思い出へと繋がるピース(草壁楓 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●そのピースをはめると

 あなたは夕飯の買い物を済ませて紅葉が始まった街路樹を歩いていました。
 すると、年配の女性が優しい笑顔を向けながらあなたに話しかけてきます。
「お嬢さん……よかったら見ていかないかい?」
 その声に足を止め見てみると、その女性は路面店を開いているようでした。
 小さい椅子に腰掛けた女性の前には青色の布の上に色とりどりのアクセサリー、歴史を感じさせる古書、そうかと思えば幼少時代に遊んだ玩具など種類は様々。
 その懐かしい品揃えにあなたは少し商品を見てみよう、と女性へと近付きます。
「あら、ありがとう……ゆっくり見ていってちょうだいね」
 女性はさらに顔の皺を深くし微笑みました。
 いろいろと商品を見ているとあなたは真っ白い少し大きめの箱に目が止まりました。
 そっと手を伸ばし箱を手に取ると、軽く振りました。
 カタカタ、と何か音がします。
 ですが、箱にはこの商品が何なのか、ということは書いてありません。
「あら、お嬢さんお目が高いね……それはジグソーパズルだよ」
 そう言われても、普通のジグソーパズルならば箱に完成図などが印刷されていたりするのに……と小首を傾げました。
「不思議かい?それはね……」
 フフッと女性は笑ったあとこう説明し始めました。

 それはメモリーパズルと言ってピースを間違いなくはめていくと一緒にパズルを完成させた人との思い出が浮かび上がってくるパズルだと。
 でも稀に強い想いをどちらかが抱いている場合、その想いがパズルの絵となって浮かび上がる場合もあるらしい、と。
「どうだい?お嬢さん……一緒にパズルを完成させたい人はいないかい?」
 女性はニコッと微笑むと優しい眼差しであなたを見ました。
 あなたの心にはパートナーである精霊との思い出と彼への想いが心に溢れました。
 あなたの表情で察したのか女性はゆっくりと口を開きます。
「300jrだよ」
 すると、あなたはお財布から300jrを出すと女性に渡します。
「ありがとう……またいらっしゃいな」
 女性は両手であなたからjrを受け取ると軽く会釈をし、ジグソーパズルを紙袋に入れ手渡してくれました。
 あなたは夕飯の買い物と一緒にジグソーパズルを持って帰路へと再び歩き出します。
 さて、あなたのパズルにはどんな思い出、想いが描かれるのでしょうか……。

解説

【できること】
 ●パートナーとジグソーパズルを完成させて『思い出』か『想いが溢れる』パズルを完成させる


【ジグソーパズルについて】
 ●ジグソーパズルには以下のような絵が浮かび上がります。

 ・2人の思い出の風景やシーンなど
  2人で始めていった思い出深い場所、恋人になった場所、2人の関係の転機となった場所など思い出の場所での行動が描かれます

 ・パートナーと行きたい場所やしたいことのシーン
  これから思い出作りに行こうと考えている場所、これから2人でしようと思っていること、はたまたパートナーに行動しようと思っていることが描かれます

 ・パートナーとこうなりたいという想いが溢れるシーン
  今後パートナーとなりたい関係、遠く願う2人の未来、恋人になったら行きたい場所やしたいことなど、願望が表れます

 ・その他お好きなシーンを選んでも構いませんので、お2人の思い出に残るジグソーパズルを完成させてください


 ●想いが重なった場合には2人がパズルに現れ、抱き合っていたりキスをしていたりとラブラブなウィンクルムが描かれると思います。

 ●ジグソーパズルは最初真っ白でピースを正しくはめていくと絵が浮かび上がる仕組みです。
  ピースは1000ピースとなっており、最初は真っ白ですので2人で協力しなくては完成は難しくなっています。
  休憩をはさみながらの完成を目指してください。
  

【書いていただきたいこと】
 ・2人の思い出なのか、1人の想いでどちらが思い描いているのか
 ・どんなパズルが完成するのか
 ・どこでパズルを作っていて、どんな会話をしているか
 ・完成後の会話  


【注意。その他】
  ・購入したのは神人でも精霊でもどちらでも問題ないです。
  ・公序良俗に違反する内容は描写できかねますのでご注意ください。
  ・アドリブが入る場合がございます、NGな方はプランに『×』とお書きください。

 ジグソーパズル代として300jrいただきます。


ゲームマスターより

 ご閲覧ありがとうございます。
お久しぶりの方はお久しぶりです!始めましての方は始めまして!
草壁 楓と申します。

 家にやりかけのジグソーパズルをやりながら思いついたエピソードです。
よろしかったら、2人の思い出話に花を咲かせてみたり、はたまたまだ恋人関係ではない場合はこれを機に!
とさまざまなプランをご提出していただければ、と思います。

 最近暑かったり寒かったりでずっと体調を崩しておりまして、歳には勝てない……とうな垂れていました。
皆様体調にはお気をつけくださいませ!

それではご参加お待ちしております!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)

  リビングなら広いし、日当たりもいいし、丁度いいですね!

えへへ、面白そうだったのでつい…わぁ、本当に真っ白です!
このピースはここでしょうか、それとも…あれれー?
…グレン、助けて下さいぃ!

完成でーすっ!
結局夕方までかかっちゃいましたね…
えーっと、絵は…これは今いるリビングですよね?
…あの、パズルの絵、いつもの私達と変わらないように見えるのですが…

本当はちょっと残念…というか拍子抜けだった気もしますけど
でもまあこれはこれでいいかなぁって思います。
私こうして毎日グレンと一緒にいられるだけで幸せですから。
絵の中の私達も幸せそうですしこれでいいんです、うん。

後日、あることに気付いて慌ててグレンに報告します


かのん(天藍)
  2人の思い出が浮かび上がるんですって
居間のテーブルに広げながら説明

色々ありましたけど、何が浮かぶのでしょう

天藍?
微苦笑を浮かべているので、首を傾げる
あ、あれは…ごめんなさい
記憶が混乱してたとはいえ、言われたらショックなのは解るので項垂れ
過去の私にしっかり覚えていてお礼言いなさいって言いたいです…

…優しそうな方だなって
お互いの事を紹介された後、手を取って跪いた時はびっくりしましたけど
精霊は神人を守る事が最優先だからと、天藍の生活に影響を与える事に申し訳なさも抱えてた
でも…天藍が、契約相手が私で良かったって言ってくれた事は、嬉しかったんです

パズル:契約の時の様子
今更かもですけれど、天藍で良かった


八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
  こういう集中できるものは好き
頑張って完成目指そう!

アスカ君との思い出はたくさんある
色んな所に遊びに行ったり、大変な戦いもあった
でも一番印象深いのは、やっぱり…
橋の上でのオーガとの戦い
あの時に初めてのキスを…
思わず自分の唇に触れ、はっと我に返って首をぶんぶん振る
あ、あれは事故だからっ!

アスカ君への気持ちに気付いてから、どうしても意識してしまう
前はこんなに近づいても全然平気だったのに
今は心臓の音を聞かれてしまいそう…
どうか同じ思い出を浮かべてませんように

ばっちり橋の上でのキスシーンでした
は、恥ずかしい…だって私、一度はアスカ君を拒否したのに
虫が良すぎると思わない?

やり直し…肯定も否定もできず固まる


水田 茉莉花(八月一日 智)
  んー、一昔前に流行った牛乳こぼしたパズルみたいなものかしら?
試しにやってみましょう、ほづみさん
ペットボトルのミルクティ用意しますね
あたしはブラックコーヒーっと

結構やってると時間経っちゃうわね
もうすぐあの子が学校から帰って来る時間だわ
ふふっ何が見えるのかしら?…って、いつものあたし達三人じゃない

え?もう一人居るの?
あれっ、この大きさは…あ、赤ちゃん?!
ちょっと待って、何でさとるさんを赤ちゃんと一緒に抱き締めて…キャーッ!

この子、さとるさんそっくりなへの字ぐちしてますよね

そう言えばお店の人が言ってたわ
『こうなりたいって思う場面が現れることもあるし、思いが重なると二人ともパズルに現れる』って
(頷く)


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  思い出が浮かび上がる不思議なパズルをしようと誘われた

精霊宅
わ、真っ白
ミルクパズル?
絵柄が何も無いもんね…これに思い出が浮かぶんだ?
そっか。じゃあ完成目指して頑張ろう

小休憩を挿みつつ

完成
こっこれ…っ!
絵を見た瞬間撃沈

あ、あの時はまだ顔見慣れてなかったし気絶は致し方なかったというかっ

しっしないよっ…多分

へ?(ぽかんと見上げ
ひゃぇっ?!(ボッ
いきなりはやめて心臓に悪いからーッ(心の悲鳴

仕方ないので琥珀の目を見返す
…綺麗な目
吸い込まれそう
じっと見てると近くなるようで
近くなっていく、ようで…

うわわっ…?!
いきなりの行動に吃驚
あ、あの…?
何か切羽詰まったような声
どうしたんだろう?
疑問が浮かぶも背中を撫でる


●初めましては……

 秋の訪れを告げている綺麗に整えられた庭がある家……ここはかのんと彼女の精霊で伴侶の天藍の家。
 居間ではティータイムなのだろう、2人揃ってお茶を楽しんでいる。
 かのんは昨日の夕飯の買い物時に買っておいた白い箱を天藍に見せる。
「これは?」
 紅茶をテーブルへと置くと、天藍は不思議そうに尋ねた。
 かのんはニコリと微笑むと箱を開け中に入っている真っ白なジグソーパズルのピースを机に広げだす。
「2人の思い出が浮かび上がるんですって」
 彼女は昨日露店で説明された話しをする。
 説明を聞きながら天藍はピースを外縁と内側へと分類し箱へと入れていく。
 真っ白いパズルは少々難関なのだとかのんに話しつつ、天藍はかのんとの今まで過してきた日々を思い出す。
 今の関係になるまでさまざまな困難や試練、そこに生まれた愛しいという感情。
「色々ありましたけど、何が浮かぶのでしょう」
 かのんは楽しそうに声を弾ませてそう言った。
 「そうだな……」と答えたが、彼の頭には一番の思い出が浮んでいた。

 最初は真っ白なためか少々手こずった2人だが時間が経つにつれ、勘が鋭いのかそこまで手こずらなくなってきている。
 全体の3分の1ほど完成した頃には天藍はそこに何が浮かび上がるのかが想像でき手元のピースを眺める。
「天藍?」
「初めまして、には、ちょっとショックだったな」
 持っていたピースをはめると天藍は優しい微笑みを浮かべる。
 絵の左側には跪いたように床に片足が付いていて、反対側には驚いたように佇む女性の背中。
 その絵と天藍の言動にかのんはこのパズルに何が浮かび上がるのか瞬時に想像できたのだ。
「あ、あれは……ごめんなさい」
 それはかのんと天藍が初めて契約をした日。
 当時の彼女は前日にオーガに襲われたことで顕現したばかりで平静とはいえない状況。
 そのオーガ襲来時にかのんを助けたのが天藍で、顕現した彼女を見ていた天藍は適合者が彼女ならばと願って本部を訪れた。
 そこにいたのは彼女で天藍は運命を感じ、直ぐに契約をしたのだ。
 しかし職員からまだ混乱していることを聞いた天藍は彼女のペースで歩んでいくことを決める。
「過去の私にしっかり覚えていてお礼言いなさいって言いたいです……」
 このパズルはかのんに当時のことを思い出し、天藍に顕現した当時のことをお礼を言えといっているように思うのだ。
 当時のことを考えればしょうがないことかもしれないが、とかのんは少し俯く。
 その様子に天藍は「気にするな」とかのんの頭を優しくポンポンと撫でるように叩いた。

 あと20ピースほど……。
 そこには紛れも無く2人が始めて契約した時の様子が浮かび上がっていた。
「かのんは引き合わされた時、俺の事をどう思ってた?」
「……優しそうな方だなって」
 ピースを持ち、どこにはまるかを思案しながらかのんはそう答えた。
 当時のことを思い出せば混乱やオーガへの恐怖などの思いが蘇るが、天藍の顔も思い出すことが出来る。
「お互いの事を紹介された後、手を取って跪いた時はびっくりしましたけど」
 会ってすぐに跪き契約を交わした彼、混乱が落ち着かない自分。
 そんな思い出を思い浮かべながらピースは残り2つ。
「でも……天藍が、契約相手が私で良かったって言ってくれた事は、嬉しかったんです」
 かのんは手に持っているピースをパチンとはめる。
 最後の1つを持っている天藍はかのんの顔に当たるそれをはめる。
 そこには覚えているかのんの当時の表情。
「かのんは困った感じの顔だな、これ」
 穏やかに天藍は笑うとかのんを見る。
 かのんは静かに瞳を閉じると胸に手を当てる。
「今更かもですけれど、天藍で良かった」
 そう言ってアメジストのように輝く瞳を開きいつもと変わらぬ優しい笑みを天藍に向ける。
 その微笑に何度心を温かくしてもらったことだろう……天藍はそっとかのんの肩を引き寄せると、
「かのんと出会えて良かった」
 彼女の耳元でそう呟いた。


●想い合ったキスをしよう

 八神 伊万里とアスカ・ベルウィレッジは床に広がる真っ白のジグソーパズルのピースを眺めている。
 昨日伊万里が夕飯の買い物後に興味のそそられる露店を見付けそこで思い出が浮かび上がるジグソーパズルというものがあった。
 思い出が浮かび上がるという内容に心惹かれ、そして集中できるものが好きな伊万里は即座に購入を決めたのだ。
 アスカはジグソーパズルと聞くと少々細かい作業が苦手だと思いながらも、伊万里のために、と一緒に頑張ることにする。
 伊万里が得意だということは知っているので足を引っ張らないようにしつつ彼女との時間を楽しむために。
「頑張って完成目指そう!」
 伊万里はうきうきとピースへと手を伸ばす。
 もちろんアスカもピースに手を伸ばし、共に開始する。
「どんな絵になるのか楽しみだな」
 アスカはいくつものピースを手に持ち試行錯誤するがそれがなかなかはまるものがないようだ。
 その隣では伊万里も同じくいくつものピースを手に持ち一つ一つはめている。
 パズルが5分の1程完成した頃。
「俺達の思い出というと、そうだな……」
 アスカが口を開いた。
 伊万里はそれに反応するように何が浮かび上がるのかと思案していた。
 今までのアスカとの思い出を思い返せば数え切れぬほどに山ほどある。
 ウィンクルムとしての戦いや、一緒に出かけ美味しい物を食べたり遊んだり。
 その中でも一番印象に残っているもの……それは橋でのオーガとの激戦である。
 その折トランスをしようと顔を近付けた時にお互いの唇が重なり合ったのだ。
 ふとその時のことを思い出すと伊万里は唇へとそっと手を当て指でアスカの唇の感触を思い出すかのように触れた。
 それをアスカはチラッと伊万里を盗み見て自身の頬が熱くなったのを自覚する。
 アスカもその時分のことを思い出していたのだ。
 伊万里との一番の思い出と言われたら、伊万里と同じく橋でのキスなのだ。
(あれが初めてだった……伊万里も初めてだよな……?違ったらどうしよう……)
 なんて考えてチラッと伊万里を見ると彼女が唇を指でそっとなぞっていたのだ。
 アスカの視線と表情に気付いた伊万里は驚き持っていたピースを落とす。
 アスカも伊万里の考えに気付いたのかピースを落としてしまった。
「あ、あれは事故だからっ!」
 落としたピースを拾いながら伊万里は頬を染め顔を逸らしそう言った。
「い、今はパズルに集中だ!」
 顔を赤くした2人はパズルに集中!というように多くのピースを手に持った。

 空には星が瞬く時間。
 やっとの思いでパズルが完成した。午前中から始めて、間に昼食や休みなどをいれてもなかなかの時間経過である。
 そして今その完成したジグソーパズルを2人で見つめていた。頬を赤々と染めて。
「えっ、伊万里もこのことを思い出してたのか?」
 嬉しさのあまり伊万里を見つめると、彼女は両手で顔を覆っていた。
「は、恥ずかしい……だって私、一度はアスカ君を拒否したのに」
 その声は少し震えていた。
 アスカの告白を一度は受け入れるのを拒否した自分。しかし先日線香花火をしアスカと離れたくないと、心に穴が開いたように感じたあの気持ち。
 恋心。
 しかし虫が良すぎる……アスカに対しても失礼だ、と……。
 少し俯いた伊万里の様子にアスカはそっと手を差し出す。
「俺はそんなの気にしない、いやむしろ嬉しい」
 アスカは笑顔だった。
「いつか、やり直したい」
 笑顔でそのまま続ける。今でも伊万里を想っていると。
「やり直し……」
 伊万里は硬直したようにそのままアスカを見つめる。
「トランスじゃなくて、普通のキスで」
 少し恥ずかしいのか軽く頭を掻きながら真っ直ぐに伊万里を見つめ、優しく微笑むアスカ。
 そう、想い合ったキスをしようと。そしてアスカは付け足すのだ。
「無理にとは言わない」
 伊万里は肯定も否定も出来ずに固まっていた。
 まだその答えをアスカに告げることはできなかった。


●左手にある未来

「リビングなら広いし、日当たりもいいし、丁度いいですね!」
 家のリビングで白い箱を持ちながらニーナ・ルアルディは笑顔でそう言った。
「まーたよく分からないもん買ってきたのかお前……」
 グレン・カーヴェルはそんな様子の彼女と謎の白い箱に目をやると呆れたようにそう言った。
「えへへ、面白そうだったのでつい」
 と言いながらニーナは箱の中身をリビングの床へと広げる。
 広げながらこのパズルの説明をしていくニーナ。
 ほう……と白いピースを一つ拾うとグレンはそれを眺める。
「……わぁ、本当に真っ白です!」
 全て広げ終わるとその白さにニーナは感銘の声を上げた。
 さて、と腕まくりでもするかのような動作をするとニーナはパズルと向き合い開始である。
 グレンは本を片手に表情をコロコロと変えるニーナを楽しむように見ている。
「このピースはここでしょうか、それとも……あれれー?」
 四苦八苦しているようだ。
 グレンは軽く鼻で笑うとニーナをそのまま見つめる。
 どうやら一向にピースがはまらないようだ。
「……グレン、助けて下さいぃ!」
 しばらく観察していたグレンは口角を上げると本をテーブルへと置き、ニーナの隣へと腰を下ろす。
「ほら、お前はまず端のを片っ端から探して繋げていけ」
 なるほど!とニーナは端にあたるピースを集めていった。

 ジグソーパズルを開始したのは午前中……空はすっかり夕暮れ。
「完成でーすっ!」
 リビングにニーナの嬉しそうな声が木霊した。
「結局夕方までかかっちゃいましたね……」
 窓の外を見れば空は夕焼けから夜空へと変わろうとしている頃になっている。
 ニーナは完成したパズルをよくよく観察し始める。
「えーっと、絵は……これは今いるリビングですよね?」
 真ん中には人物が2人、その周囲を見ると今いるリビングとなんら変わりないのだ。
 しかしグレンは黙ってそれを見ていた。
(この絵、パッと見た感じいつも通りの光景なんだが)
「……あの、パズルの絵、いつもの私達と変わらないように見えるのですが……」
 パズルに浮かび上がった2人は幸せそうに微笑みここで過している。
 少し残念そうにニーナは肩を落とす。
 しかしグレンはパズルに浮んだニーナを凝視していた。
(よく見たらこいつの左手の薬指に指輪が付いてるんだよなぁ……)
 そう、パズルにいるいつもと変わらぬ微笑を浮かべてるニーナの左手の薬指にはキラリと光る指輪。
「これは……まあそういうことだよな」
 小さい声でグレンはそう呟く。
 その声にニーナが不思議そうに彼の顔を覗き込んだ。
「どうかしましたか?グレン?」
 いや、なんでもない……とグレンは少し笑いを堪えつつ答える。
「本当はちょっと残念……というか拍子抜けだった気もしますけど」
 確かに残念ではあるもののパズルの中の自分は幸せそうに微笑んでいる。
「でもまあこれはこれでいいかなぁって思います」
 グレンの思考はニーナをこの笑顔にするための未来へと及んでいる。
(あいつは待ってると言ってたが……)
 グレンと共にいることが幸せだと。
「私こうして毎日グレンと一緒にいられるだけで幸せですから」
 そう考えているとニーナがそう言ってこちらに微笑んでいる。
(それでも大分待たせてる自覚はあるし、そろそろ本気でどうするか考えないとな)
「絵の中の私達も幸せそうですしこれでいいんです、うん」
 しかしそんな考えのグレンとは違う、というか全く自身の左手には気付かないニーナ。
 そんな彼女の所作も言動もグレンは好きなのだ。
 これに気付くのはいつだろうか、言ってしまおうか……いやいや。
 とグレンは含み笑いをする。
(……あいつが気付くまでは黙っておくか)
 と。

 3日後。
「グレーーーーン!!」
 彼女の声がリビングに木霊した。
「これ!左手!左手!」
 やっと気付いたのかとグレンは珍しく破顔して笑う。
 表情をコロコロと変える彼女を愛おしくそして永久に守るという想いを胸に抱きつつ、彼女を引き寄せ抱き締めたのだった。


●2人の間には……

「んー、一昔前に流行った牛乳こぼしたパズルみたいなものかしら?」
 昨日購入してきた真っ白い箱に入ったジグソーパズルのピースを出しながら水田 茉莉花はそう言った。
 買い物の帰り道に少々気になった露店で見つけた不思議なパズル。
「ソレが思い出パズルってやつか……ンゲ、最大難度じゃねぇか!」
 ピースを見れば 八月一日 智はその難しさに少々顔を歪めた。
 2人の思い出が浮かび上がるという内容を聞いて茉莉花は智とやってみよう、と購入したのだ。
「試しにやってみましょう、ほづみさん」
 確かに難度は高いが思い出が浮かび上がるという楽しみのためと智も頷く。
「おっけー」
 すると茉莉花は立ち上がりキッチンへと向かう。
「ペットボトルのミルクティー用意しますね!あたしはブラックコーヒーっと」
 そう告げ智には冷蔵庫からミルクティーを、そして自身にはブラックコーヒーを淹れる。
「それじゃ外側から埋めていくか」
 その間に智は外側のピースを集めだす。
 絵が無いのだ、それが一番手っ取り早いとの考えからだ。
 分けていると茉莉花が飲み物を手に戻ってきた。
「まっすぐなパーツだけ集めようぜ」
 今やっている作業を告げつつミルクティーを貰うと2人は集中してパズルへと取り組み始めた。

「結構やってると時間経っちゃうわね」
 時計を見ればもう少しで夕方に差し掛かる頃である。
「もうすぐあの子が学校から帰って来る時間だわ」
 あの子、もう1人の精霊である。
「お、チビ助が帰って来る時間か……」
 茉莉花の言葉に智はその場で背伸びをする。
「ウゴー平日休みがこれで潰れタァ!」
 そう午前中からずっとパズルをやっていた2人、休日がパズルで終るようだ。
「でも、この1ピースで完成ウヒャッホウ!」
 そう言うと智は自身の手の中にある最後の1ピースを唯一の空白にはめ込む。
 すると写真のようなものがパズルに浮かび上がってきた。
「ふふっ何が見えるのかしら?……って、いつものあたし達三人じゃない」
「ホントだ、チビ助とおれケンカしてんじゃんいつも通り」
 そこにはいつもと変わらない2人とそしてもう1人の精霊の姿。場所は……現在パズルをしている部屋のようだ。
「アレ?まりかが居た……けど、なんか距離おかしくね?」
 3人一緒にいることは変わりないのだが……。
「え?もう一人居るの?」
 茉莉花と智の距離の空いている1点を見つめる2人。
「あれっ、この大きさは……あ、赤ちゃん?!」
 少しずつ浮かび上がってきたのは赤ん坊、可愛らしい白いベビー服を着ているようだ。
「ちょっと待って、何でさとるさんを赤ちゃんと一緒に抱き締めて……キャーッ!」
「え?赤ん坊?おれ抱き上げてんじゃん!親バカヅラしやがって!」
 その光景に智の顔はゆでダコのごとく赤くなる。
「うわ、何でこんなゼロ距離……」
「この子、さとるさんそっくりなへの字ぐちしてますよね」
「コイツ、まりかと同じ目の形、してるよな」
 赤ん坊を良く見れば口元は智に、目元は茉莉花にそっくりで、2人の赤ん坊であることはどこからみても明白。
「……ちょい待ち、何で二人がこんなことになってるんだ?コレ思い出じゃねぇよな?」
 その疑問に茉莉花は老婆の話を思い出す。
「そう言えばお店の人が言ってたわ……『こうなりたいって思う場面が現れることもあるし、思いが重なると二人ともパズルに現れる』って」
 視線をパズルから智へと移すと茉莉花は軽く笑顔を作った。
「思い、重なる、二人……まりかも、こうなりたいって思ってるのか?」
 『まりかも』と智は言った。こうなりたいと……同じ想いを描いているのかと。
 智の真っ直ぐな瞳から視線を逸らすことなく優しい微笑みを浮かべ小さく頷くと、
「ただいまー」
 ともう1人の精霊の声が部屋に木霊したのだ。
 2人は我に返り、声の方向に振り向いた。
「あ!おかえりー」
 茉莉花は立ち上がりもう1人の精霊を出迎えるために玄関へと小走りで消えていった。
 そして智は茉莉花の想いを胸に刻みつけていた。


●もっと近くで…お前を

 数日前のことだった、ガルヴァン・ヴァールンガルドが買い物を終え帰路を歩いていると少々興味の惹くデザインのアクセサリーのある露店があった。
 アクセサリーを最初見ていたのだが、一緒に並んでいた白い箱が気になった。
 店主の老婆に聞けば思い出や想いが浮かび上がるパズルだと言われ、脳裏にアラノアのことが思い浮かんだのだ。
 そして今日アラノアは精霊のガルヴァン・ヴァールンガルドの家に招かれている。
「思い出が浮かび上がる不思議なパズルをしよう」
 と精霊からの誘いだった。
 思い出が浮かび上がるパズル、と言われても初めて聞いたからかどんなパズルなのか全く想像できない彼女だった。
 そこへ白い箱を持ってガルヴァンが部屋へと入ってきた。
 床に購入したジグソーパズルのピースを広げるガルヴァン。
「わ、真っ白」
 広げられたピースは真っ白で、今までアラノアは見たことないと身を乗り出し、床へと座る。
「……ミルクパズルだな」
「ミルクパズル?」
 その朱殷の瞳は興味津々と言わんばかりに輝いている。
「ああ、全て白い分難易度が高いパズルの事だ」
「絵柄が何も無いもんね……これに思い出が浮かぶんだ?」
「……そうだな。完成すれば見れる仕組みらしい」
「そっか。じゃあ完成目指して頑張ろう」
 摩訶不思議とピースを眺める2人は、さて、と腰を少し上げてパズルに挑みだす。

「こっこれ……っ!」
 数時間後、完成したパズルを見てアラノアは大きな声を上げた。そして床に撃沈するアラノア。
 ガルヴァンは「ふむ」というと、
「……こんなこともあったな……」 
 とアラノアを見る。そして思い出すのだ、当時のことを。
 それは以前の壁ドンからの耐久顎クイッの思い出である。
「終わった後気絶してたな」
 第三者から見た図のため気恥ずかしくなったのか、ガルヴァンはパズルから少し視線を逸らす。
「あ、あの時はまだ顔見慣れてなかったし気絶は致し方なかったというかっ」
「……今は、気絶しないのか?」
 それでは、とガルヴァンは顔を上げアラノアに視線を移す。
 もちろんと言わんばかりにアラノアは少し頬を赤らめつつ言う。
「しっしないよっ…多分」
 するとガルヴァンの手が少しずつアラノアへと近付いてくる。
「へ?」
 その動きにアラノアの体は硬直する。
 そしてガルヴァンは言った。
「試してみるか?」
 と、その琥珀色の瞳を真っ直ぐにアラノアへと向けて。
「ひゃぇっ?!」
 驚きとガルヴァンの動きでアラノアは床に尻餅をついた体制となる。
(いきなりはやめて心臓に悪いからーッ)
 そう思っても時既に遅し、顎クイッは始まってしまった。
「あの時と同じ反応だな」
 当時と変わらない反応に内心ガルヴァンは嬉しさが溢れる。

 朱殷の瞳をじっと見る。
 パズルに描かれた当時は何も感じなかった。彼女に顎クイッをしていても。
 しかし、今は違う……。
 もっと近くで見たい。
 もっと。
 もっと、近くで……その!

 自分を見つめる琥珀色の瞳を見つめる、逸らさずに。
 ……綺麗な目。
 吸い込まれそうで……。
 じっと見てると近くなるようで……。
 近くなっていく、ようで………。

 いいえ近くなっています。とっても。
「うわわっ……?!」
 吸い込まれそうと少しぼんやりしていたのだが、本当に近付いて来ていた。
 ガルヴァンの顔はアラノアの唇へと吸い込まれるように近付いてはきたものの、それを掠めることはなく彼女の肩へと顔をうずめる。
「あ、あの……?」
 驚き声を掛けると、
「す、まん……暫く、このままで……」
 と少し苦しそうな、切羽詰ったガルヴァンの声が返ってきた。
(危なかった)
 もう少しで何かやらかしてしまいそうになっていたのだ。
(どうしたんだろう?)
 苦しそうだと思ったアラノアは彼の背中に抱き締めるように腕を回すと、そっと優しく撫でる。
 その動作にアラノアの香りがガルヴァンの鼻腔をくすぐる。
(……これはこれで不味い気がする)
 アラノアの香りに胸中少々穏やかではないガルヴァン。
 そんな気持ちを知らないアラノアは暫くそのままガルヴァンの背を撫ぜていた。



依頼結果:大成功
MVP
名前:水田 茉莉花
呼び名:みずたまり・まりか
  名前:八月一日 智
呼び名:ほづみさんさとるさん

 

名前:アラノア
呼び名:アラノア
  名前:ガルヴァン・ヴァールンガルド
呼び名:ガルヴァンさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 草壁楓
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月04日
出発日 10月09日 00:00
予定納品日 10月19日

参加者

会議室


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