氷上の貴公子たち(草壁楓 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●冬が去るから

 肌を刺すような風が少し柔らかくなり、草木の香りがそよ風のように吹く。
 今テレビでは春の訪れを喜ぶような番組ばかりが放送されている。
 旅行番組では満開の桜やチューリップ畑などの花々。
 食べ物には筍や菜の花、新玉ねぎに新じゃがなど美味しそうなものが目白押し。
 それらを見つつテレビのチャンネルを回していると、数ヶ月前に開催されていた冬季のスポーツ大会の特集が放送されていた。
 スキーにスケート、スノーボードなど冬のスポーツに貴方は見入った。
 スキージャンプのスピード感と浮遊力に。
 スケートに至っては華麗な足捌きにテレビから目が離せなくなっていた。
 そこからどれぐらい見ていただろうか……。
「おい」
 何やら後ろから声がする気がする……いや今忙しいんだ。
「おい!って」
 精霊のような声……いや、まだ仕事に行ってるはず……。
「おーい!!!」
 そして頭を何かで叩かれ、それが貴方の目の前に広がる。
「あ……」
「あ!じゃねーよ!!人が何回も呼んでるのによ」
 テレビに見入っていた貴方は聞こえたのか聞こえてないのか、と精霊の額には怒りの青筋が見えるような見えないような……。
「ごめん……」
 貴方の頭を叩いたのは紙の束……チラシの束だったようだ。
「そんなに真剣に何見てるんだよ……あ、こないだの大会のやつか」
 そう言うと精霊はテレビを見始める。
 貴方は気付かなかったことに反省しつつ床に散乱しているチラシを集める。
「すげーな!おぉ~」
 なんて陽気な精霊の声を聞いて貴方は少しの安堵を覚えた。
 今季の冬も精霊といろいろと楽しむことが出来たな、また思い出がたくさん心に沁みた、と精霊の横顔を見ながら貴方は思う。
 そんな冬ももう終わり……か。なんて少し微笑む貴方。
 隣で興奮している精霊を見て、どうやら怒ってはいないらしい……ふぅ~と一息吐くとある一つのチラシが目に留まった。
 そこには冬季シーズンが終るためスケートリンクが休業するお知らせと共に、最終日にはスケートの大会が行なわれると書いてあった。
 これは生でスポーツを観戦するチャンス! と貴方は瞳を輝かせる。
 まさに今テレビでは美麗なフィギュアスケートのハイライトシーン。
 綺麗でいて勇ましいその姿に貴方は精霊の腕を掴む……もちろんチラシが見えるように。
 それに気付いた精霊は少し驚きつつチラシを受け取る。
「行きたいのか?」
 コクンと頷く貴方に精霊は微笑みを浮べ、
「じゃあ申し込んできてやる!」
 と受け入れてくれたのだった。

 そんなこんなで大会当日……。
 精霊と待ち合わせをし会場に入ろうとしたのだが……。
「入り口はこちらではありませんよ」
 と案内の者にそう言われた。
 2人で不思議に思いつつ案内されるがまま裏口のようなところへと通される。
「???」
「え……」
 そこには大きく『選手控え室』の文字。
「あれ?」
 申し込みに行った精霊も何がなにやらと困惑しているが……これは、どうやら間違えたようだ。
 観戦ではなく選手として申し込んでしまったようだ。
 取り消しは? 等聞いてみても案内の者は首を横に振るばかり。
 衣装等はこの控え室に用意してあるので好きに選んで良い、また曲等を使う場合は後ほどスタッフに伝えればそれを掛けてくれるという。
 さて、困ったがもう開会式も間近である。
 どうしたものか……と悩んでいる暇も無さそうだ。
 まっどうにかなるさ!なんて精霊は半笑い。
 もう春になってしまったが、最後の冬の思い出を増やしてみてはどうだろうか。

解説

【目的】
 ・間違って申し込んでしまったスケート大会に出場し冬の最後の思い出を精霊と作る

【種目】
 ・フィギュアスケート(ペアのみでの参加となります)
 ・スピードスケート(神人、精霊それぞれ参加、又は2人で出場)
   シングル500m
   シングル1000m
   ペア1000m
   ペア3000m

【プラン必要事項】
 ・どの種目に参加するか。
 ・神人及び精霊はどれに参加するのか、又はペアでどれに参加するのか。
  (1人1種目の参加となります)
 ・フィギュアスケートの場合、衣装の特徴や色合いコンセプト。また曲の種類(クラシック、ポップ、ロック等)
  どのような技を繰り出すか、スケートの経験等もお書きください。
 ・スピードスケートの場合はどのようなデザインのユニフォームを着るのか。スケートの経験等も踏まえてお書きください。
 ・参加中の会話や様子等は簡単で構いませんのでお書きください。

 以上は必ずお書きください。


【その他及び注意】
 ・衣装や曲、ユニフォームの指定がない場合はこちらで選ばせていただきます。
 ・同時参加ですのでウィンクルム同士での会話や競争なども可能です。
 ・公序良俗に違反する内容は描写できかねますのでご注意ください。
 ・アドリブが入る場合がございます、NGな方はプランに『×』とお書きください。

 参加費として2人合わせて500jr消費しますのでご了承ください。

ゲームマスターより

  ご閲覧誠にありがとうございます。
 草壁 楓です。
 
 もうすっかりと春になり日差しが暖かくなりました。
 今季の冬季オリンピックに興奮したのがもう1ヶ月以上も前だとしみじみとしています。
 春になってしまいましたが、冬最後の思い出に精霊と汗を流しながら大会に参加はいかがでしょうか?

 ちなみに草壁はスケートは全くと言っていいほどできません。スキーならばなんとかでしょうか(笑)

 それでは皆様のご参加お待ちしております!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ユズリノ(シャーマイン)

  間違っちゃったのは僕
ゴメンどうしよう~(慌
彼は面白い事になったな(笑)なんて言って動じてない様子
た、頼もしいよ~
うん!頑張る

出場はフィギュアのペア
体格的に僕が女側

緊張ガチガチでいざ出番
彼のリードを頼りに滑り出す
歩くように滑ればすぐ慣れるというアドバイス実践(ヨロヨロ
スピード上げたら転びそうに あれ転んでない?
彼が手を取り引寄せ腰を抱いた体勢で滑ってくれてる
ゴメン僕のせいでこんな事になったのにヘマしたら目も当てられないよね

彼の言葉がストンと落ちた

少し落ち着いてみれば
彼が伸ばす手にどう応えればいいかが分る(冬季大会を2人で熱中視聴してたんだから
彼とアイコンタクトし技に挑戦
だんだん嬉しくなって楽しんだ


ルゥ・ラーン(コーディ)
  間違いが判明してから少々彼は私に呆れた様子
でも、ちゃあんと参加してくださるのですね ふふ
折角ですから良い思い出にしましょう

衣装選び中
好みに合うものをという事で星と月の対になっているデザインのものをチョイス
コンセプトは星と月のランデブーという所でしょうか
私が月、彼が星の衣装を
経験を聞かれたので子供の頃に家族と多少と答えたら殆ど初心者じゃないかと頭を抱えてる
何とかなりますよ ふふ

曲は夜空を思わせるムーディなワルツ
2人でお辞儀し合いスタート
彼が大きく滑り出した
踊り子さんなので姿勢が美しい
差出された手に手を重ねて私も滑り出す
あなたのリードが上手いんですよ
私、ついて行きますから

素敵な体験しました♪


●2人が描く円

 その日ユズリノは青い顔をしていた。
 隣にいる彼の精霊であり恋人でもあるシャーマインはそれとは逆に何だか楽しそう。
 それは数分前のこと……。
 冬季シーズンの終わりにスケート大会を見に行こうと2人は嬉々として出かけたのだが、会場に着いてビックリ! なんと観覧入り口から入れない!
 職員に話しを聞けば選手で申し込まれているとのこと。
 確認するとパンフレットのフィギュアペアのページに『ユズリノ・シャーマイン』の名前がある。
 青ざめるユズリノ。
 間違えたと伝えてもキャンセルはできないと、職員は伝えてくる。
 頭が混乱しあわあわするユズリノだが、シャーマインは笑う。
 そんな2人を見ているのか見ていないのか、職員はそのまま丁寧に選手控え室に2人を通し、今に至るのだが、
「ゴメンどうしよう~」
 とユズリノは慌てふためいていて、ゆっくり今年最後の冬を楽しむどころではなくなったのだ。
 周りを見ればアスリートのような人から素人のような人。
 多くの人が衣装を選んだり、どう滑ろうか……なんて会話をしている。
「はは!何とかなる!」
 なんてシャーマインは笑って、
「面白い事になったな」
 なんて言ってその状況を楽しんでいるシャーマイン。
 間逆の2人ではあるが、ここは! とシャーマインがユズリノの顔を覗き込むように見つめる。
「何とかなるって、大丈夫」
 安心させるように落ち着いた声でユズリノに声を掛ける。
 その微笑にユズリノは混乱した頭を落ち着かせるように一息吐き、シャーマインを見つめ返した。
「た、頼もしいよ~」
 自分のミスを怒るわけでもなく、むしろハプニングを楽しもうとしているシャーマインが頼もしく見え、瞳を少し潤ませながらそう言った。
「そんな肩肘張らないで、楽しくいこう」
 安心させてくれる金色の瞳が弧を描き微笑みをくれる。それにユズリノも微笑み返す。
「うん!頑張る」
 と言って。
 さて、まずは……とユズリノとシャーマインは衣装部屋へと足を向けた。
 衣装部屋には沢山の衣装が並んでいた。
 金や銀、青に赤、黒、白。
 2人が出場するのはフィギュアのペア。
 2人は話し合う。
 スケート経験を言えばユズリノは初心者でシャーマインが中級者程。
 それも考え衣装を見ながら、どういう流れが良いのかシャーマインは思案する。
 体格的に考えればユズリノが女性役でシャーマインにリードを頼みつつ男性役というのが一番しっくりくるだろう。
 衣装は……とまだ出番まで少しあるのでじっくりと見ることにした。

 衣装も選び終わり、まずは練習だとスケートリンクへとやってきた2人。
 スケート初心者のユズリノはリンクまで歩くのも大変でシャーマインの肩を借りたり、時には頑張ったりと何とか辿り着いた状態。
 少々息が荒い。
「リノ?大丈夫か?」
「シャミィありがとう、大丈夫!」
 そして2人はリンクに立つ。
 練習ではあるが、滑走直前の練習、もう観客がこちらを見ている状況である。
 リンクに立った2人は寒さもあるためジャンバーを着ていて、まだ衣装の全容は分からない。
 シャーマインはユズリノの手を取りそっとリンクへと誘導する。
「焦らなくていい……ゆっくりでいい」
 その優しさにユズリノは頬を赤らめ少し潤んだ瞳を向ける。
「う、うん」
 シャーマインは優しくユズリノを包み込むような微笑を浮かべる。
「歩くように滑ればすぐ慣れる」
 1歩進めばシャーマインが声を掛けてくれる。
 その声に緊張も解れたのかユズリノは少しずつ滑ることができるようになってくる。
「滑られる」
「リノはやればできるのさ」
 転びそうになっても、どんなときでもシャーマインはユズリノに声を掛けるのを忘れない。
 その声はユズリノに勇気を与えてくれる。
 一通りだいたいの練習が終ると次は本番だ。
 その時までシャーマインはユズリノの不安を消すように手を握っていた。

 あれから数分何人かの滑走を見た2人。
 その間にシャーマインは全体の流れを何度もユズリノに話す。
 彼の真っ直ぐな瞳にユズリノは応えなければとイメージを膨らませる。
「リノならできる」
 一言言う度にシャーマインは握る手に力を強める。
「シャミィがいるから、大丈夫!」
 強く頷くユズリノ。
 そこに職員が2人に声を掛けてきた。
 いよいよ2人の番である。
 リンクの入り口に立つ2人。
 ユズリノの全身に緊張が走り、体はガチガチに固まりだす。
 左手が動けば左足が動き、右手が動けば右足が動く。
 そんな動きをしているユズリノを見てシャーマインは笑う。
「俺が居るから大丈夫さ」
 と。
 ジャンバーを脱ぎ、手を取り合いながら2人は氷上に立った。
 ユズリノは青を基調とした衣装で腰に少しフリルの付いた抽象的なパンツの衣装。
 この衣装少々特徴があり、周囲が暗くなると発光する不思議な衣装である。
 右手には衣装と同じ青の色、左手には浅葱色の肘まであるグローブをつけている。
 足下を見れば、白のスケート靴に少し天使の羽のような装飾物が付いている。
 また、シャーマインは白を基調としたタキシードタイプで、胸元にはユズリノが着用している青色のラインが無数に入っている。
 ベルト部分には浅葱色のラインが無数に入り、白い衣装を引き立てる作りとなっている。
 こちらもユズリノと同じく青や浅葱色の箇所は発光するタイプの衣装である。
 氷上に居る2人。
 そっとユズリノに合わせるようにシャーマインはリンク中央へと移動する。
 その動きに観客は声援や黄色い声を送る。
 氷上の2人はとても絵になるように美しい。
 ピタリと動きを止めれば、瞳を合わせ、頷く。
「リードは任せろ」
 シャーマインの言葉にユズリノは頷く。
 それと同時に会場が暗くなった。
 静まり返る会場。
 機械的な音楽が流れ出す。
 2人のコンセプトは『サイバー世界』。
 2人にスポットライトが当たるとシャーマインのリードで滑り出す。
 ユズリノに不安が過ぎる……今シャーマインの手があるからこそ滑ることができる。
 もし少しでも離して転んでしまったら……彼に恥をかかせるのでは。
 その不安はどんどん心の中で膨らんでいく。
「ゴメン、僕のせいでこんな事になったのにヘマしたら目も当てられないよね」
 その不安をそっと吐露するユズリノ。
 しかしシャーマインは違った。
「素人参加の大会だ 転んでもご愛嬌――気負う事は無い」
 その金色の瞳には力強さがあった。
「それに俺達はウィンクルムだ! パートナーとの息の合わせ方に関しては素人じゃない」
 耳打ちするようにユズリノへと告げる。
「俺達のペアスケートを楽しもう!」
 その綺麗な唇は弧を描く。
 言葉にユズリノの不安に揺れていたエメラルドのような緑の瞳は見開かれる。
 僕のシャミィがいる……楽しむ……僕たちはパートナー……恋人。
 シャーマインの言葉がユズリノの心に溶けるように沁み込んできた。
(わかる……僕にはシャミィが次どうしたいのかが!)
 ユズリノの顔付きが変わったのがシャーマインにもわかった。
 2人で熱中してフィギュアをテレビ観戦していた甲斐もあって、イメージがピタリと合う。
 瞳を合わせ顔を寄せ合う2人。
 それは観客を虜にする。
 美しい2人絵図。
 シャーマインはユズリノにアイコンタクトを送る。
 シューマインはユズリノの片手を取ると自身の周りで彼を回し出す。
 ユズリノは体勢を低くし仰け反ると体勢を水平に保ちだす。
 デススパイラルだ。
 回転をしながらシャーマインの端整な顔立ちを見つめるユズリノ。
(シャミィが居れば僕は大丈夫)
 その美しい円に観客は大きな歓声を上げる。
 素人とは思えない技にウィンクルムの絆、愛情を見せたのだ。
 ユズリノの顔は笑顔だ。
 その笑顔にシャーマインもつられて笑顔になる。
 彼が楽しんで笑顔で滑っていることに幸せを感じていたから。
 それから2人はリフト技にも挑戦する。
 シャーマインがユズリノを持ち上げお互い左右逆手にし綺麗に持ち上げる技リバースラッソー。
 ユニゾンを揃えつつ、シャドースケーティングもこなし、そしてスプリットツイストリフトを行なう。
 全てユズリノが単独で滑らなくても良いようにとシャーマインが考えたもの。
 曲も終盤に差し掛かり、シャーマインがソロでジャンプを決めると王子様のようにユズリノの下で跪く。
 それをうっとりと見つめ、ユズリノの手をシャーマインが取り瞳を合わせ見つめ合う。
 そして曲が終るのと共に会場は暗転した。
 会場は歓声と拍手に包まれた。
 2人の信頼しあっている心、愛情の深さが伝わったのだ。
 その歓声の中、リンク出口へと滑る2人。
「ありがとう、シャミィ……凄く楽しかった!」
 そのユズリノの声にシャーマインはそっと頬に唇を落とす。
「俺も楽しかった」
 と。


●月と星の瞬き

 スケート大会選手控え室。
 ルゥ・ラーンは顔に笑みを浮かべ椅子に座っていた。
 その隣ではコーディがうな垂れている。
 先ほどスケート場が今季シーズン終了ということで、大会が開催されているため訪れたのだが。
 職員からの言葉にコーディは驚いた。
 しかし神人ルゥは一瞬驚きはしたものの、口元には弧を描かせ、
「おや~ふふ出場側ですね」
 なんて呑気にパンフレットを見て笑顔で言いのけた。
 そう大会パンフレットを見たところフィギュアのペアに2人の名前があったのだ。
 申し込んだのはルゥ……。
(ルゥがやらかした)
 と驚きの直後にうな垂れる。
 どうにか取り消しできないか、と職員に掛け合ってみたものの、答えは「No」である。
 そしてそのまま選手控え室に通された。
 今隣並んで笑顔の神人とうな垂れる精霊の1組が出来上がった。
「わざとじゃないよね?」
 うな垂れつつルゥに聞くコーディ。
 ルゥはコーディに顔を向け、
「まさか」
 とニコニコ笑顔で横に手を振りながら答える。
 わざとではないようだが、ルゥは顔色一つ変えずにいる……。
 コーディは考える……、
(あーもうツッコむのも面倒だ時間も無い)
 そう自分たちの時間までそんなに時間はないのだ。
 そこで俯かせていた顔を上げるとコーディは言う。
「種目はフィギュアね」
 と。
 そのうな垂れていたコーディの言葉に一瞬ルゥは軽く瞳を見開いた。
 そして、また笑顔。
「でも、ちゃあんと参加してくださるのですね……ふふ」
 先ほどまでいろいろと言っていた精霊ではあるが、参加はしてくれるようだとルゥは喜んだ。
 そして言う。
「折角ですから良い思い出にしましょう」
 手を合わせ軽く音を鳴らすと微笑みながらルゥは言う。
 なんだかんだと世話を焼くコーディは一つ息を吐きながら、こうなったらと立ち上がる。
 今冬季最後の良い思い出作りをしようと。

 どんな感じにするかを大よそ話し合った2人。
 コンセプトや演技、技等、知っている限りプログラムを決める。
 決まったところで次はいよいよ衣装選び。
「コンセプトは星と月のランデブーという所でしょうか」
 と自分のイメージをコーディに伝える。
 ルゥは月、コーディは星。
(私の導きの星……コーディ)
 そのイメージはルゥの中では確かなもので。
 それ以外思い浮かばないのだ。
 そこで月と星で対になっているデザインのものを探す。
 夜空のイメージに月が輝き、その隣には夜空に星瞬くコーディ。
 2人はイメージに合う衣装を何着か持ってきては鏡の前で合わせてみる。
 数分これじゃない、これはどう? 何てやり取りをしていると2人のイメージにあった衣装がやっと見つかる。
 早速と2人は更衣室へと移動し着替えを済ませる。
 着替え終わった2人。
 そこには黒に近い深い青色を基調としたものに少しのスパンコールや輝くストーンが散りばめられた中に月が輝く衣装を着たルゥ。
 ベルトには黒の中に星を散りばめたように無数のストーンが輝く。
 パンツは光の加減で月のように輝くサテン調の色合いのもの。
 コーディはルゥのパンツと同じサテン調のうっすらと青く輝く夜空のような色を基調とした中に無数の星に見立てられたストーンが惜しげもなく使われたもの。
 ベルトは白地に天の川のように流れる星がデザインされ布が少し余っており、滑走した時に靡くようにデザインされている。
 パンツには黒い夜空の中に月明かりが差したデザインとなっていた。
「似合ってますよ」
 ルゥは満足そうに手を振りつつそのコーディを見て言う。
 今は月と星。
 対になった2人。
 アクセサリーはコーディが選ぶようだ。
 衣装に似合うアクセサリーをいくつかチョイスしていく。
(やっぱりシャラシャラしたもの選んでしまうけど……ルゥだって好きだしね)
 なんて考えて、その衣装に合うように見立てていく。
 ネックレスにブレスレット、カフスなど月の形や星の形はもちろんのこと、その他滑走した際に輝くよなものを選び身につける。
 2人が動けば体からシャランという音が聞こえてくる。
 2人が好きなイメージがどんどん出来上がっていく。
 そういえば、とコーディが口を開く。
「所でスケートの腕前、僕はまあまあだけど君滑れるの?」
 と。
 ずっと笑顔でニコニコとしているルゥ。
 もちろん!という答えが返って来るとばかり思っていたのだが……。 
「子供の頃に家族と多少」
 と一瞬考えてから両手を胸の前で軽く広げ答えてきた。
 再びコーディは頭を抱えた。
 あんなにニコニコしていたのに、これはほとんど素人ではないか! と。
 そんなコーディの思いとは逆にそれでも笑顔でいるルゥ。
 彼の顔を見上げると、
「何とかなりますよ!ふふ」
 と口元に手を当てながら笑っている。
 もうこうなったら、とコーディは言った。
「僕がサポートするよ」
 そこにはルゥと同じく笑顔のコーディ。
 まぁ……若干不安も入り混じっているようではあるが。

 リンク入り口まで来た2人。
 多少の経験しかないルゥとまあまあの腕前のコーディ。
 多くの時間はないが、競技が開始するまで練習ができることを知らされ、さっそくリンクに立ってみることにした。
 コーディはなんなくリンクで立てたものの……子供の頃に多少のルゥは産まれたての小鹿のよう。
「ルゥなら大丈夫だよ」
 と手を差し伸べる。
「こうでしょうか……」
 と背筋を伸ばしてみると、普通に立つことができた。
 その調子! とコーディはルゥの手を引く。
 リンクを何周かし、ちょっとスピンの練習もしてみる。
 月と星のイメージでランデブーがコンセプトの2人。
 少しイメージのあるルゥが「ここは」とか「今度は」と言いながら2人でプログラムを具体的にさせた。

 2人の前の滑走者の音楽が止まった。
 いよいよルゥとコーディの出番である。
 少し緊張してきたのかコーディの手に力が入る。
 普段ダンサーとして酒場で踊ってはいるものの、いつもとは違い今回は氷上……うまくいくだろうか。
 ルゥが一緒なのだ……、考えていると、
「コーディ、行きましょう……私たちの番です」
 顔色を変えずルゥは立ち上がると、そっとコーディに手を差し延べて言った。
「そうだね……行こう」
 コーディも立ち上がる。
 暗い会場の中2人はリンク中央へと滑っていく。
(私は月)
(僕は星)
 同時にそう心に強く想いながらお互いを見つめる。
 スポットライトが当たると、2人はお辞儀をし合う。
 その優雅にお辞儀をする姿に観客からの静かな拍手が鳴る。
 ゆっくりとしたムーディなワルツが会場に流れ始める。
 手を取りワルツを踊る2人。
 しっとりとした中に2人の愛が垣間見れるように少し熱を帯びた視線をお互いにおくる。
 コーディは月の周りを瞬く星のように踊りだす。
 さすがはダンサーである。
 背筋が綺麗に伸び、指先の先端まで全てが美しい。
 ルゥという月の周りをシャランとアクセサリーを鳴らしながら輝くコーディ。
 スピンにイナバウアー、いろいろな技がコーディの体から繰り出されていく。
 中央のルゥはコンビネーションスピンなど、コーディに習ったもので月を表現していく。
 今度はコーディが2回転ジャンプをすると、ルゥに近寄っていく。
 手を差し出しそっと彼の手を取る。
「思ったより出来るね」
 練習は少ししかできなかったが、ルゥの滑りは予想以上のでき。
 スピンも軽くしか教えることができず、それなのに……。
「あなたのリードが上手いんですよ」
 ルゥは微笑みそう言った。そして、
「私、ついて行きますから」
 その言葉は強かった。
 大丈夫だと、コーディにずっと笑顔でついていくからと。
 コーディも笑顔を浮かべた。
 一緒にいこうと。
「わかった、おいで」
 そして重なった手に力を込める。
 離れないようにしっかりと、時には手が離れそうになりながらも、またコーディが掴む。
 ムーディな曲も相まって会場ではうっとりとした歓声が上がる。
 星と月。
 離れているようで近い。
 コーディはまた大きく滑ると再びジャンプを決める。
 そしてまた、ルゥに近付くと、手を取り懐へと抱き締める。
 もう離さないと言わんばかりに強く。
 金の瞳と紫の瞳が混ざり合う。
「コーディ……」
「ルゥ……」
 2人が出会ったのは運命。
 ルゥの導きの星であるコーディ。
 曲が止まる。
 静まり返る会場。
 暫く2人はそのまま見つめ合っていた。スポットライトが一瞬消え、再びライトが当たると2人は手を重ねたまま立ち上がる。
 そして背筋を伸ばし2人はお辞儀をする。
 その瞬間会場からは拍手と歓声が鳴り響く。
 その歓声の中、氷上を去る2人。
 2人の顔には笑みが零れる。
 リンクの上で感じた一体感。
 心通じあったあの瞬間……そして、
(私の美しい人)
 星のように瞬き躍るコーディは目に焼きついている。
 そしてルゥは言う。
「素敵な体験しました♪」
 そう言ってルゥは笑う。
 そして一緒にコーディも微笑む。
 会場の観客は2人の愛を確かに見たのだった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 草壁楓
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月01日
出発日 04月07日 00:00
予定納品日 04月17日

参加者

会議室

  • [1]ユズリノ

    2018/04/05-18:03 

    シャーマイン:
    ユズリノとシャーマインだ。よろしく。
    面白い事になったな。
    幸い俺は多少滑れるからな、何とかなるだろ。

    ユズリノ:
    シャミィ~僕が間違えちゃたせいで…うう…

    シャーマイン:
    気にするな。楽しんでいこう!(肩ポン


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