビ達。
モーリエは、隙なく寸分の狂いなく引き金を絞る。
ミステリアスな洋館の演出も勿論だが、何よりモーリエの腕前の鮮やかさに、希望とスノーは見惚れた。
主人公はどんどん洋館の奥へと進んでいき、ついに悪の科学者と対峙する。
自ら怪物と化した科学者に、モーリエの操る主人公は、流れるような所作も美しく弾丸を撃ち込んでいった。
怪物が塵と化し、洋館に静寂が戻る。
エンドロールが流れる中、希望とスノーはモーリエに賞賛の拍手を送った。
「……さすがプレストガンナーさん……!」
「うん、凄かったよね」
希望の弾む声に頷きながらも、スノーは胸の奥がもやっとする感覚を覚える。
一方、モーリエは二人の反応に目を丸くしていた。──凄い?
「……別に、これくらい」
ふよふよと灰青色の尻尾が照れ臭そうに揺れる。
「ほら、一緒に遊ぶんでしょ」
モーリエは熱くなる顔を隠すように二人に背を向けて、コインを再度投入すると今度は二人プレイのモードを選択した。
「次、僕もやってみたいな」
スノーがモーリエの隣に並ぶ。
「難易度は初めてだし、ノーマルで。ボクがアシストするから、くれぐれも同士討ちにならないように気を付けてね」
「うん、わかった」
スノーは真剣に頷いて、ガンコントローラーを握りディスプレイを見据えた。
(ゲームは初めてだけど、反射神経なら……)
ちらりと希望を振り返ると、彼女はぐっと拳を握る。
「頑張ってくださいね」
「うん!」
ゾンビの不気味な声と、女性の悲鳴が響き渡った。
先ほどのモーリエのプレイでタイミングは分かっている。
ドン!
スノーが放った弾丸は、ゾンビの左後頭部を確りと捉えた。
「やるじゃない」
モーリエが口の端を上げ、スノーの死角の位置に居るゾンビをヘッドショットの一撃で沈める。
「このまま一気に食堂まで進むから」
「了解!」
モーリエのアシストで、徐々に慣れていったスノーは次々とゾンビ達を倒して館内を進んだ。
スノーの真剣な横顔を、希望は高鳴る胸を押さえ見守る。
やがて最深部に辿り着いた二人は、一度もコンティニューすることなく、ラストバトルも制したのだった。
「凄かったです!」
コントローラーを置いた二人に、希望は瞳を輝かせて拍手を贈る。
「僕も凄かった?……えへへ」
スノーは頬を染めて嬉しそうに笑った。
「次はキミの番だよ」
モーリエがコントローラーを差し出してきて、希望は大きく瞬きする。
「プレイするのは初めて?」
「私は……やったことはあるんですけど、上手くはないので……できればイージーで……」
遠慮がちにコントローラーを受け取る希望を一瞥し、モーリエはイージーモードを選択した。
三度、ゾンビに支配された洋館が姿を現す。
希望はスノーの応援を受けながら、慎重に確実にゾンビを倒していく。
モーリエの的確なアシストもあり、何とかラストステージへと足を踏み入れた。
「弱点は左腕と右足。落ち着いて狙って」
「は、はい。わかりました……」
モーリエが誘導し、希望が狙い撃つ。
段々とヒットポイントが削れていく中、ついに怪物が断末魔の悲鳴を上げた。
「や、やりました……」
希望がモーリエを見て、モーリエが希望を見た。
ほぼ反射的に二人はハイタッチする。
その光景に、即座にスノーも駆け寄って、希望の手を取った。
「ノゾミさん、凄いよ!」
「あ、ありがとうございます」
ぎゅっとスノーに手を握られて、希望がはにかむように微笑む。
「……まあ、ボクがアシストしたし」
己の手を一瞬見てから、モーリエは軽く咳払いした。
さっきのは、その場のノリというものだ。
「スノーは? 何か気になるものないの?」
話題を逸らそうと問い掛けると、希望の手を握ったままのスノーは、リズムゲームの方向を見遣った。
「あれ、面白そう」
「……音ゲーか」
スノーの視線の先には、ダンスゲームがある。音楽に合わせて、パネルを踏んでいくゲームだ。
モーリエがその筐体へ歩いていくと、スノーと希望も後に続いてくる。
「……難しそうだね」
「簡単だよ」
説明を見て眉を寄せるスノーに、モーリエは軽く笑って説明する。
「リズムに乗って、画面の指示通りにパネルを踏んでいくだけだ」
「なるほど……うん、やってみる」
頷いたスノーを見て、モーリエはコインを投入し二人はパネルの上に立った。
「ノゾミさん、見ててね」
「はい」
微笑む希望に、スノーはすぅと息を吸った。
(モーリエさんには負けられない)
ディスプレイに二人のダンサーが現れた。
「ふふ……頑張ってくださいね」
希望は手を振り応援する。
ポップな音楽が鳴り始め、ダンサーの前にパネルを踏むよう指示が出てきた。
「こう、かな?」
タタンッと、リズムに合わせスノーがステップを踏む。
ダンサーが華麗に舞って、『MARVELOUS!』と文字が浮かんだ。
コツを掴んだスノーは、次々とスコアを上げ、本当に踊っているかのようにパネルの上で舞う。
いつしか希望は応援を忘れ、スノーの姿に見惚れていた。
(へえ……やるね)
スノーを横目に、モーリエもまた軽快にステップを刻む。
やがて余韻を残し音楽が止まると、ディスプレイに『ハイスコア更新』の文字が躍った。
「やるね。さすがテンペストダンサー」
モーリエが素直に拍手すれば、スノーは頬を掻く。
「ありがとう」
「かっこよかったです……」
頬を染めた希望がそう言うと、更にスノーは幸せそうに笑った。
「キミもやってみなよ」
「え?」
モーリエに促され、希望は目を丸くする。
「い、いえ、私は……」
「希望さんの踊ってる所、見たいな」
慌てて手を振る背中をスノーに押されて、希望はパネルの上に立つ。
「イージーモードにしておくよ」
モーリエがコインを投入し、ゲームスタート。
「……わ、わ……!」
わたわたとパネルを踏む希望に、スノーはほっこりと頬を緩める。小動物みたいで本当に可愛い。
たどたどしいその動きに、モーリエの口からも思わず笑みが零れたのだった。
「面白かった。……で、キミは?何がしたいの?」
ダンスゲームを終えて肩で息をする希望に、モーリエは尋ねた。
「私は……」
希望はフォトプリのコーナーを見た。
「久しぶりにやってみたいな、って」
「……フォトプリ?」
モーリエは眉間に皺を寄せるも、希望が控えめに見上げてくるのにふっと息を吐く。
(まぁ、さっき笑わせてもらったし……)
「人に見せないなら、いいよ」
希望の表情が明るくなるのに、単純だなとモーリエは思う。
「ノゾミさん、どの機種にする?」
スノーに腕を引かれて、希望は様々な種類のフォトプリを見比べた。
兎柄の可愛らしいフレームに落書きが出来る機能付きの機種を選ぶ。
「最近のはいろいな機能があるんですね」
フレームを選択し、希望は二人を見上げた。
「ノゾミさんは真ん中ね」
「私が真ん中ですか?……えっと、じゃあ……失礼します……」
スノーが笑顔で言うのに、希望は瞬きしてから、恐る恐る二人の間に立った。
モーリエは取り敢えず、適当に腕を組んでポーズを取る事にする。
スノーは希望の腰を抱き、彼女を少し自分の方へ引き寄せてから、笑顔でピースサインを作った。
「……わっ」
(す、スノーくんったら……)
希望は頬が熱くなるのを感じた。しかしスノーの手は写真には写らない位置である。
そのまま希望も笑顔を浮かべた。
機械がカウントダウンを告げ、写真が撮影される。
「わ、可愛く映ったね」
ディスプレイで写真を確認して、スノーが微笑んだ。
希望とスノーは、今日の日付とそれぞれの名前──モーリエの分は希望が書いた──を書き入れる。
そして、印刷されてきた写真を、希望が鋏で三人分に切り分けた。
「ふふ……素敵な記念になりました」
スノーとモーリエに手渡して、希望は微笑む。
「また来たいね」
スノーは頷いて、三人並んだ写真を見つめた。
(三人も楽しかったけど……今度は二人きりがいいな)
「記念、ね……」
モーリエもまた、渡された写真を眺める。不思議と不快感はなく、胸にあるのは紛れもない充実感だった。
(まぁ……割と楽しかったかな)
写真の中の三人は、可愛らしい兎達に囲まれて微笑んでいた。
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
リザルト筆記GM | 雪花菜 凛 GM | 参加者一覧 | ||||||
プロローグ筆記GM | なし |
|
エピソードの種類 | ハピネスエピソード | ||||
対象神人 | 個別 | |||||||
ジャンル | イベント | |||||||
タイプ | イベント | |||||||
難易度 | 特殊 | |||||||
報酬 | 特殊 | |||||||
出発日 | 2017年5月13日 |