プロローグ
●小熊はどこに……
タブロスにあるA.R.O.A.本部。
ここにはカラフルな6色の小熊が住み着いている。
言葉を話し、文字も理解する。
これは全てウィンクルム達からの賜りもの。
今日も元気に本部の中を……どうやらいないようだ。
それは朝一番の出来事。
「すみません!こちらにカラフルな小熊様が6匹いませんでしょうか?」
そんな質問が本部に木霊する。
「小熊ですか?」
対応したのは小熊達の面倒をみているミリアルド・ウォルフ。面倒をみたりお世話をしているうちに小熊達に懐かれたA.R.O.A.本部の男性である。
「はい!赤、紫、青にピンク。そして茶色に黄色と6色の小熊様なのですが……」
尋ねてきたのは透き通った色白の金髪の女性。
『小熊様』と様を付けていることを少し疑問に思いつつミリアルドは対応をする。
「えーいますよ。ここに住んでいますが……どちらさまでしょうか?」
「いらっしゃるんですね!」
いるという応えに瞳を輝かせる女性は少し前のめり気味にミリアルドへと顔を近付けた。
「はい…あなた様は……」
勢いある女性に少々の焦りを感じながらミリアルドはもう一度同じ質問をした。
「これは失礼をしました」
彼女は話し出す。
ノースガルドの北方に位置するスノーウッドの森の近くに住む教会の者で、名をエスメル・マリエールというと。
スノーウッドの森に住んでいた小熊達がここタブロスに遊びに行くことは本人達に聞いていたのだが、一向に帰らず、このままだと森の均衡が保てなくなると話し出した。
何の話なのか全く掴めないでいるミリアルド……エスメルに質問をする。
「均衡と小熊達が何か関係あるのですか?」
と。
その質問に驚くエスメル。
「小熊様はもみの木のある周辺のスノーウッドの森の守り神様です!」
突如な告白に腰を抜かす勢いのミリアルド。
「は!?」
寝耳に水である……そんな話聞いてない、と。
「何処にいらっしゃるんですか?」
いつもならば2階の小熊部屋にいる……今日は慰問もないしと。
ミリアルドは今までの経緯をエスメルに話し出す。
小熊達がなぜここに来たのか、なぜここに住んでいるのか、どんな仕事をしているのかを。
そんな説明をしている頃、朝ごはんを貰おうと小熊たちがミリアルドの下を訪れようとしていたのだが……。
「エスメルなのよ!」
先頭にいたピンク小熊が小声で言う。
「なんでここにいるのぉ~?」
赤小熊が疑問顔で他小熊に尋ねる。
「なんでかな……いたずらしてないのよ……」
しょぼん、と青小熊が耳を垂らす。
「森でなにかあったのかしら……」
「連れ戻しにきたのぉ~?」
「まだいたいのよ……」
黄色小熊、紫小熊、紫小熊もしょんぼりする。
「戻っていただかなくては……困ります!!!」
エスメルの声が本部中に鳴り響く。
その声に小熊達はビクッと体を震わせた。
「嫌なのよ……ウィンクルムの皆といたいのよ……」
「いや……」
6匹の小熊の瞳から涙が零れだす。
「に、逃げるのよ!」
ピンク小熊がフワフワ拳を作り天へと掲げる。
「皆、いくのよ!」
黄色小熊もその場で立ち上がる。
それに呼応するように全員が立ち上がると入り口へとこっそり小走りしてトテトテと外へと出て行った。
「困るのは分かります!ですが、小熊達の話も聞かないと!」
「小熊様の話ってお話しは多少しかできませんし、それに均衡が!」
「均衡といわれてますが、こちらの調査では最近森周辺は平穏だと伺っておりますが!」
「た、確かに……ですが、周辺の人々はここ数年小熊様がいないため不安がっている方々もいらっしゃるのです!」
「あと、いま小熊達は多少どころか立派に話も出来ますし、文字を書くことも出来ます!あなたのお話を聞いていると人の身勝手な気がします」
2人の話は徐々にヒートアップしているようだ。
「小熊たちがいなくて、周辺が危険になっている!というわけではないでしょう?」
「皆が不安がっているのです……お供え物も無駄になるし……それに愛でれないのは……」
(愛でれない……なんだそれは……)
ミリアルドは少し訝しげな顔をエスメルに向けた。
丁度そこにあなたたちは通りがかった。
2人をなだめ改めて話しを聞く。
ミリアルドの話もエスメルの話も言っていることは分からなくもない……しかしここは小熊達の話を聞くのが一番なのでは?とエスメルを説得し、小熊達の下へと行こうとしたのだが。
「小熊達ならさっき外にいったよ!」
と顔見知りのウィンクルムに言われたのだ。
話しを聞こうにも本人達不在、その時の状況を聞けば、「逃げるのぉ~」と皆して言っていたとか。
とりあえず話しを聞かねば、と貴方たちは小熊を探すため、タブロスの街へと駆け出した。
「ここにいれば大丈夫なのよ!」
クーラーもあり涼しく寝転ぶピンク小熊。
「そうなのよ」
「他の皆がいるから大丈夫なのよ……」
ピンク小熊、黄色小熊が周辺に気配がないか気を張っている。
窓にあるカーテンが揺れる。
多くの人々が楽しそうに話す声。
ここは楽しく過せる場所……戻りたくないと赤小熊が瞳を潤ませる。
「風が気持ちいのぉ~」
「影に居れば暑くないのぉ~」
青小熊と紫小熊は足元で子供達の声を聞きながらのんびりとお昼寝の準備。
森では小鳥の囀りとたまに来る人の声……そしてたくさんの動物の仲間達の声。
「抱っこされないのいやなの」
「いやなの……」
お互いに顔を見合わせて耳を垂れさせる。
「お腹すいたの!」
茶色小熊は隠れながら移動をしている。
見知った声を聞けば即座に隠れつつ食材のある場所へと向かっている。
「見つからないの!」
動きは早い……さすがはシノビのウィンクルムに習っただけはある。
隠れ方や素早さはぴか一である。
ウィンクルムの皆さんは小熊を探しだし、確保をしてください。
小熊達は森に戻ったほうが良いと思いますか?それともこのままタブロスでオーガに襲われた人々の慰問を続けつつここタブロスに滞在したほうがよいと思いますか?
答えは皆さんの手の中に!!
解説
【目的】
・タブロスの街から小熊を探し出し小熊に森に戻りたいか聞く
・その上で小熊達が戻ったほうが良いかどうか判断し、説得等(小熊たち、エスメル、ミリアルド含む)をする
【小熊について】
・二足歩行し、人語を解します。行動や思考は人と変わりません。
好奇心旺盛で、フワフワの毛並みで人懐っこいです。優しく思いやりがあります。
好物ははちみつ、木の実、とうもろこしです。最近はチョコレートも仲間入りしたようです。
個性を有しておりますが、甘えん坊で抱きつき癖等があります。
・木や木陰、建物の陰等に隠れている場合があります。
また、身長が130cmほどで小熊ですので隠れるのは得意です。
・ピンク、黄色、赤の女の小熊は知恵を絞り考えて賑やかで涼しいところに隠れています。
・青、紫は風を感じながら影になっている場所に潜んでいるようです。
・茶色小熊は奇想天外に隠れながら移動しています。パートナーの黄色小熊に聞くのが良いかもです。
・全員好物には目がありませんし、甘えん坊な子は何かをしてあげると寄ってくるかもしれません。
【場所や時間】
・時間帯はお昼頃の晴天です。猛暑日ですのでスノーウッド出身の小熊たちはあまり移動してなさそうです。
・A.R.O.A.本部周辺半径3メートル以内で、公園や野外施設、商業施設、もしくは本部内に戻っているかもしれません。
【注意・ジェール消費について】
・アドリブが入る場合がございます。NGの方はプランに「×」とお書きください。
・過激な発言や行動があった場合描写できかねます。
・探し出した後小熊たちとお茶をしましたので300jrいただきます。
ゲームマスターより
草壁 楓でございます。
小熊たちにお迎えがやってきました。
本人たちにも主張があるようですが、今回は皆様のプランで森に帰すかタブロスに留まるかを決めたいな、と思いついたエピソードです。
森の様子等気になるようですが、本人たちはもっと役に立ちたいと考えてもいるようです。
小熊たちは過去エピソードに出させておりますが、そちらとは関連性はありませんので読まなくて問題ございせん。
夏風邪をずっとひいていて治らず、こりゃ歳かな……なんて考えている今日この頃です。
まだ暑かったり寒かったりとしておりますので、皆様風邪等にはお気をつけくださいませ!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
かのん(天藍)
まず小熊さんを見つけないと 近所の商業施設へ 冷えた蜂蜜たっぷりレモネード数本買って日陰になる物陰等探し呼びかけ (お菓子で釣るわけではないのですが…)冷たい物飲みながら小熊さん達のお話が聞きたいです 言葉を覚えたり、訓練をしたり 小熊さん達が今まで色々頑張ってきた事を知っています 私はこれからも小熊さん達が思うように過ごして欲しいなと思います 私達は何があっても小熊さん達を応援しますから まずは小熊さん皆で集合してこれからのお話しして それからエスメルさんに小熊さん達の今の気持お話ししてみませんか? エスメルさんに 小熊さん達は沢山の人達の心を癒やしてくれています 今はいつでも帰れる故郷として待ってて頂けませんか? |
出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
まあまあ、とにかく一度話し合ってみましょう とりあえずエスメルをなだめ小熊を探しに行く 外は暑いからもしかして戻っているかも? 他の仲間とインカムで連絡を取り合いながら本部の中を探す 見つけたらお菓子で呼び寄せてみる お腹すいてない?お菓子をたくさん持ってきたの エスメルのことはちょっと置いといて、皆でおやつにしましょう 全員見つかったらおやつタイム 食べながらリラックスしたところでそれとなく 皆はタブロスやAROAでの生活が好き? それじゃあ、森での生活はどうかしら 寂しくなったりしない? どっちも気になるなら、どっちにも行けばいいじゃない 一つに決める必要はない どんな結果になっても、あたし、小熊に手紙書くわね |
シルキア・スー(クラウス)
アドリブ歓迎 事前 人数分インカム申請し皆に配る エスメルさんには本部で待って貰い その間慰問先から届いているだろう『小熊達へのお礼の手紙』を読ませてあげて欲しいとミリアルドさんに頼む 経緯は聞いてるのよね ならこれでその功績を実感して貰えたらいいな 捜索 通行人に小熊の目撃情報を尋ね辿ろう 目につくよねあのコ達 情報はインカムで共有 誘き出しは蜂蜜パンケーキ用意(私も食べたい! 小熊ちゃ~ん おやつ食べてお話しましょ あ、でもその前にハグさせて~ 会えたらまずハグしたい 会えた~(もふもふ 森の守り神様との事なので確認したい 長期間森から離れていて体に良くない影響が出たりはないの?(心配 あるなら一度森へ帰る必要もありそうね |
●小熊たちの意思を
タブロスにあるA.R.O.A.本部。
シルキア・スーはミリアルド・ウォルフに頼み6人分のインカムを持ってきてもらった。
「あの子たちはどこに……」
ミリアルドは不安そうにそれをシルキアに渡す。
「そんなに小熊様は帰りたくないんでしょうか……」
小熊たちを探しに来たエスメルは少し不満そうな顔で俯いている。
「まあまあ、とにかく一度話し合ってみましょう」
宥めるようにそう声を掛けたのは出石 香奈である。
「そうですね……小熊さんたちの話も聞かないで、というのは……」
そこにかのんもエスメルを少し困り顔で見つめつつ話しかける。
「話し合い?なぜですか?」
「とりあえずどこかへ行ってしまった小熊たちを探さねばならんだろう」
クラウスは落ち着いた声でそう言うのだが……聊かエスメルは納得していないように困り顔。
「小熊たちにも意思があるんだ」
天藍は小熊たちと過去過したことを考えつつエスメルに言う。
「勝手に連れて帰ろうとすれば反発もするのもあたりまえだ」
レムレース・エーヴィヒカイトも強く頷きつつ、天藍に同意する。
「皆さん、これ!とりあえず小熊たちを探さないとね!」
インカムを渡しながらシルキアはそう言い放つ。
「エスメルさん!あなたはここで待っていて……ミリアルドさん、その間、慰問先から届いている『小熊達へのお礼の手紙』を読ませてあげて欲しいの」
シルキアはそれを読むことでその功績を実感して貰えたらいいな、と考えたからである。
「経緯は知ってるよね?」
「はい、先ほどミリアルドさんから……」
じゃあとシルキアは探す間に読んでいて欲しいとエスメルに言う。
「シルキアさん、わかりました」
ミリアルドは深く頷く。
「では、いきましょう!」
かのんの号令で皆A.R.O.A.本部から駆け出していく。
その後ろ姿を見送りながらミリアルドは一つの大きな箱をエスメルの眼前へと差し出した。
「これは??」
「小熊たちに届いた、救われた方々からの感謝の手紙です……皆さんが戻るまで読んでいてください」
エスメルは受け取りつつ中を覗き込む。
そこには100通を遥かに超える手紙。
近くの椅子にエスメルは腰掛けると、中の手紙を手に取った。
●小熊たちはどこへ……
A.R.O.A.本部周辺。
今日は猛暑日……ジリジリと照らす太陽が眩しく風もない。
シルキアとクラウスはインカムを装着し、近隣で聞き込む調査をしている。
カラフルな小熊たちだ、目に付かないわけがない、と。
「すみません!この辺りでカラフルな小熊を見ませんでしたか?」
通りかかった女性に聞くと、
「さっきショッピングビルに入っていったわよ!」
「いつぐらいだろうか?」
続けてクラウスも聞き込みをする。
「15分ぐらい前かしらね……」
「何匹?」
「3匹よ?」
「忙しいところを失礼した」
クラウスは丁寧にお辞儀をし、女性は軽く会釈をし去っていく。
「こちらシルキア!小熊3匹がショッピングビルに入っていくのを見たって!」
「こちらかのん、今商業施設にいます」
『子供広場や玩具の家でぬいぐるみに紛れていたりしないかな?』
シルキアは考えていた。
小熊ならぬいぐるみに紛れていては分かりづらいかもと。
「なるほど!」
『あとは……涼の取れる場所を重点的に探すのはどうかな?』
そして暑さに弱いため、涼しい場所にいるのではないかと。
「私も考えていました!探してみます」
多くの人で賑わい、外は猛暑でも中は涼しく楽しそうな声があちらこちらから聞こえてくる。
雪が降る地方に住んでいる小熊……この暑さは体に堪えるのだからここのような涼しい場所にいるのでは、とシルキアと同じく考えた故にここに居た。
どうやら先ほどの報告から、当たりのようだ。
「すみません!」
かのんは辺りを見回しながら通行人の男性に声を掛けた。
カラフルな小熊を見なかったか、と尋ねれば3階にあるチャイルドスペースで見たという。
「何色でしたか?」
「えっと、赤色にピンク色、黄色だったような」
「ありがとうございます!」
かのんがいたのは1階、エスカレーターで3階まで登ると、直ぐ傍にある施設案内の看板をみる。
「えっと……ここですね……」
そう言うと足早にチャイルドスペースへと向かう。
中に入ると、小熊は居ない。
「……ここのはずなのですが……?」
人気がなく静まり返っている室内だが何か寝息のような音がする。
その音を辿りつつ近付けばソファーの裏側に3匹寄り添って赤小熊、ピンク小熊、黄色小熊が気持ち良さそうに眠っている。
「こちらかのん、赤さん、ピンクさん、黄色さん発見しました」
かのんの声が全員の耳に入るとそれぞれ「よかった、了解!」と返答がきた。
「皆さん……冷えた蜂蜜たっぷりレモネード数本買ってきましたよ」
かのんは優しく小熊たちに声を掛ける。
「はちみちゅ……」
「はちみつ?」
「ひえひえ……!?」
かのんの声に驚き飛び起きる3匹。
(お菓子で釣るわけではないのですが……起きたようですね)
「「「か、かのんちゃんなのぉ~!!」」」
「皆さんが無事で良かったです」
かのんは冷えたレモネードを差し出しながら優しく微笑んだ。
「見つかったか」
かのんの精霊天藍はかのんのいたショッピングビル隣にある公園内を捜索していた。
「どこにいったんだ?木陰か木の上か……」
木陰や木の上を重点的に見ている天藍。
そこそこの広さのある公園で、木々も多くなかなか見つからないようである。
『こちらクラウスだ』
探しているとインカムからクラウスの声がする。
『先ほど、公園で2匹、青色と紫色の小熊殿を見たと子供から聞いた』
「こちら天藍、今公園だ!了解!」
子供、と考えながら子供達の声がする方向へと歩みだす天藍。
子供達の声が近付いてくると近くにアイスの露店を見つけた。
「チョコレート、か」
一言呟くと天藍はチョコレートアイスを2つ購入する。
「小熊達!チョコアイス溶ける前に出てこいよ!」
この辺りが一番子供の声がする……居るならばここでは、と天藍は声を張り上げてみた。
木陰に居るのではと覗くと!
「てん!ら~ん!」
「チョコーーーーーー!!」
その木陰の上から小熊が降ってきた!!
「うおっ!」
さすがの天藍も驚いたのか目を見開きつつ、2匹の小熊をキャッチ。チョコレートアイスを落とさずにお見事!
「チョコーーーーー」
「ここにいたのか……」
地面へと2匹を下ろしながら頭をワシャワシャと撫ぜてやると気持ち良さそうに小熊たちは目を細める。
「チョコ!」
「ほら、どうぞ」
「ありがとうなのぉー」
紫小熊抱きつくように天藍に近寄ると天藍はチョコレートアイスを差し出してやる。
「天藍~」
青小熊はスリスリと足元に頬を寄せる。
「青小熊もほら」
チョコレートアイスを差し出せばもふもふの手でそれを受け取った。
「こちら天藍、紫と青を発見!本部に連れ帰る」
天藍がインカムに向けて話す。
『了解した』
クラウスが安心した声音でそう返した。
「あとは……茶色だけだね」
「そうだな……はて……」
クラウスは顎に手を当てて考える。
クラウスも他の皆と同じく野外施設、木の上やベンチの陰等を探してはいるが見つけられない。
シルキアもクラウスと同じく胸の前で腕を組みつつ考える。
先ほどから聞き込みをしているが、他の情報がない。
あと1匹。
『こちら香奈、今日は猛暑だからもしかしたらと本部に戻ったの』
「本部!!」
『灯台下暗しって言うじゃない?』
「それもそうだね!お願いね!」
香奈の言葉にシルキアとクラウスは顔を見合わせ頷き合った。
本部の内部には香奈とレムレースの姿。
レムレースは香奈の手作りお菓子が詰まったクーヘンバスケットを手に持っている。
「気が早いデザインだが味は問題ないから良しだ」
レムレースはお菓子を見つつ香奈に言う。
「気に入ってくれると嬉しいわね」
笑顔で言葉を交わしていると、前方に隠れるように進む影が見える。
『こちらシルキア、今黄色小熊に聞いたら、茶色小熊はお腹を空かせていて、本部の食堂辺りにいるんじゃないかって!』
香奈とレムレースがいるのは丁度食堂の厨房付近……影は小熊に間違いないようだ。
「了解」
香奈が返答をすると、2人は頷き合い、間違いなかった……っと気付かれないように影へと近付く。
「レム……」
「茶色小熊のようだな」
そっとそーっと影へと近付くと急いだようにどこかに影は消える。
「お腹すいてない?お菓子をたくさん持ってきたの」
消えた方向へと香奈は優しい声音で影に声を掛けてみた。
「エスメルのことはちょっと置いといて、皆で『おやつ』にしましょう」
“おやつ”の部分をやや強調して香奈は言う。
「香奈の手作り菓子は味が格別にうまいぞ!」
レムレースも追い討ちのように影に向かって言い放ってみる。
すると、
「うまうま?」
と、茶色小熊はひょっこりと顔を物陰から出してくる。
「蜂蜜たっぷり~」
満面の笑みを浮かべて香奈は茶色小熊に告げてみる。
「はちみちゅ~」
と言いながら小熊とは思えない俊敏な動きでレムレースの持つクーヘンバスケットへとやってきた。
「皆でたべましょう!」
「みんな?エスメルも?」
「いや、小熊と俺達で、だ」
茶色小熊は瞳を輝かせ敬礼をするようにもふもふの手を額に当てる。
「あい!」
その様子に香奈とレムレースは微笑みを浮べ、インカムにて皆に話し出す。
「茶色小熊を見付けたわ!」
『了解!今本部に皆で向かっている!』
その声は天藍、後ろでは楽しそうな青小熊と紫小熊の声。
『こちらも向かってます』
もう1人応えたのはかのん。彼女の後ろでは女小熊の声がする。
『私たちは付いたよ!小熊の部屋に行くね!』
次はシルキアの声。
これで小熊全員を探し当てることに成功した。
お菓子にはめっぽう弱い小熊である。
●小熊たちの思い
A.R.O.A.本部内にある小熊たちの部屋。
丸い机に可愛らしい椅子が6脚とウィンクルム用にと用意された椅子が6脚用意されている。
それぞれ思い思いの場所へと腰を落ち着けると。
「小熊ちゃ~ん、おやつ食べてお話しましょ あ、でもその前にハグさせて~」
シルキアはそう言いながら赤小熊と紫小熊をもふもふとハグしている。
そのふわふわな感触にシルキアの顔は幸せに溢れている。
「会えた~」
シルキアは更にもふもふのふわふわを楽しんでいる。
「くすぐったいのぉ~」
「シルキアちゃんいい香りするのぉ~」
小熊も嬉しそうな顔。
そんな様子に自然とクラウスの顔も優しい微笑み。
「今日は暑いですから、皆さん冷えたレモネードをどうぞ!小熊さんたちのは蜂蜜をたっぷりにしておきましたよ」
かのんは微笑みを浮べながら1人ずつにレモネードの入ったカップを渡していく。
天藍もそれを手伝いつつ小熊たちの頭を撫でていく。
そして机には香奈の多種にわたる手作り菓子、シルキア持参の蜂蜜パンケーキ。
「さあ、召し上がれ!」
香奈がいうと、
「いただきまーしゅ!」
と甘えたな言葉でお菓子やレモネードを口にする。
逃げ出すぐらいだ、まずはリラックス、としばしの間歓談するウィンクルムと小熊たち。
慰問した場所、そこであった話し、ウィンクルムの長き戦いの話し。
話題は多岐に渡り、部屋中には笑い声も響き渡る。
「皆はタブロスやA.R.O.A.での生活が好き?」
その話題に最初に触れたのは香奈だった。
「好きなのよ!皆優しいし、ね!」
「そうなのよ!」
応えたのは黄色小熊、呼応したのは茶色小熊。
「それじゃあ、森での生活はどうかしら、寂しくなったりしない?」
香奈は続けて小熊たちに尋ねてみる。小熊たちは少し沈黙すると、ピンク小熊が口を開く。
「楽しかったのよ……森の動物たち、たまに来る人……でも」
「僕たちは……かわいい、といわれても必要とされてる実感がなかったのよ」
森の守り神、と言われ森を守るのが仕事だと感じていた。
それでも昔、瘴気を払うために多くのウィンクルムがキラキラの硝子玉を持ってきてくれた。
それで森の瘴気は薄らぎ、森の動物たちが落ち着いた。
では、自分達は硝子玉がなかったら、森が守れなかったのでは……そう考えた。
そんな時戦うウィンクルムの姿を目の当たりにして、『守る』というのはこういうことではないか、と考えウィンクルムになるべくタブロスを訪れた。
そこでウィンクルム達は自分たちの道を作ってくれた。慰問をしてみてはどうかと……。
そして自分たちを必要としてくれている人々との出会い、生きている、自分たちにもできることがある、と実感できた、と。
「言葉を覚えたり、訓練をしたり」
瞳を潤ませて話す小熊たちにかのんは優しい声音で微笑みながら言う。
「小熊さん達が今まで色々頑張ってきた事を知っています」
かのんは見てきた、努力する小熊たちを……真剣にいつも取り組み、涙を堪えつつ過していたことを。
シルキアは森の守り神様との事なので確認したい、と前置きし話し出す。
「長期間森から離れていて体に良くない影響が出たりはないの?」
その顔は心底小熊たちを心配していた。
「大丈夫なのよ……暑いぐらいなのよ」
ニパニパと青小熊は言う。
シルキアが胸を撫で下ろすと、クラウスも安心したように頷いた。
「私達は何があっても小熊さん達を応援しますから」
小熊たちがどんな選択をしようともかのんは応援するという。
「守り神だからって森に縛られるってものでもないだろう……小熊達の好きにしたら良いと俺は思う」
ふむ、といいながら天藍は言った。
「オーガの驚異も減ってくしな」
長き戦いも終わり、上級のオーガから数が減っていっている現在である。
「何かあってもA.R.O.A.とウィンクルムでどうにかできる事は多いだろうし」
タブロスや慰問に行く村が心配だとしても、こちらでなんとかできる、自由にしていいのだと。
「どっちも気になるなら、どっちにも行けばいいじゃない」
香奈は閃いた!というように手を鳴らす。
「例えば、一年の半分をタブロスで過ごし、もう半分は森で過ごす」
香奈の言葉を補足するようにレムレースが続ける。そして提案も加えるのだ。
「こっちにいない時は手紙でやりとりをする……等」
と。
「もちろん送り迎えは俺達ウィンクルムに任せてくれ」
これからも頼っていいのだと。
「どっちも気になるなら、どっちにも行けばいいじゃない。一つに決める必要はない」
絞る必要はないのだと、先ほど天藍が言ったように自由なのだと教えたかった。
「最後に……色々言ったが、答えは自分達で決めて欲しい」
意思を持ち自分たちできちんと話し合って決めればいいと。
小熊たちの人生は小熊たちのものと、レムレースは真剣な瞳で小熊全員を1匹ずつ見渡した。
「ただ、話はした方が良いんじゃないか?」
天藍もレムレースと同じく真剣に言う。
「順序逆だが、何をしたいか話して「いってきます」って宣言しても良いと思う」
「私もそう思います」
天藍の言葉にかのんは優しさの中に少しの心配を滲ませながら頷き言う。
「森の様子が気になるなら、エスメルと定期的に手紙のやりとりもできるだろう」
いろんな道があるのだ……こんなに枝分かれした道が。
「小熊達、皆で決めるべきだね!」
シルキアは笑顔を向けそういう。
クラウスとて皆と同じ気持ちである、そして優しい多くの瞳が小熊たちを包み込んだ。
●小熊たちの決断
リラックスタイムのお茶の時間も終わり、ウィンクルム達はエスメルの下へと赴いた。
その間に小熊たちには今後どうしたいかを話し合ってもらうため。
エスメルは多くの手紙を読んだのか、最初に会った時より穏やかな表情をしている。
かのんと天藍は前に出るとエスメルにゆっくりと言う。
「小熊さん達は沢山の人達の心を癒やしてくれています」
その手紙に詰まっていただろう、慰問を受けた人々の思い。
「今はいつでも帰れる故郷として待ってて頂けませんか?」
小熊の気持ちも分かって欲しいと。
「小熊達可愛いし、手元で見守りたいよな」
気持ちは分かると天藍は苦笑いを浮かべる。
今までの小熊たちとの日々と共に。
「ただ、彼奴らにもやりたい事があるらしい」
先ほど話してくれた思いを聞いた天藍……小熊たちは必要とされたかった、生きている実感が欲しかったと。
「親離れ、子離れみたいなものだと思って遠くから見守ることはできないか?」
どんな選択をしたとしても、と。
「はい……どう小熊様が選んでも私はそれ受け入れましょう……手紙を読んで、小熊様の思いを感じることができました」
エスメルは少し悲しげにでも嬉しそうにそう言う。
「そして、少し自分勝手だったということを」
「ありがとう、エスメルさん!」
シルキアは笑顔で彼女の手を取った。
「ミリアルド殿」
「クラウスさんなんでしょうか?」
クラウスはどんな状況でも慰問が続けられればと思っていた。
「例えば タブロスを拠点に定期的に里帰りや 森を拠点に慰問を続けるのも可能かと思うが」
慰問を通じ小熊たちが癒しつつ小熊たちも癒されていたと……ならばどうあってもそれを続けさせてやりたいと。
「もちろん可能です!」
「ならば良いのだ……これで小熊達も」
クラウスは安堵したように息を一つ吐き出し、口角を上げた。
少しの時間が流れると、ウィンクルム、エスメルとミリアルドの下へと小熊たちがやってきた。
「皆さん!」
声を一番に上げたのはリーダーであるピンク小熊。
「「「私たち」」」
「「「僕たち」」」
「「「「「「夏は森へ!冬はタブロスへ!ということにしたのぉ~」」」」」」
それは本部内に大きく木霊した。
「そして慰問は続けたいのぉ~」
青小熊は言った。
「オーガが減っても心が傷付いてる人がたっくさんいるの!」
もふもふの手を広げて笑顔で黄色小熊が言う。
「でも森の皆、人も心配……」
心配そうに茶色小熊が、そして、
「だから、暑いの苦手だから夏だけは森にもどるのぉ~」
紫小熊が窓の外を少ししょんぼりと見つめる。
「どうでしょうか?」
不安げに赤小熊が尋ねてくる。
それに対しての言葉をウィンクルム達もエスメルを見つめて待つ。
エスメルは屈むと、小熊たちに笑顔を向けて頷き、
「はい、小熊様……わかりました」
その答えにその場にいる全員、いや、本部内に笑顔が広がる。
「よかった……」
クラウスが小さく呟く。慰問が続けられるのだと。
すると茶色小熊と黄色小熊が嬉しそうにクラウスの手を握る。
「ありがとうございますなのよ」
「ありがとうなのぉ~」
そのふわふわの触り心地にクラウスは自然と笑みを浮かべる。
「本当に癒しの触り心地なのだな」
「そうだね……こうやって小熊は多くの人に癒しを与えている……誰かに必要とされる事は幸せな事ね」
シルキアは言いながらクラウスに視線を流し笑みを浮かべる。
そんな彼女にクラウスの心臓がドキリと跳ねた。
必要としてくれる人が居る限り生き物は心に暖かい風が吹くのだと。
「天藍……」
青小熊が天藍へと擦り寄ってくる。
「抱っこ……なの……」
甘えたように手を伸ばしてくる。天藍は笑顔を作るとふわふわと抱っこをしてやる。
「相変わらずだ、青小熊は」
少し強く青小熊を抱き締める天藍。
「かのんちゃん……ありがとう……たくさんありがとう」
「ピンクさん、よかったですね」
ピンク小熊の謝辞にかのんはふわりと優しく抱き締めた。
1年後の夏、皆の下へと小熊たちから手紙が届いた。
そして香奈はお茶会の時に約束していたのだ。
『どんな結果になっても、あたし、小熊に手紙書くわね』
と。
可愛い文字の10枚の便箋が入った封筒が……封には小熊印のシーリングスタンプが施されたものが。
『元気なの?私たち元気なのぉ~』
という出だしで……。
「元気そうね……そうだわ、冬はこっちにいるんだからたくさん遊びましょう!ってお返事しなきゃね!」
「それがいい……他のウィンクルムも呼んで皆で、だな」
香奈とレムレースは微笑みあった。
小熊たちはいつも想っている……皆の無事と健康を。
そして今までの感謝しきれない恩を胸に。
小熊たちはいつも皆さんの心の中でモフモフとふわふわと笑顔で過していくことだろう。
『なのぉ~』
と元気良く。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:出石 香奈 呼び名:香奈 |
名前:レムレース・エーヴィヒカイト 呼び名:レム |
エピソード情報 |
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マスター | 草壁楓 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ハートフル |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 08月20日 |
出発日 | 08月26日 00:00 |
予定納品日 | 09月05日 |
参加者
会議室
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2018/08/25-00:23
シルキアはインカム申請ありがとう。
手紙、読んでもらうのすごくいいと思うわ!
小熊達の頑張りを知れると思うし、今後を決めるいい材料にもなると思うし。
>捜索
それじゃあたしとレムは本部内を探してみようかしら。
灯台下暗しっていうしね。
>今後についての話し合い
最初に言った、「両方やる方法の提案」と、それから「皆の話を聞いて、最終的には小熊達が決めてほしいこと」「エスメルには小熊達の意思を尊重してくれるようお願い」
こういうのを盛り込もうと思ってるわ。
あと、どんな結果になるとしても、小熊達と文通はしたいわ。 -
2018/08/24-21:03
はい、インカム申請しますね。
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2018/08/24-19:16
〉両取り
そうですよね、欲張っても良いですよね
皆さんとの提案がかぶるのもどうかと思うので、私達は次善の策的に森から離れているときは、小熊さん達と手紙のやりとりでお互いの近況が分かるようにしてみることをお話ししてみようかしら
〉慰問先からの手紙
本部で待ってもらっている間に、小熊さん達の今までの活躍をエスメルさんに知ってもらうのもすごく良いと思います
森にいた頃よりとても成長していることを知って、安心してもらえたらと思います
〉インカム
あちこち別れるなら連絡手段はあった方が便利ですよね、お願いしても良いですか?
〉小熊さん達捜索
探す場所を増やした方が良いかしらと思って、天藍は付近の公園を、私は商業施設の物陰中心に探して見ようかと思案中です
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2018/08/24-16:40
シルキアとクラウスです。よろしくお願いします。
>流れ
私もそれで賛成です。
小熊さん捜索の間、エスメルさんには本部で待っていて貰うのが良いでしょうか。
その間、小熊さん達に届いているであろうこれまでの慰問先からのお礼の手紙を読んでいて欲しいかな、と思いました。
話し合いの際に万一強硬姿勢にならないように気持ちを和らげて貰えないかなと思ったので。
小熊さんの正体は、私も気になってました。
妖精的な何かだとしたら小熊さんの体の調子的に森から長期間離れていても大丈夫なのかな?聞いてみようかな。
>捜索
みんなバラバラに捜索するならインカムで連絡取り合った方がいいでしょうか?良ければ人数分申請しておきます。
見つけてお話しできた後は、素直に本部に連れ帰る感じでしょうか。
>小熊達の今後
小熊さん達の希望が優先だとは思いますが、私も両取り、いいと思います。
意見被り気味ですが、タブロス拠点にして定期的に里帰りするのだっていいですよね。
森を拠点にして慰問のお仕事続けるのもありだと思うし。
いくつか提案してみたいなと思います。 -
2018/08/24-15:50
出石香奈と、パートナーのレムレースよ。よろしくね。
確かに…
この世界、喋る動物とかわりとよく出てくるからそういうもんだとばっかり思ってたけど、すごい子達だったのね。
で、流れとしてはかのんの言う通り、
手分けして探す
↓
小熊達と話す
↓
エスメルと話す、どうするかを決める
という感じでいいと思うわ。
お菓子を持っていくの、あたしも賛成よ。
レムがクーヘンバスケットを持ってるから、まずは小熊達とおやつタイムしましょう。
で、小熊達の今後…
ひとつ疑問なんだけど、これって必ずどちらかに決めないといけないかしら?
欲張ってもいいと思うの。
例えば一定の期間だけタブロスに出張して、それが済んだら森に戻って…とか。
小熊達、森の様子も気になってるみたいだし…
それにメタな話になるけど、最後の戦いが終わって危険なことも減ると思うし
オーガ退治の代わりに小熊の送り迎え任務とかやってもいいし…
まあ、どっちも、が駄目だったら改めて話し合わないといけないけど、とにかくあたしは両取りでもいいと思うわ! -
2018/08/23-17:05
こんにちは、かのんと天藍です
よろしくお願いします
小熊さん達、守り神様だったんですね
妖精的な何かでしょうかと思ってたので、驚きは少ないのですけれど
エスメルさんの言い分が分からないわけではないのですが、個人的には、小熊さん達の思うようにして欲しいなと思います
天藍と私は、手分けして小熊さん探して、見つけた小熊さんから話を聞いて、小熊さん達の背中を押せたら良いかなと
なんとなく、エスメルさんには、小熊達からお話をした方が納得されやすい気もするのですが……
エスメルさんと小熊さん達が話すのであれば、その前に、一度小熊さん達だけで集合して、これからのことを話す時間を設けられたらと思っています
探すのに、小熊さん達の好きなお菓子持って行って呼びかけたら、小熊さん達から出てきたりしてくれないかしら