粒星群(あご マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 ショコランドに、夜が訪れた。
タブロスとはちょっと違う、ミルキーパープルの夜空に、
きらきらと粒星(りゅうせい)が流れていくのが見える。
時折俺の側に落ちてくるそれは、ピンク、ブルー、イエロー、オレンジ。
ポップな彩りの、甘い香りのする粒星をひとつつまみあげて口に放り込む。
かり、と音を立てて噛めば、甘い味が口いっぱいに広がった。

 ショコランドの粒星は、コンペイトウで出来ている。
普段は夜空にひとつ、ふたつと流れる程度だが、今夜は違った。
夜空を見上げればあちらにもこちらにも、
流れていくコンペイトウが見える。
タブロスでいう流星群だが、こちらでは粒星群というらしい。

 次の満月の夜は年に一度の粒星群の日なんだよと、
いつか一緒に戦った王子(今は伯爵となっている)が教えてくれたのは数日前。

 俺は粒星群を見にいこうとパートナーを誘った。
例年、その日だけは観光客が爆発的に増えるというショコランドの
粒星群を見るにはとっておきの場所を用意しておいたよと伯爵は俺にウインクし、
良いデートにしてきなよ、と笑って俺を送り出した。

地図で教えられた場所は、粒星群がよく見える広いミントの草原だった。
レジャーシートを敷いて、二人で並んで空を見上げれば
やわらかい色のコンペイトウが空を流れていく。
彼女と何を話そうかな。
俺は考えながら口を開いた。

解説

コンペイトウの粒星群を見ながらゆっくりお話するエピです。
自由におしゃべりしてください。
コンペイトウ拾って食べてもいいですし、
はいあーんってしてもいいと思います!


なお、地図とレジャーシートに300jr使います。

ゲームマスターより

殺伐としたギルティガルテンに疲れちゃったらショコランド!
ショコランド行ってみたい。食い尽くしたい。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リーリア=エスペリット(ジャスティ=カレック)

  コンペイトウが降る粒星群を見れる、年に一度の特別な日。
それを見れるのがとても嬉しい。

粒星群を見ながら、粒星の感想とかについて話す。

自分の手に彼の手が重ねられ、驚く。
これまでに何度か手をつないだことはあったが、最近どうも彼のことを意識してしまい、意味合いが違ってきてしまっている。
しかし、こうして重なる手と伝わってくるぬくもりに、心が温まるように感じた。
顔が熱い。

契約してからしばらくは正反対な性格がもとで衝突していた。
だが、最近は昔のことを思い出し、色々あって…。


何か別のことを…。

自分の近くに落ちたコンペイトウを拾い、口に入れる。
甘い。
もともとコンペイトウは甘いが、なぜか普通のより甘く感じる…。



ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
  ☆心情
エミリオさん、最近 任務の日以外はずっと自分の部屋に篭るかトレーニングしているみたい
何か不安なこととかあるのかな、あまり外に出ないのはよくないよ
私が教えてあげなくちゃ、「外には素敵なものがたくさんあるんだよ」って

☆粒星を眺めて
わあっ、凄い、凄いっ!
綺麗、可愛い、凄いね…!
だって本当に凄いんだもの!
エミリオさんもそう思わない?

(空を見上げぼーっとしている精霊を見て悪戯心がわき)エミリオさん、エミリオさん、(肩を叩き、精霊が振り向いた瞬間に口に金平糖を入れる)どう?おいしい?
私も食べよ、んー幸せ

え、もっと?
だったら拾わなきゃ!?

(エミリオさんのキスは金平糖のようにとても甘くて優しい味がした)


日向 悠夜(降矢 弓弦)
  先ずは粒星群を写真に収めたいな
一通り撮り終えたら弓弦さんの隣に座るね

弓弦さんに撮った写真を見せたり……少し照れつつこんぺいとうを口にしたりして過ごすね
ふふ、流石ショコランドのこんぺいとう。とっても美味しい

もし一際多くの粒星が降り注いだらすかさずカメラを構えるね
綺麗…あの流星が全部こんぺいとうだなんて、吃驚だよね
二、三枚撮ったらちらりと弓弦さんを確認するね

…粒星群を熱心に眺めている弓弦さんの横顔を一枚、ぱちり
ふふ、なんでかな…弓弦さんが楽しそうだったから、撮りたくなっちゃったんだ
…ねぇ弓弦さん、またこういう風に弓弦さんの写真を撮っても良いかな?
ありがとう。ふふ…弓弦さんだから、だよ

●所持
カメラ



真衣(ベルンハルト)
  コンペイトウがふるなんて、ふしぎなところね。
食べていいのよね?(ハンカチ越しに摘み、見上げる

いただきまーす。うん、甘いわ。
色もたくさんね。

ふふー♪
そうだと思って、ママに紅茶入れてもらったのよ。
この魔法瓶に入ってるの。(用意してたカップに紅茶を注いで渡す
ハルトのもおいしいけど、ママのもおいしいのよ?
私だっておいしい紅茶入れれるようになるわ。

だから、おいしい紅茶を入れれるようになったら。
ハルトに入れるわね。
おいしくなかったらちゃんと言わなきゃだめよ?

(手で隠し小さく欠伸
ハルトとお出かけできるの楽しみで。
昨日、あんまりねむれなかったの。(目を擦る

甘やかしすぎちゃ、だめなのよ……?
(促され、凭れて眠る



瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  お月さまの光に負けずに、綺麗なながれ星に見えるのは、元が金平糖だからかしら。
金平糖が空から降ってくるなんて、とても不思議。
ミュラーさんに誘われて、シートに座って、空を眺めて首を傾げちゃいました。
空にお菓子がふらふらっと浮いているんですね。
じゃああの雲はきっと綿菓子。
いったいどんな原理で浮いているのかしら?
(↑考え方が色々と科学の子)

あ、そうですね。寝転がってみましょう。
シートに金平糖が落ちてます。
空から落ちてきても燃え尽きたりしないんですね。
静かに落ちてきて、当たっても痛くない?
「当たったらとても運が良い感じですね!」
御神籤なノリで。(科学はどこへ。笑)
あーんされて反射的に応じます。美味しい。


ミントの草原にレジャーシートを敷き、真衣とベルンハルトは並んで座っていた。
青い瞳を真ん丸に見開いて夜空を見上げる真衣のフリル付きスカートに
空から零れ落ちた甘い星がぱらぱらと転がる。
わあ、と歓声を上げる真衣に、ベルンハルトも楽しげに目を細めた。

「コンペイトウがふるなんて、ふしぎなところね」

 そう呟いて真衣はポケットからハンカチを取り出し
スカートに転がったコンペイトウを一粒摘まむ。

「食べていいのよね?」

「食べれるものらしいから、大丈夫だ」

 問いかけにベルンハルトが頷いて返したのを見て
真衣は早速いただきまーす、とピンク色の星を口の中に放り込んだ。

「うん、甘いわ」

 コンペイトウの甘さに顔を綻ばせた真衣を見て
俺も一粒は食べてみよう、とベルンハルトもコンペイトウを拾い上げて口に含んだ。

「確かにコンペイトウだな。甘い。
……少し喉が乾く」

 ベルンハルトがそう呟くのを、真衣は聞き逃さなかった。

「ふふー♪
そうだと思ってママに紅茶淹れてもらったのよ。
この魔法瓶に入ってるの」

 そう言って、真衣はどこからともなく取り出した魔法瓶の中身を
これまたどこからか出てきたカップに注ぎ、ベルンハルトへと差し出す。
その得意げな表情に、ベルンハルトはカップを受け取りながら微笑みかけた。

「真衣は用意がいいな。
今度、お母さんにお礼を言わないといけないか。真衣もありがとう」

 褒められれば本当に嬉しそうに笑う彼女の
感情を隠さない、真っ直ぐで素直な表情をベルンハルトは好ましく思った。
二人で並んで暖かな紅茶を口に含むと、丁寧に淹れられた茶葉の芳醇な香りが鼻腔を擽り
ベルンハルトは美味しいね、と半ば独り言のように呟いた。

「ハルトのもおいしいけど、ママのもおいしいのよ?
私だっておいしい紅茶淹れれるようになるわ」

 夢見るような口調で話しながら
真衣はまた一つ、スカートの上に振ってきたコンペイトウを口にする。
舌の上で転がすコンペイトウの甘さは、少し濃い目の紅茶とよく合った。

「だから、おいしい紅茶を淹れれるようになったら。ハルトに淹れるわね」

「楽しみにしている。ゆっくりで構わない」

 ベルンハルトは真衣の言葉を聞いて思いを巡らせる。
そうなれば、真衣が手ずから淹れた紅茶を飲むのは
家族以外ではベルンハルトが最初ということになるのだろう。

 真衣のまるで兄を慕うかのようなストレートな思いは
ベルンハルトの心臓の裏側をなんだかむず痒くさせた。

「おいしくなかったら、ちゃんと言わなきゃだめよ?
ハルトはおいしくなくてもおいしいっていいそうだもの」

 ベルンハルトの性格をよくわかっている真衣にあらかじめ釘を刺されてしまい
そこまで読まれていたかとベルンハルトは苦笑した。

「そうだな。……だが、おいしいときもちゃんと美味しいと言おう」

 おねがいね、と少しませた口調で話す真衣の口から、噛み殺しきれない小さな欠伸が零れた。
温かい紅茶を飲んで、浮足立っていた気持ちが落ち着いたこともあるのだろう
すぐに瞼が下りてきて船を漕ぎはじめた真衣に、少し長居をしすぎたか、とベルンハルトは思った。
星が流れる時間はまだ幼い真衣は普段ならば眠っている時間だろう。

「すまない、真衣。いつもは寝る時間だったか?」

 ベルンハルトが尋ねれば、真衣は眠気で柔らかくなった声で、ううん、と返事を返した。

「ハルトとお出かけできるの楽しみで、昨日、あんまりねむれなかったの」

 そう言われてしまえば、無下に帰路に着くこともできない。
結局、ベルンハルトも真衣には甘いのだ。

 真衣の小さな手が徐々に重さを増す瞼を擦る。
そのあどけない仕草を微笑ましく思い、ベルンハルトは真衣の頭に手を伸ばした。
頭を撫でながらそっと引き寄せて自分の体に凭れさせると
眠気で温かくなってきている真衣の体に自分の上着をかけてやる。

「眠いなら少し寝ると良い。
起きられなくても、俺が運ぶから大丈夫だ」

 上着のかかった体をぽんぽんと優しく叩いて、そっと眠りを促す。
甘やかしすぎちゃ、ダメなのよ……?という真衣の声は
その言葉の内容とは裏腹に舌足らずな響きで、今にも眠りの淵に沈もうとしていた。

 やがて、自分の体に凭れた真衣の頭がずしりと重くなり
深い寝息が聞こえてきた事に気づき、ベルンハルトは穏やかに笑うと
カップの底に残っていた紅茶を飲み干した。真衣が風邪を引く前に帰ろう。




「ミズキはお菓子が好きだろう。一緒に粒星群を見に行かないか」

 フェルン・ミュラーにそう誘われ、瀬谷 瑞希は粒星群を眺めにショコランドを訪れた。
目の前に広がる草原を渡る風がミントの爽やかな香りを運んできて、思わず大きく息を吸い込む。
瑞希がミントの香りの夜風を楽しんでいる間に
草原の真ん中にレジャーシートを広げて座ったミュラーが、ミズキ、とシートを叩いて瑞希を呼んだ。
近づいて、瑞希もレジャーシートの上に腰を下ろした。


「コンペイトウが空から降ってくるなんて、とても不思議」

 お月様の光に負けずに綺麗な流れ星に見えるのは、元がコンペイトウだからかしら。
座ったまま、顔を仰向けてじっと空を眺めた瑞希は
目の前に広がる不思議な光景を科学的な見地から分析し始めた。

 流れ星のように降ってくるってことは、空にふらふらっとお菓子が浮いているんですね。
 じゃあ、あの雲はきっと綿菓子?
 いったいどんな原理で浮いているのかしら……


 ミュラーは、隣で不思議そうにお菓子な夜空を見上げる瑞希をじっと眺めていた。
色々なものがお菓子だからすごく不思議そうではあるが、
ミュラーは最近彼女が今考えているであろうことが手に取るようにわかるようになっていた。
たぶんミズキの事だから、どういう原理でお菓子が浮いているのか、とか
科学的な事を考えているに違いないのだ。
そう思って、ミュラーはやれやれ、と苦笑した。

 知識的な探究心から目を輝かせて空を見上げる瑞希は一向に首を元に戻す気配はない。
あのままでは、直に首が痛くなってしまうだろう。

「ミズキ、それじゃ首が痛いだろ。ここに寝転がると楽だよ?」

 そう声をかけ、手本を見せるようにミュラー自身もシートに寝転んだ。
あ、そうですね、寝転がってみましょう、と声を上げる瑞希は
賢いようでいてどこか抜けている。はっと気づいたような表情が可愛いとミュラーは思った。
ミュラーに倣い、彼の隣に横になった瑞希は、ふと顔の横に転がる薄水色のコンペイトウに気づき
思わず思考を声に出してしまう。

「空から落ちてきても、燃え尽きたりしないんですね」

 その着眼点が面白い、とミュラーは思う。
ショコランドは木の洞の中、土の下の国だからそもそも大気圏という概念があるのかも
この国の住人でない二人にはわからないのだった。

「静かに落ちてきて、当たっても痛くない……
当たったらとても運がいい感じですね!御神籤みたいで!」

 ふふ、と声を上げてシートに転がった瑞希が笑ってみるキーパーオウルの夜空に向かって手を伸ばす。
ミュラーは、あの科学的な瑞希から御神籤なんて言葉が出てきたことに驚いたが
おまじない好きな一面を見られたことが少し嬉しかった。
瑞希の真似をしてミュラーも手を夜空に伸ばせば、天に向かって広げた掌に
落ちてきたコンペイトウが当たったのを感じ、反射的に手の中に閉じ込める。
瑞希に言わせれば”あたり”のそれを、ミュラーは指先で摘まんで瑞希の口元に運んだ。

「ミズキ、あーん」

 ミュラーに声をかけられ、無意識に開けた瑞希の口の中に黄色のコンペイトウがひとつ放り込まれ
瑞希は、美味しい、と呟いた。
そんな瑞希の姿を、ミュラーは絵付みたいだな、と思い、少し笑った。



 年に一度の粒星群。
一緒に見に行こうと言い出したのはどちらだっただろう。
リーリア=エスペリットは、ミントの草原にレジャーシートを敷き始めた
ジャスティ=カレックの背をぼんやりと眺めながら考えていた。

 この日この時にしか見られない、コンペイトウが降る空を見られることはとても嬉しかった。
だが、この特別な夜をジャスティと過ごすという事実が
なんとなくリーリアを落ち着かない気持ちにさせていたのだ。
だが、シートに腰を下ろし夜空を見上げればそれまでの落ち着かない気持ちは一気に吹き飛んだ。
 ミルキーパープルの空を流れるカラフルなコンペイトウが、リーリアの視界いっぱいに広がったのだ。

 すごい、きれいね、と嬉しそうな声を上げるリーリアを見て
普段は武器や鍛錬を好む勝気な彼女の
年相応の女の子らしい、可愛らしい一面を見てジャスティはこっそり微笑んだ。

 二人で夜空を流れる粒星を眺め、言葉を交わす。

「流れ星に願い事をすると叶うっていうけど、コンペイトウはどうなのかしら」
「どうでしょうね、試しになにか願ってみてはどうですか」

 触れたい、とジャスティは思った。

 リーリアはジャスティの初恋の人だ。
その彼女と一緒にいられるだけでも嬉しく、胸に秘めた想いを未だ告げてはいない。
だが、そんなジャスティの気持ちにはお構いなしに
彼女に近づきたい、触れたいという気持ちは日に日に強さを増しているような気がする。

 その白い肌は、どんな感触がするのだろう。

 そう思ってしまったが最後、衝動に抗うことができず
ジャスティは隣に座るリーリアの手に、そっと自分の手を重ねた。
びくりと彼女の手が震えたが、それ以上の抵抗はされない。

 ジャスティには、リーリアの表情を伺う勇気はなかった。
唯一、振り払われない手とそこから伝わってくるぬくもりにそっと安堵の息を吐く。
一瞬跳ねた手の動きはリーリアの驚きを表していたが、振り払わずにいてくれているということは
少しは自分のことを意識してくれていると思ってもいいのだろうかと
一縷の希望を見出した気がして、ジャスティは気持ちが浮き立つのを感じた。

 リーリアは、突然重ねられた手に心臓が止まりそうなほど驚いた。
これまでにも何度も手を繋いだことはあった。
出会ったばかりの頃は正反対の性格も相まって衝突が絶えなかった二人だが
最近は昔のことを思い出したこともあり
リーリアはどうにもジャスティのことを意識してしまっていた。
到底、今までのように何も考えずに手を繋げるような心境ではない。
どうあっても、意味合いが変わってきてしまう。
 彼が何を思っているかはわからないが、重なる手からじんわりと温もりが伝わってきて
リーリアの心まで温まるような思いがする。
それと同時に、リーリアの顔は温かいを通り越して熱いほどに火照っていた。

 何か別のことに意識を向けなければ、とあたりを見回し
側に転がってきたコンペイトウを拾って色も良く見ないままに口の中に入れる。

甘い、と思う。
もともと甘いはずのコンペイトウが、いつも以上に甘く感じるのはなぜか、リーリアにはわからなかった。


 

「わあ、本当にコンペイトウが流れてる!」

 夜空を見上げた日向 悠夜は
今まで訪れたどの国でも見たことのない光景に歓声を上げる。
持参したカメラを夜空に向け、露出を調節しながら嬉しそうにシャッターを切る悠夜を
降矢 弓弦はレジャーシートに腰を下ろして穏やかな瞳で見つめていた。
時折、西の空の方が少し星の量が多いようだよ、と
ファインダー越しでは見えない空の様子を伝えると
悠夜は視線をそちらに向け、また勢いよくシャッターを切りはじめる。

 弓弦が降る星の数を数えたり、カスタード色の満月を楽しんでいると
ようやく写真を撮り終えた悠夜がシートに座る弓弦のところまで戻ってきた。

「お疲れ様、コンペイトウの味見はどうだい?」

 弓弦がシートの上に転がったコンペイトウを差し出せば
ありがとう、と悠夜は少し照れながら数粒受け取り、口に運ぶ。
口の中にふんわりと優しい甘さが広がった。

「ふふ、さすがショコランドのコンペイトウ。とっても美味しい」

「うん。美味しい。上品な甘さだな。何粒でも食べられそうだ」

 悠夜の言葉に、隣でコンペイトウを口にした弓弦も同意する。
暫くふたりで並んでコンペイトウを食べた後、弓弦が口を開いた。

「そういえば、良い写真は撮れたかい?」

「うん、ばっちりよ!ほら、これとか」

 悠夜のカメラはデジタル式だ。
以前操作方法を軽く教えてもらったが
ボタンがそこかしこにあって弓弦にはうまく使えなかったそれを 
悠夜はいともたやすく操って、小さな画面に今し方撮った夜空の写真を写し出して見せてくれた。

「へえ、すごいねえ」

「ね!このみっついっぺんに流れるコンペイトウ、すごいね!」

 弓弦としてはコンペイトウはもちろんだが
それ以上にカメラを自在に操る悠夜も凄いと思う。
そんな弓弦を気にした風もなく悠夜が素早く写真を切り替えている途中
一際多くのコンペイトウが夜空を流れ始めた。

「綺麗……!あの流星が全部コンペイトウだなんて、吃驚だよね!」

「いやぁ……本当に、綺麗だ……!」

 どうやら粒星群のピークのようだ。
先程まで以上の数のコンペイトウが夜空を次々に流れていくのを見て
悠夜はシャッターチャンスを逃すまいと夢中でカメラを構え、弓弦はやや興奮気味の歓声を上げた。


 悠夜は数枚の写真を撮った後、ふと弓弦の方を振り返る。
弓弦が珍しく瞳を輝かせながら粒星群が流れる空を熱心に眺めている姿を見て
悠夜は手にしたカメラのレンズを弓弦の方に向けた。

ぱちり。

 突然自分に向けられたカメラのシャッター音に
弓弦は一瞬驚いた後少し頬を赤くした。

「どうしたんだい、いきなり」

「ふふ……なんでかな……
弓弦さんが楽しそうだから、撮りたくなっちゃったんだ」

 弓弦が、自分と同じものを見て、自分と同じように美しいと感じている。
その瞬間を収めたカメラを、悠夜は優しい瞳で見つめた。

「ねぇ弓弦さん、またこういう風に弓弦さんの写真を撮ってもいいかな」

 笑顔で尋ねる悠夜に、弓弦は勿論、と応え
少し考えてから「僕で良ければ」と付け足す。
弓弦の困ったような笑顔に悠夜が笑みを深くして、弓弦さんだからだよと言えば
弓弦の瞳に、一瞬深い優しい色が浮かぶ。

「僕の写真も良いけど、僕は悠夜さんの写真も欲しいな」

 そう言われてしまえば、今度は悠夜が赤くなる番だった。




 エミリオさん、任務の日以外はずっと自分の部屋に篭るかトレーニングをしているみたい。

 最近、必要以上は自分に関わってこないエミリオ・シュトルツの事を
ミサ・フルールは心配していた。
初めはどこか体調が悪いのかと思っていたが、そういうわけではなさそうだ。
何か不安なことがあるのだろうか。
そうだとしても、あまり外に出ないのはよくないと思い
ミサは、ショコランドの粒星群を見よう、とエミリオを外へと連れ出したのだった。


「わあっ、凄い、凄いっ!」

 ミントの草原に到着するや否や
レジャーシートを敷くのも待たずに夜空を見上げて歓声を上げた。
ミルキーパープルの空を、コンペイトウが勢いよく流れていく。

「綺麗、可愛い、凄いね……!」

「ふふ、ミサってば、さっきから凄いばっかりだね」

 目を輝かせて喜ぶミサの姿にエミリオが柔らかく微笑む。
久しぶりに見たエミリオの笑顔に、ミサも振り返って笑った。

「だって本当に凄いんだもの!
エミリオさんもそう思わない?」

 それだけ言ってミサはまたコンペイトウの流れる夜空に視線を戻した。
その後ろ姿に、エミリオも倣って夜空を眺めた。

「確かにコンペイトウが空から降ってくるなんて
他では見られない……凄い、な」

 ミサの言葉がうつってしまったのだろうか。
見上げた空の粒星の多さと美しさに
エミリオも凄い以上の言葉が出てこず、ただ立ち尽くす。
隣を見れば、ミサが嬉しそうに微笑みながら空を眺めている。
その横顔を見て、エミリオの心の中で
最近彼を悩ませていた考えが再度鎌首を擡げ始めた。

エミリオは、とある真実を自身の心の内に収めたまま
ずるずるとここまで来てしまっていた。
本当はミサに告げなければならないことだとはよくわかっている。
だが、真実を明かせばこの優しい少女はきっと自分の元を去ってしまう。
エミリオは、目の前にいるミサを失うのが何よりも怖かったのだ。
今日だってミサは何も言わないけれど
恐らく塞ぎ込んでいる俺を元気づけようとしてここへ連れ出してくれたんだろうと思う。
ミサのそういうところを、エミリオは愛おしいと思っている。
そんな風にミサが優しいから、エミリオはミサの優しさに甘えて
必要な決断をずるずると先へ先へと伸ばしてしまう。


どこまで卑怯なんだ、俺は。

そう胸の内で吐き捨てても
ミサに真実を告げる勇気は到底湧いてくるものではなかった。

「エミリオさん、エミリオさん」

「なに……むぐ!?」

 夜空を眺めて考え込むエミリオの肩を、ミサが叩いた。
応えようとして、口に放り込まれた何かにエミリオは驚いてしまう。
口の中に放り込まれたそれは、甘い味でエミリオの舌をくすぐった。

「これは、コンペイトウ?」

「どう?おいしい?」

 からかうように笑うミサが手に持っているのは空から落ちてきたのであろうコンペイトウだ。
エミリオは口の中のコンペイトウをかり、と噛むと、甘くて美味しいね、と笑った。

「美味しいよね!私も食べよっと……んー幸せ」

 手にしていたコンペイトウを一粒口に放り込んでとろけるような笑みを浮かべたミサに
エミリオはにやりと笑って声をかけた。

「ミサ、コンペイトウ、もっとちょうだい」

「え、もっと? だったら拾わなきゃ!」

 エミリオのお願いを叶えるため、ミサは身を翻してコンペイトウを拾おうとする。
だが、エミリオが狙っているのは落ちているコンペイトウではない。

「ミサ、そうじゃなくて」

 腕を伸ばして、ミサを引き寄せて胸の中に閉じ込める。
彼女に一瞬笑いかけると、エミリオはそっと自分の唇をミサの薄紅色の唇に触れ合わせた。
驚いた表情の丸い瞳を至近距離で見つめ、エミリオは視線に祈るような思いを込める。

いつか来る断罪の日。
例え君が笑いかけてくれなくなっても
俺はミサの幸せを一番に願うから。

そっと離された唇に、ミサは胸のあたりを抑えて立ち尽くす。
エミリオとのキスは、コンペイトウのように甘い味がした。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あご
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月24日
出発日 04月30日 00:00
予定納品日 05月10日

参加者

会議室

  • [7]日向 悠夜

    2015/04/29-22:41 

  • [6]瀬谷 瑞希

    2015/04/29-00:31 

    こんばんは。瀬谷瑞希です。
    パートナーはファータのミュラーさんです。

    降ってきたこんぺいとう、食べられるんですね。
    特別なひと時をすごせますように。

  • [5]日向 悠夜

    2015/04/28-22:43 

    こんにちは、日向 悠夜です。
    粒星群…初めて見るから、とっても楽しみだなぁ。
    素敵な一日になりますように。

  • [4]真衣

    2015/04/27-18:40 

    こんばんは!
    私は真衣って言うの。よろしくね。

    コンペイトウがふって来るの?
    ショコランドってふしぎなところなのね。

  • こんにちは。
    私はリーリア。よろしくね。

    粒星群…。
    見に行けるなんて嬉しいわ。
    今からわくわくしちゃう!

  • [2]ミサ・フルール

    2015/04/27-09:10 

  • [1]ミサ・フルール

    2015/04/27-09:09 

    こんにちは!
    ミサ・フルールです。
    初めましての方は初めまして!
    どうぞよろしくです(ぺこり)
    ミルキーパープルの夜空に、空からコンペイトウが降ってくるなんて…!(目をキラキラ)
    ショコランドって本当に不思議で素敵なところだよね。
    皆が思い思いの夜を過ごせますように!


PAGE TOP