プロローグ
「う、うわぁ!やめて!やめてよぉ!」
ラビットの青年の周りを無数の黒い大群が取り囲み、ギャアギャアと鳴き散らす。青年は為す術もなく農具を振り回すが、かえって相手を刺激してしまい余計につつかれる羽目に。
「痛っ、いたたっ、やめ……っあぁ!」
畑の真ん中で果敢に立ち向かおうとした青年もついには膝を折る。黒い大群、オオカラスは彼に群がり、さらなる攻撃を仕掛けようとするのだった。
「おい!大丈夫か!っくそ!こっちだ」
ラビットの女性がライトをチカチカと点滅させると、カラスの目の色が変わり、たちまちターゲットを青年からその女性に変えた。
「だめだ、レラ!危ないよ!」
青年の叫びにレラと呼ばれた女性は鼻で笑う。
「自分が死にそうになっておいて何言ってる!逃げろ!」
もう、こんなことが何度も続いているのだ。
*****
「うわぁ……大丈夫ですか?」
ウィンクルムは痛々しい青年の生傷に思わず目を覆った。青年の横ではレラが不機嫌そうに腕を組みなおす。
「大丈夫じゃないからここに来たんだ」
「レラ、そういう言い方はダメだよ……」
ああ、すまんな。とぶっきらぼうに告げ、彼女は事情を説明する。
「例年では考えられない量のオオカラスが毎日夕方になると畑にやってくるんだ」
「おかげで、モチニンジンの葉っぱはボロボロです」
モチニンジン?聞き返すと照れくさそうに青年は答えた。
「あ、申し遅れました。僕キャロって言います。モチニンジンっていうのはこの地域で採れる野菜なんですけど、ええと、これです」
なんと用意がいい事か。彼は麻のバッグから人参を取り出した。見た目は普通の人参だが……。
「触ってみてください」
『ぷに』
え……?
『ぷに』
指でつつくと、大福のような弾力!これが地面から生えてくるのか!?と驚愕する。
「これ、収穫祭でお供えするんです。このままお供えする分と、あと、おだんごにしたり……。あ、そのまま食べれますよ。どうぞ」
一口頬張れば、口の中には甘く新鮮な人参の香り。食感は触った感覚と同じく、餅……。芯の部分のみ質が僅かに違うのか、人参のジュレが溢れ出してくる。
なんだこれは。うまい。
「畑を荒らされるようになって、収穫量が激減している。さすがに私ひとりじゃ追い払いきれないんだ」
レラはため息交じりにキャロを睨み、吐き捨てるように付け加えた。
「こいつじゃ戦力にならんしな」
「ひ、酷いよレラ!」
「本当のことを言ったまでだ。でも、こいつが作る野菜は本当に美味いだろ?農業の才だけはあるんだ」
彼女の表情が僅かに柔らかくなったことで、畑と野菜への愛情がうかがい知れる。
「ウィンクルムとやらにお願いしたいんだ。あの化け物カラス、ヴァーミンを追い払って欲しい。生死は問わん」
とはいえ、追い払ってもいくらでも湧いてくるのでは?
「そうだな。どうやらあいつらには指揮官のようなものがいるらしい。一際大きく、高く鳴く奴がいるんだが、そいつが威嚇の鳴き声を上げると総攻撃を仕掛けてくる。こいつを叩くのが筋かな」
「あと、残党がまた来ても困りますし倒した後も普段からできるカラス予防とか提案してくれるとうれしいです!」
「お前……ほんっと甘ったれだなキャロ」
「え、え、だめですか」
「すまんな、報酬はこのとおり。それから、モチニンジンも提供しよう。なにとぞよろしく頼む」
解説
●目的
オオカラスヴァーミンの討伐。
*レラからの情報
・カラスは30~40羽程度で襲ってくる。サイズは羽を広げると130㎝程度。
その中でもひときわ大きいものは羽を広げたサイズでおおよそ2m程度あり、恐らく司令塔。こいつを叩くのが効率的と判断する。
・このカラスには特徴があり、専用のフラッシュライトを光らせると光に反応しそちらを優先的に襲うようになる。基本的にキラキラしたものを拾おうとする通常のカラスと性質は似ているらしい。フラッシュライトはレラが所持しているので、貸し出すものとする。
・カラスの攻撃は、つつく、勢いよく滑空して脚で蹴飛ばす、羽を当ててくるなど。フラッシュライトで気をひきつつ、一気に叩くのもいいかもしれない。
・まだモチニンジンは掘り返されてはいない。必死で守っているが、そろそろ限界か。地上に出ている葉をつついたら今度は掘り返す可能性があるので、依頼した次第。
・畑はそんなに広くはなく、テニスコート四面程度と考えてくれたらいい。端の方に農道があるので、そちらに誘導してくれると畑が傷つかずに済むかも。
・あまり害鳥や害獣に晒されることがなかったので現時点では対策は皆無。余裕があればカラス避けなどを考えてくれるとうれしい。
・討伐した後はよければ収穫体験しないか?是非、採れたてのおいしいモチニンジンを味わってほしい。
ゲームマスターより
寿です!
GMってグルメマスターの略ですか?ってくらい食べてばかりのシナリオを書いてるような……。
デートの基本は食事でっせ!
モチニンジンが地面から生えるなんて月ってすごいですね!
大切な特産品を皆さんの手でお守りください。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)
モチニンジンンとっても不思議ですね。 依頼が成功していただいた後はお料理してみようかな? まったく未知の食べ物なのでドキドキですが。 よかったらイヴェさんも食べますか? カラスの退治ですがかのんさん達がフラッシュライトでカラスを農道に誘導したらイヴェさんのジョブスキルで攻撃予定です。 私はトランスをした後は迷惑にならない様後方で待機です。 その後のカラス対策ですが。鳥は見つめられるのが苦手なので大きな目玉のバルーンなどを設置するといいかもしれません。でもカラスは賢いですから一筋縄ではいかないと思います。いろんな方の意見を取り入れてみるのがいいかもしれません。 |
音無淺稀(フェルド・レーゲン)
モチニンジン…初めて見る野菜です これを使ったらきっと新しい料理ができそうですよね… 依頼、頑張りましょうね フラッシュライトをお借りしてカラスを農道へ誘導しましょう 農道へ誘導する際はできるだけカラスの目につくように体を大きく振りましょう 農道へ誘導した後もできるだけカラスを逃がさない為にもこちらに惹きつけておく必要がありそうですね 自分が標的になるよう、フラッシュライトを使いながら農道をぐるぐるしてきます 自分の身は、ある程度守れるよう<湯煙>をいつでも抜けるように準備はしておきます と、そうですね 戦闘が始まる前にトランスをしておかないといけませんね 収穫体験! ふふ、カレーに「も」いれて上げますね |
かのん(天藍)
昼間の準備 レラさん達に相談と協力依頼、討伐時の被害防止を目的 畑の畝を一時的に農業資材の不織布製被覆材で覆う 農道を戦闘箇所として想定 フラッシュライトを借り、農道の畑から離れた縁に設置 司令塔烏の特徴確認 戦闘時 トランス、ジョブスキルは適時使用 フラッシュライト使用し烏寄せ アミュレット使用しライト周辺に力場形成 可能であれば烏を迎撃 討伐後 モチニンジン採取手伝い 後学のため出来れば採りたてを洗ってそのまま丸かじり 何だか兎になった気分ですねと隣で同じように食べる天藍に笑いかける 牛の放牧に使う電気牧柵 烏が入る隙間が無いように畝の左右と上に張る 畑に入る部分だけ電流を切るようにする事提案 植物学、ガーデニングスキル活用 |
ファリエリータ・ディアル(ヴァルフレード・ソルジェ)
一所懸命お世話してモチニンジン作ってるのに、カラスに食べられちゃうなんて可哀想っ。 カラス追い払うの頑張るわっ。 フラッシュライトで農道に誘導するみたいだから、 ヴァルにはライトに近付いてきたカラスを倒してほしいの。 私はライトから離れそうなカラスが逃げない様に、 もし畑に近付くカラスがいたら行かない様に牽制してようと思うわ。 それくらいなら出来ると思うのっ。 あ、ヴァル達の気を散らさない様に、危ない事はしない様にするわねっ。多分。 倒したらモチニンジンお裾分けしてもらえるのよねっ? 楽しみー! そのまま食べてもいいし、お菓子とかにも使えそうっ♪ ……な、何よ、簡単な物なら作れるもの! 多分!(※料理スキル無し) |
アマリリス(ヴェルナー)
結構数が多いのですね 力になれそうにはありませんし フラッシュライトからは少し離れて戦いを見守ります 一応自前の懐中電灯「マグナライト」も準備しておきますわ 逃げたり畑に向かうような敵がいた場合はそれで注意を引いてみますね こちらに来る前にライトは声を掛けてから精霊側に投げ込み、後はおまかせします カラスへの対策としては徹底的に追い払い毅然とした対応…と思いましたが 依頼までの流れを考えますと厳しいかもしれませんね カラスは頭がいいですし、他の皆様が上げられた提案を不規則に実行して 常に警戒させるのがいいかと思いますわ こんなものが生えているだなんて月ってすごいですわね でも美味しいのですから不思議です |
昼下がり、キャロの畑に到着した一同はレラから話を伺うことにした。
「……というわけで、基本的にはフラッシュライトを用いて農道にカラスを誘導することになりそうです。大丈夫でしょうか」
かのんとその精霊である天藍は今しがたレラから受け取ったライトをチカチカと試しに光らせる。
「畑の周辺地形を確認したが、フラッシュライトはこのあたりに設置することになると思う」
キャロの家に貼ってある畑の略地図を指さすとレラは頷いた。
「ああ、そのフラッシュライトはオンオフで切り替えられる。充電はしておいたから3時間程度は持つだろう」
ファリエリータ・ディアルはそれに続けて作戦をレラに報告する。
「あとは数名で農道にカラスをおびき寄せる予定よ」
「寄ってきたところを俺たちが叩く。ってとこかな」
彼女の精霊であるヴァルフレード・ソルジェは隣に座っているヴェルナーに視線をやった。彼もその神人であるアマリリスと共に頷く。
「そうですね。私たちの性質上、近くの敵を狙う部隊となります」
「なるほどな。上空を飛ぶものはどう対処するんだ?」
レラの問いかけにイヴェリア・ルーツが答える。
「俺が」
「イヴェさんはプレストガンナーなので、高所の敵を狙うのに適していますね」
その神人、淡島咲が任せて、と微笑みかけた。
「うん、心強いな」
「飛んでいるものへの対応なら、僕も」
フェルド・レーゲンが名乗りを上げた。横でパートナーの音無淺稀も頷く。
「スナイピングですね。あと、誘導した後も逃げ出すカラスがいないように私がひき付けます」
「オトナシ……」
「大丈夫、無理はしませんし、護身用の湯煙もありますしね」
スッと小刀を見せるとレラも安心したように頷いた。
「くれぐれも無理だけはしないよう頼む」
「畑に近づくカラスの牽制くらいなら、私もできるかしら」
「ファリエ、お前」
ファリエリータの提案にヴァルフレードは心配そうに制止する。
「ううん、私も何かできることがあるならしたいの!大丈夫、ヴァル達の気を散らさないように危ないことはしないわ。多分。ねっ」
「多分って……わかった。絶対に無茶なことはするなよ」
ファリエリータが頷くのを見ると、納得してレラに向き直る。
「キャロさんは畑仕事中ですか?」
かのんの問いにレラは頷いた。
「ああ、今水やりと雑草抜きをしているよ。この時間帯はまだカラスもそんなに来ないからな」
「農業資材の被覆材はありますか?」
「ああ、もちろん」
レラは資材置き場を指さす。
「多少古いが、使える。好きに使ってくれ」
かのんには植物学およびガーデニングの知識があるため、農産物の保護に関してとても敏感である。レラはよく気付くなと感心しながら一同を畑に案内した。
「あっ、来てくれたんですねェ」
キャロがぶんぶんと手を振る。
「キャロ、もう日が落ちる。被覆材で畑を覆え」
「うん、了解」
ばさ、と被覆材を広げて畑を覆い、キャロは畑から農道へと出てきた。
「今日はよろしくお願いしますね」
「もう少ししたらカラスが来ると思う。私たちは今まで通り農作業しているフリをするよ」
レラが頭を下げると、一同は頷いて配置についた。畑に目がけて飛んでくるカラスを農道へ誘導するのが音無。飛んでいったところをフェルドが狙撃する手はずだ。低空飛行及び地上に降りてきたカラスの撃退はヴェルナー、ヴァルフレードに任せる。天藍とイヴェリアは状況を見て飛び惑うカラスを追撃しながら一か所に寄せるように攻撃。
農道の端ではかのんと咲が設置したフラッシュライトがキラキラと点滅している。夕日で空が染まり始めるころ、忌々しい鳴き声が近づいた。
「来たか!」
レラが顔を上げる。カラスに気付かれないように息を潜めていた一同はレラの声に合わせて一斉に躍り出た。10、20、……ざっと数えてカラスは40羽程度。その中に例の司令塔と見られる一際大きなボスが1羽。40羽のうち半数はフラッシュライト目がけて農道側へ飛んで行った。
「ッチ、やっぱり狙いはモチニンジンか」
レラが小さく舌打ちする。キャロは震えながらも果敢に立ち向かおうとカラスを睨みつけた。
「やめとけ、キャロ。……今日はウィンクルムたちに任せよう。下手に邪魔をしてはいけない」
「……うん」
レラはキャロの手を引き、畑に寄ってきたカラスを少しでも農道側へ逸らせるためにフラッシュライトを振った。1羽、2羽、それにつられて行く。
「ヴェルナー、寄ってきましたわ」
「はい、アマリリス様」
「汝、誠実たれ」
トランスするとすぐにヴェルナーは危険が及ばないようアマリリスを農道より外へ促す。そして“フォトンサークル”を発動した。ヴェルナーの周囲の聖域が、仲間の防御力を上げる。
「心強い、ありがとう」
その時、淺稀がフラッシュライトを振り回しながら農道へ飛び込んできた。
「ほら!こっちですよぉ!」
ライトに引き付けられたカラスが5羽、6羽と淺稀に続いていく。最終的には10羽程が畑から農道へ移動していた。
「30、31……そろそろ叩いてもいい頃か」
ヴァルフレードの目配せに、ヴェルナーが小さく頷く。フラッシュライト目がけて低空飛行しているものを狙いヴァルフレードはソードを振り下ろした。1羽、2羽、オオカラスはバサリと音を立てて地面に叩き付けられる。続いて淺稀の後方から援護していたフェルドが上空を飛んでいるものをスナイピングで撃ち落とす。バサリ、バサリ。次々と音を立ててカラスが落ちていった。
「オトナシ、早く逃げて……!」
「フェルドさん、こちらへ」
スッとフェルドに近づき、淺稀は唱えた。
「貴方に加護がありますように」
インスパイアスペルを唱え、フェルドの頬に唇を寄せる。顔を見合わせて頷くと淺稀は農道から少し離れた場所へ退避した。フェルドは戦況をもう一度見直す。
(……農道にカラスを寄せきれていない……それならば)
畑でモチニンジンを襲おうとするカラスに威嚇射撃を行う。畑の上に落とすわけにはいかないので、あくまでも掠る程度を狙い慎重に。
「イヴェさん」
「ああ」
「貴方に全てを捧げる」
トランスに入り、農道側でイヴェリアが高所のカラスにダブルシューターで次々と打撃を与える。2羽、3羽……徐々に勢力が削がれていく。咲は危険回避のため、後方へと下がった。
「天藍、まだ一番大きなカラスがあちらに」
「……引き寄せるしかないな」
「共に最善を尽くしましょう」
かのんが天藍の頬に口づける。周囲に翠雨の雫のオーラが幾つかの波紋となって広がった。天藍が畑の中にいる一際大きなカラス目がけて走る。一方、ファリエリータは畑に逃げようとするカラスに向けて叫び、フラッシュライトを掲げた。
「そっちじゃないわよ!」
カラスは一度ファリエリータを睨みつけ、ギャアギャアと威嚇の声を上げる。カラスを逃がさないという意味では、ある意味成功だ。その隙を狙い、ヴァルフレードが次々とカラスを落としていく。その間に畑の中心部にいる司令塔の前に躍り出た天藍はオスティナートを駆使して惑わせた。司令塔を含め、周囲のカラスがその素早い動きに翻弄される。天藍を追いかけようと滑空を繰り返すカラス目がけて、次はヴェルナーがフラッシュライトをかざした。思惑通り、天藍の動きに気を取られていたカラスたちはフラッシュライトという次の刺激に釣られて農道へと移動する。ようやく畑の上空からそれたカラス目がけ、フェルドが羽や足目がけてスナイピングを撃つことができた。
「1、2、すごい……」
遠方からその様子を見ていたキャロが感嘆の声をあげる。見る見るうちにカラスが減っていっている。
そして、ついにカラスは司令塔のみとなった。
(よし、いける……!)
フェルドのスナイピングで羽の根元を負傷した司令塔はふらついた飛び方で低空へと降りてくる。そこを狙って天藍が足に打撃を与えた。カラスは大きく鳴き声を上げ、バタバタとめちゃくちゃに羽ばたく。
「……っ!」
フラッシュライトを持っていたファリエリータ目がけてカラスは一目散に飛んでいく。
咄嗟に身をかがめ、寸でのところでかわすが二度目の攻撃、嘴が襲い掛かった。痛みを覚悟してギュッと目を瞑ったところでカラスの体が音を立てて大きく横にそれる。
「ヴァル……!」
ヴァルフレードのウルフファングがカラスのボディにヒットしたのだ。そのままドサリと音を立て、巨大なカラスはその体を農道に横たえる。バサバサと何度かもがいた後、ついに動かなくなった。
「ファリエ、怪我はないか?」
「ありがとう、大丈夫よ」
ふぅ、と一息ついてファリエリータはヴァルに微笑みかけた。
「あんまり心配かけるな。心臓がいくつあっても足りないだろう」
ファリエリータの頭を軽くぽんぽんと撫でてヴァルフレードはキャロの家の方へ足を向けた。
家に入るとキャロが喜びの声を上げる。
「すごい!司令塔を討ったんですね!」
「ただ、倒したのは今日襲ってきた分だけ……今後別のカラスが来ないとも限りませんわ」
アマリリスが真剣な面持ちで告げる。
「そうですね、何か対策を打たないと」
「徹底的に追い払い毅然とした対応……と思いましたが、依頼までの流れを考えますと厳しいかもしれませんわね」
レラが大きく頷いた。キャロのあの対応ではカラスにナメられてしまう。
「私はともかくこいつはとにかく腕っぷしが弱くてな」
「そ、そんなはっきり言わなくてもぉ」
「本当のことだろう」
あ、と咲が声をあげる。
「カラスは見つめられるのが苦手なので、大きな目玉のバルーン等を設置するといいかもしれません」
「なるほどな」
レラがメモを取り始めた。キャロが笑う。
「あはは、夜見たら僕がびっくりしちゃうかもしれないです~」
「知るか」
キャロのボケを華麗に切り捨て、レラは続けた。
「他に何か案はあるだろうか」
「彼らは他の鳥と違って知能が高いからな。今回の戦いでまずはこちらに勝てないということは示せたと思う」
イヴェリアの発言にレラとキャロは大きく頷いた。
「そうだな。しかし、時間がたてばこのことを知らないカラスが襲ってくる可能性もある」
「うーん、僕たちがつよいって示せばいいんでしょう?……まだカラスの体は農道に残ってるんだよね?」
一同が頷くとキャロはさらりと。
「じゃあ、羽を毟ってカラスの人形を作って吊るせばいいんじゃないかな!?」
「お前いきなり残酷なこと言うね」
レラは苦笑いを浮かべた。キャロは本気で怒ると怖いのかもしれない。
「牛の放牧用の電気牧柵を設置するという手もありますよ」
かのんの提案にレラはパッと顔を上げた。
「でんきぼくさく?」
どうやら、こちらではあまりメジャーなものではないらしい。
「はい。カラスが入る隙間が無いように畝の左右と上に張るんです。畑に入る部分だけ電流を切って作業すれば安全です」
「この近所じゃ見たことがないな……」
「大きいお店に行けばあるんじゃない?」
「ああ、考えておこう」
レラがメモを書き足していくと天藍が続けて提案する。
「電気牧柵が手に入らなくても、最低限鳥避けネットを設置すればマシだろうな」
うんうん、とキャロが頷く。
「みなさんすごいです……僕平和ボケしてたから対策なんて全然思いつかなくて、ありがとうございます!」
「カラスは頭がいいですし、皆様の提案を不規則に実行して常に警戒させるのがいいかと思いますわ」
アマリリスがそういうと、レラは納得したように頷き、顔を上げた。
「ありがとう、……よし、じゃあ、お待ちかねの収穫体験といこう」
「カラスの処分は僕がやるので気にしないでください~」
またサラッとすごいことを言ったような……。あの数を?誰からも出ることのなかった疑問は静かに消えていった。
バケツに水を張って、レラが畑へと一同を案内する。
「その土から見えている葉がモチニンジンの葉だ」
どの葉もかわいらしいハート形をしている。わぁ、と女子から声が上がった。
「好きに収穫していい。どうか、採れたてのモチニンジンを味わってくれ。あまり提供できなくて申し訳ないが、一組三本までなら持ち帰ってくれて構わないよ」
早速、アマリリスがモチニンジンを引き抜く。土の質もやわらかいため、ぽんっと軽い力で抜くことができた。
「こんなものが生えているだなんて月ってすごいですわね」
バケツの水で土を洗い流し、その表面をぷにぷにとつついた。そして、静かに口へと運ぶ。
「でも、美味しいのですから不思議です」
ヴェルナーも同じくモチニンジンを一口かじる。
「……!美味しい、けれど、不思議な感触ですね」
口の中でもちもちと弾んだ後、ジュレが溢れ出す。彼も月はすごい、と呟いた。
かのんもマリリスと同じように採り立てのモチニンジンを洗ってそのまま丸かじりする。天藍がとなりで同じようにモチニンジンを一口頬張ると、かのんは彼に笑いかけた。
「なんだか兎になったような気分ですね」
ふっと笑って天藍も頷く。
「何か参考になることはあったか?」
かのんの本業、というか生業はもともとガーデニングである。今回のことも、その後学になれば、とお互いに思っているのだ。彼女が優しく笑って頷くと、二人はまた続けてモチニンジンの味を堪能した。
「収穫体験!」
淺稀が嬉しそうにモチニンジンを引き抜き、ぴょこんと顔を上げた。すぐ横にいたフェルドと目が合う。
「初めて見る野菜です、これを使ったらきっと新しい料理ができそうですよね……」
にこっと笑う淺稀にフェルドは少し困ったような顔をしながら答えた。
(淺稀が料理を楽しめるなら何よりだけれど……僕は)
「……人参は……カレーに入れたのが……好き」
少し照れくさそうなリクエストに、淺稀は優しく微笑んで答えた。
「ふふ、カレーに“も”入れてあげますね」
「うん」
顔を見合わせ、二人は嬉しそうに笑う。その様子に、レラも顔を綻ばせた。
「モチニンジン……モチなのかニンジンなのか……」
イヴェリアが難しそうな顔でモチニンジンをつつく。ぷに、ぷに。姿形は人参のそれだが、感触はあきらかに“餅”である。
「モチニンジン、とっても不思議ですね」
咲がモチニンジンを抱えて首を傾げた。
「お料理してみようかな?全く未知の食べ物なのでドキドキですが」
ふふ、と笑う。もう頭の中では何か案が生まれているのだろうか。
「私たちは生で食べることが多いが、軽くあぶってもうまいぞ。あとは喫茶店でデザートに使うことも多いと聞いた」
レラが笑いかけると咲はぱっと更に表情を明るくする。
「いろいろ出来そうですね、よかったらイヴェさんも食べますか?」
「サクが何か作ってくれるというなら、喜んで食べよう。……楽しみが出来たな」
イヴェリアが優しく目を細める。その仕草に、咲はドキ、とほんの少し胸が高鳴るのを感じた。
「楽しみにしていてくださいね」
ファリエリータがキャッキャと燥ぐ。
「一緒に食べましょヴァル!」
「ああ、ほら、これファリエの分」
ファリエリータにモチニンジンを手渡し、ヴァルフレードは自分の分に早速口をつける。
「ん、美味い」
「ほんと!美味しいわね!……これ、お裾分けしてもらえるのよねっ?そのまま食べてもいいし、お菓子とかにも使えそうっ♪」
ん、とヴァルフレードが首を傾げた。
「……ファリエ、料理できたっけ……」
「……な、何よ、簡単なものなら作れるもの!多分!」
疑惑の目を向けられ、慌ててふんっと鼻を鳴らす。
「多分ってなんだよ、多分って」
くくく、と笑ってヴァルフレードはファリエリータのおでこを小突いた。
「な、なぁによぉ~!」
そういうヴァルは、と言いかけてハッと思い立った。
「俺もそんなできるわけじゃないけど、まあ、ファリエよりはできるかな?」
いたずらっぽくニッと笑えば、ファリエリータの頬がほんのりと染まった。その笑みが、なんだか不思議とかっこよく見えてしまって……と、ちょっと悔しくて!
「……ずるい」
「ん?なんか言ったか?」
「べ、別に!」
後日、無事にモチニンジンは祭りに奉納され、キャロとレラは例年通りモチニンジンの収穫にいそしむことができたのだとか。余談では……彼らの農場には定期的に“おおきなめだま”と“カラスの模型”が不規則に吊るされるようになったという……。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:かのん 呼び名:かのん |
名前:天藍 呼び名:天藍 |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 寿ゆかり |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 09月18日 |
出発日 | 09月24日 00:00 |
予定納品日 | 10月04日 |
参加者
- 淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)
- 音無淺稀(フェルド・レーゲン)
- かのん(天藍)
- ファリエリータ・ディアル(ヴァルフレード・ソルジェ)
- アマリリス(ヴェルナー)
会議室
-
2014/09/23-23:36
プラン完成しました!
文字数の関係上カラスよけ対策まで書く余裕がありませんでした;
申し訳ありません;
改めて、宜しくお願いします!
-
2014/09/23-23:14
-
2014/09/23-23:14
今少し時間がありますが、プラン提出してきました
無事、烏を討伐できてモチニンジンの収穫体験を楽しみたいですね
改めまして、皆様よろしくお願いします -
2014/09/23-10:57
>戦闘
ヴァルも近接戦型だから、ライトに近付いてきたのを倒してく事になると思うわっ。
司令塔みたいのが出てきたらスキル使って一気に叩く感じかしら。
>カラスよけ
不自然にキラキラ光る物(自然界に無い物)があると警戒して近付かないって聞いた事があるから、
キラキラテープをネットと一緒に張るとかCDぶら下げてみるとか提案してみるわねっ。 -
2014/09/23-00:57
>戦闘
こちらも近距離型なのでフラッシュライト付近で待機になりますね。
スキルはフラッシュライトがアプローチがわりになると思いますし、
フォトンサークルで付近の方の防御底上げの方向で行こうかと考えていますわ。
プレストガンナーの方が2人もいますし、高所まで飛ばれても対応可能なのが心強いですね。
>カラス
わたくしも同意見ですね。
とりあえずはおすすめされている司令塔をどうにかしてしまって、実力差を見せ付けれれば他のカラスも怯みそうですわね。 -
2014/09/22-19:49
そういえば、今後の対策について何も言っていなかったので
とりあえず鳥害防止用のネットを張って頂くのが無難な気がするので、此方をお薦めしようかなと思っています(作業をしにくくなるのが難点ですけど)
カラスって他の鳥よりも賢い分、敵に回すとやっかいですよね -
2014/09/22-05:37
>戦闘に関して
私達も皆さんの意見で変わると思いますが…。
イヴェさんもフェルドさんと同じくブレストガンナーですので
高所の敵を中心に狙って行きたいと思っています。
>今後のカラスの対策
そうですねー…カラスは頭がいいですからまずはガツンと人間の怖さを分かってもらうのが一番でしょうか。今回のことで理解してもらえればいいんですが…。
とりあえず普通のカラス対策の様子ももう少し調べてみますねー。
-
2014/09/22-02:13
>戦闘に関して
うーんそうですね…一応他の皆さんの対応次第で変える感じではありまあすが、現状では
フラッシュライトで農道に誘導したら飛んでる敵と農道から逃げる敵を中心に撃ち落として行く予定です。
プレストガンナーの特性を考えれば、手が届かない場所に居る敵を対応する方がいいでしょうし…。
>今後のカラス対策
今後のカラスへの対策ですが…本来カラスは頭のいい臆病な生き物だったはずですし…。
野生動物全般に言える事ですが、見かけたら追い払う姿勢を貫いて人間が怖い生き物である事を認識させていくのが一番の対策といえば対策になってくるのかなーと思います。
そこまで認識させるのに、かなり根気はいる作業になってきちゃいますが…。 -
2014/09/21-23:41
皆様お揃いですね、改めて宜しくお願いします
フラッシュライトを農道に設置して烏をその周辺に誘導するとして・・・
皆様の精霊さん達はどのような対応のご予定でしょうか?
天藍は如何せん直接攻撃なので、フラッシュライト近くで待機しライトに向かって来る烏を迎え撃つ予定です
手の届かない高さに飛ばれてしまうと、その後の対応が悩ましいのですよね・・・ -
2014/09/21-23:01
ごきげんよう、アマリリスと申します。
パートナーはロイヤルナイトのヴェルナーですわ。
よろしくお願いいたします。
フラッシュライトを用いての討伐で賛成です。
農道に誘導した方がいいようですし戦闘場所はそのあたりにしておけば問題なさそうですね。 -
2014/09/21-18:17
こんにちわ、咲さん、かのんさん、アマリリスさんはお久しぶり。
ファリエリータさんは初めまして。
音無淺稀と申します。
パートナーはプレストガンナーのフェルドさんです。
宜しくお願いしますね。
モチニンジン…人参とつくからには栄養価も普通の人参と変わらないのでしょうか?
もしそうなら人参嫌いの子とかに作ってあげれたら素敵ですよね。
なにわともあれ、頑張りましょう。
>討伐方法
フラッシュライトで集めて一網打尽案いいと思います。
では攻撃漏れがないよう外側から逃げ出そうとするカラスから撃ち落として行く感じでいってみましょうか。 -
2014/09/21-11:41
こんにちは、淡島咲です。
パートナーはブレストガンナーのイヴェさ…イヴェリアさんです。
よろしくお願いします。
モチニンジン…不思議ですよねー。
味も気になりますししっかり頑張らないとですね。
オオカラスヴァーミン退治についてはかのんさんの案で行けそうですね。
これからの対策は…普通のカラスと同じならおっきな目玉模様のものを置くと効くかもしれませんね。
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2014/09/21-11:05
私はファリエリータ・ディアル! よろしくねっ。
パートナーはシンクロサモナーのヴァルフレードよっ。
モチニンジン、普通のニンジンとは随分違うみたいね! 食べてみたーい!
その為にも討伐頑張りましょうねっ。
方法は、かのんと同じ方法しか思いつかないわね……。
一か所に集めた方がいいのには賛成っ。 -
2014/09/21-00:33
こんばんは、かのんと申します
パートナーはテンペストダンサーの天藍です、皆様よろしくお願いします
モチニンジン、普段は見れない植物なので収穫体験が楽しみです
討伐の方は、
・フラッシュライト使って近付いたところを叩く
・レラさん達に相談して、討伐前にこれ以上モチニンジンに被害が出ないように農業用資材の被覆材で畝を覆う
位しか思いついていないのですが
出来れば1カ所に集めてそこを叩く事が出来れば良いのかなと思っています