【ユニパ!G】僕は君だけを傷つけたい!(あご マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

タブロス市内にある、ゲームセンター【ユニゾンパーク】
大人も子供も楽しめる、市内有数の大きさを誇るゲームセンターはいつも遊びに来た人々で賑わっている。


今日は特にA.R.O.A.からの依頼もなく、二人はこの【ユニゾンパーク】に遊びに来ていた。
クレーンゲームでぬいぐるみを取ってもらったり、クイズゲームで頭を悩ませたりして
楽しく遊んでいた二人の耳に、突然、女性の悲鳴が飛び込んできた。



「きゃー!!オーガよ!!ウィンクルムさん助けてーー!!」


 まさか。

二人は一瞬顔を見合わせた。

こんな市街地、しかもよりによってゲームセンターに、オーガが現れるなんて
オーガの行動からは考えにくいことだ。

だが、万が一、と言う事もある。

二人は急いで悲鳴が聞こえた方へと駆けだした。











<いらっしゃいませ!オーガをやっつけろ!へようこそ!
アナタはウィンクルムさんになって、愛の力ラブボールで悪いオーガをやっつけてください!>



 機械音声がそう告げると、目の前の筐体からハート形のボールが5個転がり出てきた。
どうやら、これがラブボールとやらのようだ。
同時に3mほど先、一見サッカーゴールのようにも見えるネットで囲まれた場所に
紫色の鬼のような絵が描かれたパネルが床下からせり上がってきて、二人の目の前で左右に揺れ始めた。



<5個のラブボールをオーガに投げて、オーガを倒そう!
手足は1点、腹・胸は3点、頭は5点です!目指せ!最高得点!>


 どうやら、ウィンクルムとオーガを題材にした的当てゲームのようだ。
底抜けに明るい女性の声が話を続ける。


<た・だ・し!>


 紫のオーガの両隣に、男の子と女の子のパネルがせり上がり、上下に揺れ始める。


<一般市民を傷つけたら2点減点です!気を付けてくださいね
では、アナタもウィンクルムになったつもりで、レッツバトール!!!>





なったつもりで、と言われても……

本物のウィンクルムである二人はしばらく考えたものの
せっかくなので、ラブボールを手に取った。

解説

<オーガをやっつけろ!>

●ゲーム内容
的が3つの的当てゲームです。
左から、女の子、オーガ、男の子の順で的パネルが並んでいますが、
女の子、男の子に当てると-2点です。
オーガは女の子、男の子よりも二回りほど大きく、
手足に当てると+1点、腹、胸は+3点、頭は+5点です。

ボールを5個投げて、スコアを競いましょう。

最高得点は、全国ランキングに名前が載っちゃうかも!?


ゲームは一人1PLAY 300Jrです


ゲームマスターより

木乃GM主催連動エピソード ユニパ!です!
ハピのようなアドです。

狙え!全国ランキング!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)

  的あてですか…
ディエゴさん、命中力の競争で少しやってみましょうか
あなたなら結構良い線行くはずですよ。

私は…まあまあですかね
今度からの訓練は攻撃の命中精度上昇を目標にします
では行きますかディエゴさん…ディエゴさん?
もしかして…これは…ムキになっている?

まあ彼が満足するまで見ていましょう
…どうやら満足のいく結果が出たようですね
ガッツポーズまでするとは……ディエゴさん、可愛いですね
直感で出た感想なので訂正できませんよ。

顔に出てないでしょうが…私は楽しいですよ
昔の格言に「一日快活なるは千年に敵る」という言葉があるんです
言葉通りの意味です
ディエゴさんの可愛い姿が見れたので千年分の楽しみが味わえました。


テレーズ(山吹)
  びっくりしちゃいました、ゲームなんですね
折角ですしやっていきませんか?
休日にもオーガ退治!がんばりましょー

では早速私がやってみますね
ふりかぶってー…ていっ!あっ(男の子に直撃
…まだ、あと4回ありますし!

わあ、オーガにかすりもしませんでしたね
これは逆にすごいんじゃないでしょうか!
えへ、実戦じゃなくてよかったですよね

投げ方が独特?
ほうほう、なるほど…
ええっとこんな感じです?
なるほど…、これならいけそうな気がします

では、今度こそ!再チャレンジです
とうっ
当たりました!当たりましたよ山吹さーん!
わーい、ありがとうございます
やっぱり山吹さんは教え方は上手ですよね
これからもずっと私の先生でいてくださいね!



ひろの(ルシエロ=ザガン)
  音が煩くても、偶になら大丈夫。
でも、なんでここにいるんだろう。(首傾げ

ハート……。
ウィンクルムの絆って意味、かな。
的には、私じゃ当てれる気がしないけど。(ルシェを見上げる

……きれいとは思ってたけど。かっこいい、のかな?
(既に投げてたルシェに目を瞬き、首を傾げる

え、私も投げるの?(すっぽ抜ける
えと、「こ、こう?」(ルシェが触る度にビクッと反応

的をよく見て、子供のパネルに当たらないように。
(深呼吸して投げるも、子供のパネルに当たる

球技、苦手。

「ルシェすごい」(2回目のルシェに感心

「私じゃ……、入らないよ?」(流されラストを投げる

(心配が嬉しくて情けなくて、眉を少し下げ小さく笑う)
「……ありがとう」



ミヤ・カルディナ(ユウキ・アヤト)
  前を通ったらクレーンゲームに可愛いウサギのぬいぐるみがあったの
子供っぽいっていうかもだけど、私お願いして中にはいるの
そしたら…

オーガを倒すゲーム?
う…本物として恥ずかしい点はとれないわね(ぐっ
本番とは関係ないとか言われてもメゲないもん
子供にあてないように、
オーガの移動速度と動きをちゃんと頭に入れて、
投げる球が届くまでにオーガが何処まで移動するか考えて…
「えい!」
当て易い胸を主に狙うわ
焦らず集中して真剣よ
笑ったらダメよ><

アヤトもやってみない?

アヤトを応援
投げる時は集中を乱さないために静かにするけどね

クレーンゲームで黒ウサギのぬいぐるみを取って渡すわ
「はい、賞品です」ふふ
クレーンは一寸得意なのよ



桜倉 歌菜(月成 羽純)
  ゲームとはいえ、オーガには負けられませんっ
羽純くん、頑張ろうね!

女の子と男の子に当てないよう、オーガの身体の中心を確実に狙っていきます
ボールは真っ直ぐには飛ばないでしょうから、なだらかな山を描いていくイメージで
イメージが出来た所で、ボールを投げます

むむむ、中々難しいですね
次は羽純くんの番だよ
流石、力があるから私より全然真っ直ぐ飛ぶね
羽純くん、凄い!

え?投げ方を教えてくれるの?
羽純くんとの距離が近くてドキドキ
羽純くんの手、大きいなぁ…

教えて貰った効果で、二回目は上手に投げれた気がする
羽純くんが投げたら、ラスト一球

羽純くん、最後は二人で投げよう
高得点の頭を狙い、手を重ねて一緒に投げます

楽しかったね



「的あて……ですか」

 ラブボールを一つ手に取り、ハロルドはパネルのオーガをじっと見た。

「ディエゴさん、命中力の競争で少しやってみましょうか
あなたなら結構いい線行くはずですよ」

 そう言って、ハロルドはディエゴ・ルナ・クィンテロにラブボールを手渡す。

「……ん、なんだこれは」

 どうやらこういった遊びには馴染みがないようだ。
ディエゴが手にしたラブボールを矯めつ眇めつしているうちに
ハロルドは狙いを定めてラブボールをパネルのオーガ目掛けて投げつける。

ハロルドの手を離れたラブボールがオーガの手に当たると
ぽこん、と言う効果音と共に、オーガの頭上のカウンターに1と表示された。

「なるほど、手足は1点ですか
では」

 続いて投げたラブボール、二つ目はオーガの腹に
三つ目は軌道を逸れて右の男の子のパネルに掠ってしまった。
子供に当たってしまうと、ぶぶーっと言う効果音が流れた。

カウンターは2と表示されている。

「では、俺も」

 ディエゴが投げたボールは、足と頭に当たった。
カウンターが、8で点滅し、オーガがゆっくりと後ろに倒れていくと同時に
機械音声がファンファーレ付きで話しだす。

<オーガ討伐おめでとう!二人の愛の力で、世界の平和が守られました!>

「まあまあですかね
今度からの訓練は攻撃の命中精度上昇を目標にします」

「まあ単なる遊びだ、気にすることは」

 ハロルドが無表情に踵を返し、続いてディエゴもハロルドに続こうとした、が
機械音声が告げた言葉に、ディエゴの足が止まる。

<次は全国ランキング目指して頑張ってね!>


「では行きますかディエゴさん……ディエゴさん?」

「全国ランキング?ふむ
悪い……エクレール、もう一回やってみて良いか?」

 全国ランキングと言う言葉が、ディエゴの心の何かに触れたようだ。
ハロルドが何か言う前に、既にディエゴは筐体にジェールを投入していた。

「もしかして……これは、ムキになっている?」



「くらえっ」

ぽこん!

「くっ」

ぽこん!

「この野郎……」

ぶぶーっ

「ああ、くそっ」

ぽこん!

 ディエゴが全国ランキング目指してオーガ相手に苦戦する姿を
ハロルドはじっと見守っていた。

(まあ彼が満足するまで見ていましょう)

 小さなボール、しかも普通とは違いハート形をしているとなると
いかなディエゴと言えども一筋縄ではいかないようで
4回投げたボールはそれぞれ腹、腹、女の子、足と当たり
カウンターには5と表示された。

この的当てゲームの全国ランキングの、何がそこまでディエゴを駆り立てるのか……
メタルフレームの眼鏡の奥の熱く燃える瞳がオーガの頭を捉えた!

「今だッ!」


 タイミングを見計らい、勢いよく投擲されたラブボールはまるで吸い込まれるようにオーガの額に当たった。

ぽこん!

カウンターが10を表示し、勝利のファンファーレが流れる。
機械音声が、ディエゴが待ち望んだ言葉を話した。

<ディエゴ、全国ランキング登録おめでとう!>

「……っしゃあ!」

 的当てゲームの前で喜びのあまりガッツポーズを決める195cmのマキナに
後方から小さな拍手の音が聞こえる。ハロルドだ。

「どうやら満足のいく結果が出たようですね」

 ハロルドの言葉に我に返ったディエゴは、慌てて姿勢を正し咳払いをした。

「ゴホン、まあそれなりに楽しかったな」

「それなりでガッツポーズまでするとは……ディエゴさん、可愛いですね」

「は?可愛い?」

 可愛い、と言われたことに心外そうな表情をするディエゴだが
そんな顔をしても先ほどのガッツポーズは無かったことにはならない。

「俺はムキになったわけじゃあない
上を提示されると越えたくなるものだ」

「そういうものですか、可愛いですね」

「やめろ、俺を可愛いと言うな」

 ますます可愛いと言い募るハロルドに、ディエゴは慌てて話を変えた。

「それより悪いな、俺ばかりがゲームをしていたが
楽しかったか?」

 最終的にはディエゴが的当てに夢中になりオーガを一人で退治した結果になった。
その間、ハロルドは後ろでディエゴの姿を眺めていただけだ。
だが、ハロルドは無表情ながらも、はい、と答えた。

「顔に出てないでしょうが…私は楽しいですよ
昔の格言に「一日快活なるは千年に敵る」という言葉があるんです
言葉通りの意味です」

 饒舌に話すハロルドに、そうか、楽しかったなら良かった、と言おうとし
続いたハロルドの言葉にディエゴは再度赤面した。

「ディエゴさんの可愛い姿が見れたので千年分の楽しみが味わえました」

「……せめて可愛いはやめろ」

















「びっくりしちゃいました、ゲームなんですね」

 オーガ出現の声に慌てて駆けつけたテレーズがほっと胸を撫で下ろした。
山吹が筐体の説明文を読んでなるほど、と呟いた。

「こういったオーガ退治なら安全ですし面白そうですね」

「折角ですしやっていきませんか?
休日にもオーガ退治!がんばりましょー」

 可愛らしく気合いを入れて、テレーズがラブボールを手に取った。

「ふりかぶってー」

 小さなボールを両手で持ち、後方に思い切り、顔が上向くほどに振りかぶる。
そのまま勢いよく振り下ろすように投げた。

「ていっ!あっ!」

 ボールはすぐに地面に当たりバウンドして男の子の顔面を直撃した。ぶぶーっと音が鳴る。

「……まだ、あと4回ありますし!」

 山吹を振り返って取り繕うように話し、再度ボールを持つ。
一方山吹は、テレーズの不器用なボールの投げ方に着目していた。

(思うところはありますが……最初は見守ることにしましょう
ビギナーズラックというものがあるかもしれませんし)

「てぇいっ!」

 穏やかな瞳で事の次第を見守る山吹の目の前でテレーズの二投目が投げられる。

(……なかったようです)

 ビギナーズラックに賭けた山吹の期待は見事に裏切られ
ボールはオーガの遥か頭上を飛び越え、ぽすん、とバックネットに着地した。
なんの音も鳴らず、カウンターも−2から動かない。

「わあ、オーガにかすりもしませんでしたね
これは逆にすごいんじゃないでしょうか!」

「そうですね、あの大きさにかすりもしないのはなかなか……」

 大暴投ともいえる二投目を披露し、なぜか得意げなテレーズに山吹は何とか言葉を返す。

「えへ、実戦じゃなくてよかったですよね」

 実戦だったら一投目で既に笑えない事件になっているのは間違いない。
テレーズの言葉に、山吹は乾いた笑いを返すしかなかった。

「はは、本当に遊びでよかったですね……
テレーズさんは、投げ方が少し独特ですよね」

 山吹が片手で投げる方法を伝えながら、オーガに向かってボールを投げる。
ぽこん、と音がしてボールはオーガの額に当たった。

「ほうほう、なるほど…
ええっとこんな感じです?」

 ややぎこちない動きでテレーズが投げた四投目はオーガの腹に当たった。

「やった!当たりました!」

「そうそう、上手ですね
後は肩の力をもう少し抜いて、振りかぶりすぎないように……」

 そっとテレーズの肩や手首に触れ、体の動きを伝えていく。

「なるほど……、これならいけそうな気がします
では、今度こそ!再チャレンジです、とうっ」

 コツを掴んだのか、自信満々のテレーズの五投目は弧を描いてオーガの額に当たった。

ぽこん、と言う音を聞く前に、テレーズが満面の笑みで山吹の元に駆け寄る。

「当たりました!当たりましたよ山吹さーん!」

「ふふ、良かったですね」

 頭を撫でてやると、わーい、ありがとうございます、と喜ぶテレーズに笑みが零れる。

「やっぱり山吹さんは教え方は上手ですよね」

 これからもずっと私の先生でいてくださいね!と微笑むテレーズの後ろで、
カウンターが11を示し、勝利のファンファーレと
<テレーズ、全国ランキング登録おめでとう>と機械音声が流れていた。

















「これは……オーガを倒すゲーム?
本物として恥ずかしい点はとれないわね」 

 ふらりと立ち寄ったゲームセンターの的当てゲーム。
ミヤ・カルディナはウィンクルムとしての自尊心を刺激され、きりりとした表情でラブボールを手に取った。

本当は、クレーンゲームの景品の可愛いぬいぐるみが欲しくて入店したのだが、
ぬいぐるみは人気のようで、クレーンゲームが空くまで他のゲームをして待つことにしたのだ。

「このゲーム……本番とは関係ないだろ
まあ、頑張れー」

(関係ないとか言われてもメゲないもん)

 ユウキ・アヤトの棒読み気味な声援にも負けず
ミヤはラブボールを手に筐体の前に立ち、じっとオーガの動きを観察した。

(子供に当てないように)

(オーガの移動速度と動きをちゃんと頭に入れて)

(ボールが届くまでにオーガが何処まで移動するか考えて)

「えい!」

 ぽこん!

当て易い胸を狙ったはずのボールは右に逸れ、オーガの腕に当たった。

「あら」

 少し狙いを調整し、もう一度投げる。
今度は胸には近づいたものの、思い切りが足りなかったのか、腕と腹の間の何もない空間に当たってしまう。
効果音は、鳴らない。

「惜しかったわね……」

 三度目の挑戦、今度は狙いの調整がうまくいったようで、オーガの体の真ん中、胸と腹の間当たりにボールが当たった。
続いての四投目も狙い通り胸に当てることが出来た。


(へえ、結構頭いいんだ、あいつ)

 真剣に的あてに取り組むミヤの様子をアヤトはじっと見つめていた。
その少しずつ、けれど確実に狙いを調整していく様子に内心感心しながらも、表情には出さない。

そんなアヤトの目の前に、ハート型のボールが差し出される。ミヤだ。

「アヤトもやってみない?」

「俺も?」

 ミヤの言葉に、せっかくだから、とアヤトはボールを手にして、ふと思った。

(これでミヤより低かったら一寸かっこ悪いんじゃないか?)

 しかも最後の一投だ。途端にアヤトの背に緊張が走る。
かっこ悪いところを見せるわけにはいかないと、ちらりとミヤの方を見ると
ミヤは真っ直ぐな瞳でアヤトの応援をしていた。

その純粋な瞳にアヤトの表情が緩み、口の端に笑みを浮かべた。

(そうだな、ちゃんと頑張るよ
ミヤのを見て要領も少し掴めたしな)

 
 一旦息を吐いて気持ちを落ち着かせた後、アヤトはギラリとオーガを睨み全力の一投を放つ。

ぽこん!

アヤトの投げたラブボールが見事にオーガの頭に当たると
カウンターが12を示し、<ミヤ、全国ランキング登録おめでとう>と音声が流れた。

「アヤトすごーい!!」

 アヤトの活躍を、ミヤは手を叩いて褒める。

「ま、この程度、なんて事はない」

 と言いながら、その尻尾が嬉しそうに揺れているのを、ミヤは見逃さなかった。











桜倉 歌菜と月成 羽純も、オーガと聞いて的当てゲームの前にやってきた。

「なんだ、ゲームの話だったのか」

「でも、ゲームとはいえ、オーガには負けられませんっ
羽純くん、頑張ろうね!」

「そうだな、気合を入れていくぞ、歌菜」


 ラブボールを手に、歌菜が張り切って一投目を投げる。
一般人に当てないよう、オーガの身体の中心を狙うが
ふわりと飛んだボールは、ぽこん、とオーガの足に当たった。

「惜しい!」

 残念そうな表情の歌菜の隣に、羽純が次のボールを持って並ぶと
きりりとパネルを睨みつけた。

「行くぞ」

 オーガの動きを良く見て力強く投げたボールは、真っ直ぐに飛んでオーガの腹に当たった。

こんなもんか、と事も無げに言う羽純の隣で、歌菜が感動した様子で羽純を褒める。

「流石、力があるから私より全然真っ直ぐ飛ぶね
羽純くん、凄い!」

 褒められて少し照れながら、大げさに喜ぶ歌菜の様子に羽純は思わず笑みを漏らした。

「投げ方、教えるか?」

「え?教えてくれるの?」

 ぜひお願いします、とオーガの前に立った歌菜の手を取って、羽純がボールの投げ方を教えていく。

「投げる時に身体を捻ったり、手首を曲げたりしたら真っ直ぐ飛ばないから気を付けろ」

 うん、と頷きつつ、いつもより近くに感じる羽純の体温に、歌菜の心臓がどきりと跳ねる。

(羽純くんの手、大きいなぁ……)

 自分との違いを見つけるたびに少し意識してしまい、歌菜の頬が少し赤くなる。
そんな歌菜を見て、羽純もまた少し照れた様子で、何赤くなってるんだ、バカ、と歌菜の額にデコピンをした。




「羽純君に教わったし、今度こそ!」

 羽純にコツを教わった歌菜の三投目。 
体を捻らないように、手首を曲げないように、と意識しながら投げたボールはオーガの胸に当たった。

「やった!さっきよりうまく投げられた気がする、羽純くんのおかげだね」

 嬉しそうな歌菜から次のボールを受け取り、羽純の四投目。
あと少しで額、と思ったが、判定はどうやら腕だったらしい。
8と表示されたカウンターを見て、羽純は少し悔しそうな表情をした。

「羽純くん、最後は二人で投げよう」

 歌菜の手には、最後の五投目のボール。

「……そうだな、そうしよう」

 一瞬戸惑った羽純だが、オーガを倒すのはウィンクルムの絆の力であることを思い出し
そっと歌菜と一緒に並び立ってボールを持った。

(実際のオーガとの戦いも、歌菜と二人で戦うんだから……な)

 小さな歌菜の手を包むようにしながら寄り添い、二人で持ったボールをオーガの頭を狙って投げた。

ぽこん!

 効果音が鳴り、カウンターは13を表示した。

「やったー!」

 オーガを倒した、との音声を聞き、手と手を合わせてハイタッチをする二人の横で
<歌菜、全国ランキング登録おめでとう>のアナウンスが流れるのだった。









ひろのは物珍しさに辺りを見回した。
騒がしい場所をあまり好まないひろのは、ゲームセンターにくることは滅多にない。
せいぜい兄妹に連れられて立ち寄ったことがある程度だ。

だが、今ひろのの隣に兄妹はいない。
いるのは……

「ふむ、面白い趣向だな
名称もわかりやすい」

 ルシエロ=ザガンがワインレッドの髪を靡かせながら、腕組みをしてオーガのパネルを真っ直ぐに見つめ呟く。

ひろのが何か言う前から、ラブボールを手にして形や感触、重さなどを確かめ
納得したように頷くとそのまま三回立て続けに頭を狙って投げる。
足、腕、胸と、頭には当たりこそしなかったが、徐々に狙いが定まり、残りの二投は頭も狙えそうだ。

そんなルシエロをひろのが目を瞬かせて見上げ、首を傾げた。

(きれいとは思ってたけど、かっこいい、のかな?)

 ひろのの視線には気付かず、ルシエロは大体解った、と頷くとひろのにラブボールを差し出した。

「ヒロノ」

 お前もやってみろ、と差し出されたボールとルシエロの顔をひろのは交互に見た。

「え、私も投げるの?」

そうだ、と半ば押し付けられるようにラブボールを手渡され、ひろのはボールをじっと眺める。

(ハート……ウィンクルムの絆って意味、かな
的には私じゃ当てれる気がしないけど)

 しかし、ルシエロは既に高みの見物を決め込んでいるようで、ボールを投げる気配はない。
ひろのは少し困ったような表情でオーガの前に立ち、ひろのなりの精一杯でオーガに向かってボールを投げる。

が、

握りが甘かったのか、ひろのの手からすっぽ抜けたボールは
なぜか後ろに飛び、ルシエロの頭に当たった。

「わ、ご、ごめん」

 慌てて謝るひろのに、ルシエロは何も言わずに近づくと最後のボールを握らせ、投げ方の指導を始めた。

「いいか、肘を開けすぎるな、手の力は弱すぎず、強すぎずだ
肩も上がらないように、力を抜いて……」

 説明しながら腕に肩に、ルシエロの手が触れる度に、ひろのの肩がびくりと震える。
ひろのの極端ともいえる接触への過敏な反応にも慣れてはきたが、やはりいい気持ちはしないものだ。
ルシエロは一瞬眉を寄せるが、またすぐに普段通りの表情に戻ると
投げてみろとひろのの側を離れた。

教わった通りに的を良く見て、子どものパネルに当たらないように。

深呼吸をして注意深く投げたつもりだったが、ボールは横に逸れ子どものパネルに当たってしまった。
ぶぶーっと音が鳴り、ひろのは少し肩を落とした。
カウンターは-1を指している。

「球技、苦手」

 そんなひろのの隣に再度ルシエロが立ち、ジェール投入口に再度300Jrを入れた。

「ルシェ……?」

「気にするな、オレのへそくりだ」

 ひろのが呆気にとられている間に、ルシエロは次々にラブボールを投げていく。
腹、胸、頭、頭と立て続けに高ポイントを叩きだすルシエロを
ひろのは感心の眼差しで見つめていた。

「ルシェすごい」

「ほら、ヒロノ」

 差し出されたルシエロの手には、最後のボール。

「私じゃ……、入らないよ?」

「いいから」

 またしても押し付けられるようにボールを持たされ
再度オーガの前に立ったひろのは、ルシエロに教えられたようにボールを投げる。

ふんわりと弧を描いて飛んだボールは、一度地面にバウンドしてオーガの足に当たった。
当たった、と驚いて呟くひろのの顎をルシエロの指がそっと上向かせる。

「少しはマシになったな」

 薄暗いゲームセンターの中でも
ルシエロのタンジャリンオレンジの瞳に優しい光が灯っているのがひろのにも見て取れた。

心配してくれたんだ。
……でも、なぜ?


不思議そうなひろのの顎からそっと指を離してルシエロは言う。

「偶には遊べ、気分転換ぐらいにはなるだろう」

 オマエは動かないからな、と
意地悪な言葉の中にもルシエロの気遣いを感じ
ひろのは困ったように眉を下げ笑った。

「……ありがとう」


 だから、そんな顔をするな、と
胸の奥の言葉は、ひろのには届かなかった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:桜倉 歌菜
呼び名:歌菜
  名前:月成 羽純
呼び名:羽純くん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あご
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月23日
出発日 11月28日 00:00
予定納品日 12月08日

参加者

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