プロローグ
●被害者なるは
「だ、誰か――――!!!ミュリーが……私のミュリーが……!!!」
タブロス中心部の大通り。から、少し逸れた脇道より突如中年の男性が飛び出してきた。
唇はわなわなと震え、瞳は今にも大粒の涙が落ちるのではないかという程涙目で。
たまたま通りすがった数組のウィンクルムが、そのただならぬ様子に どうしましたか?と駆け寄った。
手の甲の紋章を目にすれば、ああああ!と縋る眼差しを向け「とにかく此方へ!!」と飛び出して来た道へ戻る男性。
走ったすぐの所、開け放たれっぱなしのドアへ入るその後ろ姿の後に続いた。
家の奥へと案内しながら、男性は矢継ぎ早に説明する。
「明け方、覚えの無いプレゼントの箱が家の前に置いてありまして……っ。
自分が開けようとした所、蓋をひらいた瞬間にミュリーが覗き込むように間に割って入ってきて……!
それからずっと目覚めないんです!」
ウィンクルムに緊張が走る。
プレゼントの箱。それはここ最近頻発している、オルロック・オーガが人の夢にとり憑く際の鍵となるものだ。
夢の中で人に化けたオルロック・オーガに食べられてしまうと、現実の本人は石になってしまう。
一刻の猶予もない。ウィンクルムの一人が足を進めながら、本部へと通信機で連絡を取る。
このまますぐ対処に向かう為の許可兼報告の為に。
男性は寝室の扉を開けた。
「あああミュリー……!かわいそうに……きっと、助けてもらえるから待ってろよ……!」
きょろきょろと寝室の中を見渡すウィンクルムたち。
被害者の姿が中々見当たらない。
ベッドの横にしゃがみ込む男性の影に隠れているのだろうか?子供なのだろうか?
近寄って、男性の頭の上からベッドを見下ろしてみた。
「……あの。ミュリーさんというのは……」
「居るじゃないですかココに!早く、助けて下さい!!」
ベッドの上に四肢を投げ出し横たわるもの。それはとても美しい……――
「 ネ コ だ よ ね 」
「猫だな」
「他の言語で確か、 キ ャ ッ ト かな」
ウィンクルムたちから大変冷静な言葉が飛び交った。
『もしもし。被害者は猫のようです』と連絡中のウィンクルムも、正直に本部へ告げる。
「私の大事な、愛しい家族なんです!!ミュリーが居なくなったら、私は、私はもう生きていけない……!」
男性もとい飼い主の必死の訴えに、心打たれるウィンクルム。……も、いたかもしれない。
本部はなんて?と連絡中の仲間に視線が集まる。
「すぐ夢の中へ向かってほしいそうです。恐らく、オルロック・オーガ自身もイレギュラーな事態だろうから
少しでも早く猫を食べてしまい、その飼い主である本来のターゲットを狙いに来る可能性があるからと」
もっともだ。
人数もうちょっと確保しようか、と一人が大通りへ一度戻り、また通りすがってしまったウィンクルムを確保してから。
拝む男性を後にし、こうしてウィンクルムたちは猫を救う為、夢の中へと旅立った。
●なんでこうなった、は オーガも一緒
まるで古城の大広間のような場所に、意識と姿を降り立たせたウィンクルムたち。
件の猫はすぐ発見出来た。
……正確には、 いっぱい 発見 した 。
広間に置かれた大テーブルの上、庭が見渡せる窓の大きく出た桟、火の無い暖炉の中など
見渡した限り8匹の、ミュリーと全く同じ毛色をした猫たちが居たのだ。
もしかしたら立ったままでは見えない所にまだ隠れてるかもしれないが。
仲間同士で視線を絡ませる。
どうしたものかと意見窺うために、一人が声を発した。
「にゃあ」
「……にゃ?」
「にゃにゃ!?」
どうしたことか。姿は神人精霊としてのそのままなのに、頭で考えていた言葉が口にした途端、全て猫語になってしまう!
どうやらオルロック・オーガも必死らしい。
なにせ、人間が開けるものだと思っていたギフトボックス。取り込もうと飛び出した瞬間、猫に入ってしまったのだから。
しかも意外と時間経たずして、己の夢世界の中に天敵であるウィンクルムたちが舞い降りた気配。
咄嗟に本物と自分を見つけられないようカモフラージュする為に、夢の中だけの、偽物の猫たちを増やしたのだ。
更には、少しでも夢の中の夜まで時間稼ぎできるよう、ウィンクルムたちから言葉を奪った。
夜まで待てば、この猫を食べてしまえる。そうすればあの人間をもう一度襲いに行ける。
作り出された本能に乗っ取り、オルロック・オーガはこうして猫たちの中に身を隠し、猫になりきって夜を待つ算段をしたのである。
オルロック・オーガの、猫に入り込んだ以外に誤算があったとすれば。
猫語となったウィンクルムたちは、意外と猫語でも意思疎通が出来る、ということだろうか……。
解説
●目的:ミュリーに化けたオルロック・オーガの討伐
ミュリー:飼い主の愛情を一身に受け、純白ふわもこ綺麗な毛並み。瞳は空色。
上記全く同じ姿形の猫が、全部で10匹居ます。
1匹が本物、1匹がオルロック・オーガ、
残り8匹は夢の中で作られた偽物です(しかし仕草は本物の猫を模したので猫そのもの)
●見分け方
オルロック・オーガ自身も、想定外の事態。
必死に他の猫たちの仕草をマネしていますが、構えば構う程きっとボロが出ます。
じゃんじゃんモフったり遊んだりして、目星を付けて下さい。
ただし、猫たちも最初は警戒心丸出しで、近づくと逃げたり引っ掻いたり肉球パンチしたりするので
猫語これ幸いとばかりに宥めたりしてあげましょう。
●全て猫語
仲間やパートナーと会話しようとすると、全て猫語になります。
しかしオルロック・オーガが急遽設定したせいか、はたまたウィンクルムの絆の力か、
「にゃあ……(おいどうするよ)」といったふうに、何となく言いたいことは伝わります。
支障があるとすれば、オルロック・オーガが正体現した時の戦闘時。
格好良いはずのジョブスキル発動台詞などが、
「にゃ!にゃにゃにゃー……にゃあ!!(くらえ!カナリアの囀り!!)」と、こうなります。
聞いてる方は脱力せずに頑張って!
ちなみに、「にゃあっにゃにゃ!(あれがオーガだ!)」と猫たちの中からオーガ特定した瞬間、
偽物の猫たちは消えて本物とオルロック・オーガだけが残ります。
その後戦闘突入。
トランスのタイミングは皆様違うと思うので、必ずプランにご記載下さいませ。
また唐突依頼で、特別なアイテム申請をする余裕ナシとご了承下さい。
その代わり、このエピに限り「デートコーデ装備」で持ってる物なら持ち込み可とします☆
装備した上でプランにご記載頂ければ、所持しているか確認に行かせて頂いた上で反映させて頂きます。
(出発後、最低1日は装備したままにして頂けると幸いですっ)
ゲームマスターより
上澤様GMに続けー!! ←
いいんだ!【悪夢】でもコメディにしていいんだ!!と喜々として飛びついた、お世話になっております蒼色クレヨンです。
久しぶりのアドがこんなんでなんだか本当にスイマセン。
『ジャンル:推理』なのに推理もへったくれもない、初心者様もお気軽にお入り下さい☆なアドをご用意してみました。
勿論、入りたいと少しでも思って下さった方ならレベル関係なく ばっちこい!(両手バッ☆)
でも一応オーガだからね!猫じゃなくオーガだからね!気をつけてネ!(←もふれ!と言った口)
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リチェルカーレ(シリウス)
フリーのネコを作らないよう一人一匹以上担当 こんにちは、ネコちゃん 一緒にあそびましょ? ネコ語になっていることにも全く動じずコミュニケーション ひっかかれたり肉球パンチをもらってもにっこり笑顔 大丈夫 怖くないよ? ネコが警戒をといて近づいてきたらぎゅっと抱きしめたり撫でたり 抱きしめ隠れているネコがいないか探す 見つけたら皆にも知らせその子たちももふもふ シリウス 顔が怖いわ からかうように言って笑う もふもふを堪能しながらもネコの様子に注意 動きのおかしいネコを見つけたら声をあげて仲間に知らせる オーガが現れたらトランスして包囲 ミュリーを逃がし 注意を引きつけるように攻撃 錫杖を当て シリウスの攻撃の威力をあげる |
ロア・ディヒラー(クレドリック)
もふもふの猫だらけで幸せ…! 猫を他の組と被らないようにもふったりかまったりしていく。 クレちゃんとりあえず被り物被っといて! …すごく不気味だけどまあなんとかなるか! 猫を堪能しつつ、変な反応の子がいないか探してみる。 変な猫(オーガ)を発見したら大声で知らせる! クレちゃんの被り物をとってトランス。 クリアレインで目くらまししつつ、ディスペンサでMP回復。 |
ツェリシャ(翠)
猫に入り込むとはドジっ子属性のオーガですか? まあ、とっとと見つけましょう 全員言葉が面妖なことになってますが伝わるから問題なしです 見える範囲には8匹ですが、他にいないか家捜しします 高い所とか隙間あたりを重点的に 基本は各自一人一匹ずつもふりましょうか 猫語で宥めつつ接近です 警戒が緩んできたら接近してなでなでもふもふです これはいい毛並みですね 様子が変だったら声を出して知らせます 翠さんとは付かず離れずの距離でいます オーガが正体を現したらトランスです とても恥ずかしいです(まがお 戦闘中は他の猫を回収して避難させますね 本物と夢の猫の区別が付く気はしないので無差別です オーガがこっちを見るようならとにかく逃げます |
ファルファッラ(レオナルド・グリム)
オーガと本物の猫を見分けられるようにするにはとりあず猫の相手をするのがいいかな。 オーガにおもちゃとか使うと反応が遅れたりするかも。 1組でだいたい2匹の猫を相手にする感じになるかな? オーガが分かればみんなで囲んで攻撃。 忘れちゃダメなのは事前にトランスをすること、と。 …レオ、トランスするのもしかして照れてる? 猫を撫でたりモフモフしたりおもちゃで遊んだり。おもちゃは持ってきたハンカチ。これをひらひらさせて瞬発力とか反応速度でオーガと判断できればいいけど。 うちの猫はあんまり可愛くないからね…こんなに可愛い猫ちゃんの相手が出来て嬉しいな。 でもレオがにゃーって言うのが面白い。可愛いんじゃないかにゃー? |
「ににゃー…!(もふもふの猫だらけで幸せ…!)」
「にゃう」
広間見渡し感嘆の声を上げるロア・ディヒラーの、嬉しそうな表情へ満足げに頷くクレドリック。
ロアの隣で同じように瞳輝かせるリチェルカーレは、ざっと猫の数を確認し。
「みみゃ~(一人一匹以上担当といった感じでしょうか)」
「にゃごにゃー?(オーガにおもちゃとか使うと反応が遅れたりするかも?)」
「みゃ。にゃにゃに(そうですね。あと、見える範囲には8匹のようですが、他にいないか家捜しもしてみます)」
リチェルカーレとファルファッラの言葉に、ツェリシャが同意しながら視線を猫たちに向けた。
猫語に全く動じることなく会話を繰り広げる神人たち(プラス クレドリック)。
それを、すでに疲弊した顔で見つめるのはシリウス。
猫語。それは彼の中で踏み込んだことのない未知の領域だったようだ。
凄まじい抵抗感から喋るのは必要最低限のみと、そっと心に誓われたとか。
「にゃー……(ファルの依頼の選び方の基準を問い正したい気がするが考えるだけで頭が痛いな)」
レオナルド・グリムの、溜息混じる猫語のたった一言に、哀愁の全てを乗せた思いが感じ取れた。
シリウス、視線で思わず同意する。
「にゃおう(全員言葉が面妖なことになってますが伝わるから問題なしですね)」
「みゃ……(そ、そういうものなのかな)」
一部の精霊たちの憂いをジャバッと洗い流すかの如く、マイペースに話すツェリシャに、まだ年若い精霊・翠は流され気味の様子。
今はきっと流されていた方が平穏保てるであろう。心とか精神が。
「にゃーお」
「みゃふ」
じゃ、とりあえず猫ちゃんたちと仲良くなりにいこうか、と早くモフりたくてウズウズしていたロアの言葉へ
作戦了解した、と頷いたレオナルドの動き出しをきっかけに。
全員が広間を手分けして歩き出すのだった。
●オーガを探せ!別名モフりタイム
「にゃ!みゃおみゃおっ」
「……にぁ」
しゃがんで両手広げたロアへ、一度好奇心から近寄り始めた猫たち。
だったが、その後ろから顔覗かせたクレドリックを見た途端、背中の毛ぶわっ。じりじりと後退していく。
その様子を見て思い出したようにロアが言う。『そうだった!クレちゃんとりあえず例の被っといて!』と。
『……これのことかね』 そう首を傾げながらクレドリックがすぽっと頭から被った物。
どちらが購入し何故今日持っていたのか謎の代物、つぶらな瞳した大きな猫の顔。
決して彼のせいでは無いのだが、どうしても地顔のままでは猫たちを怖がらせるんじゃ、と思い至ったロアの案である。
「みゃっ……にゃにゃん(……すごく不気味だけどまあなんとかなるか!)」
正直な感想がロアの口をつく。だがそう感じた者は他にも居たり。
「にゃおにフゴっ(あれがオーガではnムゴっ)」
クレドリックの姿を見たツェリシャ。
その口から指差して放たれそうになった言葉を、慌てて塞ぎ遮る翠の姿が後方に。
しかして、猫目線では効果があったようだ。
今にも逃げ出しそうだった一匹の勇者が、クレドリックの煌く瞳(注:被り物の)を暫し見つめた後、
恐る恐るその足元へ擦り寄った。
「みゃおみゃ……(かまったことなどないので分からなかったが、柔らかいのだな……)」
どこか優しさ混じる低音の猫語に、ロアは思わず破顔する。
以前にも動物には避けられがちだと聞いていたのもあり、クレドリックが動物と戯れる姿を見れるのは嬉しかったのだ。
いつの間にか懐いてくれた、自分の膝に前足乗せる一匹を抱っこし。
ロアは嬉しさをおすそ分けするように、わしゃもふっと撫でた。
(ロアの表情がとろけている。……なんだか無性にうらやましいのは何でかね……)
思わず撫でる猫へ目で尋ねているクレドリック。
切ない。本当は自分へ向けられた表情だと、ご本人気付かず。
* * * *
「みゃーみゃー♪(こんにちは、ネコちゃん。一緒にあそびましょ?)」
警戒心てんこ盛りな猫たちから、肉球パンチや尻尾ビンタを受けてもニコニコと笑みを絶やさないリチェルカーレ。
――大丈夫、怖くないよ。……ほらね、怖くない。
噛み付いてはいません念の為。
メゲない精神に乾杯☆もとい完敗した猫。鼻先をすんすんリチェルカーレの手にくっつけた後、今やその膝にゴロゴロ。
すっかり懐いてくれたのを確認してから、よいしょっと猫を抱っこしたまま
ツェリシャが言っていたように、見えない場所にいるかもしれない猫を探し始めた。
すると先程まで黙々と広間内の猫たちを探ったり観察していたシリウスが、一匹の猫とにらみ合っているのに気付く。
正確には、睨んでいるのは猫の方であり、シリウスは困惑顔なわけだが。
いつもなら、こういうことが得意そうなパートナーの少女へバトンタッチするところだが。
作戦は一人一匹以上がノルマ。シリウスは任務を遂行する覚悟を決めた。
リチェルカーレ、こっそり見守り拳ぐっ。
確実に自分が戸惑う様を予想したリチェルカーレから、事前に受け取っていたパペットをシリウスは徐ろに装着。
猫パペットである。猫の手の部分に自身の指も通せば、ぴょこぴょこと動かしじわじわと猫に近づけてみる。
睨む猫の瞳が次第に丸くなる。今度は猫が困惑である。
背中の逆立っていた毛がおさまったのを確認。あと一歩だろうか。
シリウス、恐る恐る口を開いた。
「……にゃ……」
がっくり。
『こっちに来いよ』と言ったつもりだったが、案の定自分の口から出た猫語に思わず額を抑える。
「にゃふ。にゃーお(シリウス、顔が怖いわ)」
ふふ、と可憐な笑い声混じる猫語に振り返ると、リチェルカーレが楽しそうにこちらを見ていた。
恨めしげな視線を飛ばすシリウス。だからこういうことは不得手だと……。
口にされなくともそう伝わってきて、リチェルカーレは益々笑みを深めながら。
「にゃにゃん(ほら、折角懐いてくれたコが逃げちゃうわよ?)」
「み……?」
つい反応してまた声を発しては落胆しつつ正面向き直ってみると、いつの間にか対峙していた猫が足元に ちょこん。
シリウス、やや目を見開いた後そっとその手を伸ばす。猫はシリウスの手に擦り寄った。
ほっと表情を緩め、わしゃわしゃと猫と戯れる様子を、リチェルカーレは微笑ましく見つめるのだった。
* * * *
「みゃーお(『嘘とお菓子は甘いもの』)」
レオナルドの頬に猫語と共にキスしているファルファッラ。
忘れては大変、と事前にトランスを済ますことを選んだ。
インスパイアスペルを唱えているのは伝わるものの、聞こえる言葉に緊張感を吸い取られ溜息をつくレオナルド。
「み、にゃあにゃあ?(……レオ、トランスするのもしかして照れてる?)」
「……ぅなーご(……ガキのお前にキスされたくらいで照れるか)」
眉間に皺を寄せ肩をすくめるレオナルドの言葉を、なんだー、と一向に気にすることなく
もう猫たちへ視線を移しているファルファッラ。
「にゃーにゃ(とりあず猫の相手をするのがいいかな)」
レオナルドもそれには素直に同意し、近くにいた一匹へと近づいた。
赤い耳、赤い尻尾。あれ、仲間かな?
空色の瞳がクリンと見上げて、レオナルドの足元に擦り寄ってくる。
「にゃっ。みゃごみゃご(あ。レオいいな)」
「……みゃうみゃお(自分で言うのもなんだが俺が猫のテイルスだから警戒が少ないのかもしれないな)」
これは中々気持ちの良い触り心地。綺麗な真っ白な体を真剣にモフるレオナルド。
ファルファッラ、便乗してレオナルドがモフる猫を一緒に撫でる。
「にゃん(こんなに可愛い猫ちゃんの相手が出来て嬉しいな)」
うちの猫はあんまり可愛くないからね、とも伝わってきて。
ファルファッラを凝視しながら大きな赤猫さんが口を開く。
「にゃお……(俺は可愛くなくていいんだよ……)」
「にゃぅにゃぅー(でも、今にゃーにゃー言ってるレオは可愛いんじゃないかにゃー)」
「……にゃご(ファル。本来の言葉までわざわざ猫語で伝えてくるな……)」
一匹が撫でられていれば警戒心は解かれやすい。
ファルファッラのそばにももう一匹がてとてと歩いてくれば、アメジストの目が嬉しそうに細められ手招きする。
「にゃにゃにゃん(レオの三つ編み揺らしたら、ジャレてくれるかな)」
「み(引っ張られて痛いのは俺だと思うが)」
「みゅ……にゃーお(ああでも爪引っかかったら猫ちゃんかわいそうかしら。レオの大事な三つ編みも傷んじゃうかもだし)」
「………」
聞いてるか?と精一杯込められた念は、どう楽しく猫ちゃんと遊ぼうかしらと考えるファルファッラには届かないようだ。
* * * *
高い所や隙間を重点的に覗き込んで、隠れている猫がいないか見回っているツェリシャ。
ツェリシャが届かない高さは、翠が代わりに探しながら。
「みゃおん(それにしても、猫に入り込むとはドジっ子属性のオーガですかね?)」
「にゃーにゃー(ツェリシャ、オーガに聞こえちゃうかもしれないよ。……属性?)」
他の仲間たちが戯れる猫を振り返りながら、真面目な翠は返答する。も、属性の意味が分からず首を傾げた。
ツェリシャ、翠の疑問系を華麗にスルーし歩き出せば暖炉を覗く。
「みゃ。にゃう(あ、居ました)」
覗いた手前、正面から見ただけでは視覚になる角に真っ白な尻尾が見えて、ツェリシャは少し頬を緩ませた。
チッチッチッと、焦らせないようにそっと指で出てくるのを促す。
慌ててすぐ後ろについてきた翠も、暖炉の上に乗っていた猫と視線が合ってニコッと微笑んでみる。
その猫が座る暖炉の上。天井に伸びる煙突のパイプの後ろにも、白い毛玉が動いたことに翠はしっかりと気付いた。
「にゃおにゃお(こんな所にも居たよ)」
「にゃう(見た限り、これで全部かなあ)」
ならばモフるのに専念しようか、とツェリシャはまだ顔を出してくれない暖炉の中の猫に根気強く話しかける。
みゃおみゃお。おいでー、仲間だよー。うん、勝手に猫語変換は楽かも、なんて。
翠の方は、先に暖炉上レンガに座っていた猫の、頭をそっと撫でた後喉元をゆっくりと撫で回す。
それを見ていたパイプ裏の猫、自分も撫でてーといわんばかりにあっさり姿を見せて翠の手へ擦り寄った。
「……にゃー。にゃおにゃ?(翠さんは犬属性かと思っていたんですが……実は猫属性だったんでしょうか)」
「みゃ?ににゃーにゃ??(あの、ツェリシャ。僕はポブルスなんだけど……属性??)」
あっさり猫を手懐ける翠をどこか羨ましそうに見上げるツェリシャ。
また首を捻りながら、苦戦している様に気付けば、懐いてくれた一匹をツェリシャの腕の中へモフンと預け。
自分が暖炉の中の猫を担当する翠。
「みゃみゃ(これはいい毛並みですね)」
腕の中で大人しくしてくれる猫を、もふもふ堪能するツェリシャ。
いつもより、気持ち年相応になった顔にも見えて。
こんな顔も出来るんだ。ならきっとこれからもやっていける気がする。
例え普段が全く何を考えているのか分からないとしても。
翠の心に安堵が広がったとか。
●散々モフられて。オーガ現る
いつの間にか赤い尻尾がねこじゃらしと化し、他の仲間が構う猫も集まってきて相手をしていたレオナルド。
ジャンプジャンプ!猫たちのジャンプ力は中々逞しい。
その様子を見つめて、ふとポケットからハンカチを取り出すファルファッラ。
ヒラヒラ。
ハンカチを自分の身長の限界まで持ち上げはためかせると、ファルファッラがもふっていた猫もキュピン☆
盛大にジャンプで飛びつき始めた。
瞬発力や反応で見分けられないかしら、というファルファッラの意図に、何人かのウィンクルムが気付く。
猫を抱っこしたまま、リチェルカーレがファルファッラに駆け寄った。そして耳打ちする。
「にゃーにゃー」
「みゃ?」
愛らしい子猫たちの密談。
ファルファッラ、何やら頷くと持っていたハンカチを軽く丸めた。
そして。
ポ ー ン
ハンカチに包まれたのは、リチェルカーレのイヤリング。常にふんわり甘い香りを放つそれに、すぐ猫たちは反応した。
適度な重さを包んだハンカチは、天井目指して上がる。
さすがの猫ジャンプでも、思い切り飛ぶも届かず。一匹、また一匹と落ちてくるまで諦める猫たち。
しかして。
ジャーーーーーーンプッ もきゅう!
グイーンとジャンプで上り詰め、ハンカチをその口でキャッチした猫がいたのだ。
それは明らかに猫の身体能力を超えたジャンプ力。
「「「「にゃ―――!!!」」」」
あれだーーー!!
神人たちが声を揃えて叫ぶ。
見て分かりきった精霊さんたち、叫ばなかったのは意図的だろうか。
ビクゥ!とハンカチ咥えた白い猫、ウィンクルムたちをキョロキョロ見渡すと、途端にその姿が巨大な影へと揺らめいた。
その瞬間、ぽひゅんっぽひゅんっ、と煙のようにほとんどの猫たちの姿が消えていった。残ったのは本物一匹。
「にゃーお(やっぱりドジっこ属性……)」
「にゃにゃん!(ツェリシャ!トランスを!)」
思わず呟いたツェリシャにトランス急ぐ翠が声を放った。
それを合図に、他のウィンクルムたちも一斉にトランスへと移行する。
「にゃう!(クレちゃん、私たちもトランス!)」
「『にゃんでやねん』」
「うにゃ!?」
振り返ったロアの耳に、覚えのないツッコミが届いた。ロア、クレドリック凝視。
「みゃーお……(違う。私ではない)」
冷静に被り物の首を振るクレドリック。
その腕に残っていた本物のミュリーが、まだ事態が分かっておらず遊んでいた。
クレドリックの被る猫顔に付いた大きな鼻を、肉球でたまたま ぷにっと押したのである。
すると、被り物が機械的音声にてツッコミを放ったのであった。何というタイミングで。
脱力したロアだが気を取り直し、クレドリックの被り物を勢いよく外した。
「にゃーん(永久(とこしえ)に誓う)」
「みゃおみゃん(この手に宿るは護りの力)」
ロアに続きリチェルカーレもトランスの言霊を囁き、シリウスの頬へとキスを落とす。
耳元に響く猫語に、今にも力が抜けそうになるのをグッと堪えるシリウスの姿があったのは内緒である。
続々とトランスが無事に完了されたのは、すでに事前にトランスを終えていたレオナルドの時間稼ぎのおかげでもあった。
正体見せたオルロック・オーガの影が形成された瞬間、マジックブックにて困惑と錯乱をオーガに放っていたのである。
当然長くは持たないが、全員がトランスを終えるには充分な時間であった。
「にゃう(シュウソクをのぞみます)」
最後、ツェリシャと翠がトランスをした瞬間にその効果が切れる。
全員にトランスをされては勝ち目はない。オルロック・オーガはこの場にいるウィンクルムを見渡し本能で悟った。
ならばせめて。こんな事態を引き起こした猫だけでも何とかして食べてやる。
黒い巨大な角を持つ影が、ざぁっと本物のミュリーへ襲いかかろうと向きを変えた。
クレドリックから受け取ったミュリーを、しっかりと抱きしめるロア。
その前方に、バトルフライパンを突き出し守るように構えていたのはファルファッラだった。
(本当、レオの言った通りにして正解ね)
本物が分かったらすぐに保護した方が良い。
事前にそうレオナルドから聞いていたファルファッラは、いち早くミュリーの下へと駆け出していたのだ。
すぐに手出し出来ないことに、オルロック・オーガは苛立ちを見せる。
ならばこの神人たちを倒してから。
その黒き手が振り上げられたまさにその時、ファルファッラの視界を光の粒子が覆った。
「にゃーごにゃにゃにゃにゃ―――ん!(昏き魂のみの存在で光纏い我が道照らすロアに手を出そうなどと、冥府の神が許したとて私が許さん!)」
「……にゃん?(彼はいつもこうかしら?)」
「にゃん……(ごめん。とってもいつも通り……)」
ロアとファルファッラを守るように立ちふさがったクレドリックによる、『天の川の彼方』発動。
先程まで猫と遊んでいた控えめな姿と違い、活き活きとオーガに向かって杖を突き出し物申している姿に
神人2人がこっそり会話していた。
「みゃーう(シリウスもお願いね……気をつけて)」
黙って、力強く頷くシリウス。瞳は言っている。リチェも決して無茶はするなよ、と。そうしてオルロック・オーガの逃げ道を塞ぐように後ろへ回り込んだ。
「にゃおう(トランス、とても恥ずかしかったです)」
初めて目にするオルロック・オーガの姿に、若干の緊張はらんでいた翠だったが。
台詞と表情に説得力が無さ過ぎるツェリシャに、幾分か力が抜けた。
ロングソード・ギルをしっかりと握り締めると、一度ツェリシャと視線を交わし頷いて見せる。
そして、オルロック・オーガの脇、少し後方にいた皆の援護役なレオナルドの、万が一の盾になれるように位置取った。
包囲された状態となり、オルロック・オーガは半ばヤケで精霊たちへと襲いかかった。
しかし己が役割をしっかり把握している精霊たちの攻撃には、全く隙が無かった。
天の川を転回したまま、クレドリックはオーガが攻撃を仕掛けようとした瞬間を狙い、『乙女の恋心Ⅱ』による内側からの熱魔法を放つ。
炎が這い回る灼熱の痛みに動きが止まったところを、シリウスの『アルペジオⅡ』の神速三段切りが胴体に入り、じわじわとダメージが蓄積される。
翠もシリウスに倣ったタイミングで飛び込めば、狙いを定めスネークヘッドで的確に攻撃を当てた。
狂ったように雄叫びを上げ、オルロック・オーガは全てをなぎ払うかのように両手を振り回し暴れる。
クレドリックに守られているロアとファルファッラには、その攻撃が届かないのは明白だった。
翠は一瞬不安が過ぎり辺りを見渡した。
すぐにその不安は払拭される。ツェリシャはしっかりとオーガと距離をとり、しまいには大テーブルの下にその身半分を隠していたのだ。
ツェリシャ、翠と目が合えば、GO!と拳を突き出した。
しかして一人、シリウスが目を見開いた。いつの間にか後方に下がっていたはずのリチェルカーレがいない。
その瞬間、シャランッと涼やかな音と共に錫杖がオーガに投げられ掠めた。
その神々しい銀の輪は、オーガの体を守る深緑のオーラを浄化するよう取り払った。
リチェ……あれ程無茶をするなと……っ
後で小言を言おうと決意しつつ、シリウスは翠と視線を交わす。
左右に分かれ、オーガを徐々に光の壁へ詰めていく。
意図が分かったクレドリックから声が上がる。
「にゃー!」
「みゃお!」
一言で通じるのはロアとクレドリック二人の間にある絆の力。
ミュリーをファルファッラへ手渡すと、ロアはクレドリックの頬へと躊躇うことなく口づけ、己のMPを精霊へと分け与えた。
もしもの事態に、MP切れでクレドリックが魔法が放てなくなる前に。
ロアは、そのままクレドリックの隣へ凛と立つ。
クリアレインを構えた。狙うはオーガが此方を向いた瞬間。
オーガが吠える。その真っ黒な歪んだ顔が見えた。
シュパッ!
ロアの放った矢が光を反射し、オーガの視力を一瞬奪う。
「にゃん!(今だ!)」
翠の声と共に、スネークヘッドとアルペジオⅡが同時にオーガの片足、同じ箇所へと切りつけられた。
特にアルペジオⅡは、威力を遮っていた先程のオーラが取り払われたことで、威力が増していた。
オーガが咆哮する。
「ギギャーーーー!!」
「っみみゃ!(下がりたまえ!)」
瞬間体がグラリと傾き、そして。
バチバチバチ!!
ファルファッラがミュリーを抱き締め更に後方へ避けた直後、光の壁にオーガが激突し盛大に火花が舞った。
シリウスと翠の攻撃は着実にオーガの体力を削っていた。最後のひと押し。それをクレドリックの維持する天の川の壁に委ねたのだ。
巨大な影は光に侵食されるように、その姿を散り散りにさせた――。
●
「ああ!可愛いミュリー……!無事で良かった!」
きょとんとした瞳で起きたミュリーを盛大に飼い主が抱き締めた後。
元通りになった言葉を噛み締める精霊たち。
すっかり懐いてくれたミュリーを、心ゆくまで撫でモフる神人たちの それぞれの姿があるのだった。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:ファルファッラ 呼び名:ファル、嬢ちゃん |
名前:レオナルド・グリム 呼び名:レオ、レオナルド |
エピソード情報 |
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マスター | 蒼色クレヨン |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | 推理 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 4 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 04月21日 |
出発日 | 04月27日 00:00 |
予定納品日 | 05月07日 |
参加者
会議室
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2015/04/26-23:35
トランス、囲い込み作戦、残り2匹についても承知しました!
にゃあでもきっと伝わります、多分。
か、被り物良いんですか…!?…被っていってもらいます…
うまくいくといいですねー!みんなで猫をもふって力あわせていきましょう! -
2015/04/26-22:00
そういえば見える範囲には8匹しかいないみたいですね。
ツェリシャさん探索ありがとうございます。私も近くのネコをもふもふしながら探してみます。
一応、オーガらしきネコを見つけたら声をあげて知らせる、としましたけれど…これも「にゃあ」となるんですよね。
つ、伝わるよう気持ちをこめていいますね!
出発まであと少し。
うまくいくといいですね。 -
2015/04/26-20:54
とりあえずみんなで別々の猫を構えばいいかな。
全部で8匹だから一人一匹ずつ?
トランスを忘れない。うん、これ大事だね。
作戦了解。そんな感じで仕上げるよー。
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2015/04/26-20:25
猫の被り物も効果ありそうでいいですね。味方も目を逸らしそうです。
とりあえずまだ2匹見つかっていないようなので、私はまずそちらを探してみる事にします。
オーガが判明したら囲いこみ了解です。
では、そんな感じでプラン仕上げてきます。
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2015/04/26-19:15
各々でもふもふ、ぎゅーっとしてオーガを探すのですね。了解です。
がんばります!
オーガがわかれば皆で囲んでやっつけるような形でしょうか。
トランスだけは忘れないようにしないとですね。 -
2015/04/25-00:56
こんばんは、初めまして!
ロア・ディヒラーとパートナーのエンドウィザードのクレドリックです。
どうぞよろしくお願いしますっ
もふってかまって遊び倒せばいい感じかな!?
玩具への反応とか、一人以上を同じタイミングで案いいと思います。
…パートナーのクレちゃんの顔がかなり悪人面なんで猫たちに警戒されそうだなーとおもったんですが、とりあえず被り物「にゃんでやねん」をかぶせておけば問題ないですよね!
…逆に怖いかな…? -
2015/04/25-00:11
どうも、ツェリシャです。
パートナーはシンクロサモナーの翠さん。
よろしくお願いします。
なんとも面妖な状況になりましたね。
同じくもふったりの構い倒しに同意します。
ただ他の猫のしぐさを見て真似されると面倒なので、各自1匹以上受け持って同タイミングで構いだして不審な猫を探すのがよさそうかなと思ってます。 -
2015/04/24-20:51
はじめまして、リチェルカーレです。
パートナーはマキナのテンペストダンサー、シリウス。
よろしくお願いします、ね。
もふもふしたりぎゅーっとしたりしたらいいのかしら(わくわく)。 -
2015/04/24-11:17
はじめまして…ファルファッラよ。
パートナーはトリックスターのレオナルド。
よろしくね。
今回は猫をもふればいいと聞いて(すちゃ)
やっぱりオーガだとおもちゃへの反応が遅れたりするのかなぁ思うんだけどどうだろう?
ねこじゃらしとか猫じゃないと反応に悩んだりすりするかも。