プロローグ
●アイドルに!お願い!
ここはバレンタイン地方のショコランドにある中規模の街。
イベントが開催されるのか、その街の小人の住人はいそいそとステージを飾り付けたり、スポットライトの点検などをしている。
「こんな感じで~」
なんて小人の女性がそれぞれに指示を出しつつ準備しているのだが……。
「キャーレさん!大変です!!」
キャーレと呼ばれたその指示を出していた女性は声の方向へと振り向いた。
「あら……どうしたの?」
そんなに慌ててどうしたのか、と尋ねてみればその内容に彼女の顔は真っ青となる。
その場にいた人々を全員呼び、緊急会議を始めたようだ。
「もう騎士の皆様は夕方には来るのよ……どうするのよ……」
「しかし、来れないという連絡があったのだから……」
会議をしている数人はそんなこんな話し込み、そして全員が口を閉じた。
そんなところに任務が終ったあなたは通りかかった……そう通りかかっただけだった。
キャーレはそんなあなたを見て急いで駆け寄ってきた。
「あー、あなたはウィンクルムの方ですね!!」
そうですが……、と返事をするといきなり手を掴まれる。
その行動に精霊は驚きつつキャーレを軽く睨みつけるのだが、彼女はそんなものと言うようにあなたに話しだした。
無念の心を宿した鎧騎士が最近アイドルを求めてさ迷っている。
どうやらアイドルイベントに行く直前に封印されてしまった鎧騎士達らしい……30名は軽くいるようだ。
その報われない魂を救うためにアイドルイベントを用意していたのだが、依頼していたアイドル達が急遽来れなくなってしまったらしい。
そこで神人に1日アイドルをしてくれないか。
という話しだった。
突如のことであなたは断ったのだが、土下座までされてしまった。
困ったあなたではあったが、しぶしぶ承諾をしてしまった。
衣装も急ぎではあるが十分な用意があり、メイクやヘアアレンジもしてくれる。
しかし困ったことに歌う歌がないというのだ……メロディーはこちらの生バンドでどうにかするので即興ではあるが作ってほしいと頼まれた。
あと3時間ほどで開演、開始は18時から。
あまり時間は無いが鎧騎士の魂を救うため、アイドルに紛し魂を沈めて欲しい。
因みに、精霊はアイドルに興奮した鎧騎士が神人アイドルに近付くようなら、制止をし神人を護るように言われたのだった。
解説
【すること・イベントについて】
・神人はアイドルに扮し鎧騎士の魂を沈める。
ステージにて歌う、そしてコンサート終了後に握手会をしていただければ鎧騎士の魂は報われます。
握手会では鎧騎士の魂に響くような言葉をかけてあげてください。
・参加された皆様で一つのグループを作っていただいてもかまいません。
グループを作った場合、プランに記載いただいた歌詞はソロで歌う等のアレンジをさせていただく場合がございます。
・精霊は熱狂的な鎧騎士が数名いるようですのでそれを制止してください。攻撃等は行なわないようにご注意を。
彼らも悪気があってするわけではなく熱狂してしまい興奮しているだけですので、心に響く言葉などを掛ければ危険はありません。
【歌詞について】
・アイドルらしい歌詞を考えてくださっても、精霊に向けて考えてくださっても自由です。
・簡単なもので構いません。1、2フレーズのみプランに書いていただければこちらでアレンジさせていただきます。
・誰に向けて歌っているのかの明記はお願いいたします。
【鎧騎士について】
・アイドルのイベント及びコンサートに行く直前に封印された鎧騎士たちです。
・おおよそ30名ほどが集まるようです。
・危害等は加えてきませんが、あまりにも興奮して近付いてくる場合もあるようです。
【衣装・メイク・ヘアアレンジについて】
・希望する衣装が揃っています。
・どのような衣装、メイク、ヘアアレンジにするか希望をお書きくださいませ。
記載が無い場合はこちらで決めさせていただきます。
【イベント後について】
・頑張ったあと皆様ないし精霊とご歓談くださいませ。
場所はキャーレが提供してくれます。
【ジェール及び注意について】
・アドリブが入る場合がございます。不可な方はプランに×とお書きください。
・休憩の時のためにお菓子とお茶を買ったので300jr消費します。
・過激な発言や行動があった場合描写できかねますのでご注意ください。
ゲームマスターより
草壁 楓でございます。
ご閲覧誠にありがとうございます。
こんな感じに封印された騎士がいても良いかなと思い作成してみました。
アイドルといいましてもいろいろいらっしゃいますが、皆さんの色のアイドルはどのようなアイドルになるのか今から大変楽しみです。
それではご参加お待ちしております!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リチェルカーレ(シリウス)
>衣装 水色基調のふわっとしたドレス 髪に花の飾りを付けて 可愛い衣装は単純に嬉しく 鏡の前でくるりと どうかな?とシリウスに 頭痛を堪える仕草に噴き出す きっと音楽が好きだったのよ そんなやりとりで 緊張もほぐれる たくさんの鎧騎士に目を丸く ぺこりとお辞儀 素敵な時間になるよう歌います 楽しんでください 少し声を震わせながらも笑顔 >歌詞 手をつないで 一緒に行こう 雨の日も暗闇も あなたがいれば平気 あなたはわたしの導きの星 >握手会 ぎゅっと手を握って 皆さんが頑張ってくれたおかげで 今があるのを知っています 本当にありがとう >事後 ちゃんと歌えていたかしら? 彼の言葉に頬を赤くして ぱっと笑顔 あなたに思いをこめたのよ というのは内緒 |
シルキア・スー(クラウス)
「騎士様ー こーんばーんわー! シルキーでーす! 舞台もアイドルも経験した 最近接待バスケもして奉仕精神も心得た 怖いものは無い 心込めて努める ポップ調(騎士様への歌 改変OK ♪~戦場でアナタはヤーヤーヤー! だからワタシは歌うのランララル~ 届け勇気の歌ガッツでファイトー! 振付 客席にぐるり指を差し皆さんに歌ってます演出 跳ねたり拳を突き上げたり元気よく バラード調(彼を意識した歌 改変OK ♪~深淵に一滴 それは愛の種 貴方に巡り逢えた喜びで いつしか花園になる 握手会 楽しんでくれましたか~ 「この地の平和は皆さんのガンバリがあったからこそです 今日の出会いを光栄に思います イベント後 「うん …はぁ 夢みたいだった やり切り満足 絡み歓迎 |
アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
…まさかまたこのマイクを手にする時が来るなんて…(EP35 でも今回は依頼だから頑張らないと… 衣装 トランプのダイヤイメージ 髪に赤い蝶の髪飾り(EP25※お守り代わり その他お任せ 歌もダンスも未熟ですが、この世界を守ってくれた騎士様達に捧げます マイクスタンド・ホライゾンのアップビート+バンドお任せ テンションを上げて頭を空っぽにする 歌も踊りも素人なりに頑張る 剣と盾 あなたと私 途中楽しくなってきて特に深く考えず投げキッス的な動作をしてみたり 守ってくれる精霊の姿が見え …そんなあなたが好き つい言ってしまい踊りで誤魔化す 握手会 私達が活動できるのも騎士様達のご活躍のおかげです そんな方達の為に歌えてとても光栄でした |
●アイドルになる!
バレンタイン地方のショコランドにある中規模の街。
中心部にある広場には大きな野外ステージが用意され、本格的な照明が数台も用意されている。
更に小人たちによる本格的なバンドも用意されており、会場は整われている。
そこに表れたのは鎧甲冑をきた騎士……その数40名強。
受付をしている小人は予想以上の来客に大わらわである。
『今日のアイドルは……』
「リチェルカーレさん、アラノアさん、シルキアさんのお三方ですよー」
その名前を聞きその場の騎士達は歓声を上げる。
開演まで1時間。
舞台裏では急遽参加することになった3組が打ち合わせをしている。
そっと舞台袖から会場の様子を見るリチェルカーレとアラノア、そしてシルキア・スー。
「すみませーん、そろそろ着替えとメイクお願いしますー」
小人の女性キャーレが3人に近付くとそう告げる。
「はーい!」
そう返事して3人はキャーレの後へと付いて行く。
3人の背中を見送る精霊が3人。
シリウス、ガルヴァン・ヴァールンガルドにクラウスが見送ると警備について話し合いだす。
会場からは覇気のような何ともいえないオーラを感じ取ることができる。
「神人達にこのオーラを放っている騎士を近付けては危険だ、配置だが……」
シリウスはキャーレから会場の簡単な見取り図を受け取っていたらしく、他2名にも見えるように広げる。
「では、俺は会場向かって舞台右側の警護を」
クラウスは地図を指差す。
「俺は左に」
反対側の位置にシリウス。
「では正面は俺が受け持とう」
最後に正面をとガルヴァン。
それぞれお互いに何かあればサポートすることを話し合い、更にスケジュールの確認をシリウスが行なった。
スケジュールによるとトップバッターにリチェルカーレの名前が、次にシルキア、最後にアラノアとなっている。
会場では鎧甲冑のぶつかる音が大きくなってきている。
その音をそっとクラウスが覗けば……30人どころではない50人程の騎士達の姿。
「予想以上だ……」
これは心して神人を守らなければと心に刻みつける。
「……こんなにいるのか……」
シリウスはため息を付く……こんなにイベントに行けないからと無念になるものか、と。
なかなかのオーラにクラウスは身を引き締めねばと感じ、またガルヴァンはアラノアや他神人に危険があってはと心の中で少しの緊張を覚える。
そろそろ神人達の着替えも終った頃かと精霊も神人の向かった簡易控え室へと向かう。
ノックをし、入ってもいいのかと確認すると着替えもメイクも終っていたようで3人は中へと通された。
シリウスがリチェルカーレへと近付きながら歩いていると、彼女も小走りしてシリウスの下へと駆け寄ってくる。
「どうかな?」
水色基調にところどころ白い百合やかすみ草、そして淡いピンク色の芝桜を模した花のついたふわっとした膝下丈のドレスに上半身は胸元に小さい花を散らし袖や襟元にはレースがあしらわれている。
髪にも小さい花々を飾り姫のように髪を綺麗に下ろしている。
それらを揺らしながら鏡の前で1回転しその姿を見せる。
メイクも控えめながら彼女の青と藍の瞳が映えるようにと桜色のアイメイクとチーク。
唇には潤いのあるグロスのみで彼女の桜色の唇を艶やかに引き立たせていた。
ふわりとした衣装のリチェルカーレが楽し気に笑うのを見て僅かに苦笑を浮べシリウスは口を開く。
「……イベントに行けないくらいで 彷徨う魂……」
今回のイベントの趣旨を思い出し深くため息をつく。
「馬鹿馬鹿しいというか なんというか」
頭痛がしてきた、と頭を抑えて更に深いため息をつくシリウス。
そんな彼の姿を見てリチェルカーレは可憐な笑顔を浮べながら噴出す。
「きっと音楽が好きだったのよ、ね、似合う?」
クスクスと笑いながらそんなやり取りをしていると少々緊張していたリチェルカーレの心も解れる。
「似合うんじゃないか」
シリウスは瞳を細め微笑み答えた。
その横ではアラノアとガルヴァンが見つめ合っている。
「どう、かな?」
「うむ……」
あまり彼女をジロジロとみるのも失礼かとも思うガルヴァンだが、感想を聞かれれば見ないわけにもいかないかと彼女の観察を始める。
アラノアの衣装はトランプのダイヤをイメージしたもので少し短めの赤と黒のダイヤ柄のスカートに黒いレギンス、トップスには右肩にはフワリとした赤い長袖と左側は黒いタンクトップのようになった出で立ちで少し中性的にも見える。
メイクはアイラインを赤く目尻だけ強調し、唇にはローズレッドのグロスをつけている。
そして髪には右側に蝶の髪飾りを輝かせたアップの髪形にしている。
アラノアが口を開けばグロスが艶めき、ガルヴァンの瞳はそれに魅せられる。
「……まさかまたこのマイクを手にする時が来るなんて……」
また、という言葉にガルヴァンは以前にマイマイクを出してステージ上で歌った彼女の姿が思い出される。
アラノアはその時ガルヴァンへの想いを歌ったのだが、彼女の中ではなかなかの黒歴史となっているようだ。
ガルヴァンにとっては良い思い出という認識しかない。
先ほど渡されたマイクを重い気持ちで取り出し、
「でも今回は依頼だから頑張らないと……」
マイクを見つめる彼女に、封印せし者を解放するかのような面持ちでマイクを取り出した、とガルヴァンは、
「…そんな仰々しい事なのか……?」
と小首を傾げた。
「用意ができたようだな」
「できたよ!」
クラウスの声に元気良く振り向くシルキア。
白を基調としたワンピーススカートに裾や袖にはフリルがつきスカートの中央部と腰周り、二の腕周りに緑のチェック柄、所々にに指し色で橙色が施されている。
また、胸元には大きな緑色リボンと肩には橙色の小さいリボン、そしてスカートの裾には緑と橙の小さなリボンが交互にいくつも付いている。
「アイドルに見える?」
もちろんだ、と何度か頷くクラウス。
髪はツインテールにされており、緑色と橙色のリボンを結んでいる。
メイクはオレンジ色のチークにアイラインは少し跳ねさせた猫目にし、うっすらとピンクブラウンのアイシャドウ、グロスは透明感を出すために色なしの艶やかなものにしているようだ。
そんな彼女の様子にクラウスは少し微笑みを浮かべる。
「見守っている」
「警備は任せたよ!」
もちろんだ、とクラウスは微笑みを更に深める。
「そういえば……あれからどれぐらい集まってたの?」
シルキア達が着替えている間も騎士達が集まっている音は聞こえていた。
30人程度とは聞いていたのだが……。
「50人弱、というところだな」
その数にその場にいた神人全員が暫し硬直したのだった。
●待ちに待った俺たちのアイドル
舞台袖へと戻ってきた神人達。
精霊達は警備のために会場へと降りていった。
無防備になっている神人が押しつぶされてはと考え、観客とステージの間にシリウスが用意したロープで境界線を作る。
乗り越えてきそうな騎士がいればここで静止するのだ。
その場にいる神人全員会話はない、緊張してきたようだ。
会場では精霊達も見守っていてくれる、そう考えればステージへの1歩が踏み出せる。
「ではお願いします!」
その声と共に神人達は顔を見合わせ、一度頷き合うとステージへと飛び出していった。
ステージへと辿り付き中央部に差し掛かると全員がその場で立ち止まり、マイクを取り出す。
数秒後神人3人にライトが一斉に当たる。
「みなさーん!今日は来てくれてありがとう!」
最初に声を出したのはシルキアだ。
元気良く会場に声を掛ければ、騎士達の『うぉー』という声が会場に溢れる。
「今日は楽しんでいってくださいね!」
次に優しい微笑みと共にリチェルカーレが言う。
「皆さんのため、楽しいステージにします!」
アラノアも続いてそう言葉を発する。
さぁこれでステージが開始される。
その場に残ったのはリチェルカーレ。
もう一度ステージの上から会場を見る。
思っていた以上にたくさんいる騎士達に目を丸くしたのだが青と碧の瞳をそっと閉じる。
勢い良く彼女にスポットライトが当たる。
それと同時に瞳を開く。
「素敵な時間になるよう歌います」
そうマイク越しに言うと丁寧なお辞儀をする。
「楽しんでください」
その声は少し震えてはいたが、彼女はふわりと優しく微笑んだ。
彼女の様子に、
『リチェルカーレちゃーーーーん』
という声援があちこちから聞こえてくる。
バックにいるバンドが演奏を始める。
少しゆっくりとしたメロディーが流れ、
「手をつないで 一緒に行こう」
彼女の透き通った声が会場を温かく包み込む。
何処から持ってきたのかその場にいる鎧騎士達は星やハートの形をしたペンライトを横にゆっくりと振っている。
徐々にメロディーは早くなり少しポップな曲へと変調していく。
「雨の日も暗闇も あなたがいれば平気」
歌う彼女の瞳にシリウスの姿が映りこむ。
ステップを踏めばふわふわしたドレスが揺れ、そして彼女は左手を天へと掲げる。
『あなた』というフレーズに数秒シリウスが振り向く。
「あなたはわたしの導きの星」
それと同時にシリウスの方向へと左手を差し伸べる。
フワリと微笑んだ彼女の瞳は真っ直ぐにシリウスを見つめ、彼の瞳も彼女を真っ直ぐにとらえている。
しかし、それをシリウスにしたとは思わない騎士が数名。
「リーちゃーーーーん」
自分にしたと勘違いしたようだ。
ロープを乗り越え、シリウスも越えて彼女に近付こうとする。
「……あんたたちに楽しんでもらおうと彼女たちは必死に歌詞を考えていた」
乗り越えてこようとする騎士達に少し大きめの声でシリウスは訴えるように言う。
その言葉に騎士達は動きを止める。
「歌を聴きにきたんだろう?」
その心からの声に騎士たちは、『そうだ、聞きに来た!』と静止は成功した。
リチェルカーレはそんなシリウスの姿に笑顔でステージを成功させようと歌い続けた。
リチェルカーレのステージが終わり一度暗転すると、素早くシルキアがステージへと飛び出す。
同時に彼女にスポットライトが当たる。
「騎士様ー☆こーんばーんわー! シルキーでーす!」
彼女は元気良く会場にいる騎士達全員に挨拶する。
舞台もアイドルも経験した、そして最近接待バスケもして奉仕精神も心得た。
その経験したことを考えれば怖いものは無いと彼女は今回心込めて努めると固く心に決めてきた。
まだ会場は大きな騒ぎにはなってなくクラウスは横目でシルキアの姿を見ている。
覚悟を決め舞台に立つ彼女は頼もしいと思い口角を少し上げる。
即興で歌う才能を持っているシルキアに少しの心配もしていない。
バックバンドがノリの良いポップな曲を演奏し始めた。
それと同時にリズムを取ると彼女のリボンやツインテールの髪が揺れる。
「戦場でアナタはヤーヤーヤー!」
拳を突き上げてステージを歩き回るシルキア。
「その勇姿に皆が勇気付けられる」
合わせて騎士達も必死にペンライトを突き上げる。
「だからワタシは歌うのランララル~」
上半身を少し屈めて客席全てにぐるり指を差し軽くウィンクする。
「届け勇気の歌ガッツでファイトー!」
自身の胸を数回叩きその場で跳ね、彼女は元気良く体全部を使って会場に笑顔を振りまく。
するとクラウスの近くの騎士が1人身を乗り出してきた。このままいけばロープを乗り越えるという勢いで。
「歌姫は皆に分け隔てなく想いを贈る……お鎮まりを!」
クラウスはそっと騎士の肩に触れ、そう静止した。
『す、すまぬ』
この騎士は少し気持ちが高揚した程度だったようだ。クラウスの一声で戻ってくれた。
盛り上がりも最高潮の時、一瞬暗転し少し暗めのスポットライトへと転換すると、今度はゆっくりとしたバラード調のメロディーが流れる。
「深淵に一滴」
瞳を閉じ先ほどとは間逆の雰囲気へと変わる会場。
「それは愛の種」
シルキアの瞳はクラウスへと向けられる。
クラウスへと真っ直ぐに視線を送りしっとりと伸びやかな声でそう歌う。
「貴方に巡り逢えた喜びで」
視線を感じクラウスは彼女に振り向いた。
そしてシルキアと目が合う。
シルキアとクラウスの視線が絡み合うと彼女は微笑みを彼に向ける。
彼女の微笑みにクラウスは甘く疼く胸を抱えながら平静を装い、今は仕事を全うせねばとその心を隠す。
「私の心はいつしか花園になる」
右手を天へと掲げれば彼女はそっと瞳をまた閉じる。
するとクラウスを見ていたためかその方向にいる騎士達がロープを乗り越えようとし始める。
その数10名程。
「下がられよ!今宵ひとときの夢、醒めるには早かろう」
数名はそのクラウスの気迫に押され定位置に戻るが、気分が高揚し過ぎた者はロープを越えようと跨ごうとする。
「待たれよ!」
その気迫に満ちた顔に騎士達はクラウスを見る。先ほどを更に越えたその気迫に押される心。
「彼女たちは騎士殿達のために歌っておる、お静かに!」
『あ、あぁ』
気迫に押され騎士達は戻ったようだ。
クラウスは歌い続けているシルキアを背中で見守っていた。
シルキアが終れば最後にアラノアが登場してきた。
ステージの中央にはマイクスタンドが置かれ前にアラノアは堂々と立っている。
騎士達に楽しんでもらおうとアラノアは頭の中を空っぽにする。
「歌もダンスも未熟ですが、この世界を守ってくれた騎士様達に捧げます」
その言葉の後にホライゾンのアップビートなメロディーをバックバンドが奏で始める。
リズムを取るように足を鳴らし始めるアラノア。
ペンライトが会場では揺れている。
真っ直ぐと視線を送ればガルヴァンの姿が見える。
そんなガルヴァンはアイドル自体に興味が無いようで警護を継続している。
「剣と盾」
思い浮かんだ言葉をメロディーへと乗せていく。
「あなたと私」
即興の踊りを踊れば会場の騎士達も体を揺らす、ガシャガシャという鎧のぶつかる音。
「巡り合う運命」
会場の騎士もノリにノッてきたようだ。その様子にアラノアも楽しく、心躍ってくるのがわかる。
「いつも守ってくれて 見守ってくれて 優しい貴方」
投げキッスをすれば声援が会場から聞こえてくる。
その反応にガルヴァンは一瞬振り向くとアラノアが、会場中に投げキッスをしているではないか。
内心ギョッとしつつ心の中にモヤっとした何かが占め始める。
そのキスに気分を良くしたのか騎士数名が身を乗り出してくる。
両脇ではクラウスやシリウスが押さえ込んでいるが、ガルヴァンとて同じ。
「……得難く感じ惹かれるものに触れたい気持ちはよく分かる」
もどかしい気持ちが分からないわけではない。が、
「だがこの後には握手会が控えている、一旦ここは堪えろ」
触れられる機会があるのだ、と騎士を宥める。
そんなガルヴァンの姿をアラノアはしっかりと見ていた。
いつもこうやって私のことを守ってくれる彼……そして頭に浮んだ言葉を発する。
「……そんなあなたが……好き!」
『好き』の言葉にガルヴァンの心がざわつく。
それは騎士に向けたもの……では……、心の中に更に薄暗いモヤっとした何かが広がる。
もちろんそれはガルヴァンに向けた言葉であるが、それは彼にはまだ届かない。
真剣な瞳でガルヴァンを見ていたが、ここはステージ上だったことを思い出し少しおぼつかない踊りで誤魔化すアラノア。
頭に浮んだ言葉……それが彼女の本心、彼もそのモヤが嫉妬心であると、いつか自覚するだろう。
●触れあいと天上へ、そしてお疲れ様
ステージも終わり握手会の開始である。出入り口付近でアイドル3人は待機している。
ガシャガシャと鎧が無数に動く音が近付いてくる。
リチェルカーレの後ろにはシリウス、アラノアの後ろにはガルヴァン、そしてシルキアの後ろにはクラウスが控えている。
興奮覚めやまぬ騎士達が多いだろうと、護衛もかねて精霊も共に立っていた。
「順番にお願いしますねー!」
キャーレは騎士達を誘導しながら神人達の下へと導いてくる。
『今日はありがとう、とても澄んだ声に心が洗われました』
リチェルカーレの前に1人の騎士が立つ。
そっと差し出された鉄に覆われた手をリチェルカーレは力強くギュッと握る。
「皆さんが頑張ってくれたおかげで、今があるのを知っています」
騎士の顔は冑に覆われて見えはしないが、穏やかに違いない。
彼女の言葉が心に入ってくる。
「本当にありがとう」
ふわりと微笑み両手で騎士の手を包み込む。
『こちらこそ、ありがとう』
そう言うと、その騎士の周りに光が溢れ小さい光の玉になり空へと登っていく。
その登っていく光を微笑み絶やさず見守る彼女にシリウスも彼女を優しい瞳で見守っている。
その隣にいるアラノア。
差し出された鉄の手をいくつも握ってが声を掛けている。
「私達が活動できるのも騎士様達のご活躍のおかげです」
『君のパフォーマンスはあどけなさの中に光が見え、そして愛に溢れていたよ』
そう言われ、「好き」の言葉を思い出し顔を赤らめるアラノア。
そんなそんな、なんて謙遜する彼女に騎士は冑の中で微笑んでいる。
『神人と聞いた。これからも頑張ってこの地に平和を……』
「はい、今まで守ってくれたそんな方達の為に歌えてとても光栄でした」
顔一杯に笑顔を浮かべるアラノア。
『今日の君の姿は忘れない……』
そう言って騎士は光と共に消え玉になると空へと消えていく。
心からありがとう、と数度アラノアは天へと言葉を発している。
「楽しんでくれましたか~」
と来る騎士達それぞれに声をかけるシルキアはステージと変わらない笑顔を向けている。
「この地の平和は皆さんのガンバリがあったからこそです」
力強く握られた手に感無量になる騎士、握手できる喜びに飛び跳ねる騎士と様々。
「今日の出会いを光栄に思います」
『こちらこそ、見事なイベントだった、私の永遠のアイドルだ』
一人に騎士はそっとシルキアは真っ直ぐに見つめる。
その奥にはキラリと瞳に光るものが見える。
『君達の勇姿はこの心に残るだろう、ありがとう』
騎士の周りに光が溢れ出す。
「ありがとうございました」
シルキアが言うと騎士は一つ頷き光の玉となり天へと登っていく。
心で何度も謝礼を述べるシルキアは笑顔で騎士を見送った。
来場した騎士達全員を見送ったアイドル3人は暫く星が瞬く空を笑顔で見つめていた。
「見事だった これまでの経験を活かせたな」
持参した飲み物をシルキアに渡しながらクラウスは労いの言葉をかける。
「うん……はぁ、夢みたいだった」
椅子から足を延ばし、伸びをしながらそれを受け取る。
今までの経験が活かせたと、シルキアも満足気に笑顔を向ける。
その出し切ったステージで彼女は疲れもあったが、騎士達の言葉を思い出せばその疲れも心地良いと感じていた。
シリウスはリチェルカーレに飲み物を「お疲れ」といいながら渡す。
ありがとう、と受け取るとシリウスを見上げる。
「ちゃんと歌えていたかしら?」
「……いい歌だった」
シリウスの言葉に頬を赤くし、リチェルカーレは「嬉しい」と微笑む。
「あいつらに聞かせるのは……少し惜しかったけど」
少しそっぽを向くようにシリウスがいうが、リチェルカーレは口に手を当てて笑う。
あなたに思いをこめたのよ、という言葉を心に隠して。
クラウスはそっと会話の邪魔にならいないようにとアラノアとガルヴァンへと飲み物を差し出す。
それを2人は礼を言って受け取る。
アラノアは満足そうに椅子に腰掛ける。
「……楽しかったか?」
その横へと座りながらガルヴァンはそう問い掛けた。
「うん」
笑顔で彼女はそう返答する。
ガルヴァンはそっと彼女の髪にある赤い蝶の髪飾りに触れる。
「……その衣装、似合っている」
「え!?」
少し恥ずかしいのかアラノアの顔は赤く染まる。
髪に触れるその優しい手に驚くアラノアは、ガルヴァンへとそっと赤い顔と共に視線を向ける。
(……この蝶に触れていいのは俺だけだ)
その心の声はアラノアには聞こえない。
「好き」というあの言葉がガルヴァンの心を占め、彼女の朱殷色の瞳を見つめていた。
3人のアイドルの活躍で騎士達は浄化された。
心に残る永遠のアイドルに幸福な道をと騎士達は願っている。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:シルキア・スー 呼び名:シルキア |
名前:クラウス 呼び名:クラウス |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 草壁楓 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 04月26日 |
出発日 | 05月03日 00:00 |
予定納品日 | 05月13日 |
参加者
会議室
-
2017/05/02-22:16
プラン提出しました。
えっと、歌は2曲用意してみました。(いいのかな?と若干不安)
イベント後はクラウスが飲み物用意します。
お邪魔でなければ、としているのでお邪魔はしないと思います。
どんなステージになるか楽しみです。
それではどうぞよろしくお願いします。
-
2017/05/02-20:47
>配置
シルキアさんの言ってくださっている「皆で手分けして」というのがいいですね。
舞台の形とかもわかりませんし、細かい部分は現場判断(マスターさんにお任せ)ということで。
歌の順番も特にこだわりなくです。わたしはお任せのつもりでいました。 -
2017/05/01-23:02
>配置
他の精霊と手分けして舞台下で騎士の動向に気を付ける
くらいのふわっとしたもので大丈夫かな?と思い直しました。
こちらはこんな感じでプランに入れさせて頂こうかと思います。
歌う順番も特に決めなくても大丈夫かな?
掛ける言葉とか歌詞とか文字数必要そうですし。 -
2017/05/01-22:50
分かりました。
ではそれぞれ単独という事ですね。
>精霊の配置
うーん…均等に別れるぐらいしか思いつきませんね…
暴力厳禁ですし、熱狂してこちらに近付こうとする騎士さんを制止し心に響くような言葉を掛けてあげれば危険は無いようですし… -
2017/05/01-22:33
リチェルカーレです。パートナーはTDのシリウス。
よろしくお願いします。
歌は好きだけれど、アイドル……が、がんばります。
一応単独をイメージしていました。
精霊さんたちはどうなんでしょう。ステージ中央と左右くらい別れた方がいいのでしょうか? -
2017/05/01-20:09
私は単独を予定しています。
バックコーラス等必要でしたらお手伝いできます。
えーと、鎧騎士様は総勢30名程。
という事は、精霊はガードマン役を配置決めて協力した方がよいでしょうか? -
2017/05/01-18:51
アラノアとガルヴァンさんです。
よろしくお願いします。
騎士達が求めるのはまさかのアイドル…
うっかり引き受けてしまった手前、失敗しないよう頑張りたいと思います。
…あ、こちらは一応単独でもグループでも構いません。 -
2017/05/01-10:52
シルキアとクラウスです。
よろしくお願いします。