プロローグ
穏やかな昼下がり。天気は、曇り。タブロス郊外の農村マルメロでの出来事。
「なんだか雨が降りそうなお空ねぇ」
「そうね~、あ、そうそう。この間ね、うちのお父様がパーティー用にってドレスを買ってくださったのよ」
中心部のカフェのテラスで何やら少女が二人、語り合っている。
「まぁ!良かったわね。わたくしも今度パパにおねだりしちゃおうかしら」
そう言ったのは長い紺色の髪の少女、モネ。
「でも、わたくしのドレスほどのものは手に入らないと思いましてよ?最高級のシルクを使って、お抱えのデザイナーに仕上げさせましたの」
ほほほ、と高笑いしたのが真っ赤なふわふわのセミロングヘアの少女、ソワレ。双方とも、この地域の富豪の娘らしい。
「ふ、ふぅん、わたくしも、先日ネックレスを買ってもらったの」
少女の胸元で、きらりと大きな宝石が光る。
「あ、あら、やっぱりそれ、新しい宝石ですのね?」
素敵じゃない、と褒めればモネもありがとうと目を細める。
いつしか話題は逸れていき、どちらの父親が有力者なのかというところに来てしまっていた。
「わたくしのお父様は財力、人望共に……」
「あぁ~ら!わたくしのパパだって先日ね……」
出た。矜持のぶつかり合いだ。
こうなるとこの二人は止まらない……。
その時、どこかから村人の叫びが聞こえた。
「大変だ!村のはずれの湖にオーガが出たらしいぞ!」
ざわ、とカフェの中がざわつく。
「どんな奴だ、見た奴はいるのか」
「ああ、カエルみたいな頭の2mくらいの奴だって……」
そこで、モネが立ち上がる。
「大変ね……パパの名前でウィンクルムを呼ぶわ!」
カフェの中がざわついた。
モネはこの村の西のエリアを仕切るアズール家の長女。彼女に任せればA.R.O.A.にすぐに頼めるだろう。
「それには及ばなくてよ!わたくしのお父様の名前でウィンクルムを呼びましょう!」
ガタ、とソワレも立ち上がる。何を隠そうソワレはこの村の東のエリアを仕切るロセッティ家の長女。二大勢力の長女がウィンクルムを呼ぶと張り切っている。
「わたくしが!」
「いいえ、わたくしが!」
カフェを出ていこうとする二人にカフェの店長がおずおずと呼びかける。
「……どっちが呼んでも同じだと思うんだがね、あんまり先方にも手間かけさせちゃいかんよぉ」
その声は届いていたのか……?
***
「と、いうわけで!」
A.R.O.A.本部にて二人の少女が依頼書を職員に提出した。
「わたくし、アズール家を代表し、マルメロ村に出たカエルのよーなオーガを討伐して下さるウィンクルムを要請いたします!」
「わたくし、ロセッティ家を代表し、マルメロ村に出たカエル頭の2mオーガを討伐して下さいますよう願いますわ!」
二人ほぼ同時にそういって顔を見合わせる。
「ですから、ソワレは家にいていいのよ?」
「あ~ら、モネこそすっこんでて良いんですのよ!」
女性職員は頭を抱える。
「……何しに来たんですか全く。同じ村の同じオーガですから、まとめて受理しますからね」
二人は噛みつくように反論する。
「いーえ!わたくしの家の名で受理していただかなくては困ります」
「ロセッティ家をなんだと思ってますの?」
女性職員はふかーくため息をついた。
「……あのねぇ」
「わかりました。アズール家に付いてくださるなら車をお貸しするわ」
絶対にロセッティ家より先に討伐してくれと彼女は言う。
「まぁ!抜け駆けですの?では、わたくしについてくだされば任務に必要な携帯品を我がロセッティ家からお貸しするわ」
もちろん手に入るものしか貸せないけれど。そう言って彼女は腕を組みなおす。
もう、この少女たちを黙らせるのが面倒になった女性職員はとりあえず受理して依頼を提出する。
出来ればこのうるさい少女たちを上手く説得してくれないかな、なんて思いながら。
解説
目的:ヤグマアル3体の討伐。
状況:村の北に位置する湖にヤグマアル3体が確認されました。
湖までは村の中心から歩けば30分程度(走れば20分ちょっと)車なら10分もあれば到着できます。
ヤグマアルは現在人気のない湖でまったりと汚染活動をしていることでしょう。急がなくてもいいので、皆でタイミングを合わせて討伐することをお勧めします。(あまり放置しすぎたら村に来るかも)
*お嬢様達
まずは村で彼女たちの話を少し聞いてから出発です。
その際、どちら側に付いたのかをお話しすること。
(ついた、と言っても、便宜上です。戦場にお嬢様は来ませんので、湖では全員で協力し合ってくださいね)
☆彼女ら二人を説き伏せる事が出来て、車や道具の貸し出しもいらない!という場合は、どちらに付いたという話をしなくても結構です。しかし、彼女らに足止め食らってる場合ではないと思うので、慎重に。
☆二人は如何に「自分の方がすごいお嬢様か」を示すことしか考えていません。もし余裕があれば、そうではないということを教えてあげてください。手段は問いませんが、手荒なことはNGです。
☆二人の父親は現在商談中で村を離れています。実質話ができるのは本人たちだけです。
ヤグマアル情報
カエルのような見た目の全長2mのオーガ。アシッドレインで局地的(10m四方)に酸性の雨を降らせる事が出来る。全身を覆う粘液は微弱な毒性を持っており、異臭を放つ。
基本攻撃は20mほど飛ぶ唾液。奇襲の可能性もあるので、十分に注意を。
NPCプロフィール
モネ・アズール(14)…アズール家長女。兄がいるが、遠方の大学に通っているため不在。
ソワレ・ロセッティ(15)…ロセッティ家長女。一人っ子。父母は二人で仕事のため家を空けている。
流れとしては、
お嬢様二人の話を聞く→湖でヤグマアル討伐→村へ戻りお嬢様方に報告
です。
討伐基本ですが、
更にお嬢様方を最終的に納得させれば大成功です。
お嬢様方、どちらについてもOKですし、人数を均等に分ける必要もありません。
ただ、2人を納得させるため始めは二手に別れ、どちらについたか名乗り出るのが良いでしょう。
ゲームマスターより
おほほほほ。
おほほほほほほほ。
別に悪い子たちじゃないんだよ。ちょっと目立ちたくて拗らせちゃってるだけで。
手を取り合うことの素晴らしさを知っているのはほかでもないウィンクルムの皆さんだと思うの。
よろしくお願いいたします。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
叶(桐華)
令嬢さんの説得時は外の方で警戒 話を振られない限りは口は出さないよ 長引きそうならオーガが来ちゃう!って感じで切り上げさせて貰おう 消火用バケツ持参で湖周辺でオーガの索敵・誘き寄せ トランスは湖到着時点、接敵前には済ませとく 火をおこす用意があるならお手伝い 三体同時の相手が理想 駄目でも奇襲を受けないように周囲の警戒は継続 オーガが突破して村に突っ込まないように村を背にする位置取り 倒れる子が居たら、安全な場所に避難させるよ 湖の真ん中とかで攻撃届かない場合はイレイスさんにお願い 酸性雨以外の攻撃は、必要なら盾にでも使って 桐華のMPが切れたらディスペンサ お嬢さんたちがこれを機に仲良くなってくれればいいんだけどねぇ |
ローランド・ホデア(リーリェン・ラウ)
村で両令嬢を同時に相手する 二人に 村の危機が迫っている時に、争ってどうする こういう時こそ、家名の誇りではなく村のために、手を取り合って両家が共同でA.R.O.A.を動かす方が、村人の印象は良い それはお前達令嬢自身だけでなく、家や両親の評価アップにも繋がるのだから、今は連名で依頼したとせよ と説得 納得しなければ、どちらの味方もしないと伝えて湖に急行 湖前でトランス オーガの奇襲を警戒し、状況を確認 神人が湖に近寄り、精霊は隠れる 森がありオーガが潜んでいそうなら焚火をして燻しだす 湖の中も警戒 オーガがきたら精霊に大声か携帯で連絡 戦闘中は回避か武器でいなす・防御する 村にオーガが行きそうな場合体を張って阻止 |
終夜 望(イレイス)
先ず、俺の方で『ライターオイル』・『マッチ』・『新聞紙』・『紙袋』を準備しておくぜ。 お嬢の説得はローランドに任せて、俺は兄貴が余計な事言わない様目を光らせとく。 上手く協力が得られたら車で、そうじゃなけりゃさっさと徒歩で湖に向かうぜ。 湖畔の入り口の森についたら兄貴とトランスしとく。……慣れねえけど、根性でなんとかする。 俺は正面切ってローランドと一緒に囮役だ。 オーガが湖に居るようなら火を焚いておびき出す。 いねーなら兄貴とリェンの連絡を待って、合図で紙袋を膨らまして大きい音をだしておびき寄せる。 あとはオーガの攻撃を避けつつ時間稼ぎ……だな。 ローランドを護るように立ち回るぜ、俺の方が耐久力あるしな。 |
■いざおほほほほ。
「ようこそ来てくださいましたわね!」
ソワレは真っ赤なセミロングウェーブヘアを揺らして高笑いをかます。
ウィンクルム一同が訪れたのは、町の中心部にある町民会館。そこにお嬢様二人は集まっていた。それぞれに付いた執事が小さくため息をつき、こちらに頭を下げる。
「さて、どのウィンクルムさんがわたくしについてくれるのかしら」
モネは品定めをするようにウィンクルム達を上から下までじっと見つめる。
神人、叶はスッと一礼して、扉の方へ歩みを進めた。
「あっ、どこへ行きますの?」
ソワレが小さく声を上げると、叶の精霊、桐華はその声を聞かずに外へ出て扉を後ろ手で閉めた。叶は令嬢二人に向き直り、説明する。
「こうしている間にも何かが起きると困るから、僕たちはドアの外で警戒していようと思います。……あとの話はそこの二組から聞いてくださいね。それじゃ」
ソワレとモネはハッとする。“警戒”その二文字を聞いて、この村に迫っているものがなんなのか、再認識することになったのだ。
神人、終夜 望は、もう一人の神人、ローランド・ホデアに目で合図した。ローランドが令嬢二人の前に出て、静かに唇を開く。
「村の危機が迫っているときに争っていてどうする」
傍らで精霊のリーリェン・ラウは静かに聞いていた。
望の精霊、イレイスもうんうんと頷きながらその様子を見つめる。
「別に、争ってなどおりませんわよ~」
ソワレがほほほと軽く笑う。
モネはじろりとその様子を横目で見た。
「……どちらに付く、という言い方は競い合っているという風にしか聞こえないが」
ローランドの的確な指摘にソワレはばつが悪そうに俯いた。
「……そ、そう、ですわね……」
あの時、依頼をしたとき自分たちは何と言っていた?自分の家の名前で受理しろと張り合っていたではないか。それを思い出させるようなローランドの一言にモネは言葉を詰まらせた。
「こういう時こそ、家名の誇りではなく村のために手を取り合って両家が共同でA.R.O.A.を動かす方が、村人の印象は良い」
そこはさすが消費者金融企業の社長御曹司といったところか、民衆の心の動きをよく把握している物言いだった。どちらがよりすごいお嬢様かで張り合っている彼女らの自尊心を傷つけず、尚且つ協力したくなるような言い回し。それは……。
「それはお前達令嬢自身だけでなく、家や両親の評価アップにも繋がるのだから、今は連名で依頼した……としてはどうだ?」
望はイレイスが余計なことを言わないようにと目を光らせている。リーリェンも、自分の“ゴシュジンサマ”が華麗に令嬢二人を丸め込むのを内心ほくそえみながら見つめていた。
「連名……」
モネが小さくつぶやく。
「……私たちがここで優劣をつける、というのは間違っている。そうですわね、モネ」
ソワレがモネの目を見つめて問う。
ローランドはもう一度ワントーン低い声で優しく告げた。
「“今は”連名で依頼したとせよ」
二人は顔を見合わせ、そしてウィンクルムに向き直って小さく頭を下げた。
「そうですね。今は……張り合っている場合ではない。カエル頭のオーガが迫っているんですものね」
その場のウィンクルム四人、全員がしっかりと頷いた。ソワレも続けるように言った。
「ここは一時停戦ですわよ、モネ。村のため……それに、わたくしたちが張り合っていてはきっとこの方たち、協力してくれませんわ」
「そうね、ソワレ。……皆様方、失礼な依頼の仕方をして申し訳ありませんでした。私ども二人の連名での依頼、お受け頂けるかしら」
「もちろん」
間髪入れずに終夜が答えた。全員が同じように頷く。
「さぁ、何が必要でして?まずは、車ですわね!」
ソワレが二回手を叩くと、執事はパタパタと走って外へ出ていった。
「わたくしは何を用意すればいいかしら。なんなりとお申し付けくださいませ」
モネの申し出に、望が答える。
「火を起こしてオーガをおびきだす予定なんだけど、何か使えるものがあれば」
彼の手には紙袋。そのなかにはマッチ、新聞紙、ライターオイルが入っている。
協力が得られなかった場合に備え持ってきていたが、モネはピンときたように手を一つ打った。
「えっと、何かご持参頂いてるのね。あと、何が必要かしらね……ああ、湖はとても湿気が多いの。マッチが湿気て付かないかもしれないわ。ガスバーナーをお貸しするわ!」
小さい、キャンプ用のガスバーナーを持ってくるように執事に申し付ける。
「あーあと、ロゥ達が囮やるつもりなんだけど、その間俺ら潜伏してよーと思うのね?トランスすると光っちゃうから、湖に隠れられる場所とかあったら教えてほしーな」
リーリェンがそう言うと、モネとソワレは顔を見合わせる。そして、小さく首を振った。
「あそこは結構開けているの。森に隠れるとなるとちょっと湖から離れちゃうわ」
「それに、光るってどの程度かはわからないけどあそこ昼でも暗いから……」
見えちゃうわね、とため息をつく。
「気休め程度かもしれないけど、暗幕があるからそれにくるまるのはどうかしら。さすがに戦闘中は脱ぐことになるけど、別に破けても汚してもいいから」
モネは持っていた携帯電話で自分の屋敷へと連絡を入れた。
そして、腕を組みなおしてあれもこれもと提案しようとする。
「気持ちはありがたいが……」
その時、入り口の扉がバタンと開いた。
「もうそろそろ行かなきゃ!オーガが来ちゃう!」
叶だ。ロセッティ家が所有するワゴンタイプの車も、玄関に付けてあった。
「あら!」
モネとソワレが同時に口元を抑える。
室内にいたウィンクルムは叶と桐華に“助かった”と目配せをした。
「失礼いたしました、皆様どうか御気を付けて!」
二人は大きく手を振ってくれる。
■湖に潜む影
迷うことなく、望が運転席に乗り込む。初級マニュアル本のおかげで、それなりに運転はできるだろう。
残り五人も後部座席へと乗り込み、車を発進させた。残念な方向音痴の彼だが、カーナビと優秀なウィンクルム達の指南でなんやかんや上手に走れている。
道すがらアズール家に寄り、先ほど頼んでおいたガスバーナーと暗幕三枚を受け取り、大急ぎで湖へと走らせる。
湖にほど近いところで車をとめ、ウィンクルム達はその場に降り立った。
ここからは遊歩道のようになっており、五分程度で湖に到着する。ここからも湖は目視できるが、どうやら湖に怪しい姿はない。周囲を森に囲まれた湖だ。奇襲の恐れもあるのでローランドは周囲を隈なく見回す。
「いない、か」
当初の読みの通り、ヤグマアルの姿はそこにはなかった。
ウィンクルム達はいつオーガが襲ってきても問題ないようにトランス態勢に入る。
「狗よ駆けろ、それが那由多の彼方でも」
ローランドがリーリェンの頬に口づける。トランスの光が二人を包んだ。
「じゃあ、俺は隠れてるからなんかあったら連絡チョーダイ」
ニッと笑ってリーリェンは暗幕でその身を覆い、森の中へと姿を晦ました。
「……兄貴、後生だから真面目にやってくれよな?」
後生だから、を強調して望がイレイスを見やる。イレイスは胸を張ってこう答えた。
「任せておけ、望。ふられたネタにはお兄さん忠実だ」
「そういうことじゃない」
もうやぶれかぶれで望はイレイスの腕を引く。イレイスが小さく笑った。
「私の力はお前の剣と成り」
続けて望が唱える。
「俺の身体はお前の盾となる」
慣れない頬への口づけの後、ふわり、とトランスのオーラが広がった。イレイスも暗幕を纏い、森へと姿を隠す。
「おいで、遊ぼう」
叶が桐華の頬に口づける。トランスのオーラを隠すため、桐華は暗幕を被って森の中へと走っていった。
神人一同はそのまま警戒しながら湖へと歩みを進める。
依然として、ヤグマアルは姿を現さない。
このままでは埒が明かないと、湖の畔で神人達はオーガをおびき寄せる作戦に出た。
火災につながっては困るので、草が生えていない土がむき出しの場所を選び、そこに新聞紙を置いた。
望が持ってきた新聞紙にバーナーで火をつける。すると、ライターオイルで浸した新聞紙はあっという間に炎に包まれていく。
消火用のバケツに水を汲んで、叶が山火事を未然に防ぐよう備えると、どこからか不穏な鳴き声が聞こえてきた。
『ゲゴ……ゲゴゲゴ……』
自分が潜む森で火が起きたことに気付いたのだろう。
ザバザバ、と湖の中から二体、湖の畔、森の影から一体、ヌラリとしたカエル頭の奇形が姿を現す。
「出た!リェン!!」
ローランドが湖中に響き渡る声で叫ぶ。リーリェンの返事がどこからか返ってきた。
「了解!」
暗幕を脱ぎ捨て、陸上にいるオーガ目がけて、リーリェンがすっとんでくる。
その手に携えた大きなロングソード「ギル」に真っ白なワームを憑依させ、その剣の姿を白蛇へと変えて勢いよくヤグマアルに切りかかった。
『グゲェ!』
2mほどの巨大カエルが、背後からのリーリェンの攻撃を食らって前方向に倒れこむ。
とどめにぬるぬると滑るその皮膚にもう一度大剣を突き立てると、粘液を噴射してヤグマアルはこと切れた。
「よくやった、狗!」
「まァね」
まだ二頭いるけどサ、とリーリェンは湖の方に目を遣る。
そして、己の腕を抑え、小さくうめいた。シンクロした時の負担が来たようだ。
「ックク、さて、お次もいきますか!」
リーリェンは痛みに屈することなく薄い笑みすら浮かべて湖の方へと足を向ける。
湖畔では尚も火が燃え続けていた。ヤグマアルは自分たちが丸焦げにされる可能性を考えたのだろうか。何かぶつぶつと詠唱している。神人達が火を起こしているその頭上に、厚い雨雲が発生した。
「!!」
咄嗟に望がローランドの腕を引き、火の元から少し離れたところに座らせ、覆いかぶさるように庇う。
「!!終夜……!」
「俺の方が耐久力、あるしな」
望が苦笑いする。きつい酸性の雨が彼の背中を打った。ジュ、と嫌な音を立てて衣服が溶ける。ただれていく背に歯を食いしばる。叶も同じように肩に酸性雨を受け、小さく息を漏らした。と、その時、どこかからピコピコピコとゆかいな音が聞こえた。
「この音……」
突如、酸性雨が止む。酸性雨を発生させていた方のヤグマアルを、見事ピコピコハンマーがとらえたのだ。その主は。
「兄貴……」
木陰から、イレイスがビッと親指を突き立てた。もう一体のヤグマアルが酸性雨を起こすための詠唱を始める。
「させない!」
イレイスがもう一度罰ゲームを放つ。
ヤグマアルの頭上からまたピコピコハンマーが降ってきた。
『ゲェ!』
ピコピコピコピコ、とかわいらしい音を立てつつもかなりの量のピコピコハンマーがカエルを襲う。このピコピコハンマーがあるためここから酸性雨はもう使えないと踏んだのか、ヤグマアル二体は静かに湖畔の神人目がけて歩き始めた。
「狙い通りだな」
小さな声でイレイスが呟く。
叶が足元の炎に湖で汲んだ水をかけ、残った小さな火には足で土をかけ、完全に消火する。叶がこっちだよ、というようにヤグマアル二体の前に進み出て両手を広げた。神人を本能的に狙う性質があるオーガはまんまと誘き寄せられる。
二体が陸上に上がり、一体のその長い舌が叶を狙おうとしたその時、今まで身を潜めていた桐華が飛び出てきてその舌に切りかかった。
『グェゲ!!』
悲痛な叫びを上げるヤグマアル。中途半端なところでぶった切られた舌が地面にボタリと落ちた。
「うぅ、臭い~……」
叶が露骨に嫌な顔をして後ろに下がる。『アルペジオⅡ』を発動した桐華は続けて、二合、三合、と速度を増してヤグマアルの顔面目がけて切りかかった。
ヤグマアルが、その場に沈むように倒れこむ。
そして、その一体は動かなくなった。
もう一体のヤグマアルが、仇討とばかりに桐華に向かって唾液を飛ばす。避けると叶にかかってしまう、と桐華は敢えてその攻撃を受けた。
「っ……」
酷い臭いがする。叶は心配そうに桐華に走り寄った。
『ガァアッ』
その時、ヤグマアルが叫び声を上げる。何事かと見遣ると、その背中にはリーリェンの剣が突き刺さっていた。
「ヒャハハ!死ね死ねェ!!」
重量のある大剣をパッと見細いその腕で豪快に振り回しヤグマアルの粘液で覆われた皮膚を叩き斬っていく。
(このギリッギリな感じ、ゾクゾクするわー)
先刻の憑依で削られた体力のうえ、もがくヤグマアルの毒性の粘液を少し浴びて腕が少々痛む。けれど、彼はそれ以上にこの状況を楽しんでさえいた。
カエルの返り血が彼の頬にピッと飛ぶ。
至近距離でその様子を見ていたローランドの唇の端がほんの少し吊り上った。
(天使だ……!)
その光景が、ローランドの興奮を煽る。神人一同がハラハラしながら見守る中、彼だけは違った。
瞬間、ヤグマアルが身をひるがえし、その腕でリーリェンを薙ぎ払う。
「……っぐッ」
低い呻き声を上げて、リーリェンは地面を転げた。砂利に頬を少しすりむく。
結構な打撃だったが、彼はよろり、と立ち上がり口の端をニィッと上げた。
「ッヒヒ、こっちはダイジョーブ」
態勢を立て直した桐華が勢いよくヤグマアルに切りかかった。敵の懐に潜り込むように、一合、二合、三合、と確実に当てに行く。
ヤグマアルは仰向けに勢いよく倒れ、舌をダラリとだらしなく口からはみ出させて事切れた。
「くっさ!」
望が鼻をつまんでその場から離れる。
「……後処理はA.R.O.A.が来ることになっている。報告に戻ろうか」
ローランドがリーリェンに向かって手を差し伸べた。足をふらつかせながら、リーリェンはその手を取って肩に寄りかかりながら歩く。
望は帰り道イレイスに小声で告げた。
「……酸性雨、止めてくれてありがとな、兄貴」
「ん。弟を守るのは当然だからな」
ぽん、と肩を叩けば、望が小さく笑った。
(無事で、よかった……)
もう、失いたくない。その気持ちが、ずっと心の中を占めているから。
■帰路
帰りの車の運転は、背中を怪我した望には辛いだろうということでローランドが請け負うことになった。全員が乗って、ちょっと車内がヤグマアルの唾液くさいのを気にしながらアクセルを踏み込む。
「窓、開けようか」
叶が窓を開けた。
「あー……臭かった」
望とリーリェンがため息をつく。
桐華は自分が唾液を浴びたせいもあってちょっと肩身が狭そうだ。
「別に桐華のせいって言ってるわけじゃないよ!」
叶がフォローに見せかけた追い打ちをかける。
「……悪かったな……」
車内に小さな笑いが起こった。
とりあえず、借りた物でガスバーナーは返せるのでアズール家に向かう。
ドアチャイムを鳴らすと、焦れたようにモネが玄関に飛んできた。
「お帰りなさいませ皆様……っ!?」
臭い!けどそれを言うのは何か失礼な気がする!
モネは葛藤に苛まれながら笑顔を作る。
「……ソワレもこちらに居ります、今来ますから」
お嬢様にあるまじきドタドタという足音を立ててソワレも走ってくる。
「お帰りなさいませッ……!?」
臭い!けどそれを言うのは……。
ソワレも素敵な笑顔を作り、会釈した。
「このたびは私どもの依頼を受け入れてくださり、ありがとうございました」
「その様子ですと、オーガは」
一同は頷く。
二人の表情がパァッと晴れた。
「嬢ちゃんが金持ちだろうが凡人だろうが、何者でも俺らは依頼受けてたぜ?」
頬から滲む血をそのままにリーリェンはニッと笑った。
モネが執事に急ぎ救急箱を取りに走らせる。
「……何者、でも?」
ソワレが小さく首を傾げる。
それは、富める者も貧しいものも等しく救われるべきという話だろうか。お嬢様であることが大切なのではない、と彼のパートナーは教えてくれた。立場がものをいうのではないと。そう思い、ソワレは彼の瞳を見つめる。
「だってオーガぶっ殺すのは使命かつ趣味だからァ」
ケケケ、と笑う彼にソワレはあっけにとられる。
「趣味なのはリェンだけだ」
ローランドがふぅ、とため息をつく。神人達は苦笑いを浮かべた。
令嬢二人も、顔を見合わせてクスクスと笑い始めた。
「……皆様方、本当にありがとうございました」
「わたくし達、立場をはきちがえていたと思いますわ。権威を振りかざすのではなく、折角資金があるならばもっと村民のことを考えて動かなければね」
「パパの顔に泥を塗るところだったわ。ありがとう」
(これを機にお嬢さん方が仲良くなってくれればいいんだけどねぇ……)
叶はふわりと笑って令嬢二人を見つめる。
どうやら、その願いは叶いそうだ。
「これからは二人、いい意味で切磋琢磨していきますわ!」
ソワレが元気よく言い放った。そして、ほほほ、と軽く高笑いをかます。
(……ほんとにわかってるんだよな?)
桐華はほんの少し不安になったけれども。
帰り道、互いにお疲れ様、と言葉を交わしウィンクルムは解散した。ローランドが去り際に望に告げる。
「……終夜、痛むか?」
「え?」
背中のことだ。
「あ、大丈夫大丈夫」
「……無理をする。借りを作ってしまったな。……すまない。ありがとう」
リーリェンがローランドの腕を引く。
「ロゥ、帰ったらすぐシャワー入っていい?」
「ん、あぁ」
またな、とローランドは四人に手を振る。
イレイスがそっと望の背中に触れた。
「いっ……」
「やっぱり痛いんじゃないか」
「……兄貴」
「すぐ、手当てしような」
その声色が、なんとなく亡き兄を思い出させる。
……違う、もう、兄はいない、はずなのに。
望の胸の奥が、何故かチクリ、と痛んだ。
「桐華」
叶の声に桐華が答える。
「……お疲れ様」
怪我してないよね?と叶の手が桐華に触れる。
大丈夫だ、と返すと、安堵したように笑った。
「そっか!よかった。問題なのは臭いだけか」
「……」
げんなりと項垂れた桐華を引っ張って、叶は家路を急いだ……。
その後、風の噂でマルメロ村のことが伝わってきた。
『二人のお嬢様は時折くだらないことで張り合いながらも、両家の架け橋として仲良く村のバックアップをしていった』と……。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 寿ゆかり |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | 戦闘 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | 多い |
リリース日 | 03月23日 |
出発日 | 03月31日 00:00 |
予定納品日 | 04月10日 |
参加者
会議室
-
2015/03/30-22:00
-
2015/03/30-21:18
-
2015/03/30-20:41
(背後から『やったね望ちゃん、なかまがふえるよ!』という声が)
おいやめろ兄貴。
えーっと、初めまして。俺、終夜 望って言うんだ。よろしくな。
二人だけだと正直厳しいよなーってさんざ言ってた所だったから、助かるよ。
見ての通り俺、こういう仕事するの初めてでさ。
不馴れな所があっけどよ、足をひっぱらねーよーに頑張らせてもらうぜ。
……っていうか、ホントに遠距離攻撃できるの兄貴だけなんだな。
ちょっとだけ行動、見直してみるか……。 -
2015/03/30-19:17
桐華さん、桐華さん。桐たんだって。桐たん。僕も今度からそう呼「ばなくていい」
ちぇ。けちーけちー。
けちんぼの桐華さんは精々働くが良い!
んー、MP計算したらエトワール使ってユニゾン分残すとなるとアルペジオⅡで2発分が精一杯か…
ん、よし、今回はアルペジオⅡで頑張ってみよう。最終手段はディスペンサ!
ユニゾンのカウンター範囲がちょっと良く判んないからあんま頼らずに殴ってこう。
僕へのご要望も承りー。皆で元気に帰れるのが一番だねぇ。
バケツもりょうかーい。火を使う時は消火までしっかり、だね。 -
2015/03/30-09:10
おっ、火力サンだぁ。
桐たん、ヨロでぇす☆
お互い、カエル野郎がチキン芋虫(遠くからスナイプしかしないこと)でないことを祈ろーぜー -
2015/03/30-08:54
叶、桐華、頼りにしている。
大筋はその認識で大丈夫だ。
桐華のユニゾン・エトワールはとても助かる。ユニゾンの使用条件もそれでいいと思う。
他のスキルはアルペジオⅡがいいと思うが……そこはプロたるてめえらに任す。
相手の火力・耐久性が分からない以上、申し訳ないが臨機応変で頼む。
リェン達の攻撃が通用しないくらい強ければ、火力として
リェン達でも戦えそうなら抑えと神人のカバーとして
動いてくれないか?
相手の技が広範囲技なので盾にはなってもらえないかと思う。
叶には恐縮だが俺達がぶっ倒れた時、安全圏へ転がす役を受けてもらえればと。
倒れたくはない、がな。
……あ、ああそうだ。あと、火を焚いた場合のために消火用バケツを用意してくれると助かる。
水は湖のがあるから大丈夫だろう。
今のところ俺からは以上、かな。 -
2015/03/30-00:42
言い損ね。
一応、悪意ある攻撃に対して無意識にカウンター出来るユニゾンが最近使えるようになったから、セットはしておこうと思う。
結構MP食うから、なかなか3匹揃わないとか奇襲の危険が高い時のみの使用にしとこうかと。
現状遠距離で殴れるのがイレイスのみっぽいし、遠距離攻撃必要な時は俺でも叶でも幾らでも盾にしてくれていいからな
逃がさないように回り込むくらいの手伝いはできるはずだから -
2015/03/30-00:29
とりゃー!滑り込みでお邪魔します!叶と愉快な桐華さんだよ!
ローランド君とはこないだお出かけの時にちらっと会ったよねぇ。お仕事では初めましてだね。
とー、終夜さんちの望君とイレイスさんだね初めまーして。今回は宜しくね。
桐華さんはテンペストダンサーさんなので…えぇととりあえず壁にはなれるしある程度は殴れます!
んーと、一先ずは両方の令嬢さんを説得してー、協力して貰えたらベター、
して貰えなくてもまぁ今はオーガが先決と切り上げる感じでいいのかな?
説得の中身はローランド君が用意してくれる感じーかな?
後で来た身だし、その辺はお任せして、文字数的に難しいーって部分があれば預かるよとだけー。
そんでで、湖直前でトランス、了解。
精霊が身を潜めつつ、神人でオーガ誘き寄せって感じかな?
えーとキャンプファイヤー…もとい、火を扱うのは、ヤグマアルが森に居る場合のいぶりだしって解釈でおっけー?
その場合は延焼注意-ってことで…
えぇと僕と桐華さん、まぁまぁ頑丈だよ。回避力はそこそこあるよ!
でも近距離だから湖に籠られたらちょっと厄介かな!
というわけで僕も桐華さんも基本は誘き寄せと村への突破阻止を重視して頑張れたらなーと思います。
エトワールと攻撃スキル何か詰んでおきまーす。
数仕えた方がいいか一撃大きい方がいいかは時間までに効率いい方選ぼうかと。
要望あったらプリーズ!ぜひ! -
2015/03/29-11:58
あいよー。んじゃ、イレイスたんヨーロシークネー(手ひらひら
んじゃロゥが嬢ちゃん説得して、アンタが火付けの用意ね。
もし嬢ちゃんが何か貸してくれるっつったら、アンタから頼んでチョーダイ
まーそう悲観すんなし。まだ一日あるしぃ、誰か来るかもしんねーじゃん?
希望もってこ、希望! -
2015/03/29-11:38
ああ、令嬢の扱いについてもそれでいいぜ。
1回説得して、駄目だったらさっさと諦めちまった方が良いよな。
……ホントーに申し訳ないんだけど、説得はそっちにまかせちまっていいかな?
俺、頭悪ィから上手く言葉まわんねーと思うし、兄貴はぜってぇ火に油を滝のように注ぐ言動しかしねーだろうから……
(『違うぞ望、私はたき火にそっと栗を仕込む程度の悪戯しかせんぞ』)どっちにしろ最悪じゃねーかオイ。
代わりに、俺がプランで新聞紙とマッチとライターオイルを準備しておく旨を書いておくぜ。簡単に手に入るだろうしな。
車は俺も持ってるけど……ま、何かあった時の為に両方装備してたほうがいいよな、うん。
トランスは湖の直前だな、解ったぜ。……俺は!このトランスが!慣れないんだけどなッ!!(机ばーん)
(『お兄ちゃんのここ、開いてますよ?』と自分の頬を指すイレイスがいたり)うっせぇ!
んー、じゃあ、とりあえず役目を変えてって事になるよな。
トランスだけしちまってたらある程度距離離れてても大丈夫なもんかね。
じゃ、俺ら二人で湖畔に正面からきって行って(『キャンプファイアー』)だからちげーって。
リェンと兄貴で隠れながら進むって事になるんだな、わかったぜ。……兄貴、頼むから真面目にやってくれよ。
スキルについては、兄貴も1体はさっさと倒したいからこっちでも畳みかけさせるよ。
背後つけてる状態で数の上で同数にもってかなきゃ、ぜってーしんどいし。
ああ、俺らでうまく食い止めるしかねーよな。
俺の方が耐久力あっし、こっちになるべく引き寄せる様に動くしかないかな。
……まあ回避力は同じくらいだけど。
なんとか纏まったな!あとは上手くいけばいいんだろうけど。
二人きりで心配だったけどローランドが一緒なら何とかなるよな、こうやって話しててすっげー心強いし。
当日は頑張ろうぜ!……綱渡りっぷりがハンパねーけどな!(半分自暴自棄の顔だった -
2015/03/29-01:38
ああ、言い忘れ。
最初の説得で両方の令嬢から協力が得られることが最善だが、
ゴネるようならしつこく言うのは時間の無駄だ。
プラン記述で、着火に必要なマッチや新聞紙くらいは持っていけるだろう。
保険で、事前に用意しておく。
車が借りられた時用に、自動車のスキルブックも装備しておく。
それでいいだろうか? -
2015/03/29-01:34
火力に不安があるが、そろそろ方針は固めておくべきだろうな。
トランスは湖の直前でいいだろう。
マルメロでトランスするメリットはないと思う。
どうにせよ、まずは湖の状況を確認してからにしよう。
火を焚くのは目視で状況を把握してからでも遅くない。
森があり、潜んでいそうならば、終夜の案1でいいだろう
案2だが、俺は神人だからオーガに有効打は与えられない。
囮に回ろう。全員、携帯電話くらいは持っているだろう。
むしろ、てめえの兄貴が、隠れて遠方からリェンのカバーをしてくれ。
つまり、1でも2でも潜むのは精霊、囮は神人だ。
森に隠れていそうなら火を焚く。というオプションが増えるわけだ。
……スキルでの速攻か。それもありだな。
イレイスの言う通り、出し惜しみしている余裕はないな。
分かった。では、スキルで初撃を仕掛ける。
だが、リェンのスキルでもワンキルはムリだろうから、それは期待するな。
スキルがクリーンヒットしても、オーガは死にはしてくれないと思ってくれ。
倒す順は弱った順に、集中攻撃だろうな。
抑えを……と考える人的余裕が今はない。
戦闘中、神人はオーガが村に行かないように囮として食い止めるくらいしかすることはないと思う。
せいぜい避けまくるしかないな。回避力に自信はないが。
という感じでどうだ? -
2015/03/28-23:42
――けどよ、正直今回両方から強力得られないとキツイかもしんねーよな。
着火材料もそうだけどよ、帰り道、誰かが動けなくなっちまってたらやっぱ車あったほうがいいしな。
んじゃあ、俺と、兄貴と、ローランドの案を足して適当に割ったとしたら……えーっと……。
先ず前提条件として、予め現地でトランス状態になっておく
1案
俺ら神人が湖畔で(『キャンプファイアー』と、割り込む声)……そんな愉快だったらいいんだけどよ
その間リェンと兄貴は傍で姿を潜ませておく……って感じが良いかな。
んで、オーガが襲ってきやがったら隠れてた二人が襲撃って所かな。
……煙にまかれて接近してくれればすげー嬉しいんだけど、どう思う?
(『ただ、相手は遠距離攻撃を潤沢にもっている、失敗すれば遠距離から襲撃されるばかりだがね』という声)
2案
もしくは俺と兄貴で湖畔でオーガ達の囮になるよ。
で、近接攻撃のできるリェンとローランドで隠れながら進んでほしい。
携帯のコールで合図くらい出来るだろ?持ってない、って事も無いだろうと思うし。
そっちがオーガと接近したら炎じゃなくて、でっかい音かなんかでひきつけても良けるんじゃないかなって。
(『1体をスキルでワンキル、残る2体を二人で1体づつ引き受けるという計算だが……。
楽観視しすぎではないかね』という声)
纏めりゃこんな感じか?1案は混ぜたって感じで2案は今完全に俺が考えた奴だけどよ。
そろそろどうするか纏めねーとまずいだろ?
(『私的にはスキルは1発先に放っておいて確実に1体仕留めておいた方が良いと思うがね、
数を残していればそのまま怪我に直結すると思うが……まあ、其方の考え方次第だろう)』 -
2015/03/28-22:11
ふふ……(頭いい人みてえ!!と言われてまんざらでもなさそう)
賛同を得られて幸いだ。では、令嬢については事前説得の方向で。
これならうまくいけば、両方から協力を得られるかもしれんな。
楽観視しすぎか。
潜みながら進む、というのは一案だな。
森ごと焼き払うのも確かに分かるのだが……
延焼し始めるとオーガどころではなくなるというのが難点だ。
とはいえ、イレイスの燃やして炙り出す方法は、考慮するに値する良案だと思う。
森ではなく、湖畔でなにか燃やして煙でいぶしだすというのはどうだろう?
オーガが森にいることが前提だし、湖畔に森があるかどうかも分からん状態だから、「森があればやる」程度に考えたいが。
(……ここまでくると、令嬢に味方して着火に必要な道具をもらったほうがいい気がしてきたな)
さて、オーガをおびき寄せる方法だが、
イレイスが出してくれた案の「神人で釣る」というのが、現実的には一番いい気がする。
俺と終夜は、オーガの好物だ。俺たちでオーガを戦闘しやすい場所へ惹きつける。
……危険な賭けではあるが、遠方からなぶり殺しにあうよりはマシだ。
もちろんリスクのある方法だ。無理強いはしない。
お察しの通りMPの都合上、リェンのスキルは1度きり。
それ以外は通常攻撃で対処するしか無い。
素でもそれなりの攻撃力はあるから、この面子の中では火力面で頼りになると思うぞ。
スキルはいざという時にのみ使う、ということでいいか。
具体的には……誰かの生命が危うい時、だ。
リェン「よくわかんねーけど、俺は敵ボコれりゃなんでもいーぜ」 -
2015/03/28-18:50
おお!ローランドすげえ頭良い人みてえ!!
(『お前が馬鹿だからなあ』と後ろから声が(
そりゃ先に家名の価値って二人の間に共通する項目だして説得しちまった方がいいよなあ!(ほああ)
俺は大賛成だぜ、何か後回しにしなきゃいけない気がして考えちまってたけどよう、そんな事ないもんな。
(『私の生命力は1だからなあ。戦闘力5のゴミだ。故にお前たち二人に頑張ってもらうしかない』という声が(
兄貴は何かすげー自虐……じゃないなこれ、働きたくないだけだ。働けよ!
遠距離攻撃か……なんかこう、兄貴の攻撃以外に他に方法があればなあ。
もしくは、こっちから攻撃を仕掛けて相手をおびき寄せる……ってのも考えたいけど、
相手の方が潤沢な遠距離攻撃もってやがるからな。悪戯に仕掛けるのも考え物かな……。
そうなんだよな、森があると隠れられちまうからなあ。
……えーっと、そうだ。トランス状態に時間制限があるなんてなかったし……。
だったらいっそこっちもこっそり潜みながら進むか?湖の回りをぐるっと一周してみるとかさ。
あいつら耳が良いのかどうなのかわかんねーけど、上手くいけば1体くらい忍んでる奴の隙がつけるかも……
(『こう油と火を用意させてな、森ごと焼き払うという手もマジお勧め』という声が)やらせねーからな!?
1回しか使えないってのは、消費MPの関係か?だったら厳しいよなあ……マジで。
スキルが使えなくても攻撃は出来るだろうと思うから、1体づつ近づいて必殺仕事人していくしか……。
兄貴は一応2回打てるけど……火力が……火力がなあ……(頭を抱えた
(その背後で無茶論かもしれんが、と前置きして。
『相手は蛙で酸性雨を使えるのだろう、流石に近場でけたたましく燃えていたら鎮火させるくらいしそうなものだがね。
冗談ではなく火をおこして奴らの気を引く、程度の効果は見込めると思うが……さて、どうするか?』) -
2015/03/28-00:23
確かにイレイスが言う通り、便宜上令嬢につくのが手っとり早い。
だが、どちらにもつくと、両方の争いが終わらない気がする。ただでさえ女の話は長いものだしな。
こっちを捕まえたまま、「自分のほうが優れている」と言い争いし続けられるのは時間の無駄だ。
ふと考えたのだが。
しょっぱなから、「村の危機が迫っているというのに、東西で争ってどうするんだ」と、ガツンと言ってやるのはどうだ。
「こういう時こそ、家名の誇りではなく村のために、手を取り合って両家が共同でA.R.O.A.を動かすほうが、村人の印象は良いはずだ。
それはお前達令嬢自身だけでなく、家や両親の評価アップにもつながるのだから、今は二人が連名で依頼したとしておけ」
と言うんだ。
つまり、先に説き伏せちまうんだよ。
家のプライド云々で争っているのだから、家名の価値が上がるという説得に、イヤとは言いそうにないと思うんだがな。
納得しなくても、考えこんでくれるだけでもいい。
その隙に、現場に急行する。
……どう思う?
オーガは全長2mだったか。湖の深さがわからんからなんとも言えんが、湖の中を警戒するにこしたことはないだろう。
湖のど真ん中から動かないというのは、ヤグマアルの酸性雨も唾液も遠くまで飛ぶから、無いとはいえない事態だな。
考えつかなかった。終夜、恩に着る。
遠方にはリェンの剣が届かないし、てめぇの兄貴に任せるのは火力面で不安だ。
あと……奇襲は、湖畔に森でも広がっているなら、木陰から飛び出すことも想定しておきたいな。
……確かに終夜の言う通り、三体を同時に相手にするのはきつい。
しかし、一匹相手している間に、他の二匹が神人をダイレクトに狙いにこられると困る。三体は常に視界に入れておくべきだな。
ついでに言えば、リェンのスキルは1回しか撃てないってのも、困ってる。 -
2015/03/27-19:59
ローランド、リーリェンだっけ。こっちこそよろしくな!
……何かいい案ないか、って兄貴に聞いてみたんだけどよう。
『実質表向きでしか揉めないのだろう?なら、お互いで互いの家につけばいい。
別の場所で待ち合わせして、車を借りれるなら全員で乗れば良いだろうが』って言われちまったよ。
納得させる方法は………えっと、仕事が終わった後でチームワークの素晴らしさを説いてみるとか……?
奇襲……。うーん、全長2Mって事は……巨大って程でもないんだよなあ。
湖の中に居たら流石に解りそうなもんだけど……ただ、湖の何処に居るのかっつー話だよな。
大きさはわかんねーけどよ、湖のド真ん中にいても攻撃って届くのかな?
ああでも、兄貴が後衛だから、引きつければなんとかなるか……。
でも、3体いやがるんだよなあ、離れたところから一匹づつおびき寄せて仕留められればいいんだけど。
(望の、かっこいいとこみてみたーい という声が(以下略
どーせ囮とかやれって言うんだろ兄貴はよ!い、嫌だからな!?ぜってー嫌だからな!
(特攻はあれだ、オーガを退治する為に犠牲になってしまった、車が無かったら我らが死んでいた。
とか適当によいしょしてぶっこいとけば大丈夫だろう という声)
兄貴何言ってんだよやんねーつってんだよ!
説き伏せるのは仕事終わってからでもいいんじゃねーの?
……兄貴の言うとおりに動くなら、の話だけどさ。 -
2015/03/27-14:28
終夜、イレイス、よろしく頼む。俺も戦闘依頼を受けるのは初めてだ。
俺の方こそ足手まといにならんように努めねばならんな。
タイミングを合わせていくのは賛成だ。
奇襲を……とも考えたが、ヤグマアル自体の奇襲も懸念されるようだし、望み薄か。
敵自体が湖のどこかに隠れている可能性があるってことかね。
敵はオーガ三体。リェンはシンクロサモナーだから否応なしに前衛だな。
しかしデミやネイチャーがいない以上、神人はやることがないな。
とはいえ、精霊の近くにいないとトランスできんから湖には行かねばならんが。
……せいぜい村に行かせない為の人間の盾くらいしか、出来ることが俺には思い付かん。
車特攻とは面白い(ククッ)……いや、冗談だ。
まず特攻するとアズール家の車がオーガの粘液で汚れるし。最悪、壊れる。色々やっかいそうだから、止めておこう。
ところで現場の場所が分かってるなら、令嬢共に会わずに湖に直行しちゃならんのか?
依頼自体はAROA が受理済みなのだから、さっさとオーガを片付けてから事後報告に行ってもいい気がするんだがな。
……まぁ、事前に会えと言われているから、会わなきゃならんのだろうが……。
どう説き伏せたもんだろうかな。 -
2015/03/26-21:11
えーっと、初めまして。俺、終夜 望って言うんだ。
で、兄貴……じゃなかった、精霊はトリックスターのイレイス、よろしくな!
……ぶっちゃけ実は俺、こうやって神人として仕事すんの初めてなんだよなぁ。
でもよ、足は引っ張らないように頑張るぜ。
(外野から『むしろ情けなく引っ張った方が愉快』という声が聞こえて来たり)
――……確かに、状況を見る限りそんなに急がなくてもよさそうなんだよな。
助言にもある通り、どっちかにつく、っていうよりもタイミング合わせて行った方が賢そうだぜ。
(外野から『おにーちゃんお前が一人で車特攻してるの見たいんだが』という声g以下略)
そもそも二つの依頼を纏めて受理しちまっている以上、どっちかに肩入れするっつーのも不義理だよな?
ってまあ、俺の考えはこんなもんだけど。
戦術とかその辺はもっとわかんねーし……皆の意見も聞いてみたいところだぜ。
……で、兄貴はうるせえんだよ!俺は車特攻もしねーし足もひっぱらねーよーにするっつってんだろーが! -
2015/03/26-08:29
ローランド・ホデアだ。精霊はシンクロサモナーのリーリェン・ラウ。
まだ若輩者にも程があるが……(レベル1)、俺でもなにがしかは出来るだろう。
……ところで、この令嬢共のどちらかに与する必要はあるのか?
車で急ぐほどの状況でもなく、特段必要そうな携帯品もないと思う。
わざわざ令嬢の勝敗を決めてやるほどのメリットはなさそうだ。
そもそも俺達A.R.O.A.は平等にあまねく人々をオーガから救うのがお題目だろう。
なら、ますますのこと彼女らの名前ではなく、マルメロ村の救助という形で依頼を受けるべきだと思うがね。
……勿論、考えを押し付ける気はない。皆の意見も聞きたいところだ。
ただ俺の意見として、令嬢のどちらかに味方する必要はないと思う。それだけだ。長々と失敬。