【夏の思い出】藍の雫(あご マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

ちょっとちょっと、そこのお二人さん!
そうそう、アナタたちのことよぉ。ね、アナタたち、藍の雫って知ってる?

ええっ、ウソ、知らないのぉ!?オカマのアタシでも知ってるのに!

……んもう、仕方ないわね、お似合いの二人にアタシが特別に教えてあげるわん。
やさしーオネーサマって呼んでくれていいのよ。……オニーサマじゃないわよ。


むかーしむかし、このパシオン・シーには、美しい人魚たちが住んでいたの。
今も住んでいるけど、昔はもっとたくさんの人魚たちに気軽に会うことが出来たわ。

その人魚たちの中でも一際美しい一人の娘が、ある時人間の王子と恋に落ちたの。
熱く燃えるような恋に、娘も王子も夢中になった。
お互いに永遠を近う初々しいその姿はとっても微笑ましくて、
見ているこっちが照れちゃうくらい!だったって聞いてるわ。
いいわよね~、アタシもそんなとびきりの恋愛、してみたいわぁ……

でもね、この話には続きがあるのよ。
涙なくしては語れない物語よ、ハンカチの用意はいいかしら?

……結局娘と王子の恋は悲しい結末になってしまったの。
理由はいろんな説があるわ。
人魚と人間の結婚に周囲が大反対したとか、
王子は他国に許嫁がいて縁談を断ると政治問題に発展しそうだったとか、
あるいはその両方とか。
でも、どのお話でも変わらないのは、二人が最後までお互いを愛してたってこと。
愛しあう二人は離れ離れになり、娘は海に、王子は陸に。
人魚の娘は愛する人に二度と会えない悲しみを一身に負って
今も人魚の珊瑚礁の奥深く、海の底で王子を想って涙を流していると伝えられているのよ。

で、

その人魚の娘が流した涙が、
藍の雫となって人魚の珊瑚礁の側の無人島に時々流れ着くってウワサなの。
二つ拾って、愛する人と一つずつ持っていると、人魚が二人を永遠の絆で結んでくれるんだとか。
愛する人と離れ離れになる苦しみを、他の女の子に味わわせたくないからって。
いやぁ~ん、ろまんちっく~ぅ!
ね、どう、人魚の珊瑚礁。行ってみたくなったでしょ?良いトコロなのよ~ぉ。

……あっらやだ、偶然!こんなところにモーターボートが!
そしてさらに偶然!アタシ、モーターボート、運転出来ちゃうのよね~。
これでも持ってるのよ、小型船舶免許☆

お似合いの二人だから、今更藍の雫なんてオマジナイ、必要ないかもしれないけど、
せっかくここまで来たんだし、夏の思い出に無人島でアバンチュールなんていかが?
青い海!白い砂浜!照りつける太陽!
白い珊瑚礁に囲まれた島で、ヤシの木の揺れる音を聞きながら二人で砂浜を歩く…
んも~ぅ、サイッコーじゃない?二人の仲は進展間違いナシよっ。
アタシの自慢の船で無人島まで送ってあげるわよ~。
いまなら二人で250Jrにオマケしてあ・げ・る!

解説

●場所
白い砂浜に青い海のまさに南国!といった雰囲気の無人島が行先になります。
島内には木製の桟橋と小さな売店があり、桟橋では海釣りを、売店では島の特産物を楽しめます。
周囲を人魚の珊瑚礁に囲まれている為、深く潜って泳ぐことは難しいですが、砂浜で水遊びは可能です。
また、島の中央部にはヤシの木、バナナの木、ハイビスカスの低木が生え島中を見渡すことはできないようです。

●内容
白い砂浜で砂遊びをするもよし、青い海の波打ち際で水の掛け合いをするもよし、
浜辺を散歩したり、夕陽を眺めたり、貝を拾ったりしてひと夏の大切な一ページを作っちゃってください!
ボートはお昼少し前に到着し、夕陽が沈みきる前にパシオン・シーにむけて出港します。
藍の雫は砂浜に漂着するのですが、砂に埋まってしまう事が多いようです。
よく探してみてくださいね。

●売店
店主はここまでボートを運転してきた彼女?彼?のようで、ボートの到着と共に開店、ボートの出発準備と共に閉店します。
商品ラインナップは
*島で採れたヤシの実ジュース 50Jr
*島で採れたバナナ 50Jr
*釣り道具一式レンタル(エサは無料) 150Jr
また、彼女?彼?は大変商魂逞しい方なので、
幸運にも藍の雫を手に入れたお二人には愛を込めて、
*藍の雫ソーダ 2つで50Jr
→ひとりで飲むには大きなグラスにブルーハワイのソーダが注がれ、ハイビスカスが飾られています。
グラスはひとつ、ストローが二本さしてあるタイプのいわゆるカップルドリンクです。
*藍の雫パフェ 2つで100Jr→
ブルーハワイのクラッシュゼリーにソフトクリームとヤシの実の果肉、バナナがトッピングされています。こちらもひとりで食べるには多めの量のパフェ1つに、スプーンが二本ついてきます。
このどちらかをお買い上げくださるように脅……お願いをしてきます。
藍の雫を手に入れた際の参考にしますので、ご希望の方はプランにてどちらかをお選びください。



ゲームマスターより

はじめまして、あごと申します。
プロローグ閲覧ありがとうございます。

青い海っていいですよね~、癒されますよね~。
オカマもいいですよね~、癒されますよね~。

というわけで、
愛と藍と商魂逞しいオカマの話です。
楽しんでいただけるように頑張ります!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

クロス(オルクス)

  アドリブOK

青いビキニジーンズ短パン パーカー

(恋人繋ぎで浜辺を散歩中)
わぁ綺麗な海だなぁ…(微笑
なぁなぁオルク、海に入らねぇ?
どうせ水着着てるし替えの服だってあるし♪
うん冷たくて気持ちいいな!
ってうわっ!?オルクいきなり海水かけんなよ!
こうなったら反撃だ!
あははっオルクびしょ濡れ…
わぉ、銀髪がキラキラして格好良すぎでしょ!
まぁそんなオルクの事が大好きだがな(ニコ
あっオルクが照れてる♪
仕返し大成功☆
悔しかったら捕まえてみろ♪
(暫く逃げ捕まる)
わぁっ捕まっちまったか
オルク相変わらず足速…ってお仕置き!?
口にキスっ!?
無理に決まってんだろ!///
だから…コレで我慢してくれ////
(頬にキスをする



Elly Schwarz(Curt)
  心情】
人魚の話を聞いてたら、以前の事を思い出しました……。
と、とにかく!今回僕はパフェを食べてみたいので、雫を探します!

行動】
・オネーサマの事は真面目にお姉さんと呼ぶ。
・島の中央部の草木を見ながら藍の雫を探す。
・探してる内に草木に夢中になる。

(そう言えば、あまり夢中になってると怒るんでした。)
ク、クルトさんは好きな花とかありますか?
少し意外です。つまらなそうにしてたので……良かった。
僕だけが草木に夢中になのかと、少しばかり不安でしたから。

僕もクルトさんと出かけるのは案外楽しいですね。
そんなに怒らないで下さい。言葉のあやですって、素直に楽しいですから。(微笑)

売店】
藍の雫パフェ(藍の雫を入手時)



ガートルード・フレイム(レオン・フラガラッハ)
  ●心情
はやりの恥ずかしい水着(ビキニ)が嫌で海水浴は避けたが、レオンに悪いことをしたかな…。
しかし海風も爽やかだし、珊瑚礁の海を船で行くのも気持ちいいな!

●桟橋
レオンに呼び寄せられ、「なに?」と素直に寄っていく。
突き飛ばされて水中に潜れば、一瞬びっくりするが、すぐに一度深く潜ってから桟橋の陰に身を隠す。やられっぱなしじゃないぞ。

●砂浜
服を乾かしがてら砂浜で藍の雫探し。見つかったら…「藍の雫ソーダ」を飲もうか。レオンの瞳の色だし…。なんかどうも気恥ずかしいが…な。
※見つからない場合もヤシの実ジュースを各自で飲むと思う。喉渇くしな。

●心情
…来年は海水浴しようかな。レオンが望むなら。



豊村 刹那(逆月)
  服装:黒無地のビキニに白いパーカー
髪型:ポニーテール

心情:
海を見せに来て、無人島に来ることになるとはな。
ビーチは人が多かったし、返って良かったと言えるかも知れない。

行動:
浜辺散歩。
偶に見える逆月の傷跡に、少し遣る瀬無い気持ちになる。

逆月、大丈夫か?
蛇は暑さに弱いと聞いた。蛇のテイルスである逆月も、暑さに弱いんじゃないかと思ってな。

喉が渇いたなら言え! 買ってやるから!
海水は飲むなよ。いいな!?(慌てて腕を引いて立たせる)

購入:ヤシの実ジュース2つ

……そこまで喉が渇いてるならちゃんと言え。ほら、私のもあげるから。

そういえば、『藍の雫』だったか。探してみないか?
ただの好奇心さ。他意はないよ。



「さぁ、着いたわよぉ。二人きりの夏の浜辺、ばっちり楽しんできてね~!」

 ここまでモーターボートを出してくれた彼女のそんな声を背に受けながら
クロスとオルクスがボートを降りると、眼前には輝く白砂の浜辺と紺碧の海が広がっていた。
吸い込まれるようなその深い青に、どちらからともなく引き寄せられるように桟橋を歩き出すと、
ふと、並んで歩いていたクロスの左手とオルクスの右手がかすかに触れた。
恥ずかしさから、慌てて手を引っ込めようとするクロスだったが、オルクスが軽くその手を引いたため叶わず、
驚いて見上げるクロスの視線に不敵な笑みを返したオルクスが、きゅ、と掌に優しく力を込める。
薄紅に染まった頬を隠す様に俯きながらもクロスが僅かな力で掌を握り返したのを感じ、
オルクスはまた笑みを浮かべ、二人で暖かな白砂の上を歩き出した。

「わぁ、綺麗な海だなぁ」
 海色の髪をひとつにまとめ、海風を受けながら眩しそうに眼を細めながら笑うクロスに、
あぁ、綺麗だと返答するオルクスの視線は、しかし海は見ないままクロスだけを見つめている。
その視線に、まるで自分が褒められたかのように感じ、クロスは急いで話題を変えた。
「なぁなぁオルク、海に入らねぇ?どうせ水着着てるし、替えの服だってあるし♪」
「海か、勿論いいぞ」
 靴を脱ぎ、透き通った水に足を付けると、ひんやりと冷たい水にさらわれた白い砂が二人の足を擽る。
流れていく砂の感触かくすぐったくて顔を見合わせ笑いあう。
「……うん、冷たくて気持ちいいな!」
「やはり暑い時は水に入るのが一番だな。と言う事で」
 ふと、クロスの視界の端から隣にいたはずのオルクスが急にいなくなった。
「オルク?……ってうわっ!?」
 にやりと笑い身を屈めたオルクスが波間に手を差し込み、
ぱしゃん、と音を立てて海水をクロスに向かって跳ね上げるのと、
クロスがオルクスを呼んだのはほぼ同時だった。
突然のことに反応が一瞬遅れたクロスは、オルクスの手で思い切り海水をかけられてしまい、
一瞬で髪が濡れてしまった。
「しょっぱい……。オルク!いきなり海水かけんなよ!」
「これの方がもっと涼しくなるだろ?」
 頭から水をかぶってしまったクロスを見ながら高らかに笑うオルクスだったが、
クロスが立ち尽くしたまま動かなくなったのを見、やりすぎたかと急に不安になり
ざぶざぶと音を立てながら波間を歩き、ゆっくりとクロスに近づいた。
「クー?おこ……うわっ!?」
「こうなったら反撃だ!くらえオルク!」
 近づいてきたチャンスを狙い、足で水を蹴り上げて水飛沫をあげ、オルクスに水をかけることに成功したクロスは、
そのまま反撃と称して続けてばしゃばしゃと大量の水をオルクスに浴びせる。
「あははっ、オルクびしょ濡れ……」
「ったく、海水かけすぎだ!」
「初めに仕掛けたのはオルクだろ」
 先程までの余裕はどこへ行ったのか、上から下まで濡れ鼠になりながら文句を言うオルクスの、
銀糸を思わせる髪から夏の明るい陽光を受けてきらきらと輝く海の雫が滴り落ちる。
絵画を思わせるようなその姿に、クロスは思わず感嘆の声を漏らした。
「わぉ、銀髪がキラキラして格好良すぎでしょ!……まぁ、そんなオルクの事が大好きだがな」
「くっ、クー!?おっおまっ…不意打ち過ぎんだろ……!」
突然のクロスからの言葉に、珍しく照れたオルクスは慌てて表情を見られまいと片手で顔を覆ったが、
耳まで赤くなった様子はしっかりとクロスに見られてしまっており、ここぞとばかりに囃し立てられる。
「あっ、オルクが照れてる♪仕返し大成功☆悔しかったら捕まえてみろ♪」
「おいこら、待てクー!」
 先程とは立場が変わり、悪戯っ子のような笑みで波打ち際を走り出すクロスを追いかけるオルクス。
先を走るクロスが砂に足を取られ転びかけたのを慌てて腕を掴んで転ばないように支えてやる。
「わぁっ、捕まっちまったか。オルク相変わらず足速いな」
「クー、捕まえたぜ。……今からお仕置きな?」
 クロスが逃げられないように彼女を捕えた腕にぎゅっと力を込め、
にやりと意地の悪い笑みを浮かべるオルクスに、クロスの表情が強張る。
「お仕置き!?ま、待てオルク、話せばわかる!許せ!」
「そうだなぁ……じゃあ、クーから口にキスくれたら許す」
 告げられたお仕置きの内容に、クロスの頬がまたしても真っ赤に染まった。
「口にキスっ!?無理に決まってんだろ!だから……これで我慢してくれ」
 頬を紅潮させぎゅっと目を閉じたクロスが手を伸ばし、
オルクスの頬に口づけを……しようとして、
「やっぱりだめだ!恥ずかしすぎる!」
 と声をあげながら両手で顔を覆いオルクスの体を押して体を離した。
「やっぱまだ恥ずかしいか……まぁ、今回はこの、照れるクーの可愛さで我慢するか」
 小さく笑ったオルクスの言葉に、さらに顔を赤くするクロス。
そんなクロスの愛らしい姿を見られる特権にしばし酔いしれるオルクスだった。





無人島への船に乗った二人は各々に物思いに耽りながら、
エリーは海を、クルトはエリーを見つめていた。
「どうしました?何かご用ですか?」
「最近エリーの様子が変だと思ってな」
「……人魚の話を聞いていたら以前の事を思い出しました。そのせいじゃ無いですか」
 慌てて目を逸らすエリーに疑問の残るクルトだが、
船が島に到着してしまったためその先は言及できなかった。

「さぁ着いたわよ!足元気をつけてね」
 楽しげに船を桟橋に着ける彼女に、エリーは近づき声をかけた。
「お姉さん、聞きたい事があるんですが」
「あら!何かしら〜?可愛い子にお姉さん、なんて呼ばれると照れちゃうわぁ」
 お姉さんと呼ばれた事が嬉しいのか、頬に手を当てた彼女が勢い良くエリーの方に近づく。
あまりにも近い距離に驚いたエリーが一瞬たじろぎ、それを見たクルトが間に入りエリーを背に庇う。
「アンタ、ちょっと離れろよ」
「あら素敵なナイト様ねぇ。でもレディをアンタ呼ばわりしちゃダメよ。
女の子には優しくしなきゃ嫌われるわよ〜?」
「嫌われ……」
 彼女の言葉にダメージを受けたクルトが口を噤むと、背後からエリーが顔を覗かせ質問を続けた。
「藍の雫パフェって美味しいですか?」
「勿論よ!アタシが腕によりをかけて作るパフェなのよ、美味しくないはずがないわ!
なあに、食べたいの?」
「はい!」
 答えるエリーの瞳は、まだ見ぬパフェへの期待にきらきらと輝くが、
対照的に甘い物が苦手なクルトは、パフェと聞いて遠い目をした。
「パフェか……これは俺も食わないといけない奴か?」
「クルトさん、頑張って藍の雫探しましょうね!」
 すっかりパフェに夢中なエリーの笑顔に負け、クルトが力無くおう、と呟くと
がんばんなさいね、と彼女は笑い、二人の背を大きな手でバンッ、と叩いた。

「まだ背中がひりひりする。アイツ力入れすぎだろ」
「僕はなんともないですけど……」
 差別だ。と思いながら、クルトもエリーに倣い、足元を見て歩き始める。
二人は、彼女が腕によりをかけたパフェのため藍の雫探しをしているのだが、
エリーが島の植物に気を取られ、なかなか探索が進まない。
立派な木だなぁとか、この葉はなんだろうとか言いながら、
ついには砂浜を離れて島の中央部に向かって行ってしまい、クルトは後を追った。
「おい、エリー」
「あっ、クルトさん、見てくださいこのヤシの木!すごく立派で……
あ、すみません(そう言えば、あまり夢中になってると怒るんでした。)」
 我に帰ったエリーはバツが悪そうに謝り、慌てて話題を変えた。
「ク、クルトさんは好きな花とかありますか?」
 そう問われて一番にクルトの脳裏に浮かぶのは、
「紫陽花、か。見る機会が多かったからな」
 クルトに植物への興味が芽生えているとは思わなかったエリーが驚く。
「少し意外です。つまらなそうにしていたので。
良かった。僕だけが草木に夢中なのかと少しばかり不安でしたから」
 エリーの安心した表情に、照れ隠しの仏頂面でクルトが言葉を続ける。
「エリーといろんな場所に出向くのは悪くない」
「僕もクルトさんと出かけるのは案外楽しいですね」
「案外、ってなんだ」
 クルトが反論すると、エリーがふふっと笑って
「そんなに怒らないでください。言葉のあやですって、素直に楽しいですから。
さあ、藍の雫を探しましょうか、パフェが待ってますし」

花より団子と言う言葉があるが、エリーのパフェに対する姿勢は正にそんな感じかもしれない。
「おいしそう!いただきます!」
 目の前の大きなパフェに目を輝かせるエリーを見てクルトは思う。
「(エリーが目を輝かせるのも稀だな。)」
 パフェに興味のないクルトは、砂浜で拾った二人分の藍の雫を掌で転がしながら
スプーンを握ってパフェを食べ始めるエリーを観察し始めた。
普段はあまり見られないエリーの表情に、クルトまで頬が緩む。
機嫌が良さそうなクルトに、エリーはちょっとした挑戦に出た。
「クルトさん、パフェ美味しいですよ。一口食べてみてください」
「だから俺は甘味は……」
 そう言いかけて急に止め、やや考えた後のクルトの行動にエリーは真っ赤になって固まった。
クルトが甘味を気に入れば、甘味を食べられる回数が増えるかも。
そう思っただけだが、まさかクルトがこんな事をするとは思わなかった。
「……仕方ない、一口だけだぞ。あーん」
 目の前でクルトが口を開けたのを見てエリーは頭が真っ白になる。
「な、クルトさ、え、あの」
「一口食べればいいんだろ?食べさせてくれよ」
 そういうパフェなんだろ、とクルトは再度口を開けてエリーを急かす。
真っ赤になったエリーはたっぷり悩み、散々躊躇った後にスプーンに乗せたパフェを一匙、クルトの口の中に落とし込んだ。
食べさせてもらった一口分のパフェを咀嚼し飲み込んで、甘い。と感想を漏らすクルトに、
エリーは真っ赤な顔のまま後は僕が食べますと宣言して、パフェを一人で平らげたのだった。





「は?海水浴はしない?なんでだよ」
レオン・フラガラッハは突然告げられたガートルード・フレイムからの言葉にむくれた。
青い海、白い砂浜ときたら海水浴と水着の美女と相場は決まっている。
「それは……ほら、休暇でも、いついかなる時にオーガが現れるかわからないだろう?
とにかく、海水浴は無しだ」
そう告げて先に船に乗り込んだが、内心では罪悪感を感じていた。
それらしい理由を言ってはみたが、本当は単純に水着になるのが恥ずかしいだけなのだ。
「 (はやりの恥ずかしい水着が嫌で海水浴は避けたが、レオンに悪いことをしたかな )」
「 (よし、無理矢理泳がせてやる )」
二人の思惑を乗せ、モーターボートは海へと出発した。

「しかし海風も爽やかだし、珊瑚礁の海を船で行くのも気持ちいいな!」
船着場を離れてから全く口を開かないレオンに、ガートルードは明るい声で話す。
「まだ不貞腐れてるのか?爽快な景色なんだ、機嫌を治してはどうだ」
「不機嫌なわけじゃない。ちょっと考え事だ」
 ガートルードをどうやって泳がせるか考えているのだ。
ボートの行き先を見ると、白い砂の浜辺から伸びる桟橋が見え、レオンはにやりと笑った。
 着いたわよぉ!という声を聞き、桟橋に降りるとレオンは海を覗き込み、ガートルードを呼んだ。
「ガーティこっち来いよ。いっぱい魚いるぜ!」
「なに?」
 レオンに誘われるまま彼の視線を追い、桟橋から海の中を覗きこんだ途端、
ガートルードは強く背を押され、わっ!と声を上げ、海に落ちてしまった。

目を開ければ、透明度の高いコバルトブルーの海の中、魚たちが驚き逃げるのが見える。
落ちた瞬間は驚いていたがすぐに冷静になり、
どうもレオンがふざけたようだと理解したガートルードは、
そのまま海の深くまで潜り、レオンからは死角になるように桟橋の陰に身を隠した。
「 (やられっぱなしじゃないぞ。 )」

 その頃桟橋の上ではレオンが、水面に顔を出すガートルードを待ち構えていた。
が。
 しばらく待っても一向に表れないので徐々に心配になる。
「打ち所が悪くて気を失ってたりしてるんじゃないだろうな…」
 ガートルードが水底に沈む姿が一瞬脳裏を過り、一気に焦燥感に駆られたレオンは
慌てて桟橋から海に飛び込んだ。
水飛沫がおさまったのを見計らい水を蹴って水面に顔を出し、急いで周囲を見回して、
桟橋の陰でくすくすと笑っているガートルードが見え、ようやく反撃されたことに気付く。
「なっ、ガーティ!」
「レオン、今の顔!最高だったぞ」
「お前!俺、今結構心配したんだぞ!」
 楽しそうに笑うガートルードの無事な姿に安心しながらも、
きっちり文句は言うレオンに、ガートルードがさらに言い募る。
「私は君なんかにやられたりしない。心配は無用だ」
 挑発的に笑ったガートルードに、コノヤロ!と声を上げて掴みかかるが、
ひらりと躱されてしまい、レオンはまたしても派手な水音と共に海に突っ込んだ。
「さてレオン、上がろう。ここで私たちが大騒ぎしては、魚たちに気の毒だ」
 滑らかな身のこなしで浜にあがるガートルードに、レオンは渋々ながらも従うのだった。

 服が乾くまで時間がありそうだし、と砂浜を歩き始めるガートルードの隣を歩きながら、
レオンがぽそりと呟く。
「この手の伝説ってなんで悲恋が多いかねぇ」
「レオンはハッピーエンドの方が好きか。私と一緒だな。
ハッピーエンド目指して、藍の雫でも探してみるか?」
 そう言って足元を眺めながら数歩先を歩くガートルードに、
聞こえてたのかよと毒づくレオンの足が、何かを蹴った。
拾い上げると、それは親指の爪先ほどの大きさの結晶のようだ。
その透き通る藍色に、レオンはこれが藍の雫だと確信した。
 藍の雫を持つレオンの手元を覗き込むガートルードが感嘆の声を上げた。
「綺麗だな。海の底を覗いているようだ。待ってろ、私も見つけてみせる」
 身を翻して、再度砂浜の上を注意深く歩くガートルードの後をレオンも歩き出す。
ガートルードが藍の雫を見つける頃には、涼しい風が吹き始めていた。

「お・ま・た・せ!藍の雫ソーダよぉ!」
 海辺の白いテーブルセットに座り店主からソーダを受け取る。
大きなグラスの中の青いソーダにはご丁寧にストローが二本差し込まれていた。
「なんでパフェにしなかったんだ?」
 レオンが尋ねると、ガートルードは珍しく俯き歯切れ悪く話す。
「レオンの瞳……」
「ん?俺の瞳がどうかしたって?」
 聞き返すレオンの声に顔を上げるガートルードの頬が赤い。
「レオンの瞳の色だし……。なんかどうも気恥ずかしいが、な」
 はにかむその姿に、尋ねたレオンまでつられて赤くなってしまう。
「ガーティって、たまにこっぱずかしいこと言うよな!……まあ、悪い気はしないぜ」
 にやりと笑い、飲もうぜ、と片方のストローに口を付け、ガートルードにも勧めた。
初めは照れていたガートルードもおずおずとストローを加え、二人は甘いソーダを楽しんだのだった。





白い砂浜を二人並んで歩く。
静かな浜辺には騒音は無く、聞こえるのは波が打ち寄せる音と砂を踏みしめる二人分の足音だけだ。
(海を見せに来て、無人島に来ることになるとはな。
ビーチは人が多かったし、返って良かったと言えるかもしれない。)
そう思いながら豊村刹那は隣を歩く逆月を見る。
時折パーカーから覗く傷痕に遣る瀬無い気持ちを抱くが、逆月は特に気にした風もなく、
海や浜辺に興味があるのかないのか、周囲をぼんやりと眺めていた。
「逆月、大丈夫か?」
 刹那がそう尋ねると、なにがだ、と言いたげな瞳で逆月がこちらに視線を向ける。
「蛇は暑さに弱いと聞いた。蛇のテイルスである逆月も暑さに弱いんじゃないかと思ってな」
 慣れない南国の暑さの中で過ごす逆月のことを気遣う刹那だったが、
逆月はそんな刹那を無表情に見下ろし、
「暑いには暑いが、問題は無い」と答える。
体調に変化はなさそうだったので刹那はひとまず安心し、浜辺をまた歩き始めた。

「そうだ逆月、海に入ってみないか。足だけなら問題ないだろう」
 せっかく海に来たのだからと、刹那が逆月にお手本を見せるかのように
靴を脱いで波の中に足を浸すと、逆月も真似をし、水の中に足を沈める。
「海水というものは、随分とべたつくのだな」
 じっと動かずに、足に寄せては返す水面を眺めていた逆月が突然屈み込み、
波間に手を差し込むと、海水をひとすくい、零さないように気を付けながら口元へ運んで……
「ま、待て!飲むな!」
 逆月のしようとしていることに気付いた刹那が慌てて掌の中の海水を捨てさせる。
それでも手に付いた海水を逆月はそっと舐め、辛い、飲めそうに無い、と呟いた。
「喉が渇いたなら言え!買ってやるから!海水は飲むなよ。いいな!?」
 まだじっと水面を眺めたままの逆月の腕を引いて立たせると売店まで連れていき、
ヤシの実ジュースを二つ注文し、片方を逆月に手渡すと、
喉が渇いていたのか、ジュースを一気に飲み干し、甘い、と小さな声で呟いた。
「……そこまで喉が渇いてるならちゃんと言え。ほら、私のもあげるから」
 刹那がジュースをもう一つ渡してやると、逆月は無言で受け取り、今度はゆっくりと飲み始めた。
「そういえば、藍の雫だったか。探してみないか?」
 何の気なしに話しかけると、逆月はジュースを飲みながら視線だけを刹那の方に向ける。
 逆月が藍の雫の伝説を理解しているかもわからないが、
じっと見つめられて少し気恥ずかしくなった刹那は少し笑いながら付け足した。
「そんな顔するな、ただの好奇心さ。他意はないよ」
 刹那の言葉を聞いて、逆月はそっと目を閉じた。
「……砂浜に埋もれていると言っていたな」
 目を開けジュースの容器を置くと、逆月は立ち上がり歩きだした。
逆月の突然の行動に驚く刹那を振り返り、探すのだろう、と呼ぶ逆月が、
どうやら出発前に聞いた藍の雫の在処を思い起こしていたらしいことに刹那は少し遅れて気づき、
急いで逆月の後を追った。

「……無いな」
 探し始めて数刻。逆月は早いうちに砂の中に埋もれた藍の雫を見つけることが出来たが、
刹那はあちこち探し回るものの、目的の物をなかなか見つけられずにいた。
「逆月、暑いだろう。そろそろ戻ろうか」
 逆月を気遣いそう声をかけるが、逆月は無言で首を横に振り歩きだす。
まだ探すつもりのようだ。
仕方なく刹那も砂を掘り起こしたり岩陰を覗いたりと探索を再開し、しばらく経った頃。
「あった……!」
 砂の中に輝く藍色の光に気付いた刹那が急いで拾い上げると、
それは親指の爪先ほどの大きさの結晶だった。
指先でそっとつまんだはずの雫にぴき、と音を立ててクラックが入る。
藍の雫を発見した嬉しさに力加減を間違えたのだ。
「ああっ!やってしまった……」
 割れはしなかったが、まるでクラック水晶のようになった雫を刹那が眺めていると、
横から逆月が、自分の見つけたものと取り換えた。
「俺はこっちがいい。鱗みたいだ」
 表情を動かさない逆月の本心は計り知れないが、その横顔がどこか嬉しそうだったので、
刹那も無理に取り返すようなことはしなかった。

「ほら、ソーダだ。喉が渇いただろう」
 店主から受け取った藍の雫ソーダを手渡すと、逆月は静かに、しかしかなりの勢いで飲み始めた。
本来ならば二人で飲むもののようだが、刹那は逆月が満足した後に少し飲むつもりだ。
逆月はやはりあまり暑さに強くはないのかもしれない。
それが、蛇のテイルスであるが故か、それとも彼の本来の性質なのかは分からないが、
平気そうにしている逆月のソーダを飲む勢いが普段とは違う喉の渇きを示している。
刹那も喉が乾いていないわけではないが、保護者としては逆月を優先してやりたいとも思った。
「海、楽しかったな」
 逆月は話しかけた刹那に視線を向け、ソーダを飲むのを一度やめ、口を開く。
「見知らぬものばかりだった」
 そうだろうな、と刹那が笑うと、逆月は満足げにソーダのグラスを置いた。



依頼結果:普通
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あご
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 07月17日
出発日 07月24日 00:00
予定納品日 08月03日

参加者

会議室

  • [4]豊村 刹那

    2014/07/20-14:47 

    皆さん初めまして。
    私は豊村刹那。こちらは契約したテイルスの逆月だ。

    『藍の雫』は、そうだな。
    探すのもいいかも知れないな。

  • エリーさんとクルトさんはお久しぶり。
    クロスさんとオルクスさん、刹那さんと逆月さんは初めまして。
    ガートルードと、精霊はポブルスでロイヤルナイトのレオンだ、どうぞよろしく。

    んーと私たちはどうしようかな。
    海釣りには興味あるけど、この間釣りしたばかりだし。
    (悩んでいると、後ろで精霊がにこにこと)
    …なんか企んでる…?(汗)

  • [2]クロス

    2014/07/20-11:29 

    クロス:
    エリー久し振りだな! その節は世話になった(微笑)
    他は初めましてだよな?
    俺はクロス、パートナーはテイルス銀狼族でプレガンのオルクスだ
    宜しくな(微笑)

    俺達は海辺や砂浜散歩しようかと…
    運が良けりゃ藍の雫見付けられたら良いな(微笑)

  • お久しぶりの方が多いようですね。
    クロスさんは先日の「若返りの呪い?」ぶりで、ガートルードさんとは「オーガの雄叫び」以来だったでしょうか。
    改めましてElly Schwarz、エリーと言います。精霊はディアボロのCurt、クルトさんです。
    よろしくお願いします!

    僕は今回「藍の雫パフェ」を食べてみたくて、藍の雫探しがメインになりそうです。
    見つけられると良いのですが……。


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