(イラスト:津木れいか IL


歩隆 翠雨の『ウィンクルムだらけのサマードリーム!』
巴めろ GM

プラン

アクションプラン

歩隆 翠雨
(王生 那音)
10
夜の海、絶景だ…思う存分、写真に収めたい
って、イカンイカン
これは慰安旅行だから
那音はこういう静かなのがいいだろうと、クルージングを選んで誘ったんだ
ついカメラに伸びる手を我慢しつつ、那音に話しかける

「言葉を失う光景ってこういうのを言うんだろうな」

返って来た笑顔に、思わずどきっとして視線を外す
…まだ、慣れないというか…こいつ、イケメン過ぎるだろ、女なら確実に落とされてるぞ…って、何を考えてるんだか

「え?いいのか?」
嬉しい
シャッターを切る中、綺麗だな…と那音を撮影

「人を撮るのは苦手だけど…那音は、何となくいいかなって…
何つーか…綺麗だなと思ったから」

驚いて硬直
「何で…?」
那音から慌てて離れ
鼓動が早い
動揺を隠し深呼吸していたら、後ろから抱き締められ

「分からない……」
『今はそれでいい』那音の声がし、瞳を閉じる

※記憶喪失だが、過去の経験から無意識に、自分に向けられる愛情を信じられず思考閉ざしている

リザルトノベル

●星明かりの下、貴方を想う
(夜の海、絶景だ……思う存分、写真に収めたい)
 パートナーの王生 那音と共に、クルーザー『リツィーパシオン』へと乗り込み、とっておきの景色を2人占めして。歩隆 翠雨は、うずうずとしながら愛用のカメラを手に取りそうになり――、
(って、イカンイカン)
 すんでのところで我に返って、カメラへと伸びる手を諌めた。
(これは慰安旅行だから。那音はこういう静かなのがいいだろうと、クルージングを選んで誘ったんだ)
 自身にそう言い聞かせながら、そっと、傍らの那音を見遣る。那音は青の双眸に、今は頭上に瞬く星の煌めきを映していた。その瞳は、曇りのない青空に幾らともなく星が散っているような、或いは、澄んだ水底に数多の星が沈んでなお輝いているような様相で。翠雨は寸の間、彼の眼が生み出す幻想的な情景に見入った。と、視線に気づいた那音が、翠雨の方を振り向く。静かなその眼差しを受けて、翠雨は少しだけ笑った。
「言葉を失う光景って、こういうのを言うんだろうな」
 言えば、返ってきたのは、応じる声ではなく見惚れるような笑顔。その笑みときたらケチの付けようもないほど端正なもので、翠雨は思わず胸をどきりと跳ねさせて、そのままふいと視線を逃がした。
(……まだ、慣れないというか……こいつ、イケメン過ぎるだろ、女なら確実に落とされてるぞ……)
 視線を逸らした先でつらつらとそこまで考えたところで、翠雨はハッと我を取り戻す。
(……って、何を考えてるんだか)
 先ほど頭に浮かんだ考えを吹き飛ばすように、頭を振る翠雨。そんな翠雨の百面相を、那音は可笑しいような気持ちで見つめていた。可笑しいと言っても、決して嘲っているわけではない。それはひとえに、愛しさから来るものだ。こちらへの気遣いが滲む言葉、初々しいような反応。
(その様子が可愛いと言ったら、どんな顔をするだろうか?)
 それを空想することもまた甘美ではあったが、想いはそっと胸に秘して。那音はその代わりに、翠雨へと全く別の台詞を投げた。
「――折角の絶景だ。写真を撮ったらどうだ?」
 バッ! と、翠雨が真っ直ぐに顔を上げる。その頬が軽く紅潮しているようにも見えるのは、星明かりの加減か……いや、きっと気のせいではないだろう。翠雨は、写真を撮ることが好きなのだ。その声までも、那音の言葉を受けて、ぱあと華やぐ。
「え? いいのか?」
「ああ、勿論だ」
 嬉しい、という感情を翠雨は隠そうともしなかった。すぐにカメラを手に取って、混じりけのない星空や遠くに霞む景色を手際良く、けれど作業と言ってしまうにはあまりにも労わりに満ちた手つきで写していく。シャッター音が、何度ともなく辺りに響いた。カメラを手にした翠雨の瞳がきらきらと、いっそ頭上の星々よりも眩しいほどに輝いているのに、那音はふっと微笑する。そうして那音は、翠雨が今まさに写真に収めたばかりの星空を、もう一度見上げた。と、その時。
 ――パシャリ。
 今一度響いたシャッター音の方へと、那音は眼差しを遣った。翠雨のカメラは、真っ直ぐに那音へと向けられている。
「あ……邪魔して悪い。びっくりさせたよな」
 謝罪の言葉を述べながら、慌てた様子を見せる翠雨。綺麗だな、と思った時には、指がもう、シャッターを切っていたのだ。那音の瞳はやはり、星泳ぐ青空か、或いは星々が眠る海のようだった。その眼差しも、那音自身の姿も、あまりにも美しく鮮やかに、翠雨の目の奥に焼き付いている。そんな翠雨へと視線を遣ったままで、那音は思った。こうして、翠雨の被写体になるのは2回目だと。
(1回目の時、翠雨さんは『何となく』と答えたが……)
 あの日のことを、思い出す。喫茶店での時間、好みの話、ケーキの味、食べさせ合いっこ。そして、思わず笑みを零したところを、写真に収められたこと。人を撮るのは苦手だったのではないかとの那音の問いに、翠雨は確かに「何となく」と答えたのだった。
「人を撮るのは苦手なのでは?」
 ファインダーを向けられるのは2度目、この問いもまた再びのもの。けれど、返ってきた答えだけは、あの日とは違っていて。
「人を撮るのは苦手だけど……那音は、何となくいいかなって……何つーか……綺麗だなと思ったから」
 応じる当たり障りのない言葉を、那音は思いつくことができなかった。
(――それは、特別という意味ではないのか)
 想いが記憶を呼び起こし、那音をそのまま過去へと誘う。そう、那音にとっては、最初から『特別』だったのだ。

 孤児だった頃、孤児院での虐めに耐えかねてとび出した那音が辿り着いたのは、とある豪邸だった。雨が降っていたのを、よく覚えている。何せ、那音は一晩雨風を凌がんとして、そこへ忍び込んだのだから。長い髪をして女物の着物を身に纏った『彼』とは、そこで出会った。
『私……いや、俺は翠雨。ここでそう呼んでくれる人は居ないけど』
『私は亡くなった奥様の代わりなの』
『帰りなさい。貴方は自由に生きられるのだから』
 館の主人に買われ、自由などないと『彼』は笑った。逃げれば、売った家族が路頭に迷うのだという。那音は孤児院に戻り、数日後、再度豪邸を訪ねた。しかしその時にはもう、豪邸から人の気配はなくなっていた。そのまま『彼』は、那音の前から幻のように消えてしまって、それっきり。

(……俺は、無力だった)
 けれど今、那音は翠雨のすぐ傍にいる。例え、翠雨が過去を失くしていても、彼が、かつてとはあまりに違った色を纏っていても。それでも今の那音は、容易に翠雨へと触れることができる、そういう事実が目前にあった。満天の星空の下、その身体を引き寄せて、そのまま流れるように口付けを零す。翠雨の身体が、那音の腕の中で一度跳ね、すぐ、石の如くに硬直した。やがて、翠雨の唇を震わせる、強張った声。
「何で……?」
「何故だと思う?」
 問いに、問いを返す。それに答えるよりも、翠雨は目前の状況から逃れることを優先した。那音から、それこそ殆ど逃げるようにして離れる翠雨。
(……鼓動が、早い……)
 動揺を隠さんと深く息を吸い込んで、外へと逃がす。心臓は未だ騒いでいるというのに、再び、温もりが翠雨を包んだ。那音が、後ろから翠雨の身体を抱き締めたのだ。
「翠雨さん。まだ、答えを聞いていない」
「そんなの……分からない……」
 耳元に、囁くような声。翠雨は、いやいやをするように首を緩く横に振った。
「――今は、それでいい」
 間近にいるはずの那音の声が、どこか遠くから聞こえるような錯覚を覚える。翠雨は、もっと遠く、誰の手も届かない場所へと逃げるようにして、ぎゅうと瞳を閉じた。翠雨がそのまま思考を閉ざしたのを、那音は敏感に感じ取る。
(翠雨さんを、知りたい)
 今すぐには、難しいことなのかもしれなかった。翠雨は、那音の腕の中にありながら、考えることさえ放棄してしまっている。記憶を失ってなお、過去の経験のどれか、或いは全てのせいで、無意識に、そうせずにはいられないのかもしれない。事実、翠雨は、那音だけでなく本人さえ知らない、記憶としては忘れてしまっていることだが、自分に向けられる愛情を信じるということができないが故に、思考を閉じたのだった。翠雨の柔らかいところは、堅牢な殻の中に息をひそめて隠れている。それでも、
(ゆっくりでいい。俺を見て欲しい)
 那音は、そう願わずにはいられなかった。冷たい夜の風が、潮の香りを含んで辺りに踊る。2人の頬を撫でていく。
(……翠雨さん)
 触れ合う温度が余計に愛おしく感じられて、那音は胸の内にその名前を噛み締めるように呟いた。『リツィーパシオン』は、2人を乗せ、夜の海を滑るようにしてゆったりと進んでいく。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 巴めろ GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:歩隆 翠雨
精霊:王生 那音
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2017年5月13日

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