(イラスト:九廸じゃく IL


クロスの『聖なる夜に恋の魔法を!』
白羽瀬 理宇 GM

プラン

アクションプラン

クロス
(オルクス)
(ディオス)
12 7

☆カルボナーラ

オルク、ディオ、料理美味しいな(微笑
こんな美味しいイタリアン初めてだ!
連れてきてくれて有難う(ニコ
でもオルクのやディオのも美味そうだな…
えっ良いのか? なら遠慮なく…
うん美味しい!
はいお返し、な!(お互い食べさせ合い

えっ露天風呂!?
マジか!やったー♪
ゆっくり浸かろう♪

☆露天風呂
ふぅ…癒されるなぁ…
一気に疲れが吹き飛ぶよ…(ふにゃり
アレ? オルク、背中の所新しい傷出来てね?
なんか刀傷…?みたいな…ってはぁ!?
お前何で言わねぇんだよ!?
そんなに俺達の事、頼りねぇのか…?(涙目
そりゃ確かにお揃いだけど…
むぅ、誤魔化された気がする…(ボソ
えっ!? 左頬だけじゃなかったのか!?
気付かなかった…
そうだったのか…
なぁそれならさ、俺達も左肩にタトゥー掘ろうぜ
それなら本当のお揃いだし俺達の絆で左肩に上書きしてやろう!
オルクは十字架と銀狼でしょ!
ははっ全員動物が入ってんな!
俺って九尾なのか…?

リザルトノベル

◆幸せの味

 場所はホワイト・ヒル『スノウ・ジュエル』
 抑えられた照明が上質なムード感を演出するレストラン。
 大きな窓からは、クリスマスのイルミネーションと雪景色が一望できるのだが。
「オルク、ディオ、料理美味しいな!」
 窓際の席に座るクロスは、目の前のカルボナーラに夢中である。
 周囲に配慮し抑えてはいるものの、その声には隠しようもない興奮の色が混ざっていた。
 一方ディオスはというと、感動しているクロスとは対照的に冷静に料理の味を吟味している。
「ふむ、流石一流だ。ニンニクの香りが立っていて、オリーブオイルはしつこくない」
 ペペロンチーノは香りを楽しむものだからこそ、素材の良さや料理人の腕が試されるのだ。
 ごまかしが効かない料理が美味しい、それはまさに一流の証だとディオスは目を細める。
 昨年のような、慣れた場所でのアットホームなクリスマスもいいが、こんな上質を味わうのもいいものだ。 
「ホントだな、これは美味い!」
 ディオスの言葉に頷くオルクス。
 一流の料理でも普通の料理でも食べっぷりに変化のないオルクスだが、どうせ食べるならやはり美味しいものの方がいい。
 気持ちのよいペースでボロネーゼを口に運ぶオルクスの表情は幸せそのものだ。
「ゴロゴロした肉がアクセントに入ってるから尚更だ!」
 粗挽きの牛肉が演出するしっかりとした食感がボリューム感を作り上げ、
 一般的には軽いと思われがちなパスタを、肉料理のような食べごたえのあるメニューへとランクアップさせている。
 ほとんど無意識にオルクスが「うまい」と呟けば、その声を拾ったクロスがにっこりと笑った。
「本当、こんな美味しいイタリアン初めてだ!」
 今にも頬が落ちてしまいそうなクロスの笑顔。
 その様子に眩しそうに目を細めて、ディオスは言う。
「こんなに美味い料理はそうそうないぞ」
 一流店、有名店とよばれるものの中でも、ここがトップクラスであることは間違いない。
 ディオスがそう付け加えると、クロスはまるで花のような微笑みを浮かべた。
「連れてきてくれて有難う」
 その表情に見惚れ、動きを止めるオルクスとディオス。
 クロスのどうしたのかと問う視線に気づき、二人精霊はごまかすように飲み物のグラスに手を伸ばした。

「オルクのやディオのも美味そうだな……」
 食事を進める最中、ポツリと呟くクロス。
 とはいえクロスの胃袋には、ペペロンチーノやボロネーゼを追加注文して完食するほどの余裕はない。
 するとディオスが言った。
「クロ、ルク、一口味見してみるか?」
「えっ良いのか?」
 クロスがチラリとオルクスの方を伺えば、オルクスはさも当然だというようにうなずきを返す。
「勿論、当たり前だろ」
 質の良い飲食店で、互いの皿を交換するというのはあまり褒められたことではないが、
 さすが一流の店というべきか、他の客の視線は自然に置かれた観葉植物やパーテーションによって上手くさえぎられ
 よほど目立ったことをしない限りは、他者の迷惑になることもないだろう。
「なら遠慮なく……」
「ほら」
 クロスの口の前に、フォークに巻き取ったボロネーゼを差し出すオルクス。
「うん美味しい!」
 クロスが幸せそうにボロネーゼを噛み締めている間に、オルクスは同じようにしてディオスにもボロネーゼを分け与える。
「はいお返し、な!」
 今度はクロスがカルボナーラをオルクスとディオスに食べさせる。
 あーん、という声が聞こえてきそうな表情でそれを受け入れてたディオスが幸せそうに微笑んだ。
「あぁ二つともとても美味しいな」
 美味しいものを手ずから食べさせてもらう。
 普通に暮らしていれば、子供と親などの間では普通に行われている行為なのだろう。
 しかしディオスにとっては違っていた。
 分け与えられた料理以上のものが身体を満たしていくのを感じながら、ディオスは自分の皿のペペロンチーノをフォークに巻きつける。
「ほら……」
 パクリと無邪気に食いつくクロスの表情が愛おしい。
 当たり前のように受け入れるオルクスの一口が嬉しい。
「カルボナーラもペペロンチーノも美味ぇな!」
 幸せを噛みしめるディオスの視線の先でオルクスが微かに眉を寄せる。
「辛いけど……」
 ボソリとつぶやかれる一言。
 わざと、ほんの少しだけクールぶってディオスは答えた。
「この辛さが良いんだ」
 辛党なディオス。
「もう少し辛くても行けるな……」
 そんな言葉にオルクスがうげぇと声を上げた。

「そうだ、食べ終わったら露天風呂入りに行こう」
 デザートが届く頃、ディオスが口にした一言にクロスがぱっと顔を輝かせる。
「えっ露天風呂!?」
「泊りの予約はしてあるから安心してくれ」
 ディオスが言うと、ニッと笑ったオルクスがディオスの肩を叩く。
「流石ディオ、ぬかりねぇな! 日頃の疲れを癒しに行こうか」
「マジか! やったー♪ ゆっくり浸かろう♪」
 

◆大切にしてほしいもの

 『白馬岳』の頂上にある和風リゾートホテル『そらのにわ』
 澄んだ星空のした、バスタオルを身体に巻いて露天風呂に浸かったクロスが満足そうなため息をつく。
「ふぅ、癒されるなぁ……」
 クロスの右隣では、ディオスが湯の心地よさに目を細めている。
「これが、幸せか……」
「あー、そーだなー」
 答えるオルクスはクロスの左隣。
 美味しい食事でお腹を満たした後の風呂は幸せだと決まっているのだ。
「それに星空も綺麗だし、湯加減も申し分ない」
 雪に覆われた山の頂上ということで周囲の空気は冷たいが、
 風が当たって冷やされる頭と、身体を温める湯の温度のバランスが実に良い。
「一気に疲れが吹き飛ぶよ……」
 風呂のふちに頭をあずけたクロスの表情はすっかりと緩みきって、日ごろの精悍さは微塵も見当たらない。
 同じように力の抜けた顔で天を仰ぎながらディオスが「あー……」とため息をつく。
「今年1年は怒涛だったからな」
 日々の仕事や生活に加えてA.R.O.A.での任務。
 それだけでなく、それぞれの気持ちや生き方も大きく変わった1年だった。
 たまにはこうして、まるでカピバラのようにのんびりするのも悪くない。

 しばらくの間、ただぼんやりと湯の中に浸っていた3人だったが、クロスがふとあることに気づいて頭を起こした。
「アレ? オルク、背中の所新しい傷出来てね?」
 ディオスも何だ何だというように身体を起こし、オルクスはちょっとだけ「しまった」というような顔をする。
「なんか刀傷……? みたいな」
 クロスとディオス、2人から背中を凝視され、オルクスはポリポリと己の頭をかく。
「んぁ? あぁそれか? この間の任務で負った奴だな」
 A.R.O.A.の仕事ではない時のものだと言うオルクスに、クロスとディオスが同時に眉を跳ね上げた。
「はぁ!? お前何で言わねぇんだよ!?」
「おいルク、何故直ぐに言わない!」
 大した傷ではなかったのだと、そんな表情を見せながらオルクスは言う。
「一応自分で手当はしたが残っちまったか……」
 まるで何でもないようにオルクスは言うが、
 仮に軽い怪我だったとしても、自分で背中の傷の手当をするのが容易でないことは、誰にでも想像できることだ。
 しかもそれが傷跡になるほどの怪我だったなら、困難さは倍増するだろう。
「深手なら医療チームを頼れ! それが嫌ならせめて俺達を頼ってくれ……!」
 怒るディオス。
 クロスは俯きながら声を揺らす。
「そんなに俺達は頼りねぇのか……?」
 2人の反応に、流石のオルクスも自分を粗末にしすぎたことを悟ったようだ。
「あー、悪かった……」
 手を伸ばしてクロスとディオスの頭をなでるオルクス。
「泣きそうになるんじゃねぇよ」
 だったら泣かすようなことするんじゃねえよというクロスの抗議に肩をすくめ、オルクスは笑う。
「だけどさ、背中に傷痕があるならオレ達お揃いじゃん?」
 どういうことかと首をかしげるクロスとディオス。
 そんな2人を順番に指差しながら、オルクスは言った。
「クーは3本傷、オレは2本傷、ディオは1本傷。ほらお揃いだ」
 ニッと笑うオルクス。クロスとディオスが困ったように顔を見合わせる。
「そりゃ確かにお揃いだけど……」
「あぁもう、そんな事言われたら怒れないじゃないか!!」
「誤魔化された気がする」
 むぅ……と眉根を寄せて呟くクロス。
 ディオスが観念のため息ついた。
「まぁ良いか」


◆上書きされるもの

 まんまと追求から逃れたオルクスが、ディオスの左肩に目をやる。
「お揃いって言ってもディオの場合、左肩に刺青あるが」
 まるで何でもないことのようにディオスの口から投下された爆弾に、クロスがぎょっとディオスを見る。
「えっ!? 左頬だけじゃなかったのか!?」
 クロスの視線を受け止めきれず、風呂の水面に視線を落としながらディオスは答える。
「左頬のは生まれつきだ。左肩のは無理矢理彫られた、死神の様な物を『証』としてな……」
 刺青と、そこにあるものを握りつぶすかのように己の左肩に爪を立てるディオス。
「気付かなかった」
「普段はメイクで隠しているからな」
 驚いたのだろう、半ば呆然と呟くクロスにディオスは苦笑を返す。
 そう、隠していたのだ。今の今まで。
「そうだったのか」
 考え込むように言葉を途切れさせるクロス。
 オルクスだけが、まるで何でもない様子で言葉を続ける。
「多分無意識だろうけど、刺青がある場所を強く握ってるからな」
 その言葉に、今まさに刺青を握っていたディオスは慌てて左肩から手を離した。
 しかしもう遅い。
 無意識に繰り返してきたその行動が、オルクスに刺青の存在を気づかせ、そして今オルクスの口からそれを暴露されたのだ。
 とっさには二の句の継げぬディオス。
 だがオルクスの中には確信があった。
 ディオスが左肩の刺青のことを隠し続けてきたのは、その刺青が彫られた経緯ゆえだということ。
 そしてディオスはそろそろその事情から自由になるべきであり、
 今のクロスとオルクスには、そんなディオスを受け入れる準備があるということ。
 だからこそ今この場所で、ディオスが隠し続けてきた刺青のことを口にしたのだ。

 しばしの沈黙の後、道を示したのは他でもない彼らの女神、クロスであった。
「なぁそれならさ、俺達も左肩にタトゥー掘ろうぜ」
 弾かれたように顔を上げるディオス。
 勝利の確信に満ちた笑顔でクロスが言う。
「それなら本当のお揃いだし、俺達の絆でディオスの左肩の刺青を上書きしてやろう!」
「それは良い! さすがクー、良いこと思いつくな!」
 笑い合うクロスとオルクス。
 背中の傷のようなこじつけではない、本物のおそろい。
「オルクは十字架と銀狼でしょ!」
 クロスの案にうなずき、オルクスはディオスの顔を見る。
「ディオは十字架と黒豹だな」
 まるで悪夢から急に引き戻されたような表情で、けれども希望の滲む声でディオスは返した。
「それならクロは十字架と九尾の狐だろう」
 ディオスの言葉にクロスが笑う。
「ははっ全員動物が入ってんな!」
 クロスが狐でオルクスが狼、そしてディオスが黒豹。
 一緒に何かをするだけでもワクワクするが、お揃いの刺青とは何と心踊る提案なのだろう。
 クロスの言葉の通り、過去の暗い時代がクロスとオルクスとの記憶で上書きされていく。
 もうメイクを施す必要もないのだ。
 色々と湧き上がってくるものを、ディオスは風呂の湯で顔を洗うフリをしてごまかした。
 そんなディオスをニコニコと眺めていたクロスがふと首をかしげる。
「あれ?そういえば俺って九尾の狐なのか…?」
「クーはオレ達を虜にした美女って事さ」
 軽いウィンクなどしながら答えるオルクス。
 ディオスもオルクスの言葉にうなずきを返す。
「ルクの言う通り、九尾の狐は美女に化けて男を虜にした逸話から来ている」
「俺達二人の九尾の狐と言う事だ」
 賢く、魅力的な狐。
 狐の策がディオスの刺青の記憶を上書きする日も近いのだろう。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 白羽瀬 理宇 GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:クロス
精霊:オルクス
精霊:ディオス
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2016年12月18日

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