ホワイト☆プリンセス(上澤そら マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●清く正しく、白きプリンセス
 ホワイトデー。
 諸説はあるが、一般的にはバレンタインデーにチョコや贈り物を貰った殿方が、このホワイトデーに女性へとお返しをするというのが一般的な認識だろう。

 しかし、バレンタインに女性から男性にチョコを贈る……という風習も今や変化を遂げ。
 友達同士で贈り合う友チョコ。
 男性から女性へと贈る逆チョコ。
 その他にも義理チョコ義務チョコ色んなものがいつ間にか習慣に加わっている。

 今日、貴女とパートナーはA.R.O.A主催の食事会に参加していた。
 どちらかが誘ったにしろ、たまたま来たにしろ、皆それぞれ理由があるだろう。
 会場にはたくさんのウィンクルム達が思い思いに食事を楽しんでいる。
 見知った顔もいるだろう。

 そんな中、前方のステージに司会者がやってくる。A.R.O.Aの職員だ。

「みなさん、お食事楽しんでますでしょうか?それではここで、毎年恒例のホワイトプリンセスを発表したいと思いますー!」
 おぉ、とザワめくウィンクルム達。
 毎年恒例だなんて初耳だ。

 会場に入った際に貰ったパンフレットには、確かに「ホワイト☆プリンセス発表!」という文字が躍っている。
 よく読んでいなかった、と思い精霊と共に目を通せば。

 
  クジで選ばれた4組のウィンクルム
  選ばれた神人がドレスを着用し、頭にはティアラや王冠でプリンセスとなり
  別室で執事に尽くされる催し

 へー、そんなことするのね、と気にせず食事を楽しんでいると……
「今回のプリンセスは……番さん、……番さん、……番さん。最後に、274番さんですー!」
 すると、隣に居た精霊が盛大に吹き出した。

 ……手に持つチケットには『274番』と書かれていたのだった……

●わがまま、ひとつだけ
「はーい、それではこれから別室でお姫様に変身していただきますー!」
 壇上に登らされれば、皆の視線が注がれ……なんとも気恥ずかしい。
 ウィンクルム両人、ということで精霊も隣に居る。
「そして、執事さんにたくさん尽くしていただいて!」
 はぁ。
「いっぱい癒されて!」
 はぃ。
「一つだけ、願いやワガママを叶えてもらいましょう!」
 ほぅ。
「さぁ、何がお望みですか!」
 ちょっと待ってちょっと待ってお姉さん。
 いったい執事は誰ですのん。
「はい、それじゃあ執事役の精霊さんも心して聞いてくださいねー」

 ……貴女以上に驚いた表情の精霊さん。

「はーーい、それじゃあ神人さん、執事さんに叶えて欲しい願い事を言ってみましょうっ!」
 え、そんないきなりですか、そんな急に言われても。
「せーーーのっ!」
 司会に向けられたマイク。皆の好奇の視線。ちょっとした責め苦だ、もしくはせっかくだから丁度いい、と……

 貴女は願いを口にするのだった。

解説

●流れ
プリンセス姿&執事に変身 → 個室でまったり → ご希望で写真撮影

●個室
神人さんは精霊さんに尽くされてくださいませ。
そうですね、精 霊 と ば っ ち り ですね。
しかしまぁ、個室ですので別に「こんなんやってられっか!」な感じもOKです。
「そんな尽くさないで。別にいつも通りでいいのよ?」でもOKです。
そんな広くないですが、なんだかプリンセス気分に浸れるようなソファーやら紅茶のセットなどあります。
ベッドはないんだからね!

●ドレス
お姫様らしいドレスであればお好きなものをお書きください。
……が、いくつかNG項目もあります
(1)もれなくロングスカートになります
(2)激しい露出はNGです。胸がやや開いてたり、肩が出ているレベルはOK
(3)「お姫様」らしいコンセプト。レースとかフリルとか

●執事くん
ご要望やこだわりあらばぜひ!

その他、ご希望で髪のセット、アクセサリーの貸し出しもいたします。
自分のアクセサリー重視したい方はその旨はや詳細を書いてくださり。
姫、執事、記載なき場合適当に着せますよ。

●神人からの一つの願い
ステージ上で言わされます。
簡潔に一文でお書きください。
必ずできるとは限りません。

突飛なことも言うだけならタダではありますがっ。
精霊も「そりゃできねぇ」な拒否も可能です。

【最後に注意】
突然、「願いを一つ叶える」という話に至ったわけです。
ステージの上で。マイクを向けられて。皆の前で。
さぁ、そんな状況で隣の精霊さんに何を求めましょうぞ!
考える暇はそれほどありませんぞ!
せーーのっ!

……と、いうわけで、公序良俗に反さない程度でお願いしやす。
そして突飛なことや大がかりなことなど、
状況的、また親密度的にお姫様の願いを叶えられない可能性もございます。
その場合『無理でした★』なリザルトになりますゆえご了承ください。

●消費
お食事会参加料金として一組500Jr頂戴いたします。ご了承くださいっ。

ゲームマスターより

いつもお世話になっております。まだまだ新米、上澤そらです。解説長くて申し訳ないです、おろろん。

ホワイトデーイベント期間なのに、普通のエピだよ!
お届け春になってそうだけど、ホワイトデーネタだよ!
ただ単にお姫様と執事のキャッキャウフフが見たいだけだよ!!

ここぞとばかりに執事に尽くさせる?
ノリノリで尽くす!?もしくはお姫様がご奉仕しちゃう…!?

ウィンクルムの数だけ、物語があるんやで……!!


阿呆なノリもシリアスノリもロマンスノリもどんとこい!
何卒よろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)

  なんだかこれだけの人の前に立つのって緊張しますね…
お願い事って…急に言われても、え、えーと…!
な…撫でて欲しいですっ!

あんな大笑いしなくたってよかったじゃないですか、
本当に思いつかなかったんです…
一緒にいるだけで幸せなのにこれ以上求めるなんて…

気兼ねなく我侭言えるよう宿題って
言い方してるんですよね、きっと。
ふふ、ちゃんと考えておかないと…

毛先を少し巻いてもらって、
花を編みこんでもらっただけで結構変わるんですね…
あの、今の私変じゃないですか?大丈夫ですか?
だってこの姿を最初にグレンに見せた時に
固まってたように見えたから不安なんです…
もしグレンが気に入ってくれてるなら
今度またやってみようかな…



ロア・ディヒラー(クレドリック)
  え、嘘当たった…?
(可愛い服は嬉しいけど着てステージにあがるって恥ずかしい!)

ドレスは明るめの紫基調のレースとフリルをふんだんに使ったプリンセスラインドレス

「願い事!?ええっと…く、クレちゃんの角触らせて!」
(確かに触りたいのは事実だけども!!目に入ったからつい言っちゃった…クレちゃんに笑って欲しいとか恥ずかしいお願いだけどこれも大分恥ずかしい願いだよ!)

え、いいの!?
(触らせてもらって)(ああ、でもやっぱり面白い手触り。ディアボロの角触るの夢だったんだよね…)クレちゃんの角、ごつごつしてて滑らかでいい感じ(目を輝かせて)

(雑誌って乙女向け雑誌だ…きっとそうだ。あ、笑ってる。…しばらくこのまま


名生 佳代(花木 宏介)
  いっよっしゃぁ!
プリンセスに選ばれたしぃ!
張り切るしぃ!
ノリノリ…ゲフン、ですわー!

宏介様、私の命れ…お願いは“お姫様抱っこ”ですわ。
優しく抱き上げて微笑んでみてくださいまし。
あぁ、やはり顔はかっこいいですわね。
すごく絵になりますわ…。
執事服も似合っていますわ。
個人的には、王子服を着て欲しかった所でしたけど。
…ちょっとぉ、変な口調ってなんだしぃ!?
人が折角ノリノリで楽しんでるってのにぃ!

ごめん、キスはいいや、だって宏介、王子様じゃないもん。
契約でもトランスでもないし。
パートナーだけど、彼氏でもないしね。

あれ?
このチョコ美味しい…ってことは、宏介の手作りっしょ!
義務でもなんでも、ありがとだしぃ!


真衣(ベルンハルト)
  おねがいごと?
お姫さまだっこ!(にっこり宣言

ドレスは、フリルいっぱいのふわふわしたピンク色。
お花もたくさん。
それとひじまでのグローブ。
ろしゅつが少ない方が大人っぽいって、ママが言ってたわ。

わあ、ハルトにあってるね!
本当?ありがとう。(にこ

んーん。きねんさつえいができるって言ってたもの。
お姫さまだっこは、きねんさつえいのときがいいわ。(唇に指を当て、首を傾ぐ

いつもどおりでいいの。
話し方がちがうときょりを感じるもの。私とハルトは対等なのよ。

ハルトがおでこ出してるのしんせんね。(見上げる
そんなこと無いわ。どんなハルトもかっこいいもの。

本当のことしか言ってないわよ?

さつえいのときはぎゅってだきつくわ。



●ホワイト☆プリンセスショウ
 選ばれた4組のウィンクルムは神人、精霊に別れ衣装部屋へと連れて来られた。

 女性陣は緊張と期待に胸を高鳴らせながら衣裳部屋へと向かう。
 ドアを開き足を踏み込めば、艶やかに煌びやかに光るドレス達。
「わぁ、どれもかわいい!!」
 アクアマリン色のパッチリとした瞳を輝かせたのは真衣。
 童話のお姫様のような衣装の数々にトキメキを隠せない。だが目に映るのは大人用のドレスばかり。
「皆様、お好きなドレスをお選びくださいね。サイズも豊富にございますのでご安心ください」
 衣装部の女性が皆にそう伝えた後、真衣に向かって微笑んだ。
 そして女性がカーテンを開けば、そこには子供用のドレスが並ぶ。
 大人用ドレスとデザインが同じものや、子供が好みそうなドレスも揃い。
「どれにしようかなー」
 満面の笑みで、真衣がドレスを吟味し始めた。

「これだけ種類があると悩んでしまいますね……同じ色のドレスでも、型が違うと印象も変わりますし……」
 真衣の横でうっとりとした表情を浮かべ、ドレスを見比べるのはニーナ・ルアルディ。
 蜂蜜色の髪に蒼い瞳を持つニーナは白いドレスを見比べる。
「あ、ニーナちゃん」
 そんなニーナに声をかけたのはロア・ディヒラー。
 女子会でも語り合った中であるニーナとロア。久々に顔を合わせたことにキャッキャと嬉しそうに笑う。
「ニーナちゃんも当たったんだね。ドレス姿楽しみだなぁ」
「ロアさんのドレス姿も楽しみです。どんなドレスにするのですか?」
 ニーナのドレス姿を想像し、楽しそうな笑みを浮かべるロア。そしてロアの手には既にドレスが抱えられているのをニーナは見つけた。
「悩んだのだけど、これにしようかなって……」
 ロアが選んだのは薄紫色のプリンセスラインのドレス。
 一見白を思わせるような明るく淡い紫色を基調とし、胸元からスカートにかけてグラデーションがかっている。スカート裾のフリルは気品あるライラック色だ。
 全体的にレースとフリルをふんだんに使い、パフスリーブ型のデザインは可愛らしさの中に落ち着きも見せている。
「うわぁ……きっとロアさんに似合います!」
 目を輝かせるニーナに照れを隠せないロア。そんなロアに着替えを始めましょう、と声がかかり。
「それじゃあ着替えてくるね」
 ニーナに手を振り着替え部屋へと入室する。
 そして真衣も希望のドレスが見つかったようで着替え部屋へと向かって行った。

 そんな中。
 サクッといち早くドレスを決め、一番最初に着付けが終わったのは一見清楚系眼鏡っ娘、名生 佳代。
 春を感じさせるような柔らかなイエローのドレスに身を包んでいる。
 アメリカンショルダータイプの上半身にAラインのシンプルなイプのドレス。細やかなレースと花の刺繍が入り、女性らしさが溢れている。
 鏡の前でドレス姿を映し、軽やかにクルクル回る佳代は本当に嬉しそうで。
(いよっしゃああ!!プリンセスに選ばれたしぃ!張り切るしぃっ!!!)
 と心の中でガッツポーズしてるとは思えない程に優美だった。
 そんな佳代を見て、ニーナも楽しそうな笑みを浮かべ。
(それでは、私はこれにしましょう)
 白くひらひらとしたドレスを手に持った。ふんわりとした印象を与えるプリンセスドレスは妖精のように可愛らしく
(気に入ってくれるといいな……)
 と、愛しい人の顔を思い浮かべるのだった。

「うわぁ、可愛いですわ!」
 着替えが終わった真衣が部屋から出れば、真衣の姿に佳代が思わず声を上げた。
 真衣のドレスはふわふわとしたフリルがたくさんの、淡いピンク色。
 佳代の言葉にニコリと笑み、ペコリとお姫様らしく裾を上げてご挨拶。
「おはなもたくさんで気に入ったの。お姉さんもきれいよ!」
「おほほ、ありがとうございますわ」
 佳代もニッコリと微笑み返した。
 そしてキョロキョロと真衣は辺りを見回した後、衣装部の女性に声をかけた。
「あのね、グローブはあるかしら?ひじまである、長いのがいいの」
 真衣が伝えれば、すぐに同系色のロンググローブを持ってきた。
「お洒落ですわね、お嬢ちゃん」
「ろしゅつが少ない方が大人っぽい、ってママが言ってたわ」
 佳代の言葉に真衣がニッコリと笑めば
「た、確かにそうですわね……ちょっと……ゲフン、ねぇちょっと、あたいも長い手袋欲しいしぃ!」
 咳払いと共に佳代の口調が変わったのを見て、真衣はクスクスと笑うのだった。

●一つ目のお願い
 神人達の着替えが終わりステージに向かう。もう既に精霊達はアレよアレよと執事服に着せ替え済み。各々が檀上で待っていた。

 ニーナの精霊であるグレン・カーヴェル。正統派の黒い執事服に身を包んでいるが、その胸元は大きく開き、着崩し感がある。
 名を呼ばれステージ中央へと向かうニーナの手を取るグレン。
 可憐で美しいニーナの姿にグレンの時が一瞬止まり。しかし次の瞬間には眼差しは悪戯な笑みに変わり、ニーナの緊張を助長させた。
(なんだかこれだけの人の前に立つのって緊張しますね……)
 そう頬を赤らめるニーナに対し、飄々とした表情で隣に立つグレン。
「はいっ、それじゃあニーナさん!執事さんにお願いごとをどうぞっ!」
 司会がニーナにマイクを近づける。
「お願い事って……急に言われても、え、えーと……」
 アワアワと口をパクパクさせるニーナに会場のウィンクルム達の視線が集まり。意を決したようにニーナがギュッと瞳を閉じ、発した言葉は
「な……撫でて欲しいですっ!」
 おぉお!可愛らしい……!という会場の反応とは対照的に、隣にいたグレンは大笑いしたいのを必死に堪える。お腹を押さえるも、クククと笑みが零れてしまう。
「はぁい、それじゃあ執事さん、お願い事を叶えてあげてください☆」
 そんな司会の言葉に、グレンはそっとニーナに近寄り、耳元で囁きつつ。
「続きは後で……な」
 妖艶な笑みでゆっくりとニーナの髪を撫でた。
 その手の感触、言葉、笑顔、そしてこの後の時間を考え。ニーナは更に頬を赤く染めたのだった。

●二つ目のお願い
 次に名を呼ばれたのは佳代。
 隣にはパートナーの眼鏡マキナ男子、花木 宏介。こちらは正統派な執事服をキッチリ真面目に着こなしている。しかしその表情は死んだ目になりそうなのを必死に堪えている模様。
(コスプレに慣らされてしまうのは怖いな……)
 そんな心境だとは露知らず、ドレス姿で意気揚々とステージの中心へ進む佳代。
 エスコートしようとするもズビズバ進む彼女に司会がマイクを向け。
「それじゃあ、お願い事をどうぞっ!」
(どんな願い事をされるか……恐ろしい)
 司会の言葉に緊張が高まる宏介。そんな彼にしっとりとした視線を送る佳代が口を開く。
「宏介様、私の命れ……お願いは『お姫様抱っこ』ですわ。優しく抱き上げて、微笑んでみてくださいまし」
 頬に手を添え、うっとりとした表情を向ける表情はとても可愛らしく。
 すっかり無茶ぶりをされると思っていた宏介は拍子抜けした。
 お姫様抱っこ程度で済んでよかった……と安堵し。
「かしこまりました」
 と佳代へ近づき。観衆がおぉお!と色めきだつ中、軽々と宏介は佳代を抱き上げた。そして彼女を見つめニコリと微笑めば沸き起こる拍手。
(あぁ、やはり顔はかっこいいですわね……)
 改めて至近距離で見る宏介の微笑みに、改めてそう思う佳代だった。

●三つ目のお願い
 ロアの名が呼ばれ、中央へと進み出る。その表情は恥ずかしさに軽く朱に染まっている。
(可愛い服が着れるのは嬉しいけれど……ステージに上がるって恥ずかしい……!)
 頑張って中央まで進み出れば、堂々とした立ち居振る舞いを見せるロアのパートナー、クレドリック。
 黒を基調とした執事服は正統派だが、ベストは薄紫色、また紫色の薔薇モチーフのコサージュが彼の胸を飾っている。
「それでは、ロアさん、願い事をお願いしますっ!」
 陽気な司会の声にロアはクレドリックの表情を伺う。
 相変わらずの無表情で見つめ返してくるクレドリック。
(ロアの願い、か……。気になるな。どのような願いでも叶えてやりたいが)
 真っ直ぐな彼の視線に思わずロアは瞳から視線をはずし。そして目に入ったもの。
「えぇっと、クレちゃんの角、触らせてっ」
 無表情ではあるが、どこか拍子抜けした表情を見せるクレドリック。
「角……かね。別段触られても私は構わない」
 ディアボロの黒い角。それは過去のクレドリックの忌みたる記憶に通じるものであるが……ロアに触れられるのは嫌ではない。
 さぁ、どうぞというかの如く、クレドリックは頭をやや下げた。
「え?いいの?」
 あっさりと願いが叶ったロアはキラキラと目を輝かせ、クレドリックの角を優しく触り撫でる。
(何故こうも楽しげに私の角を触っているのだろうか。こんなに目を輝かせるロアはあまり見たことない気がする)
 されるがままのクレドリックは相変わらずの無表情。
「クレちゃんの角……ゴツゴツしてて、でも滑らかで……いい感じ」
 ロアがうっとりと陶酔した表情に見えるのは気のせいだろうか。 
(褒められる……とは。柄にもなく気恥ずかしい……)
 チラリと会場へクレドリックが視線をやれば、ディアボロをパートナーとする神人達も角を触りまくっている光景が目に入ったのだった。

●四つ目のお願い
 最後に名前を呼ばれたのは真衣。
 可愛らしいドレスの裾を持ち上げ、堂々と中央へと進んで行く。
 そこに待つのは彼女の精霊、マキナのベルンハルト。
 白いシャツに茶色のベスト。黒の燕尾服に同じく黒のループタイ。白い手袋をはめ、髪をいつもと違うオールバックに整えた彼は優美な表情で可愛いプリンセスを見守る。
(これだけの視線を受けても真衣は動じていないか。……真衣らしい)
 ベルンハルトの隣に位置し、笑みを見せる真衣。そして司会のマイクが彼女に向けられれば。
「おねがいごと?おひめさまだっこ!」
 キッパリニッコリ、高らかに。迷いなく発せられた言葉に会場も和む。
(お姫様抱っこか。落とさないようにしなければな) 
 ベルンハルトが真衣に近寄れば
「わあ、ハルトにあってるね!」
「ありがとう。真衣もよく似合っている。プリンセスらしい」
「本当?ありがとう」
 真衣が嬉しそうな笑みを見せる。
「それでは、お姫様抱っこを……」
 と言う司会の言葉を、真衣は唇に指を当て、少々考える仕草。
 そして小首を傾げ
「きねんさつえいができるって言ってたわよね。お姫さまだっこはきねんさつえいのときがいいわ」
 真衣のあどけない笑顔を向けられれれば、そりゃあ司会も逆らえるわけもなく。
「かしこまりました、プリンセス!それではお二人には別室でお姫様抱っこをしていただきましょうっ」
 こうしてプリンセスの4つのお願い事は披露され、無事にショウは幕を閉じたのだった。
 
●宿題
「あーあ、腹いってぇー!」
 別室に入り、ニーナと二人きりになるとすぐに、グレンが大笑いを始めた。今まで我慢していた笑みが一気に放出された。
「あー笑った笑った。どんな無茶ぶりされるか期待してたんだが……お前やっぱ犬だわ、犬」
 着崩した執事服を更に緩め、ドカッとソファーに座るグレンに、ニーナは頬をぷくっと膨らませた。
「そんなに大笑いしなくたっていいじゃないですか、本当に思いつかなかったんです……」
 彼女の言葉にグレンは目を細め。
「そう拗ねるなって……ほら、こっち来いよ」
 ソファで楽しそうに両手を広げるグレンにニーナは勿論逆らえるはずもなく。
「グレン……」
 近寄り、ぽふっと身を任せた。グレンはそんなニーナを抱きしめ、優しく撫でる。
「こんなんで良かったのか?今なら気分いいし、もう一個くらい我儘聞いてやっていいぜ?」
 グレンが彼女に言葉を向ければ、ニーナは腕の中で考え込む。が。
「一緒にいるだけで幸せなのに、これ以上求めるなんて……」
「本当にないのか?」 
 グレンの言葉にコクリと頷くニーナ。
「……じゃ、宿題。来週までに考えて報告」
 え!?とニーナが目を見開くも
(私が気兼ねなく我儘言えるように、宿題って言い方をしてるんですよね、きっと……)
(こうでもしないと、こいつ我儘言わないしな……)
 2人の視線が絡み合い、ニーナがふふ、と笑う。
「ちゃんと考えておきますね」
 いい子だ、とでも言うかのようにグレンは彼女の、サラサラの髪を撫でた。

 2人でまったりとした時間を過ごせば、トントンと部屋のドアがノックされ。
 頼んでおいた記念撮影班が入室する。
 せっかくだから、と髪を整えてもらうニーナ。毛先を巻き、赤い花を編み込めば更に華やかで。ニーナの白いドレス姿が更に輝きを増した。
 支度を終え、2人がカメラに向かい並ぶ。
 ニーナは隣に居るグレンを見上げ
「あの……今の私、変じゃないですか?大丈夫ですか?」
「へ?ドレス……そのまぁ。いーんじゃねぇの」
「だって、ドレス姿を最初にグレンに見せた時に固まっていたように見えたから……不安なんです」
 そう言いやや俯くニーナ。
(最初、綺麗で驚いていたなんて言えねー……)
「それじゃあ撮影始めまーす!」
 笑みを浮かべるものの、どこか切なげに見えるニーナ。
「ういしょ」
 そんなニーナを突然、グレンが軽々と抱え上げた。
「きゃっ!?」
 突然のことに驚きを隠せないニーナに
「似合うぜ。ドレスも、髪型も」
 頬を染めるニーナはカメラに向かい、満面の笑みを浮かべるのだった。

●距離感
「……たく、なんでそんなノリノリなんだか……」
 佳代と宏介は別室へと案内され、やっと二人きりとなる。
 思わず息をつく宏介をうっとりと見つめる佳代。
(凄く絵になりますわ……)
「執事服も似合っていますわよ、宏介。個人的には王子服を着てほしかった所でしたけど、おほほ」
「勘弁してくれ……ビショビショになりたくない、また風邪引きたくない。あとその変な口調やめろ」
「ゲフン。ちょっとぉ、変な口調ってなんだしぃ!?人がせっかくお姫様気分でノリノリで喋っているってのにぃ!」
 ソファーにどかっと座る佳代。やや不服そうな表情を見せる。
 しかし元々可愛らしい彼女。
(黙っていれば可愛いのに……)
 そう思いつつ宏介は自分の荷物から一つの箱を取り出した。そしてその箱を佳代へと手渡した。
「はい、義務チョコ」
「へ?」
 突然渡されたチョコに目を丸くする佳代。
「せっかくだからもっと王子様っぽくした方がいいか?」
 そう言うと、宏介は会場でしたように、もう一度佳代を軽々とお姫様抱っこする。
 目の前に迫る宏介の顔。宏介の唇……唇!?
「ちょっと、宏介何をしてるんだしぃ!?」
 思わず赤面する佳代に
「お姫様抱っこは女性がときめくシチュエーションで、更にここでキスをすると効果的だと書いてあったんだが……」
 そう言う宏介。一体何を読んだんだ。
「ごめん、キスはいいや。だって宏介、王子様じゃないもん」
「……しなくていいなら、しない」
「別に無理してするもんじゃないしぃ。契約でもトランスでもないし。宏介はパートナーだけど、彼氏ではないしね」
 そう言うと佳代はスルリと宏介の腕から降りた。
(まぁ……正直ホッとした、かな)
 佳代を見れば、早速チョコの包みを開いている。そして取り出したチョコをポイッと口の中へ。
「あれ?このチョコ美味しい……!甘さ控えめであたい好みだしぃ!ってことは、宏介の手作りっしょ?」
「正解。よくわかったな」
 宏介が佳代に向かい笑む。
「義務でもなんでも、ありがとだしぃ!」
 ニッコリとした笑みを浮かべる佳代。
(近すぎない距離感が、今の俺達には丁度いいのかもしれない)
 満足そうにチョコを頬張る佳代を楽しげに見つめる宏介だった。

●執事の微笑み
 別室に通され、2人きりになった途端ロアは盛大に息を吐いた。
「はぁあ、緊張したぁ……」
 ふぅ、とロアはソファーに腰掛ける。対してクレドリックは部屋にある備品を見て回っている。
 そんな彼の背中を見ながらロアは
(確かに角を触ってみたかったのは事実だけれど!!目に入ったからつい言っちゃった……)
 手に残るクレドリックの角の感覚を思い出す。
(頭に浮かんだのは、クレちゃんに笑ってほしい……だったけど、角を触りたいって言うのも恥ずかしいお願いだよ!)
 ソファーに置かれたクッションを恥ずかしさからかロアはムギュウ、と抱きかかえた。
(角を触るのはそんなに恥ずかしいお願いだったのか……興味深い)
 そんなロアを横目で見つつ、クレドリックは執事らしく紅茶を淹れ始めた。
「ロア、小腹は空かないか?」
 淹れたての紅茶をロアの前のローテーブルへと置き、クレドリックが跪いた。
「そういえば、プリンセスに当たった時から緊張してご飯食べられなかったんだよね」
「私にもそう見えていた」
 クレドリックが言えば、トントンと部屋のドアにノックの音が響く。
 メイドらしき女性がお待たせしました、とホットケーキのプレートを持ってきた。
 そして紅茶の隣に並べると頭を下げ退室する。
「わぁ、美味しそう!」
 ロアの笑みに満足そうな表情を浮かべ、彼は用意されたチョコレートのペンを器用に絞り、ホットケーキに文字とイラストを描いていく。
(相変わらずクレちゃん、絵が可愛い……)
 いつぞやのカフェで見たクマちゃんのラテアートのようなイラスト。
 そして『我がプリンセス・ロアに捧ぐ』と文字も添えられ。それはそれは可愛らしい丸文字だ。女子力が高いクレドリック執事。
「わぁ、可愛い」
 ロアが呟くと、クレドリックはホットケーキを一口サイズにカットし、ロアの口元へと近づけた。
「え、ちょっと、クレちゃん?」
 慌ててドギマギするロアに。
「雑誌で読んだのだが、執事は主人に尽くすのだろう?ほら、口を開けたまえ」
(……雑誌って乙女向け雑誌だ、きっとそうだ……)
 ロアの胸が激しい動機に襲われる。
「さぁ、あーん」  
 そう言うクレドリックは柔らかな笑みを浮かべている。優しげに微笑む彼の表情。
(あ、クレちゃん……笑ってる。しばらく、このまま……)
 微笑むクレドリックをロアが楽しげに見つめれば。
「どうした?食べないのか」
 キョトンとする彼。
「食べる!」
 と口をあーんと開けるロアに、満足げな表情を浮かべるクレドリックだった。

●姫と執事
 真衣とベルンハルトが部屋へ案内される。
「まだ写真撮影まで時間があるな」
 ベルンハルトはそう呟き、ティーセットに気付く。そして部屋を楽しそうに見回す真衣へと声をかけた。
「……真衣お嬢様、紅茶をご用意いたしましょうか?」
 ハルトの様子にキョトンとした表情を浮かべる真衣。
「紅茶はのみたいけれど……ハルト、いつもどおりでいいの。話し方がちがうときょりを感じるもの。私とハルトは対等なのよ」
 人差し指を立て、ハルトに向かってウィンクをする真衣。
「ああ、すまない。そうだな、対等だな」
 ベルンハルトは真衣の頭を柔らかに撫でれば、真衣は嬉しそうな表情を浮かべた。
 ベルンハルトが紅茶を淹れ、ソファーの前のローテーブルへ運ぶ。
「真衣、紅茶が入ったよ」
 そう呼べば、真衣はソファーへと腰を下ろす。そしてベルンハルトも隣へ腰かけた。
「おいしいわ」
 優雅にカップを持ち、口を付ける真衣に暖かな視線を送るベルンハルト。
 そんな彼の視線を受け、真衣はベルンハルトを見上げる。
「ハルトがおでこを出してるのしんせんね。はじめてみたわ」
「普段は下ろしているからな、変か?」
 己の緑色の髪を触るベルンハルトに
「そんなことないわ。どんなハルトもかっこいいもの」
 満面の笑みを見せる真衣。
「ありがとう。……真衣の言葉は真っ直ぐだな」
「本当のことしか言ってないわよ?」
 お世辞に思われたら心外だ、とでも言いたげな彼女の表情に、ベルンハルトは目を細め、小さく笑んだ。
「疑ってなんかいないよ。嬉しい」

 しばし二人で紅茶を堪能していると、約束の時刻に写真撮影班がやってきた。
「それじゃあ、真衣」
 ベルンハルトが真衣の手を取り、そのまま軽々と彼女を抱きかかえた。
 執事の腕に愛らしいお姫様がスッポリと収まり。
「ありがとう、ハルト」
 真衣はカメラに笑顔を向ける。
(これからも私のそばにいてね)
 そんな思いを込め、真衣は強く抱き付いた。



依頼結果:大成功
MVP
名前:真衣
呼び名:真衣
  名前:ベルンハルト
呼び名:ハルト

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 上澤そら
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 03月12日
出発日 03月18日 00:00
予定納品日 03月28日

参加者

会議室

  • [4]名生 佳代

    2015/03/17-17:28 

    挨拶が遅くなり申し訳ないですわ!
    わたくし、名生佳代、連れの花木宏介でございますわ。
    ニーナ姉様は久しぶりですわね。
    今回もよろしくお願いしますわ。

    ふふ、私がお姫様で宏介が執事でしたら…。
    ゲフン、そんなものはじめから決まってるしぃ…♪

  • [3]ロア・ディヒラー

    2015/03/17-01:26 

    初めましての方は初めまして…!ニーナちゃんはお久しぶりだね。
    ロア・ディヒラーとクレドリックです。

    いきなりプリンセスに選ばれてしかも、クレちゃんが執事…!?
    何をお願いすればいいかわからないけど…ちょっとしたことでもいいのかな…?

  • [2]ニーナ・ルアルディ

    2015/03/16-02:36 

  • [1]真衣

    2015/03/15-21:26 

    みなさん、はじめまして!
    真衣とベルンハルトよ。

    おねがいごとを発表するのね。
    うん。きまったわ。(にこ


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