プラン
アクションプラン
西園寺優純絆 (ルーカス・ウェル・ファブレ) (十六夜和翔) |
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7 ☆部屋 わぁ! カズちゃん、パパ、お部屋に露天風呂付いてるのだよ! それに、ベッドも大きいから三人で寝れるのだよ! パパの別荘とかには行った事あるけど、こういうのは来た事無いから凄く楽しみにしてたもんね♪ ねぇねぇパパ、カズちゃん、ご飯食べたら露天風呂に入ろう! ☆部屋食 わぉ、凄く豪華なご飯だねぇ… よぉしいっぱい食べるぞー! ……んー♪美味しい~(ニコニコ あっカズちゃん、嫌いな人野菜もちゃぁんと食べるのだよ? はい、あーん… ほら、食べられた♪ ってカズちゃん? 真っ赤な顔してどうしたの…? (?友達がこうすれば絶対に食べるって言ったのになぁ…) ☆露天風呂 ふぅ…とっても美味しかったのだよ~ ちょっと食べ過ぎちゃった… そうだ、お風呂入りに行こう! んー!お風呂気持ちぃのだよー♪ 星空も凄く綺麗だし… 姉様達にも見せたいなぁ…(泣きそうに俯く うんそうだよね、ユズにはパパやカズちゃんがいるもんね ありがとう(微笑 二人共大好き! |
リザルトノベル
●家族の灯室
最初に視界に映ったのは正面の真っ白な障子。
庭のライトアップの仄かな光を受けて、いらっしゃいませとお出迎えしてくれているよう。
部屋の中央にはこの時期ならではの掘りごたつ。大人が5人横に並んだとて、悠々とした大きさが特注たる存在感を溢れさせている。
その障子の先の窓を開くと、ここが白馬岳頂上であることを思い出させるような、町から見上げた夜空とは全く違った星々が瞬いて。
和風リゾートホテル『そらのにわ』にやってきた家族を、部屋の全てが温かく招き入れた。
「わぁ!」
「すっっっ……げぇー!!」
部屋に入った瞬間2人仲良くピタッと固まった後、同時に声が発せられたのを耳にして、ルーカス・ウェル・ファブレ は微笑ましそうに口元を緩めしばし息子たちの行動を見守ってみることにする。
「カズちゃん、パパ、お部屋に露天風呂付いてるのだよ! それに、ベッドも大きいから三人で寝れるのだよ!」
「俺様、こんな部屋に泊まったことねぇー! マジすっげー!」
「パパの別荘とかには行った事あるけど、こういうのは来た事無いから凄く楽しみにしてたもんね♪」
キラキラと屈託ない瞳を輝かせて、西園寺優純絆 と 十六夜和翔 はまた同時に動き出して
部屋の中を探索し出した。
「ねぇねぇパパ、カズちゃん、ご飯食べたら露天風呂に入ろう!」
「ふふっ、えぇ勿論ですよ」
「え!? 外に風呂があるのか!?」
部屋に隣接した小庭に湯気が立ち上るのを指して嬉しそうに言う優純絆の隣りへ、
バタバタと寝室探索から駆けてきて物珍しそうに和翔が覗き込む。
ファブレ家に引き取られてからというもの、和翔にとっては楽しい驚きの連続である。
最近はすっかり子供らしさも見せてくれるようになったそんな和翔の反応を、喜ばしそうに笑みを浮かべながら、
ようやくルーカスも二人の方へ歩み寄り声をかける。
「露天風呂入ったり、一緒に寝ましょうね。だからユズ、興奮するのは良いですが落ち着きましょう。ほらカズもですよ」
「……はっ! べっ別にはしゃいでなんかねぇし!」
はしゃいでましたよ? なんて勿論言わず黙するのが紳士のたしなみ。ルーカス、ただ笑顔で受け止めた。
「まっまぁ、ユズと父さんがどーしてもって言うなら、一緒に風呂入ったり寝たりしてやっても……」
プイ、と照れ隠しにそっぽを向いた和翔へ、「ええ。是非一緒に入りたいですね」と隠れた心へ出す助け舟も
すっかり板についたもの。
こぼれる笑顔の優純絆、それを横目で視界に入れてはそっと表情綻ばせた和翔。
眼鏡の奥で目を細めてルーカスは思う。
(この子達には色々体験をさせてあげたいですねぇ)
この小さな体で、すでにたくさんの苦労を受け止めてきた二人の子供。
更に、ウィンクルムとして時に厳しい戦いに赴く日々。
きっとまだまだ足りない。普通の子が体験しているような楽しい思い出が。
部屋からホテル全体へ探索を移して暫く経った後。
3人が再び自室へ戻って来ると、掘りごたつの大テーブルの上にはすでに夕食がしっかりと用意されていた。
良い匂いに誘われて、ふらふらとテーブルの前を行ったり来たりする優純絆と和翔。その色とりどりの料理たちに驚くのはルーカスも同様だったようで、微かに眼鏡をカチャリとかけ直す。
新鮮な蒸し野菜に始まり、カニや鯛、勿論お肉、デザートには花模様型取った果物ゼリー。
子供2人の分は量が控えめになっていれど、それでも3人で食べきれるのだろうかという様々な料理が
テーブルを彩っていた。
「わぉ、凄く豪華なご飯だねぇ……」
「おやおや、これは又、豪華なお食事ですねぇ……」
「おぉー、すっげぇ豪華なご飯だなこりゃ……」
今度は3人で同時に、息ぴったり。
重なった声に全員で視線交わらせれば、おかしそうに笑ったのち、席へとついた。
「よぉしいっぱい食べるぞー!」
「沢山食べるのは良いですが、ゆっくり良く噛んで、残さず好き嫌いせず食べましょうね」
「ハッそうなのっ。去年みたいに、カズちゃん食べ物喉に詰まらせたら大変なのだよ!」
「分かってるよ、父さん、……ってユズまだ覚えてて、じゃねえ! だからもう同じことやらねーってば!」
「……んー♪美味しい~」
「……ふむ、美味しいですな」
「聞いて無ぇだと!? ………あ、やっぱ美味いな、流石高級ホテルだぜ……」
一口頬張れば、和食ならではの繊細な出汁の味が広がった。
優純絆、ルーカスに続いて、思わず声を荒げていた和翔も勢いのまま突っ込んだカニの風味に、
一気に美味しい世界へいらっしゃいませ☆
家族団らんの温かい空気の中では、沈黙は重いものになどならない。
大人1人、子2人、しばし笑顔を浮かべたまま無言で目の前の料理を堪能した。
その最中……
(うげっ、野菜が沢山……よしさり気なく残そう……)
和翔、ルーカスが優純絆の魚の骨を取ってやっているのを確認すると、すすすーっと自分の更に盛られた野菜を
別の皿へと避けていく。
が、しかして。
「あっカズちゃん、嫌いな野菜もちゃぁんと食べるのだよ?」
澄みきった水晶のような瞳は全てを見ていた。
「はい、あーん……」
「……チッ、バレ、たぁ!?」
これは好き嫌いをしようとした天罰か、はたまたむしろ日頃の頑張りへのご褒美か。
和翔の口元めがけ、優純絆が上手に箸で野菜を掴み差し出している。
ルーカス、『ユズの言う通りですよ』とか、『ちゃんと食べないと大きくなれません』とか言おうとしていた口を、
自らの指先で静かに抑えた。
優純絆にお任せしていた方が、事はすんなりいきそうだと踏んだようだ。
(何であーんなんだ!? 父さんが居る前で食べろってか!?
あーんをして食べろってか!? ……あぁもう当たって砕けろだ!!)
思春期前の子供とて、たくさんの複雑な心を持っている。
最後はヤケのように男前に大きく口を開けて、
ぱっくんちょ!
「……こっこれで良いだろっ」
「ほら、食べられた♪ ってカズちゃん? 真っ赤な顔してどうしたの……?」
食べてくれたものの、どうしてか不機嫌そうにそっぽを向いてしまった和翔を、不思議そうに覗き込む優純絆。
(? 友達がこうすれば絶対に食べるって言ったのになぁ……)
更に何か尋ねようとした優純絆の隣りから、大きな掌を伸ばしてルーカスは和翔の頭をぽふりと撫でた。
「あぁ頑張りましたね、偉いですよ」
「お、おおげさだろ父さんは……」
頬を赤らめたまま、ぽそぽそと呟かれる言葉。
―― ……好きな子からさせられたらこうなりますよねぇ。
勇気を出した和翔の心中を思いやって、苦笑いを潜ませてフォローに回るお父さんがいるのであった。
●どこまでも繋がる輝きの下
「ふぅ……とっても美味しかったのだよ~」
ちょっと食べ過ぎちゃった……と、お腹をぽんぽんと叩いてみながら、優純絆は部屋の壁にもたれるように寄りかかった。
大きな画面のテレビに夢中になっている和翔と、仲居さんが料理の後片付けするのをさり気なく手伝っているルーカス。
2人を交互に見やって、ルーカスが片付けも一区切りついたというふうにお茶をすすった頃。
「そうだ、お風呂入りに行こう!」
美味しい食べ物たちですっかり忘れていたのを、優純絆は両手をパンッと打ち鳴らして思い出す。
「そうですね、そろそろ入りましょうか」
「しょうがねぇなぁ」
では部屋着用の浴衣を……と準備し始めるルーカスをちらりと見てから、和翔も潔くテレビを消した。
そんな和翔の手を取って、「カズちゃん! 背中洗いっこしよー♪」と窓の外へと引っ張っていく優純絆。
本当に仲良しな良いコたちですねぇ、なんて、のほほんとその後からルーカスも続くのだった。
角の取れた丸み帯びた石たちに、季節の変化を告げる木々たちが寄り添うように植えられた囲い。
その中に夜空を映した湯が、優純絆の動きに合わせてユラユラと揺れている。
「んー! お風呂気持ちぃのだよー♪」
「湯加減も丁度良いですし星空も綺麗ですねぇ」
「ふぃ~、そーだなー」
すっかり洗い終えた髪の毛を、顔に張り付いて邪魔にならないようにとタオルで頭の上に束ねてもらった優純絆は、
控えめながらお湯の中をすいーっと泳いでいる。
他のお客様もいるわけではないですし、とお父さんからの大目に見た許可下りに、
和翔も楽しそうにじゃぶじゃぶと歩き回って。
ひとしきり動き回れば、2人は自然とルーカスの傍に寄って落ち着いた。
「姉様達にも見せたいなぁ……」
どこまでも深い夜の空を眺めていると、日頃押し込めている寂しさが顔を出す。
姉様達を探すって決めたけれど、手掛かりの無い日々にどこかでずっと我慢していた言葉が漏れた。
先程までの笑顔がいつの間にか崩れては、呟やいた言葉と共に優純絆の顔は泣きそうに俯かれていた。
そんな優純絆を、挟むようにしてルーカスと和翔が寄り添う。
「……ユズ、大丈夫ですよ。きっと御姉様達もこの星空を見ていますよ」
「ユズ、落ち込むな! 俺様が必ず見つけ出してやるからよ!」
「パパ……カズちゃん……」
真っ黒なお湯から視界を上にやると、優しい微笑みと力強い笑顔に出会った。
更に和翔は、今度は優純絆の正面に移動して夜空を指差した。
「それに例え遠くに離れていても、空は繋がってんだ! 希望を持て、信じていりゃ必ず見付かる。
それまで俺様が傍に居てやるよ!」
力の込もった声とは裏腹に、優純絆の手を包み込んだ和翔の手はとても優しかった。
どうしてだろう……あの時から、どんどんカズちゃんがカッコよくみえる、気がするの。
遺跡で手当てしてくれた時より、
剣技で戦っていた時より、
コンテストで抱え上げてくれた時より、
日を追うごとにどこか逞しくなっていく姿に、胸の内に1つまた1つと何か温かいモノが積み重なっていく。
大人と違い根拠などない言葉。しかしそれは、時に大人が忘れた純粋な想い。
和翔の言葉はいつだって、まっすぐまっすぐ、優純絆の心に届いて光を灯す。
優純絆の表情が次第に変化していくのを見守って、ルーカスは和翔へも微笑を浮かべたまま視線をやった。
―― 流石です、カズならユズを託せますね。ユズも満更でもなさそうですしね……
「うんそうだよね、ユズにはパパやカズちゃんがいるもんね」
「おう! それにお願いもしたろ、鐘鳴らして。俺様が叶えてやるって」
「そういえば私は用があって行けませんでしたが。何をお願いしたんですか?」
「えっとね、『これからもずっとずっとずーっと! パパとカズちゃんと一緒に居られます様に』って」
花咲く笑顔を取り戻した優純絆が、チャペルで鐘を鳴らした時と同じように両手を広げてルーカスに告げた。
意表をつかれたように、ルーカスの瞳が僅か見開かれる。そしてとても幸せそうな笑みへと変化した。
「私のお願いも一緒に言ってもらったも同然ですね」
「パパも? ユズやカズちゃんとずっと一緒に居たいって思ってくれてる?」
「当然です」
「ありがとう」
もう優純絆の顔に寂しさは浮かんでいなかった。
替わりに、はにかんで染まった頬と明るい瞳を称え、ルーカスと和翔の腕へとギュッと抱き付いて。
「二人共大好き!」
「私も大好きですよ」
「おっ俺様も、大好き、だぞ……」
先程まで星たちと共に闇夜を照らしていたルーメンも、これ以上温かな家族の絆(+淡い恋心)を覗き見しないよう、
そっと薄い雲に顔を隠したようだった。
ルーメンが顔を隠したまま、窓辺からはテネブラの濃紺色の淡い光がカーテンの隙間から見え隠れする深夜。
ルーカスは静かに身を起こした。
3人で寝ても悠々と余る、キングサイズのダブルベッドの上。
優純絆を真ん中にした川の字で、手を繋いだまま小さな寝息を立てる二人の息子を見つめる。
―― 和翔……、ユズを、いやルキフェルをお願いします……
それは優純絆のもう一つの名前。本当となるはずだった真名。
血のつながった本当の親子だったと知ったのは、まだ最近の出来事。
愛しい人との間に出来た愛しいコ。そんな優純絆を、和翔になら任せられる。ルーカスは今日心からそれを実感した。
「ルチアも……見守ってくれているでしょうか……」
私がユズに、ルキフェルにこれからどう接していくか、伝えていくか……
そしてカズをどう導き、託していくか……
思考の海に沈みそうになった時、優純絆の、和翔とは反対の手で繋がれたルーカスの右手がきゅっと握り直された。
『むにゃ~……パパ、カズちゃ、ん……大好きなの~』
そんな寝言に、ふわりと微笑みで返してから。ルーカスは再びベッドに横になるのだった ――。
最初に視界に映ったのは正面の真っ白な障子。
庭のライトアップの仄かな光を受けて、いらっしゃいませとお出迎えしてくれているよう。
部屋の中央にはこの時期ならではの掘りごたつ。大人が5人横に並んだとて、悠々とした大きさが特注たる存在感を溢れさせている。
その障子の先の窓を開くと、ここが白馬岳頂上であることを思い出させるような、町から見上げた夜空とは全く違った星々が瞬いて。
和風リゾートホテル『そらのにわ』にやってきた家族を、部屋の全てが温かく招き入れた。
「わぁ!」
「すっっっ……げぇー!!」
部屋に入った瞬間2人仲良くピタッと固まった後、同時に声が発せられたのを耳にして、ルーカス・ウェル・ファブレ は微笑ましそうに口元を緩めしばし息子たちの行動を見守ってみることにする。
「カズちゃん、パパ、お部屋に露天風呂付いてるのだよ! それに、ベッドも大きいから三人で寝れるのだよ!」
「俺様、こんな部屋に泊まったことねぇー! マジすっげー!」
「パパの別荘とかには行った事あるけど、こういうのは来た事無いから凄く楽しみにしてたもんね♪」
キラキラと屈託ない瞳を輝かせて、西園寺優純絆 と 十六夜和翔 はまた同時に動き出して
部屋の中を探索し出した。
「ねぇねぇパパ、カズちゃん、ご飯食べたら露天風呂に入ろう!」
「ふふっ、えぇ勿論ですよ」
「え!? 外に風呂があるのか!?」
部屋に隣接した小庭に湯気が立ち上るのを指して嬉しそうに言う優純絆の隣りへ、
バタバタと寝室探索から駆けてきて物珍しそうに和翔が覗き込む。
ファブレ家に引き取られてからというもの、和翔にとっては楽しい驚きの連続である。
最近はすっかり子供らしさも見せてくれるようになったそんな和翔の反応を、喜ばしそうに笑みを浮かべながら、
ようやくルーカスも二人の方へ歩み寄り声をかける。
「露天風呂入ったり、一緒に寝ましょうね。だからユズ、興奮するのは良いですが落ち着きましょう。ほらカズもですよ」
「……はっ! べっ別にはしゃいでなんかねぇし!」
はしゃいでましたよ? なんて勿論言わず黙するのが紳士のたしなみ。ルーカス、ただ笑顔で受け止めた。
「まっまぁ、ユズと父さんがどーしてもって言うなら、一緒に風呂入ったり寝たりしてやっても……」
プイ、と照れ隠しにそっぽを向いた和翔へ、「ええ。是非一緒に入りたいですね」と隠れた心へ出す助け舟も
すっかり板についたもの。
こぼれる笑顔の優純絆、それを横目で視界に入れてはそっと表情綻ばせた和翔。
眼鏡の奥で目を細めてルーカスは思う。
(この子達には色々体験をさせてあげたいですねぇ)
この小さな体で、すでにたくさんの苦労を受け止めてきた二人の子供。
更に、ウィンクルムとして時に厳しい戦いに赴く日々。
きっとまだまだ足りない。普通の子が体験しているような楽しい思い出が。
部屋からホテル全体へ探索を移して暫く経った後。
3人が再び自室へ戻って来ると、掘りごたつの大テーブルの上にはすでに夕食がしっかりと用意されていた。
良い匂いに誘われて、ふらふらとテーブルの前を行ったり来たりする優純絆と和翔。その色とりどりの料理たちに驚くのはルーカスも同様だったようで、微かに眼鏡をカチャリとかけ直す。
新鮮な蒸し野菜に始まり、カニや鯛、勿論お肉、デザートには花模様型取った果物ゼリー。
子供2人の分は量が控えめになっていれど、それでも3人で食べきれるのだろうかという様々な料理が
テーブルを彩っていた。
「わぉ、凄く豪華なご飯だねぇ……」
「おやおや、これは又、豪華なお食事ですねぇ……」
「おぉー、すっげぇ豪華なご飯だなこりゃ……」
今度は3人で同時に、息ぴったり。
重なった声に全員で視線交わらせれば、おかしそうに笑ったのち、席へとついた。
「よぉしいっぱい食べるぞー!」
「沢山食べるのは良いですが、ゆっくり良く噛んで、残さず好き嫌いせず食べましょうね」
「ハッそうなのっ。去年みたいに、カズちゃん食べ物喉に詰まらせたら大変なのだよ!」
「分かってるよ、父さん、……ってユズまだ覚えてて、じゃねえ! だからもう同じことやらねーってば!」
「……んー♪美味しい~」
「……ふむ、美味しいですな」
「聞いて無ぇだと!? ………あ、やっぱ美味いな、流石高級ホテルだぜ……」
一口頬張れば、和食ならではの繊細な出汁の味が広がった。
優純絆、ルーカスに続いて、思わず声を荒げていた和翔も勢いのまま突っ込んだカニの風味に、
一気に美味しい世界へいらっしゃいませ☆
家族団らんの温かい空気の中では、沈黙は重いものになどならない。
大人1人、子2人、しばし笑顔を浮かべたまま無言で目の前の料理を堪能した。
その最中……
(うげっ、野菜が沢山……よしさり気なく残そう……)
和翔、ルーカスが優純絆の魚の骨を取ってやっているのを確認すると、すすすーっと自分の更に盛られた野菜を
別の皿へと避けていく。
が、しかして。
「あっカズちゃん、嫌いな野菜もちゃぁんと食べるのだよ?」
澄みきった水晶のような瞳は全てを見ていた。
「はい、あーん……」
「……チッ、バレ、たぁ!?」
これは好き嫌いをしようとした天罰か、はたまたむしろ日頃の頑張りへのご褒美か。
和翔の口元めがけ、優純絆が上手に箸で野菜を掴み差し出している。
ルーカス、『ユズの言う通りですよ』とか、『ちゃんと食べないと大きくなれません』とか言おうとしていた口を、
自らの指先で静かに抑えた。
優純絆にお任せしていた方が、事はすんなりいきそうだと踏んだようだ。
(何であーんなんだ!? 父さんが居る前で食べろってか!?
あーんをして食べろってか!? ……あぁもう当たって砕けろだ!!)
思春期前の子供とて、たくさんの複雑な心を持っている。
最後はヤケのように男前に大きく口を開けて、
ぱっくんちょ!
「……こっこれで良いだろっ」
「ほら、食べられた♪ ってカズちゃん? 真っ赤な顔してどうしたの……?」
食べてくれたものの、どうしてか不機嫌そうにそっぽを向いてしまった和翔を、不思議そうに覗き込む優純絆。
(? 友達がこうすれば絶対に食べるって言ったのになぁ……)
更に何か尋ねようとした優純絆の隣りから、大きな掌を伸ばしてルーカスは和翔の頭をぽふりと撫でた。
「あぁ頑張りましたね、偉いですよ」
「お、おおげさだろ父さんは……」
頬を赤らめたまま、ぽそぽそと呟かれる言葉。
―― ……好きな子からさせられたらこうなりますよねぇ。
勇気を出した和翔の心中を思いやって、苦笑いを潜ませてフォローに回るお父さんがいるのであった。
●どこまでも繋がる輝きの下
「ふぅ……とっても美味しかったのだよ~」
ちょっと食べ過ぎちゃった……と、お腹をぽんぽんと叩いてみながら、優純絆は部屋の壁にもたれるように寄りかかった。
大きな画面のテレビに夢中になっている和翔と、仲居さんが料理の後片付けするのをさり気なく手伝っているルーカス。
2人を交互に見やって、ルーカスが片付けも一区切りついたというふうにお茶をすすった頃。
「そうだ、お風呂入りに行こう!」
美味しい食べ物たちですっかり忘れていたのを、優純絆は両手をパンッと打ち鳴らして思い出す。
「そうですね、そろそろ入りましょうか」
「しょうがねぇなぁ」
では部屋着用の浴衣を……と準備し始めるルーカスをちらりと見てから、和翔も潔くテレビを消した。
そんな和翔の手を取って、「カズちゃん! 背中洗いっこしよー♪」と窓の外へと引っ張っていく優純絆。
本当に仲良しな良いコたちですねぇ、なんて、のほほんとその後からルーカスも続くのだった。
角の取れた丸み帯びた石たちに、季節の変化を告げる木々たちが寄り添うように植えられた囲い。
その中に夜空を映した湯が、優純絆の動きに合わせてユラユラと揺れている。
「んー! お風呂気持ちぃのだよー♪」
「湯加減も丁度良いですし星空も綺麗ですねぇ」
「ふぃ~、そーだなー」
すっかり洗い終えた髪の毛を、顔に張り付いて邪魔にならないようにとタオルで頭の上に束ねてもらった優純絆は、
控えめながらお湯の中をすいーっと泳いでいる。
他のお客様もいるわけではないですし、とお父さんからの大目に見た許可下りに、
和翔も楽しそうにじゃぶじゃぶと歩き回って。
ひとしきり動き回れば、2人は自然とルーカスの傍に寄って落ち着いた。
「姉様達にも見せたいなぁ……」
どこまでも深い夜の空を眺めていると、日頃押し込めている寂しさが顔を出す。
姉様達を探すって決めたけれど、手掛かりの無い日々にどこかでずっと我慢していた言葉が漏れた。
先程までの笑顔がいつの間にか崩れては、呟やいた言葉と共に優純絆の顔は泣きそうに俯かれていた。
そんな優純絆を、挟むようにしてルーカスと和翔が寄り添う。
「……ユズ、大丈夫ですよ。きっと御姉様達もこの星空を見ていますよ」
「ユズ、落ち込むな! 俺様が必ず見つけ出してやるからよ!」
「パパ……カズちゃん……」
真っ黒なお湯から視界を上にやると、優しい微笑みと力強い笑顔に出会った。
更に和翔は、今度は優純絆の正面に移動して夜空を指差した。
「それに例え遠くに離れていても、空は繋がってんだ! 希望を持て、信じていりゃ必ず見付かる。
それまで俺様が傍に居てやるよ!」
力の込もった声とは裏腹に、優純絆の手を包み込んだ和翔の手はとても優しかった。
どうしてだろう……あの時から、どんどんカズちゃんがカッコよくみえる、気がするの。
遺跡で手当てしてくれた時より、
剣技で戦っていた時より、
コンテストで抱え上げてくれた時より、
日を追うごとにどこか逞しくなっていく姿に、胸の内に1つまた1つと何か温かいモノが積み重なっていく。
大人と違い根拠などない言葉。しかしそれは、時に大人が忘れた純粋な想い。
和翔の言葉はいつだって、まっすぐまっすぐ、優純絆の心に届いて光を灯す。
優純絆の表情が次第に変化していくのを見守って、ルーカスは和翔へも微笑を浮かべたまま視線をやった。
―― 流石です、カズならユズを託せますね。ユズも満更でもなさそうですしね……
「うんそうだよね、ユズにはパパやカズちゃんがいるもんね」
「おう! それにお願いもしたろ、鐘鳴らして。俺様が叶えてやるって」
「そういえば私は用があって行けませんでしたが。何をお願いしたんですか?」
「えっとね、『これからもずっとずっとずーっと! パパとカズちゃんと一緒に居られます様に』って」
花咲く笑顔を取り戻した優純絆が、チャペルで鐘を鳴らした時と同じように両手を広げてルーカスに告げた。
意表をつかれたように、ルーカスの瞳が僅か見開かれる。そしてとても幸せそうな笑みへと変化した。
「私のお願いも一緒に言ってもらったも同然ですね」
「パパも? ユズやカズちゃんとずっと一緒に居たいって思ってくれてる?」
「当然です」
「ありがとう」
もう優純絆の顔に寂しさは浮かんでいなかった。
替わりに、はにかんで染まった頬と明るい瞳を称え、ルーカスと和翔の腕へとギュッと抱き付いて。
「二人共大好き!」
「私も大好きですよ」
「おっ俺様も、大好き、だぞ……」
先程まで星たちと共に闇夜を照らしていたルーメンも、これ以上温かな家族の絆(+淡い恋心)を覗き見しないよう、
そっと薄い雲に顔を隠したようだった。
ルーメンが顔を隠したまま、窓辺からはテネブラの濃紺色の淡い光がカーテンの隙間から見え隠れする深夜。
ルーカスは静かに身を起こした。
3人で寝ても悠々と余る、キングサイズのダブルベッドの上。
優純絆を真ん中にした川の字で、手を繋いだまま小さな寝息を立てる二人の息子を見つめる。
―― 和翔……、ユズを、いやルキフェルをお願いします……
それは優純絆のもう一つの名前。本当となるはずだった真名。
血のつながった本当の親子だったと知ったのは、まだ最近の出来事。
愛しい人との間に出来た愛しいコ。そんな優純絆を、和翔になら任せられる。ルーカスは今日心からそれを実感した。
「ルチアも……見守ってくれているでしょうか……」
私がユズに、ルキフェルにこれからどう接していくか、伝えていくか……
そしてカズをどう導き、託していくか……
思考の海に沈みそうになった時、優純絆の、和翔とは反対の手で繋がれたルーカスの右手がきゅっと握り直された。
『むにゃ~……パパ、カズちゃ、ん……大好きなの~』
そんな寝言に、ふわりと微笑みで返してから。ルーカスは再びベッドに横になるのだった ――。
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
リザルト筆記GM | 蒼色クレヨン GM | 参加者一覧 | ||||||
プロローグ筆記GM | なし |
|
エピソードの種類 | ハピネスエピソード | ||||
対象神人 | 個別 | |||||||
ジャンル | イベント | |||||||
タイプ | イベント | |||||||
難易度 | 特殊 | |||||||
報酬 | 特殊 | |||||||
出発日 | 2016年12月18日 |