【聖夜】寒空のサンタクロース(あご マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「さ、寒い……」

 北海=サム=優はがたがたと震えながら身に着けていたボッカマントを脱ぎ捨てた。
裸の上半身、下腹部にはベルの刺繍がされた赤い褌一枚を身に着けた姿は、12月の寒空の下では見ているだけで鳥肌が立つ。


サムがこんな通報されそうな姿で外を出歩いているのにはもちろん理由があった。








「春風、今年のクリスマスプレゼントは何が欲しいんじゃ?」

 A.R.O.A.本部前。
依頼を終え、帰路に着こうとしていた春風を、サム=優が呼び止めた。
せっかくコンビを組んだのだ、相棒には何か贈り物をしたい。
そう考えたサムの何気ない問いかけだったが、春風の答えは実に可愛らしいものだった。

「そうね、サンタさんが見たいわ」

 物ではなかったが、これならばサンタクロースのコスプレでもすれば
十分春風の願いは叶えられるだろうとサム=優が安易に考えたのも束の間
その次に続く春風の言葉はサムの背筋を凍らせた。

「サンタさんがクリスマスデザインの赤い褌一枚で私のところにプレゼントを届けてくれるのが見たいの」


この寒空に。

褌一枚で。

狂気の沙汰か。

考えただけで凍りつきそうな思いがするサム=優だったが、
愛する春風の為と腹を決めた。
しかし一人ではなんとも心許無いため、
A.R.O.A.を通じてイベントごとが好きそうなウィンクルムに声をかけたのだ。



こうして、真冬の褌サンタが誕生した。




頭にはサンタ帽子、腰には赤の褌を巻きつけて
北海=サム=サンタは冷え切った夜の街を駆け抜けた。
愛する春風へのプレゼントを抱えて……



しかしサンタは気づいていなかった。
早寝早起きの春風は、とっくに就寝時間を迎えている事に。

解説

いつもお世話になっている相棒へ、褌サンタのお出ましじゃい!というエピソードです。
褌は赤地固定ですが、模様(刺繍)はご自由に。
サム=優は布の先の方にベルが二つあしらわれている褌にしたようです。

プランに記載してほしい内容
●褌サンタになる方(神人or精霊)
●渡すプレゼント

プレゼントを渡しにいったらすでに眠ってしまう相棒にしょんぼりするもよし、
途中で起きた相棒に寒い目で見られるもよし、
クリスマスの楽しいひと時をどうぞお幸せにお過ごしください……v

ゲームマスターより

白羽瀬GMの連動企画、【聖夜】です!
絶対みんなきれいなエピソードだすよね?と言うわけであえての褌リベンジです。
夏以来ですね、参加者様がおひとりでもいてくださることを願っています。切に。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

高原 晃司(アイン=ストレイフ)

  って会議室でこんな余裕ぶっこいてただろ?
「くっっっっっそさみぃ!!!!!!」

これやばい!!短期決戦をしねぇと俺が風邪って言うかその次元を超えて死ぬ!
体鍛えてるから大丈夫とかそういうレベルを凌駕してた!

さて…赤褌と左右にはクリスマスっぽいリボンをだな…
ってかぶっちゃけ寒すぎて上手く褌巻けてるかもわかんねぇ…

プレゼントは黒いマフラーでもプレゼントしようかと思ってるぜ
かなり遅い深夜に行動開始だ
なるべく音を立てずに…アインの部屋に忍び込むぜ
起きなければいいんだがな…
流石にこんな格好してるの見られたら恥ずかしいしな

…ちょっとばかし見てもらいてぇ気も……
い、いや!恥ずかしくて動揺しそうだから手早く済ませる


アルクトゥルス(ベテルギウス)
  お客様の誘いを断ち切り自宅待機
ビールも食事も用意して持て成し準備万端
何故なら、ベルたんから
「今夜空いてますか
二人きりで会いたいです」
とメールが来てましたので
頑張れ私の理性

いらっしゃいベルたん!
ごめん、暖房強すぎたかな?(本来自宅では裸族)
今切る…ベルたん、その格好は…!?

ああ、恥じらい震える大胸筋が悩ましいよぉ!リースをむしりとって頬擦りしたい…!

落ち着け私
ここでがっついたらベルたんを怯えさせてしまう…!

…ありがとう、ボクの素敵なサンタさん
ベルたんから何かしてくれようとしてくれたその気持ちがとても嬉しいよ

でも、ボクらはとっくに友達だから
これからもっともーっと深い関係になりたいな



シグマ(オルガ)
  ☆褌サンタ役

・散々世話になってるので、お返しと仕返しを合わせて
俺は蹴られるだけの男じゃないよー?
寒空が何さ、褌一丁で嫌がらせの如くオルちんに届けてやんよぉ!
ひぃいさんむぅう!!…マフラー巻いちゃダメ?

・予想外の展開
へ!?ぎゃあ!!
ちょっと!何でバレてるのさ!?い、痛い痛い!!
ぐぅ…俺の考えなんてバレバレなのかよーちぇ。
折角良い機会だと思ったのにー!
(仕返しの良い機会と言う認識だが、皆までは言わない)

・とりあえず世話になっていると言う意味で、プレゼントを渡す
一応プレゼント用意してるんだから受け取ってよね。
いつも飲んでるなーと思ってさ。
って、え?そうなのー!?うう、ごめんーっ!知らなかったんだよ!



明智珠樹(千亞)
  褌サンタ、明智珠樹です。
サムさんはじめ、皆様濃い…!
よろしくお願いいたします、ふふ。

千亞さんが悦…喜んでくださる顔を考えたら、寒さなんてなんのその、ふふ!
(越中褌着用。ラメ満載で無駄に光り輝き煌びやか。
 鈴と天使の羽を追加で装着)
チャームポイントはプリ尻です。

千亞さんとルームシェアをしているのですが
通常にドアから現れても面白くないので窓から侵入いたします。
「可愛い千亞さん、あなたのサンタさんですよー」
っていうか部屋のドアは頑丈に鍵がかかり入れませんでした、てへ。

シャンシャンと褌鈴を鳴らし、千亞さんへプレゼントを。

【白い褌、ラメ入り】

お正月はお揃いで紅白褌ですよ、千亞さん…!(爽やかな笑顔で)



スコット・アラガキ(ミステリア=ミスト)
  褌→俺
贈→スノードーム
刺繍→鹿

ミストの誕生日はXmasとまとめてお祝いするんだ
その分2個プレゼント買おうとすると怒られてさ
でもサンタからなら受け取ってくれるよね?

正体隠すためにマスクしてく(ジェイソン
頭にはサンタ帽
声でバレないよう無言

合鍵で侵入…ってドア全開だよ大胆!不敵!
起こさないよう静かに
けど部屋汚すぎて蹴躓く予感

酒臭いし寝顔が苦しそう
この時期いつも忙しそうだもんなー

ミストの暴力は愛をもって受け止める
君が笑ってくれるなら
「痛い」も「嬉しい」に変えられるよ!

聞いてるよの合図に頭ぽんぽん
いいものあげるから泣かないで
寝かしつけたら退散だ

無駄遣いの天才はミストの方だ
君の隣ならどこだって天国なのに



冬の夜風にはためく赤い布地に、浮かぶトナカイ。

ただのトナカイではない。

他人の神経を苛立たせる笑顔を浮かべたトナカイは
シグマがこの日の為に用意した褌に丁寧に刺繍されていた。

日頃のお返しと仕返しをプレゼントと褌に込め
俺は蹴られるだけの男じゃないとサプライズでオルガに会いに行くことにしたのだ。
寒さなんて全然問題ない、つもりだった。

「ひぃいさんむぅう!」

 悲鳴を上げたシグマは慌てて首にマフラーを巻く。
布が増えたにも関わらず、なぜか変態度は上がった気がする。

「は、早く、早く屋内に……」

 がちがちと合わない歯の根を無理矢理合わせ
自分を抱きしめるように交差させた腕の先、手の平は僅かな暖を求めて脇の下へ。

凍った石畳から爪先を伝って冷気が這い上がってくる。
冷気から逃げるように駆け出すシグマの腕の中、300Jrかけて用意したプレゼントは寒風に吹かれてかさかさと音を立てた。


その頃、オルガは自室でシグマを待ち構えていた。

(シグマのことだ、また下らん事になっているのだろう
馬鹿がやることは手に取るようにわかる)

 眉間に皺を寄せ、オルガは入り口の扉の死角に身を寄せた。




「オルちんメリークリスマー……ってあれ?」

 勢いよく開けた扉の先に求めた姿は無く
戸惑って立ち尽くしたシグマに、扉の死角から姿を現したオルガが声をかける。

「お前」

「へ!?」

「こんな夜中に何をしているかと思えば……褌とマフラー?お前は変態か?」

 あられもない格好のシグマを冷え切った目で睨みながら、オルガは思わずシグマを蹴り上げた。
シグマが悲鳴を上げ倒れ込む。

「ぎゃあ!!」

「馬鹿は解り易いから張ってたんだ」

「ぐぅ……俺の考えなんてバレバレなのかよー、ちぇっ
折角良い機会だと思ったのにー!」

(何が良い機会なのかは後で追求することにしよう)

 床に倒れたまま唇を尖らせて拗ねたシグマの言葉に
オルガは新たな決意を固めながらふと床に落ちている包みに気づいた。
どうやら先ほどシグマが落としたようだ。

「あーっっ!」

 オルガが包みを見ていることに気づいたシグマは
大きな声を上げて慌てたように起き上がり、拾った包みを裸の胸に抱え込んだ。

「なんだそれは、爆発物か」

「違うよ!オルちんに一応クリスマスプレゼン……あっ」

 口を滑らせたその一言にオルガは驚いて目を見開き
シグマは悔しそうに頭を抱えた。

「あーあ、もっとちゃんと渡したかったのにぃ」

 肩を落とし立ち上がったシグマが笑顔でオルガに包みを手渡した。

「オルちんメリークリスマス!いつもお世話になってます」

「何かお歳暮みたいだな……これは」

 包みの中から出てきたのは、珈琲豆。

「いつも飲んでるなーと思って」

「……ふん、お前にしてはなかなか俺の事を解っているチョイス、か」

 照れたように笑うシグマとは対照的に
さして喜んだ風でもないオルガだが、視線は珈琲豆に注がれている。

「しかしな」

 はたと思い当たったようにオルガがシグマの顔を見る。

「これは機械が無いと飲めないぞ」

「え?」

 オルガの言葉に、固まったシグマが聞き返す。

「機械がないと飲めない
そしてうちには珈琲メーカーはない」

「そうなのー!?ううっ、ごめん!知らなかったんだよ!」

「まぁ、そうだろうな
仕方ない、後日珈琲メーカーを見てくるとしよう」

 そう言って珈琲豆の袋を大事そうにキッチンの棚にしまい込むオルガを
褌に描かれたトナカイがにやにやと見つめていた。













「食事、よし」

 テーブルの上にはおつまみからスイーツまで、あらゆる食べ物が乗っている。

「ビール、よし」

 様々な銘柄を取り揃え、冷蔵庫で冷やしてある。

「服、よし」

 普段は裸で過ごすアルクトゥルスも、今夜ばかりは服を着て室内を見回し満足げに頷く。

「完璧ですね」

 クリスマスの夜。
アルクトゥルスは女性客の誘いを全て断り、一人自宅で待機していた。
そっと携帯電話を取り出し、保護メールの中でも一番新しい物を再度眺める。

差出人はべテルギウス。
彼らしい短い文面には、こう書かれている。

今夜空いてますか
二人きりで会いたいです

昼間受け取ったこのメールで、アルクトゥルスは今日一日天にも昇る気持ちだった。

(聖夜にベルたんからのお誘い、しかも二人っきり!
これが興奮せずにいられるだろうか!いや、いない!
頑張れ私の理性!)

 ベテルギウスとのクリスマスデートの為に仕事を早めに終え
夕食の買い出し、料理、掃除ともてなす準備は完璧に整えた。
あとは主役の登場を待つだけだ。




高層マンションのオートロックの扉の前
スウェットを着た男が紙袋を手に
気後れした様子でインターホンを見つめていた。
実は、もうかれこれ10分はここにいる。

意を決して教わった部屋番号を押すと、機械を通して聞き慣れたパートナーの若干上ずった声がして自動ドアが開く。
べテルギウスはスウェットの上からでもわかる逞しい筋肉を揺らしながら目的の部屋へと向かった。


「いらっしゃいベルたん!」

 エレベーターを降りると、部屋の主は寒い廊下に立ってべテルギウスを待っていた。

「ッス」

 軽く頭を下げる彼を、アルクトゥルスは背に手を添えつつ背筋を眺めながら部屋の中へと促した。

室内へ足を踏み入れると、テーブルに並べられた料理とビール、そして強めの暖房が彼を出迎える。

友人とクリスマスを過ごすのが初めてなべテルギウスは
強めの暖房と緊張に暑さを感じ始めていた。

「ごめん、暖房強すぎたかな?
今切る……」

 ぱたぱたと手で顔を扇ぐべテルギウスを見て
アルクトゥルスは慌ててリモコンに手を伸ばすが、べテルギウスがそれを制止した。

不思議そうな表情で彼を見るアルクトゥルスの前で、ベテルギウスは自身の着ているスウェットにそっと手をかけた。

ゆっくりと袖から腕を抜き、露わになった大胸筋を隠すことなく
スウェットのウエストに手をかける。
ズボンを少しずつ押し下げれば、逞しい太股と股間部分にベルが刺繍された赤い褌が姿を見せた。
背後には臀部を隠すようにクリスマスリースがあしらわれている。

「っ……ベルたん、その、格好は……!?」

 溢れ出そうになる歓喜の声を抑え、押し殺した声でそう呟くと
アルクトゥルスは褌一枚となったベテルギウスの周囲をぐるぐると回った。
鍛え上げられた肉体美から匂い立つような色香に、アルクトゥルスの理性は悲鳴を上げていた。

(ああ、恥じらい震える大臀筋が悩ましいよぉ!リースを毟り取って頬ずりしたい!)

(落ち着け私、ここでがっついたらベルたんを怯えさせてしまう!)

 アルクトゥルスは床にうずくまり呻き声を上げながら握った拳で床を叩き、必死に本能を理性で押さえ込んでいた。

「アルクさん、自分と、一緒にいてくれて、ありがとう、ございます」

 彼の穏やかならぬ心中は知らず、ベテルギウスはそっとアルクトゥルスに持っていた紙袋を手渡し、つかえながらも感謝の言葉を述べた。

いつでも自分のペースに合わせてくれる彼に、感謝の気持ちを伝えたいと思ったベテルギウスは、慣れないながらも一生懸命に考えて今回のクリスマスを企画した。

夏祭りの時に彼が大喜びしていた褌を取り入れたサンタクロース姿も、全てはアルクトゥルスが喜ぶ事を、と工夫を凝らした結果なのだ。

「と、友達に、な、なってくれると、嬉しい、です」

 アルクトゥルスが手渡された紙袋と開けると、中にはダンベルとプロテインが入っている。
友人とのプレゼント交換さえ不慣れなベテルギウスからのプレゼントには
思い切り300Jrの値札が貼ってあるが
それさえベテルギウスの精一杯の頑張りに思え、アルクトゥルスは柔らかく笑いながら礼を述べた

「ありがとう、ボクの素敵なサンタさん
ベルたんから何かしてくれようとしたその気持ちがとっても嬉しいよ」

 アルクトゥルスは差し出されたベテルギウスの手を握り
その上腕二等筋にそっと手を這わせた。

「ボクらはとっくに友達だから
これからもっともーっと深い関係になりたいな」

 二の腕を這うアルクトゥルスの掌。
彼の言う深い関係の意味が分からないベテルギウスは、ただただアルクトゥルスと友達になれた喜びを噛みしめていた。









「千亞さんが悦……喜んでくださる顔を考えたら、寒さなんて何のその、ふふ!」

 きゅっと上がったぷりぷりのお尻を惜しげもなく晒しながら、明智珠樹はにやついていた。

彼の中では、可愛いパートナーの千亞が羽と鈴付きの特注ラメ入り越中赤褌を身に纏った珠樹から
クリスマスプレゼントを受け取り喜ぶ、というなんとも都合の良いシナリオができあがっているのだ。

「ではさっそく」

 プレゼントの入った包みを小脇に抱え、珠樹は千亞の部屋へと侵入を試みた。
ルームシェアをしている二人なので、扉からの侵入は簡単、と思いきや

「おや?」

 ドアノブを回すが、しっかりと鍵がかかっている。

「仕方ありませんね
まあ、通常にドアから現れても面白くないですし」

 デコふん一枚の姿のまま一旦外に出ると、珠樹はぐるりと家を迂回し、
千亞の眠る部屋の窓の前にたどり着くと、こつこつ、と
近所迷惑にならない程度の音量で千亞の部屋の窓を叩きはじめた。


 部屋の中では、千亞がぐっすりと眠っていた。
はぐった布団をさらに蹴り飛ばし、掛け布団はもはやベッドに引っかかっているだけとなっている。
そんな千亞の長い耳に、こつこつ、と小さな音が聞こえた。
寝ぼけ眼を音の方へ向けると、街灯に照らされて窓を叩く人影が見える。

「ふぁ?サンタさんが窓叩いてる……?」

 未だ覚醒しきっていない頭には、窓の外の人影はサンタクロースに見えたようだ。
千亞はそっと窓に近づき、カーテンを一気に引き開け
目の前に広がった光景に絶叫する。


「ぎいやぁぁああ!変質者ー!!!」


 窓の外にいたのは、真冬に褌一枚の男だ。
一瞬にして眠気が覚めた千亞は慌てて再度カーテンを閉め
携帯電話に手を伸ばした、が。
よく考えれば、窓の外の変質者には見覚えがあった気がする。
そして千亞の身の回りには、こんな事をしでかす人間は一人しか居なかった。

千亞は窓に近づき、今度はそっとカーテンの隙間から外を覗く。
そこにいたのは

「珠樹!外で何してんだ!」

「ふふ、可愛い千亞さん、あなたのサンタさんですよ」

「中に入れバカっ!近所迷惑だっ」

 急いで窓を開けると、珠樹をひっつかんで窓から屋内へと引きずり込んだ。

「ああ、千亞さん、今夜はずいぶん積極的ですね」

「違う!お前がそんな格好でうろついてたら近所の人に変な目で見られるだろ!」

 恍惚とした表情で座り込む珠樹にツッコミを入れ、千亞は大きく溜息を吐いた。

「それで、こんな夜中にそんな格好で何の用なんだ」

「そうそう、そうでした」

 思い出した様に立ち上がり、珠樹は腰を振って褌に付いた鈴を鳴らす。
シャンシャンという音と共にメリークリスマス、と千亞に微笑みかける。

「私から千亞さんへクリスマスプレゼントですよ」

「クリスマスプレゼント?下着姿で配るのが流行なのか?」

「いえ全く」

 きっぱりと言い放った珠樹に、千亞の肩がワナワナと震え出す。

「どちらかというと私の趣味です
千亞さんが喜んでくれるかと思いまして」

「誰が喜ぶかっ!
見てるこっちが寒くなるからコレ使えド変態っ!」

 珠樹の頭のネジが二三本抜けたような答えに、千亞は珠樹の為にと買っておいた黒と紫のマフラーを思い切り投げつけた。

「ったく、お前自分の誕生日になにやってんだ……」

「あ、すっかり忘れてました
ありがとうございます」

「で、プレゼントって?」

「これです
きっと喜んでくれると思いますよ」

 珠樹が自信ありげに手渡したプレゼントを、わくわくした表情で開き始めた千亞だったが、包みの中から出てきた白い布に、はたと手が止まる。
その布は、まさに今珠樹が腰に巻いている物によく似ていた。

「珠樹、これ……」

「私のこの赤い褌と一緒に300Jrもかけて特注で作らせたラメ入りの白褌です
お正月はお揃いで紅白褌ですよ、千亞さん……!」

「誰が着るかー!!」

 爽やかな笑顔で褌を勧めてくる珠樹を怒声と共に自室の外に蹴り出すと、再度鍵を閉め、千亞はベッドへと足を向ける。

「あーもー珠樹の馬鹿!……ん?」

 ベッドへと戻る途中、先ほど放り投げた白褌に包まれ何かが落ちているのが目に入った。

「なんだこれ、褌に何か包まれ……」

 拾い上げ、ベッドに座って眺める。

月明かりに照らされてきらりと輝くそれは
赤い石と革紐でできたブレスレットだった。

「……珠樹の、ばか」

 赤い頬でそう呟くと、千亞はブレスレットをそっと枕元に置きベッドに潜り込んだ。











「くっっっっっそさみぃ!!!!!」


 雪舞う夜空に高原 晃司の叫び声が響く。
時刻は深夜。
冷え切った空気の中を晃司は300Jrで購入した、パートナーへのプレゼントを抱えて駆けていた。

(これやばい!
短期決戦をしねぇと俺が風邪っていうかその次元を超えて死ぬ!
体鍛えてるから大丈夫とかそういうレベルを凌駕してた!
ってかぶっちゃけ寒すぎて褌上手く巻けてるかもわかんねぇ)

 あまりの寒さに全身ががたがたと震える。
これは一刻も早く暖かい室内に逃げ込むしかないと
晃司は一路、目的地を目指す。
赤い褌と、腰紐の左右に結ばれた鮮やかなリボンが
走る晃司の動きに合わせてひらひらとたなびいていた。

(起きなければいいんだがな
流石に、こんな格好してるの見られたら恥ずかしいしな)


晃司が闇夜を疾走している頃
アイン=ストレイフは普段より少し早めにベッドに横になり、用意したクリスマスプレゼントに思いを馳せていた。

(流石に、晃司に夜中にプレゼントを渡すのも気が引けますし
こっそり寝静まっている朝方を狙って渡しましょう
今日は早めに休んでしまいましょうか)

 朝起きて枕元に置かれたプレゼントを見た時、晃司はいったいどんな反応をするのか。
想像を巡らせて少し表情を和らげると、アインはそっと瞳を閉じた。


しばらく経った頃。
寝室のドアノブがゆっくりと回り、ラッチが受座から外れる僅かな金属音がアインの眠りを妨げた。
目を開けないまま、有事に備えてアインは枕の下に手を入れる。
指先に触れる硬い感触を確かめながら、室内に踏み込んでくる気配の主を探った。

(この気配は……晃司?)

 パートナーの気配を、アインが間違えるはずはない。
本人は音を立てないように歩いているつもりなのだろうが
鋭いアインの耳にはゆっくりとベッドへと近づく足音がはっきりと聞こえていた。

枕の下に隠した凶器から手を離し、アインは待った。
晃司の足音が、ベッドから一歩離れたあたりへとたどり着いた時
アインは掛け布団を跳ね退け一気に飛び起きる。


「うわぁっ!」

 突然身を起こしたアインに驚き、晃司はその場に尻餅を付く。
月明かりに照らされた晃司の格好に、アインは瞠目した。

「晃司?どうしたんですか、その格好は」

 暗い部屋の中、青白く浮き上がった晃司の裸体にアインの喉がごくりと鳴った。

(いけませんね)

 アインは深呼吸をしてメンタルヘルスで平常心を保つ。
そんなアインの様子には気づかず、晃司は立ち上がってベッドへと近づいた。

「褌サンタなんだってよ
そういう企画らしいぜ
だから、ほら、クリスマスプレゼント」

 手渡されたのは、薄紙に包まれた柔らかい何か。

「ありがとうございます
開けてみても良いでしょうか?」

 もちろんだぜ、と笑う晃司の前でアインが包みを開けると
中から出てきたのは真っ黒なマフラーだった。

「これは……暖かそうですね」

「だろ?」

 晃司が自分のために選んでくれたプレゼントの暖かさに、アインの目尻が下がる。
再度礼を述べベッドから立ち上がったアインは、自身のコートの側にマフラーを置くと、そのままバスルームへ向かい浴槽に湯を張った。

「暖かそうなマフラーのお礼にお風呂を沸かしますから
暖まっていってくださいね
そのままでは風邪を引いてしまいます」

「おお!ありがてえ!実はすげー寒かったんだよ!」

 手渡されたタオルと着替えを手に意気揚々とバスルームへ向かう晃司の背を
アインが優しい目で見つめる。
晃司が暖まって戻ってきたら、明日の朝渡すつもりだったプレゼントを渡そう。
ホットミルクを作るアインの表情は、眠る前のそれと同じく穏やかに和らいでいた。
 











ミストの誕生日はクリスマスとまとめてお祝いするんだ。


「だから、プレゼントも二つね
ミスト、何がほしい?」

「無駄遣いすんな
300Jrがもったいない」

 並んだ雑貨を指しながら柔和な笑みで尋ねるスコット=アラガキに
ミステリア=ミストはにべもなく言い放った。

結局その時は、誕生日用の一つしか買わなかったのだが。



「サンタからなら受け取ってくれるよね?」

 ぎゅっとサンタ帽を被り、スコットは服を脱いだ。
赤い褌には、鹿の刺繍が施してある。
正体がばれないよう顔にはホッケーマスクを着け
小箱を片手に一言も発さずに足音を忍ばせて安アパートに侵入していく姿は
13日の金曜日に登場する殺人鬼を思い起こさせた。

(合鍵で侵入……って、ドア全開だよ!大胆!不敵!)

 帽子から取り出した合鍵を使おうとしたスコットだったが
そもそも所定の位置に鍵穴がない。

扉を締め直して一歩中に入ると、散らかった部屋と強い酒の臭いがスコットを出迎えた。

見回すと狭い部屋の中、ソファに埋もれるように体を丸めたミストが
酒の臭いをさせながら眠っているのが見える。

眉間に皺を寄せ、安らかとはほど遠いその寝顔にスコットは内心溜息を吐いた。

(この時期、いつも忙しそうだもんな)

散らかった生活用品の中を音を立てないようにして慎重に歩いていったスコットだが

「あっ」

 足下に積まれていた雑誌の束につまづき、倒してしまった。
ばさばさと響いた大きな音に、眠っていたミストが身動ぎする。

ぱちりと睫毛のない瞼が開き、スモーキーブルーの瞳が側に立つスコットの姿を捉えた。

「うわなに誰……
え?褌?のサンタ?」

 どうやら、褌サンタの正体には気が付いていないようだ。
ソファから身を起こし、酔いの醒めやらぬ足取りでスコットの方へ近づくと
じろじろと上から下まで眺め回した後、腹を抱えて爆笑し始めた。

「ギャハハハ!なんだその格好キマってんな!」

 爆笑しながら、拳でどすどすとスコットのわき腹を殴る。
続いて後ろに回り、またじろじろと眺めてから
今度はスコットのむき出しの尻をばしばしと叩いた。

「店長のミニスカすね毛サンタもやばかったけど
あんた面白いわ!だはは!」

 スコットは何も言わず、ミストに笑われ叩かれるままにその場に立っていた。
先ほどまで眉間に皺を寄せて眠っていた、いつもどこか苦しそうなミストが
今このほんの僅かな一瞬だけでも楽しそうに笑っていてくれるのが嬉しいのだ。

ばしばしと体を叩く手の力が徐々に弱くなり
次第にミストはスコットの肩に凭れるようにして立ったまま居眠りを始めた。

「サンタさぁん、聞いてくれよぉ
俺さ、今夜は可愛い弟分と過ごしたかったわけ
でもお金大事じゃん
働かないと生きていけないじゃん」

 ミストはタブロス市内の水煙草屋で働いている。
クリスマスのこの時期は、俗に言う書き入れ時、という奴だ
休むわけには行かなかったのだろう。
むにゃむにゃと半ば寝言のように呟くミストの言葉は続く。

「プレゼントだって買ってやりたいし
うまい物食わせたり楽しいとこ連れて行きたいんだ
けど年に一年のイベントを一緒に過ごせないのは
なんか……なんかさ」

 ぐす、と鼻を啜る音に、スコットは聞いているよ、の意味を込めて
幼子をあやすようにぽんぽんと頭を優しく叩いてやる。

泣き疲れてうとうとと本格的に眠り始めたミストを
スコットはベッドまで連れて行き眠ってしまうまで側についていた。








 ミストが目を覚ますと、枕元には小さな小箱が置いてあった。
中には朝日を受けて雪が舞うスノードームが一つ入っている。

「夢じゃなかったのか」

 昨夜、この家を訪れたサンタクロースの姿をミストははっきりと覚えていた。
褌にサンタ帽、ホッケーマスクを着けて終始無言の……


「ふふ……


通報しよ」



クリスマスの朝を迎えたタブロスに、サイレンの音が鳴り響いた。



依頼結果:成功
MVP
名前:スコット・アラガキ
呼び名:スコット、スットコ
  名前:ミステリア=ミスト
呼び名:ミスト

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あご
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月06日
出発日 12月13日 00:00
予定納品日 12月23日

参加者

会議室

  • [9]アルクトゥルス

    2014/12/12-23:56 

    ベテルギウス「……ッス
    (お疲れ様です。自分もプラン提出完了です。
    皆さんのサンタぶりも楽しみです。
    アルクさん、喜んでくれるといいなぁ……)」
    (サムズアップしつつ)

  • [8]スコット・アラガキ

    2014/12/12-23:26 

    俺もプランをソイヤワッショオォイしたよー

    ……ベテルギウスだけなに言ってるかわかんないけど
    筋肉のハリからやる気は伝わったよ!
    よーし俺もがんばるぞー

    みんなのゲリラサンタ行為もうまくいくといいね!

  • [7]明智珠樹

    2014/12/12-23:12 

  • [6]明智珠樹

    2014/12/12-23:11 

    なんとも濃いぃメンツに今からトキメキ丸出しです、ふふ、ふふふふふふうふふ!!
    皆様の褌っぷり、楽しみにさせていただきます。

    そんなこんなで、プランをそいやそいや完了です。
    文字数足りないです。

    それでは、良き聖夜を…!わっしょい!

  • [5]高原 晃司

    2014/12/12-01:57 

    おっすおっす!珠樹は久しぶりだな!
    アルクトゥルスとペテルギウスもおひさ!
    おう!ラーメンうまかったな!!またいきてぇよなー…(じゅるり)
    シグマははじめましてだな。高原晃司だよろしくな!

    俺がサンタになってアインをびっくりさせようって感じだな!
    プレゼントは…どうすっかなー…
    と悩みつつウキウキのクリスマスになるといいよなー!

  • [4]アルクトゥルス

    2014/12/09-23:00 

    ベテルギウス「……ッス、……スッス
    (高原さん、アインさんはおひさしぶりです。
    他の方は始めまして
    自分はベテルギウスです。神人はアルクトゥルスさんです

    今回は、その、アルクさんに恩返し的な……
    仕事で忙しそうなので自分が褌履いてプレゼントを渡そうかとおもってます)」

  • [3]明智珠樹

    2014/12/09-19:33 

    はじめまして、明智珠樹と申します。どうぞよろしくお願いいたします、ふふ…!!
    高原さんは淑女の余興ぶりですね。今回もよろしくお願いいたします…!

    期待を裏切り、キューティー褌千亞さん出動させたかったのですが
    絶縁状叩きつけ&失踪されそうなので私がサンタです。
    私なぞより皆様の褌姿を眺めていたいものですね、ふ、ふふふ…!

    プレゼントに悩みます。褌デコレーション、略してデコふんにも悩みます。
    何と悩ましくも楽しいクリスマス、あははうふふ…!

  • [2]スコット・アラガキ

    2014/12/09-13:24 

    やほー。スコットだよー
    聖夜にフンドシでそいやそいやしに来た!
    いかしたオリエンタル・マ・トゥーリスタイルなら
    ミストも喜んでくれると思うんだ…

    晃司とアインはらーめんで会ったよね?
    はじめましての人もよろしくだよー
    寒さに負けず、レッツわっしょい!

  • [1]シグマ

    2014/12/09-08:10 

    初めましてーばかりかな?会ってるよー!って方がいたらごめんね。(汗)
    俺はシグマ。パートナーはオルちんことファータ のオルガ。
    よろしくねー!

    今回は俺が送る側かなー。なんだかんだお世話になってる訳だしね。(蹴られる事じゃないよ?汗)
    褌は寒そう……いや、普通に寒いだろうけど頑張ろう!
    プレゼントは何が良いかなぁ。


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