プロローグ
少女ロゼッタは悩んでいた。彼女の手元には真っ白な紙とインクをたっぷり含んだだけのペン。
ペン先は紙の上をうろうろとしてはペン立てに戻されるのを繰り返すばかり。
やがて少女の口から大きなため息が零れた。心底困ったというよりは、切羽詰まったような表情。
このままではいけない。このままでは……。
「新刊落ちる……」
ぽそりと呟いた可能性にぶるりと体を震わせて、少女は立ち上がった。
そうして、一目散にある場所へと駆けて行ったのであった。
A.R.O.A.の男性職員は動揺していた。
物凄い剣幕で駆けつけてきた少女が、受付で唐突に土下座をしたからだ。
流れるような軽やかな動きで滑りこんできた少女の行動に、一瞬何が起こったのか判らなかった。
「お願いがあるんです……!」
そんな声に、思考回路がようやく働き出した男性職員は、まぁ落ち着き給えと少女を宥めて、応接室へと案内した。
「えーと、どんなご用件でしょうか」
順を追って説明して貰おう。努めて穏やかに話を促した男性職員に、少女は机に身を乗り出して語りだした。
「あの、私実は『とある少女』ってサークルで活動しているんですけど、夏頃からリアルウィンクルムに萌え殺されそうになって勢い余ってオリジナルウィンクルムのシリーズ本を出したら思いのほか反響があって、今度冬の大型イベントで壁配置されちゃったんです。ずっとグッズとかばっかりだった弱小サークルがいきなり壁とか世の中おかしいけどウィンクルムの皆さんのおかげだと思うんです本当にご馳走様じゃなかった有り難うございます」
「すみません何言ってるのかちょっと判んないんですが」
努めて穏やかに、男性職員が早々に音を上げたところで、ばんっ! と勢いよく応接室の扉が開かれる。
現れたのはモデルスタイルの女性職員だった。
「話は聞かせて貰ったわ。その依頼、私が担当しましょう」
「えっ、これ依頼の話なんですか?」
「もうあんたはさっさと持ち場に戻んなさい」
そんな茶番を挟みまして。
「あの、それで……」
続きを語ろうとした少女を、すっ、と手のひらで制し、女性職員は一枚のチラシを差し出した。
ミラクル・トラベル・カンパニーによる、ホワイト・ヒルの街でのクリスマスイベントの広告だった。
「こ、これは……洋館に潜伏したオーガをウィンクルムとして愛の力で討伐する設定の、ペア参加限定脱出ゲーム……!」
の、クリスマスホームパーティバージョンらしい。
「ここに、うちのウィンクルムを派遣します」
「えっ」
「それに、あなたには記録班として同行して頂きます」
「えっ。それってつまり……」
興奮する少女に、微笑む女性職員。
その微笑に、少女は何かに気付いたように息を呑む。
「あっ……よく見たら貴女は某アニメの主人公で有名な男装神レイヤーさま……!」
「ふふ、大げさなものじゃないわ。でもありがとう。新刊、楽しみにしてるわ」
とりあえず、この二人の間で何かの利害が一致したようだ。
ミラクル・トラベル・カンパニー主催脱出ゲーム、『愛の力でオーガを討伐せよ!』の概要。
設定:貴方は契約を交わしたウィンクルム。オーガ討伐の依頼を受け、訪れた洋館ではクリスマスパーティの真っ最中。
洋館にちりばめられた謎を解き、オーガを倒してパーティを成功させて下さい!
エントランスよりスタートし、二か所で謎を解き、オーガを倒す為のアイテムを手に入れます。
一つはオーガの潜伏する扉を開く鍵。
もう一つは、オーガに対抗するための武器(カラーボール)です。
オーガ討伐直前には勿論、トランスを行います。
二人だけのインスパイアスペルを唱え、頬に口付けをしたペアはトランスオーラ(をイメージしたてかてか光る羽織)を纏って決戦に挑みます。
~鍵の謎~
広間にはパーティを楽しむ、仮面をつけた五つの影。
ピエロ、ウサギ、天使、トナカイ、ディアボロはウィンクルムを見つけると口々に言います。
ピエロ「天使はとっても素直な良い奴だよ」
ウサギ「トナカイは天邪鬼が過ぎる」
天使「ディアボロはとても誠実な人です」
トナカイ「人間はうそつきばっかりだ!」
ディアボロ「ピエロは正直者で有名なんだ」
そんな彼らが口をそろえて言うことは、
「オーガの部屋の鍵なら私が持っているよ!」
正しい事を言っているのは一人だけ。
真実の鍵は、誰が持っているのでしょう?
~その手に武器を~
広間の奥の貴賓室では、暗がりの中で啜り泣く声が聞こえてくる。
泣いているのは仮面をつけた、赤いドレスの貴婦人。
彼女は泣きながら繰り返します。
どうしましょう、どうしましょう。騙されてしまったわ。
彼の人へ収める大切な金貨に、偽物が混ざっているなんて。
あぁ、でも、どれが偽物かなんて、見ただけじゃ判らないわ!
金貨の違いは一グラム。たった一グラム軽いだけだなんて。
貴婦人の前には、金貨が詰まった、十個の麻袋。
そして一つの天秤。
麻袋の中の金貨の枚数はそれぞれ違うようだが、入っている金貨の種類は同じ。
つまり、十個の中の一つだけ、偽物の金貨が詰まった麻袋と言うことだ。
誰か、誰か偽物の金貨を見つけ出してちょうだい!
でも、時間がないの。一番早い手段で見つけてちょうだい!
天秤は何度使っても良いようだが、最少回数でなければ貴婦人の涙は止まらない。
貴婦人の窮地を救い、オーガを倒す武器を手に入れよう!
~決戦~
真実の鍵を使って扉を開けば、そこにはオーガの姿が。
手に入れた武器を、渾身の力を籠めてオーガへ叩きこめ!
解説
ゲームの概要は概ねプロローグ通りです
以下、補足事項を
●参加について
費用はお一人様200jr
ペア参加が基本ですが、複数ペアで協力して頂いても構いません。
また、受付で登録を行うので、契約者と違う相手をゲームパートナーとして選んでいただいても構いません
ただしその場合、本来のパートナーを意識するようなプランが無い場合は親密度が一切上昇しないケースもあり得ますのでご注意ください
●謎解きについて
ガチで挑んで頂いて構いません。
そのため、会議室内での解答の提示は禁止させて頂きます
解答の際は「○○・△回」という感じで、鍵所持者、最少回数をプラン内に記載ください。
リザルトで答えを出すので、アクションプランでも大丈夫です
また、やり直しは何度でも可能なので、謎解きは脱出がスムーズに行くか否かくらいの演出扱いです。
脱出できないパターンを希望される方はウィッシュプランの方に「脱出失敗」と記載頂ければ反映します
PLは解けなかったけどPCは解けてるんだ!というプランも可能とします
ただしステータスや一般スキルのレベルを加味し、とても時間がかかる等の判定になる場合もあり得ますのでご了承ください
謎解きの成果に関しては自由設定は一切反映しません
逆にPLは解けてるけどPCは解けないというプランもOKです
直観力が一定水準以上であれば、判んなかったけど脱出できた!と言うパターンもあり得ます
●トランスについて
一般の方も参加できる仕様としてのウィンクルム設定ですので、
トランス時のインスパイアスペルも本来の物ではなくお遊びで考えて頂いて構いません
実際にトランスしても問題ありませんが、「唱えて頬にキスする」を満たせば、ゲームとしてはOKです
●他
女性職員とロゼッタが記録班として同行しているようですが、彼女たちは黒子なので絡まないでください
ゲームマスターより
このシナリオは白羽瀬GM主催のクリスマス連動エピソード【聖夜】のシナリオとなっております。
決して年末イベント関連のシナリオではありません。クリスマス楽しんでください。
謎解きメインじゃなく、イベントを楽しむ事がメインです。
が、謎解きも楽しみたい方も居るかと思いますので、マナーとして見えるところでの解答提示はご遠慮いただければ幸いです
なお、記録班には錘里も含まれております。
きっと何名かのPLさまも一緒だって、信じてる。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
スウィン(イルド)
へ~、普通の人がウィンクルムを体験できる 脱出ゲームなんてあるのね どんなのかしら(わくわく) まず鍵の謎ね まあまあ、こういうのはおっさんに任せなさ~い♪ …ウサギが正直者ね ウサギさん、鍵をくれるかしら? 次の謎 まあまあ、イルド え~と、二回だと運がよくないと無理、よね? 三回が正解かしら? この先にオーガがいるなら、ここでトランスね (本当にトランスする必要はないなら キスは寸止めでいいんじゃ… って乙女か!(自己突っ込み) それじゃ逆に意識してるみたいじゃない!) …トランスするわよ。いいから!(照) さ、さあ行きましょ 出たわねオーガ!いくわよ、せ~の! (カラーボールを思いっきり投げる) 正義は勝つ、ってね♪ |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
ラキアと2人で楽しむ。 これウィンクルムの広報みたいなものだろ。 他の人が「もしや本物?」と思う演出してみようぜ。 オレ達は某テーマパークのキャストと同じ! 周りのお客さんを楽しませる気持ちでイベント参加。 なのでメイン行動はオーガの部屋だ。 パーティに合わせてスーツ着ていく。 解答「ウサギ・3回」理由?勘だ! オーガの部屋の前で本当にトランスするぜ。 「滅せよ」でラキアの額にキス。 「聖なる者の祝福と加護が共にあれ」と続ける。(演出!) オーガの部屋では1回敵攻撃を受け、怪我した振りでラキアの魔法に癒される。 「お前のおかげだ」とラキアを見つめ 「聖なる珠に浄化されろ」とスポーツレベル5でポールを敵にぶつけるぜ。 |
アレクサンドル・リシャール(クレメンス・ヴァイス)
頭使うの苦手だけど楽しそうだな 洋館でクリスマスパーティって事はタキシードとか! ……うん。持ってないです せめてスーツ着て行こう クレミーはやっぱり似合うなあ 注意書きを見て 他の人とも組めるのかと呟き、光速で却下され笑う クレミーは嫌な事は主張するけど逆は全く言わないよな 俺はクレミーと組みたいよ そうだ、ごっこ遊びだし、精霊と神人逆をやらないか? 洋館の中を珍しそうにきょろきょろ見物 謎は全部精霊任せで 正解したらキラキラした瞳で見つめる オーガ部屋の前でカラーボールを手に 楽しそうに振り返りトランスを呼びかけ 固まる精霊に『頬キス』に気が付く あー、無理だよな 大丈夫、嫌な訳じゃないのは判ってるから いつも通り俺がするよ |
俊・ブルックス(ネカット・グラキエス)
脱出ゲームにつられて参加したらパーティーだった ドレスコードさえ守ってたら大丈夫かな… トナカイ・一回 鍵の方 まずピエロ・天使・ディアボロはどれが本物でも必ず矛盾が出るから除外 トナカイの「人間」がちょっと曖昧だが この中で確実に人間と言えるのはピエロか? ピエロは嘘つきで確定 それでウサギが嘘つきなら「トナカイは天邪鬼」の証言は反対、つまり正直ということになる 武器の方 量るのは天秤じゃなきゃダメか? 各袋に番号をつけてその枚数だけ取り出して重さを量れば一回で済むんだが… …真似事って、普通にトランスするより恥ずかしいんだが いや、普通のトランスはやった方が強いじゃん、だからいいんだよ はいはい『メリークリスマス!』 |
暁 千尋(ジルヴェール・シフォン)
アドリブ大歓迎 オーガ退治と聞いてきてみれば、なんですかコレ… …?まぁせっかくですから参加してみましょうか 【ウサギ・3回】 こういうクイズは論理的に考えれば解けるものですが それにしても女性を泣かせるとは最低ですね トランスまでしなきゃいけないんですか!? うっ・・・そういうルールならば仕方ないです、早々に終わらせましょう ・・・知りませんでした される方も恥ずかしいものなのですね……こっち見ないでください ゲームだろうとオーガ相手に容赦はしません 早々に滅してください(ほぼ八つ当たり) ・・・本当に今更ですね ですが、先生は一つ勘違いをされているようです 僕は嫌いな人と一緒にいられるほど心の広い人間ではありませんよ |
こんにちわ。今回ウィンクルムさんの活動の記録班として憧れの神レイヤー……もとい、A.R.O.A.の女性職員さんに同行させて頂いてるロゼッタです。
ウィンクルムの皆さんの萌え……じゃない、絆の深め方を学ぶいい機会だと思っています。
皆さん既に脱出ゲームに参加してらっしゃるようですので、こっそり、こっそり、様子を見に行きたいと思います!
●メモを片手に少女は滾る
スーツ萌え。
何でもありません。皆さんクリスマスパーティ仕様で、貸衣装に着替えてますね。お洒落なスーツやタキシード、素敵に着こなしてます!
えぇと、資料をお預かりしておりますので皆さんのお名前はこれで把握できますねっ!
「謎解きはシュンに全面的にお任せします」
「それでいいのか魔法使い」
「魔法使いがみんな頭がいいと思ったら大間違いですよ。その代りパーティでの挨拶等は任せて下さい」
俊・ブルックスさんと、ネカット・グラキエスさんですね。ネカットさんは何だか場馴れしているようですね……パートナーを優雅にエスコート……あ、ほら、手を、手を引いてもいいのよ!
「ほら、ネクタイ曲がってはるよ」
はっ!!! こ、これは、スーツとネクタイに欠かせない世話焼き女房スタイル……!
アレクサンドル・リシャールさん、ご馳走様です。
クレメンス・ヴァイスさん、その照れ顔、本当にありがとうございます。その調子でお願いします。
「ふーん、ウィンクルムごっこなだけあって、他の人とも組め……」
「他の人と組む? 却下や。あたし以外と組んでるとこや、見とうない」
はぅ。これは、これは嫉妬ですか? クレメンスさん、拗ね顔も可愛いです。アレクサンドルさんの笑顔が眩しい……!
「クレミーは嫌な事は主張するけど逆は全く言わないよな。俺はクレミーと組みたいよ。そうだ、ごっこ遊びだし、精霊と神人逆をやらないか?」
「へ? 逆……って……うん、まぁ、ええよ」
なるほど、神人と精霊、逆の立場になってみると言うのもありなんですね。入れ替わり……ふむ、美味しい。
おっと、すでに謎に挑んでいる方もいらっしゃいますね、先を急ぎましょう!
パーティ会場は仮面の方々以外にも沢山の人が居ます。んん? なんだか兎さんの所に人が集まってる感じですね。
あ。暁 千尋さんとジルヴェール・シフォンさんを発見しました。何だか千尋さんは戸惑ってらっしゃるようですが、ジルヴェールさんは楽しそうです。
「オーガ退治と聞いてきてみれば、なんですかコレ……」
「クリスマスなんだから、こういうのもアリでしょう。それに……一応人助けにはなるみたいだし」
「……? まぁせっかくですから参加してみましょうか」
あれ? いま、ジルヴェールさんと一瞬目が合ったような気がしました。わ、私は黒子なのでこっそりしてます、こっそり!
身を乗り出したい気持ちで一杯ですが、こっそり!
「セイリュー、こういうのはもっと順序立てて考えないと……」
「んん……そう言われてもなかなか……」
カメラをください。
セイリュー・グラシアさんにラキア・ジェイドバインさん、額を寄せ合って相談とか美味しすぎます。何話してるのかちょっと聞こえないですけど、美味しいので万事オッケーです。
……? やっぱり何だか少し視線を感じる気がしますが、気のせいですよね?
あ、スウィンさんとイルドさんも発見しました。いつもお世話になっております。やっとお名前を把握できました。
と……スウィンさんが難しい顔してますね。もしかして謎が解けていないんでしょうか。
「んー? うーん、ピエロと天使とディアボロが言ってる事は矛盾するし……」
「……本当の事言うように一人ずつ脅していけば……」
「まぁまぁイルド、ほら、おっさんに任せておきなさいって!」
イルドさんが物騒な事仰ってる気がしましたが、きっと気のせいでしょう、気のせい。スウィンさんが居れば大丈夫!
ところでどうやら答えは兎さんではないようですね。私もちょっと挑戦してみましょう。
(三分後)
(五分後)
見事に分かりませんでした!
兎さんが何だか楽しそうに「僕じゃないよ!」って言ってるのが憎らしく見えてしまいます。
ど、どなたか謎を解かれた方は……あ、あれ、アレクサンドルさん達が居ませんね。はっ。もしや既に謎を解かれた!?
先に続かねばなりません! 記録班は謎解き免除で良いですか!?
「まずピエロ・天使・ディアボロはどれが本物でも必ず矛盾が出るから除外な」
「ふむふむ」
「トナカイの「人間」がちょっと曖昧だが……この中で確実に人間と言えるのはピエロか? となると、やっぱりピエロは嘘つきで確定で、トナカイが正直な線が濃厚になる」
「なるほどなるほど」
「それでウサギが嘘つきなら「トナカイは天邪鬼」の証言は反対、つまり正直ということになって、他の奴との矛盾も無くなる。これでどうだ!」
「はいどうぞ、オーガが居るから気を付けてね!」
「おおー」
俊さん凄いです! パーフェクトです! 思わずネカットさんと一緒に拍手してしまいました。
「すごいですシュン、惚れ直しました」
「良し、次に行くぞ」
あ、俊さん、今ネカットさん凄く良い事言いましたよ。ねぇ、凄く良い事言いましたよ!
楽しそうでそれどころじゃないようですね。あぁ、でも微笑ましいお顔で見つめるネカットさんも素敵です。ご機嫌ようとか優雅すぎて素敵です。俊さん、惚れていいんですよ。
涎垂らしてる場合じゃありませんね、分身して各班にくっつきたい気持ちも湧きますが私は先頭チームに追いつきます!
●その手に武器を
さて追いつきましたところで俊さんネカットさんペアが悩んでいらっしゃるようですね。
ふむふむ、どうやら天秤を使うことに戸惑っているようです。
「各袋に番号をつけてその枚数だけ取り出して重さを量れば一回で済むんだが……」
「金貨のそもそもの重さが判りませんからねぇ」
なるほど、天秤しかありませんから、俊さんの手段はちょっと使えなさそうですね。
ところでアレクサンドルさん達はもう先に行って……? う、大変です、あの人たち頭いいです。いや、解いてるのはクレメンスサンっぽかったから、クレメンスさんが頭いいのか!
わ、私も早く謎を解いて追いつかないと……!
「ふー、やっと追いついたわ~。えーと、次は天秤の謎?」
「何で最少回数じゃねーといけないんだ? 一袋ずつ調べてもそんなに時間変わんねーだろ」
後続の方が追い付いていらっしゃいました。ある意味棚ボタかもしれません。
イルドさんは謎解きが苦手なんでしょうか。でもなんだか、いつも頼もしい精霊さんが神人さんに頼る感じなのは、見ている身としては美味しいです!
とか何とか言ってるうちに、セイリューさん達も千尋さん達も追いついてきましたね。
皆さん兎さんで引っかかってただけなので、兎じゃないって判ったら早かったんでしょうか。
「こういうクイズは論理的に考えれば解けるものですが……それにしても女性を泣かせるとは最低ですね」
「そこはゲームだからつっこんじゃいけないと思うわ。それにしても、脱出ゲームって初めてだけれど、こんな風になってるのね。ふふ、わくわくするわぁ」
「……先生が楽しそうなら、何よりです」
先生呼びたまらん。
真面目な生徒と気さくな先生。憧れの貴方に少しでも近づけるように以下略パターンでしょうか先生呼びたまらん。(大事なので二回言いました)
「ね、千尋ちゃん、これはどう言う感じで考えてけばいいのかしら」
「そうですね、やっぱり順番に乗せてみれば……先生、近いです」
いいぞもっとやれ。
ではなくて。ここは皆さんサクサク進んでらっしゃいますね。
「3回だな!」
「え、なんで?」
「うん? 勘だ!」
「だからもうちょっと順序立てて考えないと……って、正解なの?」
阿呆の子可愛い。
でもなくて。ああんセイリューさんの笑顔が眩しいです。でもなんで3回なんでしょうか。
「えーと、まずこうして五個ずつで1回目だろ……」
「軽い方を二個ずつ計って2回目、ですね」
「これで釣りあったら残りの袋が答えになるけど……運に左右されるから、正しい答えは3回ね!」
な、なるほどー!
ていうかどの組も神人さんが謎解きすっごく頑張ってるんですが……は。そうでした、精霊さん達の見せ場は次でしたね。
次です。次。トランスです。トランス行きましょう!!
●誓いの口付け
「あー、無理だよな。大丈夫、嫌な訳じゃないのは判ってるから。いつも通り俺がするよ」
頬への口付けを、ねだったのは一度。
硬直したクレメンスに苦笑したアレクサンドルが伸ばした手を掴んで、人の気配の途絶えた物陰へ連れ込んだのは、反射的。
「希うなら引かんといて」
意外そうに瞳を丸くしたアレクサンドルに、頬に朱を差し切実な瞳を向けたクレメンスは、そっと頬に手を添え、彼の頬に唇を寄せて――。
……は。お、お邪魔しましたすみません。
お、追いついたらいきなり美味しい場面が展開されてた物ですからつい、つい筆が……!
神人と精霊が逆って事は、そうですね、トランスの時は精霊さんが神人さんにキスするんですよね。
でもあの、アレクサンドルさん、クレメンスさん、凄くいいところで恐縮なのですが、物陰だと、スタッフさんが把握できませんよー?
「クレミーからしてくれるとは思わなかった」
「……嫌や言うたら、もう二度とねだりもせんつもりやろ?」
あ、お邪魔しません。失礼しましたごゆっくり!
妄想が捗りました。本当にありがとうございました。(二回目)
クレメンスさんがとっても照れた様子だったので、やっぱりアレクサンドルさんがひだ……いえ、野暮なことは考えずにおきましょう。
トランスでキスとあって、一般参加の皆さんもきゃっきゃしてますね。精霊さんが何だか生き生きしてるように見えます。
「さあ、オーガ戦ですよ。ここからは私のターンです! 今日のスペルは特別仕様『メリークリスマス!』でお願いしますね」
「真似事って、普通にトランスするより恥ずかしいんだが」
「何故です?」
「いや、普通のトランスはやった方が強いじゃん、だからいいんだよ」
口実って、大事ですよね。(穏やかな笑み)
トランスをする時に躊躇ったり照れたりの葛藤が入るのって、良いですよね。初々しさが感じられるって言うか……。
次は千尋さん達がして下さるようですね! 資料によるとこのお二人はまだ実戦経験少ないご様子で、本当に初々しいですね!
「トランスまでしなきゃいけないんですか!?」
振りでいいんです。して下さい。早く。早く。
「トランスはいつもと逆でワタシがするわ。お遊びだもの。チヒロちゃんはじっとしてるだけでいいから」
「うっ……そういうルールならば仕方ないです、早々に終わらせましょう」
「それじゃ、『メリークリスマス』」
わぁ、千尋さん、真っ赤ー。
でも判ります。ジルヴェールさんのような美人にキスされるのは、照れますよね……!
「……知りませんでした。される方も恥ずかしいものなのですね……」
「あら、ワタシはどちらでも嬉しいわよ」
「それは先生だけでは……こっち見ないでください」
美人の先生に翻弄される生徒さん。大変美味しゅうございました。
おや、スウィンさん達が何だか固まってるように見えますが大丈夫でしょうか。
「この先にオーガがいるなら、ここでトランスね」
「本当にやる必要はないみたいだぞ?」
「(あ、それなら寸止めでも……? って乙女か!)トランスするわよ。いいから!」
「お、おう」
ビデオカメラ持ってこい。
スウィンさん、スウィンさん。意識してない素振りですがお耳赤くなってますよ。
イルドさんも今までの仏頂面どこ行ったんですかねうふふふ!
お二人のオーラは炎のように真っ赤なんですね。おお、一般の皆さんが湧いてます。リアルウィンクルム、さすがに目立ちますね。
何と言いますか、トランスオーラを纏ったウィンクルムさんは、とっても頼もしいですね。
「よし、ここが見せ場だな。ラキア」
「うん」
「『滅せよ』――聖なる者の祝福と加護が共にあれ!」
ふおおおぉ! トランスシーン格好良いいいぃ!
盛り上がってます。すっごく盛り上がってます。私も盛り上がってきました!
「演出演出♪」
「台詞が増えたからびっくりしたよ……それじゃ、行こうか」
いよいよ決戦です! 行きましょう、ギャラリーが出来てます、掻き分けて最前列で観賞しに行きましょう!
●決戦!
五組のウィンクルムが揃いました。
周りの一般客の皆さんはもうすっかりギャラリーモードです。スタッフさんも本物のウィンクルムが居るとあってか、オーガの量増し増しできてますね。
私は最前列確保しました。網膜に焼き付けますよ。皆さんがんばれー!
「よっし、喰らえ!」
アレクサンドルさんの鋭い投擲! あれ、クレメンスさん、クレメンスさんもぜひご一緒に!
「これは、無理……」
あ、賑やかな感じは苦手なご様子でしょうか。でも問題ありません、トランスシーンご馳走様でした。
「ふふっ、私に惚れると凍傷になりますよ!」
ネカットさーん! 決まってます、キメ台詞決まってます! 俊さん、惚れていいんですよ俊さーん!
「ちょっとギャラリー多すぎないか……?」
賑やかしは多い方が良いと思います! そして私はネカ俊をどさくさに紛れて全力で応援致します!
あっ、オーガの攻撃です。動かないと思ってたのに! ウィンクルム仕様に順応しすぎ!
「くっ……!」
「セイリュー!」
おや……? こ、これはウィンクルムさんのスキルでしょうか。なんだかとっても心地よい光に包まれています。
ラキアさんはライフビショップさんでしたね。これが癒しの力というやつですか……!
「お前のおかげで戦えるよ、ラキア」
「セイリュー、頑張って」
わああぁ! サービス精神旺盛過ぎでしょう! 舞台を見ている心地です! 照明さーん、サス当てて!
「盛り上げてくれるわね~。おっさんたちも負けてられないわ。いくわよ、せ~の!」
せ~の! ってすっごく可愛らしいんですがイルドさんの本気加減やばいです。
遊びでも戦いとなると目つきが変わるウィンクルムさんが本当に頼もしいです。
「ゲームだろうとオーガ相手に容赦はしません。早々に滅してください」
あれ、千尋さん、千尋さんのそれは八つ当たりという奴では!?
ジルヴェールさんも楽しそうに笑ってらっしゃいますがカラーボールが意外と似合うのに私はびっくりです。
「聖なる珠に浄化されろ!」
決まったあぁ!! セイリューさんの強烈な一撃が見事にオーガに炸裂しました!
オーガを全滅です! 流石リアルウィンクルム!
「正義は勝つ、ってね♪」
「ま、俺達が負ける訳ねーな」
ハイタッチ。ここでハイタッチとかどうですか! そう言うの私大好きなんですが!
はぁ、はぁ。大変です。物凄い興奮しました。これは、これは私、執筆が捗りそうです!
「その萌えを原稿にぶつけるのよ! 報告書は私に任せなさい!」
神レイヤーさまああぁ! 私、私絶対に、冬の新刊出してみせます!
ウィンクルムの皆さん、本当にありがとうございました!!
●おまけ
「それにしても、謎解き中のシュンは生き生きしてましたね。あの情熱を私にもぶつけてくれてもいいんですよ」
「……え? なに、聞こえなかった。ネカザイルがどうこうって話なら今度な」
「違います。……良いです、なんでもありません」
ちゃっかり正装で俊とダンスを楽しんだネカットが居たりしたのを、残念ながらダッシュで帰ったロゼッタは知らない。
その様が実に絵になっていたことを、後で職員に聞いて悔しさに涙するかもしれない。
そんなこんなでイベントは大盛り上がりの内に終了し、ウィンクルム達はそれぞれに満喫した様子で帰路についた。
ジルヴェールやセイリューたちが密かに彼女に向けてアピールしていたのに、ロゼッタは気付いていたのだろうか。
知れる事ではないが、彼女の脳内はとにかく幸せに満ちていたのを、見送ったジルヴェールは確信していた。
「ふふ、楽しかったわねぇ」
満喫した、と笑うジルヴェールの後に続く千尋は、まだ少し顔が赤い。
それをちらと振り返り、ジルヴェールは苦笑する。
「今更なんだけど、無理に付き合わせてごめんなさいね。なんだかんだいつも付き合ってくれるけど、断っても構わないのよ?」
じ、とそれを見つめ返した千尋は、少しだけ口をへの字に曲げて、ジルヴェールを足早に追い越した。
「チヒロちゃん?」
「……本当に今更ですね。ですが、先生は一つ勘違いをされているようです。僕は嫌いな人と一緒にいられるほど心の広い人間ではありませんよ」
早口で告げて、そのままの歩調で進む千尋の背を、見つめて。
「……ありがとう」
穏やかに、緩やかに。微笑を湛えるジルヴェールであった。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:セイリュー・グラシア 呼び名:セイリュー |
名前:ラキア・ジェイドバイン 呼び名:ラキア |
名前:アレクサンドル・リシャール 呼び名:アレクス |
名前:クレメンス・ヴァイス 呼び名:クレミー |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 錘里 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 12月07日 |
出発日 | 12月14日 00:00 |
予定納品日 | 12月24日 |
参加者
- スウィン(イルド)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- アレクサンドル・リシャール(クレメンス・ヴァイス)
- 俊・ブルックス(ネカット・グラキエス)
- 暁 千尋(ジルヴェール・シフォン)
会議室
-
2014/12/13-00:24
セイリュー・グラシアと精霊ラキアだ。
ウィンクルム以外のパーティ参加者が
全員、記録班だったらどうしよう(笑。
-
2014/12/10-22:13
暁千尋と精霊のジル先生です。宜しくお願い致します。
オーガ退治と言われ連れられて来ましたが、脱出ゲームですか・・・
まぁせっかくですから謎解きも合わせて楽しみたいと思います。 -
2014/12/10-21:57
俊・ブルックスとパートナーのネカだ、今回もよろしくな。
謎解きってことで反射的に参加しちまったがパーティーなんだな、これ…
ま、まあドレスコードさえちゃんとしとけば何とかなるか…? -
2014/12/10-08:59
アレックスと、相方のクレメンスだ。
初めましてが多いな、よろしくな。
えーと、クリスマスパーティに潜入してオーガ退治(設定)なんだよな?
という事は、タキシード着用とかだよな!
そういう服初めてでドキドキするなー。
料理は食べちゃ……ダメなんだろうなあ。
まあ、隅の方で軽くいちゃいちゃしてようかなと思ってる。
(依頼の趣旨が冬の新刊のネタなので) -
2014/12/10-00:35