見ちゃだめ!(寿ゆかり マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

見てはいけない。
そういわれたものを見たくなってしまうのは、人の性ではないだろうか。

とある休日。今日は任務も無い穏やかな日。
あなたはパートナーの部屋に来ていた。
あなたがパートナーとなんの変哲も無い休日を過ごす午後。
仕事の打ち合わせをしたり、おしゃべりをしたりお茶を飲んだり。
本当に、ただのんびりとゆったりと時間が過ぎていく午後。

彼がちょっと席を離れたときに、目に付いてしまったのだ。

日 記 帳 。

見てはいけない。
けれど

見たい!

今なら彼は席をはずしている。
ちょっとそこまで買い物だったか、電話だったか。
10分は戻らないだろう。
ちょっとだけ。ちょっとだけなら。
読んですぐ元に戻せば……。

いやいや、なんてことを考えているんだ!
だめ!人の日記を見るなんて絶対!

この間行ったデートのことを書いているだろうか?
何気ない日常の一ページを書いているだろうか?
任務のことを書いているのだろうか……。
少しでも、私のことを書いていたりしないだろうか。

脳内の天使がささやく。
見ては いけない。

脳内の悪魔もささやく。
いいじゃねぇか、見ても。バレねーよ、すぐ戻せばバレねぇバレねぇ。


……あぁ、こんなところにおいておくほうが悪いんだからね!

あなたは、机の上の日記帳にこっそりと手を伸ばした……。

解説

☆目的:精霊の日記を見ちゃえ!(こら!!)
 神人は精霊のお部屋にお邪魔している状態です。
 同居中の方は、共用スペースにおいてあったという状況でもいいです。
 
 神人(アクションプラン)には、
 日記を読んでの行動や反応をお書きください。
 精霊にバレるかバレないか、それを受けた上での反応もお書きいただくと
 よりいっそう面白いかと。

 精霊(ウィッシュプラン)には、
 精霊が書いた日記を精霊口調でお書きください。
 何のことかをうまく伝えたい場合は、神人のアクションプランのほうに
 (あぁ、○○の時のことだ……)とか、書いておくと情景が広がると思います。
 実際に経験したエピの内容ではなく、今回のエピで架空のお話を作ってOKです。
 例えば、どこどこに散歩に行ったとか、訓練した、とかデートしたとか。  

 ただし、実際にあった依頼の事は書かないでくださいね。
 (アフターエピソード的なものになってしまうので、明言を避けたいと思います)
 特定の依頼のことを言わないで、日常、ふと思った相手への想いや
 ウィンクルムとしての責任について思うことを書いた日記などは大丈夫です。
 (OK→ウィンクルムになって早3ヶ月。あいつには怪我をさせたり泣かせたりしたこともあったけど、守らないと!
  NG→○○の任務のときは××があって、実は☆☆と思っていたし、△△があったんだ)
 NGをやってしまうとアフターエピになってしまいますので!

参加費は、精霊のおうちにお邪魔するときのお茶菓子代や、日記のネタになったデートのお金など、
諸経費で一律400Jr消費いたします。

最後にまとめ
*アクションの方には日記を読んでの感想・反応をお書きください。
*ウィッシュの方には精霊が書いた日記を、日記の文章のままお書きください
*過去エピ参照はNGですのでご注意を。

覗き見なんていっけないんだいけないんだ~。

ゲームマスターより

いーっけないんだいけないんだ!
せーんせーにゆってやろ!

人の日記を勝手に見るなんていけないんだぞ~!

そんなイケナイエピソードを出しちゃった寿いけないんだ~!

皆さん、罪悪感にさいなまれながらがんばってください!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ニッカ=コットン(ライト=ヒュージ=ファウンテン)

  そういえば、ライトって普段は何してるの?
どこに住んでるのかも知らないわ

って言ったら部屋に来る羽目になっちゃったんだけど…
手土産にお気に入りの紅茶の葉だって持ってきたし、服装もきちんと…してきたわよね!?(わたわた

それにしても戻ってこないわね

あら?これって日記?
…ふふふふふ
いっつも何考えてんだか分からないヤツだし、これは絶対読むべきよね

…!?
日記、じゃないでしょ、これ!
観察記録?!報告書?!
っていうか要教育ばっかりじゃないのー!!
本当にあったまに来るわねえっえ、あ、ライト…いつからそこに…

うう、また嫌なとこ見られたわ
でも頭小突かれたのに嫌な感じしなかったわね…
顔はめちゃくちゃ怖かったけど(震え



ロア・ディヒラー(クレドリック)
  クレちゃんがちょっと切らした紅茶を買いに行った時に居間で日記発見。
このノート。クレちゃんのかな…?ちょっとみちゃおーっと。相変わらずファンシーな文字と絵だなあ。あ、あれこれって日記!?
…どんな事書いてるか気になる

(内容読んで)
か、かけがえのない存在っておおげさな…。クレちゃん友達少なそうだから、余計に大事に思ってくれてるのかな。…友達…だとちょっと残念とか思うのは何でだろう。
(後半部を見て)
…クレちゃんちょっと不安定すぎないかな。こんな事思うなんて何か悩みでもあるのかもしれない。でもこんなに私に助けを求めてるのに全然そんな風には…

そっとノートを戻し、ばれない

(…クレちゃんがさらにわからないよ)


クラリス(ソルティ)
  テーブルの上に放置された手帳を発見
ソルのかしら?ちょっと買い物に行くって言ってたわね
んー、ちょっとだけ!

…なによこれ。こんな事あたし聞いてないわ
綴られた褒め言葉に無意識に苛立ちながらも表情は曇り
せ、清楚で女の子らしい子がソルのタイプだものねっ

トランスの時、ソルは一度だって照れた事ないじゃない!
…あたし相手じゃ何とも思わないって事?

猫の事だと気付き赤面
そうよね、ソルみたいな地味男が
女の子にモテるわけないじゃないっ

あぁ、あの髪飾りね
大昔の事を良く覚えてるわよね
真赤な花の装飾がされた髪飾りをポケットから
大切そうに取り出すとそれで髪を一つに結い上げ

おかえり、ソル
大切ならちゃんとしまっておきなさいよね


出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
  レムの誕生日祝いにプレゼントを持って行った
緑青色の根付と、バレンタインに渡しそびれたチョコレート
気に入ってくれるといいけど…

お茶を入れてくれるのを待っていたらふと日記帳が目に入る
駄目だって分かってるけど気になって覗く
これはあたしと会う前の日で、こっちはその次の日
そうか、あたしのこと知ってたんだ…それに天命だなんて
別に恋愛的な意味じゃないと思うけどそれでも嬉しい

さらにぱらぱらとめくっていき、自分の記述があるたびに顔がにやけたり赤くなったり
気が付いたら日記を胸に抱きしめていた所をレムに見つかった

ご、ごめんなさい!
どうしても気になって…怒らないの?
他の男のなんて見ないわ、レムの日記だから気になったの



名生 佳代(花木 宏介)
  宏介の部屋にスマホ置き忘れちゃったしぃ。
いないしぃ、どこ行ったんだろ。
にしし、こっそり見ちゃお。
アイツ本当にマメじゃん?

うっわ!
義務義務義務って超うっざ!
アタイを守るのが義務だけどさぁ!
てゆーか、アタイのこと書き過ぎじゃね?
自分の事ってベンキョーのこととか、
料理のことしか書いてないじゃん。
…お菓子作り好きなんだ。
つーかうちで出てくるお菓子って全部手作りだったしぃ!?

アタイが王子王子煩いからって、
勉強のために少女漫画読んでるんだぁ。
似合わなさすぎて超ウケるんですけどぉ!
本で読んだ、とかで攻めてくるのそーいうことだったんだ。
宏介らしくないセリフ言われるとこっ恥ずかしいから、
勘弁して欲しいけどねぇ。


■ニッカさんの場合
「そういえば、ライトって普段は何してるの?どこに住んでるのかも知らないわ」
 何気なく口にしたその言葉がきっかけで、ニッカ=コットンは精霊、ライト=ヒュージ=ファウンテンのおうちにお邪魔することになってしまったのであった。
 手土産にお気に入りの紅茶の茶葉、服装もお呼ばれに相応しいシックな装いにしてきた……はず。なんとなく落ち着かなくてそわそわするニッカをよそに、ライトはニッカに貰ったお茶を入れてくると席を離れてしまった。
 適当なところに座っていてと言われたけれどどうにも落ち着かない。
(それにしても戻ってこないわね)
 きょろきょろとあたりを見回すと、テーブルの上に一冊のノートを見つけた。
(あら?これって日記……?)
 ニッカの口の端が吊り上り、ふふふふふと小さく含み笑い。
(いっつも何考えてんだか分からないヤツだし、これは絶対読むべきよね)
 彼が戻ってこないのを確認し、パラ、と表紙を開いた。
『~ニッカの記録~』
「き、記録……?」
 いきなりのタイトルに多少面喰いながらも、読み進める。
『○月×日:
 服飾工房『コットン*コットン』の次女、ニッカ=コットンと契約結ぶ』
 早速自分との契約のことが書いてある!と胸が高鳴ったのもつかの間。
『素直なところは魅力的だが、他人のことに遠慮がないところがある。要教育である』
(……)
 要きょういく……。微妙な気持ちになるこの一言。気を取り直して続きへ。
『○月×日:
 ニッカ、初めて剣を握る
 腰が引けている
 危なっかしくてとても見ていられない
 私の指導でもマシになるかどうか不安である
 いや、マシになってもらう
 要教育である』
(なっ……!)
 また出てきた、要教育。でも、心配していてくれたのだということが見て取れる。
『○月×日:
 ニッカの家を訪問
 裁縫中に声を掛けるがまったく気がつかない
 夢中になるのはいいが、やはり礼儀がなっていない
 要教育である』
 日記を開いたままニッカは小声でつぶやく。
「観察記録?!報告書?!っていうか要教育ばっかりじゃないのー!!」
 眉を顰め、ニッカはぐぬぬと唸った。
 大分前から背後に“彼”がいるのにも気づかずに……。
「本当にあったまに来るわねえっえ、あ、ライト……いつからそこに……」
「お嬢さん、人の物を勝手に見てはいけません。要教育です」
 スッとニッカの手から日記を取り上げ、ピッと軽く人差し指を突きつける。
 あわわとニッカの顔が青ざめていった。
 そのまま、彼の整った指先がこつん、とニッカの頭を小突く。
 どんなお仕置きが待っているかと思えば、反してどこまでも優しい彼の手にニッカは少し意外だな、と思った……が。顔を上げて見て見ると、そこには不敵な笑み。
 ゾクッとした。……もしまたやったりしたら、とんでもないことになるんじゃないかしら……。
 ニッカは後ろ暗いところを見られてしまったことと、また一つ弱みを握られてしまったこと、そして彼の笑顔の恐ろしさに少し肝を冷やし、その後のティータイムをちょっと複雑な気分で楽しんだのであった……。

■名生さんの場合
「失礼しまーすっと」
 精霊、花木宏介の部屋にやってきたのは神人、名生佳代。
 彼の部屋にスマートフォンを置き忘れたのに気付き、取りに来たのである。が、部屋の主は出かけているのか今は不在であった。
「いないしぃ、どこ行ったんだろ」
 きょろきょろとあたりを見回す。と、自分のスマートフォンを見つけ回収。そして、そのすぐそばの机の上に日記帳を発見した。
「にしし、こっそり見ちゃお。アイツ本当にマメじゃん?」
 いたずらっ子の笑顔で日記帳を手に取る。そして、中を開いてみると。
『あけましておめでとう。』
(お、正月の日記か……)
『今年も日記帳を続けようと思う。
 去年末からウィンクルムになったことで、
 いろいろと環境が変わったが、佳代との同居生活にもようやく慣れてきた。』
(うんうん、それはよかったね~)
 そして次の行に目をやると。
『非常に煩い女だが守るのが義務だ。
 口を開けば清楚やら王子やら、
 理解し難いが義務だから仕方ない。
 正月だから花びら餅を作ってみた。
 美味しい。』
 明らかな嫌悪感を顔に出す佳代。
「うっわ!義務義務義務って超うっざ!アタイを守るのが義務だけどさぁ!」
 ぱらぱらとページをめくっていくと、佳代、という単語がやたらと目につく。
「てゆーか、アタイのこと書き過ぎじゃね?自分の事ってベンキョーのこととか、料理のことしか書いてないじゃん」
 なんだかちょっと微笑ましくて、佳代はフッと笑った。
(……お菓子作り好きなんだ。つーかうちで出てくるお菓子って全部手作りだったしぃ!?)
 つまり、佳代が口にしてきたお菓子は宏介の手作りだったというわけだ。
 ふと、気になるページがあって手を止める。
『佳代に連れられて買い物。
 清楚なつもりの佳代は
 アクセサリーにファッション誌、化粧品を買っていた』
(あ~、こないだのか)
 こんなことも日記につけるんだなーなんて思いながら読み進める。
『……後で佳代がオススメだという少女漫画を買ってみた』
(え!?少女漫画なんて買ってたんだ!?)
 あのカタブツが。笑いをこらえながら続きに目を通すと。
『王子のハーレムものだ。
 佳代が好きそうなものだ。
 何だこのキラキラフワフワな世界は。
 甘いセリフが飛び交う世界観は衝撃だった。
 恋愛ってこういうものなのか……?
 理解し難い』
 何となく、心がほわっと暖かくなる。
(アタイが王子王子煩いからって、勉強のために少女漫画読んでるんだぁ)
 直後、ぷっと吹き出した。
「似合わなさすぎて超ウケるんですけどぉ!」
 あはは、と笑いだして、ふと止まる。
(本で読んだ、とかで攻めてくるのそーいうことだったんだ)
 こっちの趣向を考えてくれてたわけね。
 ……そこで軽くため息を一つ。
「宏介らしくないセリフ言われるとこっ恥ずかしいから、勘弁して欲しいけどねぇ」
 王子様は憧れるけど、宏介は宏介であって、王子様じゃないんだから。
 なんとなくパートナーのかわいらしい一面を垣間見てしまって佳代はニヤニヤが止まらない。……本人を目の前にして、バレないようにしないと。

■ロアさんの場合
「ロア、紅茶の茶葉が切れてしまったからちょっと買いに行ってくるとするよ」
 留守番を頼む、と言い残して部屋を出て行ったのは精霊、クレドリック。
 神人、ロア・ディヒラーは居間のテーブルの上に一冊の大学ノートを見つけた。
(このノート。クレちゃんのかな……?ちょっとみちゃおーっと)
 ぱら、と表紙をめくるとかわいらしい丸文字に、これまたかわいらしいイラストの数々。
(相変わらずファンシーな文字と絵だなあ。あ、あれ?これって日記!?)
 よくよく見ると、日付や過去にあったデートの内容が書いてある。
(……どんな事書いてるか気になる)
 好奇心というものは止められないものだ。ロアはノートを閉じることなく、続きを読み始めた。
(この周りに描いてある女の子、私かな?)
 可愛く描いてるなぁ、なんて思ってふふ、と笑みが零れる。
『ロアとウィンクルムになって、早9ヶ月。
 ロアを私の研究対象にしなければという思いのみで契約にいたったが、 
 段々とかけがえのない存在になっていく。』
 そこまで読んで、ロアは少し複雑な思いになる。
(か、かけがえのない存在っておおげさな……)
 照れくさいような、くすぐったいような、怖いような。
(クレちゃん友達少なそうだから、余計に大事に思ってくれてるのかな。友達……だとちょっと残念とか思うのは何でだろう)
 顔がほんの少し熱くなっているのに気付いた。
 ……どういう意味なんだろう。
『私の心の空虚が埋まり、心が温かくなる。
 大切な大切な私のロア。』
 その大切、はどんな意味なんだろう。
 綴られた『私の』の意味に気付かず、ロアは続きを読み進めていく。
 何気ない日常の一ページを綴る日記、ウィンクルムとしての仕事の話、デートの事……。クレドリックが綴っているのは、どれもロアの事ばかりだった。
(いつも、私とのことなんだ……)
 なんとなく嬉しい、なんて思っていたら、不穏な一節を見つける。
 それは、しばらく会えなかった日の日記。
『……ロアが傍にいないことに不安を感じる。
 ロアの姿を一刻も早く目にしなければ。
 ロア、ずっと傍に』
 ドキ、と心臓が跳ね上がった。
 明らかな執着心。さすがのロアもそれには気付くだろう。
(……クレちゃんちょっと不安定すぎないかな。こんな事思うなんて何か悩みでもあるのかもしれない)
 そう思った時に、玄関口でクレドリックが戻ったのだろう、ドアの開く音がした。
 そっとノートをもとあった場所に戻す。
「ただいま、ロア。今紅茶を用意するから少し待っていてくれたまえ」
「おかえり、うん。ありがとう」
 何気ないやり取り。彼はいつも通りだ。
(でもこんなに私に助けを求めてるのに全然そんな風には……)
 ロアは紅茶を淹れる彼の姿を見つめながら静かに目を伏せた。
(……クレちゃんがさらにわからないよ)
 どうして、そんなに必死になるんだろう。それなのに、普段の態度には出さないんだろう。……何故、そんなにも私を必要とするんだろう。
 クレドリックが戻ってきても話題にこそ出さないし顔にも出ないよう気を付けてはいたが、ロアは答えの出ない質問を心の中で繰り返し続けた。

■香奈さんの場合
 精霊、レムレース・エーヴィヒカイトの誕生日祝いに緑青色の根付と何か月か越しの渡しそびれたチョコレートを持って参上したのは出石香奈。気に入ってくれるかな、なんてそわそわしていると、お茶を入れると言って彼が席を外した。
 と、彼の部屋に置かれていた日記帳が目に入る。
 駄目だとわかっている。わかっているけれど……気になる。こっそりと手に取り、中を覗いてみることにした。
『○月×日』
(これはあたしと会う前の日の日記……)
 そう、契約の前日の日付であった。中を読み進める。
『A.R.O.A.から適合する神人が見つかったと連絡があった
 タブロスに向かう日を伝えて、送られてきていた資料を読んだ
 経歴はともかく素行に問題があるようだ
 心して契約に臨まねば』
 ……素行に問題あり……。随分ストレートに書いてくれるじゃないのと思いながらも次の日付へ。
『○月◎日
 村にオーガが現れた』
 それは、二人が初めて顔を合わせた日。
 ……契約のために集まったのではなく、村に現れたオーガから村人を守るためにレムレ
ースが駆け付けてくれたときのことだ。偶然、二人は出会った。その日のことを彼は記していたのだった。
『幸い、通達が早く住民は全員無事だった
 しかし俺が保護した女はどう見ても昨日資料で読んだ神人だった
 引き合わせよりも早く、しかもこんな状況で出会うとはこれは天命に違いない』
 天命、その文字に少し頬が火照る。
(そうか、あたしのこと知ってたんだ……)
 あの時、保護してもらった時から、もう知られていた。そのことを、香奈はこの瞬間まで知らなかった。
(それに天命だなんて……別に恋愛的な意味じゃないと思うけどそれでも嬉しい……)
 何らかの運命を自分に感じてくれてる。そのことだけで、香奈は胸がいっぱいになった。
 更にぱらぱらとページをめくっていくと、何気ない日々の記述の中に自分のことが書かれている。香奈、という文字を見るたび、ふわりと心が温かくなる。デートに行ったことだとか、任務のことだとか。自分のことを細かく書いてくれている日の物は特に、ニヤけてしまう。一人で赤くなったりニヤけたり、ほーっと感心したり、日記を抱えて百面相。
 レムレースが自分のことを気にかけてくれていることが嬉しくて、気付くと日記を抱きしめて小さく幸せなため息をついていた。
「……ん?香奈、何をしている」
 背後から日記の持ち主の声がした。さぁっと血の気が引くのがわかる。
「あ、レム、ご、ごめんなさい!」
 あたふたして、とりあえず謝罪。人の日記を見るというのは褒められた行為ではない。
「日記か、片付けるのを忘れていた、すまない」
 叱られると思っていたが、レムレースは涼しい顔で逆に謝罪してくる。
「どうしても気になって……怒らないの?」
 あれ?と拍子抜けで香奈は首を傾げる。
「読まれて困るようなことは一切書いていないからな」
 さらりと言ってのける彼に、香奈は少しあっけにとられる。
「とはいえ行儀が悪いのは確かだ。罰としてお前の茶菓子を一つ寄越せ」
 ふと彼が微笑んで香奈の茶菓子を指さす。甘いものが好きな彼だ。それくらいなら、と香奈は自分の茶菓子を手渡した。
 緑茶を啜りながら、他愛ない話をしていると彼がふと思い出したように呟く。
「俺のならいいが他の男の日記など読むなよ」
 香奈は驚いて彼の瞳を見つめた。
 ……なんで、他の男?
 そして、即答する。
「他の男のなんて見ないわ、レムの日記だから気になったの」
 レムレースは安堵したように静かに頷く。そして、その直後に自分の発言に疑問を抱いた。
(……なぜ男に限定したんだ?俺は)
 それは、ほのかな独占欲の芽生えだろうか……。

■クラリスさんの場合
 精霊ソルティが買い物に行くと言って席を外した際に、神人クラリスは見つけてしまった。テーブルの上に放置された手帳……。
(ソルのかしら?ちょっと買い物に行くって言ってたわね)
 きょろきょろとあたりを見回す。ソルティは出かけた後だ。近くに気配はない。
 すぐに戻ってくるというわけでもなさそう。
(んー、ちょっとだけ!)
 好奇心に火がついた。手帳を手に取り、ページを開く。
『今日は便利屋の仕事で素敵な子と出会いました』
(……なによこれ。こんな事あたし聞いてないわ)
 素敵な子に出会ったなんて言う話は、聞いていない。いったいどんな子だったというのか。
『そうだな……アクアマリンのように美しく澄んだ瞳に
 色白で華奢な体、笑った顔はまるで向日葵が咲いたような可愛い子だったよ
 ラベンダー色のリボンも清楚な彼女に良く似合ってたしね』
 綴られた褒め言葉。さぞや美しい子だったんだろう。無意識のうちに苛立っていくクラリス。そのひとまとまりまで読んで、彼女は表情を曇らせた。
(せ、清楚で女の子らしい子がソルのタイプだものねっ)
『ふふ、頰にキスされた時はさすがに恥ずかしかったな』
(頬に、キス!?)
 仕事で出会った女の子が!?頬にキス!?しかもあのソルが恥ずかしがってる!?
(トランスの時、ソルは一度だって照れた事ないじゃない!)
 頭に血がのぼる。なんでこんなにカーッとなるのかよくわからないけど。
(……あたし相手じゃ何とも思わないって事?)
 そう思うと、なんとなく寂しいような、悔しいような。
『あんなに綺麗な猫さんに会えるなんて、神様に感謝だね』
(あ……)
 次の行を読んで、何かが腑に落ちた。
 そして、自分が嫉妬していた相手が猫だと気づき恥ずかしさに赤面する。
「そうよね、ソルみたいな地味男が女の子にモテるわけないじゃないっ」
 独り言が思わず口をついてでる。
『そうそう、帰りに綺麗な花の髪飾りを見つけたんだ
 真赤な花飾りがクラリスに似合うだろうなって買ったんだけど』
 渡してもつけないでポケットにしまってしまったということが書いてあった。
 そういえば、貰ってから一度もつけていない。
(あぁ、あの髪飾りね)
 貰ったことはよく覚えている。真っ赤な花飾りの。そっと、ポケットに手をやった。
『昔彼女が好きだった花だから気に入るかと思ったんだけどな……女の子は難しいね』
(大昔の事を良く覚えてるわよね)
 幼いころから兄妹のように一緒にいた二人。彼女が幼い頃好きだった赤い花のことを、
彼は覚えていたのだろう。髪飾りは気に入らなかったわけではない。ただ、つける機会が
なかっただけ。落としたり壊したりしたら嫌だから、もったいなくてつけられなかっただ
け。……けれど。
 クラリスはポケットの中から大切に髪飾りを取り出し、その長くて美しい水色のウェー
ブヘアを結い上げた。
「ただいま」
 玄関から声がする。
 彼が帰ってきた。
「何見てたの?」
 続きの一行は……。
『最近は神人の友達が出来たからか以前より女性らしさも出てきたし……悪い虫がつかなきゃいいけど』
 そんな、兄目線の文章なのか、男としての想いなのか不確かな一言。
 ぱたん、と日記を閉じ、クラリスは彼を振り返る。
「おかえり、ソル。大切ならちゃんとしまっておきなさいよね」
 手に持った日記帳を掲げる彼女の髪には、真っ赤な花が揺れていた。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月22日
出発日 03月27日 00:00
予定納品日 04月06日

参加者

会議室

  • [6]ニッカ=コットン

    2015/03/26-17:48 

  • [5]ニッカ=コットン

    2015/03/26-17:08 

    ライトの日記?
    そりゃ見るわよね(笑)

    あたしはニッカよ、ニッカ=コットン
    初めましての方ばかりね、よろしくね。

  • [4]名生 佳代

    2015/03/26-10:27 

    おほほ、私名生佳代ですわ。
    うっかり日記を放置している連れは花木宏介ですわ。
    クラリスお姉さまは久しぶりですわ。
    他の皆様は初めまして。
    えぇ、覗き見しちゃいますわよ。
    当然。
    …ゲフンゲフン、そんな感じでよろしくだしぃ!

  • [3]クラリス

    2015/03/26-08:42 

  • [2]ロア・ディヒラー

    2015/03/26-01:20 

  • [1]出石 香奈

    2015/03/25-08:19 


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