プラン
アクションプラン
クロス (オルクス) (ディオス) |
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11 わぁ、遊園地なんて何年振りだろう…! オルク! ディオ! ほら早くアトラクションに乗ろうぜ! ☆⑥→⑧→⑦→④の順に乗るが途中オルクがダウンし休憩がてら飲み物を買いに行き戻ると逆ナンされてる二人を見付け嫉妬、撃退 最後は夜景を見に③に乗る ディオー、絶叫系意外に平気なんだなー 俺ビックリしたぜ…! んで、オルク、平気か…? 御免な、俺達につき合せちまって… 俺、飲み物買って来るから待ってろよ! よし、二人の飲み物はこれで良いか ……チッ、やっぱり逆ナンされてらぁ(ムカッ オルクー、ディオーお待たせー はい飲み物 それで、私の連れに、何か、御用で、も…?(にっこり殺気 ……ふんっ誰が二人を渡すかってんだ! ほらオルク、ディオ! もう少し休んだら観覧車乗りに行くよ! ☆観覧車 わぁ…!夜景、すっごく綺麗だな! 二人共、今日はありがとな(ニコ 今日一日楽しかったぜ! なぁ、今度はさ、俺達の小さな家族と一緒に来れたら良いよな 未来の約束だよ |
リザルトノベル
数多くのアトラクションが配置されている遊園地、『マーメイド・レジェンディア』は、タブロスでも人気のデートスポットだ。
小さな子供でも安心のメリーゴーランドから、大人も怖がるお化け屋敷、興奮が味わえることまちがいなしの絶叫系まで、アトラクションは様々。
その他、夢の国そのままのパレード、夜空を彩る花火など、楽しみは目白押しなのである。
クロスとオルクス、ディオスの三人は、その日朝一番に、その広大な遊園地を訪れた。
古城周辺……ということで、落ちついた趣かと思いきや、ポップな色合いのゲートをくぐって進んでいく。
正面をしばらく行った先に、エリアの地図が設置してあるようだったが、クロスはそれには目もくれなかった。
だって、この園内のどこに行っても自由なのだ。それなら一日かけてどこにでも行って、遊び尽くしてやりたいと思って当然だろう。
「オルク! ディオ! ほら早くアトラクションに乗ろうぜ!」
並ぶオルクスとディオスを、振り仰ぐ。
その言葉に、いち早く反応したのはディオスだった。
「勿論だ! 行くぞ、クロ! ルク!」
ともに駆けだす二人に、オルクスが声をかける。
「っておいこら! 二人して走るんじゃねえ!」
だが保護者然として言いながらも、オルクスは笑顔である。
なにせクロスは、早起きもなんのその、行列の一番先頭で、今か今かとゲートが開くのを待ちながら、周囲をきょろきょろと見まわしていたのだ。
「わぁ、遊園地なんて何年振りだろう……!」
その隣で、ディオスもまた銀の瞳をきらきらと輝かせていた。
「ここが、遊園地……! こんなところ、初めて来たっ!」
「オレも遊園地なんぞ数年ぶりだなあ」
彼らを微笑ましく見つめながら、気づけばオルクスも、二人と同じような言葉を漏らしていた。
だから、全力ダッシュして行った二人の気持ちが、よくわかる。
「オルク! 早く!」
先行くクロスが振り向いて、手を招く。
「今行く!」
オルクスは答え、二人の元へと駆け寄った。
「まずはこれがいい!」
クロスが真っ先に選んだのは、ジェットコースターでは定番タイプとも言える『マーメイド』だった。
これは特別な仕組みのない、高低差のみを楽しむアトラクションで、小さな子供も、安心して乗ることができる。
だが、スリルがないわけではない。――とくに、久しぶり、または初めて遊園地に来る三人にとっては。
「すごい!」
「高いっ!」
「けっこう早いな!」
強い風に、青い髪と、紫の髪をなびかせて、クロスとディオスはご機嫌だ。
銀髪のオルクスも、赤い瞳を見開き、顔面に風を受け止める。
次は空中ブランコ『ウォーター・ブランコ』に挑戦した。
これはそのまま、宙を舞う大ブランコである。
体はブランコから落ちない仕組みにはなっているものの、足の下には何もない。
ふわり、と空を舞っているような浮遊感。
日頃の生活では、絶対に感じられない感覚に、興奮の鳥肌が立つ。
「うわああっ!」
三人は揃って、高い声を上げた。
その後、長蛇の列に一旦別れを告げて、食事をとった。
そして次は、揺れるのではなく、「落ちる」アトラクション。
『ゴールド・フリーウォール』である。
がたがたと音を立てて、人を乗せた箱型部分が、高く上って行く。
周囲に見える景色は、鮮やかでごみごみとした遊園地のそれから、遠く見渡す自然に変わった。
空の中から、ゴールドビーチの海と砂浜、青と白が見渡せるのだ。
「わあ……すごいな」
クロスが思わず、感動の声を漏らす。だが、その直後。
「わああああっ!」
体はいっきに、大地に向かって落ちていく。
なんていうスピードだ!
「おおおおっ」
銀の瞳を見開くディオス。その横で、オルクスはぎゅっと目をつぶっていた。
(この胃の持ちあがるような感覚……だめだこれっ)
それでもオルクスは、次なるアトラクションも参加した。
『カプカプ・アクアジェット』
10メートルの高さから傾斜を一気に滑り落ち、水面に突っ込む、びしょ濡れ必至のアトラクションである。
三人は、施設が貸してくれているレインコートを着て、乗り物に乗り込んだ。
「これ、絶対濡れるやつだろ。クロ、タオル持ってるか?」
「こういうのは、その後を気にしないのが楽しいんだよ、なあ、オルク?」
「まあ天気もいいし、すぐ乾くんじゃないか」
オルクスが答えると、クロスが「ほらな」と笑う。
だが、アクアジェットの水しぶきは、予想をはるかに超えていた。
水面に叩きつけられるかのような衝撃!
そしてもはや、水柱の中に突入したかと思える水しぶき!
「ちょ、ちょっと!」
「あはは、ディオすっごい濡れてる!」
「それはクロを庇ったからでっ」
「良くやった、ディオ」
正直に言えば、体が自然と動いただけだったが……。
(二人が楽しそうだから、いいか)
ディオスは、クロスが貸してくれたハンカチで顔を拭った。
まだ、アトラクションは他にもある。
だが、三人はすぐに次へ向かうことはできなかった。
ここで、オルクスがダウンしてしまったのだ。
「初めて絶叫系に乗ったが、楽しいし面白いな! ストレス発散になって何度でも乗れるぞ!」
そう言いながら、ディオスはさっき乗ったばかりのカプカプ・アクアジェットを見やった。
しかし視線はすぐに、傍らのオルクスへ。
「だが、俺達につき合わせてしまってすまない、ルク……」
ディオスは、ベンチに腰掛け、脱力しているオルクスの背をゆっくりとさすった。
彼の逆隣では、クロスもまた心配そうにオルクスを見つめている。
「オルク、平気か……?」
オルクスは「あー」と言いながら顔を上げた。さっき真っ白だった顔色は、今は少しだけ血の気が戻ったようだ。
でも、普段ほどの生気はない。それでもオルクスは、唇にうっすらと笑みを浮かべた。
「平気だ……。オレも普段は絶叫系は平気なんだがな……。多分、久々に乗ったからだと思う……」
「御免な、俺たちにつき合わせちまって……」
「クーとディオは全く大丈夫なのか、若いって素晴らしい……」
オルクスはそう言って、うなだれるクロスと、ディオスの頭にとんと手を置いた。
ディオスが、かっと口を開く。
「何を言うか! ルクだってまだまだ若いだろ!」
「とは言っても、二人よりは上だからな、オレ」
苦笑しつつ、青と紫、二つの頭の上から手を下ろすオルクス。
平気と言われても、その気怠そうな様子を見ていれば、どうにかしてやりたいと思うもの。
「もうちょっとここで休憩するか」
言ってクロスは、ベンチから立ち上がる。
「俺、飲み物買って来るから待ってろよ!」
「うぃー、すまん、頼む……」
オルクスの返事を聞くなり、彼女は飲食店の方へと走り出した。
両手に、ストローのささった紙のカップをひとつずつ持って、クロスは「うん」と頷いた。
「よし、二人の飲み物はこれで良いか」
本当ならば、ダッシュで戻ってオルクスに渡したいところ。
でも、うっかり飲みものをこぼしでもしたら大変だ。
ただあの二人を、こんな人が多いところに放っておくのも心配だった。
なにせ彼らは、クロス自慢のパートナーである。
「悪い虫を引き寄せないとも限らねえし」
クロスは足早に、彼らが待つ場所へと向かった。
ベンチに残ったオルクスは、はっと息を吐き、丸めていた背を伸ばした。
フリーフォールで、胃がせりあがるような感じがした後、大人しくしていればよかった。
それでも。
「――ふぅ、だいぶ良くなってきたか……」
腹のあたりをさすって言えば、ディオスがにこりと微笑む。
「そうか、それならなによりだ」
「ディオも悪いな、折角の遊園地だってぇのに……」
「いや、気にするな」
苦笑と微笑。
赤と銀の目が合い、それを離そうとしたときに。
「あのー、お兄さん達、お二人ですか?」
「わたし達も二人なんですけどぉ、もしよかったら、一緒に回りませんか?」
突然聞こえた見知らぬ声に、オルクスとディオスは目を瞬いた。
見やれば、自分達より少し若いくらいだろうか、ボディラインを強調する服を着た女性が二人、そこに立っている。
(おっと、まさかの逆ナンかよ)
(これが噂の、逆ナンとやらか……!)
二人はすぐに女性から目を離し、互いをちらと見やった。
なにせ、一人の女性をともに選んだ男達だ。
この状況で考えることなど、言葉を交わすまでもなく、わかりきっている。
(断る)
(当たり前だ!)
オルクスの即決にディオスが同意し、二人が口を開こうとした瞬間。
「オルクー、ディオー、お待たせー」
クロスの声が、その場に響いた。
「クーッ!」
「クロッ!」
助かった、とばかり、二人の視線がクロスに向く。
クロスは二人にそれぞれ飲み物を渡すと、ゆっくりと女性達に向き直った。
「それで、私の連れに、何か、御用で、も……?」
その唇に浮かぶのは、誰もが見惚れるほど見事な微笑。
だが、体からは戦いの中で見るような殺気が、しっかりと放たれている。
「あ、いえ、わたし達は別に……」
「お、お連れさんと仲良くね」
そそくさと去っていく女性達の背中に向けて、クロスはふんっと鼻を鳴らした。
「……誰が二人を渡すかってんだ!」
「なんだあ? 嫉妬したのか?」
「ククッ、嫉妬か……」
オルクスとディオスが、にやりと口角を上げて、顔を覗きこんでくる。
(そうだよ、嫉妬するに決まってんだろ!)
なにせ彼らは、自慢のパートナーなのだから。
内心では肯定しつつもそれを口にするのが恥ずかしくて、クロスは二人を睨み付ける。
「ほらオルク、ディオ! もう少し休んだら観覧車乗りに行くよ!」
自分としては、語気荒く言ったつもりだ。
それなのにオルクスもディオスも、変わらずにやにやしているのだから、たまらない。
「ふんっ!」
クロスはあからさまに、そっぽを向いた。
だがオルクスとディオスは、そんなクロスが可愛くて仕方がない。
ここは何とかして機嫌を直してもらわなければ……と思ったところで、二人ははたと気付いた。
彼女は、自分のための飲み物を買ってこなかったではないか。
オルクスがクロスに、自分の飲みかけのカップを差し出す。
「ほらこれ分けてやるから、落ち付けよ」
「これも飲んでいいぞ」
クロスは差し出されたふたつのカップを前に、目を瞬いた。
オルクスのものは、甘み好きな彼にあわせて、いちごミルク。
ディオスのものは、さっぱりグレープフルーツジュース。
さて、どちらにしようかと迷っていると、二人が揃って。
「間接キスだけどな」
その言葉に、かっと顔が熱くなった。
(くそ、こうなりゃやけだ!)
クロスは二人のカップを同時に奪い、二本のストローを口に含んで、一気に中身を吸い上げた。
とろりと甘いミルクの中に、酸味のある柑橘の味が混じって、これがなんとも――。
「まずっ!」
思わず顔をしかめたクロスを、オルクスとディオスは左右から同時に抱きしめる。
「ほんと可愛い奴だな!」
パレードを見たり、ショップを覗いたりしているうちに、時刻は夜となった。
アトラクションも、そろそろ終わり。
三人は最後に、マーメイド・レジェンディア全体を一望できる観覧車『ブルーム・フィール』に乗ることにした。
そこからは、ライトアップされた古城や、多くのアトラクション施設、そして光り輝く月光華の群生地を見下ろすことができる。
その美しさに、クロスは感嘆の声を上げた。
「わあ……! 夜景、すっごく綺麗だな! ……二人共、今日はありがとな」
振り返り、対面する椅子に並んで座る、オルクスとディオスを見つめる。
「今日一日楽しかったぜ」
「なあにこれ位お安い御用さ。 オレも楽しめたしな!」
「俺は初めてだったが、楽しかったぞ」
二人の笑顔に、クロスの胸には温かい想いが満ちていた。
(確かに今日は楽しかった……。でも俺達は、もっと幸せになれるんだよな)
この二人とならば、そうなりたい。
そう考えたとき、クロスの唇は自然に動いていた。
「なぁ、今度はさ、俺達の小さな家族と一緒に来れたら良いよな」
そんなクロスの言葉に、二人は即座に頷いてくれる。
「勿論さ、今度はぜひ、連れて来よう」
「あぁ、皆で一緒に遊ぼう」
それが、いつになるかはわからないけれど、きっとそんなに遠くはないだろう。
クロスは二人の前に、右手を差し出した。
「未来の約束だよ」
「だな」
「あぁ、約束だ」
オルクス、ディオスと順に手が重なる。
これはクロスとオルクス、ディオスの、とある一日。
約束の夜のこと。
小さな子供でも安心のメリーゴーランドから、大人も怖がるお化け屋敷、興奮が味わえることまちがいなしの絶叫系まで、アトラクションは様々。
その他、夢の国そのままのパレード、夜空を彩る花火など、楽しみは目白押しなのである。
クロスとオルクス、ディオスの三人は、その日朝一番に、その広大な遊園地を訪れた。
古城周辺……ということで、落ちついた趣かと思いきや、ポップな色合いのゲートをくぐって進んでいく。
正面をしばらく行った先に、エリアの地図が設置してあるようだったが、クロスはそれには目もくれなかった。
だって、この園内のどこに行っても自由なのだ。それなら一日かけてどこにでも行って、遊び尽くしてやりたいと思って当然だろう。
「オルク! ディオ! ほら早くアトラクションに乗ろうぜ!」
並ぶオルクスとディオスを、振り仰ぐ。
その言葉に、いち早く反応したのはディオスだった。
「勿論だ! 行くぞ、クロ! ルク!」
ともに駆けだす二人に、オルクスが声をかける。
「っておいこら! 二人して走るんじゃねえ!」
だが保護者然として言いながらも、オルクスは笑顔である。
なにせクロスは、早起きもなんのその、行列の一番先頭で、今か今かとゲートが開くのを待ちながら、周囲をきょろきょろと見まわしていたのだ。
「わぁ、遊園地なんて何年振りだろう……!」
その隣で、ディオスもまた銀の瞳をきらきらと輝かせていた。
「ここが、遊園地……! こんなところ、初めて来たっ!」
「オレも遊園地なんぞ数年ぶりだなあ」
彼らを微笑ましく見つめながら、気づけばオルクスも、二人と同じような言葉を漏らしていた。
だから、全力ダッシュして行った二人の気持ちが、よくわかる。
「オルク! 早く!」
先行くクロスが振り向いて、手を招く。
「今行く!」
オルクスは答え、二人の元へと駆け寄った。
「まずはこれがいい!」
クロスが真っ先に選んだのは、ジェットコースターでは定番タイプとも言える『マーメイド』だった。
これは特別な仕組みのない、高低差のみを楽しむアトラクションで、小さな子供も、安心して乗ることができる。
だが、スリルがないわけではない。――とくに、久しぶり、または初めて遊園地に来る三人にとっては。
「すごい!」
「高いっ!」
「けっこう早いな!」
強い風に、青い髪と、紫の髪をなびかせて、クロスとディオスはご機嫌だ。
銀髪のオルクスも、赤い瞳を見開き、顔面に風を受け止める。
次は空中ブランコ『ウォーター・ブランコ』に挑戦した。
これはそのまま、宙を舞う大ブランコである。
体はブランコから落ちない仕組みにはなっているものの、足の下には何もない。
ふわり、と空を舞っているような浮遊感。
日頃の生活では、絶対に感じられない感覚に、興奮の鳥肌が立つ。
「うわああっ!」
三人は揃って、高い声を上げた。
その後、長蛇の列に一旦別れを告げて、食事をとった。
そして次は、揺れるのではなく、「落ちる」アトラクション。
『ゴールド・フリーウォール』である。
がたがたと音を立てて、人を乗せた箱型部分が、高く上って行く。
周囲に見える景色は、鮮やかでごみごみとした遊園地のそれから、遠く見渡す自然に変わった。
空の中から、ゴールドビーチの海と砂浜、青と白が見渡せるのだ。
「わあ……すごいな」
クロスが思わず、感動の声を漏らす。だが、その直後。
「わああああっ!」
体はいっきに、大地に向かって落ちていく。
なんていうスピードだ!
「おおおおっ」
銀の瞳を見開くディオス。その横で、オルクスはぎゅっと目をつぶっていた。
(この胃の持ちあがるような感覚……だめだこれっ)
それでもオルクスは、次なるアトラクションも参加した。
『カプカプ・アクアジェット』
10メートルの高さから傾斜を一気に滑り落ち、水面に突っ込む、びしょ濡れ必至のアトラクションである。
三人は、施設が貸してくれているレインコートを着て、乗り物に乗り込んだ。
「これ、絶対濡れるやつだろ。クロ、タオル持ってるか?」
「こういうのは、その後を気にしないのが楽しいんだよ、なあ、オルク?」
「まあ天気もいいし、すぐ乾くんじゃないか」
オルクスが答えると、クロスが「ほらな」と笑う。
だが、アクアジェットの水しぶきは、予想をはるかに超えていた。
水面に叩きつけられるかのような衝撃!
そしてもはや、水柱の中に突入したかと思える水しぶき!
「ちょ、ちょっと!」
「あはは、ディオすっごい濡れてる!」
「それはクロを庇ったからでっ」
「良くやった、ディオ」
正直に言えば、体が自然と動いただけだったが……。
(二人が楽しそうだから、いいか)
ディオスは、クロスが貸してくれたハンカチで顔を拭った。
まだ、アトラクションは他にもある。
だが、三人はすぐに次へ向かうことはできなかった。
ここで、オルクスがダウンしてしまったのだ。
「初めて絶叫系に乗ったが、楽しいし面白いな! ストレス発散になって何度でも乗れるぞ!」
そう言いながら、ディオスはさっき乗ったばかりのカプカプ・アクアジェットを見やった。
しかし視線はすぐに、傍らのオルクスへ。
「だが、俺達につき合わせてしまってすまない、ルク……」
ディオスは、ベンチに腰掛け、脱力しているオルクスの背をゆっくりとさすった。
彼の逆隣では、クロスもまた心配そうにオルクスを見つめている。
「オルク、平気か……?」
オルクスは「あー」と言いながら顔を上げた。さっき真っ白だった顔色は、今は少しだけ血の気が戻ったようだ。
でも、普段ほどの生気はない。それでもオルクスは、唇にうっすらと笑みを浮かべた。
「平気だ……。オレも普段は絶叫系は平気なんだがな……。多分、久々に乗ったからだと思う……」
「御免な、俺たちにつき合わせちまって……」
「クーとディオは全く大丈夫なのか、若いって素晴らしい……」
オルクスはそう言って、うなだれるクロスと、ディオスの頭にとんと手を置いた。
ディオスが、かっと口を開く。
「何を言うか! ルクだってまだまだ若いだろ!」
「とは言っても、二人よりは上だからな、オレ」
苦笑しつつ、青と紫、二つの頭の上から手を下ろすオルクス。
平気と言われても、その気怠そうな様子を見ていれば、どうにかしてやりたいと思うもの。
「もうちょっとここで休憩するか」
言ってクロスは、ベンチから立ち上がる。
「俺、飲み物買って来るから待ってろよ!」
「うぃー、すまん、頼む……」
オルクスの返事を聞くなり、彼女は飲食店の方へと走り出した。
両手に、ストローのささった紙のカップをひとつずつ持って、クロスは「うん」と頷いた。
「よし、二人の飲み物はこれで良いか」
本当ならば、ダッシュで戻ってオルクスに渡したいところ。
でも、うっかり飲みものをこぼしでもしたら大変だ。
ただあの二人を、こんな人が多いところに放っておくのも心配だった。
なにせ彼らは、クロス自慢のパートナーである。
「悪い虫を引き寄せないとも限らねえし」
クロスは足早に、彼らが待つ場所へと向かった。
ベンチに残ったオルクスは、はっと息を吐き、丸めていた背を伸ばした。
フリーフォールで、胃がせりあがるような感じがした後、大人しくしていればよかった。
それでも。
「――ふぅ、だいぶ良くなってきたか……」
腹のあたりをさすって言えば、ディオスがにこりと微笑む。
「そうか、それならなによりだ」
「ディオも悪いな、折角の遊園地だってぇのに……」
「いや、気にするな」
苦笑と微笑。
赤と銀の目が合い、それを離そうとしたときに。
「あのー、お兄さん達、お二人ですか?」
「わたし達も二人なんですけどぉ、もしよかったら、一緒に回りませんか?」
突然聞こえた見知らぬ声に、オルクスとディオスは目を瞬いた。
見やれば、自分達より少し若いくらいだろうか、ボディラインを強調する服を着た女性が二人、そこに立っている。
(おっと、まさかの逆ナンかよ)
(これが噂の、逆ナンとやらか……!)
二人はすぐに女性から目を離し、互いをちらと見やった。
なにせ、一人の女性をともに選んだ男達だ。
この状況で考えることなど、言葉を交わすまでもなく、わかりきっている。
(断る)
(当たり前だ!)
オルクスの即決にディオスが同意し、二人が口を開こうとした瞬間。
「オルクー、ディオー、お待たせー」
クロスの声が、その場に響いた。
「クーッ!」
「クロッ!」
助かった、とばかり、二人の視線がクロスに向く。
クロスは二人にそれぞれ飲み物を渡すと、ゆっくりと女性達に向き直った。
「それで、私の連れに、何か、御用で、も……?」
その唇に浮かぶのは、誰もが見惚れるほど見事な微笑。
だが、体からは戦いの中で見るような殺気が、しっかりと放たれている。
「あ、いえ、わたし達は別に……」
「お、お連れさんと仲良くね」
そそくさと去っていく女性達の背中に向けて、クロスはふんっと鼻を鳴らした。
「……誰が二人を渡すかってんだ!」
「なんだあ? 嫉妬したのか?」
「ククッ、嫉妬か……」
オルクスとディオスが、にやりと口角を上げて、顔を覗きこんでくる。
(そうだよ、嫉妬するに決まってんだろ!)
なにせ彼らは、自慢のパートナーなのだから。
内心では肯定しつつもそれを口にするのが恥ずかしくて、クロスは二人を睨み付ける。
「ほらオルク、ディオ! もう少し休んだら観覧車乗りに行くよ!」
自分としては、語気荒く言ったつもりだ。
それなのにオルクスもディオスも、変わらずにやにやしているのだから、たまらない。
「ふんっ!」
クロスはあからさまに、そっぽを向いた。
だがオルクスとディオスは、そんなクロスが可愛くて仕方がない。
ここは何とかして機嫌を直してもらわなければ……と思ったところで、二人ははたと気付いた。
彼女は、自分のための飲み物を買ってこなかったではないか。
オルクスがクロスに、自分の飲みかけのカップを差し出す。
「ほらこれ分けてやるから、落ち付けよ」
「これも飲んでいいぞ」
クロスは差し出されたふたつのカップを前に、目を瞬いた。
オルクスのものは、甘み好きな彼にあわせて、いちごミルク。
ディオスのものは、さっぱりグレープフルーツジュース。
さて、どちらにしようかと迷っていると、二人が揃って。
「間接キスだけどな」
その言葉に、かっと顔が熱くなった。
(くそ、こうなりゃやけだ!)
クロスは二人のカップを同時に奪い、二本のストローを口に含んで、一気に中身を吸い上げた。
とろりと甘いミルクの中に、酸味のある柑橘の味が混じって、これがなんとも――。
「まずっ!」
思わず顔をしかめたクロスを、オルクスとディオスは左右から同時に抱きしめる。
「ほんと可愛い奴だな!」
パレードを見たり、ショップを覗いたりしているうちに、時刻は夜となった。
アトラクションも、そろそろ終わり。
三人は最後に、マーメイド・レジェンディア全体を一望できる観覧車『ブルーム・フィール』に乗ることにした。
そこからは、ライトアップされた古城や、多くのアトラクション施設、そして光り輝く月光華の群生地を見下ろすことができる。
その美しさに、クロスは感嘆の声を上げた。
「わあ……! 夜景、すっごく綺麗だな! ……二人共、今日はありがとな」
振り返り、対面する椅子に並んで座る、オルクスとディオスを見つめる。
「今日一日楽しかったぜ」
「なあにこれ位お安い御用さ。 オレも楽しめたしな!」
「俺は初めてだったが、楽しかったぞ」
二人の笑顔に、クロスの胸には温かい想いが満ちていた。
(確かに今日は楽しかった……。でも俺達は、もっと幸せになれるんだよな)
この二人とならば、そうなりたい。
そう考えたとき、クロスの唇は自然に動いていた。
「なぁ、今度はさ、俺達の小さな家族と一緒に来れたら良いよな」
そんなクロスの言葉に、二人は即座に頷いてくれる。
「勿論さ、今度はぜひ、連れて来よう」
「あぁ、皆で一緒に遊ぼう」
それが、いつになるかはわからないけれど、きっとそんなに遠くはないだろう。
クロスは二人の前に、右手を差し出した。
「未来の約束だよ」
「だな」
「あぁ、約束だ」
オルクス、ディオスと順に手が重なる。
これはクロスとオルクス、ディオスの、とある一日。
約束の夜のこと。
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||||
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リザルト筆記GM | 瀬田一稀 GM | 参加者一覧 | ||||||
プロローグ筆記GM | なし |
|
エピソードの種類 | ハピネスエピソード | ||||
対象神人 | 個別 | |||||||
ジャンル | イベント | |||||||
タイプ | イベント | |||||||
難易度 | 特殊 | |||||||
報酬 | 特殊 | |||||||
出発日 | 2017年5月13日 |