【ハロウィン・トリート】ケリーとセリー(寿ゆかり マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 A.R.O.A本部の扉が豪快な音を立てて開いた。
「はぁーい!Trick or treat!」
 この声は。
「ケリーよぉ~!」
 相変わらずの透き通るような白い肌に水色の瞳。女性と見まごうような美貌。に、不釣り合いな濁声。
「こんにちは」
 受付嬢がさらりと挨拶を返すとケリーはカウンターにかぼちゃのフェルトバッグをどん、と置いた。
「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞっ」
「はいはいおかし」
 フェルトバッグに飴玉を突っ込んで受付嬢は書類整理を始めた。
「ちょ、ちょっとちょっと!何よつれないわねェ!」
「御用でしたら要件をどうぞ」
 ケリーはオレンジ色のウィッグに魔女の三角帽子、真っ赤な口紅に蜘蛛の巣をモチーフにしたアイメイクといういでたちで一体何をしにここに来たのか?
「ハロウィンに決まってるじゃないの!」
「はい」
「聞いたわよ~、厄払いは大事よね!盛り上げていこうじゃない!」
「はぁ」
 ケリーは手に持ったステッキをちょい、と振る。
「出でよセリー!」
 と、本部の入り口が開き姿を現したのは。
「兄さん、セリーって呼ぶのやめてください」
「ノリが悪いわよ!セリー!」
 セリーと呼ばれた青年はスラリと背が高く、風貌は何処かケリーに似ていた。そう、彼は正真正銘この大鎌健三郎(注:ケリー)の弟。
「こんにちは、兄がお騒がせしております。わたくし、大鎌清十郎と申します」
 さらりとしたリネンシャツに黒いチノパン。地味でいて正統派のセンスの良さを見せつける彼は兄とはうって変わって堅物であった。
「セリーはデザイナーをやってるの。服を作ってるのよ。だから、ハロウィンの仮装にアタシ達でひと肌脱ごうってわけ」
 そういいながらケリーはマントの片肌を脱ぐ。
「あ、脱がなくていいです」
「すみません!」
 清十郎が頭を下げる。
「ええと?」
 受付嬢がメモ用紙を取り出すと、清十郎は答えた。
「簡潔に申し上げますと、ハロウィンパーティーのお手伝いをさせていただけないか、ということです」
「ええ」
「私が衣装の提供、兄が仮装のメイクを施します。パーティー会場は知人の持っているホールを貸切で。もちろん、ウィンクルム以外の方々も呼びますので、その方々と交流してもいいと思いますし、その、ウィンクルムの方々同士で親交を深められても、また、カップルの絆を確かめ合うのもいいかと」
「で、アタシの友達がやってるお菓子屋さんからお菓子買ってきてあげるから、会場でそれを購入してみんなで交換しあうのも楽しいと思うのよね!ほら、お菓子がないとイタズラされちゃうしぃ」
 キャハハと無邪気にケリーが笑う。
「なんだかよくわかんないですけど、ハロウィンパーティーにご協力いただけるということですね」
 ふぅ、と受付嬢がため息を着く。
「すみません!兄が!」
「いえ、苦労されますねぇ」
「なぁによぅ!」
 そこでケリーがウィンクを一つ。
「ハロウィンの仮装だもの、思い切って行きましょ!私にかかればどんなメイクもお手の物よ」
続けてセリー、いや、清十郎が頭を下げた。
「衣装制作でしたらストックもたくさんありますのでどんなものにも対応いたします。ご懇意にして頂けますと幸いです」
 さて、ハロウィンパーティーはどうなることやら。

解説

目的;ハロウィンパーティーを楽しんでください

●衣装貸し出し料金 1名100ジェール(二名様ですので、200ジェール頂きます)
*仮装パーティーですので衣装は必ずご両名とも着用をお願いします。プランに何を着るかお書きください。(仮装なら何でもOKですよ。ヴァンパイア、ミイラ男、ネコ耳、女装etc…)
 おまかせにするとセリーとケリーが勝手に着せます。
●メイク料金 1名100ジェール
*メイクは強制ではありませんがすると面白いと思います。プランにイメージをどうぞ。
 お任せにするとケリーが楽しみます。
●お菓子代 ひとつ30ジェール(神人購入個数、精霊購入個数を分けてプランにお書きください)
種類は下記から選べます。持っていないとイタズラされちゃいます。わざと持たずにイタズラされるのも手です。
・チョコレート ・キャンディ ・クッキー ・マシュマロ 
・風船ガム(口の中が真っ赤になるものも選べます)

会場内で、トリックオアトリートと声をかけてお菓子をあげたりもらったり。パートナー同士で完結してももちろんOKですし、ケリー達と絡んでもOKです。他ウィンクルムと絡みたい方もOKですが、基本的には相談してお相手からOKが出たら、という感じでお願いします。他者との絡みNGの方は明記ください。(ケリーにイタズラされたくない方も明記していただければ押さえつけます。逆に積極的にイタズラ希望の方も明記ください)

ウィンクルム以外の参加者補足
*ケリー(魔女っ娘仮装)*清十郎(ヴァンパイア仮装)*蒼太(ケリーの彼氏で美容師。狼男仮装) *マリー(ケリーの友人。注:女性です。お菓子屋さん。ゾンビナース仮装)
*エレン(ケリーの友人。カメラ担当。注:女性。雪女仮装。写真を撮ってもらえるかも)
 誰にトリックオアトリートしてもOKです。自分のパートナーだけにして、いちゃいちゃしてももちろんOK!


ゲームマスターより

またも現れましたるはケリー。よくしゃべるつよーいにゅーはーふさんです。
(気になる方はメイクアップ☆男子を参照、読んでなくてもなーんにも問題ないです!)
ハロウィンという非日常で楽しんでくださいね。
アドリブ色が強くなりそうですので、NGの方はその旨をお伝えください。
逆にどんどんケリーに暴れてほしい方はその旨をお伝えください。
基本はプランに忠実に対応いたしますので、ご安心下さいませ。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

木之下若葉(アクア・グレイ)

  仮装は神父
黒のカソックだから全身真っ黒だよね

おお。アクアは悪魔なんだ
メイクまでされちゃって
少し意外だけれど、よく似合ってるよ

お菓子はマシュマロを5つほど購入
ラッピング用のリボンは多めに持って行くよ
これを何に使うかって?それは後でのお楽しみ


「アクア、Trick but Treat」
可愛らしい悪魔さん、お菓子有難う
イタズラしていいかな?

その衣装姿を見た時からやってみたくて
尻尾にリボンを結んでみたんだ
大丈夫、似合ってる似合ってる

他の方には「Trick or Treat」って話かけるから心配しないでね
悪戯するからには、される心構えもあるよ
勿論、お菓子は大歓迎
素敵なパーティーになるといいよね



スウィン(イルド)
  アドリブ・交流歓迎

仮装:マッドピエロ
赤と黒のジョーカー服
二股帽

メイク:顔を色白
左右の目の下にハートと涙マーク
唇を血のような赤
他お任せ
NG:赤鼻

菓子:クッキー15個

悪戯はされるよりする方が好き
※悪戯禁止ではない
甘党

ケリー、こないだはど~も~♪写真集大成功おめでと!
お初な皆さん(セリー達)も
いつもの面子(ウィンクルム)もよろしくぅ
じゃあさっそく…Trick or Treat!

イルドにはTrick but Treat…お菓子くれても悪戯するわよ☆
イルドの手錠を両手にかけちゃいましょ!
…あ、うっかりおっさんの手にかけちゃった…
……い、悪戯大成功~☆(やっちゃったと思いつつ誤魔化す)

ハッピーハロウィン♪



信城いつき(レーゲン)
  衣装・メイク共に2名 
仮装:海賊
イタズラされる&交流大歓迎

今日のテーマはレーゲンのイメチェン(わくわく)
ゴージャスだかワイルドだか普段と違う感じでしてもらおうよ
ということでケリー、思いっきりお願いします!
……俺も?でも俺にメイクって似合うのかな?(メイクお任せ)

「Trick or treat!」みんなに挨拶
もらったお菓子はおいしくいただきます
みんなの衣装も楽しく見ている
凝っているものは近くまで見に行く

※イタズラする時
お菓子ない?じゃあこれあげる!(かわいい包み紙に入った、実は超すっぱい飴)

そういえば、自分用のお菓子持ってきてたっけ?
イタズラ用の用意するのに夢中で忘れてきた……



栗花落 雨佳(アルヴァード=ヴィスナー)
  ケリーさん先日はありがとうございました
ハロウィンってよく知らないんです
僕の故郷ではあまりなじみがなくて…折角なので、ケリーさんに衣装とメイクをお願いしようと思うんです
どんなのが良いと思いますか?

(衣装メイクお任せ好きに暴れてください)

えっと…Trick or Treat?
お菓子をくれなきゃ悪戯するんだね…?悪戯って何したらいいのかな?

あー、昨日の夜からなんか甘い匂いの物仕込んでるなって思ってたらコレを作ってたんだね

仮装を見るのも面白いし、色んな人からお菓子を貰ってこよう

沢山作ったんだね
結構あげたのにまだ残ってる
(残った一つを口に入れ)

やっぱり君のお菓子が一番美味しいよ

えっ最後の1個だったのに…


セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
  ■堕天死神
千切れた黒フードマント、先端が黒の白飾り羽、銀の十字架ペンダントと鎌
メイク:お任せ
お菓子:チョコ、クッキー合計10

・・・不思議の国みたい(皆拘ってて、あ、あの人モデルみたい)
うん。憧れで一度やってみたかったから(嬉しそうに)
死神だよ。普通だとつまらないから堕天使を足して装飾に拘ってみたんだ
ありがとう(照れ)タイガも大人びてて別人みたいだ

…いってらっしゃい(一緒に回りたい、連れていって、…タイガの水を差さしたら)
あ。…いや包帯ほつれてるよって

■トリックオアトリートは受け手
話しかけられびくっ。衣装や仲のよさで談話。お菓子渡して
勇気をもらってタイガに言う

…あのね、やり方教えてほしいんだ



 ギィ、と重厚な音を立ててパーティー会場の扉が開いた。室内はすでに賑わっている。ハロウィンの装飾にライトアップ、軽食にBGM。真っ黒なカソックを身にまとった神父姿の木之下若葉は、先に会場入りしているパートナーのアクア・グレイを見つけて声をかけた。
「おお。アクアは悪魔なんだ」
「あっ!神父さん、悪魔ですよー!」
 アクアの尻尾のカラーに合わせ、背中には真っ白な小さい蝙蝠の羽がついている。ショートパンツに、二―ハイ。まつ毛にはふんわりとした白のマスカラに、目じりに血色を際立たせる朱色のアイシャドウ、唇にはピンクのグロスが艶めいていた。全体的に白っぽいコーディネートでまとめられた小悪魔はケケケ、と悪魔の笑い方を模して若葉に襲い掛かるふりを。そこで若葉はひょい、とアクアの口にマシュマロを突っ込む。
「むぐ、おいしいです」
「アクア、Trick but treat」
「お菓子あげてもいたずらされちゃうんですか」
 ぴくっと身構えると、アクアの真っ白な尻尾にラッピング用の愛らしいリボンが結ばれた。
「なるほど、リボンはこのためだったんですね……」
「うん、その姿を見て、やってみたくって。似合ってる似合ってる」
 ぽんぽん、と頭を撫でてやれば、アクアが嬉しそうに身じろぎした。
「ふふ、尻尾くすぐったいです」
「じゃあ、いたずら、しに行っちゃおうか」
「はい!」
 そうして二人は手を取り合って会場内を回り始めた。

 会場内に現れた、二人の海賊。信城いつきは大きな海賊帽にコートを身にまとい、頬の傷メイクにご機嫌で彼の精霊、レーゲンの手を引いた。
「大分印象変わったかな……変じゃない?」
 普段は美しいストレートのレーゲンの髪は縦ロールに巻いてあり、黒いベロアのリボンで後ろに束ねられている。右目には傷のメイクに、右手の中指には大きなリング。いつきとおそろいのコートは髪の色とは対照的なボルドーに金の縁取り。左袖には大きなフックがつけられていた。
「似合ってる!めっちゃかっこいいよ!」
「そう、かな?」
 照れくさそうに、レーゲンは笑った。
「よっし、じゃあ……手始めに誰から声掛けよっかな?」
「イタズラすることしか考えてないね?いつき」
「もっちろん!」

 ちぎれた黒のフードマントをまとい、背中から生えた白い翼を先端に向かうにつれ黒く染まらせ、首から銀の十字架をかけた死神は、鎌を携えてパーティー会場を興味津々に見つめた。
(不思議の国みたい……皆拘ってて、あ、あの人モデルみたい)
「セラ、ハロウィン初めてなのか?」
 死神の出で立ちの彼はセラフィム・ロイス。精霊の火山タイガは、虎の毛皮の服にまばらに包帯を巻きつけ、頬には虎の縞模様をイメージした赤い戦化粧、アイラインで目力を強調し、特殊メイクでつけ八重歯。がお、と手を顔の前に構え、彼は笑った。
「うん。憧れで一度やってみたかったから。死神だよ、普通だとつまらないから、堕天使も足して装飾に凝ってみたんだ」
 そういって嬉しそうに微笑むセラフィムの唇は血がにじんだようなうっすらとした赤、目じりは少しくすんだグレーで堕天使の不健康さを表現されていた。
(いい顔してら)
 タイガはセラフィムの楽しそうな様子に顔を綻ばせる。
「神秘的つか天使みてぇ」
「ありがとう、タイガも大人びてて別人みたいだ」
 恥ずかしそうにセラフィムは笑う。
「へへーん!こわーいミイラ虎だぜぇい!さ、菓子どれだけ稼げるか記録目指すぞ!」
 くるりと踵を返し、タイガは会場を見回す。
「……いってらっしゃい」
 複雑そうな面持ちでセラフィムは手を振った。タイガは元気に返事をして駆け出そうとする、が。
「ん?」
「あ、いや……包帯ほつれて」
 べしゃ、とタイガがその場にずっこけた。
「……」
 立ち上がり、ぽんぽんと居住まいを直し、包帯を巻き付けると、タイガは気を取り直して手を振った。
「あはは。行ってくる!」
 セラフィムは天真爛漫な彼の背中に手を振り、小さくため息をついた。

 その頃、メイクルームではケリーが鼻歌を歌いながらメイクを施していた。その相手は。
「ケリーさん、先日はありがとうございました。……ハロウィンってよく知らないんですけど、お任せしていいですか?」
 そんなことを言われちゃったもんだからケリーはものすごく張り切っているのである。
「ほんっと、綺麗よねぇ雨佳ちゃんっ。動物系なんかもセクシーに決まりそうよね!?」
 ハイテンションでメイクブラシを手に取り、栗花落雨佳の瞼にグレーのアイシャドウを乗せて陰影を強めていく。その横では彼の精霊であるアルヴァード=ヴィスナ―が深くため息をついた。
「郷に入っては郷に従え、だ。こういう行事なら仕方ねぇ」
「それって好きにしていいってこと!?」
 ギラッと瞳を光らせ、ケリーが振り返る。ほんの少し不服そうに頷くと、ケリーは諸手を上げて喜んだ。清十郎が奥から衣装を持って現れる。
「兄さん、このあたりなんてどうです?」
 真っ黒なファーのマフラーに、ベルトで装着するタイプのカギ尻尾。そして、黒いネコ耳。
「さいっこう。さすが我が弟」
 ケリーが真顔で親指を突き立てた。雨佳の唇にはオレンジのマットリップ、頬にはセクシーなネコのひげ。まつ毛はオレンジ色のつけまつげ、そして首には鈴の付いたオレンジのレザーカラー。
「あぁーん!可愛い!それで、にゃーん!って言ってぇ」
 アルヴァードの鋭い視線がケリーを射る。
「えっと……Trick or treat?お菓子をくれなきゃ、悪戯するんだね?悪戯って何したらいいのかな……?」
 雨佳が首を傾げると鈴がシャン、と鳴る。
「そんな事よりお前が言われて悪戯されない様にコレ持っとけ」
 アルヴァードはボンボンショコラが入ったかぼちゃのバケツを雨佳に手渡した。
「あー、昨日の夜から何か甘い匂いの物仕込んでるなって思ったら、コレ作ってたんだね」
「菓子配るイベントみたいなもんだからな。そんだけあれば無くならねぇだろ」
 ぶっきらぼうにそういうが、これは雨佳を守るため。それに気づいてケリーはニヤニヤしている。
「さ、アルヴァードさんも仮装しちゃいましょ!ネコちゃん待たせちゃ悪いわネ」
 
 全員のメイクを済ませ、ケリーも自分のメイクを完成させて会場へ入った。
「んー!これぞハロウィンナイト」
 満足そうにため息を着いたところに、マッドピエロのスウィンが現れた。二股帽に赤と黒の衣装。トランプのジョーカーのような彼は軽く右手を挙げてからピエロらしい仰々しいお辞儀をして見せた。
「ケリー、改めてこないだはどーもー♪写真集大成功おめでと!」
 メイク中はバタバタして言えなかったから、と労いの言葉をかけるとケリーは嬉しそうに頬を染める。
「んふふ、こちらこそありがと!」
 傍らで彼の精霊、イルドも軽く会釈をする。その身には白黒の囚人服を纏い、左手には手錠がぶら下がっていた。
「じゃぁ、ケリー。Trick or treat!」
「はいはーい!マリーちゃんから買ったチーズクッキーあげちゃう!」
「なーんだ、いたずらさせてくれないのね~」
「ふふ、じゃあ、お返しに!お二人さん、Trick or treat!」
「はい!じゃあ、違う種類のクッキーね!」
 ぽん、とスウィンがケリーのカボチャバケツにクッキーを入れる。
「ありがとぉ~!イルドさんは?」
「あぁ~、はいはい……って……」
 一瞬彼の動きが止まる。
(菓子、忘れた―――!?)
「んっふっふ、これはイタズラしていいアレねっ!?」
 手をわきわきさせ、ケリーは思いっきりイルドをくすぐった。
「うわぁあああ止めろ!」
 くすぐったさに悶え転げるイルドを尻目に、スウィンは余裕の微笑み。そんな二人に近寄ってきたのが……。
「えっと、Trick or treat!」
 ネコの姿の雨佳と、かっちりとしたレザーコートに身を包み、背に立派な漆黒の翼を背負ったアルヴァードだった。アルヴァードの唇は深いボルドーに染まっている。
「まあ、そういうわけだ」
「はいはーい!お二人さん、クッキーでいいかしら~」
 スウィンはにっこりと笑ってクッキーを手渡す。
「わぁ、ありがとうございます」
「で?イルドは」
「もってないのよね~」
 雨佳が首を傾げた。
「じゃあ、悪戯、ですね?何をしたらいいかな……」
「アタシみたいにくすぐったら~?ほらぁ!」
 ケリーに促され、雨佳も控えめに参加する。
「そんなんじゃくすぐったがらないわよぉ、アタシが代わりにやったげるっ」
「だぁああああケリーやめろぉおおお」
 その様子があまりにも楽しげで、雨佳はクスクスと笑い始めた。それを見つけたのがいつき。
「Trick or treat!って、お菓子ない?じゃあ、これあげる!」
 ぽん、とイルドの手にかわいらしい包み紙のキャンディを手渡す。
「いや、言われた奴にもらうのもなんか変だろ?」
「いーからいーから、めしあがれ」
「あ、ああ」
 無邪気な顔でキャンディを食べるのを待っているいつきを前にして断ることもできず、イルドは包み紙を開いてそれを口に放り込んだ。
「!?」
 瞬間、悶絶。なんだこれ、めちゃくちゃ酸っぱい。
「ふっふふー!これはTrickでした!」
「……なんかごめんなさい」
 傍らでレーゲンが苦笑いする。
「はいっ、俺はちゃんと持ってるよ。こっちからも、Trick or treat!」
「わー!クッキー!えっと、俺は……あ」
 イタズラ用に夢中でいつきは自分用のお菓子がないことに気付く。
「朝テーブルに置いてたよね?とりあえず私のはあるけど……この人数じゃすぐなくなるかな」
 はい、といつきの分を含めた二つ、スウィンに手渡す。
「俺だって反撃だ、Trick or treat」
 イルドにも二つ渡して、レーゲンはいつきに笑いかけた。
「無くなっちゃったら二人でイタズラされようね」
「え、えぇ~……」

 その頃、タイガはマリーやセリー、ケリーの彼氏の蒼太……参加者にガンガン声をかけまくってお菓子をせしめていた。
(チーズのお菓子好きみてぇだし、集めて喜ばせてやろ)
 セラフィムを置いて回っているが、セラフィムの好みを念頭に置いての行動だ。目に映った真っ白な小悪魔に声をかけた。
「Trick or treat!なんかチーズ系のもってね?」
「わっ、ええと!クッキーがありますよ」
 はい、とアクアが手渡した二枚組のチーズクッキーをバケツに突っ込んで、タイガは笑った。
「ありがとな!」
「俺からはマシュマロ」
 若葉がバケツにマシュマロを入れると、タイガはまたとびっきりの笑顔を見せる。
(セラ、喜ぶかな?)
「僕達からもTrick or treat!」
 アクアのガオ、に対して、タイガもガオ、とポーズをとり、先ほどエレンからもらったグミを差し出した。
「わぁ、おいしそうです!」
「エレンさんが持ってたぜ。アクアも行ってみたら?」
「はい!」
 そこに、雨佳とアルヴァードもやってきた。
「タイガ、若葉、Trick or treat」
「おう!これなんかどうだ?」
 タイガはバケツの中からマシュマロを取り出す。蒼太がくれた真っ赤なイチゴ味のマシュマロだ。
「いただきます、ん。美味しいね。でもこれ口の中真っ赤になっちゃうやつ?」
 べ、と舌をだすと雨佳の下が赤く染まっていた。
「わりぃ、知らなかった」
「いいよいいよ」
「じゃ、俺からも!雨佳、アルヴァード、Trick or treat!」
 雨佳がバケツからボンボンショコラを取り出す。
「はい、アルお手製だよ。アル名義でもう一コね」
 貰ってすぐに、タイガはそれを頬張る。
「アルヴァードの菓子美味いー!」
「ん、ありがとうな」
 アルヴァードがニッと笑うと、雨佳も満足そうに微笑んだ。
「タイガ、セラフィムは……?」
 若葉の問いに、タイガははたと立ち止まる。

 一方、セラフィムは楽しそうな会場内をぼんやりとみつめながらため息を一つ。その時。
「Trick or treat!」
 背後から声をかけられ、びくっとして振り返った。
「えっと……?いつき……と、レーゲン?」
 普段と雰囲気の違う二人に戸惑いながらセラフィムはかごの中のチョコレートを渡した。
「私も、Trick or treat」
 レーゲンがにっこりとほほ笑んで左手を差し出すと、そのフックにクッキーの袋をひっかけてやった。
「随分印象が変わってるね……一瞬誰かわからなかったよ、特にレーゲン」
「でしょ!?今回はね、レーゲンのイメチェンがテーマだったからさ」
「自分でも不思議な感じだよ」
「よく似合ってる」
 いつきとレーゲンが顔を見合わせて笑っているのに、セラフィムはふと心が温かくなった。それと同時に、少しだけ寂しさも。
「タイガは?」
「あ、先に行っちゃってて」
「セラフィムも行こうよ?」
 もじもじしているセラフィムにほら、といつきが手を差し伸べる。
「そういや、俺にTrick or treatしてないね?」
 そのとき、タイガがセラフィムに駆け寄ってきた。
「おーいセラー!アルヴァードの菓子、美味いぜー!」
 にこにこと笑顔でセラフィムにボンボンショコラを差し出す。
「ん、うん、ありがとう……」
 口に含むと、甘酸っぱいベリージャムが広がった。
「また菓子集めてくるぜ!」
「あ」
 セラフィムがタイガの服の裾を掴む。タイガより身長の高いセラフィムの少し甘えたような視線に、思わずドキリとした。
(ハグしてぇ!……じゃなくて、寂しがらせたのか)
 ハッと気づいて、タイガはセラフィムに向き直り、視線を合わせた。
「……あのね、やり方教えてほしいんだ」
 少し戸惑いながらのその言葉に、タイガは大きく頷いた。
「もちろん!」
 手始めに!とタイガはレーゲンにビシッと人差し指を向けた。
「いくぜ、セラ!せーの!」
「と、Trick or treat!」
 少し照れくさそうなその声に、タイガは笑った。レーゲンも微笑んでお菓子を取り出そうとする、が。
「あ、ない……」
 ケリーやマリーの襲来で使い果たしてしまった模様。
「ほらっ、セラ、いたずらだー!」
「え、え?何したらいいんだろう?」
「じゃ、俺が代わりに!おりゃ!」
 タイガの手からおもちゃの毛虫と蜘蛛が飛び出る。
「うわ!?」
 レーゲンは驚いて一歩下がった。いつきはけらけらと笑っている。
「すごいな!手の込んだおもちゃだねこれ!」
 絨毯の上でうごうごと動くぜんまい仕掛けのおもちゃにレーゲンはふぅとため息をついた。
「なかなかに気持ち悪いね、これ」
 セラフィムも思わず吹き出してしまう。
「さあ、どんどんいこうぜ!」
 パーティーはまだまだ楽しめる。

 イタズラされまくって疲れ果てたイルドはお菓子を抱えて戻ってきたスウィンをちら、と見やった。……嫌な予感がする。
「見て見て、こんなに貰っちゃった」
 甘いものが大好きな彼にとっては最高のイベントだろう。イルドは彼の笑顔にふっと微笑む。
「良かったな」
「イルドも!Trick……」
「ん?おら、これでいーだろ」
 お決まりの文句が飛び出るとみて、ポケットにあったキャンディをまさぐりスウィンに手渡す。
「But treat!」
「は?」
 スウィンは差し出されたイルドの左手をパッと取った。
「お菓子くれても悪戯するわよ☆」
 そして、イルドの右手にも手錠……をかけようとしたそのとき。
「スウィン、Trick or treat」
 後ろから若葉がスウィンの肩をぽんと叩いた。
「あ」
 がちゃん。スウィンの右手にイルドが装着していた手錠の片側がしっかりとはまっている。
「ちょ、何やってんだ!?」
 イルドが慌てて手錠を引っ張る。
「……い、悪戯大成功~☆」
「あれ、なんか変なことになってない?」
 若葉が小首をかしげる。
「お互い捕まっちゃったみたいですね」
 アクアがふふっと笑った。
「んー、俺はお菓子持ってるけどイルドはね~このとおりないのよ」
「じゃあ、悪戯かな?」
 若葉がニヤリ、と笑った。そして、イルドの尻尾にラッピングのリボンを結ぶ。
「イルドさん、可愛いです!」
 アクアの発言にイルドは眉を顰めた。
「あのなー、俺が可愛いわけないだろ」
「ふふ、ではよいハロウィンを!」
 アクアは若葉の手を引いてまた会場を行ってしまった。
「……鍵は……あ~、どーすんだこれ……ったく」
 イルドは迷惑そうに大きくため息をついた。けれど、誰も見ていないときに小さく笑っていたのは楽しかったからだろうか。繋がれてるのも悪くねぇか、なんて。

「アル、ハロウィンって楽しいね」
 雨佳が隅の方で休んでいるアルヴァードに声をかけた。
「珍しくはしゃいでたな」
「みんな拘って仮装してて、面白くって。お菓子も貰ったの結構食べちゃった」
 残ったお菓子をアルヴァードと一緒に食べ始める。そうして、最後の最後にアルヴァードが作ったボンボンショコラを口に入れた。
「やっぱり君のお菓子が一番美味しいよ」
「……当たり前だろ。Trick or treat」
 アルヴァードの口の端が少し意地悪く吊り上った。最後の一つと見て、雨佳を困らせる算段だ。
「えっ最後の一個だったのに……」
 少し考えて、雨佳はアルヴァードの肩を引き寄せ、口の中のボンボンショコラを彼の唇へ。
「!?」
 口移しでアルヴァードの口の中へやってきたボンボンショコラはラズベリーの甘酸っぱい香りと共に溶けていく。
「甘いもの口の中にしかなかったから……これでいい?」
 いつものように小首をかしげると、また鈴がシャン、と鳴る。
「……ッ、よかねぇよ!馬鹿!」
 顔を真っ赤に染めて、額には冷や汗。イタズラなネコの姿の雨佳を直視できない。この無自覚な小悪魔を、俺はどうしたらいいっていうんだ。激しい動揺の中で、アルヴァードは小さくため息をついた。

「みんなー!写真撮りましょうよ!」
 宴もたけなわというところで、ケリーが会場にアナウンスをかける。エレンが三脚にカメラを設置し、タイマーをセットした。
「ほらっ、ウィンクルムの皆さんはもっと寄り添って~」
 言われていないケリーもそっと蒼太に寄り添う。
「ふふ、神父さんと悪魔が仲よさそうなのも、不思議ですね」
 アクアが照れくさそうに若葉にくっついた。
「こんな可愛い悪魔さんならイタズラされても怖くないね」
 若葉の腕がそっとアクアを支える。
「イルド、せっかくだし手錠見せつけちゃお?」
「な、んでだよっ」
「いーからいーから」
 鼻歌交じりでスウィンは右手を高く挙げる。つられてイルドの左手も上がった。
「アル、もうちょっと寄らないと」
「あ、あぁ」
 どことなくぎこちないアルヴァード。
「レーゲン、ちょっとさ、こう、悪い顔してみなよ」
「わ、悪い顔?」
「うん、こう~、しかめっ面?っていうの?悪い海賊だぞーって感じ、出してこ!」
 うーん、それってどんな顔だろう。と苦笑いしながら、レーゲンはいつきと同じくカメラを睨む表情を作った。
「セラ!楽しかったか?」
 タイガがセラフィムに笑いかける。
「うん、とっても」
「その笑顔のまま、写真に写ろうぜ!」
「うん」
 各々、最高の表情でカメラに収まる。これだけ盛大なハロウィンを行えば、魔なんて活動することは出来ない。
「……でしょ?ケリーにおまかせってね」
 バッチリと指でオーケーサインを作り、ケリーはウインクを一つ。
「兄さん、ただカップルが見たかっただけじゃないんですね」
「ぎく。ま、それもあるけど~」
 こうして、楽しいハロウィンナイトは更けてゆくのであった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月04日
出発日 10月10日 00:00
予定納品日 10月20日

参加者

会議室

  • [8]木之下若葉

    2014/10/09-21:19 

    俺も個別には書けていないや。モジスウ、凄く強いよね。
    でも、俺もアクアもお菓子も悪戯も大歓迎って書いたからアドリブに期待、かな。
    こちらの動きは、

    若葉:神父
    お菓子とラッピング用のリボンを多めに持って「Trick or Treat」
    悪戯は相手にリボンを結ぶ事(アクアは既に標的になっている)
    アクアと一緒に会場をゆったり回っている

    アクア:悪魔
    若葉と一緒に会場を回っている
    お菓子の入ったバスケット常備中

    こんな感じかな?
    会えたらどうぞ宜しくね。
    では、Have a Happy Halloween.

  • [7]スウィン

    2014/10/09-20:56 

    プラン書けたけど文字数足らなくて個別の絡みは書いてないわねぇ。
    アドリブに任せることになりそう。一応こちらの動きね

    スウィン:マッドピエロ
    お菓子用意済。悪戯はされるよりしたいタイプ(されるの駄目ってわけじゃない)
    ケリーとは前のエピで会ってるから少し話したり、イルドには問答無用で悪戯しかける

    イルド:囚人
    お菓子忘れてるから狙い目(笑)積極的に悪戯する方ではなく受難タイプ

    楽しい一日にしましょ♪

  • [6]セラフィム・ロイス

    2014/10/09-19:39 

    皆トリックオアトリートOKなんて文字数が足りなくて困るね
    個人的に絡みたいところだけど、この時間過ぎると覗ける自信ないならとりあえず
    こちらの動きを書いておくよ

    タイガ:虎ミイラ男
    お菓子0から言いまくって増やす!→記録に挑戦→食べる(合間か食べた誘惑負け時)
    アルヴァードの菓子うまい!はする。飛び回ってる
    悪戯も計画してるからもってなくても何かする

    セラ:堕天死神。装飾に拘ってる
    お菓子たくさん購入済み。主に受け手
    燃えるタイガに「一緒に回りたい」を言いだせず、会場でぼんやり
    会話はできるのなら衣装や精霊の事を聞くつもり

    のち、皆の様子みたり、何か感じてタイガに言うよう頑張る


    こんな感じで。もし合ったら絡んでくれると嬉しいよ

  • [5]信城いつき

    2014/10/08-06:08 

    おはよー、信城いつきと相棒のレーゲンだよ。
    パーティもみんなの仮装も楽しみ♪どうぞよろしくね

    今回の目標ははレーゲンのイメチェン(笑)
    仮装も派手なのしようかなと思ってたけど、最終的に海賊で仮装する予定
    でもメイクまでしっかりしてもらう予定だから印象大分変わるかな

    ※トリック オア トリートはする・される共に喜んでOKです

  • [4]栗花落 雨佳

    2014/10/08-02:47 

    こんばんは。栗花落雨佳とアルヴァード・ヴィスナーです。
    よろしくお願いしますね。

    僕達も『Trick or Treat』受け付けますよ。

    アル『自分で作れるのにわざわざ買うのも馬鹿らしいから、俺が作る。ボンボンショコラを作る予定だ。ハロウィンらしい形に作っていくと思う』

    ふふふ。楽しみですね。
    僕達は何の仮装しようか…?

  • [3]スウィン

    2014/10/07-23:50 

    こんちは、スウィンとイルドよ。今回もよろしくぅ!パーティ楽しみましょうね♪
    まだ全然考えてないけど、交流OKって書くつもり。
    もっと具体的に交流プラン決めたいって人がもしいたらあわせられるわよ~。

    仮装は今のとこマッドピエロと囚人で考えてるけど変わる可能性もあるわね。

  • [2]木之下若葉

    2014/10/07-22:04 

    こんばんは、木之下とパートナーのアクアだよ。
    こちらこそ揃って宜しくお願い致しますだね。

    ハロウィン・パーティー、楽しみだね。
    あ。俺達もトッリックもトリートも大丈夫だから
    もしも会えたら宜しくだよ。

    仮装は、俺が神父でアクアが悪魔の予定。
    楽しいハロウィンになるといいよね。

  • [1]セラフィム・ロイス

    2014/10/07-20:07 

    お馴染みの面子だね。僕セラフィムと相棒のタイガだ。よろしく
    まだ詳細は考え中だけど、あまり時間もないし
    皆はどういう風に動くのかなって。仮装はできたら別のにしたいし書き込んでおくよ

    あ、タイガは『思いっきり楽しむ!』…って意気込んでる(自分とこと他交流重視)
    トリックオアトリートするもされるも大丈夫だから一応
    僕は…しり込みしてるかなぁ(でも絡みはOK)

    仮装は試しに「ハロウィン 仮装 種類」と検索したらものすごくでたよ。
    童話から、きぐるみや映画キャラもありなのかと
    今は、死神(か天使)とミイラが第一候補かな。悩ましいしミックスするかもしれない


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