プロローグ
「チョコレートの、薔薇?」
A.R.O.A.職員が首を傾げる。
ショコランドのある地域には、ショコラローズと呼ばれるチョコレートで出来た薔薇が群生する地域があるのだとか。
「そうですよぉ、とっても、綺麗なんです」
二人の妖精たちは口々に告げる。
「ビターのローズ、ミルクのローズ、ホワイトチョコのローズ、いろいろあって美味しいんです~」
しかも食べれるのか。
「私たちの地域では、ショコラローズを贈りあうのが慣習なんですよぉ」
「ぜひ、ウィンクルムの皆さんもどうですかぁ?」
ふわふわとした口調の妖精は一本ショコラローズを手渡して笑った。
「薔薇の本数には意味があるって知ってました?」
「一本なら、一目ぼれ……もしくは、あなたしか、いない」
女性職員は身を乗り出してメモを取る。
「他は?」
「3本なら、愛しています」
「7本は、秘めた愛」
「11本で、最愛」
次々と発せられる言葉は、強烈な愛をつむいでいる。
「99本なら、ずーっと一緒にいよう」
そういって、妖精は顔を見合わせキャーッとはしゃぐ。
「すてきですよね!ね!」
職員は急いで案内をまとめた。
***********
『ショコラローズ園のご案内』
ところ:ショコランド某所ショコラローズ園
入園料:お二人様300Jr
お花のお値段:一輪50Jr(上限お一人様500本まで)
☆カフェ利用の方へご案内
ショコラローズのお庭を一望できるカフェがございます。
コーヒー・紅茶・ホットチョコ・ホットミルク・ココア=一杯100Jr
チョコレートシェイク=一杯200Jr
チョコレートケーキ=300Jr
カフェ利用前にショコラローズを摘んでいただければ、コーヒーやホットチョコに添えてお召し上がりいただくことも可能です。
解説
目的:ショコラローズで感謝の気持ちを伝えよう。
参加費:必ずお二人で300Jrかかります。
咲き乱れるショコラローズ園で存分に想いを語り合いましょう。
お花を贈りあう場合は、神人が何本、精霊が何本購入、とお書きください(もちろん、片方だけが購入してプレゼントでも、お互いにプレゼントでもOKです)
花束にしたい!という方は無料で花束にしますので、どんな花束か記載ください。
カフェご利用の際は、カフェで注文いただくものをお書きいただければOKです。
薔薇の本数の意味は、お互いに知っていてもかまいませんし、知らないという体でもOKです。
どちらかだけ知っていてやきもきしちゃう!というのでもいいですし、意味をカフェの妖精に教えてもらうのもいいですね。
ショコラローズ詳細
・茎はビターチョコレート。花は個体によって味も色も違う。基本はブラウンでミルクチョコの味。カカオの味が強くなるにつれ色も黒っぽくなる。さまざまな味がありますので、よっぽど突飛な味でなければ描写いたします。基本はミルクかビターかホワイトです。花びらは柔らかく口解けの良いチョコレート。質感は薔薇の花びらそのものです。
お料理が得意な方も苦手な方も、これならバレンタインできちゃいますね!
つんでその場でもぐもぐしてもOKですよ!
運がよければショコフライ(チョコの蝶)も飛んでくるかも!ご希望の方はご記載くださいね。
ゲームマスターより
催事場でチョコレートいーっぱい見てきました!
自分で作るのも美味しいけど珍しくて可愛いチョコっていいですよね
こんなチョコあったらいいのになーと思って書きました。
みなさまも一風変わったショコラローズをお楽しみいただけましたら幸いです。
(おなかのすくハピネス☆)
リザルトノベル
◆アクション・プラン
木之下若葉(アクア・グレイ)
薔薇の話を聞いて一輪摘んで花弁を咥えてみる …ん。甘い。確かにチョコレートだ 花を摘みながら園内をゆっくりと散策 去年のバレンタインのちょっと前に会ったから、約1年 何だか凄いよね。色々と 17歳おめでとうだよ ん?でもその時拾われていなかったら こうして会えて居なかった訳だし 『誕生日』でいいんじゃないかな 此処に居る、色んな月日を重ねたアクア誕生の日、なーんて ふふ、きっと育ての親さんって凄く素敵な人なんだろうね だってこれだけアクアがアクアなんだし 散策を終え摘んだ花の数は5本 アクアの分と一緒に合わせて花束にして貰うよ 『今』を過ごせる事に感謝を込めて そしてアクアがまた1年 素敵な年でありますようにと願いを込めて |
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
凄いな。これ全部チョコなのか(撫で 香りや質感も楽しむ 未知の植物に心が踊る ランスは意外な所で物知りだよな あ、あの辺、桃色じゃないか? 赤は薔薇味か苺味かな? 棘を確認しつつそっと1本採取 花弁一枚静かに舌に乗せるよ ならランスも食べろよ(汗 にやにや見るの無しっ(取った花を入れるための籠を押し付け 俺はビターが好きかな ランスは甘いの好きだよな じゃあ1/3ずつ、あ、桃色も入れて1/4ずつで 花弁をコーヒーに入れて 本数に意味がある話を興味深く聞く 「2人で取った場合は、本数はどういう換算になるんだ?」素 ランスは頭の回転にいつもより頼もしく見える じゃあ、これは俺達から俺達へ、だな 自宅の何処に飾ろうか? あ、蝶が…(笑む |
栗花落 雨佳(アルヴァード=ヴィスナー)
凄いねぇ…チョコの花が咲いてるんだって 楽しみだな ・スケッチブックを抱えて笑い 促されるままカフェへ 折角だから、ホットチョコレートにしよう ・テラス席に座るや否やスケッチブックを広げて絵を描いてく 途中でアルが居なくなった事にも気付かない テーブルに花束を置かれてようやく気付く …びっくりした…僕にくれるの? ありがとう…19本?そういえば薔薇の本数には意味があるんだっけ? ・教えてくれないのに肩を竦め トイレに行くと言って席を立ち意味を調べる …忍耐と…期待… ・カフェを出てミルクローズ8本の花束を作る …これは君に 僕は君に感謝してもし足りないよ 僕はあまり察しが良くないから…君が我慢している事を言って欲しいな |
セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
■手作りチョコを忍ばせ勇気をだす ショコラローズ? 薔薇は好きだけど…ありがとう考えてくれて わ…チョコの薔薇も綺麗 いってらっしゃい。散策してベンチでまってるよ あ。…(何言ってーータイガ ◆受け取り食べ 5本で「(あなたに出会えて)心から嬉しい」表す 僕からの気持ち それと (赤リボンの箱。抹茶チョコレートケーキ 上から濃い抹茶チョコに抹茶ムース、チョコスポンジの濃厚な一品) 首ふり)本命でも義理でもない …バレンタインまでに返事できなくてごめん でも、今の気持ちを伝えたくて タイガと出会えてよかった いてくれたおかげで今がある「生きよう」と思った今が 僕を見てくれて、ありがとう 僕も、一緒にいたい 我侭なのは僕もだ(エピ53 |
明智珠樹(千亞)
●千亞にチョコ薔薇を11本用意 ビター、ホワイト、抹茶等、色んな種類を揃え ピンク系の装飾&リボンで花束に ●本数の意味バッチリ把握 ●カフェでココア注文 ★カフェ 「チョコ好きの千亞さん、薔薇好きの私。なんと素敵な幸せ空間でしょう、ふふ…!」 (ご機嫌で) 「私、気づいたら薔薇園で倒れてたんですよね。それ以前の記憶は全ッ然ないのですが。なので薔薇はなんだか愛着が…」 (驚く千亞に) 「おや、信じてなかったんですか?残念です、ふふ」 (手掛かりを、と立ち上がろうとする千亞を制し) 「私に過去は必要ありません。私に必要なのは、千亞さんと居る今です」 (微笑み、チョコ花束を) 「私にもですか?…嬉しいです」 (幸せそうに) |
ショコラローズ園に訪れた木之下若葉は、興味津々な様子で妖精から薔薇の生態について聞き、一輪摘んで花弁を咥えてみた。
「……ん。甘い。確かにチョコレートだ」
傍らの精霊、アクア・グレイも澄んだ大きな菫色の瞳を瞬かせて若葉から花弁を受け取る。
「生きてる薔薇なのにチョコなんですか。不思議ですね」
そして、ぱくり、と口に含むと。
「本当です!花弁なのにチョコレートです!」
無邪気に笑う。
あたりを見回せば、色とりどりのショコラローズ。二人はこの夢のような光景の園をゆっくりと散策することにした。
「去年のバレンタインのちょっと前に会ったから、約1年。何だか凄いよね。色々と」
ふと若葉が思い出したように言う。長いような短いような、二人の1年。
「そうですね、会ってから1年……ふふ、僕も”もう1年”なのか”1年しか”なのか解らないです」
めまぐるしく過ぎていくウィンクルムとしての日々。けれど、二人で過ごしてきた歴史として、「1年」というのは、まだまだのような。
また、若葉が思い出したように言う。
「アクア、17歳おめでとう、だよ」
そう、アクアの誕生日は2月1日。
「はい!誕生日で17歳になりました」
嬉しそうにアクアが微笑む。そして、小さく首を傾げた。
「生まれた、とは少し違うのかもしれません。育ての親に拾われた日が2月1日だったそうでして、それで」
誕生日、という言葉がしっくりこずにむむ、と唸る。
「ん?でもその時拾われていなかったらこうして会えて居なかった訳だし『誕生日』でいいんじゃないかな」
ぽんぽん、とアクアのふわふわとした髪の毛を撫でながら目線を合わせる。
「此処に居る、色んな月日を重ねたアクア誕生の日、なーんて」
祝福するように、チョコレートの蝶が二人の間を飛んで行った。アクアは花を綻ばせるように嬉しさに顔を紅潮させる。
「そう、なんでしょうか?そうだったら、凄く凄く嬉しいです!」
正確な誕生日がわからない自分。けれど、その自分が自分たるアイデンティティを教えてくれた若葉のこの言葉。
「ふふ、きっと育ての親さんって凄く素敵な人なんだろうね。だってこれだけアクアがアクアなんだし」
アクアが、アクア。アクアは、この世に一人しかいなくて、そして、それはとてもオリジナリティのある存在で、それ以外の何者でもないのだ、という様に。
(ふふ、僕が僕って僕はどんな風に見えているんでしょうね)
よく理解されていると感じて、更に笑みを深める。
「はい!今度沢山お話ししますね!」
今、自分が自分であることを明確にしてくれた家族のことを、いつか、たくさん。
***
「さて……アクアは何本摘んだのかな?」
若葉は自分が積んだ五本のショコラローズを手に、アクアに問いかける。
「僕は、6本にしました」
「うん、一緒に花束にしてもらおうか」
ミルク、ビター、ホワイト……色とりどりのショコラローズがアクアの瞳の色に近いアメジスト色の包装紙にくるまれ、若葉色のリボンをかわいらしく結ばれる。
「わあ!すごく綺麗です!」
食べるのが、もったいないくらいの花束。
「アクア、改めて、お誕生日おめでとう」
そっと二人分の花束をアクアに渡し、若葉もその花束に手を添える。そして、静かに微笑んで、こう付け足した。
「『今』を過ごせる事に感謝を込めて。そしてアクアがまた1年素敵な年でありますようにと願いを込めて」
二人の目の前で揺れるショコラローズは、11本。当の本人たちはまるで気付いていないようだが、その本数は語っていた。
『互いが互いの最愛、親愛なる人』と。そして、二人で摘んだ合計の本数であるその花束。きっと思いは分かち合えていることだろう。
「ショコラローズ?」
首を傾げたのは、神人、セラフィム・ロイス。
「そ!花とか薔薇すきだろ?春に咲く鮮やかなのはねーけど楽しめるかなってさ」
この場所に誘ったのは、精霊、火山タイガ。虎のテイルスである彼は出来るだけ気負わせないようにと、いつも通りを信条に耳をぴこぴこと動かした。
「薔薇は好きだけど……ありがとう考えてくれて」
そっと、足元に咲いたミルクのショコラローズを覗き込む。確かに、鮮やかな薔薇は無いけれど。
「わ……チョコの薔薇も綺麗」
「ピクニックがてらにきて正解だったな!」
ニッと笑ってサンドイッチが入ったバスケットを掲げる。と。
「あっ」
通りかかった妖精が気まずそうに声をかけてきた。
「あの……園内は基本的には飲食をご遠慮いただいてるんです……」
入園料を払って楽しむ薔薇園だ。飲食スペースが設けられていないここでは推奨していないらしい。
「すみません、ショコラローズは香りも一緒に楽しんでほしいものでして……」
「あっ……そうなのか、悪ぃ」
タイガはばつが悪そうにバスケットを下すと、軽く頭を下げた。
きょろきょろ、と妖精はあたりを見回す。そして、少し考えて悪戯っぽく笑い……。
「……今は、他のお客様がいらっしゃらないので軽食くらいなら。こっそり。ですよ」
こそっと耳打ちした。
「それでは、失礼しますね~」
妖精はふわりと笑って何処かへ行ってしまった。
遠くで、他の従業員の妖精が話す声が聞こえる。
『……で、……本の……うふふ』
薔薇の本数の意味を確認しあってキャッキャしているらしい。
「トイレいってくる!」
タイガは急に座っていたベンチから立ち上がり、宣言する。
「いってらっしゃい。散策してベンチでまってるよ」
セラフィムは少しそこらを歩いてまたこのベンチに戻るつもりらしい。タイガは頷いてショコラローズ園の受付に向かって走っていった。
(9本、で……)
摘んだ薔薇を、カウンターの妖精に手渡す。
「綺麗に頼む!好きな奴に渡すんだ」
ホワイトチョコのショコラローズ。選んだのは、青を基調とした包装紙。妖精はにっこりと笑った。
「良い色合いですね、きっと喜んでいただけますよ!」
手際よく仕上げられた花束はすぐにタイガに渡される。タイガはセラフィムの待つベンチに一目散に駆け出した。
息せき切ってたどり着いた大切な神人のもと。後ろ手に隠した花束にセラフィムは気付かず、首を傾げる。
「どうしたの?そんなに急いで……」
パッと、目の前にホワイトローズの花束が差し出された。
「いつも一緒にいよう!」
「あ……」
(何言って――タイガ……)
いきなりの、一緒にいたいと言うストレートな言葉。
「本数での花言葉な。よかったら受け取ってくれ。白い花とセラにあうと思った」
素直に受け取り、花弁の一枚をそっと口へ運ぶ。……甘い。
セラフィムも、花言葉の意味は妖精から聞いて知っていた。なら、彼に返す気持ちは……このまま四本食べて五本を渡そうか、とも思ったけれど一気にその量は食べられない。そっと立ち上がり、周囲の薔薇を摘んで手渡した。
「5本で……」
意味は、知ってるよね、とそっと告げる。
『あなたに会えて、心から嬉しい』
「僕からの気持ち。……それと」
彼が取り出したのは赤いリボンの箱。中身は、抹茶チョコレートケーキ。けれど、軽食と呼ぶには重たいそれをここで広げることは出来ない。
「本命?」
タイガのほんの少しの期待の言葉にセラフィムはゆるりと首を横に振る。
「本命でも義理でもない……バレンタインまでに返事できなくてごめん」
一歩が踏み出せない。けれど、伝えたい気持ちがある。
「でも、今の気持ちを伝えたくて。タイガと出会えてよかった。いてくれたおかげで今がある……「生きよう」と思った今が」
(病床で励ましたアレか)
ピンときたタイガが腑に落ちたように頷く。
(……抑えきれなくなってもしんねーぞ)
嬉しいけれど、煮え切らない神人。けれど。
「じゃあ俺も幸運だ。今のセラがみれるなら」
ただ、共に在れることに感謝して。
「僕を見てくれて、ありがとう。僕も、一緒にいたい」
それは、告白への返事ではないけれど。とても穏やかに微笑むから。
二人の時間を分かち合っていきたいと、確かに、思えたから。
少しわがままな精霊だけれど……。
(我侭なのは僕もだ)
互いのことが、また少しわかった気がして。
「凄いな。これ全部チョコなのか」
アキ・セイジは初めて見る未知の植物に心を躍らせながらショコラローズの花弁にそっと触れた。チョコレートなのに、ふわり、しっとりとやわらかい。
「なあ、ランス。これ、植物なんだよな?なのに、チョコ?」
ヴェルトール・ランスは珍しく無邪気な様子の神人を微笑ましく思いながら答える。
「ああ、この地域にしか咲かない珍しいものらしいぜ」
茎の部分はビターだとか、いろいろ説明すればセイジは楽しそうにきょろきょろとあたりを見回す。
「ランスは意外な所で物知りだよな。あ、あの辺、桃色じゃないか?」
好奇心の赴くまま桃色の一帯へ走り出すセイジに、ランスはにっこりしてしまう。
「赤は薔薇味か苺味かな?」
そっと棘に注意しながら採取し、花弁を舌に乗せる。
「!苺だ……!」
目をキラキラさせてランスを振り返るものだから、なんだかかわいらしく見えてぷっと吹き出す。
「笑ってない笑ってないぜ」
ジト目で見られたランスが笑いながら返す。セイジは照れながらも切り返した。
「ならランスも食べろよ、にやにや見るの無しっ」
恥ずかしくて、手に持っていた採取用のかごをギュッとランスに押し付ける。
(どの薔薇よりも生き生きした花のようなセイジ。……ッ)
ランスはうっかり言いかけて、どこのポエマーだと脳内で身悶えのた打ち回った。
(恥ずかしいっ!言わなくてよかった!うっかり出てこなくて!よかった!)
顔が赤いのに気付かれないよう、ランスは薔薇を摘むセイジをそっと後ろから抱きしめた。
「なんだよ、急に」
「あははー、ん。なんでもない。あ、それ綺麗だな?」
「俺はビターが好きかな。ランスは甘いの好きだよな」
セイジは次々薔薇を摘んでいく。
「俺はホワイトやミルクが好きだな。濃いーのが良いな」
セイジの肩越しに笑うと、セイジはリクエスト通りホワイト、ミルクの薔薇も摘む。
「じゃあ1/3ずつ、あ、桃色も入れて1/4ずつで」
各25本ずつ、計100本のショコラローズを摘み終え、カウンターで花束をこしらえてもらうと、二人はカフェの方に入った。席に着き、先ほどまで薔薇を摘んでいた庭を見やる。
「おまたせしました」
セイジが頼んだコーヒーを運んできた妖精が微笑みかけた。コーヒーに花弁を浮かべると、妖精はその花束を見て目をぱちくりさせる。
「うわぁ、たくさん摘んだんですねぇ、何本あるんですか?」
「100本だぜ」
ランスがニッと笑うと、妖精も素敵!とテンションが上がる。
両手に抱えた薔薇の中でも、一際大輪の薔薇がランスを振り仰ぐ。
(ほんとは今すぐここで「頂きます」って食べてしまいたいけど……)
家に帰って飾るのだ。辛抱辛抱。
セイジが妖精から本数の意味を聞き、ふと真顔で疑問を口にする。
「2人で取った場合は、本数はどういう換算になるんだ?」
100%の愛。果たして。
「2人でなら2倍じゃないかな。同じ花を贈り合っちゃいかんルールはないし」
ランスがへへ、と笑いながら答える。
同じ心だよ、という意味になる、分かち合いの意味もあるんですよ、と妖精が伝えると、二人の笑みはより深まった。
「じゃあ、これは俺達から俺達へ、だな。自宅の何処に飾ろうか?」
薔薇を抱えて立ち上がるセイジ。
カフェを出たところで、ふわり、二人を祝福するように蝶が一瞬花束にとまり、飛んで行った。その愛の、枯れることが無いように……。
「凄いねぇ……チョコの花が咲いてるんだって。楽しみだな」
スケッチブックを抱えて嬉しそうにショコラローズ園を訪れたのは栗花落 雨佳。精霊のアルヴァード=ヴィスナーは内心ため息をつきながら、口を開く。
「お前は絵を描く事しか考えてねぇだろ。どうせなら暖かい所行ってやれよ、お前直ぐ体調崩すから」
雨佳は絵のことになるとすべてを忘れて没頭してしまう。今回のショコラローズだって、珍しくてきれいなものだから描きたくて仕方ないに違いない。
「うん、わかった」
アルヴァードに引っ張られるようにカフェに入り、すとん、と席に着く。
「折角だから、ホットチョコレートにしよう」
注文するや否や雨佳はスケッチブックを開き、ガラス張りから見える庭の薔薇を描き始めた。アルヴァードが小さくため息をつく。
(……そうなるとお前は、俺が居なくなっても気付かないんだろうな)
そうして、彼は立ち上がり、薔薇園の方へ向かった。雨佳はスケッチに夢中で彼が居なくなったことなんて気付いてもいない。ちょっとムッとしながら薔薇を眺めていると妖精の声が聞こえた。……件の、薔薇の本数の意味についてだ。
なるほど、薔薇を摘んで、包んでもらえるのかとわかったアルヴァードはビターローズを19本摘んで綺麗に包んでもらった。席に戻っても、雨佳は気付かないまま。なんだかイライラして、ほんの少し乱暴に花束をテーブルに置く。ぱさ、と音を立てたそれに、ようやく気付いた雨佳が顔を上げた。
「……びっくりした……僕にくれるの?」
アルヴァードは静かに一度だけ頷く。
「おう」
「ありがとう」
そっと目をやれば、その本数は。
「……19本?そういえば薔薇の本数には意味があるんだっけ?」
雨佳が小首をかしげる。
「……さぁな、意味なんてしらねぇよ」
教えてくれないアルヴァードに肩を竦める雨佳。それなら、自分で調べるまで。
「ちょっと、トイレに行ってくるね」
すっと立ち上がり、彼は席を離れる。
入れ替わりに席に着くと、アルヴァードは顔を覆って深いため息をついた。
……こんな言い方したいわけじゃない。でも、いつまで耐えればいいのだろうか。
(……態度に出てりゃ耐えてるとは言わねぇな……)
一方雨佳は、トイレに行くふりをしてカウンターのところにあった本数の意味が書いてあるノートをぱらぱらとめくる。
「……忍耐と……期待……」
今まで、アルヴァードが言えなかったこと。自分に、何か遠慮しているのか。
雨佳は急いで庭にでて、ミルクローズで8本の花束を作った。
「アル」
どこか上の空なアルヴァードに背後から優しく声をかける。振り返れば、雨佳が花束を持って佇んでいた。
「……これは君に」
そっと差し出された花束に、アルヴァードは目をぱちくりさせる。
「僕は君に感謝してもし足りないよ。僕はあまり察しが良くないから……君が我慢している事を言って欲しいな」
8本の薔薇は、『思いやりや励ましに感謝しています』そう、普段からのアルヴァードの細やかな心遣いに。
「……おま、雨佳……」
今は言えなくても、少しずつ。きっと、いつか。
カフェのテーブルに着いた明智珠樹は薄く微笑み、精霊の千亞を見つめる。
「チョコ好きの千亞さん、薔薇好きの私。なんと素敵な幸せ空間でしょう、ふふ……!」
「そうだな。確かにお互いの好きなものだな」
大好きなチョコケーキを幸せそうにもぐもぐ食べながら、千亞は耳をひょこ、と動かした。温かい紅茶で甘いチョコケーキを流せば、珠樹は自分が飲んでいるココアも分けてあげようと差し出す。いいの?と目を輝かせながら千亞はココアを一口啜った。あたたかくて、美味しい。嬉しくて頬が緩む。
「……そういえば、なんで珠樹は薔薇が好きなんだ?」
ふと浮かんだ疑問を投げかける。
「私、気づいたら薔薇園で倒れてたんですよね。それ以前の記憶は全ッ然ないのですが。なので薔薇はなんだか愛着が……」
ほんの少し憂いを帯びた表情でいとおしげに窓の外を見つめる珠樹。もう一口、珠樹のココアを飲んで千亞は目を細め。
「ん……美味しい……!って、え!?記憶ない、って……本当だったのか?」
珠樹の言った言葉を反芻して目を丸くする。
「おや、信じてなかったんですか?残念です、ふふ」
彼の言葉は、正直どこまで本当なのかわからない。うさんくささ爆発だと千亞は思っていたのだろう。
「だっておまえ、いつも適当言うし……何か手掛かりを一緒に探……」
大好きなケーキを少し残したまま、薔薇園に行こうと千亞が立ち上がる。それを、珠樹の手が制止した。
「私に過去は必要ありません。私に必要なのは、千亞さんと居る今です」
そっと微笑みかける。ああ、いつもこうしていれば、本当に本当に麗しいのに。千亞はぼんやりとそんなことを思った。ふわっとチョコレートの香りが広がる。目の前に差し出されたのは、ミルク、ビター、抹茶、苺、ホワイト、オレンジ……さまざまなフレーバーを色とりどりにそろえた11本のショコラローズだった。薄桃色の包装紙に、千亞の髪に似た色のリボン。かわいらしいその花束に目を見張る。そして。
「え、あ……ありがとう……」
その本数の意味を分かっていて、そして、珠樹の言葉と相まって、いつになく胸が高鳴る。――過去は、要らないだなんて。寂しいような、嬉しいような、切ないような不思議な感覚が走る。そして、何より自分といる今を愛おしく思っているという告白。
……11本、『最愛』……。
その意味には、気付かないふりをして。
ケーキを食べ終え、二人で外の薔薇園に赴く。ひらひらとショコフライが飛び、咲き乱れた薔薇がチョコレートの甘い香りを放っている。美しくて、甘い空間。それは、珠樹の記憶を呼び戻したりはしないのだろうか。そんなことを思いながら、千亞は丁度近くに咲いていた薄桃色の、苺味のショコラローズを一輪手折った。
薔薇を見ながらいつものように「ふふふ」と笑っている珠樹の服の裾をくいくいと軽く引っ張る。
「どうしました、千亞さ……」
ずい、と珠樹の目の前に一輪のショコラローズが差し出される。
「……珠樹、やる」
「私にもですか?」
そっと受け取って、珠樹は痛いほどに幸せそうに笑う。
「……嬉しいです」
「べ、別に特別な意味とか、ないからなっ」
慌てて火照る頬を誤魔化しながら、千亞は弁明する。
一輪の薔薇。その意味は……。
――あなただけ。
でも、決して心の内を読まれない様に。明かさない様に。
とっくに、伝わってしまっているのにも気づかず。
「あと……何かあったら、少しは頼れ」
ふい、と視線を逸らしながら、千亞は小さな声でそう告げた。
一人で抱え込むな、と。
一人に、なるな、と。
***
「みんな楽しんでもらえたみたいですねぇ~」
妖精のスタッフがショコラローズにミルクで水やりしながら笑った。
「うんうん、本数の意味を知っている人が多くて、びっくりしちゃった!」
「みんな、想いが伝わっているといいね」
「ね」
ショコラローズは、ただ天を仰いで微笑むように咲いているだけ。
今日も誰かの幸せを祈りながら。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 寿ゆかり |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 02月12日 |
出発日 | 02月17日 00:00 |
予定納品日 | 02月27日 |
参加者
会議室
-
2015/02/16-23:59
-
2015/02/16-23:57
-
2015/02/16-23:32
(プランの文字数に入らなかったので、とりあえずここで脱ぎだしつつ)
ああっ、アキさんとセラフィムさんの熱い眼差しが注がれッッ…!!
千亞「やめいド変態」(跳び蹴り) -
2015/02/16-23:27
ぎりでバレンタイン)よかった。いや、別に何もしないからね!(赤面)
暫定では書いた。これから最終調整
(・・・明智のことだから本気でやるのかな)
踊り食いも楽しみにしてよう
へえ、薔薇ジャムか。食べたことないんだよね。1枚いただくよ -
2015/02/16-22:55
チョコを踊り食いのように沢山食べるのか、
服を剥ぎ取られて踊っているように食われるのか、
どっちだ?(真顔
俺もプランは出せたよ。うまくいっているといいな。
じゃいつもの如く、一息つこうか。(皿にクラッカーと薔薇ジャムを乗せて差し出す
ダイス3+A+B=クラッカーの枚数
【ダイスA(6面):1】【ダイスB(6面):4】 -
2015/02/16-22:34
-
2015/02/16-22:34
ふ、ふふ…!ひとまずプラン提出完了です。
綺麗なショコラローズに癒されつつ、千亞さんとまったりチョコ踊り喰いしてるかと思われます、ふふ…!!
皆様のまったりしっとりとろぉりチョコレートタイム、楽しみにしております…!!
イェス、ヴァレンタイン! -
2015/02/15-22:29
オールスタンプというのも楽しいけれど・・・!(苦笑)
まあ、うん。セラフィムとタイガだよ。よろしく頼むね
タイガに誘われてきたし・・・ゆっくりした時間をすごせたらなと思うよ
・・・・・・・ぎりぎりバレンタインだよね・・・? -
2015/02/15-10:37
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2015/02/15-10:07
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2015/02/15-00:57
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2015/02/15-00:28
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2015/02/15-00:17