ホクロダンク(革酎 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 たまたま用事があってタブロスのA.R.O.A.本部を訪れたあなたは、新人受付嬢のナルメディさん(24歳)が随分と深刻そうな顔をしていることに気付いた。
 何があったのかと話を聞いてみると、恐ろしいまでにくだらない内容が返ってきた。
「えぇっと、実はぁ、接待バスケをすることになったんですぅ」
 接待の相手はA.R.O.A.と取り引きのある各企業の部課長連中であるとの由。
 いずれも良い年したおっさんばかりなのだが、彼らはなんと、バスケの同好会を組んでいるらしいのだ。
 チーム名は、エクストリームサンダー。
 メンバー構成は、

 センター:ゴリ・パープル
 パワーフォワード:チェリー・ブルー
 スモールフォワード:メープル・イエロー
 シューティングガード:ミッチー・グリーン
 ポイントガード:リョーチャン・レッド
 補欠:ミスター・ホクロ

 という、ちょっと意味不明な名前が連なっていた。
 ここまでは別にどうってことない都市伝説級の世間話だが、洒落にならないのが、A.R.O.A.の某お偉いさんだった。
 日頃、色々とお世話になっているエクストリーム(以下略)に何か御恩返しが出来ないものかと考えていた彼は、接待バスケをやろうなどといい出したのだ。
 接待である以上、こちらが派手に勝ってはならず、僅差で勝つか、エクストr(以下略)に勝たせるかのいずれかで終わらなければならない。
 ところが、エクスt(以下略)は五十代のおっさんばかり。
 余りに弱い為、悲劇の世代、とも呼ばれているらしい。
 そこでA.R.O.A.本部は、取り敢えず適当にバスケやって適当に負けてくれる人員を密かに募集したのだが、今のところ応募状況は決して芳しくないとのことだった。
 何故かローカルシンガーグループ『グリーンバタフライ』のふたりが申し込んできてくれたというのが、唯一の希望の光だ、とナルメディさんは溜息を漏らす。
 が、次の瞬間――ナルメディさんはギラリと鋭い眼光を煌めかせ、邪悪な笑みを浮かべてあなたの顔を真正面から覗き込んだ。
「聞いてしまった以上、あなたも同罪。勿論、参加してくれますよね?」
 うふふふふ、と不気味に笑うナルメディさん。
 どうやら、逃げ道は無さそうだった。

 エクs(以下略)を喜ばせるには、どのようにプレイすれば宜しかろう。

解説

 バスケをしましょう。
 但し、劇勝は駄目です。程よく負けてあげるか、ぎりぎりの勝利を目指して下さい。
 尚、グリーンバタフライのふたりは、メディスがシューティングガード、フィビスがポイントガードを担当しますが、基本的にはふたりともベンチウォーマーだと思って下さい。
 また、新人受付嬢のナルメディも一応、選手登録しています。ポジションはスモールフォワードです。
 彼女らはいずれも、人数が足りなければ仕方なくゲームに出る、という程度です。

 尚、試合後のお弁当代と会場の体育館までの交通費として、300Jrを消費致します。

ゲームマスターより

 本プロローグをお読み下さり、誠にありがとうございます。
 別段、バスケの知識は要りません。ノリだけで結構です。
 お気軽にご参加頂けましたら幸いです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)

  接待バスケとは…AROAも大変なんですね
ともあれ、相手が楽しめるよう全力で手を抜きます

開始前に相手チームに笑顔で挨拶
今日は胸を借りるつもりで来ました
よろしくお願いします

ポイントガード
前半はこちらが少しリードするように頑張る
皆に均等にボールが行き渡るよう配慮する

ハーフタイムは皆で休憩
同じポジションのレッドさんにコツなどを聞いて感心する

後半
かなり疲れてきましたね…
うっかりミスを連発してしまいそうです
終盤、チャンスの時に
うまく相手ディフェンスで隠れた時を狙ってアスカ君にパスを出す
疲れているので誰にでもカットできそうなスローボールです
わ、私の渾身のパスが…!

たとえ負けても、アスカ君は私の真の光だよ…!


シルキア・スー(クラウス)
  「できそう? 勝ち負けじゃない 接待が任務なのよ!」握り拳

彼と一緒に皆さんにご挨拶 よろしくお願いします!

前半戦出場
バスケはそれなりにできる
ポジはシューティングガード
彼がうまく接待プレーしたら密かにサムズアップ

スティールして貰い易い動きを心掛ける
よそ見したり緩い球速
盗ってくれたら「やりましたねー」悔し目のトーンで
基本笑顔でプレイ

ハーフタイム接待
先方へ一緒に休憩どうですかと誘う
宜しければとバスケの話振りつつ足のマッサージ

後半戦審判
方針申合せておく
新藤さんのファウルは拾っていき相手にフリースロー機会作る
ジャッジはなるべく露骨にならないようにしたいけど

試合終了
健闘讃える拍手
彼にも拍手「お疲れ」
拳合わせコン


メイ・フォルツァ(カライス・緑松)
  (アタイもバスケは趣味レベルだからなぁ。
お互いに有意義な試合になれば、いいんだけど)

メンバーの中で、誰が欠員してもいいよう、
事前にバスケのポジションの本を読んでおくわ。
無理なら、当日の試合を見て、
大体どんな動きや役割をするのか、大雑把でもいいから把握する。

前半は、ベンチで補欠よ。
メンバーの内、誰か(演技含む)が体調を崩したり、
異常事態があったら、代役を出る。
それまでは、スポーツドリンクや濡れタオルを人数分用意してる。

後半は、スーさんと交代し、シューティングガードで出場。
ボールを奪い返そうとする選手がいたら、捻挫したフリをして転倒。
それか、ドリブル中にボールから手放したりと、反撃する隙を作るわ。


西島 紫織(新藤 恭一郎)
  私はベンチで応援に徹します!
「運動神経ない芸人も大爆笑だな」って恭一郎さんに言われてるし…
出ざるを得ない事態になったら…頑張りますけど…

※万一出た場合
パスは手で取れず顔面で受ける
ドリブルで3m以上進めない(ボール逃がす、足もつれる)
ダブルドリブルやトラベリング連発
方向感覚を失い自陣にゴール(どの道入らないが)
フリースロー惨敗
パスのつもりがその場にポトリ、皆どこにボールがあるか一瞬探す(まさに魔球)

ハーフタイムにレモンの蜂蜜漬けを皆さんに配りますね。
もちろん相手様にも。
料理スキル無いので味が心配、真心でカバー…出来ないかな…
ナルメディさんに相手様の分だけ強壮剤とか用意出来ないか聞いてみようかな…




●1stQ

 試合前のコートに、ひと際元気の良い声が爽やかに響いた。
「おはようございまぁーすッ! 今日は宜しくお願いしまぁーすッ!」
「今日は胸を借りてやっから……やりますから、宜しく頼むぜ……頼みます」
 八神 伊万里がアスカ・ベルウィレッジと共に、接待相手チームであるエクストリームサンダーのベンチに駆け寄り、朗らかな笑顔で頭を下げると、相手方の六人も、いやいやこれはどうもどうもと、にこやかに挨拶を返してきた。
 いずれも紛うことなきおっさん揃いなのだが、腰の低さや丁寧な仕草を見ると、本当にバスケなんか出来るのかと疑問を抱いてしまう。
 伊万里とアスカが挨拶している様を自軍ベンチで眺めていたシルキア・スーは、傍らでストレッチに余念のないクラウスに真剣な表情を向けて、訊いた。
「出来そう? 勝ち負けじゃない。接待が任務なのよ」
「接待が任務……成程、心得た」
 クラウスは一瞬、眉間に皺を寄せて若干自信の無さそうな表情を浮かべたものの、すぐに頭を切り替え、自らの為すべき仕事に集中するよう、両頬を軽く叩いた。
 一方、ベンチスタートとなったメイ・フォルツァとカライス・緑松は、ベンチに腰かけたまま肩を並べて同じ本をじっと見入っている。
 A.R.O.A.受付嬢のナルメディが初心者にも参加し易いようにと、バスケの入門書を人数分揃えていてくれたのだ。
 ナルメディは、全くの素人などひとりも居ないだろうと高を括っていた。
 実際、メイは趣味レベルで嗜む程度に経験はあるようだが、カライスの場合は全くの未知数だった。
 そんなカライスは、メイと共にスポーツドリンクやタオルを人数分用意したり、救急箱をしっかり準備してくるなど、どちらかといえばマネージャーとしての才能を開花させているように見えなくもない。
「僅差で勝つも、惨敗するも……ハイレベルだぜ」
「アタイもバスケなんて、趣味レベルだからなぁ」
 溜息を漏らす、とまではいかないものの、素人同士の草バスケであるにも関わらず、メイとカライスの両者には妙な緊張感が漂っていた。

 そうこうするうちに、いよいよ開始時間が迫ってきた。
「はい、恭一郎さん。頑張って下さいね」
 先発SGとして出場する新藤 恭一郎に、西島 紫織がタオルを手渡した。
 ウォーミングアップでの汗を紫織から受け取ったタオルで拭いつつ、恭一郎は静かにひと言。
「後半、場合によっては最終兵器を投入する」
「え? 最終兵器?」
 紫織は、恭一郎がいわんとしていることが理解出来なかった。
 恭一郎が意味する最終兵器とは他でも無い、紫織自身のことだったのだが、その真意が皆に理解されるのは少し先の話になる。
 尚、A.R.O.A.側のスターティングオーダーは、次の通り。

  PG 八神 伊万里
  SG シルキア・スー
  SF 新藤 恭一郎
  PF アスカ・ベルウィレッジ
  C  クラウス

 審判はナルメディが務め、スコアボードと審判補助にはグリーンバタフライのメディスとフィビスが適当に請け負うこととなった。
 そのナルメディが両チームを促して、先発メンバーがコート内に入る。
 それぞれが位置につき、センターサークルではティップオフの為にクラウスとゴリ・パープルがマッチアップする格好で向き合った。
「両チームとも、頑張れ~ッ!」
「楽しくプレイしていきまっしょ~ッ!」
 スコアボード付近から、グリーンバタフライのふたりが陽気に声援を送ってきた。
 ローカルシンガーグループでそこそこ人気のある彼女達が、観客数が二桁に届くかどうかという草バスケでプロの美声を張り上げている事実はかなり奇跡に近いのだが、しかしウィンクルム達の頭の中は、どうやって相手を勝たせようかという使命感にすっかり囚われてしまっており、最早それどころではない。
 だが、どんなに悩んでも時間は待ってくれない。
 ナルメディの吹く短いホイッスルと同時に、ボールがセンターサークル中央で高く舞い上がる。
 試合が、始まった。

●2ndQ

 予想通りというか、予想のかなり斜め下というべきか。
 エクストリームサンダーの面々の動きが、ウィンクルム達の思った以上に悪い。
 年相応という言葉はまさに、彼等の為にあるんじゃないかと思える程の、極めてのんびりゆったりした動きであった為に、ティップオフ直後のクラウスは本当に大丈夫かと心の底から不安になったぐらいだ。
 だがとにかく、序盤から中盤にかけてはウィンクルムサイドが優勢に試合を進めなければならない為、案外普通にやってても問題無さそうであった。
「さぁ行くよーッ! まず一本ッ!」
 ドリブルで敵陣のスリーポイントラインまで入ってきた伊万里が声を張り上げ、まずは恭一郎にパス。
 全体の指揮を執るのはPGの伊万里だが、攻守の要は矢張り恭一郎だ。
 撃って良し流して良しのSFとして自在にボールをコントロールする姿は、マッチアップするメープル・イエローが感嘆の声を漏らす程であり、同時にベンチで応援する紫織が、そのクールな格好良さに思わずドキドキしてしまうのも無理からぬ話であった。
 恭一郎がノールックパスでゴールリング付近に出してきたボールを、アスカがドンピシャのタイミングで受け取り、開幕アリウープを豪快に決めた。
 味方からよりも、敵側から多くのどよめきと感嘆の声が漏れてきたことに、アスカは内心こそばゆい心境だった。
「よっしゃあ……じゃなかった、えぇっと、今のはまぐれだッ……です」
 しかし、ウィンクルムチームの独壇場はまだまだ、終わらない。
 相手のシュートミスをクラウスがすかさずリバウンドで奪い、早い展開で伊万里からシルキアへ流すと、今度はシルキアがミッチー・グリーンの守備をかわすように、スリーポイントラインの外からフェイダウェイで華麗にスリーポイントを決めた。
 相手からは矢張り、悔しがるよりも感嘆の声が多くあがる。
 何だか、段々申し訳なくなってきた。
(えぇっと……これは接待だからね。うん、接待、接待)
 スリーポイントを決めてしまったシルキアは、自戒するように何度も心の中で呟く。
 思っていた以上に、やり辛いゲームだ。

 だが、やりようはある。
 攻撃に強いチームならば、逆に守備で脆さを見せれば何とかなるかも知れない。
 しかしながら、あまり露骨にやってしまうと手加減していることがバレてしまうので、そこは慎重にやらなければならなかった。
 まずは、たった今スリーポイントを決めたシルキア。
 伊万里からボールを受け取った直後、少しばかり注意力散漫をアピールし、よそ見しながらドリブル。
 すると思った通り、リョーチャン・レッドが綺麗にスティールしてくれた。
「あー、やってくれましたねーッ!」
 何ともいえない苦笑を浮かべつつ、追いかける。クラウスがサイドライン沿いに自陣へ戻りつつ、秘かにサムズアップを出して笑みを送ってきた。
 特に意識をしていた訳ではないが、両チーム共に守備が弱く、お互いに点を取り合うラン&ガンスタイルとなってきた。
 センターサークルからゴール下までは伊万里と恭一郎のパス回しで相手を翻弄し、クラウスがゴール下の起点となってポストプレイに徹し、内側ではアスカ、外側からはシルキアが点を決めるというスタイルが、ウィンクルムチームの攻撃の形として確立されてきた。
 逆にしんどいのが、守備だ。
 エクストリームサンダーの攻撃が、兎に角もう良い加減過ぎるのだ。
 チームワークも無ければ、攻撃スタイルなども一切、確立されていない。
 ウィンクルム達がミスをしてボールを渡してやらなければ、オフェンスに入ることも出来ないという体たらくだったのだ。
 悲劇の世代と呼ばれるのも、無理はないか――ベンチからメイが、どんよりした顔で眺めていた。
「いや……これは本当に、ハイレベルだぞ」
 カライスの呟きは、ゲーム内容そのものに対してではない。
 如何に自然な動きで相手にボールを渡すのか、そこが超難しい、という意味でのハイレベル。
 後半はカライスがクラウスに代わってセンターに入る予定なのだが、今のうちにクラウスとゴリ・パープルのマッチアップの様子をしっかり見ておかないと、絶対にやらかしてしまうような気がしてならなかった。
 同じベンチスタートでも、紫織は呑気なものであった。
 彼女は、自分が試合に出ることはまずあり得ない、などと勝手に決め込んでいたのである。
 そんな訳だから、紫織は思う存分、恭一郎への応援に全力投入することが出来ていた。
 紫織の幸福タイムはこの前半でほぼ使い切った、といって良い。

●3rdQ

 前半が終わり、ハーフタイム。
 スコアは32-27で、ウィンクルムチームが僅かにリード。
 後半からはナルメディとバトンタッチして審判に入るシルキアとクラウスが、相手側ベンチに足を運び、マッサージなどのサービスで親睦を図っていた。
 そのふたりの代わりとして、メイがSGに、カライスがセンターに入る訳だが、後半はいよいよエクストリームサンダーに逆転させなければならず、かといって露骨に手を抜いている様子を見せてはいけないという実に難しい役どころを任されることになる。
「ここからちょっと、色々面倒臭くなりますけど、楽しんでいきましょー」
 ナルメディが補欠としてベンチに入ってきて、適当にぶちかましてくれた。
 ウィンクルム達の間で一瞬、殺意のような感情が沸いたかどうか定かではなかったが、彼ら彼女らの何ともいえない怒りの籠った視線を見ると、どういう感想を抱いたのか、ひと目で分かろうというものである。
 一方、エクストリームサンダー側も選手を入れ替えてきた。
 ゴリ・パープルに代わって、ミスター・ホクロがセンターを任されるらしい。
「え……あのひとが、ミスター・ホクロ」
 相手ベンチにレモンの蜂蜜漬けを持って行こうとしていた紫織が、思わずその場で凍ったように固まってしまった。
 ミスター・ホクロはその名の通り、ホクロなひとだった。
 鼻の右横下に、物凄く大きなホクロが自己主張している。
 いや、あれは本当にホクロなのか。あの立体感はちょっと尋常ではない。実は巨大な鼻糞が張り付いていて、本人が気づいていないだけなのではないか。
 紫織はもう全然別の意味ですっかり心を奪われてしまっていたのだが、ミスター・ホクロの圧倒的な(ホクロの)存在感に目が釘付けになっていたのは、紫織だけではなかった。
「後半は彼に頑張って貰うから、わしらぁもうあんまり仕事せんでよぉ」
 リョーチャン・レッドにPGの心構えなどをインタビューしていた伊万里は、相手からそんな台詞が飛び出してきたことに最初のうちは違和感を覚えたのだが、ミスター・ホクロの登場に全てを察した。
 天才バスケットマンを自認するアスカも、場合によってはマッチアップするであろうミスター・ホクロの圧倒的な存在感に警戒心を抱いた。
(案外……手ぇ抜くまでもないかも知れねぇな……)
 アスカのその読みは、半分は当たっていたが、半分は外れていた。
 それは、後半の展開を見れば誰の目にも明らかになるのだが、まだ今の時点ではそこまで想像が及ばない。
 ともあれ、後半戦開始である。
 シルキアとクラウスが審判用の黒いTシャツに着替えて、コート内に入る。
 フィビスとメディスがスコアボードの隣で黄色い歓声を上げる中、ゲーム再開のホイッスルが鳴った。

 後半開始直後、ミスター・ホクロがボールを持ってセンターラインを越えてきたところで、カライスと恭一郎が早速マークについた。
 ダブルチームでまずは様子を見よう、という作戦なのだが、これが裏目になった。いや、相手に勝たせようという意図からすれば、寧ろ好都合といえなくもないのだが。
(む、これは……)
(何という存在感)
 カライスも恭一郎も、兎に角ホクロが気になって気になって仕方が無かった。
 マークについているというよりも、ホクロを間近で観察している気分である。
 五人のうちふたりがホクロひとつに夢中になっている訳だから、当然ながらエクストリームサンダー側はボールを廻し易くなる。
 が、それもほんの数分程度の効果に過ぎなかった。
 最初にマッチアップした時は注目を集めに集めたミスター・ホクロも、その動き自体は非常に緩慢で、ボール捌きも上手いとはお世辞にもいえない。
 強烈な存在感でボール以上に注目を集める、という意味ではウィンクルム達の集中力を削ぎまくる効果はあるのだが、矢張り根本のプレイスキルに問題がある為、結局のところ然程の戦力にはなり得なかったのだ。
(うーん、駄目かな……やっぱり作戦続行)
 アスカのリバウンドから一気に相手陣内へと駆け込んだメイだが、スリーポイントラインでわざとファンブルし、ミッチー・グリーンにボールを取らせた。
 一瞬捻挫してみようかとも思ったが、ちょっとあからさま過ぎるので、やめた。
 その代わり、シルキアとクラウスのジャッジで何とかバランスを取ることにした。
 ややスタミナ切れ(を演出している)恭一郎とアスカがなりふり構わぬプレイに出たという体を装い、そこにかこつけてシルキアとクラウスが多めのファウルを取る。
 こちらも余りに露骨過ぎると興醒めされてしまう為、ごく自然なジャッジをしているように見せかける必要があった。
(接待って、こんなにも気を遣うものだったんですね)
 ベンチでのんびり応援している紫織ですら、コート内の五人を気の毒そうに眺める始末である。
 すると、そんな紫織の目の前で突然、アスカが転倒した。
 先程ダンクを決めた際の着地で、足首を痛めたという設定らしい。
 一旦ゲームをストップし、メイとカライスが大袈裟に痛がるアスカの足首にテーピングを施した。
「流石に怪我してまで続けるのはちょっと気の毒ですから、ベンチにさがって下さいな」
 相手側ベンチからゴリ・パープルが心配そうに声をかけてきたが、アスカは気丈な態度で大きくかぶりを振った。
「皆さんのプレイを見ていたら、こんなことで諦めるわけにはいかないんスッ!」
 我ながらよくいうぜ、と内心で頭を掻きながら、アスカは思いっきり話を盛った。
 そのアスカの心意気に感動したらしく、おっさん達は感涙しそうな勢いで大きく頷いていた。

●4thQ

 ゲームは終盤だが、尚もウィンクルムチームのリードが続いている。
 このままでは拙い――恭一郎は遂に、禁断の一手を打つ覚悟を決めた。
 クラウスに五つ目のファウルを取らせて自らを退場とした恭一郎が、交代選手として指名したのが、紫織だった。
 紫織は一瞬、何が起きたのか理解出来ない様子で、しばしベンチの前で呆然と立ち尽くしていた。
 が、それもほんの数秒間程度の話で、自分がゲームに出ると認識した瞬間、ものの見事にパニックへと陥っていた。
 以前に恭一郎からも、
「運動神経の無い芸人も大爆笑だな」
 などと揶揄されたことがある、紫織の身体能力。
 それを今ここで、発揮することになろうとは。
「大丈夫だ。しっかり、笑いを取ってこい」
「いえ、そのぅ、えぇっと……そういう場所じゃない筈なんですけどぉ……」
 戸惑いがちにコート内へと入ってくる紫織を見て、伊万里はこれで何とかなる、と内心で拳を握り締めた。
 紫織に対しては物凄く失礼な話であることは百も承知だが、恭一郎から噂レベルで聞かされていた、最終兵器『紫織』のパワーを、この場は頼りにするしかなかろう。
 そして、プレイ再開。
 伊万里は早速、紫織に物凄く緩いパスを出した。
 ところが、そのパスでさえ紫織には相当に荷が重かったらしく、まさかの顔面キャッチを披露。
 その余りのドジっ娘ぶりに、パスを出した当人の伊万里が思わず萌え狂ってしまいそうになった。
 これは是非、紫織にボールを集めなければならない――伊万里のみならず、メイ、カライス、アスカも同様の判断を下した。
 結果、紫織が見せたパフォーマンスを列挙するならば、3メートルも進めないドリブル、ダブルドリブルとトラベリングの合わせ技、自陣ゴールめがけてのまさかの方向音痴スリーポイント、パスを出し損ねての落球、フリースローでゴールリングに届かないボールなど、枚挙に暇が無かった。
 しかしカライスなどは、紫織が見せる数々のレジェンド級ドジっ娘プレイに寧ろ、感動の念を覚えていた。
(み、見事だ)
 あのおっさん連中を相手に廻して、何とかして負けなければならないという最大級のプレッシャーを、紫織は実に、素のプレイスタイルで見事にやってのけたのだ。
 あれこそまさに、ハイレベル。
 大体のことには動じないフィビスとメディスが、その場で凍り付く程の珍プレイの連続。
 カライスが紫織を尊敬したのは決して嫌味でも何でもなく、本心からだった。
 ともあれ、恭一郎のいう最終兵器、真打登場ということでゲームは一気に、エクストリームサンダー側へと傾いてゆく。
 その流れに合わせるようにして伊万里のパスミス(を演じた敵へのパス)、メイの緩慢な守備(と見せかけた敵への援護)、アスカとカライスの攻守に亘るお粗末プレイ(を装った適当なサボタージュ)で、終了三分前には遂に、エクストリームサンダーが逆転に成功していた。
 そして――試合終了のブザーが鳴った。

「いやぁ、俺、ホントに感動した……しました」
 試合が終わるや否や、アスカがマッチアップしていたチェリー・ブルーにこれ見よがしの称賛を吐き続けていると、他のメンバー達も堰を切ったように次々と称賛の雨あられ。
 エクストリームサンダーの面々も、嬉し気な表情で労いの言葉を投げてきた。
 シルキアとクラウスも健闘を称える拍手を贈ると同時に、ふたりで拳をコンと突き合わせ、不思議な程の充実感を味わっていた。
(よくやったよ……例え負けても、アスカ君は私の真の光だよ……)
 ベンチへと退きながら、伊万里も不思議な満足感に包まれていた。
 正直いって、アスカがあそこまで接待に徹してくれるとは、思っても見なかった。
 そんな伊万里の目の前に、メイがタオルとスポーツドリンクを携えて佇んでいた。
「お疲れ様。フル出場、大変だったんじゃない?」
 後半戦からのスタートとなったメイは、まだ多少は余力を残している。逆にフル出場となった伊万里とアスカは、これは決して演技でも何でもなく、本当に疲れている様子だった。
「ほら、凄く嬉しそう……負けて任務達成ってのも変な感覚だけど、アタイ達はきっちりと仕事を果たした、って胸を張れるわね」
 ウィンクルム達の健闘を称えて笑顔を浮かべるおっさん達を、メイは少しばかり眩しそうな表情で眺めた。
 例え下手でも良い、弱くても良い。
 スポーツは楽しめた者勝ちだということを、メイは何となくではあるが、理解した。
 と、そこへフィビスとメディスがスコアシートを持ってきた。
 何と彼女らは、律儀にも各選手の成績を、ちゃんと数字として残しておいてくれたのだ。

 八神 伊万里
  得点:8  アシスト:3  リバウンド:2  スティール:4
 アスカ・ベルウィレッジ
  得点:14 アシスト:1  リバウンド:10 スティール:0
 シルキア・スー
  得点:7  アシスト:2  リバウンド:1  スティール:1
 クラウス
  得点:7  アシスト:3  リバウンド:8  スティール:0
 西島 紫織
  得点:2  アシスト:0  リバウンド:0  スティール:0
 新藤 恭一郎
  得点:10 アシスト:9  リバウンド:9  スティール:2
 メイ・フォルツァ
  得点:4  アシスト:4  リバウンド:4  スティール:1
 カライス・緑松
  得点:6  アシスト:3  リバウンド:6  スティール:1



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 革酎
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 04月02日
出発日 04月07日 00:00
予定納品日 04月17日

参加者

会議室

  • [21]シルキア・スー

    2017/04/06-23:42 

    はい、うまくいくといいですね。
    プランは提出しました。

  • [20]メイ・フォルツァ

    2017/04/06-23:34 

    緑松:
    プランは提出しましたが、ギリギリまで対応します。
    後半戦に関しては、スーさん、クラウスさんと交代する旨を記述しています。

    改めまして、スーさんは対応して下さり、ありがとうございます。

  • [19]メイ・フォルツァ

    2017/04/06-23:15 

    >スーさん
    わかった、後半はシューティングガードとセンターを担うわね。
    審判の事も把握したわ。
    これを基にプランも書き直す。

  • [18]シルキア・スー

    2017/04/06-22:34 

    >カライスさん
    では後半戦はシューティングガードとセンターをそちらにお任せします。


    私達は前半は試合に入り後半は審判に入ります。
    相手のファールは寛大ジャッジ
    こちらはゆるめジャッジ
    場合によってファール無視
    新藤さんのファールは拾っていき相手にフリースロー
    という感じでいこうと思います。

  • [17]メイ・フォルツァ

    2017/04/06-22:24 

    緑松:
    可能でしたら、メイはシューティングガード、私はセンターを希望しています。

    相手との得点差や体調状態を把握した上で接待バスケをしたいので、
    後半戦に出られたら、と考えています。

    プランは提出していますので、白紙にはしていません。
    ですが、内容は誰がアクシデントになっても対応できるように、補欠要員にしています。

  • [16]シルキア・スー

    2017/04/06-21:45 

    >カライスさん
    希望ポジション教えて頂けますか?

    私達はシューティングガードとセンターですが、こちらと被っているなら
    途中交代等、対応できます。
    私達が途中交代した場合、審判に入って手心加えたジャッジをしようかと。

    前半戦に出て後半戦お任せでも可です。

    シューティングガードとセンターの片方が被っているなら被っている方まるまるお任せして
    審判に入ります。

    どちらでもどうぞ。

  • [15]メイ・フォルツァ

    2017/04/06-21:16 

    緑松:
    ギリギリの参加を失礼します。初めまして、メイの精霊、緑松です。
    エクストリームサンダーへの対応は、皆様の発言で一通り把握しました。

    その上で私達も本来は、入りたいポジションを述べたいのですが、保留にしています。
    (※今のポジションで確定している可能性があるため)

    なので、メイも私も補欠扱いにしています。
    プランは、スー様がまとめたポジションを元に、練っています。

    取り急ぎですが、失礼しました。

  • [14]シルキア・スー

    2017/04/06-20:57 

    あっ人が増えましたね。
    対応できますので。
    出発時間までチェックしてます。

  • [13]シルキア・スー

    2017/04/06-20:51 

    プラン提出しました。

    ミスター・ホクロにはこちらでは一切触れない事にしました。
    彼がどんな展開を見せてくれるのか楽しみにしてます。
    上手くいきますように!

  • [12]八神 伊万里

    2017/04/06-17:59 

    >ミスター・ホクロ
    確かに気になりますね…
    ただ、何をどうやれば彼を試合に出せるのかは分かりません。
    文字数も限られていますし、ぶっちゃけ
    『影が薄くて気付かない』的なことになりはしないかと…(メタですが)

  • [11]西島 紫織

    2017/04/06-17:18 

    こんにちは、西島です。
    今回はお世話になります、よろしくお願いします。

    私も実はミスター・ホクロさんが気になってるんです。
    一応同じ補欠ですし……
    でも、私も文字数が赤になっちゃって、全然触れられないんです……
    タイトルになってるくらいですから、きっと出てきてくれると信じているのですが……

  • [10]シルキア・スー

    2017/04/06-16:09 

    >休憩に誘う
    はい、ではお誘いしてみます。
    レモンありがとうございます。
    私の方はマッサージを申し出てみようと思います。


    気になるのはミスター・ホクロ。
    彼を出番のないまま終わらせる訳にはいかないような。
    だからといってどうこうできる文字数はないので、こちらでは彼には触れられそうもありません…。
    触れなくても出てきてくれるでしょうか…。

  • [9]西島 紫織

    2017/04/06-14:57 

    シルキアさん、ポジションのまとめありがとうございます。
    ハーフタイムでの接待も承知しました。
    紫織には先方の分のレモンも用意させておきますので、シルキアさんが先方を休憩にお誘いして下さるならレモンもお配りします。

    アスカさんもなかなかの策士でいらっしゃいますね。
    相手を軽んじた態度から改心を見せる……成程。
    ならば前半は俺もあまり手加減せず上から目線で行きますか。
    前半は小生意気、後半は怪我人にヒール(場合によっては運動神経ない芸人)……何という問題児チームでしょうか。
    これなら手加減をしていると悟られずに上手くやれそうですね。

  • [8]八神 伊万里

    2017/04/06-12:41 

    あ、人が増えたんですね!
    西島さん、新藤さん、よろしくお願いします。

    ハーフタイムも接待ですね、分かりました。

    >後半
    だめ押しに、アスカ君が足を痛めたふりをしてみようかなと思っています。
    疲れにプラスしてさらにこちらの力が落ちるのを装えますし
    怪我を押して出場するほどこの試合にかけているとアピールできるので
    その点も心象がよくなるのではないかと。


    アスカ:
    最初は相手を軽んじておいて、試合を通して改心フラグを立てるのもいいんじゃないか?
    まあ、この天才バスケットマン、アスカに任せておけ。


    伊万里:
    な、何も今からやらなくても…(苦笑)

  • [6]シルキア・スー

    2017/04/06-11:29 

    人が増えましたね、新藤さん西嶋さんは初めまして。
    よろしくお願いします。

    役はこんな感じでしょうか(敬称略)

    ポイントガード
    八神 

    シューティングガード
    シルキア

    スモールフォワード
    新藤 (交代要員 西島)

    パワーフォワード
    アスカ

    センター
    クラウス

    審判
    ナルメディ

    盛上げ係り 兼 得点係り
    フィビス メディス


    これで良ければナルメディさんとグリーンバタフライのお二人へは私の方でお願いしておきます。

    後半逆転される流れを目指すで了解です。
    懸念は、疲労は向うの方が著しい可能性大かと思うので、
    スタミナ保ってもらうフォローを何かした方が良さそうな。
    ハーフタイムインターバルは向うのスタミナフォローに何かしたいと思います。
    一緒に休憩しましょうと誘ってもいいでしょうか?

  • [5]西島 紫織

    2017/04/06-10:16 

    こんにちは、神人・西島紫織のパートナーの新藤です。
    まだまだ未熟者ですが、皆さんどうぞよろしくお願いします。

    もしナルメディさんが出場を嫌がられるようであれば、僭越ながら俺がスモールフォワードを引き受けさせて頂ければと思います。
    俺のとこの神人……紫織ですが、彼女は運動神経がだいぶ破滅的なので、「えーっ、私はベンチで十分です!審判も出来るかどうか……すみません、バスケのルールあまり知らなくて……それより、レモンの蜂蜜漬け作って持っていきますね」とか言ってすっかりマネージャー気取りです。

    紫織は試合に出る気はなさそうですが……もし先方があまりにグダグd……もといあまり奮わないようであれば、俺とメンバーチェンジでほんの数秒でも出してやると面白い事になるかもしれません。

    接待方法は、皆さんのご提案がベストではないかと思います。
    八神さんの仰るように、前半はこちらが少し優位に立って、後半からラストにかけ逆転劇となれば、先方も達成感溢れる試合を満喫出来るのではないかと思います。

    グリーンバタフライのお2人にも、シルキアさんの仰るような形で是非盛り上げて頂きたいところですよね。

    それでも先方がいまひとつでしたら、俺もファウル連発したりしてヒールを演じましょうか。
    もちろん、皆さんの方法にご迷惑が掛からなければ、ですが。
    そうすれば必然的に先方にフリースローのチャンスが増えますしね。

  • [3]八神 伊万里

    2017/04/06-06:53 

    シルキアさんクラウスさん、よろしくお願いします。
    これで何とかチームになりそうですね。
    ポジションはそのままでいいと思います。

    接待、私としては、最初はこちらがリードしておいて、後半疲れてミスが増え逆転される…
    という風にしてはどうかなと思ってます。
    その方が向こうもカタルシスを得られそうなので。
    もし手加減しても勝てそうにないほどダメダメならこっそりサポートもありかもしれませんね。
    オウンゴールしちゃうとか。
    あと、ナルメディさんにはなるべく無理をさせないよう、気を付けます。

  • [2]シルキア・スー

    2017/04/05-22:13 

    シルキアとパートナーのクラウスです。
    どうぞよろしくお願いします。

    えっと、このままの人数ならですが、
    グリーンバタフライの2人には試合の盛り上げ役(点が入るとダンス等してもらう)をお願いしたらどうかなと思います。

    その場合、私達のポジションは私がシューティングガード、クラウスがセンターで
    ナルメディさんにスモールフォワードに入って貰う感じになります。
    人が増えたら私達は審判でもいいです。

    接待方法は、相手がボールに触れる機会を作れるように立ち回ったらいいのかな、と考えています。
    取りあえず、思った事を。

  • [1]八神 伊万里

    2017/04/05-09:07 

    八神伊万里と、パートナーのアスカ君です。
    まだ一組だけですが、とりあえずポジションの希望を出しておきますね。
    私はポイントガード、アスカ君はパワーフォワードを希望します。
    (略称にしようとしたらジョブ名がでてきた…)


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